1999年10月


 
10 / 01

公園でまじめな顔をして話しているカップル。
新婚旅行でどこに行くかという話し合いをしている。

「結婚式場(しきじょう)のセットでハワイにすれば、 半額(はんがく)だよ」
「いや。半額とか、そういう問題じゃないでしょ」
「今回は休みがあまりとれないんだから、ハワイでいいじゃん」
「じゃあ今年中に2週間くらい休めるの」
「2週間は無理だよ」
「年明けにまた一週間休みをとるから、ヨーロッパはその時な」
「ハワイとか、どこが面白いの」
「おまえ、行ったことないんだろ」
「ないけど、海以外になにがあるの」
「なにもないところがいいんだよ」
「えー。なにそれ」
「だから、今回は、抽選(ちゅうせん)で当たったと思えばいいだろ どうせ、
 自分達のお金じゃないんだし」
「だって、。。。。」

今日は、サリン事件で、始めて死刑判決がでた。

また、日本ではじめて 原子力発電所付近で、大規模な放射能もれがあり、3人の被害者がでた。 このカップルは、その両方のニュースはすでに聞いていると思うけれども それぞれに、大事なことというのは、違って当然なのだ。

 


 
10 / 04

ソニーの盛田(もりた)さんが無くなった。78才。

創業時からのパートナー 井深(いぶか)氏も、すでに故人(こじん)となっている。 仕事柄、外国人と日本経済に関する話題になることが多いせいか、 ソニーやホンダというのは、特別な会社だ。

「でも、ソニーとかホンダという例外もありますよ」 というフレーズに何度、助けられたことか。 両者とも日本の会社の中では、例外的にリベラルで、風通しのいい会社だ。

さて、現在30-40代の日本人は、子供の頃にソニーの製品(せいひん)に 関する思い出をたくさん持っていることだろう。

もちろん、ウォークマン。私も3つぐらい買ったことがある。
ソニーの製品は、デザインは最高、でもちょっと壊れやすいという心配 があった。しかし、それもまた魅力のうちだった。 今では、他社の日本製品は、すっかり壊れやすくなってしまい、むしろ、 ソニーのものは、丈夫なほうである。

ウォークマン発売後、日本国内でも、各社が競って同じタイプのものを 発売した。中には、性能は同じで、安く、より丈夫なものもあったが、やはり ソニーのものが欲しくなるのだ。

しかし、しばらくすると、他社のものがより多く売れるようになる。 あまり値引きをしないソニーの製品は、販売店にも嫌われるようだった。

ソニーは、戦後に大きくなった会社だが、増々発展している。
日本では「会社の寿命(じゅみょう)は30年」と言われている。

 


 
10 / 06

「物(もの)」という字は、いろいろな言葉を作る。

よく使う表現は、買い物、食べ物、飲み物、忘れ物など、これらは、 動詞(どうし)とのコンビネーションですね。

他には、作り物。これは、「自然にできたものではない」という意味で 偽物(にせもの)とほぼ同じ意味だ。 造花(ぞうか)を指して、 「これ、作り物でしょ? 本物みたい」などと言ったりする。

名詞(めいし)といっしょになる場合もある。 男物、女物、春物、秋物、冬物、夏物、などは、洋服などに使われる。輸入物、などもある。

買い物の時に便利な言葉が多い。

一品物(いっぴんもの)というと、手製 (てせい)で、同じ物がないという意味。 作家物(さっかもの)というのは、工芸品(こうげいひん)によく使われる 言葉で、「作り手が特定(とくてい)できる、有名な人のもの」という意味。

陶磁器(とうじき)や漆器(しっき)などで、お土産やで売っているものには 作家物は少ない。 当然、作家物は高い。陶磁器でも、漆器でも、一万円以下のものは あまり見たことがない。

私は中学生の時に無理をして作家物のぐい飲みを買った。ぐい飲みは、お酒を飲む器で、必要ないのだが、欲しくなったのだ。
店主は、「どうしても欲しいの?」と聞き、5000円で売ってくれた。
値札には、1万円と書いてあった。

 


 
10 / 07

都心のマンションでは、洗濯物(せんたくもの)を外に干しては いけないという規則(きそく)があるところがあるらしい。

「美観(びかん)を損(そこ)ねる」というのがその理由で、 誰がそれによって不利益(ふりえき)を被るのかは、わからない。

洗濯機は現在、安いもので2万円ほどなので、それほど高いものではないが、学生がアパートに住んでいる街では、コインランドリーが残っている。
洗濯が150円。乾燥機が10分で100円といのが相場(そうば)だ。

 


 
10 / 11

物には決まった値段がある。これを定価という。

80年代に入って、特に電気製品を安く売る店が増えた。

それまでにもあったが、限られた特別な場所だけだった。 これらの店は、定価の2割り引き、3割り引きで売った。 メーカーは、その種の店に製品(せいひん)を出荷
(しゅっか)しない ようにして、価格の低下をおさえた。 これによって、一般の店は、実質的に価格を下げることはできなくなった。 メーカーとの関係を悪くしたくないからである。

最近は、オープンプライスとかオープン価格と書かれてることが多い。 これは、値段は、販売店(はんばいてん)が決めます。という意味だが、 実態はそうでもないらしい。

コンピューターなどは、主導権(しゅどうけん)は販売店にあるようだが、その他の 電気製品は、まだ、メーカーのほうが強い。 洗濯機(せんたくき)やテレビなどは、一年に2回もモデルチェンジするが、 旧機種を安く売ることは、今でもタブーのようで、1年を経過すると ほとんど不可能になるそうだ。

かといって、新しい機種(きしゅ)のどこが新しくなったのかは、店員も よく知らないのだ。

そこを尋ねると、 「ええと、(カタログを見ながら)、感知(かんち)センサーというのが つきました」などというが、そのセンサーが何なのかは 知らないといったふうだ。

日本は何でもモデルチェンジのサイクルが早い。電気製品は、1年。
アパートは、20年。
家は25年。

2年目の小渕(おぶち)さんは、もう旧機種(きゅうきしゅ)という かんじである。

 


 
10 / 12

来年の4月から2000円札が出来るそうだ。 夫婦の会話。30代後半。

妻「何に使うの? 2000円」
夫「何にって、そりゃ、人次第(ひとしだい)だよ」
妻「そりゃそうだけどさ、何が便利になるのかしらねえ」
夫「財布(さいふ)の中のおさつが少なくなっていいかもな」
妻「外国なんか20のお札があるからね」
夫「旅館のチップなんかいいんじゃないか」
妻「2000円じゃ少ないかな。まあ、ふつうの旅館ならいいかもね」
夫「もしかすると1800円くらいのものが、ついでに値上げするんじゃない」
妻「例えば」
夫「映画代とか」
妻「ああ、そうか。野球の切符(きっぷ)も1800円とか、ありそうね」
夫「そう」 妻「それから一日2000円で暮らすと、一ヶ月60000円でしょ。多分、   家計(かけい)の目標にはなるわよ。1000円じゃ三人家族だと厳しいもの」
夫「なるほどねえ。ああ、あと定食やなんかでは、2人で2000円セット
   なんかやりそうだな」
妻「あら、お昼は、いつも2人で食べるの」
夫「うん、ああ、時々ね」
妻「へえ、誰と」
夫「同僚(どうりょう)とか後輩(こうはい)とか」

まあ、ここから、妻の表情は険(けわ)しくなり、当然、話題は変わった。
ちなみに夫は下着のデザイナーで 会社の7割は女性社員である。

 


 
10 / 13

ラグビーのワールドカップがウエールズで行われている。

今回も、南半球(みなみはんきゅう)の国々が強いが、 イングランドや地元(じもと)のウエールズもいいチームだ。

日本も参加(さんか)している。監督は、平尾(ひらお)氏。
彼は、日本のスポーツマンの中では、数少ない、知的でアイデア豊富な人物だ。
すでにウエールズ、サモアには、負けたが、4年前にくらべると、長足 (ちょうそく)の進歩(しんぽ)だ。 かつて日本のナショナルチームが短期間にこれほどの進歩を示したことは ないと思う。

ラグビーには、「36ヶ月、その国でプレーしたものはナショナルチームに 入ることができる」という規則(きそく)があるため日本にも5人の外国人 プレーヤーがいる。サモアやニュージーランドでのかつての名選手も 含まれている。

残念ながら、日本人で一流といえるのは、2.3人だが、よいチームだ。
4年後は、「ひょっとしたら勝つ」レベルになるかもしれない。

 


 
10 / 14

「斜陽(しゃよう)」と呼ばれる産業はいくつかある。

石炭(せきたん)もそのひとつで、斜陽と呼ばれて何十年も立つが、 いまだに斜陽と呼ばれつづけながらも存在していることを考えると、まだ、需要(じゅよう)は 少ないながらもあるらしい。

大きなものでは、鉄道(てつどう)も斜陽だ。

飛行機(ひこうき)が発達 している国々では、移動のコストは、高くつくようになっている。 日本も国内では20年程前に同じか、飛行機のほうが安いことになった。 貨物輸送(かもつゆそう)も、トラック全盛(ぜんせい)で、鉄道は、 今や、近距離(きんきょり)の人の移動に使われることが主となった。

 


 
10 / 18

「秋は、ひと雨ごとに寒くなる」と言われている。

10月に入ってから、少しずつ雨がふるようになり、今週になって、 やっと秋らしくなった。半そでのシャツでは寒いぐらいだ。

10月は、幼稚園(ようちえん)や、小学校などで、運動会(うんどうかい) が行われる。中には、両親が見にこられるようにと、日曜にやる学校も あって、10月の日曜は、その音で目を覚ますこともしばしばだ。

聞くところによると、もう10年ほど前から、運動会では、順位(じゅんい) をきめないそうだ。30年ほど前には、一位になった子供には、賞品 (しょうひん)で出ていたというのに。

「子供に順番をつけるのはよくない」というのがその理由だが、実は、 数学(すうがく)や英語(えいご)の順番は、歴然(れきぜん)と わかるようになっている。

 


 
10 / 19

朝晩は、ずいぶん寒くなりました。

日本へ来る予定の方は、コートをお忘れなく。

日本では6月に梅雨(つゆ)があり、集中的に雨が降るが、10月も雨が 多い。
秋雨前線(あきさめぜんせん)といって、この雨が寒気(かんき)を もたらす。
しかし10月後半になると雨は減り、かわりに紅葉(こうよう) が始まる。

1年で最も美しい季節かもしれない。
人々は、海外から国内に目をうつし、週末を利用して、いそいそと、 国内旅行にはげむのだ。

 


 
10 / 20

最近は夜遅くまであいている店が多くなった。

「あ、祝儀袋(しゅうぎぶくろ)、買うの忘れてた」
「コンビニに売ってるよ。」
「そう? キヨスクは?」
「売ってる」
「筆(ふで)ペンは?」
「多分、売ってると思うよ」
「ああ、どうしよう。紙おむつも買うの忘れた」
「ううん。それは、多分、だめかもね」
「どこか今(夜の2時)あいている店ないかしら」
「今ねえ。じゃあ、とりあえず、コンビニで探して、なかったら、車で 街道
  (かいどう)沿いのスーパーに行こう」
「今、開いてるの?」
「うん、夜3時までやってるらしいよ」

コンビニは、コンビニエンスストアー。24時間営業の店のこと。
キヨスクは、電車の駅にある小さな店のこと。JRの店はキヨスクという。
最近では、JR でなくても、駅のホームにある店はキヨスクと呼ぶ人が多い。
筆ペンは、筆で書いたような味(あじ)が出せるボールペンのこと。

 


 
10 / 21

日産(にっさん)という会社を御存じだろうか?

