漁村

小さな漁村。

港を囲むように小高い山があり、そこには、海の安全を見守る小さな祠(ほこら)がある。

年に一度、海の男達は、正装をし、そこに参ることになっている。

この祭りは、昼過ぎには終わってしまい、夜店もでない。
おごそかな、しかし、大切な行事だ。

男達は、概して荒っぽく、無口だが、人はいい。

一度、選挙の時、「演説がうるさい」と、候補者を海に投げ込んで逮捕されたのが
今の村長。

町の食堂は、寿司もてんぷらもラーメンもある、いわゆる大衆食堂だが、なにせネタが
新鮮で、村中の人々が魚を知り尽くしているから、何を食べても魚の味がするけれども
うまい。

海岸沿いに、国道が通っており、宿を兼ねたドライブインがあるが、ここは村の
宴会場となっていて、宿泊客は少ない。

魚料理がうまいので、ガイドブックに載せようと出版社から依頼が何度もあったが
「いつ宴会が入るかわからないから」
と、なかなかOKしない。

ああ、こういうところで、一週間のんびり休みたい。


のんびり

ゆるやかな山の線を背景に、田園が広がっている。
近くには川が流れており、夏には、子供たちが木造の橋から飛び込むことで勇気を示す。

村には、コンビニが一軒。

バイクに乗った高校生が、いつもたむろしているが
店を訪れる人に、「さっき、お母さんが呼んでたぞ」と言われると、あわてて帰る。

村長さんは、若いころ、災害に見舞われたこの地域を命をかけて救ったことで
村民からたいへんに尊敬されているが
本人は、そのことを語りたがらない。

村長は、たびたび、県庁に出かけては、県の職員と喧嘩をして帰るため補助金は
少ないが、村の農産物は、評判が高く、財政は安定している。

村には釣り客のために民宿が一軒あるが、釣りが目的で来た客は、すっかりこの村の
のんびりした空気に染まり二日も滞在すれば、釣りもそこそこに、地元の子供たちと
カニを取って遊んだりするようになる。

ああ、こういうところで、一週間、のんびり休みたい。


室外機

今週は、暑かった。都心では、常に40度を越えていたのではないだろうか。

会社員二人の会話

□ うちの会社と隣のビルのの間に道があるでしょ?
■ ああ、あの細い道ね。
□ そう、あそこね。今、面白いよ。
■ 面白い?
□ そう。エアコンの室外機(しつがいき)がたくさんあるでしょ
■ ああ、暑そうね。
□ そう、あの道は、50度以上あるらしいよ。
■ いつもは、抜け道だから、結構人も通るんだけどね。今、ぜんぜん、いない。
□ へえ。
■ 道に入ろうとするんだけど、驚いて、止めちゃう。
□ 通り抜けるのも無理?
■ うん。ぼくも挑戦したけど、すごかった。
□ へえ。
■ 学校帰りの中学生とかね。喜んじゃって。
□ ああ、楽しいかもね。
■ そう、走りぬけてた。競争して。


怪談

□ 怪談(かいだん)って、しなくなったね。
■ 怪談って、怖い話ね。
□ 夏になるとさ、友達が集まると必ずしたけどなあ。
■ へえ、夜に?
□ そう。花火なんかで集まるでしょ。そのときとかね。
■ ふうん。おまえ、話すの?
□ いや、上手なやつがいて、話すんだよ。
■ へえ。オレは、おぼえがないなあ。
□ そう?
■ あ、キャンプの時はね、やったよ。
□ そうでしょ。オレはあまり話すほうじゃなかったけど。
■ 「おまえも何か話せよ」って言われるもんな。
□ そう、それで、短くて怖い、で、時々思い出すような怪談をいろいろ、考えた。
■ へえ、何?
□ いや、通学路に坂があってね。夜の9時ちょうどに
  自転車に二人乗りの血みどろの兄弟が坂の上から降りてくる。
■ ああ、その場では、あまり怖くないけど、、、
□ 後で、思い出すと怖くなるでしょ。
で、すれ違って、気がつくと、いつの間にか、その血みどろ兄弟の後ろに自分が
  乗っていて、家には帰れない。

■ なるほどね。
□ この話は、あっという間に広がって、その年は、その坂は夜、子供が減ったらしいよ。


薄型テレビ

夏が暑いと、エアコンが売れる。

とか

オリンピックの年はテレビが売れる。

とか、言われるが、こういう予測は結構あたるもののようだ。

薄型テレビが売れている。

液晶(えきしょう)とプラズマ方式の2つが主流で、値段は1インチ1万円以上。

新聞に入っている広告も、テレビ、テレビ、テレビだ。

スポーツを大画面で見たいという気持ちはわかるけれども、薄型である必要はない。
同じサイズなら、古い形式なら、四分の一以下の価格で買うことができるし
機械の寿命は古い形式のもののほうが、圧倒的に長い。

しかし、店頭にはもう古い形式のテレビは、ちょっぴりしか置いてない。

今、買おうとすると、「え!こちらを、お求めですか!」
なんて店員に驚かれるのではないだろうか。