2001年01月


 
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日本の本州(ほんしゅう)の端(はし)にある五能線という鉄道路線は
以前から景色のいい路線として知られていた。

海岸線だが、トンネルがほとんどなく(日本の鉄道はトンネルが多い)
海が見える。 反対側は、ユネスコの世界遺産(せかいいさん 。The world inheritance)に選ばれた白神(しらかみ)山地が広がる。

大平洋岸の地域が温暖な気候に恵まれているのに比べて日本海側は雪も多く
曇りがちで、波も荒い。気のせいかもしれないが、海の色も少しくすんで
いるようだ。スコットランドに似ているかもしれない。

この海の色を見るだけでも価値がある。

五能線(ごのうせん)は、秋田と青森にまたがった路線で、4時間ほど かかる。
最近は、この路線を楽しむための特別な列車も走っており この地方独特の三味線(しゃみせん)の演奏も車内で聞けるそうだ。

 


 
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20世紀の初頭、つまり、1900年ごろ日本はどんな国だったか。

歌舞伎(かぶき)、落語の全盛期で、鉄道、映画もすでにあり、庶民 (しょみん)もその娯楽を楽めるようになっていた。

学校が整備され、義務教育が小学校の4年までだった。
大学の創設(そうせつ)も多くみられた。

19世紀後半の世界的な状況に追い付こうと無理をした時期でもあり
少しづつほころびも見られた。
金融恐慌(きんゆうきょうこう)がおこり、東京ではペストが流行した。

1900年は、元号(げんごう)で言うと明治(めいじ)33年。

この頃に活躍したジャーナリストの宮武外骨(みやたけがいこつ)が 翌年
個人で滑稽(こっけい)新聞の発行を始め、その人気は 大手の新聞社に
せまる勢いだった。

 


 
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宮武外骨(みやたけ がいこつ 1867-1955)は明治のはじめに生まれた。

1889年、22才の時に当時の憲法(けんぽう)のパロディを発行し、3年間
投獄(とうごく)される。その後、台湾(たいわん)に逃げたり、捕まったり
を繰り返しながら、パロディ雑誌を次々と発行する。

滑稽(こっけい)新聞は、代表的なもので発行は1901年の1月25日。
ちょうど今から100年前になる。

この新聞の面白さ、この人の楽しさを伝えるのは難しい。滑稽新聞は現在
本になって出版されている。
外骨について書かれた本もたくさんある。

単に反骨(はんこつ)のジャーナリストと言ってしまうのは簡単だが、それだけでは、この人の面白さは伝わらない。

なにしろ社説に。
「買わなくてもいい」とか
「付録(ふろく)はない。付録が 目的で新聞を買うような奴はろくなものではない」
などと好き勝手なことを 書いている。

当時をしのばせる薬や化粧品の広告も面白い、が、ふと横を見ると
そのすぐ隣に同じ広告の自作のパロディがあったりする。

「過激にして愛嬌(あいきょう)あり」というのがこの新聞の宣伝文句
でもあった。 日本の歴史上の人物で、もっともサイトを作ってほしい人だ。

外骨の研究家によるサイトは http://www2s.biglobe.ne.jp/~dolly/ にあります。
外骨の文章は、ここhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~dolly/download.html に
フリーのテキストがある。

古い日本語で少し難しい。 自信のある人はどうぞ。

 


 
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年末年始の行事は、地方によって違うが、大みそかから元日にかけて
近くの神社に行き、1年の無事を祈るというのがふつうだ。
神社の近くには、夜店(よみせ)が並び、お祭り気分だ。

もうひとつの大事な行事がある。 暴走族(ぼうそうぞく)の卒業式だ。
いつのころからは、わからないけれども、31日に暴走族は卒業式をするように
なったそうだ。人手の多い時に、道路を暴走し、度胸(どきょう)を試す。
もちろん、一般の人には迷惑だが、これがよい刺激となって、卒業式に ふさわしい舞台となるようだ。

暴走族というのは、だいたい10代までだ。車も少しはあるが、ほとんどが
スクーターで、50人程度のグループで暴走する。
小回りがきくので、警察 にはなかなか捕まらない。

20才になり、「卒業」すると、意外とふつうの仕事につき、どちらかと 言うと
保守的な人間になる。

自分の子供に 「人に迷惑をかけてはいけない」なんて言う親になったりする。

 


 
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「21世紀になったけど、あまり感慨(かんがい)はわかないねえ」
「まあね。やっぱり2000年になったときに一度、終った気がしたしね」
「2001から世紀が変わるってのは、理屈(りくつ)ではわかるけど」
「そうねえ、理屈が先行(せんこう)するからねえ」
「でも、30年くらいしたら、自慢(じまん)できるかもよ」
「30年で大丈夫かな」
「多分。『世紀の変わり目は、お酒飲んでたよ』とかって子供にね」
「ああ、変わり目を大人で経験する人って少ないかもね」
「どうなんだろう。数学が得意な人は確率がわかるのかもね」
「まあ、でも、今は記録するものが多いから、あまり意味もないかな」
「そうだな。20世紀が始まったことは資料はほとんど文字だけだからね」

 


 
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日本で暖房器具といえば、昔は火鉢(ひばち)、戦後はこたつと 石油ストーブ
今は、エアコンと電気ストーブが主流だろうか。

最近、売れているのは、加湿器(かしつき)だ。 これは、電気による暖房器具に
よる乾燥(かんそう)を防ぐため。
一万円ほどで、室内の温度が一定の湿度(しつど)に保たれるように なっている。

加湿器の出現(しゅつげん)というのは、火鉢や石油ストーブの時代には
あまり考えられなかったことだが、今の家やマンションは密封性 (みっぷうせい)
が高く、あっという間に乾燥してしまう。

また、現代の住宅では、火鉢や石油ストーブでは、すぐに酸素不足になり
1.2時間ごとに換気(かんき)をしないと危険であるとも言われている。
以前は、家にはすき間が多く、言わば自然の換気(かんき)で事故も
少なかったということらしい。

 


 
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駅弁(えきべん)というのは、全国各地の駅で売っているお弁当のこと。
それぞれの土地の名産などを生かしたおかずが入っている。
大きな駅では 何十種類というお弁当が売られている。
値段は1000円前後。

「あの駅にはあの弁当」というように全国的に有名なものもあり、旅行
の楽しみのひとつとなっている。

しかし最近は、少なくなってきた。駅の近くにコンビニエンスストアが でき
そこで売られているお弁当のほうが安いからだ。
おまけに電子レンジで温めてくれる。

鉄道で旅行をする人口も減り続けている。食堂車もほとんど姿を消した。
もはや、鉄道は、通勤、通学のためだけの交通機関となりつつあるようだ。

 


 
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彼は、本を読まない。

音楽、映画、絵画、美術などにはいっさい 関心も知識もない。
記憶力がとてつもなく低い。 仕事仲間には、そこそこに人気があるらしいが
職場の周辺の人、掃除の人やガードマンなどには評判が悪い。
先輩、後輩の関係を重んじ、どちらかと言うと、後輩に嫌われ 先輩に
可愛がられるほうだ。

女性はお酌(しゃく)をするために存在する。と考えている。

新聞は、まずスポーツ欄を読み、難しい記事は写真を見るだけにしている。
身近な人との雑談は好きだが、スピーチは苦手。
コンピューターと外国語は、まったくできない。 美味しいものと宴会
(えんかい)が大好き。 行く店は、昔から会員制(かいいんせい)の
高級レストランだけだそうだ。 VIP扱いを受けるのが好き。

怒りっぽく、根に持つタイプ。肩書(かたがき)にこだわる。 大学も就職
(しゅうしょく)も試験はまったくできず、実力者 (じつりょくしゃ)の知人
を頼って裏口(うらぐち)から入ったと 言われている。

「これ」といった自分の考えはない。

以上は噂にすぎないが、これまでと違って、怒りとともに語られるのでは なくて
ため息まじりに語られているのを見ると、どうやら、本当らしい。

彼は私の国の総理大臣(そうりだいじん)である。
名前は覚えなくていいですよ。
半年以内に変わりますから。 誰になるかはわからないけれども。

 


 
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男性2人の会話

「ニッパチとかって言うじゃない」
「何、それ?」
「2月と8月は消費(しょうひ)が伸びないから仕事がヒマってこと」
「へえ、うちはコンピューター関係だからなあ」
「でも、きっとパソコンも売れないよ」
「ああ、そうかもね。1月はお年玉(としだま)でお金持ってる
 子供が多いけど、ひと段落(だんらく)するからね」
「そう、8月は、会社も休みが多くて、旅行はするけど何か物を買う
 ってカンジじゃないものね」
「でも、8月は旅行会社とか、観光地は儲ってるんでしょ」
「海外旅行が多いから一部の旅行会社だけだよ」
「そうか、2月も何もイベントがないしね」
「2月は、、、12日が建国記念日か」
「何かを買おうという休日じゃないね」
「節分(せつぶん)も、豆だけだしねえ」
「地味な月だな」
「寒いしね」

実は、2月から3月にかけて、大学の入学試験が多く行われるので
都心のホテルは稼(かせ)ぎ時である。
東京に来る予定のある方はきちんと予約したほうがいいと思います。
御注意を。

 


 
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魔法(まほう)ビンというのは商品名で今では電気ポットとか 単にポットと
呼ばれている。

2リットルほどのお湯を入れておくものだが、最近では、電気で 常にお湯を
一定の温度に保てるようになったものが主流だ。

沸騰(ふっとう)したお湯は100度だが、日本のお茶を入れるには 80度から
90度が適温だといわれている。この温度で保温できるものが 人気らしい。
水さえ入れれば、お湯をわかせるものも多い。値段は1万円から2万円ほど。
炊飯器(すいはんき)と共に必ず家庭にあるものだと考えてもいいだろう。