日本で二番目に大きい車会社で、つい最近フランスのルノーとの 提携(ていけい)を発表した。 実質的なトップには、新しくカルロスゴーン氏が就任(しゅうにん)した。 「コストキラー、コストカッター」と呼ばれた人物だ。

彼の株主総会での日本語でのスピーチは、見事なものだった。 来日して一年にも満たない外国人ビジネスマンであそこまできれいなスピーチ ができるのは珍しい。
その後、彼は、長めのスピーチは、すべて日本語で こなしている。

ここからは、私の勝手な推量だが、彼は、実は、スピーチで話したレベルの 日本語は話せないのではないだろうか? いや、ひょっとすると、まったく日本語は話せないかもしれない。 しかし、抑揚(よくよう)も完璧(かんぺき)に近かった。
もし、私の推察(すいさつ)どおり、彼が、日本語をまったく理解しない のなら、スピーチを指導した人も見事だが、ゴーンさんの能力もすばらしい ことになる。

驚いたのは、よく言われる「日本語のgood morningは、アメリカのOhio州の発音と同じ」 といったレベルのスピーチではなかったからだ。 株主に向かって、また、社員に向かって、会社の状況を説明し、 日本では、かつてないほどの規模(きぼ)の従業員(じゅうぎょういん)の 解雇(かいこ)を伝え、またその必要性を説く。 というとてつもなく難しいスピーチだった。

ゴーンさん。もし、本当に日本語が上手だったら、ごめんなさい。

私は、このゴーン氏が日本に与えるインパクトは、単にひとつの会社のことだけには、留まらない と考えている。

 


 
10 / 22

日本人は外国人、特に欧米人の評価を気にする傾向が強い。とよく言われる。

外国人に日本人はどう見えているか。という神話(しんわ)は数限り無く 存在するが、マイナスイメージは、克服(こくふく)されたものだとし、 プラスイメージは声高(こわだか)に語られる。

30代の夫婦の会話

「ねえ、職場のイタリア人に誘われちゃった」
「へえ、まあ、社交辞令(しゃこうじれい)みたいなもんだよ」
「私の髪に触れながら、『イタリアにも黒髪の女性はいるけど、千絵の髪は
 特別な黒だ』なんて言うのよ」
「特別ねえ。日本男児(だんじ)には言えないセリフだなあ」
「やっぱり日本人女性はもてるみたいよ。」
「そうかなあ、ちょっと考えてみてよ。東アジア、いや、全アジアで  最も性
  モラルが低いのが日本だろ。そりゃ、口説(くど)くに決まってるよ」
「ええっ! そんなことないわよ。やっぱりアジアの中でも日本人の やさしくて
  繊細(せんさい)なところがいいってよく言ってるわよ」
「ああ、そう。まあ、そう思っておいたほうが幸せかもね」
「あなたなんか、結婚してから、全然、ほめてくれないじゃない」

と、ここから、また、けんかになった。

 


 
10 / 25

先日の原子力関連の事故の詳細があきらかになってきた。 今回の事件は、臨界事故(りんかいじこ)といって、相当に深刻な 事故である。40人近くの人々が被爆し、うち15人は近所の住民や 消防隊員だった。 以下は、情報がどうやって我々に届いたかという記録である。

9月30日、午前10時35分、事故発生

5分後:警報が鳴り、職員が避難(ひなん)する。
10分後:社長が臨界事故だと認識する。     
    被爆(ひばく)した職員のため救急車(きゅうきゅうしゃ)が呼ばれる。
この時点で救急には、被爆のことを告げなかった。そのせいで、 救急隊員も被爆する。収容先(しゅうようさき)を探すため、 手間取(てまど)る。 救急車が病院に向かって出発するまで90分近くかかっている。

30分後:政府に連絡
1時間後:事故を起こした会社が地元の村の役場
     (やくば)に報告 (FAX一枚だったそうだ)
2時間後:政府が正式に事故を確認(正式にって、なんだ?)
3時間後:現場近くの住民に(理由は言わずに)避難するように連絡が始まる。

このころから、テレビ、新聞、インターネットで報道がはじまる。 事件があった隣の会社では屋外(おくがい)で作業をしていた。 彼等はテレビの報道で事件を知ったのは、午後1時ごろ。 事件から2時間半が経ってから。

6時間後:政府から地元の村の役場に連絡(これもFAX一枚だった!)
7時間後:地元の人々に、事故の詳細が知らされる。

この所長は、10分後には、深刻な事故であると知っていたにも 関わらず、救急隊員を被爆させ、隣の会社にも知らせず、政府の判断を まっていたことになる。

私の予感(よかん)では、管理体制の不備は裁(さば)かれても、この報告に 関する失点(しってん)は、裁かれないと思う。

それにしても、日本では、FAXを持っていないと、死ぬかも知れませんね。

 


 
10 / 26

図書館には、本の他に、いろいろなものが借りられるようになっている。

レコード、テープ、ビデオ、CD。

コンピューターの雑誌などについているCD-ROMは、まだ、無理のようだ。

レコードやCDでは、クラシックからポップミュージックまで、落語や 講演のテープなどもある。最近では、CDの割合が多く、テープやレコード は少なくなった。

ビデオを置くところも増えてきた。古いハリウッド映画や、ドキュメンタリー など。

目の悪い人のための大きな活字(かつじ)の本も多い。 盲人(もうじん)用に、無料で、本を読むサービスをやる図書館も増えてきた。

日本にすむ人で、住所が確認できる人なら誰でも利用できる。 これは、昨日、図書館で借りてきたスティービーワンダーを聞きながら 書いている。

 


 
10 / 27

日本語の活字(かつじ)を作るのはたいへんらしい。

コンピューターの書体(しょたい)などは、英語のものは、無料のものから 高くても3000円ほどだが、日本語の場合、安くても10000円程度。 5万円でも安い方。

なぜなら、作らねばならない文字の数と種類が膨大だからだ。約6万の字を 作らねばならないらしい。 また、それだけ種類が多いということは、作る際のバランスにも影響する。 小さいサイズで、文字が潰れて見えなくなってはいけない。

ある書体などは、5~10人のスタッフで2年かかったそうだ。
しかし、まだ、日本語の美しい書体は少ない。

 


 
10 / 28

コンピューター上の書体に関してはいろいろと問題がある。

日本、中国など漢字をつかう国の漢字を統一しようという試みがある。

このほうが合理的なのは、理解できるが、「どうやって統一するか」の 議論は、実質的には、始まっていないようだ。 日本でも、小説家や、大学教授などは、文化的な侵略(しんりゃんく) などと言って、反対しているようだが、私は、実は、たいした問題では ないと考えている。

なにしろ、ここ50年で、日本では、相当、漢字の表記を変えてきたのだ。
他の漢字圏の国々と話し合って、漢字を2万程度に絞り込むことは、 難しい話ではないはずだ。

多少の不便は、あるだろうけれども、得られることのほうが大きいと 思いますけどね。

 


 
10 / 29

セクハラというのは、セクシャル ハラスメントのことで、こういう長い 言葉は、日本語に輸入されたとたんに、省略される運命(うんめい)にあります。

「高木さん、係長、『どうして髪切ったの』ってうるさいんですよ。」
「ああ、あの人はね、いつもそんなことしか言わないの。まあ、適当に
  あしらっておけばいいのよ」
「『ショートが流行っているんで』って言ったんですけど、『それだけ?』
  とかって、言うんです」
「しょうがないわねえ。」

女性が髪を切るのは、恋人と別れたからだ。という認識を持っている男性は 多い。

この高木さんという上司は、そういう類いの人だ。 まあ、男性は、どの職場にもいて、詮索(せんさく)好きというわけではなく 実は、女性に対して不器用な人が多いので、「こう言えば、間違いなく 反応してくれるフレーズ」をくり返すんですね。 それが例え、否定的なものであっても、反応さえ、示してくれたら、 コミュニケーションをとった気になっているものです。

それがエスカレートすると
「まつだくん、みかん、3つも食ったの? 妊娠してるんじゃない」 なんて言ってしまう。

大人の女性の振るまい方をおもしろおかしく書いて、人気がでた最近の 本「大人の女 養成講座(ようせいこうざ)」によると、

「わかります? 課長の子ですから認知(にんち)してくださいね」 などとブラックジョークでかえすと、よい。 とある。

日本では、セクハラという言葉が浸透(しんとう)してきたと言っても、 いつも、この国は、法律面でのサポートがないので、しばらくは、 たくましくなるより他に方法がないようである。

「大人の女養成講座」 石原 壮一郎 著  扶桑社(ふそうしゃ)

 


1999年09月


 
09 / 01

九月一日といえば、夏休みが終わって、最初に学校に登校(とうこう) する日だ。 夏休みには、宿題(しゅくだい)があり、この日までにやらねばならない。

ひさしぶりに会う友人も多く、ちょっと緊張(きんちょう)したりする。

もちろん好きな女の子や男の子にも会えるので、うれしいこともあるのだ。

 


 
09 / 02

日本語というのは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の 4つがバランスよく、上達(じょうたつ)しないと、実力(じつりょく)は つかないと言われる。

さて、私は、レッスンを始める前に、「4つのうち、どれを重視(じゅうし) しますか。」と聞くことにしていたが、やめてしまった。 100人以上に聞いたけれども、必ず、「話す」「聞く」「読む」「書く」の 順番だからだ。

もちろん、この順番は、日常生活で実際に役に立つ順番でもあるから、 おかしい答えではないが、これには、 「漢字(かんじ)は、たくさんあるし、 大変だから、話せればいい」という考えが含まれているようだ。

