【学習ノート】日本語教師と法律

目次

「学習ノート」とは
この記事は学習ノートとして、投稿後も追加や修正をしていきます。初投稿は2016年7月18日です。

以下は仕事として日本語教師をやっていくうえでぼんやりとでも知っておいた方がいいことは何だろうと調べたプロセスの記録です。まだ途中です。リンクが主ですが、整理するために書いたメモ程度の文もあります。

日本語教師は終身雇用が約束されているような職場はなかなかありません。非常勤が7割超。専任であっても、いくつかの学校を渡り歩くケースが多いですし、大学も長期の雇用が約束されているポストはあまり空きません。つまり、ほぼすべての日本語教師はフリーランスです。
しかし、日本語教師の利益を代表するような組織はありません。既存の組合が日本語教師のために何かをしたということはあったのかもしれませんが、現在、まったく成果はあがっていないと言っていいと思います。もちろん、日本語学校の組織が日本語教師の待遇改善のために何かをしたという話はここ20年くらい聞いたことがありません。

組織に頼れず、ほとんどの場合、組織と仕事をするしかないフリーランスにとって、最後に頼りになるのは法律です。自分の仕事に関わる法律はざっくりとでも知っておいて、法律の活用の方法もひととおり頭にいれておいたほうがいいと思います。

この学習ノートは、追加、修正しながら、専門家の方のチェックなどを経ていつか完成させたいと考えています。出版も考えています。間違いなど、ご指摘はAbout usのフォームかツイッターの @webjapaneseJ にお願いします。

 

学校関係の法律

 

まず、最初に、そもそもホントに法人なのか?学校法人なのか?というチェックもしたほうがいいかもしれません。

学校法人情報検索システム
http://meibo.shigaku.go.jp/
法人のチェック
http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

日本学校は個人経営のところもありますので、経営の形態は最初に確認しておきましょう。

日本語学校をめぐる法律の構造

 

日本語学校は「学校」と呼ばれていますが、正式には「日本語教育機関」がいいみたいです。法務省が留学ビザで生徒を集めてよろしいと認可したところをこう呼びます。「病院」は、病院と名乗るためにはベッド数や必要な施設など細かい条件があって、条件に満たないと医院になったり、クリニックになったりしますし、「アイスクリーム」という名前を名乗れるかも、きちんと成分で決まりますが、学校は今のところあまりルールはないようです。つまり「学校」と名乗っているからといって、特に信用には繋がらないということです。

日本語学校を作る際は、文科省と法務省の両方からOKがでないとダメということになっているようです。ここでは細かいことはともかく、日本語学校が縛られる法律、ルール、規制についてざっくりと整理して。

日本語学校の運営主体は、行政法人系、学校法人、準学校法人、各種学校、株式会社、個人と、いろいろな種類があります。株式会社などには一見、法的には学校に関する法律は適用されないようですが、株式会社からはじめて税制上も有利な学校法人に「出世したい」と考える経営者は多いようですし、日本語学校の規制も学校に関する法律が下敷きになっている以上、やはりかなり影響下にありそうです。ひとまず「学校」というところから考えてみます。

学校に関する法律は、理念が書かれた教育基本法があり、次に、定義などが書かれた学校教育法があります。事実上、実務において関係が強くなるのは、この学校教育法からです。

まずWikipediaでざっくりと

学校教育法 Wikipedia
https://goo.gl/1yctVO

学校教育法(法律)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO026.html

で、この学校教育法を下敷きに、さらに、具体的な規制などが書かれている学校教育法施行規則というのがあります。

学校教育法施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03501000011.html

ここには、私立、公立問わず大学は学生数など情報公開の義務がある、というようなことが書いてあります。ここから枝分かれしていき、そこで、例えば教室の定員は小学校で35人、中学で40人まで、というような記述があります。

ここまでは、「学校」に関する基本的なルールです。

 

 

日本語学校周辺のルール

 

で、その先ですが、民間の学校の場合、業種はさまざまで監督官庁が違います。監督官庁から業界団体を通じて、指導をし、規制を作っています。学校関係の法律が一階だとしたら、この規制が二階。二階建てになっている、というカンジでしょうか。

現在、留学ビザで学生を入れていい正式な日本語教育機関であると認定するのは法務省なので、法務省が出している文書が「二階」のルールです。

法務省の関連文書参照先のトップ
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html

に以下の2つの文書が参照されています。この2つが日本語学校に関わるルールです。

日本語教育機関の運営に関する基準(法務省)
http://www.moj.go.jp/content/000073836.pdf

日本語教育機関審査内規(法務省)
http://www.moj.go.jp/content/000073837.pdf

「二階」で、より厳しくなる分(教室あたりの生徒数は20人になるみたいな)は、厳しいほうが適用される、で、この「二階」に書いてない部分は、基本、一階部分の学校教育法の延長上で解釈するのが妥当と考えるのがいいのかもしれません。

例えば、専門学校の日本語科などは、母体の専門学校が美容なら美容の学校業界のルールがあるはずです、それも「二階ルール」として守らなければならない。で、おそらく1教室あたりの学生数は20人より多くてもOKなはず。でも、少なくとも日本語科に関しては、この法務省の基準のほうの「もうひとつの二階ルール」にも縛られる、ということだと思います。

さらに、この法務省の二階部分のルールは、2016年に新しくしたいと法務省が提案をしました。

法務省が2016年3月に出したパブコメ(新基準案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130101&Mode=0

ST比での管理の他にも校舎を所有するか長期の賃貸契約がないとダメなど、学校法人並みの規制強化となっています。どうなるかはわかりませんが、流れとしては、経営基盤強化を求められているという印象です。

2016年7月にパブコメの結果を受けて新しい基準が示されました。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130101&Mode=2

 いちお記録のために関連PDFを保存しておきます。
意見募集の結果について
日本語教育機関関係
日本語教育機関の告示基準(修正見え消し版))
日本語教育機関の告示基準(確定版)

変更点を中心にざっくりと書きますと

・定員規定が厳しくなった。
・生徒20人に対し1人以上の教員、40人に対し1人の専任教員を置かねばならない。
・校舎は自己所有か20年以上借りられる保証があること。
・入学在籍(出欠)管理&指導を行い記録し、届け出する義務ができた。

*「40人」基準は、2020年の10月からで、それまでは移行時の暫定措置として60でもOKとなっている。

認可の取り消しは

・全生徒の一ヶ月あたりの出席率が五割を下回る時
・失踪者が50%を超えた時。
・生徒に人権侵害が行われた時。

など入学での不正、在籍管理に関してはすべて取り消しの対象となる。

* 教室の生徒数の上限は20人は変わらず。

以上、校舎の自己所有や専任の配置強化などにみられる経営基盤の安定と
生徒の入学、在籍管理をより厳しくという方向になった。
専任の雇用が定員数が基準になったことにより、定員と定員充足率を軸に
教育内容に関してはみていくことになったとも考えられる。

