IS THIS IT?

戦後まもなく、フレッドアステアが私的に日本を訪れた時のことを書いた記事を
読んだことがある。

銀座(ぎんざ)のビルの一室にある、アメリカの映画会社を表敬訪問した後
送っていくというのを断って、一人でホテルに歩いて帰ったそうだ。

編集者は、ステッキを片手に軽い足取りで銀座の雑踏に消えるアステアの
後姿をぼんやりと見送った、とのこと。

この編集者の回想のほかに、このアステアの来日のことが書かれたり
語られた記録はあまり見たことがない。

当時、アステアはもちろん日本でも有名人だったが、人というより実在しない
妖精のような存在で、銀座の人々も、痩せておしゃれな西洋人が
フレッドアステアだとは気がつかなかったのだろう。

戦後のある日、アステアが、誰にも気づかれないことを楽しみながら、のんびりと
銀座を歩いていたなんて、想像するだけで、ちょっといい気分になりますね。

THIS IS ITは、つい先日、上映が終わりました。

私は見に行きませんでした。特に彼のフアンでは、なかったこともあるけれど
それよりも、この映画を見に行くことは、彼を殺した「何か」に加担して
しまうような気がしたので。

彼に、もしアステアのような時間があったら、と考えても無駄なことは
わかっていますけれどね。



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