そこに目をつけたメーカーが、このポットの状態をインターネットに
つなぐことによって、安全を監視(かんし)するシステムを開発した。

老人のひとりぐらしには危険が伴う。しかしカメラを設置するのは コストが
かかる。異変(いへん)を知らせるボタンを置いても 老人が操作するには難しい。

そこで、老人が必ず毎日押すスイッチであるポットに目をつけた。
このポットが使われていたら、「まだ生きている」ということになる。
一日、使われないと異変を知らせる信号が管理センターに報告される。

 


 
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洗濯機(せんたくき)や冷蔵庫(れいぞうこ)は色が白いものが
多かったことから「白モノ家電(かでん)」などと業界(ぎょうかい)
では呼ばれている。

この白モノも、モデルチェンジが激しい。一年ごとにさまざまな機能が
追加される。 洗濯機は、音が静かな機種が人気だ。これは、マンション暮らし
の家庭 や、昼間に洗濯の時間がない共働きの家庭にも売れているそうだ。

最近ではついに、一台で、洗濯、脱水(だっすい)、乾燥(かんそう)まで
やってしまう機種が発売になった。音も静かだそうで、10万円ほどだ。
乾燥機として使う時に、衣類(いるい)が絡(から)まないようにする研究に
時間がかかったとのこと。

冷蔵庫は、一時、大型化の時代があったが、最近では、容量はそのままで
よりスリムにしたものが人気だ。これもマンション時代の影響のようである。
これまた音が静かで、省電力(しょうでんりょく)のものが最近の 新機種の
特徴だ。 近所の電気屋で見た4人家族用のものが15万円だった。

最近は、エアコンも、掃除機(そうじき)もいかに音を小さくするかに
各メーカーは、しのぎを削っているようだ。

そういえば、私の実家(じっか) にある25年前のアメリカ製のエアコンは
スイッチを入れると恐竜(きょうりゅう)の鳴声(なきごえ)のような 音を出す。
夜は眠れないし、近所迷惑になるので、使わなくなってしまった。
広いアメリカでは大丈夫だったんでしょうね。

 



2000年12月


 
12/1

男女の会話

「海外旅行に行くとさ、人格出るっていうじゃない」
「ああ、成田離婚とかね」
「あれ、英語ができないからなのかね」
「というより、英語とか、マナーとかでオドオドするのがまずいみたいよ」
「オドオドねえ。慣れてないなら仕方ないんじゃない」
「まあ、そうだけど。男性のほうが自己嫌悪(じこけんお)で元気がなく
  なっちゃうんだって」
「ああ、かわいそうに。最近は女性のほうが海外経験が豊富だもんね」
「そうなのよねえ。新婚旅行の前に練習で行く人もいるらしいわよ」
「練習で? すごいね」
「そういうツアーがあるんだって。新婚旅行が決まるでしょ? で後から
  男性のほうに電話があって、『こういうツアーもありますが。。』って」
「ああ、同じ旅行会社でやるわけね」
「この前、テレビで見たけど、ガイドさんが、道順から食事のマナーまで
 丁寧に教えてたよ」
「もちろん、秘密なんでしょ?」
「もちろんよ。本番では、さも昔から知っていたような顔をしてエスコート
  するのよ」
「大変だな。。。」

成田離婚というのは、新婚旅行で仲が悪くなり、離婚になること。 成田(なりた)は、日本最大の国際線の空港。

この新婚の男性のための下見(したみ)ツアーは、本当にあります。

 


 
12/05

ヨーロッパから来た人に「ヨーロッパってどこからどこまでのことですか」 と聞くと、みな困ったような顔をして、答えない。

ぼんやりと分かっているのはキリスト教圏ということだけれども あいまいですね。

エジプトは入らない。
トルコも。
東欧もロシアも入るけど、中央ロシアは別。
中東は論外(ろんがい)。
イスラエルは、サッカーでは、なぜかヨーロッパになっている。
隣国(りんこく)は、アジアだったりアフリカだったりするのに。

まだ、いろいろと議論が分かれるようで、ユーロが問題になっていた時も
「お札ってのは、たいてい顔写真が入るけど、ユーロ通貨(つうか) に相応(ふさわ)しい顔はだれですか」 と聞くと、また一様にう~んと唸(うな)ったものだった。

「人の顔は無理じゃないかな」というのが一般的な解答であった。

そのとおりになりました。

 


 
12/06

アジアはどこからどこまでかと言うと、これがまた、はっきりしない。

サッカーでは中東は西アジアということなっているが、日本では中東がアジアであると意識している人は少ないだろう。しかし、中国にとっては、アラブは、かつての 貿易相手でもあったし、それほどでもないようである。

日本では、中国、韓国、日本などの東アジア、マレーシア、インドネシア ベトナムなどの東南アジアという区分けは、はっきりしているが インドやウズベキスタンなどの中央アジアに関しては、まだぼんやりと したままである。

ヨーロッパのように、ビザが無くなり、通貨ができるのは、21世紀中には 不可能かもしれない。経済格差も大きいし、宗教、文化など、がまったく 異なる。

ところで、オーストラリアは経済的にはアジア圏(けん)だという話は よく聞くが、おそらく自国がアジアの一部と考えているオーストラリア人 は非常に少ないのではないだろうか。
日本でもオーストラリア、ニュージーランドは、「欧米」と考える人が 多いように思う。

21世紀も、このあいまいな枠組みは続くのだろうか。

 


 
12/07

会社を停年退職(ていねんたいしょく)した後、日本人は何をしているのか と時々聞かれることがある。

はっきりとは、わからないが、他国と違うところは、仕事への未練(みれん) が残るところであろうか。

退職してから、しばらくは、何をしてよいのか分らない。
どこに行っていいのかわからない。
家事(かじ)はまったくできないので 家にいても、自分がまったく役に立たないことにイライラしている。

友人は同じ会社の人が多い。停年後も仕事で得た人脈(じんみゃく)を 生かして、会社を作る人もいる。しかしこういった会社がうまくいった 話はあまり聞かない。

しかし、一方で、夫婦で旅行を楽しんだり、早朝に散歩をしたりという 人も多い。日本では老後、子供と同居する比率が高く孫の世話をするのも 楽しみの一つであるらしい。 家庭菜園(さいえん)に凝る人もいる。

朝、散歩している初老の男性は意外に多い。 退職してからの年月は、歩くスピードに表れるそうだ。 体力が衰(おとろ)えるからではない。 歩きながら周りの風景や花などに目が行くまで3年ほどかかるそうだ。

 


 
12/12

アメリカの大統領選挙は、ややこしいことになっていますね。

12月ですから、クリスマスにホワイトハウスに大きな靴下(くつした) を下げて、当選したほうを、入れておくというアイデアはどうでしょうか。

日本では12月になると、街角はクリスマスの飾り付けでいっぱいになる。 日本でクリスマスが今のように大きなイベントになったのは1970年ごろで 東京の繁華街(はんかがい)のバーなどでやっていたものが次第に広がり 一般的になったとのこと。

80年代になってから大学生の間、特に若い世代には欠かせないイベント となった。家族で過す日というより恋人と過す日であると考える人が 多数を占める。

都心を少し歩くだけで、いくつものクリスマスツリーを見ることができる。
デパートの飾り付けも終わった。
しかし、おもちゃ売場よりも宝石店のほうが活気があるようだ。

 


 
12/14

今年は自殺のニュースが多かった。

去年から今年にかけて不況(ふきょう)の影響もあって自殺者が 増えた。
日本は、年間3万人近くの人が自殺をする国である。

かつて日本のプロ野球チームのエースだった選手が引退後に。 まだ、30代だった。

銀行の関係者も多かった。

ギリシャで日本人観光客を載せたバスを乗っ取った犯人は警察署で自殺した というニュースが伝えられた。

クリスマスの映画と言えば、It’s a wonderful life を思い出す人も 多いのではないだろうか。日本では「素晴らしき哉(かな)、人生!」 というタイトルだ。
自殺しようとした人物が主人公の映画だ。

映画の中に「一人の生は、多くの生に関わっている」という台詞(せりふ)が あるが、これは、裏返せば、一つの死は、多くの生に関わってしまうという ことでもある。
3万人の自殺者には、それぞれ家庭がある。
関わっている「生」のことを考えると、憂鬱(ゆううつ)な気分に なるのである

 


 
12/15

男同士の会話。40代。

「この前、タクシー乗ったらさ」
「え、お前、タクシーなんて、乗るの? 景気いいねえ」
「いや、たまたまなんだけど」
「うちなんか、2年前から残業(ざんぎょう)の時のタクシー代が出なくなったから
 みんな11時には帰らなきゃいけないんだよ」
「いや、それは、うちも同じだよ」
「ああ、そうか、それで、タクシー乗ったら、どうなったの」
「いや、大した話じゃないんだけど、運転手が言ってたよ。お客さんはぜんぜん
  増えてないって」
「景気が上向きって言うけどね、うちもあまり実感ないもんね」
「不景気が長いから、みんなタクシーに乗らない生活に慣れちゃってもう
  戻ってこないんじゃないか、って心配してたよ」
「ああ、そうだな。よくタクシー運転手がいちばん景気に敏感(びんかん)だって
  言うものね」
「そのタクシー乗った時もさ、ワンメーターぐらいだから『近いんですけど
  いいですか?』って聞いたんだよ」
「うん」
「そしたら、『どちらでもかまいませんよ。どうぞ』だって」
「そうか。昔は、近いと、返事も悪かったよね」
「そう、それも、運転手さん、反省してたよ」
「ハハハ、そう」

ワンメーターとうのは、タクシーの料金の機械が一度、変わる程度の 距離、ということ。今は、700円ぐらいだろうか?

