最後の職業

昔、私の好きな野球選手が、一年間を振り返って、深刻な顔で
「今年、もしダメだったら、屋台でもひいて商売をしようと思っていた」
と話していた。

口下手で、人付き合いの下手なその選手は、引退後の職業など考えたことも
なかったのだろう。

その必要はなかった。残念ながら、彼は、その後、40歳で亡くなってしまった。

ただ、こういうプロスポーツ選手は少数派だ。
たいていは、チームの親会社に仕事を紹介してもらったり、引退した先輩に頼み込み
テレビやラジオの解説者になったりする。
スポーツ選手としての寿命が見えてくると、「就職活動」を始める人は多いそうだ。

同じスポーツでの再就職以外にも、いろんな道がある。

例えば、うまくいけば、選挙に立候補することができる。政党にとって、有名スポーツ選手の
知名度は魅力的だ。

ちょっと地味な選手だと、市会議員、有名なら、県知事や国会議員になることができる。

さて、これらの人々は、当選しても、ほとんどの場合、たいして結果を残さずに辞める
ことになる。
先輩、後輩の関係が強い、スポーツの世界にいたせいか所属する政党の先輩の議員の
指示通りに、立ったり、座ったりしているだけである。当選後は、先輩議員にペコペコしている
姿はみかけるが、法案に対する考え方などを聞くチャンスはない。

こういう人は、議員を辞めた後も、まだ仕事がある。
おそらく立候補したときに、そういう約束になっているのだろう。
落選しても、当選して辞めた後も、仕事の世話はしますよ、といったようなことだ。

辞めて三ヶ月ぐらいすると、彼らが、地方の私立大学で教授になったというニュースが
小さい記事になることがある。地方の私立大学は、国会議員が経営していることが多い。
講師としてなら、教えるための勉強はしなくて済むし、体験談を話せば、学生は集まる。

数年後は、「**大学講師」という肩書きで、再就職だ。
人前でしゃべる度胸がつけば、地方から講演に呼ばれることになる。
元議員で大学講師であれば、講演料も数十万円から数百万円になることもあるそうだ。
講師として、有名広告代理店のリストに載れば、一生、講演だけで食っていけるらしい。
地方自治体が主催する講演会は、多い。

このころには、スポーツ選手だったころからは、すっかり顔つきも変わりスーツも似合うように
なっている。

オリンピックは、その手の人物を生み出すイベントでもある。
金メダルをとれば、大きな欠点がないかぎり、まあ国会議員にはなれるようだ。


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