しかし、日本人が日常に使う漢字は、2000程度だし、日本人でも、書ける漢字は、 その半分くらいではないだろうか。
読み方がたくさんあるのは、大変だが、意味だけでも分かると、語彙数が 飛躍的(ひやくてき)に上がる。

日本語が読めるようになるメリットは、大きい。 実は、日本は、翻訳書の数も種類も、質も他国に比べて、圧倒的に 高いからだ。 アジアの文献では、中国と同等かそれ以上。その他の国を含めると、 世界一ではないだろうか。

日本語を学ぶのは、日本のことを勉強するためだけではないのだ。

 


 
09 / 03

厚底靴(あつぞこぐつ)の流行は、なかなか終わらないようだ。

これは、10代から20代前半の女性に流行っている靴で、サンダルの 底の部分が10センチから15センチほどの高さになっているもの。
当然、歩きにくく、けがも多い。最近は、危険性を指摘する報道も増えた。

これを履く理由は、「背が高くみえるし、風景も変わるので、気分がいい」 というところらしい。

あらためて、日本は安全な国だなと思う。 あの靴は、走れないのだ。

 


 
09 / 06

女性用の経口(けいこう)避妊薬(ひにんやく)が、ようやく国内でも 使用できるようになった。 しかし、まだ、医師(いし)の処方箋(しょほうせん)が必要で、 気軽に店で買えるというわけではない。

日本は、医薬品の許可(きょか)に関しては、非常に保守的で、海外で 売られている薬でも、国内で買うと、効果(こうか)が低く感じられること がある。
規制(きせい)によって、強い薬は売ることができないからだ。

今回の避妊薬は、日本では、ピルと呼ばれる、その存在は、ずいぶん昔から知られていたが 許可がでるまで9年かかった。

 


 
09 / 07

最近は、大きなニュースも少ない。

政治では、2つの大きな政党内で選挙をやっているが、あまり関心が 高まらないようだ。 経済は、少しづつ上向きのようだが、円高(えんだか)で、打撃(だげき)を 受けている企業も多く、雇用(こよう)は、落ち込んでいる。

「ニュースの夏枯(なつが)れ」などと言って、夏には、ニュースが少なく ジャーナリストが困るという現象にしばしば陥(おちい)るということだ。

 


 
09 / 08

日本のレストランもチェーン店が多くを占めるようになった。

実は、このチェーン店というのは、江戸時代から日本にあったシステムだ。
「のれんわけ」という。 のれん、というのは、店の入口にある日よけで、ここに店の名前などを 書き、看板を兼ねた。

有名な店で修行(しゅぎょう)した人が、郷里(きょうり)に帰って、 店を開き、独立する。その時、店主の許可があれば、同じ店の名前を 使ったり、一文字だけ、字をもらったりする。
例えば、「宮川」という名前だったら、「宮口」というかんじだ。 いまでも、そばやや、寿司やなどには、同じシステムがあるが、最近は、 お金を払えば、同じ名前で経営することができるようだ。  

私は、チェーン店の店には、なるべく入らないようにしている。
まずくはないけれど、おいしくもない、「あいまいな味」なんですね。

 


 
09 / 13

なかなか信じてもらえないが、日本では、ほとんどの鉄道(てつどう)に 時刻表(じこくひょう)が存在し、駅の売店(ばいてん)などで 売られている。
毎月、発売されるJRの時刻表は隠れたベストセラーと言われている。

電車は、時間通りに来るのは、当然(とうぜん)であるし、2.3分、 遅れると、
「あれ、事故かな?」と考える。 たいていは、すぐに、「たいへん、もうしわけありません」という種類の アナウンスがあり、はたして、事故で、10分遅れることなどが告げられる。

この正確さが前提にあるので、国内を鉄道で旅行する人は、時刻表を 見ながら、計画をたてることが多い。 ヨーロッパ旅行などでも、移動に鉄道を使う人は、当然のように トマスクックの時刻表を買って、ホテルで翌日の鉄道の時間を調べたりする。

私もそのひとりだ。ヨーロッパでこの時刻表を開いている人のほとんどが 日本人ですね。地元(じもと)の人は、あまり使わないようで、実際に、 イギリスなどでは、ほとんど役に立たないので驚いた。

しかし、時刻表をめくりながら、いろいろと旅の計画を立てるという、あの 甘美
(かんび)な時間を捏造(ねつぞう)すべく、来るあてのない列車 (れっしゃ)の乗り換え時間の計算などをやってみるのは、楽しいのだ。

 


 
09 / 14

レズリーダウナーという人の書いた「芭蕉の道」という本を読んだ。 外国人が書いた日本の本を探していたのではなく、芭蕉の道を旅した 紀行文(きこうぶん)を探していたら、見つけた。

日本の作家、村上龍(りゅう)によると、「日本の田舎は美しい、 都会も悪くない、ただ、郊外(こうがい)は、最悪」だそうだが、 その日本の風景を、レズリーさんは、どう感じたのか、率直に 語られている。

芭蕉の道は、今でも辿(たど)ることができるし、あらゆる所に句碑(くひ) が建っているそうだ。ただし、むかしの面影(おもかげ)はないそうだ。
また、山林は、植林(しょくりん)のせいでシルエットは変わっているし、川の上流には、いくつもの ダムができた。芭蕉の時代とは、川の流れも、山の色も変わっている。 風景は一変しているといってもいい。

レズリーさんの旅は、85年と86年に行われたものだそうだ。 それから約15年が経過した。この15年は、日本の地方都市にとって、決定的な 打撃をあたえたと、考えられている。彼女はもう日本に来ないほうがいいだろう。

不景気(ふけいき)に対する政府の打開策(だかいさく)は、またもや 宅地造成(たくちぞうせい)であり、開発であった。 今年に入って、近所にも急にトラックが増えた。

 


 
09 / 21

図書館では、時々、古くなった本を無料(むりょう)で、提供することが ある。
三ヶ月か半年に一度だ、古くなった雑誌などが主だが、本もある。

今日、行った図書館では、経済の本が多かったように思う。 そのほとんどが、21世紀のアジア経済の見通し、や、インターネット革命 (かくめい)といったタイトルの本だ。 いづれも、3.4年前に書かれたもので、こういう本はすぐに古くなるようだ。

今も、本屋には、将来の経済を予測(よそく)した本が並ぶ一角 (いっかく)があり、実は、これらの本の売行きはよいようだ。

古本屋などには、10年ほど前に書かれた経済書が30円程度で売られている。

 


 
09 / 22

最後のたいこもちと呼ばれた悠玄亭玉介(ゆうげんてい たますけ)さん によると 粋な客というのは、時々、突拍子(とっぴょうし)もないことを言う客のことだそうだ。

例えば、急に「おい、玉介、あの川に飛び込め」などという。
仕方ないから飛び込むと、大笑いしている。
「面白かった。着替(きが)えて、酒の相手をしろ」なんて言われる。
ひでえ、客だな。と思いつつ、仕方がないから、そのとおりにする。

後日、超一流の呉服屋から、採寸(さいすん)に来る。
「注文した覚えはないよ」 というと、あの飛び込めといった客からだ、とのこと。

「こういうのが粋な客ってもんよ」 と玉すけさんは、言う。

想像するに、客は、たますけさんの着物にほころびを見て、機転(きてん) を利
(き)かしたのではないだろうか。

「買ってやるよ」では、 押し付けがましい。
そこで、「飛び込め」になった。
まあ、粋な客になるのもお金がかかるってことですね。

—————————————-
「幇間(たいこもち)の遺言(ゆいごん)」 悠玄亭玉介

 


 
09 / 27

日本では、1999年に世界が終わる。という類(たぐ)いの本がもう、 20年以上も売れ続けていて、今年は、いよいよその年だったわけだが、 意外にもブームはこなかったようである。

これは、オウム事件以来、カルト的な思想に対して、警戒を強めている マスコミが、意図的にブームをあおるのを自粛(じしゅく)したという うわさもあるが、なにより重要なのは、明日で世界が終わるという最後の 一週間だからといって「恋人とレストランで食事を」とか、「彼女に一緒に 最後のクルージングを」などというイベントも盛り上がりそうではなく、 簡単にいうと、この種の話は、経済効果が望めないということであった。

その「予言(よげん)」によると、今年の7月が世界の終わりだったそうだが、 7月にテレビ局に集められた予言者達(その種の本の著者達)が口をそろえて 「実は9月だ」と言っていたのは、面白かった。

おそらく、彼等の考えでは、9月には、このこじんまりとした終末 (しゅうまつ)ブームもおさまりかけているだろうし、 まあ、台風なども 多い時期なので、なんとか言い逃(のが)れができるだろうと 考えたようだ。

そして、ほぼ彼等の思うようになった。もはや誰も予言のことなど忘れたか のように、9月を終えようとしている。

9月は、先祖(せんぞ)のお墓を参(まい)る習慣が日本にはある。
彼等は、ともかく何百年も前のひとりのフランス人のおかげで、20年 以上も生活できたのだから、せめて、彼の、お墓参りくらいには、 行ったらどうだろうか。

世界は破滅(はめつ)しなかったことだし。

 


 
09 / 30

さて、今週末ごろから、日中(にっちゅう)の気温も20度弱になり涼しくなるそうだ。

これほど、残暑(ざんしょ)が長引いた夏は記憶にない。夏から秋にかけては、一雨(ひとあめ)ごとに涼しくなるはずだが、その肝心 (かんじん)の雨があまり降らなかった。

秋は日本で最も人気の高い季節で、紅葉を見に旅行に出かけたりすることもある。

魚や野菜も秋がおいしいものが多く、なにより、米(こめ)の収穫 (しゅうかく)がある。

「日本人はあまり散歩をしない」とは、外国人によく言われることだが
秋は例外だ。早朝、散歩をしている人がぐんと増えるのも秋だ。

 



1999年08月


 
08 / 09

先週、私は、約7年住んだアパートから引っ越した。

アパートは、2階建てで、 2階には3つ部屋がある。いずれも6帖で風呂はない。
築15年くらいだと思うが、作りはしっかりしている。 一階には、大家(おおや)さん夫婦が住んでいる。正確には住んでいた。だ。

昨年の八月の中旬に、御主人が亡くなった。ひっそりと葬式も済ませた ことを月末に家賃を払いに行った時に聞かされた。 年老いた奥さんは、ひとり残された。
家賃を払いに行く時に、玄関先で話す時間が長くなった。

実は、この赤羽という街はあまり好きになれなかった。

古くからある商店街は、どこか、しっとりとした風情(ふぜい)を失っていた。
古い店の人たちは、少しずるそうな顔をしていた。
駅前のビルは、いずれも高度成長期に建てられたものらしく、古びて ほとんどが雑居(ざっきょ)ビルとなっている。 アジア系の人が多く住んでいるそうだが、目立たない。