私も2年ほど乗っていないので、詳しくはわからない。

 


 
12/18

今年 その1 「失われた10年」

今年、日本では「失われた10年」とは何だったのか。という議論が 盛んに行われた。 10年とは、バブル経済のころを中心にした10年のことで、この10年に 今の日本経済の衰退(すいたい)の原因があったのではないかというのが 主な論調(ろんちょう)だ。

最近では、バブル経済の功罪(こうざい)に焦点(しょうてん)をあてる だけではなく、戦後経済とは何だったのか、ということに論点(ろんてん) は移っている。

21世紀は、これまでの居心地のいい時間に安住するか、変化を求めるかの 二者択一(にしゃたくいつ)を迫られることになるだろう。

失ったものを、自らが認識するのに必要なのは、知性ではなく勇気だ。
過去というものは、誰にとっても、すでに失われた時間であるに過ぎない。
しかし、どちらの選択にも保証はない。
変化を選んだからといって 幸せになるとは限らない。

10年の間に失ったものが、これからを生きていく勇気でないことを 祈るばかりだ。

 


 
12/20

今年 その2 「少年犯罪」

犯罪の低年齢化が進み。法律もそれに合わせたものに変わった。

12月は、師走(しわす)と呼ぶ。教師でさえ忙しいという意味だ。

今日(こんにち)、教師は最もストレスの多い仕事になった。

学校では授業中に生徒の半数は、勝手に教室を出ていったり、音楽を 聞いたりといった状況で授業ができなくなるらしい。これを 学級 崩壊(がっきゅう ほうかい)と呼ぶということだ。 小中学校(しょうちゅうがっこう)の半数近くがこういう状態だという報告もある。

今年目立った犯罪がほとんど17才の少年によるものだったことから 「17才」ということが必要以上に強調された。

少女ではなく少年であることにはあまり触れられていない。
それとも、 17才というのは みな少年のようなものなのであろうか。

例えば、夜の東京の渋谷の駅近く、地方都市の繁華街(はんかがい)や 公園は一人で歩くのは危険になった。

10年前に日本に来たことがある人には、信じられないかもしれないが、今、日本の夜で危険なのは、ヤクザでも不法滞在者(ふほうたいざいしゃ) でもなく、10代の少年だ。

このことは、日本に来る外国人は覚えて おいたほうがいいだろう。

 


 

今年 その3

年末には各メディアで10大ニュースが発表される。

ここ4.5年の流れを見ていると一年単位では物事は進んではいない。
今年1年の10大ニュースといってもピンとこない人が増えたようだ。

今年のニュースであえて選ぶと、30代の男が少女を約10年にわたって 監禁(かんきん)していた事件がすぐに思い出される。

ふつうの町の一軒家の二階の男性の部屋で少女は発見された。
男は母親と 二人暮しだった。
母親は監禁の事実を知らなかった。
10年間少女は、部屋から出ることを許されず、保護(ほご)された時は 19才になっていた。

21世紀に、彼女がいい人に巡り逢い、幸せに生きることができるならば まだ、この世も捨てたものではないのではないだろうか。

 


 

「どうしたの、元気ないね」
「いやあ年末で忙しいし、ストレス多くてね」
「ああ、そう。忙しいだけじゃないみたいね」
「ああ、心配事も多くて」
「何かあったの」
「いや自分のことじゃないんだけどね、他人の心配で疲れちゃった」
「はあ、そんな人のことで疲れてちゃ損だよ」
「でも、人のことだから、ストレスがたまるということあるからね」
「そうかな」
「自分のことなら、自力(じりき)でなんとかなるでしょ」
「まあ、そうだね」
「他人のことは、ああだこうだと言っても、結局は見ているしかないから」
「しかたないよ。何を言っても伝わらない時というのはあるからね」
「そうだな」

 



2000年11月


 
11 / 01

アメリカでの野球(やきゅう)のチャンピオンシップが日本でも 中継されていた。 「ワールドシリーズ」という名前もアメリカらしく楽天的でよい。

私は少し違う楽しみ方をしている。ベンチの中の顔だ。 コーチや監督など歳をとった人々は、なかなかいい顔をしている。 昔のハリウッドの脇役達の顔だ。

顔にも流行はあるようで、選手達の顔は、現代風に洗練(せんれん) されている。
いい顔は多いが、昔のハリウッドで言えば、 三流のファミリードラマで、長女のボーイフレンド役といった ところがせいぜいだ。
これは、今のハリウッドの役者にも通じることだ。

それに引き換え、コーチ陣(じん)の顔はいい。歳をとればとるほど いい。
ヤンキースのドン・ジマーなんてしびれますね。
こんな顔がアメリカには残っていたのか! というほどだ。

旅行をしていて、ふと観光地から外れた所へ行くと、こういう顔に 出会うことがある。 映画的な顔、テレビ的な顔、と分けることができるかもしれない。

 


 
11 / 02

ヨーロッパから日本へ来た人が違和感(いわかん)を感じることの ひとつが、室内での照明(しょうめい)だそうだ。

日本では会社、学校だけではなく、レストランや家庭のリビングなどでも 蛍光燈(けいこうとう)の白い灯(あかり)が使われる。 蛍光燈のほうが効率がよく、コストがかからないことから一般的に なったようだ。

外国料理のレストランなどを日本に作る時に、最初に問題になるのが 照明らしい。 人が入らない理由が薄暗い照明にあることに気付かずに、潰れてしまう レストランもあるとのことだ。

しかし、このように何でも明るくするようになったのは、最近のことで 元々、日本の美術や建築は、薄暗い照明が前提となっていることが多い。
掛(か)け軸(じく)や生け花などは、蛍光燈の元で見るものでは ないようだ。

戦後、日本は明るさを得たのか、暗さを失ったのか、議論(ぎろん)の 分かれるところだ。

 


 
11 / 07

アメリカの大統領選挙は、日本でも連日のように報道されている。

もちろん、「今後の世界の趨勢(すうせい)に影響を与える、大きな 政治的な事件」だからではなく、ネクタイの色や、討論(とうろん)の 時の表情、候補者(こうほしゃ)のキスなど、まるで未開(みかい)の 地の奇異(きい)な風習(ふうしゅう)を紹介するといったかんじだ。

討論には、アジアのことなどは、まったく出てこないようだ。
今回に限ったことではないが。

いっそのこと候補者は、会社を作り、ナスダックに株式を公開して 株価で大統領を決めるのはどうだろうか。 まあ、結局、噂やスキャンダルで株価が上下したり、サイト上で プライベートの写真を見せられたりと、あまり代わり映えがしないことに なるかもしれないけれども。

 


 
11 / 08

日本は学歴社会だとよく言われる。

韓国や中国も似たような文化を 持ち、中国で古くから用いられてきた科挙(かきょ)という官僚 (かんりょう)の試験に影響を受けているという人もいる。

子供のころから点数で順位を示されていくと、負けず嫌いという性格 が育つ。

しかし、この負けず嫌いには、勝ちたいという気持ちと、負けたくない という気持ちが含まれている。
どうも、私の見たところ、日本では 負けたくない、という気持ちのほうが勝っているようだ。

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音楽や映画を体験することは、ある意味では、心地よい負けを経験する ことかもしれない。

ゴダールのようにキャメラをまわすだけで、映画になってしまう人もいる。
チャーリーパーカーのようにドレミと吹くだけで音楽になる人もいる。

試験の競争に勝ちのこってきた人々は、芸術にうとい、という人が多い。

 


 
11 / 09

日本では英語を勉強する時に、最初に名前の書き方を勉強する。

家族の名前が やまだ。 下の名前が ひさし。 の場合、
Hisashi Yamada と英語の名前の順番に合わせて逆に書く。

子供の頃は、この順番に違和感(いわかん)を覚えるというよりも 異文化(いぶんか)の心地よい感触(かんしょく)を味わった記憶が ある。

今年、政府(せいふ)の機関(きかん)が、名前の順番は、日本式に 書くように子供に教えると発表した。
韓国、中国などでは、昔から、この順番だそうだ。
この違いも考えてみると面白い。

英語の名前の書き方を習うのは15才ごろだから、彼等が大人になるまで 社会の多数派になるまでは、あと15年ほどかかる。

しばらくは、人によって順番が違ったりと混乱することになるかも しれない。

 


 
11 / 10

普通の男女の普通の会話

「よお、どうしてた? あ、髪型(かみがた)変えたね」
「ああ、元気? うん、気分 転換(てんかん)にね」
「パーマかけたのか、う~ん、似合うけど、前のほうがよかったな」
「今どき『パーマかける』なんて言わないの。前ってストレートの時のこと?」
「そうそう、いや、でも今のもいいよ」

「ここんとこ何してたの」
「月並(つきな)みだけど仕事かなあ、メールにも書いたけど、失敗 しちゃって
  ね」
「ああ、そうだったわねえ、土日も忙しかったの」
「うん、土曜出勤で、日曜は疲れて寝てた」
「そう。あ、そうだ、先週、洋子(ようこ)と映画見たよ。オータムイン
  ニューヨーク」
「ああ、あれか。女二人で?」
「そう、カップルばっかりだったわよ」
「つまんなかったろ?」
「そうなのよ。。。」
「ああいう映画は、やっぱり映画館で手握ったりするためにあるんじゃないか」
「ああ、そうかもね。高校生か、大学生あたりのカップルがね」

まあ、好きな人と、こういった、どうでもいい話しをしているのが 幸せなことだと私は思いますね。

 


 
11 / 14

アメリカの大統領選挙は、まだ決まらないようだ。

民主主義にとって、正確な数字は意味のあるものだけれど、常に誤差 (ごさ)は、ついてまわるものだ。 民主主義(みんしゅしゅぎ)の不備(ふび)はどこにもあることで どこの国の制度がより民主主義的か、といった議論は不毛(ふもう) かもしれない。

しかし、どちらが大統領になったとしても、これから4年間の選択肢 (せんたくし)は限られているような気がする。
あと4年くらいは、景気も持つかもしれないが。
「貧乏クジを引く」というのは、このことかもしれない。

日本では、そろそろ森首相は、終わりのようだ。次に誰がなるのかは わからない。 可能性がある人々の名前はあがっているが、やはり、イメージ先行 (せんこう)で選ばれるようだ。支持率(しじりつ)が下がると いつも候補(こうほ)になる人々だ。