また、認可の取り消しの対象となっている1条18号は

「教育水準の向上を図り,日本語教育機関の目的を達成するため,次に定めるところに
より,活動の状況について自ら点検及び評価を行うこととしていること。

イ点検及び評価を行う項目をあらかじめ設定すること。
ロ結果を公表すること。」

とあるので、この法務省の基準に達しているかは結果を自ら点検しそれを
公表されることも求められている。

 日本語教育振興協会は、法務省の「下」で日本語学校の審査もしているけどあくまで「参考」で、権限は法務省にあるよと事業仕分けで法務省はつきはなした答弁をして、日振協は不要か、みたいなことになりましたが、今も日振協の日本語学校の審査は続いてますし、審査料も値上げしたりして、存在感は取り戻しつつあるようです。ただしあくまで日本語学校の許認可は法務省だというのは、2016年のパブコメ募集にもジワリとあらわれているという気がします。
□ 行政刷新会議ワーキンググループ「事業仕分け」 WG-B(財)日本語教育振興協会
http://webjapanese.com/blog/j/data/files/NisshinkyoooShiwakeGiji.pdf
□ 事業仕分けで明らかになったこととその後の反応(日振協)
http://blc.jugem.cc/?eid=791

「#日本語学校 #基準」で検索すると法務省の「日本語教育機関の運営に関する基準」と同じ文書が日振協のURLで出てきます。こっちを参照している人のほうが多いかもしれませんが、法務省にあるほうをブックマークしておいたほうがいいかも。
日振協のほうの「基準」
http://www.nisshinkyo.org/review/pdf/index02.pdf

2016年末に日本語教育振興議員連盟ができ、日本語教育振興基本法を作るのが目標とのこと。それを受けて法務省はルールを厳格化すると発表しました。

「留学」生の在留審査で 提出書類を見直し ~法務省入国管理局が7月期生以降の審査方針を明らかに~ 
http://blc.jugem.cc/?eid=1176

「平成27年における除籍・退学者数が10人以上」 確認された学校が、中国、ベトナム、ネパール、ミャンマー、 スリランカの5か国から学生を受け入れる場合には、 留学希望者の経費支弁能力に関する必要書類が増える。 従来求めていた(1)経費支弁するに至った経緯書(経費支弁書) 、(2)経費支弁者と申請人の関係を立証する書類( 親族関係公証書等)、及び(3)預貯金の残高証明書に加え、(4 )資金形成経緯を明らかにする書類として「 出入金明細書又は預金通帳の写し等」が新たに追加される。 また日本語能力についても、日本語能力試験N5〈4級〉相当( 授業時間150時間) 以上を有していることを証明する資料の提出が求められる。

とのことです。この10人は今後は運営しながら調整していくとのことでした。

 

地域ごとの規制

 

学校を作る際は地方自治体の許可が必要なので、自治体ごとに独自の規制があるようです。地方自治体の認可の基準にも教室の定員は40人などとありますが、基本的には、中央の規制(学校教育法)よりもゆるいというケースはほぼないと思われます。(教育はまだまだ地方の権限は弱いという話も)ただし「特区」などで一時的にゆるい規制でOKになるケースもあります。特区は法律とは関係なくテスト的にやろうということなので、この「3階」のルールが最も強い、ということになるレアケースです。

東京都の私学行政:1教室あたりの人数制限など。学校全般に関わる規制。全国の自治体の規制の基本になっている模様。
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/shigaku/sonota/0000000077.html

 


規制以外のあれこれ

 

規則や規制でいくつかの層がある、ということの他にも、業界のムード、空気も重要です。規則として文言にはないけど、自主的に、このへんはこうしよう、みたいなものが存在することがあります。

例えば、大学では、専任教員1人あたりの生徒数(ST比)は20を超えると問題とされる空気があります。ただ、どこもハッキリと規制はしていない(と思います。見当たらない。指導的なものは散見される)。でも空気があるので、大学などでは、それほどST比は高くならない。広告でうたうところもあり市場原理によるプレッシャーもある。しかし、日本語学校にはそういう空気はないので、ST比が30を越えても問題視されない、ということもあります。

専任と非常勤の比率も、事実上、規制はありませんが、なんとなく非常勤が5割越したらダメだろ、7割だと、もう教育は外注しているようなものだろ、という「空気」は大学には、あるようですが、日本語学校業界には、まったくありません。伝統校、名門校でも8割くらいが非常勤ということは珍しくありません。ルールはあるけど認可取り消しなどの深刻な罰則がなければ守られないのも「2階」の業界ルールの特徴です。これが「1階」のルールならもうちょっと守られるはずですが。

 また、例えば、日本語学校の2階のルールで、教室あたりの人数が20人となっているのは、より厳しい規制という側面だけではなく、大手が参入しにくい、つまり、小規模の学校の経営者にとって有利な参入障壁として機能している、業界にとっての利益も反映されている、という側面があります。

 

学校の情報公開について

 

学校の情報公開に関しては、学校教育法で、定員、在籍学生数、教員数、専任教員数など、細かいことを情報公開せよというルールがあります。
直接記述があるものは以下です。

学校法人の情報公開に関しては、こちらに記載があります。財務状況の中に定員や在籍学生数も含まれます。http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/004.htm

(大学の基本情報は、学校教育法施設規則(172条の2)に基づいて各大学のサイトで公開されています。学校教育法施設規則はこちら。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03501000011.html

 

日本語学校の情報公開について

 

上の学校関連のルールがひとまず学校の情報公開の基本となっていると考えることができます。教育関連の組織団体があるような業界では、学生数や教師に関する数字などは、公開の義務があると考えてよさそうです。日本語学校の場合も認可を受ける際に法務省に提出するデータは「全国日本語学校調査」という政府刊行物として90年代から毎年出版されています。今は民間会社が版元になっていますが、政府刊行物であることは同じです。情報公開に基づいて公開されていて、これも民間の出版社から出ているとはいえ、政府に提出したデータが元になっている政府刊行物ですから公益性の高い情報と考えることができます。

法務省が認可した学校に関しては、ここにリストがあります。告示校と呼ばれます。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho28-2.html

さらに、2017年に文科省が日本語学校の基本的な情報を公開するようになりました。

日本語教育機関における外国人留学生への教育の実施状況の公表について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1382482.htm

これでやっと、ネット上で日本語教育機関の基本的な情報がみられるようになりました。画期的だと思います。ただし告示校のすべてが文科省に情報を提供しているわけではありません。