以前住んでいた 池袋では、早朝に大極拳(たいきょくけん)を舞う老人のグループがいたりして、外国人ものびのびと生活している様子だった。 ここ赤羽では、そこまでの雰囲気(ふんいき)はないようだ。

赤羽は、川沿いの街でもある。しかし、多摩川沿いと違って、河川敷 への道は、閉ざされていて、川沿いの街がもつ開放感は ない。

この町は、住民に愛されていないような気がする。 かといって、私が次に暮らす街は、鉄道会社が作ったような人工的な 街で、便利だけれども、面白みはない。

 


 
08 / 10

もしかしたら今年の夏は、非常に日本的な夏かもしれない。 暑すぎず、涼しすぎず、最近、見られなかった夕立ちも多い。 夕立ちが来るまでは、意外と、空気は乾燥している。夕方以降と 朝は、湿気が多い。

「浮草(うきくさ)」は、小津(おず)の映画で、初めてのカラー映画で 夏の雲が印象的だ。ただし、撮影(さつえい)は、夏ではなかったようなことを読んだ記憶がある。 この映画は、例外的(れいがいてき)にキャメラは、盟友(めいゆう)の 厚田雄春(あつた ゆうはる)ではなく、宮川一夫(みやがわ かずお)だ 。

からりとした夏の空や、けだるい田舎の夏の風景などが、小津の映画にしては やや迫(せ)り出してくるような画面に違和感(いわかん)を感じつつも やはり気持ちのよい画面になっていたことを覚えている。

宮川一夫氏は、溝口(みぞぐち)監督のカメラマンとして最も有名だ。 カメラマンとしての代表作も溝口の一連の作品になると思う。 黒沢監督とも組んだ。作品としては、こちらのほうが有名かもしれない。

日本は四季(しき)のコントラストがはっきりしており、地方による 気候の差も激しい。新潟(にいがた)の海と、広島(ひろしま)の海では まるで違う。この季節感が出せるかどうかが、キャメラマンの試金石 (しきんせき)となっている。

職人と呼ばれるキャメラマンは、何人もいたが、宮川さんは、その代表的な 人物だった。

 


 
08 / 11

関東地方には温泉が多い。

栃木県には、草津(くさつ)、鬼怒川(きぬがわ)。
神奈川には、箱根(はこね)。静岡には、熱海(あたみ)。
福島県には、熱塩(あつしお)があり、
群馬には、伊香保(いかほ) 水上(みなかみ)がある。

これらのうち、温泉の横綱(よこずな)は、草津だ。今でも湯量(ゆりょう)は多く、 旅館の質も高い。 鬼怒川も、奥まで行くと、静かな温泉地が多い。 その他の観光地も悪くはないが、昨今は、国内の団体客が多く訪れることが 災(わざわい)いして、旅館の質は下がり、人は多い。安っぽい 土産(みやげ)屋と、カラオケバーでいっぱいだ。

露天風呂(ろてんぶろ)があっても、基本的に温泉地は「室内」を 楽しむものなので、観光地の人々も周りの環境(かんきょう)には 感心がないようだ。

 


 
08 / 13

現在、私がすんでいるところは、埼玉県。東京で仕事がある人たちが 住む街だ。
人工密度も高く、現代日本の縮図(しゅくず) といっていいだろう。

この街のゴミのルールは、現在の日本の最も一般的なもののひとつだ。

週に2回、燃えるゴミを出す日がある。これには、ビニール製品も 含まれる。
週に1回、リサイクルゴミの日。これは、缶ジュースの空き缶や、 びん、ペットボトル(最近、多い)、新聞や雑誌などを分けて出す。
隔週(かくしゅう)で、1回、燃えないゴミを出す日がある。陶器や、金属類で 小さいもの。
その他、大きなものは、ひとつ200-1000円程度の費用(ひよう)がかかる。 事前(じぜん)に電話をして、決まった日に取りに来てもらう。

最近は、ワインブームで、輸入ワインのびんが、リサイクルに適さないと 問題になっているそうだ。 このようにゴミの分別(ぶんべつ)は始まったが、商店などで、ゴミを 減らす努力はまだまだのようだ。

 


 
08 / 16

首都圏(しゅとけん)では、たいていどこの街にも図書館(としょかん) があり、誰でも利用できる。特に東京では、外国の本を置くところも 増えてきた。英語がいちばん多いが、韓国語、中国語の雑誌や本がある 図書館は多い。他の言語は、ほとんど見られない。

利用率は、だんだん上がっているそうだが、一般の外国人にはまだ、知られていない。 やはりまだ、図書数も多くないこともあって、人気はいまいちのようだ。

いわゆる名作は多いのだが、ベストセラーは少ない。 例えば、日本人が、ローマの図書館で、源氏物語(げんじものがたり)を 見かけても、読む人は少ないのといっしょだ。

ないよりはいいですけどね。

 


 
08 / 17

猿(さる)が捕(つか)まった。 60日間、都心を自由に歩き回り、話題(わだい)をさらった猿だったが、 ついに捕まった。

警察も含め、この猿を捕まえようとした人たちは多かったが、街の人達は、猿の味方(みかた)だったようだ。 都心から100キロほど離れた山から、迷いこんだ猿で、野生(やせい)の 猿だ。 時にはインド大使館やロシア大使館に逃げ込み、追手(おって)を拒(こば)んだ。

しかし、最後は、アメリカンクラブで、職員(しょくいん)の手によって 捕らえられ、通報(つうほう)された。

アメリカンクラブは、主に、アメリカ人の駐在員 (ちゅうざいいん)の サロンとなっているところで、東京における「自由の国アメリカ」の象徴(しょうちょう) であった。

皮肉(ひにく)なもんですね。

 


 
08 / 18

旅にでると、ついその国のスーパーマーケットを覗いてしまう。 という人は多いようだ。

セキュリティや、商品(しょうひん)の包装(ほうそう)、値段、 お金の支払い方、その国独自(どくじ)のものなどを見ながら歩くのは楽しい。

何より、その地域に住んでいる人たちが、不機嫌(ふきげん)な顔をして 野菜(やさい)の質(しつ)を調べているところなどは、こういう ところでしか見ることができない。 みやげ店の店員のあいそ笑いや、ホテルの従業員の事務的な笑顔よりはずっといい。

日本には、大手のスーパーマーケットが3つほどあり、郊外(こうがい)に 大型
(おおがた)の店を作っている。一階が食料品売り場で、二階以上は、 雑貨(ざっか)や、電気製品、生活用品などを扱うことが多いようだ。

他にも中規模のスーパーマーケットが、何社かあり、地域(ちいき)ごとに 勢力(せいりょく)を競(きそ)っている。 ほんの20年ほど前は、スーパーのチェーン店は、少なかったが、今は 次々と、小さなスーパーマーケットは潰れている。

大量(たいりょう)の仕入(しい)れによって、価格(かかく)は、 下がったが、その反面(はんめん)、売り場に、商品に詳しい人間が いないことや、高速道路
(こうそくどうろ)が、大手スーパーのトラック であふれたり、と、問題点も指摘(してき)されている。

 


 
08 / 19

今、日本では、キャンプブームで、キャンプ用品が飛ぶように売れている そうである。

実は日本の国土の約70%は森林(しんりん)なので、キャンプ地は多い。

ただ、経験(けいけん)の少ない人間が、川や湖に車で乗り付け、 テントをはって、翌日、ゴミを残したまま帰る。といったことが多いそうだ。 先日も川べりでキャンプをしていて、急な増水(ぞうすい)のため、 中州(なかす)に取り残された家族の不幸(ふこう)が伝えられた。

この家族は、地元の河川(かせん)を管理している人たちの助言を無視 (むし)している。 早速、政府はキャンプ客に対する規制(きせい)の強化(きょうか)を検討 (けんとう)するそうだ。

これで、また、この国には、つまらない規制ができるのだ。

 


 
08 / 20

ある田舎の駅の売店のおばさんと、知り合いのおじさんの会話。 共に50代。

「あのさ、大蔵省(おおくらしょう)のバカがさ、なんか言ったんだよ それで
  円高になっちゃった」
「ああ、そうなの。ユーロも下がってるの」
「いや、よくしらねえけど(しらないけど)」
「5円くらい、バーッと下がっちゃったものねえ」
「そうよ。おれなんか、それだけで、大損(おおぞん)だよ」
「だんな、株(かぶ)かなんかやってんの」
「いや、株じゃないんだよ。ドル買ってたんだよ」
「ドル?ああ、外貨なんとかっていうやつ」
「そう、外貨貯金(ちょ きん)。いや、外貨預金(がいか よきん)だ」
「すごいわね」
「息子が、なんか、そうしろって、言うんだよ」

私も、外貨預金(がいかよきん)なんて言葉を知ったのは最近だ。
やはり、日本人の学習能力は、高いのかもしれない。

 


 
08 / 24

トルコの地震(じしん)は、日増しに被害(ひがい)の大きさが 明らかになっている。 日本でも先週から、義援金(ぎえんきん)の申し込みが始まっている。

引き裂かれた家族や、知人達を助ける近所の人々の映像(えいぞう)は、 毎日、トップニュースで報じられ、神戸(こうべ)の地震を思い出す。

神戸の地震は、始発電車のわずか15分ほど前に起こった地震だった。 本格的に通勤(つうきん)が始まっていたら、大変なことになっていただろう。 死者は、約6500人だった。
神戸の地震の跡地(あとち)は、ほぼ復興(ふっこう)していると言っても いいのではないだろうか。

今のところ、トルコの地震の被害者(ひがいしゃ)は、その倍(ばい)以上。

近年、トルコは、若い日本人にとってとても人気のある観光地だ。 特に女性は、毎年、多くが訪れる。 地震の時も、日本から200人以上の観光客が訪れていたようだ。

 


 
08 / 25

今日のコラムは、18才以上だけですよ。

おもに水商売(みずしょうばい)の女性と一緒に住んでいて、特に 収入がなく、定職(ていしょく)もない男を「ひも」と呼ぶことがある。 この呼称(こしょう)には、蔑(さげす)んだニュアンスがあるが、なかなか 大変なのだそうだ。

一般的に、考えられているように、暴力(ぼうりょく)で、女性を働かせて いるのではなく、また、セックスの魅力(みりょく)で、女性を支配 (しはい)しているのでもない。 そういう男も、もちろんいるが、ただしい「ひも」とは、言わないそうだ。