若い政治家に関しては、まあ同じような顔で同じようなことを言う人々 であるという印象は拭えない。日本製の電気製品を見ているようだ。

アメリカでは、しばらく決まらないようだから、日本に、一人、貸して くれないだろうか。 今の日本には、ブッシュさんのほうがあっているかもしれないが まあ、どっちでもいいから。

 


 
11 / 15

Webcamというものが世界にはたくさんある。

有名なコーヒーポットや、カフェだったり、レストランだったりする。 日本では自然の景色が多い。でも動きが少なくあまり面白くありませんね。

意外と多いのが床屋(とこや)。どこでも似たような景色でありながら 少しの違いを楽しむという風情がある。 動きも多いので楽しい。

日本でも、床屋談義(とこやだんぎ)という言葉がある。
政談(だんぎ) と書くこともある。
政治や社会のことなどを無責任に語り合うといった 意味のようだ。
スポーツ、芸能、近所の噂話し、など、なんでもよい。

銭湯(せんとう)がなくなった今、「角のタバコ屋のおばあさんは 昔、美人だった」などという話しは、ここでしか聞けなくなった。

 


 
11 / 16

アメリカの大統領選挙は、裁判になりそうな展開(てんかい) だけれども、こういう状況は、面白いことをいうための格好の材料でもある。

いろんな人が、いろんなことを言っていた。

「交代制にして週の前半はゴアで、週末はひまだからブッシュにすれば?」
「いっそのこと、両方を副大統領にして、ヒラリーを大統領にすれば?」
「負けたほうを残念賞として日本の首相にすれば?」と、これは日本の女性。
「アメリカ人らしく、最後は、コイントスでいいんじゃない?」
「2人とも大統領にして、重要な政策はテレビ討論で決めたら?」
「2人に、フロリダの票を数えさせたら?」
「もう、面倒だから、クリントイーストウッドでいいわよ」

一般的なアメリカ人の意見は、裁判になって、弁護士の姿を見るのはご免だ。
というのが正直なところではないだろうか。

江戸時代の裁判の話で、こういうのがある。

子供の母親が二人名乗り出た。
両方とも、私が母親だと言って譲らない。
名裁判官は、二人の間に子供を置き、勝ったほうが本物だと告げて、 両手をそれぞれの母親に引っ張らせた。
子供は痛がって泣いた。

名裁判官は思わず手を離した女性に、「おまえが本物だな」 と言った。

後になって、「あの選挙の混乱がアメリカ黄金時代の終わりの 始まりだったなあ」と言われないように、すみやかに終わったほうが いいと思いますよ。

 


 
11 / 17

日本には自称(じしょう)文学者が多く、今でも多くの小説やエッセイが 出版されている。 これは、必ずしも日本の文化程度を示すものではなくて 特殊な事情がある。

現在、日本で出版ビジネスは出版社が多くの雑誌を作り、広告収入 を得て、なんとか生き長らえているというのが実情(じつじょう)だ。 広告費を除く実収入のほとんどは、漫画によるものだ。

作家も、雑誌のコラムや、広告とのタイアップの文章などを書いて 収入を得る。

印刷メディアの危機と言うと、デジタルが印刷媒体を凌駕(りょうが) するという文脈(ぶんみゃく)で話されることが多いが、実は この広告収入に依存した出版業界そのものの体質が問われている。

いろいろな国の人に聞いてみたが、日本ほど極端な例はないようだ。
今は、オンライン広告の比重は低いが、おそらく10年くらいのうちに 逆転するだろう。

雑誌がなくなることはないが、広告価値は半減し、多くの雑誌が 淘汰(とうた)されることになった時、文学のビックバンが始まる。

 


 
11 / 18

 

「『はじめました物』って知ってる?」
「何、それ?」
「冷やし中華(ちゅうか)とか、かき氷とか、」
「ああ、季節物ね。あのはり紙がね、いいかんじね」
「そうそう、それでさ、冬になると、あまり、はり紙はないんだけど」
「あ! 牡蠣(かき)でしょ! 私も好きなのよ」
「おお、そう! 好きなんだよ。おれも」
「最近は一年中あるけど、やっぱり旬がいいよね」
「そう、定食屋なんかで、店内に『はじめました』ってあるとさ、ここは冷凍
  (れいとう)じゃないな、と思うよね」
「牡蠣フライ定食ね。つい、頼んじゃうのよね」
「あと、肉まんもあるけどね。冬も意外と『はじめました物』って  あるんだよ」
「ああ、ふぐとかね。でも高いからねえ」
「そう、あれはね」
「『はじめました物』って、敬太(けいた)が考えたの?」
「いや、雑誌のコラムで読んだの。東海林(しょうじ)さだお。うまいよね」
「ああ、あの人、そういうこと言いそうね」

 


 
11/22

日本語を勉強して日本に来る。

日常会話にも馴れた。
電話にも自信を持って出ることができるようになった。
ニュース番組も大丈夫。

しかし、日本のテレビはほとんど見ることができない。

なぜか?

日本の娯楽番組は関西のテレビタレントが多くでているため、関西弁が わからないと、ほとんど楽しむことができないからだ。

関西弁がわからないと損(そん)をすることはテレビだけではない。
芸能、演劇は関西のほうが盛んだし、小説でも関西弁で書かれた名作は 多い。

 


 
11/24

男と女の会話。ちょっと理屈(りくつ)っぽい会話。

「静江(しずえ)って、個性的(こせいてき)でいいよね」
「え、そう?」
「なんか『自分の世界を持っている』ってかんじ」
「どうだろうね」
「なんか不満(ふまん)なの?」
「どうかなあ。あのファッションセンスは」
「変わってていいじゃない」
「多分、彼女は、洋服を買う時に、自分の好きな色とか形で選ぶんじゃない」
「え、それでいいじゃない」
「いや、30を過ぎたら、自分の好きな洋服じゃなくて、自分に似合う洋服を
  着るべきだよ」
「え、そうかなあ」
「さっき、『自分の世界を持っている』って言ったでしょ」
「うん。いいことでしょ」
「いや、ちっともいいことじゃない。個性的とはちょっと違うよ」
「どういうこと」
「『自分の世界』なんてないんだよ。『世界』は他人とシェアしていくしか
  ないんだよ」
「なんか、つまんないわ。そんなの」
「でも、結局、他人が殺した動物の肉を食べて、他人が作った洋服を着て
  他人が考えた言葉を使ってるんだよ」
「じゃあどういう人が個性的って言うのよ」
「普通にしていれば、みんな個性的なんだよ」
「『普通』ってどういうことよ?」
「さあ、わからない。でも、個性っていうのは、もう少し静かなものだと思うよ」

 


 
11/28

毎年、新しい言葉が生まれる。
今年は「ひきこもり」だろうか。

「ひきこもり」とは、主に10代の男の子に多い現象で、学校にも 通わず、家の自分の部屋から出ることができない子供のことを言う。

現在、日本には、この種の子供達が10万人単位でいるそうだ。 一説(いっせつ)には、100万人以上とも言われている。 普通のサラリーマンの一見(いっけん)、問題のない家庭の子供達である ことが多いそうだ。

長い期間、家から出られず30代になった人も多い とのことで、今年「ひきこもり」という言葉が一般的になったことで 顕在化(けんざいか)してきたという側面(そくめん)があるようだ。

以前は、学校へ通わなくなる、登校拒否(とうこうきょひ)が騒がれた こともあった。少なくとも彼等は、同じような子供達と遊んだり、歓楽街 (かんらくがい)で遊んだりたりしていた。

時代はもっと進んでいたのである。

 


 
11/29

「ひきこもり」の問題が扱われているテレビ番組をいくつか見た。

始まる年齢は10代が主で、現在では、年齢のうえでは大人になっている 人も多いとのことだった。

ある男性は10代のころからひきこもりを始め、20代後半になっていた。 ほとんど、家から外に出ることはなかった。 2階建ての家の2階に自室があり、食事とトイレ、お風呂の時以外は その部屋からも出ることはない。家族とは必要最低限の会話しかない。 ひきこもりの子供のほとんどはパソコンを持ち、インターネットに接続 して昼夜逆転(ちゅうや ぎゃくてん)の生活をしている。

何年も自室から出ない生活は、やはりインターネットなしには 考えられない。

結局、その子供の両親は、ひきこもり専門の施設に頼むことにした。

3回目の訪問で、彼の部屋を開けることになった。 彼は、髪の毛は伸び放題(ほうだい)、毛布を被ったままだった。 施設の人に引きずられるようにして車に乗せられた。 玄関(げんかん)のところで怒鳴ったほかは、一言も言葉を発しないまま だった。

母親はずっと、泣いているだけだった。
父親は、息子が車に乗ったのを確認して突然、声を出さずに泣き始めた。

施設の人によると、家から出た時点で、半分は回復したと考えても いいとのことだった。

 


 
11/30

ひきこもりの子供たちを見ていて、連想したことは、文楽(ぶんらく) だった。

文楽では、人形をあやつる人は、黒い洋服を着て舞台に立つ。

観客は、最初から、その黒子(くろこ)と呼ばれる人々が「いないもの」 だとして観る。しばらく観るうちに黒子の姿は消え、物語に集中できる ようになるそうだ。

言うまでもなく黒子は、「現実」だ。

少年達は、学校や教師、友人、仕事などを、次々に黒子として舞台から 消していきながら、生活のリアリティを失っていくのではないだろうか。

ある現象が、「日本的」だと決めつけるのは軽率である。 しかし、他の国で同じようなことが、このような大きな規模(きぼ)で 起っているとは聞いていない。

作家である村上龍は、ひきこもりの少年を主人公に小説を書いた。
タイトルは、共生虫。

ここで読めます。「向現」

 


 

 

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2000年10月


 
10 / 03

オリンピックで楽しいのは、いろいろな国の人の顔や名前に 触(ふ)れられることだ。

開会式や閉会式は退屈だが、入場行進では民族衣装(みんぞくいしょう) も見られる。 もう一つは、往年の名選手がコーチや関係者として来ている姿を 見ることができるのも楽しい。
今回は、柔道でオランダのアントン.ヘーシンクさんの姿があった。