2017年までは、こういう状況でした。

日本語学校全調査
https://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=309778

アマゾンでも買えます。

この日本語学校全調査はWeb版があるのですが、これは版元独自の製作らしく、データのヌケなどが多いです。

日本語教育振興協会でも、基本的な情報を公開しています。
http://www.nisshinkyo.org/

全国日本語学校連合会には学校の情報はネット上にありません。
http://www.jalsa.jp/

現在、全国日本語学校データベースと日振協にデータがない日本語学校は定員も在籍学生数もわかりません。学校にとって、定員や在籍学生数、教師の数、専任の比率、学費、進学先のデータなどは、学校を選ぶ学生にとっても就職する教師にとっても最低限必要な情報です。学校教育法の解釈からいっても、透明性を高めるためにも、毎年最新の状況をネット公開することを明確に義務化するか、どこか(すべての日本語学校が加入する組織がないなら法務省が)が公開すべきだと思います。

関連組織団体の情報公開に関する法律は後で出てくる「何とか法人」の情報公開についてに少し書きます。

 政府刊行物の著作権について
http://www.kwire.co.jp/blog/2013/08/24/65

 

「なんとか法人」について

 

「なんとか法人」についてざっくりと

独立行政法人、財団法人、社団法人、一般~、公益~、、、、

日本語教育関係の組織団体は独立行政法人から一般財団法人までいろいろ。ただし、比較的法律のしばりが少ない一般財団法人や社団法人であっても、公益を目的として作られることが基本で、その「公益性」を損なうようなことはできないと考えるのが自然です。(たとえば政府の審議会に呼ばれなくなるみたいなことになってしまうはず)。

また、財団法人が、公益を目的とした財産の集合体で、社団法人は人の集合対という違いがあり、どちらかというと、財団は目的のために集まった「お金の運用」が主で、社団は、理念を作り、その実現に向かって進む「人」が軸になっている、という違いがあるとされています。

もちろん「一般」よりも「公益」と頭につく財団法人のほうがより公益性が高いと考えられているようです。税制(法人税率)も有利。いずれにしても、そのサイトに、法律にのっとって、理念であるとか、規則であるとかが書いてあるので、そこにある文言に縛られます。そこから逸脱はできないし、その延長上で、公益性の目的達成の努力を怠れば問題となります。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO049.html

独立行政法人通則法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO103.html

*ここのところ、いろいろと法律が変わったりして、ややこしいんですが、基本は、この「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が軸で
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO049.html

現在はこの公益法人制度改革を経て、いろいろと整理されているものを読めばだいたいわかるようです。
公益法人制度改革 Wikipedia
https://goo.gl/IhXseJ

日本語教育関係のなんとか法人

国際交流基金は、独立行政法人、日本語教育学会は、公益財団法人、日本語教育振興協会は一般財団法人、全国日本語学校連合会(JaLSA)と全国日本語教師養成協議会は一般社団法人です。

財団法人、社団法人の公益性は濃淡あるといっても、日本語教育振興協会は長く業界の窓口として監督官庁とやり取りをしてきたところとして、「一般」といっても極めて公益性が高い。全国日本語学校連合会も政府の会合に日本語教育関係の組織として呼ばれることもありますし、これまた普通の社団法人と違って公益性は高いと考えてよさそうです。それぞれの概要、設立趣旨から外れることはできないはずです。

日本語教育振興協会 概要
http://www.nisshinkyo.org/about/index.html

全国日本語学校連合 定款
http://www.jalsa.jp/teikan.html

「なんとか法人」の情報公開について

いろいろと関連の法律があります。

総務省 情報公開制度
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/

情報公開法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12SE041.html

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13HO140.html

公益法人認定委員会
https://www.koeki-info.go.jp/commission/index.html

公益法人の情報公開について
http://www7a.biglobe.ne.jp/~wwd/90664291/

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO049.html

公益認定のメリットとデメリット
http://www.koeki-nintei.com/

一般法人・公益法人なんでもQ&A 情報公開の根拠規定は?
http://www.kohokyo.or.jp/forum2013/viewtopic.php?f=102&t=158

 

著作権関連

 

著作権は、ネットでは、自由な利用を阻害するという側面で語らえることが多いですが、何かを作る人にとって利益を守ってくれる法律でもあります。日本語教師は、素材を利用するだけでなく、教材を作ったりで権利者にもなります。バランスのとれた理解が必要です。

著作権法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

法律の文言は難しいので、著作権法 入門などで検索してざっと概要をつかんでおいてください。Wikipediaの解説や、その後の改正なども目を通しておいてください。

日本語教育において何か著作物を使おうという際に、具体的に、著作権の保護の除外対象になるのではと考えられるケースでは「教育機関だからOKなのでは?」「私的利用の範囲だから大丈夫?」「引用の範囲だからOKなのでは?」と3つがよく言われます。今のところ、大学以外の日本語教育機関は、3つともアウト(引用もネット上に出回ってる解釈だと危うい)だと思います。

民間の日本語学校は非営利の教育機関?

一部の民間の日本語学校は学校法人です。しかし、著作権法における「学校その他の教育機関」の「学校」とは、この学校教育法の一条にある、いわゆる「一条校」を指すものであって、一条校であっても、出入りの業者やテストや利用の状況によっては制限される状況を考えると、大学でないかぎり、学校法人であっても、専門学校や民間の日本語学校は、基本的には著作権法における教育機関だとはされないと考えるのが妥当です。

また「その他の教育機関」ですが、これを=学校法人とする記述もありませんし、普通に解釈すれば、そう考えるのも難しい。学校法人の数は7000を超え、増え続けており、種別も多岐にわたります。いわゆる日本語学校は法務省によって「日本語教育機関」として認定はされていますが、著作権法上の「教育機関」は、あくまで営利か非営利かが焦点になっています。予備校や専門学校などは、学校法人が経営母体となっていることが多いのですが私塾扱いです。学校法人の比率が三割前後の日本語学校が非営利の教育機関にみなされるというのは考えにくいし、学校法人がいくら建前として非営利とみなされているからと、その三割が特例となる可能性もほぼないはずです。

H16年に学校関連の著作権は、もうちょっとゆるやかにという方向で改正がありました。

学校その他の教育機関における著作物の複製に関する 著作権法第 35 条ガイドライン
http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf

ここでは、「学校その他の教育機関」となっていて、これまでどおり一条校を前提にした説明があることに加えて「その他の教育機関」の説明として、「社会教育においては、上記教育機関と同等の年間教育計画を有するところ」となっています。この社会教育というのは、社会教育法で定義されるもので、一般的な解釈では自治体やコミュニティで行われる生涯学習的なものですから、やはり、今のところ、日本語学校がこれに入るとは考えにくい(英会話学校などとは違い、日本語教育機関は法務省が認定しますし、社会的インフラのひとつだと思いますから、入ってもいいとは思いますが、地域の国際交流協会の日本語教室は入っても、民間の日本語学校まで入るとは普通は考えにくい。そういうことは何か業界団体からのアクションがあり、国が文書で回答するなど、法的にも正式に入れることになったという「何か」がないと難しい)(そして、日本語学校の学校法人の比率は小さく、著作権に関しても、その他の件でも、業界団体などによってコントロールされているとは言い難く、結果、あまり行儀のいい業界ではない状況が続く限り難しい)。