一番大事なことは、女性の仕事の愚痴(ぐち)を聞くこと。
ある、プロの「ひも」の男性は、言う。

「水商売の女は、朝方、帰ります。私は、朝、起きて、まず、その女性の足を 洗います。その後、足の裏をマッサージをして、店屋物(てんやもの)などを 取る。その間、女の愚痴を『うんうん』と聞くんだ。それができないと、 ひもは、勤(つとま)らない」

朝、起きて、まず、女性の足を洗うなんて、私は、風流(ふうりゅう)を 感じますね。谷崎 潤一郎(たにざき じゅんいちろう)の世界です。 これに比べると、教師なんて野暮(やぼ)な商売ですよ。

 


 
08 / 26

現在、政府(せいふ)の政策(せいさく)の影響もあって、分譲 (ぶんじょう)マンションが売れている。 分譲マンションというのは、「買う」マンションのことで、「借りる」 マンションは、賃貸(ちんたい)マンションという。

一番売れているのは、4000万円前後のマンション。
3つの部屋と、 リビング、キッチンで広さは、70-80 平方(へいほう)メートルだ。 新築(しんちく)が多く、今年に入ってから、郊外にどんどん 同じようなタイプのマンションが建設されている。 買っているのは、主に30-40代の夫婦で、子供が2人ほどいる家族。 30年近くのローンを払い続けることになる。

最近の流行は、「バリアフリー」

段差(だんさ)が少なく、車椅子 (くるまいす)でも、移動(いどう)ができるように作られていたりする タイプだ。

この4000万円前後のマンションは、都心まで1時間程度で、駅に近く、 通勤に便利な場所にある。 同じところで、新築の家をたてると、6-7000千万円ぐらいかかるそうだ。 普通のサラリーマンには、買えない値段である。

 


 
08 / 27

ラーメン屋の調理場(ちょうりば)の中の会話。11時半ごろで、 忙しい時間だ。
電話が鳴った。

「出前(でまえ)? すみません、お昼時(ひるどき)は、やってないんです」
「え、はい、昨日は、12時にお電話いただいたんですが、お届けが、2時 ごろに
  なっちゃって」
「はい、すみません。2時すぎから、大丈夫です」

電話を終えて。

「昨日、私、怒られちゃったのよ」
「麺(めん)がこなかったのよね」
「そう、ラーメンやなのに、そばができませんとは、言えないしね」
「あの業者も、いいかげんだな。お昼、過ぎてから 持ってきてもな」
「そうよ、お昼に、ラーメン、できませんじゃあね」
「まったくだよ」

この店は、開店(かいてん)したばかりで、まだ、出前がスムーズに 行かないようだ。材料(ざいりょう)を、持ってくる業者とも、うまく いっていないらしい。
良く言えば、「初々(ういうい)しい」 悪く言えば、「素人(しろうと)っぽい」ラーメン屋だった。

ラーメンは、まずかった。

 


 
08 / 30

最近は、骨董(こっとう)ブームだ。アンティークと言うことも多い。 中規模(ちゅうきぼ)の都市ならば、たいてい、月に一回は、どこかで 骨董市をやっている。全国を回っている業者(ぎょうしゃ)もいるらしい。

これとは別に、フリーマーケットも盛んだ。

自宅(じたく)の不要(ふよう)になったものを安く売る。特に、使う 期間(きかん)が短い子供の服などがよく売られている。 フリーマーケットへ行くと、日本に住んでいる外国人が大勢いる。
日本人は、まだ使えるものを、すぐに捨てることが多く、 生活用品が安く手に入るからだ。

 


 
08 / 31

骨董市(こっとういち)は、フリーマーケットとは、違って古いものが中心だ。

売り手は、プロばかり。 古物商(こぶつしょう)と呼び、免許が必要だ。
いろいろなルートで商品を入手する。最近は、古物商しか入れない マーケットで買うことが多いそうだ。骨董風の新品を作る工場から 仕入れることもある。

古くから行われている、最もオーソドックスなやり方は、地方を回って商品を仕入れてくる 専門の仕入屋(しいれや)から買う方法だ。

仕入屋は、田舎の蔵(くら)のある家などに赴(おもむ)き、 「すみませんが、中のもので、不要なものを売って下さい」 と、交渉(こうしょう)する。
見せてくれることになれば、 あとは、腕(うで)の見せ所だ。
安く買って、高く古物商に売り付ける。

しかし、こういうやり方は、最近はほとんどないそうだ。

骨董市に行くと、「それは、先週、蔵からみつけてきたものだ」 などと言う。
買うほうは、「ああ、そう」と、適当(てきとう)な あいずちを打つ。

うそだと分かっていても、こういうやりとりが、楽しみのひとつでもある。

 


1999年07月


 
07 / 01

日本の医療制度は難しく、簡単に説明はできないが、私の知る限り、 主な病院の収入は、患者(かんじゃ)が払う三割の医療費と、国から 払われる医療補助費で成り立っている。

後者は、国民保険から払われるものだ。 現在、この国から払われる医療費の基準が問題となっている。

治療のうち、薬や検査に対してはポイントが与えられる。
つまり、かぜでも、「ゆっくり 休んで、ください」というより、注射(ちゅうしゃ)をし、薬を与え、 高い機械で検査をしたほうが、病院の収入はあがることになる。

特に老人医療などでは、この制度が原因で、問題が起きている。 老人が薬漬(づ)けになっているというのだ。 老人には、薬を与えたり検査をしたりする理由を見つけやすい。そこで 病院は、老人に精密な検査をして、病気を発見に努め、高価な薬を与えること になる。

 


 
07 / 05

病院との癒着(ゆちゃく)がしばしば問題になるのは、もちろん医薬品の会社。
そしてあまり知られていないが、葬儀屋(そうぎや)がある。

葬儀屋は、病院内の細かな仕事、死亡後の家族が葬式(そうしき)のために遺体(いたい)を住む家へ搬送(はんそう) することなどを肩代わりするかわりに病院内での情報をもらったり、立ち入りを 黙認(もくにん)されたりする。

大きな葬儀屋などでは、看護婦長にリベートを渡すかわりに、 「近々、死にそうな患者のリスト」を毎月、送ってもらうことも あるそうだ。

医薬品の会社との癒着では、どこの国でもあることだろうが、安くて質の高い薬が いつも採用されるとはかぎらない結果(けっか)を産むことになる。

病院内で力のある医者は、ゴルフをしたくなった時、まず、医薬品会社の セールスマンに電話をする。
「来週、ゴルフに行くんだけど」

あとは、ゴルフ場の予約から、送り迎え、食事まで、すべて用意してくれるとのことだ。

 


 
07 / 06

知り合いから聞いたある旅館の話し。

彼は、40才になった。子供は一人だったので、生活も少しは楽になった。
12月のボーナスで、ふと思い立ち、母親に一流の旅館の宿泊券 (しゅくはくけん)を送った。有名ではないが、小さな旅館で、品のよい 初老の女性が経営していた。

3日分で、3日目に、合流(ごうりゅう)する予定だった。 2日目に電話がなり、母親が倒れたとの知らせ。すぐに駆け付けたが、 間に合わなかった。
旅館の女主人は、いろいろと、手を尽くしてくれた。
最後まで宿泊費を 受け取らなかった。

翌年から、その旅館の女主人から年賀状と暑中見舞いが届くようになった。 彼は、しばらく、その旅館を訪ずれる気になれなかったが、七回忌(しちかいき)に、お墓参りをした時に泊まることにし、予約の電話を入れた。

旅館の玄関で、おかみさんは、迎えに出てきて、「よくおいでくださいました」 と言って奥に引っ込んでしまった。現在は、娘がきりもりしている。

旅館を去る時に少し歳をとったおかみさんは、「本当に…」といったきり、 絶句(ぜっく)してしまった。 彼も、「来年もかならず来ます」と答えてから、次の言葉がでてこなかった。 それから、毎年、彼は夫婦でそこに泊まるようになった。

彼によると

「七回忌で泊まった時、最初は、ふつうだったし、多分、いつもの料理で、 いつもと同じだったと思ったんだけど、何か、旅館の人がピリピリしている ようなかんじだった。オレは、もう、母親のことなんてむかしのことだと 思ってたけど、あのおかみさん、ずっと、気にしてたんだなあ」 とのこと。

 


 
07 / 07

今年の梅雨(つゆ)はどうもはっきりしない。いつ始まったかも 解らないし、多分、なんとなく終わるのではないだろうか。

日本のサッカー代表チームは、南米のパラグアイで、コパアメリカに出ている。
招待(しょうたい)されたのだ。
日本チームはコンディションも悪く、いいゲームはできなかった。 おそらく、代表メンバーは、半分以上、若返(わかがえ)ることになるだろう。

昨今、日本は経済の構造改革(こうぞうかいかく)が始まり、あらゆるシステム が変化(へんか)を求められている。毎日のようにどこかの雑誌や新聞で、 日本人はどう変わるべきかといった記事が書かれている。

また、日本人はこういう議論が好きなんですね。

南米での日本チームを見ていると、少なくとも彼等にかけているものは、 技術でも、組織力でも、知性でもなく、勇気(ゆうき)なのだということに 気付く。

日本のサラリーマンに、時にはチームプレイを捨てて、ドリブルで突破 (とっぱ)する勇気はあるだろうか。

 


 
07 / 07

「ひいき」と「かぶれ」では、意味が違う。

「ひいき」の人には、主体性を感じるが、「かぶれ」というのは、やや軽蔑 (けいべつ)を含んだ言い方だ。

例えば、吉田健一と言う人は、イギリスびいきだったと言われる。 彼は、イギリスの文学者や批評家(ひひょうか)の文章を引用(いんしょう) することが多かったように思う。洋服も酒もイギリス式。居酒屋も ロンドンのパブ風の店によく通った。アメリカ英語を嫌い、オックスフォード なまりの英語をしゃべった。飛行機会社は、いつも英国航空であった そうだ。

彼がイギリスかぶれと呼ばれなかったのは、よい作品をたくさん残した からだろう。小説を見る目は確かだった。

さて、今、日本には、日本かぶれといったかんじの外国人が多くいる。

彼等は、子供の頃、日本のアニメーションで育った世代だ。20代が多く、 男性の比率が高い。もちろん、できれば、日本人のガールフレンドが 欲しいと思っている。部屋は、日本のアニメや、まんがでいっぱいだ。 彼等の中には、日本のものならなんでもいいという人もいて、こちらとしても うんざりさせられる存在だ。

彼等が「日本びいき」なのか「日本かぶれ」なのかを、分けるのは、 日本語の能力だ。

変な漢字を書いたTシャツを着るのは止めた方がいいと思うよ。

 