さて、オリンピックに対する批判は、商業主義や環境破壊と多岐に わたっているが、存続していくことに反対する人は少ないようだ。 しかし、このままでは、20世紀(せいき)の遺物(いぶつ)となることは 目に見えている。

日本のオリンピック選手は経済的な不遇(ふぐう)を訴える 人が多いが(事実、人気種目以外のほとんどの選手は自費で参加している) 日本がこれだけ多くの選手や関係者をオリンピックに送ることができるのは やはり経済力に負うところが大きい。

まったく知らない国の選手が周回遅れで笑顔でゴールしていたり アフリカの女性が女性の権利のために走ったりするのを 見ると、功罪(こうざい)の功もあることは確かだ。

 


 
10 / 04

オリンピック期間中にテレビで音楽映画の特集をやっていた。
グレンミラー物語、ベニーグッドマン物語、五つの銅貨(どうか) などだ。

スイングジャズは、日本でも人気があった。 戦後、日本に駐留(ちゅうりゅう)したアメリカ軍の基地などで演奏活動 をした世代が、いわば日本のジャズの第一世代だ。今は70代になり 時々パーティーなどで演奏するだけだ。 基地(きち)で演奏する機会が多かったので、名前もアメリカ風に変えた。
トビーとか、ジョージなどという名前だ。

演奏の質もなかなかだ。管楽器(かんがっき)などは、音の太さなどは 劣るものの、音色(ねいろ)やスイング感は一流だった。
その後、モダンジャズを中心とした第二世代が出て来た。彼等は、 アメリカに留学し、学校で学んだ。本場(ほんば)のミュージシャン と演奏した。
第一人者の秋吉敏子(あきよし としこ)は、ビックバンドでジャズの 歴史に重要な役割をはたし、渡辺貞夫(わたなべ さだお)は、今も気分の いい音楽を作っている。

ジャズの映画はいいものが少ない。

グレンミラー物語はなかなかよかったが、他は、映画としては、いまいちだ。 しかし、テディウイルソンや、ハリージェイムス。 そして、なんといってもルイアームストロングを見ることができる。 ルイアームストロングが画面に現れるだけで、映画は輝きはじめるのだ。

 


 
10 / 05

名画座(めいがざ)というのは、映画館の名前で、よく「座」 という言葉を使う。 名画というのは、過去に封切られた質の高い映画のことで10年程前 には、小さな都市には必ずひとつはあったものだ。 ビデオ屋が増え、ほとんど姿を消した。

もっとも、名画座が減ったことで映画の黄金時代が過ぎたと考える のは間違えかもしれない。

ある老婦人によると、1950年代前半には、人口5万人ほどの九州の地方都市 に、新作の外国映画専門に映画館が2つもあったそうだ。 毎日のように、夕方、宣伝の音楽が流れ、小さな炭坑(たんこう)の町 であったにもかかわらず、大人達で連日満員だったそうだ。 戦争が終わってわずか5.6年のころのことである。

もちろん戦前から、ハリウッド映画はもちろん、ドイツ映画、フランス 映画は、大きな都市ではふつうに見ることができた。戦後まもなくの 映画の隆盛(りゅうせい)は、この延長上にあったのだろう。

とにかく、名画座は5年程前に、東京からも姿を消した。

ところが、昨日、そのうちのひとつが復活するという記事が出ていた。 これから日本映画の名作を中心に上映していくとのこと。
12月から復活する池袋文芸座(いけぶくろ ぶんげいざ)の最初の 上映作品は、黒沢(くろさわ)の七人の侍(さむらい)。
料金はわからないが、1000円から1500円ではないだろうか。

東京に来る機会があったら、ぜひ、お立ち寄りください。 日本語なんてわからなくても、楽しめます。

 


 
10 / 06

「衣替(ころもが)え」というのは、いわば行事のひとつで、学校や 会社の制服などが変わる頃を言う。

現代では6月と10月の1日に 行われることが多い。学校や会社の制服が変わると、街の風景も変わり、季節を告げる目印のひとつにもなる。

「急に涼(すず)しくなったね」
「そうね、朝晩(あさばん)は寒いくらいよ」
「そういえば、最近、電車の中が、ナフタリン臭(くさ)くならないね」
「ナフタリン? ああ、洋服をしまう時の薬のにおいね」
「そうそう、秋冬の洋服に変える時期は、あのにおいがしたでしょ?」
「最近は、においがないタイプがあるからよ」
「そうなのか」
「それに、洋服に虫がつかなくなったみたいよ。最近」
「へえ」
「マンション暮しだと、そういう虫が少ないのよ」
「なるほど。でも、なんだか、あの匂いはなつかしいなあ」

 


 
10 / 10

オリンピックが終わって、中東(ちゅうとう)の紛争(ふんそう)や ユーゴでの政変(せいへん)が伝えられた。

日本と中東は縁の薄い国である。中東と聞いて、多くの日本人が ぼんやりとイメージするのは、石油と戦争だろうか。

80年代から日本に来るイランの人々が増えはじめた。 彼等は、日本で建築現場などでの仕事を得て、休日は、公園で情報交換を した。 一時、東京の大きな公園はイラン人でいっぱい、といったことも珍しく なくなった。ほとんどが男性で、数は少ないが、日本人と結婚する人も 出て来た。東京にはアラブ料理店が増えた。

日本で最も有名なユーゴスラビア人は、サッカーのストイコビッチ選手 だろう。
今年まで5年間、日本のチームでプレイをし、日本人好みの テクニックとパスのセンスで観客を魅了(みりょう)した。
彼がもし、オランダやイギリスに生まれていたら、今頃は、ヨーロッパ のスーパースターだっただろう。最も油ののった時期に、政治の影響で 国際試合に出られなかった年が続いた。

地図を広げて、イスラエルやユーゴスラビアはどこにあるか、正確に 指摘できる人は少ない。 新聞やテレビのニュースでは、ユーゴの政変は一時トップ扱いだった。 劇的でジャーナリスト好みの題材であることも大きいが、各国のメディア からの映像が豊富であることも理由の一つだと言われている。

イスラエルとパレスチナの紛争(ふんそう)は、2番目か3番目だろうか。
こちらは、映像が少なく、ニュースが作りにくく、伝えにくいという こともあるようだ。

 


 
10 / 11

飛行機で隣に座った男性は、ウエールズの出身で、これから香港に いる知人に会いに行くところだと名乗った。

しばらくして彼はウイスキーと小さなグラスを注文した。 手のひらに入るほどのグラスを左手の手の平に置き、右手で ふたをして、しばらく暖めた。 右手のふたを離すと、香ばしいにおいが広がった。 彼は嬉しそうに一息で飲み干(ほ)し、右手についたしずくを ペロリとなめた。

と、まあ、このように酒というものは、いろいろな飲み方があるようだ。

日本酒は、そのまま飲むやり方を「ひや」といい、暖めて 飲むのを「熱燗(あつかん)」とか「ぬるかん」という。あたためるのを 「かんをつける」「かんをする」ということもある。 通(つう)は、ひやで飲むらしい。

ただ、安い酒は、かんをしたほうが いいという話もある。
冬場はあつかんに限るという人もいる。

 


 
10 / 12

日本のテレビは、主に3種類あり、今年から一つ加わる予定だ。

ひとつは地上波(ちじょうは)と呼ばれるもので、地域によっても 違うが5~8チャンネルほどある。そのうち2つは、国営チャンネルで 月に1000円程度の料金が必要だ。他は民間の無料チャンネル。コマーシャルが入る。

もうひとつは20年程前に始まった国営の衛星放送。チャンネルは二つ あり、スポーツや映画、外国のニュースなどが主だ。アメリカの 番組が多く、CNN ABCのニュースの他、スポーツ、映画もアメリカから ソフトをもって来ているものがおおい。
ドイツや韓国など主な国 のニュースも毎日紹介されている。
専用のアンテナとチューナーが必要でそれに40000円ほどかかる。
契約料は月に2000円ほどだ。

最近、勢力を広げているのが、3つ目のCSチャンネルというもので ケーブルテレビとは少し方式が違い、衛星放送と同じく専用のアンテナ をつけて見るもの。
映画、スポーツが主力で、月の契約料は5000円ほど。こちらでは、 外国のニュースも契約すれば、専用のチャンネルですべて見ることが できる。イタリアやイギリスのサッカーリーグも生中継される。

今年から、もう一つの方式が開始(かいし)される。 2番目の衛星放送のデジタル版で、衛星デジタルと呼ばれている。 すでに10くらいの企業が参加を表明しているが、アンテナ、チューナー が15万円ほどかかり、参加企業も地上波のチャンネルと重なること もあって、加入者は伸びていない。デジタル画像がきれいに見られる テレビは、専用のものは30万円ほどだ。

これらの放送に全部加入すると、月に10000円。チューナーとアンテナは3台づつ 必要で、チャンネル数は100くらいになる。

 


 
10 / 13

知人の話。 その男の訪問は、梅雨の晴間、突然だった。歳は70くらいだろうか。

「あのお、突然、申し訳ございません。おたくの二階の屋根なんですが」
「え、屋根がどうかしましたか」
「あのう、私、昔、大工をやっておりまして、どうしても気になっちまうんです。 あの、屋根の玄関よりのところが、少し痛んでるのではないでしょうか」
「え、いや、問題ありませんよ。今、修理する余裕もありませんし結構です」

と強い調子で断った。うさんくさい業者かなにかだと思ったからだ。

実際、このような手口で手抜き工事をし、大金を請求するサギが流行っていた。
すると、その男は、「いえ、それなら、いいんです。大変失礼しました」 と、あっさり帰っていった。

同じ年の秋は、10年ぶりの長雨だった。玄関で雨漏(あまも)りがする ようになった。 古い家で、築50年と聞いている。家を立てた祖父は、当時、商売が うまくいき、地元の腕のたつ職人を集めて立てたらしい。