今のところは、日本語学校は、学校法人も含め、ここで×になっている「営利目的の予備校、私塾、カルチャースクール、営利企業の社員研修など」に属するもので、現状では(それがいいかどうかは別にして)大学以外の日本語学校は基本的に著作権法では「非営利の学校」と考えることは難しく、教育機関として例外扱いはされない、と解釈するしかありません。

私的利用の範囲

日本語の授業で使うなら「私的利用」と考えるのは無理です。これがOKならどんどん拡大解釈されてしまいます。

引用の範囲とは

・主従関係がはっきりしていること。

→ 例えば、作品の一部の引用であっても、その引用だけで成立するものはアウト。あくまで何かがあり、そのために必要なものとして引用されていないといけない。単純に、文字数が半分以下ならOKということではありません。あくまで総合判断。

・引用部分が明確で引用元が明記してあること。

・公表された著作物であること。

→ 公開、非公開ということはもちろん、ネットで誰でもアクセスできるからOKではなく、引用するためのソースが権利者の意志で公開されているかきちんと確認が必要。

 また印刷物や映画、絵画などを引用として使う場合、印刷、映画、絵画などは引用の際の加工(デジタルデータにすること)で劣化するという問題に対しても、ひとつの作品(映画絵画)などの一部を切り離して使うことに対しても、権利者は著作者人格権を行使してNOを言うことができます。このことからも、本人の許諾なしで簡単に引用するのはかなり注意を要すると考えた方がいいでしょう。論文などのように部分だけでも成立するものと、芸術作品のように全体でひとつの意味があるものでは、引用として部分を切り取って使うことに対する制限は、違うと考えるべきです(当然後者のほうが難しい)。著作権が存在する芸術作品の引用は、権利者の許諾を受けない限り、基本アウトと考えるしかありません(パロディなどでOKなケースはあったようですが、教材としての一部引用はちょっと違う)。

著作権に関する課題

著作権の考え方をもう少し柔軟にしようという流れはあります。TPPなどで欧米の著作権ルールに準じたものにしていくという流れも。そこでフェアユースという概念も取り入れようという動きはありますが、ここでも非営利かどうかという線引きがあります。例え取り入れられても、同時に厳しいガイドラインが設けられるはずです。

米国のガイドラインの例
http://www.unc.edu/~unclng/classroom-guidelines.htm
http://copyright.lib.utexas.edu/musguid.html

また、例えばGoogle for educationのガイドラインを読む限りでは、公的な教育機関と認定されるには、公教育関連(=ほぼ一条校と同じではと思います)の機関かNGOやNPOぐらいです。意外と厳しい。

2016年の法務省の日本語学校の新基準は、学校法人化を進める方向とも考えられますし、改革が進めば、もしかしたら近い将来は、日本語学校は日本の社会における必要な社会教育機関だと例外的に認定される可能性があるかもしれません。

で、現状の問題として「行儀の悪い行為」をきちんど正していくことも必要です。例えば、日本語教育関係者は平気で明らかに違法コピーの教科書を使ったりと、著作権関連、ゆるすぎるように思います。基本、著作権はクリエーターの権利を守るものなので、学校ぐるみでやっているみたいな悪質なものは通報したほうがいいと思います。

公益社団法人著作権情報センター
学校教育と著作権
http://www.cric.or.jp/qa/cs01/

著作権違反を通報する窓口

テレビ
放送コンテンツ適正流通推進連絡会
https://www.tv-copyright.jp/
アニメ
https://www2.accsjp.or.jp/piracy/piracy.php
インターネット
http://www.internethotline.jp/

*出版物などは出版元に直接連絡するほうが対応が早いとのこと。

 例えば、自治体や文化庁などの省庁はもちろん、国際交流基金などの独立行政法人が作った学習教材、素材などは、CCなどのライセンスで無条件で使えるものであるべきです。基本、税金で作ったものは、納税者は無条件に利用する権利があるというのが国際的な常識です。より積極的な配布が求められます。公益法人や一般財団法人や社団法人などでも設立趣旨に日本語教育への貢献をうたうならば無償で配布されるべきだと思います。

 しかし、日本語教師は素材を利用する人である、という考え方はもう古いかもしれません。CCの素材を利用、加工して二次的な素材作りも簡単になってきましたし、安いデジタルビデオを買って、サクッと動画を作り、簡単な編集ソフトで字幕を入れれば、目的にあったものが作れます。著作権を気にしながらが面倒なら、自分で作って、売るなり、CCで配布するなりしたほうが手っ取り早いと思います。私どもが2016年に出版した本とコンテンツ「日本語教育サクサク」では、動画の作り方、ライセンスの選び方、配布などを詳しく解説しています。Web版は無料で閲覧できます。CC BYで素材も配布しています。
「日本語教育サクサク」
http://webjapanese.com/books/books/sakusaku/

 

ネットやSNSでの注意点

□ 素材配布の場合

素材を配布する際は、ここに少し書きました。

日本語教育サクサク 著作権に関する知識
http://webjapanese.com/books/online/sakusakujiritsu/#i-7

→ライセンスをどうするか、みたいなことが中心です。もちろん、写真や動画では、人の顔は基本、許可をとってないかぎり公開するのはNGです。これは著作権というより肖像権などの問題です。ただし動物やペットには肖像権はないみたいなこともあるようです。

また、街並みを写して公開するのはどこまで大丈夫か?は、かなり難しい問題です。しかし原則として、公道上にあるものは、肖像権は主張しにくいと言われています。ただし、この場合も個人の家や、個人が特定できる形で映っている場合は問題になるかもしれません。

もちろん、明らかに第三者に迷惑がかかる可能性が高いものは問題ですが、基本「当事者に訴えられたら裁判でどうなるかわからない」ということなので、肖像権に違反しているしていないではなく、リスクがあるかどうか、ということになりますから、公開する人がどこまでリスクを負うかという側面が強いです。画像や動画の公開では、電話番号(看板のものは個々の判断)や個人の住所がわかるもの、検索すれば個人までいきつくもの(車のナンバーなどもグレーです)には注意したほうがいいと思います。

□ SNSにあげる場合

勤め先の学校の風景などは許可なしでアップするのはまずいと思います。ちょっとしたことでも学校は特定されますし、まして学生の顔は許可を取ってもNGだと思います(教師や学校が生徒に許可を取っても、基本的に生徒はNOと言いにくい状況があります。日本語学校の場合、教師は成績をつけ、学校は生徒をかなり強く管理している状況なので。快くOKと言ってくれても文書で「この写真をここに掲載することを許可します」ときちんと書いて、日付とサインをとることでもないかぎり難しいです。口頭だと、後で「やっぱりイヤだった」「NOと言えない状況だった」と言われたら厳しいからです。