 
07 / 08

魚に対する感覚の鋭さは、日本人の長所(ちょうしょ)ではないだろうか。

生で食べることが多い日本では、素材(そ ざい)の鮮度(せん ど)や 捕(と)れた時期(じ き)などに非常に敏感(びん かん)になる。

「鈴木さんと飲みにいったら、さしみがまずいって言うんだよね」
「ああ、鈴木さん、北海道出身だもの」
「そうか。北海道に較べるとね」
「でも、一番おいしい魚は築地(つき じ)に行くらしいよ」
「そう? 本当においしい魚は漁師(りょう し)の人達が食べてるん じゃない」
「それ、よく聞くけど、実際は、売ったほうが儲かるから、食べないん だって」
「そうか、いつかテレビで見たけど、長い間、漁(りょう)に出る時の 昼飯
  (ひるめし)がうまそうだったなあ。まぐろの刺身(さし み)を しょうゆで
  漬(つ)け込んだのを、ごはんの上に載せて、冷(さ)めた みそしるをかけて
  食べるやつ」
「ああ、ひょっとすると、そういうのが世界で一番うまい昼飯かもね 重労働
  (じゅうろうどうどう)のあとだし」

*築地(つき じ)は東京の魚の市場。

 


 
07 / 13

東京で引越しをする方法は2つある。

ひとつは、引っ越し業者に頼むこと。ひとり分の荷物で東京の中での引越し なら、5万円以内で大丈夫だ。

自分でレンタカーを借りてやる方法もある。これは、レンタカーを6時間借りて 約1万円。手伝ってくれる人に夕食などをおごっても全部で2万円くらい。

学生などは、レンタカーでやることが多い。
しかし、日本は、広い。
例えば、北海道から九州へ引越すと、引越し代も約4倍になる。

普通、転勤(てんきん)などでは、会社が引越し費用(ひよう)を出してくれるが、平均で20-30万円ほどだそうだ。

 


 
07 / 14

古本屋で本を買う人は多いが売る人は、そのうちの3%ほどだそうだ。

文庫本(ぶんこぼん)などは、よほどめずらしいものでないかぎり、 「1mで200円」ぐらいだ。 その他、ハードカバーでも、若い人などに人気があり、すぐに売れそうなものは 100円ぐらい。 あとは、やはり「1mで、500円」といったかんじだ。

私は先日、本を500册ほど古本屋に売ったが、2000円であった。 どうして、こんなに安いかというと、ほとんどの本は、その古本屋で買ったもの だったからだ。

その古本屋は、品が良く、値段も良心的(りょうしんてき)だった。
実は、引き取ってもらえるだけで、感謝している。
また、これで、商売をしてください。

 


 
07 / 16

夏休みはサラリーマンは1週間から10日ほどの休みをとる。 家族旅行をする人が多く、そろそろその申し込みの時期も終わりつつある。

「すみません、8月の10日から1週間くらいの計画なんですが 」
「御家族で、旅行ですか?」
「ええ、子供2人です。両方とも小学生です」
「どちらの方面を御希望ですか」
「シンガポールを考えているんですが」
「はい、少々、お待ちください。。。こちらが親子パッケージになっております」
「4泊5日ですか。いいですね。この基本料金っていうのは」
「往復の飛行機代と、その他の移動にかかる費用。すべての宿泊費と朝食代です」
「ああ、昼飯と晩飯はオプションなのね」
「ええ、夕食込みのパックもございます」
「面倒(めんどう)だから、それでいいかな。いくらになりますか」
「お子さまの料金は70%になりますので、こちらになります」

旅行代理店の人は、電卓で、料金をお客に見せた。
最近は、お金の額(がく) を言わずに、こうやって、お客に見せる店が増えた。
まわりの人に聞こえないようにという配慮(はいりょ)からだ。

お客は、ちょっと高いなという顔をしたが、やがて仕方ないといった風に うなずいて 「これでいいですよ。お願いします」 と言った。

 


 
07 / 19

新聞と洗剤は深い関係がある。 日本に住んでいる人ならピンとくるはずだ。

新聞は、日本では宅配(たくはい)される。大手の新聞社は1000万部(ぶ) を誇っている。 大手と言われる新聞社は3つほどあり、それぞれが営業のために雇う人を 新聞拡張員(かくちょういん)という。

10年ほど前は、この拡張員はひどかった。ほとんどヤクザと変わらない 容貌(ようぼう)で、「あなたが契約しないと帰れない」なんて 言ったりしたものだ。

拡張員は法律の改正でずいぶんマナーはよくなったが、今も変わらず彼等の 大事な武器(ぶき)は、洗剤だ。 契約してもらった時の景品だ。

たくましい主婦は、3ヶ月ごとに、契約する新聞を変えて、その度に 洗剤を3つほどもらう。 「洗剤は買ったことがない」というのが、彼女たちの自慢でもある。

 


 
07 / 21

昨日は、「海の日」だったそうで、休日だった。

20日は学校の夏休みが始まる日でもある。8月の末までの40日間が休みだ。
7月中は、海水浴場(かいすいよくじょう)も混み合う。8月になると、 海にくらげが増え、刺されるので、泳ぐなら7月のほうがいいからだ。

しかし最近は、海では、泳がない人が増えた。人は多いし、あまりきれいではないし、 くらげもいるからだ。

子供のころは、「海に来て、泳がないなんて、大人はバカだなあ」と 思っていたが、自分が大人になってみると、あまり泳ぐ気がしなくなった。

沖縄(おきなわ)や離島(りとう)の海以外は、泳ぐ価値(かち)は なさそうである。

 


 
07 / 22

今日は夏らしく夕立(ゆうだ)ちだった。
日本の夕立ちは、文字どおり主に夕方で、 長引くのが特徴(とくちょう)だ。

日本人のビジネスマンを象徴(しょうちょう)するもののひとつとして 名刺(めいし)がある。日本の名刺は、PCカードほどの大きさで、名前と 会社の肩書き、会社の連絡先は、必ず書くことになっている。 日本のビジネスマンは、100%持っている。

この日本の名刺には、肩書(かたが)きが多い。会社での肩書きの他、何か 団体の肩書き、中には、これまでに得た賞を書いたりする人もいる。 大きな会社の社長の名刺などを見ると、裏に、びっしりといろいろな団体名が書いてあることがある。
セールスマンなどは、写真入りのものも使うことがある。

この名刺は、会社で作ってくれるが、自分ですきなものを作ることもできる。

100枚で2000円程度だ。最近は、会社とは別の名刺をプライベートで使う ために作る人も多い。デザインに凝(こ)ったり、趣味を書いたりして、 自己紹介を兼ねるものが多く、携帯電話の電話番号や自宅で使うメール アドレスを書いたりする。

 


 
07 / 23

文芸評論家(ぶんげい ひょうろんか)の江藤淳氏が、亡くなった。66才。 死因(しいん)は、自殺(じさつ)。

今年、奥さんをがんで失い文芸雑誌に、そのことについて書いていた。 痛々しい文章だったが、書くことによって癒(いや)されいて いく手ごたえが感じられ、ひさしぶりに生々しい大人の文章を読んだ気がした。

江藤氏が書いた夏目漱石に関する文章は、100年後も200年後も読まれて いくに違いない。戦後史に関する著作も、重要なものであることは 間違いないが、本来、この人は、批評家で、文学を生きた人だった。 文学者の生(き)の資質(ししつ)に最も早く、敏感(びんかん)に 反応(はんのう)する人だった。

才能は若くから開花し、20代の前半に 書かれた著作のほとんどは、戦後を代表する批評となっている。

批評(ひひょう)ばかりではなく、犬の愛好家としても知られ、愛犬について書かれたエッセイも多い。身辺雑記風のエッセイも何冊か出版 されている。
気楽に書かれたこれらの文章は、上品で、読む愉(たの)しみに満ち あふれていた。個人的には、最も好きな文章だった。

江藤氏の死因が自殺と聞いて、ショックを受けたが、しばらく考えて、 「しかたがない」と考えるようになった。しかし、この「しかたがない」は、 暗澹(あんたん)たる「しかたがない」でもある。 私は、江藤淳が自殺する時代に、国に住んでいる。といったような。

どうか、奥様と安らかに。

 


 
07 / 26

日本の夏でよく紹介されるのは、花火や、浴衣(ゆかた)などだが、意外と知られていないのが、麦茶(むぎちゃ)だ。最近ではウーロン茶も 人気がある。

これを冷蔵庫で冷やしておく。夏の家庭(かてい)には、必ずある。

昔は、一旦、お湯を湧かして、麦で漉(こ)して作ったが、最近はティーバッグのような簡単に作れるパックがある。

これを水に浸(ひた)しておけば、2時間ほどで出来てしまう。

自動販売機(じ どう はん ばい き)で買うこともできる。350mlで120円。
お茶や、麦茶、ウーロン茶などのお茶は、夏場は、コーラやアイスコーヒー
よりも売れるそうだ。

 


 
07 / 27

洗濯機(せんたくき)や掃除機(そうじき)は、いろんな種類のものがある。

最近の流行は、両方とも音が静かな工夫をしたもの。 マンション住まいが多くなった影響もあるのだろうが、新しい理由としては、 働く女性が増え、洗濯や、掃除を夜や朝などにすることが多くなったからだ とも言われている。

「従来の機種の70%の音をカット!」などという広告をよく見かける。 「当社開発の独自のリングで、音が半分以下に!」という広告を見て、

「ねえねえ、これ、欲しいよ、買おうよ」などと女性が言う。
男性は、「ああ、でも、この前、買ったばかりだよ」
「でも、もう4年くらい使ってて、あれ、うるさいのよ。ほら、下の 山崎さんってさ『おたくのお子さんは元気ですねえ』なんて嫌みっぽいの 掃除する時に、いつもヤマザキさんの顔がちらつくのよ」

こういうとき、男性は、(その騒音が半分になるリングは、人間には つけられないのかなあ)と考えているに違いないのである。

 


 
07 / 28

秋葉原(あきはばら)は、電気街として有名で、10年前は、家電(かでん) とオーディオだったが、今は、パソコンに占領(せんりょう)されている。

この街は、毎日のように電気機器を入れる紙の箱が大量に出る。
これを段(だん)ボールという。
この段ボールは、リサイクルが可能で、キロ単位で売ることができる。 これを専門に回収(かいしゅう)している業者(ぎょうしゃ)も多い。

段ボールは、いろいろな利用方法があり、押し入れの整理に使ったり、 本などを入れたりする。スーパーなどでも、無料で持ち帰ることが できるコーナーがあったりする。

最もこの段ボールを有効に利用しているのは、浮浪者(ふろうしゃ。最近は、ホームレスと呼ぶことが多い)で、 新宿の駅の近くでは、 彼等の作った段ボール製の家を見ることができる。

 