「200年は大丈夫だというのは、亡くなった祖父の口癖だったけど、人のよい祖父はだまされたのだというのが、まだ元気でいる祖母の 口癖になった」と知人。

年が明けて、また、あの男性が訪れた。今度は道具箱を持っている。

「奥さま、申し訳ありません、実は。。」

男性の話によると、50年前にやっと一人前と認められた頃に、当時の 棟梁(とうりょう)の計らいで、初めて仕事らしい仕事をさせてもらった のがその知人の家だったそうだ。

彼は玄関近くの屋根を担当した。 今は、隠居(いんきょ)しているその男性は、どうしても初仕事である 知人の家の屋根が気になって仕方がない。
実は、50年間、梅雨の時期には 欠かさず知人の家の前を通って、観察していたということだった。 男性の家は、知人の家から電車で30分ほどかかる。

祖母との話も一致する。 「では、ぜひ」 といって、修理を頼むと、「やっとこれで安心して隠居できますよ」 とにっこり笑って、一週間かけて直していった。

祖母は、話相手が できて嬉しそうだった、と知人は語った。

どう言っても、とうとう、お金は受けとらなかったということだ。

 


 
10 / 17

ふぐは高級魚として知られている。

東京にはいくつかのふぐ料理屋があるが、いずれも値段が高く、 一人前2万円くらいは覚悟(かくご)しなければならない。

大阪ではもう少し安く食べられる。てっちりと呼ばれる鍋(なべ)料理屋が たくさんある。こちらは、一人前3000円程度だ。
これらの値段の違いはふぐの種類からくるようだ。 ふぐの食べ方として最も一般的なものは刺身(さしみ)で、薄く切るのが 特徴(とくちょう)だ。

盛り付けに使うさらは、絵柄がはっきりとした ものを使い、刺身ごしに透けて柄が見えるように盛り付ける。

ふぐを料理するには、免許(めんきょ)が必要だ。 毒性が強い部分は、きちんと処理をしないと、この免許は取り上げられる。
昔、ふぐで死んだ人は多かった。

 


 
10 / 18

昔、電話機の下についているゴムを無くしてしまい、近くの電話会社に 買いに行った。このゴムは、4点で電話を支えているため、ひとつでも 無くすと、電話がガタガタして、具合(ぐあい)が悪い。

受け付けの男性は、「下のゴム? ああ、あれか」 と言って、後ろの机を探して、「はい。タダでいいよ」 と、奥の机の上にあった電話の下のゴムをくれた。

真夏に九州のローカル線の駅で、乗り換えのため、駅のホームで 待っていた。
他に客はなく、次の電車が来るまで二時間。

駅舎(えきしゃ)の中に男性が3人いて、手招きしている。

「こんにちは」とあいさつをすると、「余ってるから食えよ」 とすいかをくれた。「外は暑いだろ」と麦茶を出してくれたうえに 乗り換えの電車が来た時には、ジュースをおみやげにくれた。

10代のころ、旅行の途中、ひまそうな駅員にお昼ごはんをおごって もらった記憶は何度かある。 まだ電話も鉄道も国営の時代だったころだ。

民営化(みんえいか)して 経営も合理化され、今や、国営時代は暗黒(あんこく)時代のように 言われるが、時々、あの、のんびりした雰囲気が少しなつかしくなる ことがある。

 


 
10 / 19

フランスのルイヴィトンの日本での売り上げは500億円以上になる ということだ。

これは国内での売り上げのことで海外のものは入っていない。 実は、海外でも相当の額になると思われる。 パリはもちろん、香港(ほんこん)やハワイなどの有名ブランドの 店はいつも日本人で満員だからだ。

日本人が海外でなぜたくさん買い物をするのかというのは事情が ある。
おみやげを買わねばならないからだ。
海外旅行が珍しかった時代(ほんの30年ほど前だが)は、親戚 (しんせき)や友人など、少なくとも10人分は買わねばならなかった。
したがって、観光の時間のうち買い物にあてる時間が多くなる。

ここ10年、海外旅行はふつうのことになった。国内旅行よりも 安くいける国は多く、気軽に週末などを利用して出かける人が多い。 おみやげを買う必要は減ったものの、今度は、買い物目的での旅行 も増えた。

最近の流行は、家具を買うこと。これは輸送費がかかる ので、お金持ちに限られる。 おみやげを買うのにも飽きた、家具などを買う余裕のない人々は 国内で買うより安いからと、ブランド品(ひん)を求めるということになる

 


 
10 / 20

10月から紅葉の季節が始まる。紅葉で有名な場所は人でいっぱいに なる。

「急に涼しくなったね」
「うん、気のせいかもしれないけど、最近、秋と春が短くない?」
「ああ、そうだね。暑いかと思ったら、1週間くらいで寒いってかんじ」
「そうそう、昔はもう少しちょうどいい気温の日があったような気がする」
「でも、まあ、今はなかなかいい具合だよ」
「そうだな。暖かくなるより、涼しくなるほうがありがたいものね」
「どこか旅行に行く予定ある?」
「う~ん。秋はどこも混んでいるからねえ」
「週末はね」
「あ、そうか平日に休みがとれればいいね」
「そうそう、でも平日でも紅葉(こうよう)の時は、同じみたいだよ」
「ああ、近所の人も行くからね」
「ガイドブックには、10日くらいの幅があるでしょ。紅葉のさかりの日が」
「ああ、ほんとは、3日くらいらしいね。100%の時に出会うのはなかなか難しいよ おまえ、ある?」
「4年前にね、福島(ふくしま)で、凄かったよ。地元のタクシーの 運転手が
  『お客さん、いい日に来たね』って言ったよ」
「ああ、それは、あたりだね。言われてみたいよ」

 


 
10 / 24

「日本人はメガネをかけている」イメージは強いようだ。
確かに、眼鏡をかけた人は多い。

いろいろな説がある。

日本人は読書好きだから。
漢字が読みにくく、目を酷使(こくし)する。
塩分の多い食生活が原因。
テレビを見る時間が多く、それが原因。
視力検査(しりょくけんさ)をする機会が多く、必要以上にめがねを かけることになる。

などなど。

読書量やテレビを見る時間が多いのは確実だが、はたしてそれが 本当の理由かどうかはわからない。
通勤(つうきん)や通学(つうがく)の電車の中などで本を読んでいる 人は多い。3人にひとりくらいの割合だろうか。 眼科医(がんかい)によると、揺れる乗り物の中での読書は、非常に 目に悪いそうだ。

 


 
10 / 25

日本には火山(かざん)が多く、地震(じじん)も多い。
富士山(ふじさん)も火山である。

しかし、いいこともある。温泉が多いことだ。

近頃(ちかごろ)は、温泉ブームもあって、天然(てんねん)の 温泉ばかりではなく、沸かす温泉もあるようだが、日本中、どこへ 行っても、大きな町の中心地から2時間も行けば、必ず温泉がある。

長野県(ながの)には、猿が入りに来る有名な温泉がある。
昔から、温泉には、けがや、病気に効果があると言われていて 有名な武士(ぶし)や、芸術家などが、治療(ちりょう)のために 訪れたという話が残っている温泉は多い。

 


 
10 / 26

日本ではタバコは250円ほど。物価高の国ではめずらしく世界的にも安いほうだ。

嫌煙権(けんえんけん)という言葉が一般的になったのが7.8年ほど前 のこと。
街角から、いっせいに灰皿が消えた。
もちろん、嫌煙権を尊重したのではなく、それぞれの企業がコスト削減 (さくげん)のために実行したものだと思われる。

しかし、まだ、建物の中には灰皿は多い。面白いことに古く大きな 会社のビルほど多い。ある日本を代表する大手企業のビルには 入口から10m歩くごとに灰皿がある。

外国、特にイギリスから来た人が、タバコの安さから喫煙(きつえん)の 習慣が復活したという話をよく聞く。
また、韓国では女性の喫煙がまだ タブー視されていて、日本に留学した女性は、おおっぴらに吸えると嬉しいそうだ。

日本では、タバコを吸う人は一時より減ったが、若い女性などは 逆に増えているそうだ。

アメリカのタバコ会社の経営者は、仕事に疲れたら日本に来るのは どうだろうか。

人は自分の仕事が必要とされているという環境で働くのが幸せという ものである。

 


 
10 / 27

東京では、雪が降ることが、極端(きょくたん)に少なくなっている。

「今年は暖冬(だんとう)らしいね」
「でも長期予報って当たらないよね、いつも」
「そうだな。でも、冬は寒いほうが面白いと思わない」
「そうだね。1日くらいは、雪が降らないと面白くないね」
「昔は、冬は何十日も雪の日があったって、おじいちゃんが言ってたよ」
「あ、そうらしいね。最近は5日くらいだよなあ」
「そう。それで、すぐ電車、止まるしね」
「何十日もなんて、想像できないな」
「そうだなあ。おまえの子供のころどうだった?」
「う~ん。今よりたくさん降ったような気がする」
「おれも、そう思うんだよ」
「オゾンホールとか、そういうことなのかな」
「わからないけど、50年くらいで、そんなに変わるのは恐いね」
「そうだなあ。あ、でも、電車は、昔はあまり止まらなかったらしいよ」
「本数も増えたし、電気関係が複雑になったんじゃないのかな」
「ああ、それで壊れやすくなったのかもね」

 


 
10 / 31

サッカーのアジアカップが終わった。レバノンで行われた。 寝不足だ。今日は、その感想で、お許しください。

現在、アジアは5強の時代だ。

韓国
イドンゴク、パクチソンという若い選手が楽しみではあるけれども 要(かなめ)となる選手がベテランばかりなのが気になる。 ホンミョンボやハソッチュなどの偉大な選手が引退した後、少し 心配だ。あいかわらずフォワードはすばらしいけれども。 オランダあたりからいい監督を呼んで戦術が洗練されれば、間違いなく あと10年くらいはアジア一のチームなのだけれど。 戦術的な脱皮(だっぴ)が急務だ。

中国
2002年の予選を戦うためには、ミルティノビッチ監督が根気強く 今の戦術を徹底させることが必要だろう。中盤(ちゅうばん)の選手の 守備の意識が薄く、まん中から後ろのバランスが悪い。 サイド攻撃とヘディングの質の高さはアジア一かもしれない。

イラン
黄金時代だ。バゲリ、ダエイ、マハダビキア、アジジ などは、世界的にも一流の選手だ。ここ15年で最もいいチームだと 思う。ダエイは、ヘディングは、今世界一強いのでは?