学校、生徒の顔は、NGとして、成績や作文や回答例なども許可なしであげるのはアウトだと思われます。個人が特定されなくても「おかしな間違い」として勝手にアップする人のコンテンツにするのは常識的に問題があります。そういうものはネット、SNSで「おもしろ解答」とか「がんばった作文や文字」としてウケますが、やめるべきですし、学校は、きちんとガイドラインを作って禁止すべきだと思います。

学校側が、ガイドラインを作るなら

・事前の許可なく学内、校舎の撮影などは禁止。
・学生、学校、学校で使う配布物など学校に所属するものを撮影してネット上で公開するのは禁止。
・学生、職員の肖像権を侵す可能性があるもの、個人情報が漏れるリスクがあることをネット上に書くことは禁止。

ところまででしょうか。ただし個人としてネットで発言する自由まで規制することはできないので、欲張らずに学生の肖像権や職員の個人情報に配慮するまでに留めておくでいいのではと思います。

 例えば、学校の名前をネットに出すなとか、経営方針についてつぶやくな、みたいなことは、基本守秘義務の範囲でしかできないと考えておくべきです。

 

□ 仮に近い将来、民間の日本語学校が特例的な措置として学校と認められたとして、著作権法で特例とされるのはどんなものがあるか?

著作権法から該当箇所を引用します。

(教科用図書等への掲載)
第三三条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同じ。)に掲載することができる。

2 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

3 文化庁長官は、前項の定めをしたときは、これを官報で告示する。

4 前三項の規定は、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通信教育用学習図書及び教科用図書に係る教師用指導書(当該教科用図書を発行する者の発行に係るものに限る。)への著作物の掲載について準用する。

(教科用拡大図書等の作成のための複製等)
第三三条の二 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複製することができる。

2 前項の規定により複製する教科用の図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書等」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、営利を目的として当該教科用拡大図書等を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない。

3 文化庁長官は、前項の定めをしたときは、これを官報で告示する。

4 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成二十年法律第八十一号)第五条第一項又は第二項の規定により教科用図書に掲載された著作物に係る電磁的記録の提供を行う者は、その提供のために必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。

(学校教育番組の放送等)
第三四条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第九十一条第二項第二号に規定する放送対象地域をいい、これが定められていない放送にあつては、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第十四条第三項第二号に規定する放送区域をいう。以下同じ。)において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。

2 前項の規定により著作物を利用する者は、その旨を著作者に通知するとともに、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

(学校その他の教育機関における複製等)
第三五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(試験問題としての複製等)
第三六条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

ぱっとわかるのは、営利目的はダメ。教員か学習者がコピーしなければならない。複製ではなく二次利用的な場合は引用元を明記しなければならない。というようなところでしょうか。

現在、一条校でも問題が出てくるケースとして、こういうものがあります。

公益社団法人著作権情報センター 学校教育と著作権
http://www.cric.or.jp/qa/cs01/

学校その他の教育機関における著作物等の複製利用に関するフローチャート
http://www.jasrac.or.jp/info/dl/gaide_chart.pdf

そもそも教育機関であっても「最低限度、必要だと思われるケース」に限って例外が認められるという現状があり、昨今は、教育機関の利用であっても、大規模な試験などの場合は、著作者からクレームが付いたりしていて、事前の権利者の承諾が必要になりつつあるという流れがあるようです。「教育機関だとなったとしても、意外と厳しい、しかも厳しくなりつつある」というところではないでしょうか。

 

いわゆるヘイトスピーチ関連

 

日本語学校は、ほぼ、はじめて外国に行くというような若者相手の仕事で、トラブルが絶えません。慣れてない人は、最初は、いろいろなストレスを感じる職場でもあります。日本語学校で実際に働くことになると、職員、教師はもちろん、経営者に至るまで、日常的に「**人は質が悪いから監視が必要」「**人は好きじゃない」というようなセリフが聞かれるところはあります。職場でそういう言葉が耐えがたいという人はいると思います。それが昨今、ネット上などで行われるケースも増えています。

最近の傾向でいうと、2010年以降特に日本語学校の主力が東南アジアに移ったことで東アジア圏に対するものが増えています。おそらく将来、また学生募集の地域が変わると「**国のやつらには苦労した」というような違う種類のものが増えるということかもしれません。日本語学校の業界団体の役員クラスの学校経営者がブログのコメント欄で「**国と付き合いがなくなってせいせいした」という書き込みをしていた例もありますし、ツイッター上でも日本語学校の校長による問題投稿などがありました。これらはすべて2015年以降に起きています(どちらかというとIT関係が苦手な日本語教育関係者が、ネットで書き込んだりするようになったのがこの頃から、という事情もあります)。

仮に欧州の留学生相手の教育機関の関係者がSNSなどで同じ発言をしたら、学校や関連組織が即座に謝罪のコメントを出し、処分をする。それだけでなく、新たな啓発プログラムを作り再発防止をやると宣言するという事態になるのではと思われます。当事者は一発レッドカードかもしれません。特に移民問題を抱え火種となっている国々では、今は、ヘイトスピーチというのは人権問題に加えて、さまざまな犯罪の呼び水となるリスクをはらむ危険行為という認識となっています。

しかし日本でも、すでにヘイトクライムの萌芽はいろんなところでみられますし、欧州と同じような状況はすぐにやってきます。

今年から、アジアの国々から、多くの人が、日本語学校経由で介護ビザを取得した学生が、日本の地方の隅々まで、働き手として、生活者として、長期間日本に滞在し、日常生活に入っていくことになります。経由地となる日本語学校は、この日本の社会の変化を先取りし、取り組みを始める必要があると考えますが、残念ながら、世間一般のイメージ(国際的とか海外の国々との友好ムードとか?)と違って日本語学校業界には、何か取り組みをするというような気配はありません。「学生を日本社会になじむように指導を強化していく」というものはあっても、その学生を危険な立場に追いやってしまう自らのヘイトスピーチに対しては「(日常的にいろいろ苦労しているから)気持ちはわかる」とスルーしておこう、という空気を感じます。

 


 

ヘイトスピーチに「いわゆる」と付けたのは、いろいろと解釈に幅がある言葉という意味です。ひとまず日本の法律(2016年成立)での定義は以下にありますので、これをベースに進めていくのがいいのではと思われます。「いや不十分だ」「考え方が違う、**国では~」という議論はありますが、国内で起きたことに対し、具体的に問題とし、改善していくためには、日本の法律にのっとって(必要に応じてその法律を修正したりしながら)やっていくしかありませんので。

2016年に日本でできた法律です。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H28/H28HO068.html