 
07 / 29

新聞配達(しんぶんはいたつ)は、ひと昔前は、小学生や中学生にとって 大事なアルバイトだった。クラスに2.3人はいたものである。

しかし、最近は、アルバイトの種類が増えた。新聞配達は、あまり割のいい アルバイトではなくなっているせいか、人気がない。

新聞奨学生(しょうがくせい)というのは、新聞の配達をする学生に、大学 などへ行く学費(がくひ)を補助する制度だ。いろんな種類がある。 この奨学生制度を利用する学生は、まだ多いそうだ。

 


 

 

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1999年06月


 
06 / 02

イザベラバードは、イギリス人の女性で来日して、横浜から北海道まで、歩いたり、人力車(じんりきしゃ)に乗ったりして旅行をした。 ガイドとして、英語が話せる日本人を雇った。

さて、面白いのは、この旅行が120年前であったということだ。

当時、旅行作家として、そこそこに有名であったバードは、虱(しらみ)に 悩まされながらも、ガイドとともに、旅行を終えた。 その記述は、現代の日本人にとっては、貴重な資料となっている。

明治から戦後にかけて、多くの文化人類学者が日本をおとずれ、多くの 書物(しょもつ)を残した。当時を物語る貴重な写真やスケッチなどは、 今、日本では、多数出版されている。

この「日本奥地紀行(にほんおくちきこう)」は、バードが、学者でなかったことが 幸いして、率直(そっちょく)で、興味深い観察(かんさつ)に満ちている。

いくつかのスケッチも楽しいが、文章の描写も的確(てきかく)だ。 幸運だったのは、120年前の日本では、旅行は、歩くのが一般的であったので、道も よく整備(せいび)されていたし、ちょうど一日歩いたところには、 宿場町(しゅくばまち)と呼ばれる宿が密集(みっしゅう)している場所が あったことだ。

現在、完全な形で宿場町(しゅくばまち)が残っているのはわずかだ。

90年代に入っても外国人が日本を歩いた旅行記が出版されているが、 そのほとんどは、アスファルトであったと思われる。

土の道は、足にやさしい。 120年前イギリス人の足を守った土の道は、現在、東京で見るのは難しいが、唯一、イギリス大使館の前の道は、鋪装(ほそう)されていない。 これは、イギリスからの申し出だそうだ。

“Unbeaten Tracks in Japan” by Isabella L.Bird

 


 
06 /03

今では貴重となった江戸時代の木造の旅籠(はたご)が、約1キロのみちの 両側にずらりと並んでいる。 今でも民宿を営んでいるところもあれば、みやげ屋になっているところもある。

東京から遠いことが 幸いして、観光客が少なく、静かな雰囲気が残っている。
この 小さな街の人たちは、話し好きで、素朴な人のよさを感じる。
「あまり、観光客が増えるとたいへんだから、いまのままでいいですよ」 なんて、みやげ屋の人が言ったりする。

ほとんどの民宿は、朝と夕食がついて8000円前後だ。 日本の三大漆(うるし)の産地のまん中にあり、質のよい漆器(しっき)を安く買うことが できる。

さすがに、最近は、外国人もちらほら姿を見せるらしい。 その場所に知人を5人ほど案内することになった。明日、向かう予定だ。 場所は、秘密にしたいところだが、このコラムを読む人には教えましょう。

駅名は「奈良井(ならい)」。東京から、中央本線で塩尻(しおじり)まで行き、そこから、名古屋方面へ、4つほど行ったところにある。 この沿線には、古くからの宿場町がいくつか残っている。

あまり、人に教えないでください。人が増えると、また、次のよい所を 探さなければならないから。

 


 
06 /04

ある日、近所の電話ボックスの中で、女性が呆然(ぼうぜん)と立っていた。

私は、隣の電話ボックスで電話をかけていた。 私が、電話をかけ終えたころには、隣の女性も話しを終えたらしく、 ボックスの前で思いつめたような顔をしていた。

女性は、「すみません、この電話番号のところへ、電話をして、 よしあきさんという方を呼んでいただけませんか」と言った。

私は、ちょっと考えて、彼女の言う通りにした。 中年の女性が電話に出て、その手にはのらないよというように 「ああ、はいはい、いないよ」 といった。

(いないって、言ってますよ)と、小声で女性に言うと、その女性は、 (そんなはず、ないんです。いるはずなんです。)と小さな声で言って泣き出した。

中年の女性は、電話をきった。 「きられましたよ」 と女性に言うと、 「ありがとうございました。ごめいわくをかけました」 とその女性は、言った。

その電話ボックスの前は、今でも、週に一回、通る。 時々、あの時、とっさに、うまいことを言って、よしあきさんを呼び出すこと ができたのではないかと考えることがある。

 


 
06 /07

「職人」という言葉は、かつて、日本では、光りを放っていた。 「職人的」といえば、丁寧で、誠実な、という意味があった。

先日亡くなったジャズ歌手のメルトーメは、しばしば、「職人的な」と形容された 歌手だった。数種類の楽器をこなし、作曲家としても粋(いき)な曲をたくさん 書いている。スキャットは、最高だった。 彼は生粋(きっすい)の芸人で、子供のころから、音楽は生活の糧(かて)を 得る手段だった。

正直いって、「華がある」とは言えないが、時々、彼の歌が流れて くると、ぜいたくな気分になれたものだ。

さて、最近の日本では、「私は**の職人と呼ばれたい」という声をよく聞く。 しかし、私は、ちょっと疑いを持っている。彼等、彼女達は、ほんの数年の 経験で、一人前になったつもりでいる。 自ら設定したハードルが低いのだ。

職人を気取ることを「職人風を吹かす」といって、昔から、最も野暮なことだと 言われてきた。

こういう人が増えた。

 


 
06 /08

日本のテレビコマーシャル、特に、電化製品やビール、車などは力を入れている。広告の予算も、他の商品とは、ひと桁(けた)違うそうだ。 予算のほとんどは、特殊撮影(とくしゅさつえい)と出演者のギャラに使われる。

ここ最近、アーノルドシュワルツネーガーは、出っぱなしだ。 今では、シュワちゃんと呼ばれている。

ハリウッドの俳優(はいゆう)で日本のテレビコマーシャルに出て、最初に 有名になったのは、チャールズブロンソンだろう。

60年代以降、アクション映画で活躍した俳優で、口ひげが印象的だった。 彼は、アメリカではあまり人気はでなかったが、日本では、一時、日本の女性の セックスシンボルだった。 ブロンソンには、モンゴル人の血が流れているらしい。

現在は、もちろん、レオナルドデカプリオやブラッドピットなどは、すでに いろんなコマーシャルに出ている。

 


 
06 /09

最近は、若い陶芸作家の作品を買うのがブームになっている。

理由はふたつ。

ひとつは、若い作家は洋食器や新しい生活のスタイルに合わせたものを 作りはじめたこと。
もうひとつは、密かに投資(とうし)の楽しみもあるからだ。

陶芸家の世界は複雑だ。

基本的に、有名な先生の元で長年、勉強して、地元の長老に認められなければ、生活は安定しない。

しかし、若くて新しい感覚の持ち主は、雑誌などで認められれば、独立する チャンスもうまれてきた。 そのため、最初から自分の器(うつわ)にも高い値段をつけ、出版者に手紙を 書いたりする若い陶芸家も増えた。
当然、くだらない物もふえた。

難しいものですね

 


 
06 /14

現在、日本で温泉と呼ばれているものには、およそ3種類ある。

ひとつは、鉱泉(こうせん)。これは、源泉(げんせん)の温度が25度以下のもの。このままでは、入れないので、湧かすことになる。
日本ではお風呂の適温(てきおん)は、40度前後と言われている。

もうひとつは、循環(じゅんかん)温泉と呼ばれるもので、これは温泉の成分(せいぶん) や匂いなどを一度、ろ化したもの。最近は、強い成分の湯と 温泉独特(どくとく)の硫黄(いおう)のにおいが嫌われる傾向があり、 増えているという。
本当の温泉好きは、これを軽蔑(けいべつ)する。

最後は、温泉。源泉(げんせん)の温度が25度以上のもの。

一般的には鉱泉は温泉より一段落ちると考えられていて、源泉の温度の 測定(そくてい)の際には、地元の政治家から、旅行会社の重役まで、 あらゆる手段を使って温度をごまかし、「温泉」という名前を得ようとする らしい。

むしろ、「鉱泉」と名乗っているところのほうが、正直で、 よい観光地(かんこうち)かもしれない。

現在では、源泉の温度が50-60度で、それを冷(さ)ましているいるような 堂々
(どうどう)たる温泉は、それほど多くないらしい。

 


 
06 / 15

かつて、温泉は、病院であった。温泉地は、肩凝(かたこ)りにいいとか、 傷(きず)の直りが早いとか、胃腸(いちょう)の病気に効くなどの 効能(こうのう)を競(きそ)った。

実際に、温泉療法(おんせんりょうほう)は、現在でも信じられており、 温泉旅館に1ヶ月ほど滞在し、毎日決められた回数、温泉に入る人たちがいる。 これを湯治(とうじ)といい、湯治客のための長期滞在者用の宿は、 自炊式(じすいしき)で、一日2000円ほどで泊まれる宿も少なくない。

草津(くさつ)などは、江戸時代から全国的に有名な湯治場で、人気も常に 一番であった。 ドイツでも、このような温泉療法は行われている。 これらの効能については、あるていど科学的に証明されたものもあるが、 そうとう集中的に入り続ければいけないそうだ。

群馬(ぐんま)県の温泉地では、温泉の近くに病院を作り本格的に温泉治療をやっているところもある。 また、日本の競走馬(きょうそうば)は、年に数回、温泉地で休養する。

 


 
06 /16

温泉に行こうと考えた時、最初に思い浮かぶのは、有名温泉地の温泉旅館だろう。 最近は安いものも増えていはいるが、だいたい一泊2食付で 10000円から20000円だ。

最近の流行は、露天風呂の「かしきり」だ。数に限りがあるので、 予約が必要で、だいたい通常の料金の2割り増しくらい、 客は専用の露天風呂の入り口の鍵もらう。
家族風呂は、家族で、かしきりができる風呂。これはもちろん、恋人同士でも 借りられる。 旅館に泊まらなくても温泉だけに入れることもある。その場合、値段は、 まちまちだが、1000円前後だ。

温泉地によっては、だれでも安い値段で入ることができる温泉を 用意しているところがある。これを外湯(そとゆ)といい、いくつかの外湯を 入った人に記念品(きねんひん)を出したりして アイデアを競っている。

最近は、女性専用の露天風呂も多い。 15年ほど前は、温泉は、男性の風呂のほうが大きいのが常識だったが、 今や、温泉旅館にとって女性は最も大事なお客さんとなっている。 男性は、女性より小さな風呂に入らされる。