サウジアラビア
いつも平均点の高い選手が揃っている。若い選手も育っている。 90年代のアジアサッカーは、サウジアラビアの時代だった。 来世紀もアジアのリーダーであるのは間違いない。 特に、ジャバー、アルディアイエは、世界的レベルの選手だ。

カタール、クエート
中東の強豪(きょうごう)だ。どちらかと言うと守備的なサッカーか。 一時はアジアサッカーのリーダーだったが、やや小粒(こつぶ)に なった観は否めない。

日本
3バックを採用しているが、あいかわらずサイドの守備が弱い。 バックスの背が低いのも弱点だ。中盤の選手の足もおそい。 ここにあげたチームの中では、シュートレンジが最も狭いのも気になる。 ミドルシュートがないので、引いて守られると突破できない。 戦術的には洗練されているので、唯一、世界レベルの選手である中田が ボランチに定着すれば、アジア最強のチームになるかもしれない。

 


 

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2000年09月


 
09 / 01

日本には自動販売機(じどうはんばいき)がたくさんある。
当然、飲物の種類も多い。

「ねえ、買い物のついでに、缶コーヒー買ってきて」
「いいよ。何がいいの」
「何でもいいよ。ブラックね」
「砂糖が入ってないやつ?」
「ああ、そうそう。できれば、本当に入ってないのがいいなあ」
「本当に入ってないの、って、何」
「いや、ノンシュガーって書いてあっても、甘いのがあるんだよ」
「へえ、どうして」
「多分、砂糖じゃない甘味料(かんみりょう)が入ってるんじゃない」
「ああ、そうか。ややこしいね」
「ポッカのブラックがあれば、買ってきて」
「ああ、なかったら、何でもいいのね」
「うん」

多分、缶コーヒーだけでも20種類くらいは簡単に探すことができる。
値段は120円で、ほとんどは「甘過ぎる」と外国人には不評だ。

 


 
09 / 05

TO BE OR NOT TO BE という映画があった。監督はエルンストルビッチ 。
白黒映画(しろくろえいが)の傑作(けっさく)だ。

主人公は、シェイクスピア専門のイギリスの田舎劇団の役者達。

日本にも地方を転々(てんてん)としている劇団がある。

芝居小屋と言われる劇場(げきじょう)があり、そこで1週間から 1カ月ほど公演する。こちらはシェイクスピアではなく、江戸時代に 書かれたものをベースにした人情 喜劇(にんじょう きげき)が 多いとのことだ。つまりは時代劇である。

劇団や芸人が地方を回ることを「どさまわり」ということがある。 これは、東北に佐渡(さど)という島があり、こんなに 遠いところまで赴(おもむ)くという意味があるそうだ。 あまりいい意味ではない。

いつのころからかは、わからないが芸人やミュージシャンの間では 言葉をさかさまに言うのが符牒(ふちょう)となっている。 「さど」をさかさまに読んで「どさ」

どさまわりの劇団は、戦前から多くあったそうだが、今は 少なくなった。
劇場も老朽化(ろうきゅうか)が進んでいる。

 


 
09 / 06

アメリカで日本のタイヤ会社のリコール騒ぎが話題になっている。

国内でも時期を同じくして、三菱(みつびし)自動車のリコール隠しが 報道された 30年もの間、密(ひそ)かに修理を続け、ひた隠しにしていたとのことだ。 報道の後も、会社は、被害者に金品(きんぴん)で口封(くちふう)じ を行ったそうだ。

このようなやり取りがあったそうだ。

1)まず、お菓子などをもって、おわびに行く。
2)日にちを置いて、電話で、お金で解決できないかと連絡する。
3)断ると、数日後、金額をあげて交渉する。

1)で、まず、お金を受け取る人物かどうか見抜き、2)で様子を見て 3)で、本格的な交渉に入る。 といった手順のようだ。

これは国際的に日本の企業の評判を落とす行為だ。
「日本の会社がお菓子を持ってきたら気をつけろ」などと言われないよう フェアで透明性(とうめいせい)を持った対処(たいしょ)を してほしいものだ。

 


 
09 / 08

食品に異物(いぶつ)が混じるという事件が続いている。
異物にもいろいろあって、虫やプラスティックなどだ。

日本のメディアの一般的な傾向だが、ひとつ大きな事件があると 同じようなケースを探すことがある。 毎日のように、パンやお菓子に虫が入っていたという類(たぐ)いの ニュースが流れている。
もちろん、これまでもあったことだが、報道されなかったことが 次々にあきらかになったということだ。80年代、日本の産業の キーワードとなった「品質管理(ひんしつかんり)」に関わる ことなので、過剰(かじょう)に反応しているとも考えられる。

しかし、これらのニュースの中でも健康や人命(じんめい)に関わる ケースも多い。ほとんどは客からのクレームが明るみに出たという ことのようで、日本では会社内の人物からの内部告発(ないぶこくはつ) は少ない。

会社への忠誠心(ちゅうせいしん)を最も重んじる日本の企業体質 の負(ふ)の面があらわになったということのようだ。

 


 
09 / 09

コンピューター業界だから仕方がないといって、あきらめている 人も多い。
だが怒る人も多い。

「すみません、おたくの会社のソフトを買ったんですが」
「はい、ありがとうございます。」
「おまけに、英語の書体(しょたい)が500ありますよね」
「はい、ございます。」
「で、それはいいんですが、その書体の名前が書いてるリストがありますけど
  それが実際のものと違うんですが」
「はあ、、、少々お待ちください」

しばらくして

「もうしわけありませんが、リストは付いてございません」
「え、じゃあ正しいリストはないんですか」
「申し訳ございません」
「じゃあ、ひとつひとつ、見ないとどんな書体かわからないんですか」
「たいへん申し訳ございません」
「ホームページで公開してくれませんか、困りますので」
「申し訳ございません、その予定はないということです」

500の書体を一つ一つ見る時間はない。結局、まったく使っていない。

「すみません、先日修理に出したキーボードですが」
「機種名(きしゅめい)とお名前を」
「TK-P289JPWです。名前は木村です」
「はい、少々お待ちください」  

しばらくして

「もしもし、有償(ゆうしょう)の修理になります。先日 見積もりをお送りした
 はずですが」
「え、届いてませんけど。じゃあこちらのミスで無くしたのかもしれませんから
  今、修理代がわかれば、教えていただけますか」
「ええと、では、折り返し、お電話いたしますので」
「今日中にご連絡いただけますか」
「はい」
「お願いします。電話番号は。。。。」

結局、電話はこなかった。この後、この会社に2度、電話した。 昨日も電話した。

昨日も「今日中に連絡します」と言っていたが 結局、連絡はない。この会社はサポートだけアフリカにあるのかも しれない。

売ってしまえば、それで終わり。といった風潮(ふうちょう)は あきらめるしかないのだろうか?

 


 
09 / 12

インターネット関連のベンチャー企業は、日本にもいくつかある。 先日、テレビに出ていた人々は、60才ほどのキャスターの質問に 答えていた。

キャスターは、「その仕事を一生、本気で続けていく意志はあるのか」 とか「あなたは確かに優秀(ゆうしゅう)だけれども、いい社員は 集まるのか」 などといった質問をしていた。

50才以上のいわば、旧世代に属する人々が聞きたいことは、やはり こういうことらしい。
20代のベンチャーの社長達は、これに 「一生をこの仕事に捧(ささ)げます」とか 「命をかけて、音楽配信の仕事を全(まっと)うしたい」 「私なんかいなくても会社は動くくらい社員は優秀です」 などと、驚くほどまじめな顔で答えていた。

無駄(むだ)な対話(たいわ)である。

 


 
09 / 13

9月は台風(たいふう)の季節だ。 アメリカでは、台風に名前をつけるらしいが、日本では、一号、二号 などと数字であらわされる。

気のせいかもしれないが、ここ10年は、台風の被害は減ったような 気がする。20年ほど前は、3年に一度は、大きな台風が日本を直撃 (ちょくげき)し、多きな被害が出た。

日本は、かつて木造建築が中心で、地震や台風、火事などの度に 悩まされた。それでもヨーロッパや中国のように石造りが広まらなかった のは、やはり資源不足によるものだそうだ。 おかげで木造建築の技術は高くなった。

大工(だいく)は尊敬され その技術は需要も多かったせいで、数も多かった。
今、日本の子供がいちばんなりたい職業は大工だそうである。

 


 
09 / 14

大雨で東京と大阪の中間地点にある名古屋を中心に被害(ひがい) が出ている。

天気予報は、最近、精度(せいど)が高くなっているそうだ。 長期予報は当たらなくなったが、一週間程度の予報は、ほとんどと いっていいくらい当たるようになってきた。 予報が当たっても、被害はあまり変わらない。

日本は地震が多い国 でもあり、建築物に関する法律は厳しいが、雪や雨に関する対策は 遅れていると言われている。
川も多く、特に雨に対する対策は大規模な公共事業が必要となる。

この公共事業は、昨今、政治家と建築会社の癒着(ゆちゃく)や 環境汚染(かんきょうおせん)なども問題があり、見直(みなお)し がすすめられている。

 


 
09 / 15

国内でもオリンピック関連の番組が増えてきた。

スポーツが好きな人はテレビを見るだろう。サッカーが好きな人や 水泳が好きな人も見るだろう。 しかし、ほとんどの人はオリンピックそのものが好きな人たちだ。 日本にはたくさんいる。