法務省によるヘイトスピーチ実態調査
http://www.moj.go.jp/content/001201158.pdf

 私は90年代に外国人専用の不動産会社でアルバイトをしたり、日本語学校の事務職員として寮と住居の担当をしていて、いろいろと不動産関係のあれこれを経験したんですが、基本、不動産屋は「大家からNG出てるから」と拒否すればOKということになっていて、今も変わりません。これはほとんどの先進国で「違法行為」です。

法務省では、この法律に基づき、以下のような実態調査や啓発活動をしています。
ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html

法律は「不当な差別的言動の解消」が目的だと、いうことになっています。文科省ではこの法律に基づいた学校などでのとりくみを以下のページにまとめています。
外国人の人権尊重に関する実践事例
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinken/jirei/1384042.htm

不十分である、という意見はさまざまですが、代表的なものとしては、国際NGOのヒューマンライツ・ナウのものがあります。
http://hrn.or.jp/activity/6884/

しかし今のところは「推進の取り組み」ということで、明確な禁止事項も罰則もありませんし、「言動」に対する注意喚起までです。当然、その先の具体的な差別的な行為になってくると、しっかりと対応する法律はなく、当事者からの訴えがないとどうにもならないというケースが起きます。たとえば海外などでは、人種や肌の色で、不動産で紹介をしない、接客で差別をしない、というようなことに対して法律があり処罰の対象になります。法律があることで、告発の窓口もでき、抜き打ちで地方自治体の職員が覆面調査をしたり、ということもあります。日本でも、この「推進の取り組み」は今後発展して差別禁止法的なものになっていく可能性はあります。

 このような法律は、海外邦人を守るという意味でも重要です。つまり日本人も、滞在先の国のこういう法律によって守られているわけです。国際的な関係の中で法律として成立させ、相互に滞在している外国人を守るという国際的な取り決めという側面もあります。もちろんない国もありますが、まともな国であればあるよ、ということになりつつあります。

日本語学校では

特に、法務省、文科省は、他の省庁に比べて、ヘイトスピーチ規制に関しては積極的という印象です。両方とも日本語学校とは関係が強い省庁です。

罰則はないものの、法律が出来たということは、細かいところで効いてくる可能性はあります。たとえば、日本語学校の設置者には、新基準解釈指針で、細かく「こういう人はなれない」と規程がありますが、入管法に特に厳しいのが目立つわりに、他の法律で違反もしくは違反相当でどうなのかは、明確ではありません。たとえば2017年にはじめて「強制労働」で日本語学校の経営者が書類送検になりましたが、これは法務省の基準では想定されているとは言い難いケースでした。

ただし、設置者と校長には「運営に必要な識見」が必要、という文言があります。

識見(シキケン)とは – コトバンク http://ow.ly/Hv9C30b2iW2

識見とは専門的な知識、運営の能力というだけでなく、常識的な判断ができる、卓越した考え方を有している、という意味の言葉です。これを満たさないものは設置者にも校長にもなれない、ということになっています。

二つ目の校長の規程に関しては学校教育法の下にある各種識見とあります。学校教育法をみてみます。

教育職員免許法にも拘束される、ということでしょうか。いずれにしても法律上も公立学校の教員&校長並みのモラルは要求されている、ということになります。ヘイトスピーチの類いが起きた場合「推進の取り組み」が成立した以上は、設置者として責めを負うべきものであるし、専任教員、主任、校長など役職を与える際の大きな判断基準になるべきことであると考えてもよいと思います。

「推進の取り組み」に積極的な法務省から日本語教育機関として留学生を扱ってもよいという許可を受けている日本語学校の場合、公立学校と同等か、それ以上のモラルが要求されるのでは?と思います。差別的な言動が身内から出てくることに関して、個人の問題としてだけではなく、学校はもちろん、日本語学校の業界団体全体の問題として受け止め、教育し、監視し、進んで啓発活動をやっていくべきことであると思います。

 Jリーグなどでも「世界基準」での取り組みを求められていて、球団やリーグなどでも、厳しい対処がなされています。
インターネットにおける差別的書込みについて:Jリーグ.jp http://ow.ly/t08s30b2f9M

関連論文

ヘイトスピーチの憲法的研究-ヘイトスピーチの規制可能性について 2016:日本の事情と各国事情
http://ow.ly/I4uG30b2H4W

イギリスのヘイト・スピーチ関連法令 2015:イギリスの法令の翻訳
http://ow.ly/qLz730b2GTr

〈研究ノート〉ドイツの「反イスラム化愛国者運動」とヘイトスピーチ 関西学院大学リポジトリ
http://ow.ly/QeDQ30b4pnQ

 


 

労働関係の法律

 

労働関係は、会社、学校関係なく軸になる法律は労働基準法なので、比較的シンプルです。問題の種類によって分けるほうがいいと思います。ただ、学校の法律と違ってグレーゾーンが広く、業界の組織が管理するという側面も薄いので、個人が何かアクションを起こさないと違法な状態のまま、というケースも多いです。対処方法まで含めてメモ的に書いていきます。

労働基準法は、法律どおりに適用してもグレーゾーンがあったりと、やはり法律の文言を知っているだけではダメで、どういうケースだとアウトか、どういう判例があるか、というようなこと込みで頭の中に入れるしかありません。そのためには、読みやすそうな入門書的な本を図書館とかブックオフとかで手に入れて通読しておくといいと思います。これからずっとこの法律の下でやっていくことになるので、知っていたほうがいいはずです。

アマゾンで「労働基準法」で検索するなどして、読みやすそうなものを買ってみてください。私は、この本[三訂版]わかる! 使える! 労働基準法 (PHPビジネス新書)がわかりやすくてよかったです。

労基署などでの通報も含め、会社のことを通報しても法律で保護されます。近年ますます強化されています。退職者の通報も可能になりそうです。
公益通報者保護法と制度の概要について | 消費者庁
http://www.caa.go.jp/planning/koueki/gaiyo/

 

いわゆるブラック企業の名前公表

2017年5月から労働基準法違反の企業は名前が公表されることになりました。毎月追加で、1年で掲載修了となるそうです。公表されるのはここです。日本語学校でも強制労働で書類送検となった豊栄グループが入っています。日本語学校が入るのは珍しいと思いますが、日本語学校の学生のアルバイト先などが入ってないか検索してチェックする価値はあります。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

できるだけここでファイルを置きます。
H28年10月1日~H29年6月30日公開分のPDFファイル
170510-01

基本的な情報と窓口的なものの一覧

 

労働基準法
:最も基本的な法律。すべてに優先する。例えば会社と結んだ契約よりも上位。労基法と略される。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html

労働基準法に関するQ&A 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_kijyunhou.html

労働契約法
:2008年施行。個々の契約形態に関する法律を定めたもの。契約が労基法にのっとったものであるかのガイドライン的な法律。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO128.html