混浴(こんよく)というのは、男女共用の露天風呂で、 水着を着て入ることになるが、老人などは、裸で入ってしまうこともある。 出会っても驚かないように。

 


 
06 /17

最近は英語のガイドブックもある秘湯(ひとう)というものがある。ほとんどは、不便なところにある。

東京からは、最寄り駅まで、2時間。そこから、車と歩きでさらに1時間くらいは覚悟しなければならない。

お湯の量が少ないこともあって、有名温泉地のように大型のホテルはなく、木造の小さな旅館が3つくらいあるというのが一般的だ。川のほとりで、川の水で薄めながら入る温泉や、谷の底まで、15分ほど降りていかねばならないところもあり、これがなかなか楽しい。

熊や猿が入りに来ることもある。

 


 
06 /17

ある不動産屋(ふどうさんや)で。客は、若い男性。受け付けは女性。

男性     「すみません」
受け付けの女性「はい、いらっしゃいませ、どういったものをお探しですか」
男性     「ええと、3LDKですけど。予算は13万円くらいで」
受け付けの女性「はい、ご家族でお住みになるんですか」
男性     「ええ、私と両親と三人です。」
受け付けの女性「あ、そうですか。では、契約者(けいやくしゃ)は」
男性     「父になると思います」
受け付けの女性「そうですか、お父さまのお仕事は」
男性     「今はほぼ、年金ぐらしです。」
受け付けの女性「そうすると、お年は」
男性     「71です。」
受け付けの女性「ああ、それだと、ちょっと難しいかもしれませんね。」
男性     「えっ、どうしてですか」
受け付けの女性「お年寄りは、ちょっと困るって方が多いんですよ」
男性     「どなたが困るんですか」
受け付けの女性「いえ、大家さんのほうがね」
男性     「しかし、年金で十分、払える範囲だと思いますから、問題ないと         思いますけど、現在は、健康ですし」
受け付けの女性「そうですねえ。すると、ご収入は、、、、」

この後、この人は、父親の収入と自分の収入、父親の仕事、母の年齢など いろいろと質問され、うんざりした様子だった。この調子だと、父親が死亡した 場合の収入の変化なども聞かれるに違いない。幼児(ようじ)を嫌う大家もいる。理由は老人の場合と同じで、「よごれるから」である。

この不動産屋は、日本でも 大手の会社である。 このように現代の日本では、老人は引越すのも難しい。 5年後には、日本は世界一の老人大国になるというのに。

 


 
06 / 21

さて、これは、小淵(おぶち)さんの、ケルンでの記者会見(きしゃかいけん) を聞きながら書いています。

総理(そうり)は、これからの教育問題について、コンピューターと英語教育 の必要性を説いたそうだが、私の知る限り、総理は、両方ともできないはず である。おそらく、日本の国会議員で両方できるのは、1%程度ではないかと 思われる。

ドイツのケルンは、日本人にとってなじみがあるとすれば、サッカー だろうか。日本で最初のプロサッカー選手である奥寺(おくでら)氏は、 ケルンの1FCケルンというチームで活躍した。当時、日本のサッカー界はドイツの影響が強く、ドイツリーグは、 世界一のリーグであった。

となりのデュッセルドルフは、日本人のビジネスマンが多いことでも 知られている。 この地域には、たしかヨーロッパでも最も早い時期に寿司屋ができたはずだ。

私は個人的にはサミットには、まったく興味がないが、次回の場所である 沖縄(おきなわ)は、日本でも独特の文化を持った美しいところだ。

サミットなんて、どうせ、たいしたことは決まらないんだし、ジャーナリストには、ゆっくりと 沖縄観光を楽しんでほしいものだ。 沖縄の美しい音楽の響きや、沖縄の人々のおおらかな人柄が、テレビを通して、 世界中に伝わるならば、サミットもまだ捨てたものではないと思う。

 


 
06 /22

日本ではイギリスのBBCのアンティークの番組が放送されている。 たびたび、日本の骨董(こっとう)が、紹介され、そのほとんどに高い値 がつく。しかし、知人によると、日本国内の相場(そうば)よりは、安いそうだ。

日本の骨董の特徴は、製作者(せいさくしゃ)の名前が分からないことが 多いことではないだろうか。 絵や、一部の陶磁器(とうじき)を除いて、作者は、ほとんど自分の名前を 作品に入れない。これは、一種、日本的な美意識(びいしき)かもしれない。

現在でも、陶磁器や漆器(しっき)、家具を作る人々の間では、「芸術家か職人か」 といった論争(ろんそう)が絶えないという。 この場合、問題になるのは、高すぎる値段であったり、作家の匿名(とくめい) 性であったりする。 自らを職人と呼ぶか、芸術家と名乗るかは、難しい問題だ。

私は、個人的には、芸術家というコンセプト自体がもう古いと思っている。

 

 


 
06 / 24

日本には雑誌がたくさんある。その中で主婦向けの雑誌は、 常に人気(にんき)だ。 戦後、婦人雑誌と呼ばれたその種の雑誌は、3種類ぐらいであった。

料理や、姑(しゅうと)との関係、そうじや、せんたくのやりかたなどが 主な記事だった。避妊(ひにん)に関する知識なども、さりげなく書かれていた。 毎年、1月に家計簿(かけいぼ)が付録(ふろく)についた。

現在の主婦向けの雑誌は、主に3つに別れる。 ひとつは、昔からの総合雑誌で、どちらかというと保守的な家庭向けだ。 最近、やっと、仕事と家事(かじ)の両立についてきちんと書きはじめた 印象がある。社会的な記事も意外と多く、知的な主婦向け。

2つめは、料理や、商品の情報が中心の比較的若い世代に向けた雑誌。 ここで扱われる料理はイタリア料理やフランス料理が多く、レストランや 旅行などの情報も満載(まんさい)だ。実は、最も保守的な雑誌で、対象は、専業主婦 (せんぎょうしゅふ)だ。

3つめは、働く女性を意識した雑誌で、紹介されている記事にも仕事と 家庭の両立などが主なテーマ。特集(とくしゅう)は、「個人でもできる 株特集」だったりする。しかし、ほんとうに働いている女性は、こういう 雑誌は買わない。

実は、2つめの、情報雑誌が最もよく売れている。読者層(どくしゃそう)は 狭いアパートに住んでいる若い主婦。彼女達の悩みは、収納 (しゅうのう)だ。
さまざまなアイデアが読者によって提案(ていあん) される。

 


 
06 /25

近所で最近、野良猫(のらねこ)が子供を産んだ。 おばあさんと若い男性

男性   「3びき?ですか。生まれてましたね」
おばあさん「ああ、ねえ、困っちゃうんだけどねえ」
男性   「ああ、そうですか、おしっこするんですか」
おばあさん「いや、そうじゃないけど、向かいの鈴木さんが嫌いみたいでねえ」
男性   「ああ、そうですか」
おばあさん「最近、町内会(ちょうないかい)でも厳しいのよ」
男性   「あれ、えさは、だれがやっているんですか」
おばあさん「(小さい声で)私が夜、やってるの」
男性   「ああ、そうですか、実は、私も時々、パン置いたりしてます」
おばあさん「ああ、あれ、牧さんだったの、小さくてかわいいのよね」
男性   「そうなんですよねえ」

男性によると、これまで4年間、親猫は、心を開いてくれなかったが、 子猫へのえさで、和解(わかい)したそうだ。 こうやって、東京には野良猫が増えるのである。

 


 
06 /28

日本には病院がたくさんある。 すべて、国の保険に加入していれば、医療費は7割引きになる。 医者に行って、注射(ちゅうしゃ)をして、薬をもらって、1回500円から高くても 3000円くらいだ。

主なものは大学に付属している病院。医療の質も高く、設備も充実しているが 施設も古く、常に混んでいて、サービスも悪い。 例えば、治療(ちりょう)を終えて、薬をもらうまで早くて3時間くらい だろうか。私立大学と国立大学では、もちろん私立大学のほうが設備が 整っている。

次は公的な病院。国立の病院や保険や年金(ねんきん)などでたてられたもの。 治療費(ちりょうひ)は最も安く済むことが多い。 他は大学の病院とほとんど同じ。設備はやや劣るそうだ。

次に私立病院。グループに所属する大手のもの(チェーン店のようなものだ) と個人病院にわかれる。後者のほうが小さい。

次に診療所と呼ばれる小さな病院。名称(めいしょう)は、法律で決められているようだ。医者は一人であることが多く。都会の ビルの一室や、小さな島などにある。都会では「クリニック」と呼ぶことが 多いようだ。

 


 
06 /29

日本の病院の最も大きな問題は、いろんな種類の病院があるが、その連携 (れんけい)がうまくいっていないということだ。

例えば小さな病院で治療して、もっと詳しく検査(けんさ)したほうがよい となったとき。 その医者は、自分と同じ大学を卒業した医者のいる病院を紹介することが多い。 近くに設備が整った病院があってもそこにいくことはできない。

インターネットを使って合理的なネットワークを作ろうとしているようだが まず、この学閥(がくばつ)という古いネットワークを断つことが先決だ。

我々のような一般の人間でも、「あの病院は慶応(けいおう)系」とか「あの病院は東大(とうだい)系」 などと病院の種類を大学の名前で呼ぶことがある。

いちばんの問題は、自分が住んでいる地域の小さな病院に行くより、最初から 都心にある大きな病院を選ぶ傾向が増えることだ。

もし、家の近くに信頼できる医者がいて、大きな病院との連携もしっかり していたら、いつも、混んでいて、流れ作業のような診察の大きな病院には 行きたくないのに。

 


 
06 / 29

医者の志望者(しぼうしゃ)は減り続けている。 原因は、10年ほど前から、医者が多すぎるという報道が始まったことと、 医者の実態が本や雑誌などで紹介され、必ずしも楽な仕事ではないという ことが一般にも知られるようになったからだ。

通常、大学で4年勉強し、国家試験(こっかしけん)に合格したものは、 医者の卵(たまご)などと呼ばれ、病院で研修(けんしゅう)を受けることに なる。 研修中に就職先を探すわけだが、自分の大学の付属病院で研修を続ける人が多い。

いわゆるエリートコースだが、これが非常にハードな仕事らしい。 若い医者は、あらゆる仕事を覚えなければならず、勤務時間も不規則(ふきそく)だ。 先輩の医者に誘われれば一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりといったこと も欠かせない。
給料は安い。

運良く父親が医者であったり、お金持ちであったりすると、自分の病院を 建てることができるが、最近は中小の個人病院は経営が難しく、これも 大変な選択となる。