「昨日、サッカー見た?」
「あれ、オリンピックはあさってからじゃないの?」
「サッカーは、早く始まるんだよ」
「へえ、勝ったの?日本」
「いや、日本は明日」
「あ、そう、じゃあ昨日は」
「カメルーンとかね。よかったよ。カメルーン」
「日本じゃないのに見るの?」
「まあ、日本はもちろん見るけど、サッカーが好きなんだよ」
「へえ、私は日本が強い競技しか見る気がしないなあ」
「そうなの? 日本が強い競技ってつまらないものが多いよ」
「でも感動的じゃない」
「どうでもいいよ金メダルとか」

東京オリンピックが行われたのは1960年代。
日本の経済成長の 真(ま)っ直中(ただなか)だ。

オリンピックが、経済成長を加速(かそく)させたという声は多い。
以来、日本人はオリンピックマニアになってしまった。 時差が少ないこともあって、テレビ放送の時間はオーストラリアより 多いそうで、ひょっとすると世界一かもしれないと言われている。

 


 
09 / 19

オリンピックなのでスポーツの話題を。

柔道(じゅうどう)は、オリンピックの中で数少ない日本の競技だ。
しかし、オリンピックの柔道を見る限り、違うスポーツになりつつある と感じられる。

相撲(すもう)もそうだが、日本のスポーツには、暗黙(あんもく) の了解(りょうかい)が多い。
例えば、相撲では、最初に両者がぶつかる「立ち会い」では、両者が 呼吸(こきゅう)を合わせなければならない。どちらかが早くなると もう一度、やり直すことになる。
柔道では、相手の襟(えり)をつかむ「組む」という行為に難しさ がある。 組まなければならないということは、ルールにはうたわれていない。
しかし、日本には、柔道は両者が組み合ってから、それぞれに技を競う。 という暗黙の了解があった。
組まない者は、「卑怯(ひきょう)な者」であった。 現在のルールでは、組まないということは、「戦意がない」と見なされ 「指導(しどう)」を受けポイントを失う。 しかし大きな失点(しってん)ではないため、正面から戦いを挑まない ことも戦術のひとつと考えられつつある。

日本で放送される柔道では、解説者が、組まない外国人選手に対して 批判的だ。途中でポイントで有利になると、戦いを避け、逃げる 試合をする選手に対して、「卑怯だ」とは言わないが、これは 柔道ではないといった言い方をする。

厳格なルールに基づいて歴史的に洗練(せんれん)されてきた 欧米のスポーツに較べて、ひとつの国で行われてきたスポーツを 「国際化」するのは難しい。

柔道は今、岐路(きろ)に立っている。

 


 
09 / 20

水泳もかつては日本が得意とした競技であった。

島国で川も多い日本は、泳ぐことは日常のことで、夏になると1カ月 以上は外でも泳げる期間が続く。 しかし今や水泳は、パワーの時代になった。科学的なトレーニングも 多用され、体格のいい選手が有利だ。

オーストラリアのソープ選手などを見ていると、その伸びやかな ストロークは、巨大戦艦が動いているようだ。

どの競技にも言えることだが、日本では、特に男子選手は苦しい。 女性より体格の差が激しいということもあるが、なにより経験不足が 大きい。

スポーツというのは、自分より強い人と争わないと上達しないものだ。
女性は、国内でも男性を相手に経験を積めるというアドバンテージ がある。

 


 
09 / 21

夏でも冬でもスポーツとは違う基準で勝者が決まる競技がある。

アイススケートやシンクロナイズドスイミングなどだ。 そこには「芸術性」といった基準が存在する。

公平性を期すためにいろんな国から審査員を選ぶことになっているが いまひとつすっきりしない。 どう考えても「美」の基準は欧米よりになってしまうようだ。

アジアやアフリカに異なる美の基準があると言うよりは、美を 計量化する考え方がないと言ったほうが近いのかもしれない。

むしろ、サッカーなどの競技では芸術点は、つけられるかもしれない。

パスやゴールキーパーのセーブ、シュートなどで、今回、最も美しかった 選手に金メダルをあげてもいいような気がする。 こちらはスポーツそのものが持つ「美」だ。 全日程が終わった後に各国から出場選手3人が投票し、決める。

私は今の所、ブラジル対南アフリカ戦の南アフリカの一点目の フリーキックだ。

 


 
09 / 22

今週からオリンピックの話題です。電車の中で聞いた会話。

「一日中、オリンピックやってるね」
「ねえ、でもバスケットあまりやらないね」
「日本が強い競技(きょうぎ)が中心みたいだね」
「知り合いの中国人が怒ってたよ」
「ああ、仕方ないね」
「でも体操(たいそう)とか陸上とかって4年に1回しか見ない人多いだろうね」
「そうだねえ。オリンピックならではというカンジね」

これは喫茶店で聞いた女子大生の会話

「ねえ、水泳の選手って肌(はだ)きれいよねえ」
「あ、私も思った。白いしね」
「若いっていうのもあるけど食事がいいのかな」
「運動してるし新陳代謝(しんちんたいしゃ)とかよさそうよね」
「塩素(えんそ)じゃない! 塩素!」
「プールの消毒剤の塩素ね。ありえるわね」
「一日中泳いでるんでしょ?」
「そうね」
「でも泳ぎ過ぎると、体格よくなっちゃうわよ」
「肩幅(かたはば)とかね。でもあそこまでやらないから」
「そうね。でもあの肌はうらやましいわあ」

 


 
09 / 26

あらゆる言語に共通して存在する言葉というものは、そう多くは ないに違いない。 スポーツのすばらしいところは、走る、飛ぶ、投げる、といった 数少ない人類共通の言葉を共有することにあるのかもしれない。

今回、走るという言葉の最も美しい翻訳(ほんやく)は マイケルジョンソンなのではないかと感じた。 圧倒的な力を持ったチャンピオンというのは、いくつか存在するが 陸上競技のような、世界的なスポーツで、しかも短距離で あれほど強いのは、奇跡(きせき)に近い。

彼の特徴のある走り方は、最初に見たときは、驚いたが、今では 当たり前のように感じる。しかし、あのフォームで走れるのは 彼しかいないのだ。

 


 
09 / 27

オリンピックの種目で日本で生まれたものは、まだあった。

今回から自転車競技に加わったケイリン(競輪)だ。 競輪は、日本では公営ギャンブルのひとつとして行われている。 しかし詳しい人に聞くと、日本国内での競輪とオリンピック競技 としてのケイリンは、少し違うようだ。

戦後まもなく公営ギャンブルとして出発した競輪には、これまで いろいろと黒い噂(うわさ)があった。 戦後の代表的な作家である坂口安吾(さかぐちあんご)は、競輪の 八百長疑惑(やおちょう ぎわく)について長い文章を書いたりしている。

また90年代に亡くなった作家の阿佐田哲也(あさだてつや)は、競輪 について多くのエッセイを書いてファンを増やした。 今でもどちらかというと、日陰の存在だが、若いファンも増えている とのことだ。

自転車といえば、現在、世界で自転車部品のトップメーカーは、日本の シマノという会社だ。 町には、自転車があふれている。

そう、日本は自転車大国でもあるのだ。

 


 
09 / 28

柔道の決勝戦でミスジャッジがあり、日本の選手が負けたことで 一時は騒然(そうぜん)とした雰囲気(ふんいき)が漂った。

コーチや監督は審判に猛然(もうぜん)と抗議(こうぎ)していた。
彼等は英語で抗議すべきだったが。

解説者は興奮(こうふん)し、ニュースを伝える国営放送のアナウンサー までもが涙声であった。 ミスジャッジは、どんなスポーツでも起こるものだが、決勝のミスは 大きかった。 しかし、このような大会で起こったことは、よかったかもしれない。 サッカーでも歴史的なミスジャッジというものがあり、それによって ルールや審判や道具を改善してきた経緯がある。

しかし、イングランドとドイツの有名なゴールの判定などは、 今でも「あれはゴールじゃない」と言い張る老人の顔を見ていると 楽し気でもある。
それもスポーツの豊かさかもしれない。

これで今後、判定(はんてい)の公平性や透明性を巡って論議が生まれ 柔道はひとつのスポーツとして洗練されていくと思われる。 今回の大会は、柔道本来の技で決まることが多かった。ここ数年 柔道はポイント差の判定で決まることが多く、その魅力を失いかけて いたことを考えると、ひとつの進歩だと考えてもいい。

柔道のような格闘技は、ルール作りが難しい。 私が日本人だから言うわけじゃないけれども、本来は、面白いスポーツ なんですよ。柔道って。

 


 
09 / 30

歌舞伎(かぶき)や落語(らくご)では、一流の証(あかし) として、名前を襲名(しゅうめい)する、ということがある。 江戸時代の名人の名前は、その時々の名人が名前を継(つ)ぎ、 今に至っている。昔の名人と区別するため、「5代目(だいめ)の ~」などと呼ぶ。

「ブブカ、見た?」
「見た、見た。カッコよかったねえ」
「4回目なんでしょ。すごいね。何歳なんだろう」
「ねえ。もしかして、ウクライナの棒高跳(ぼうかたと)び のチャンピオンは
  ブブカって名前で出場するんじゃないの」
「どういう意味」
「ほら、歌舞伎みたいに、名前を襲名(しゅうめい)するのよ」
「ハハハ。じゃあ、あれは2代目っていうこと?」
「そうそう。まあ、それは冗談だけど、それくらい凄いよね」
「16年世界チャンピオンだもんね」
「今回、予選落ちしたけど、ああいう引退(いんたい)はいいよね」
「そうね、きちんと負けて引退するほうがいさぎいいよね。
  絶頂期(ぜっちょうき)に引退するのは、いろいろ計算がありそう」
「そうそう、一番高い時に売る。みたいなカンジね」
「ブブカは偉いよ。最後まで競技者として終わったんだもの」

日本では、「引き際(ぎわ)の美学(びがく)」などと言って 芸術家もスポーツ選手も力が落ちる前に引退する人が多い。
オリンピック選手は、引退後、政界(せいかい)や俳優など 華やかな転身(てんしん)をはかる人もいるが、日本ではほとんど 教師か、コーチ、大半はふつうの会社員として一生を終える。

 


 

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