労働契約法のポイント 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/08.pdf

全国の労働基準監督署の所在地
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/location.html

厚生省 労働基準関係情報メール窓口(匿名での申し立てができる)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/mail_madoguchi.html

東京都労働相談情報センター
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/soudan-c/center/

弁護士ドットコム 相談
https://www.bengo4.com/

連合 労働相談
http://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/index.html

全労連 ホットライン
http://www.zenroren.gr.jp/jp/soudan/

個別指導塾ユニオン
http://kobetsu-union.com/

首都圏非常勤講師組合
http://hijokin.web.fc2.com/

個別のあれこれ

36協定

36協定が締結されていて、それが労働基準監督署に提出されていないと、残業を命じるのは違法ということになります。日本語学校の場合、組合があることは少なく、これがちゃんと締結されているかはあやしいです。確認の方法は2つあり、ひとつは雇用者に「見せて下さい」というものと、労働基準監督署に開示請求する方法ですが、後者は難しいようです。前者は雇用主は見せないと違法です。根拠は以下に

http://www.soumu.go.jp/menu_sinsei/jyouhou_koukai/index.html

これも、問題は「目を付けられる」的なことでしょうか。一人で言うのは勇気がいるなら、教師で話し合って見せてと言うぐらいしかないかもしれません。あるいは、転職が決まったら、堂々と「見せて」と言い、内容に問題がないか、確認し、他の教師にも配る。ついでに労基署に届け出があるかも確認することを同僚への置き土産としてやるのはどうでしょうか?

ハラスメント

厚生労働省 職場でのセクシュアルハラスメントでお悩みの方へ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/

セクハラ110番 セクハラの裁判例
http://110sekuhara.com/saibanrei/sh11.html

厚生労働省 パワハラについて(明るい職場応援団) 
https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/

厚生労働省 パワハラの裁判例(明るい職場応援団) 
https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/

弁護士ドットコム ハラスメント
https://www.bengo4.com/c_5/c_1623/

 セクハラまではいかなくても、日本語学校の場合、明らかに男性のほうが厚遇である、というケースはあるように思います。例えば、採用時は同じ、つまり「雇用機会」は同じであっても、専任への道となると男性有利というケースが多いようです。もちろん、こういうことも「男女雇用機会均等法」で禁じられています。しかるべきところに相談、通報する選択肢はあります。
法務省 人権ホットライン
http://www.moj.go.jp/JINKEN/index_soudan.html
弁護士ドットコム 偏見 差別
https://c-3.bengo4.com/bbs/%E5%81%8F%E8%A6%8B+%E5%B7%AE%E5%88%A5/

労災

労災は、雇用されていれば常勤でも非常勤でも、受け取る権利があります。ただし全額会社負担なので、会社は、払いたくない。会社の中で暴力を振るわれたとかなら明白ですが、通勤途中でケガをしたみたいなことだと、寄り道中なら払わなくてもいいので、いろいろと詮索されると思います。
ケガだけでなく病気も該当します。メンタルな病気もです。過労死などもまず労災の支払いがあり、加えて損害賠償という話になります。

ケガをしたり病気になったりの場合は、学校ではなくまず地元の労働局に相談してみましょう。「労働局 県名」で出てくると思います。そのうえで学校に申請するなりを決めてください。問題なったら早めに弁護士や司法書士に相談でもいいと思います。

 


労働基準法の解説、パンフなど

 

わかりやすいパンフなどが公的機関にたくさんあります。「わかりやすい」と感じたものをひとつダウンロードしてざっと目を通しておきましょう。(アマゾンやブックオフにも100円の「簡単にわかる」的な本がたくさんあります)

東京労働局 パンフレット「労働基準法のあらまし」 (PDF)
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/pamphlet_leaflet/roudou_kijun/_84882.html

知っておきたい働く時のルール(PDF)
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/pamphlet_leaflet/roudou_kijun/_116683.html

労働厚生省 FAQ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_kijyunhou.html

東京弁護士会
http://www.toben.or.jp/

大阪弁護士会
http://soudan.osakaben.or.jp/

弁護士ドットコム 労働
https://www.bengo4.com/c_5/

判例など

弁護士ドットコムの「講師」の法律相談
https://www.bengo4.com/roudou/1103/?query=%E8%AC%9B%E5%B8%AB

□ 大学方面はちゃんと問題にされるので話題も多い。

5年雇い止め、和解になった早稲田の件
http://biz-journal.jp/2014/06/post_5050.html

来学期から東京大学非常勤を辞めることになりました
http://d.hatena.ne.jp/saebou/20151221/p1

日米における大学非常勤講師の位置づけ
http://togetter.com/li/16041

東大では非常勤は教職員に含まれない?
http://togetter.com/li/834091

採用時の問題

日本語学校の面接はかなりいいかげんです。採用の基準にしてはいけないことなどを平気で面接で尋ねたり、(面接では聞いちゃダメくらいはわかっているところは)それとなく確認したりということがあります。もちろん採用、不採用が確定するまで採用基準にしてはいけないことを尋ねるのは法律的にもアウトです。もよりの労働基準局に匿名でメールする、あるいは申し立てをする、そこまではしなくても、そういう学校は、とりあえず匿名のツイッターアカウントでも作って、どんどん学校名を晒していけばいいと思います。

公正な採用選考の基準 (厚生労働省)

http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例 (大阪労働基準局)
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/hourei_seido/kosei/futeki.html

後述する社会保険制度の関連で、既婚者、(つまり学校側の社会保険の負担がなく、配偶者の扶養で雇える人)を優先的に雇用しようという動きも出てくるかもしれません。おそらく、これまでもそういう傾向(既婚者が優遇される)があったとは思いますが。

契約周辺のこと

特に日本語学校で関係が濃そうなものをピックアップしてみます。労働条件通知書をくれない学校もあるらしく、ある意味では「早めにやめたほうがいい学校」として、わかりやすい最初の目安になります。よく問題になるのは「無期転換ルール」です。5年パートとして働いたら申し出れば正規雇用となる、会社はそうしなければならない、というものです。これで「5年で雇い止め」ということになってきてしまいました。

 

労働条件通知書 ~契約の通知~

 これはツイッターの簡易アンケート機能を使った調査です。ツイッターのアカウントを持っている人しか回答できません。このアンケートの期限は一週間、私どものアカウントをフォローしている人(アンケート実施時に1237人)の何割かが目にし、リツイートという機能によって、フォロワー以外の人の目にも触れるようになりますが、きちんと読む人は3割ぐらいかもしれません。で、参加してもよいという人が匿名でクリックして投票を行います。結果は修了時に公開されます。一度しか投票できませんが、誰でも投票できるので、この質問のように「**だけに質問します」と書いて行っても、投票者を特定できない以上、正確とは言えません。
ただ、日常的に日本語教師向けにツイートをしているアカウントなのでフォロワーの方の日本語教育関係者の比率はかなり高いと思われます。いわゆるスパムフォローも定期的にブロックしてはじいています。「正確ではないが、質問によっては、そこそこ参考になるはず」と考えています。(ツイッターのサービスはいつまで続くかわからないので、念のためキャプチャもとっておきます)

労働基準法15条では、賃金や労働時間に関しては、書面で交付する義務を企業側に課しています。会社は、雇用者に正式に文書で契約形態を通知しなければなりません。常勤でも非常勤でも、労働条件通知書は必ず出さなければなりません。契約時に、これ出さない学校は、(言わないと出さないところも)労働基準法を知らないか、守ろうという気が無いわけで、早めにやめたほうがいいでしょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E9%80%9A%E7%9F%A5%E6%9B%B8

必ず書かれていないとダメなもの(絶対的明示事項)

1)労働契約の期間
2)就業の場所、従事する業務の内容
3)始業・就業の自国。所定労働時間を超える労働の有無
4)休憩、休日、休暇、就業時転換(シフト制の場合の説明)
5)賃金(退職手当、ボーナス規程、計算方法、支払い方法、支払い時期、昇給のルールなど)
6)退職に関する規則、退職事由と手続き等の明示
7)期間契約の場合、更新のルール。

制度があり、必要であれば書かなければならないもの(相対的明示事項)

1)退職手当
2)ボーナス規程
3)食費など付随的な事項
4)安全、衛生に関する規程
5)職業訓練に関する事項
6)災害補償及び業務外のケガなどの規程
7)表彰、制裁などに関すること
8)休職に関すること

*非常勤に対しては以下も明示義務

1)昇給の有無
2)退職手当の有無
3)賞与の有無

 私見ですが、日本語学校と日本語教師の場合だと、非常勤の場合は、相対的明示事項は、2)と3)と4)以外は、記載はマストではないかと思います。もらったら、まず絶対的明示事項がはっきり書いてあるか確認して、曖昧なところ、わからないところは質問して、追加情報は、必ず通知書に書いて再発行してもらいましょう。相対的明示事項に関しては、口頭でもいいことになってますが、書面で書いて貰うほうが安心です。NOと言われたら仕方ありませんが、口頭でいいことは口頭で済ませるところなんだな、ということがわかります。

厚労省によるサンプルフォームです。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/dl/tp0605-1l.pdf

契約前、入社前にもらってから契約というのが本来の流れですが、契約後になることが多い要です。請求しないとくれないところもありますから、組合があれば組合を通じて、ただ、日本語学校で組合があるところはほぼないでしょうから、個人で事務の人などに「労働条件通知書は?」と訊ねるしかありません。請求してもくれない場合は違法です。同僚などに聞いてみると誰ももらってない、ということが多いのではと思います。請求してもくれない場合は、労基署に相談すれば、会社を指導をしてくれることになっています。明確な違反なので、出さざるを得ないということになるはずです。

同僚が誰ももらっていない、そういう習慣が無い、あるいは職員には出すけど教師にはいちいち出さない、というような学校は早めに転職を考えたほうがいいと思います。長くいないと決めたのなら、労基署に言って、労働条件通知書をもらっておいたほうがいいです。でないと辞めるさいにもめる可能性があります(特にそういうところは契約やお金にルーズな場合が多い)。学校で労働条件通知書を出すにようになれば、辞める際の同僚教師への置き土産にもなります。労基署も「あそこは…」と要注意リストに入れるかもしれません。これも大きな置き土産です。まずは管轄の労働基準監督署にメールを送ることからやってみては?

雇用契約書との違い

労働条件通知書は、会社が雇用者に通知するもので、労働基準法が根拠。雇用契約書(正式には労働契約書)は、会社と雇用者との合意事項で、労働契約法が根拠です。労働基準法のほうが強いので、労働条件通知書は義務ですし、罰則があります。雇用契約書は罰則もないし、交わさなくてもいいことになっています。

労働条件通知書は、通知書を出さない、内容に違反があった場合の罰則は原則30万円で、パート(非常勤)の場合は、+10万円となっている。

*雇用契約書の中に労働条件通知書で書かなければならない事項をすべて入れ込めば、雇用契約書で代替えできる。

 

契約期間

労基法では期間の契約は3年までというルールがありました。これは強制労働などで長期間雇用契約が続いたりというリスクを考慮したもので、留学生にとっては、いろいろな歯止めになっている側面があります。

ただ、2004年に改正され最長5年まで大丈夫ということになりました。ただし高度な専門職に限るという条件付きです。

労働契約期間の条件について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/keiyaku._a.pdf

これをみるかぎりでは、だいたい年収で1千万くらいのポジションに限るということのようです。また有期の工事などの期間限定のケースも特例となるとなっています。

2017年の6月に日本村に以下のような求人がありました。

これは4年契約、主任、1年600万という有期契約です。なぜ4年がOKとなっているのか、はよくわかりません。特例である60才以上でもなく、新規の学校の立ち上げが工事と同じとは考えにくい。残る可能性は、主任教員が高度な仕事であると厚労省に認定された。つまり「厚生労働省労働基準局長が認めた」ということでしょうか?しかし、そういう話は聞いたことがありません。今後、日本語学校の主任教員が特例になるのか、年収は600万でもOKなのか、注目していきたいと思います。

 日本村には、時々、国内で日本語学校を経営する学校法人による海外(提携先?)の求人も載ります。月給3万円程度。日本のメーカーが同様な求人を出す場合もありますが、一応現地法人による求人ということになっています。法律的にどうなっているのか謎です(国内の学校法人が最低賃金を下回る求人を出してもいい?どういう解釈で?)。日本村はサイト上には求人広告に関するガイドラインなどの説明が一切ないので、どういう考え方で求人掲載を行っているのかわかりません。国内の日本語教育関係の出版社や関係会社とのつながりは深いようですが。

 

労働契約法

労働契約法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO128.html

労働契約法について (パンフ 厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/roudoukeiyaku01/index.html

労働基準法と労働契約法はどこが違うのですか?
http://j-net21.smrj.go.jp/well/qa/entry/Q0590.html

 

無期転換ルール

有期契約と無期契約の違いは契約期間があるかどうかですが、無期契約ではそれなりの理由がないと解雇できないので、移行できるならしたほうがいい、ということです。当然会社はしたくないので、「5年で雇い止め」ということが起こります。ですが、特に理由もなく、無期への転換を避けるための雇い止めは労働契約法違反です。裁判になったら働いているほうが有利です。「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し込みによって企業などの使用者が無期労働契約に転換しなければならない」というものです。これは私達が権利を行使しないと何も起きません。

申し込みができる条件は

1)2回以上有期労働契約を締結(更新)している
2)その期間が通算5年を超えている
3)有期労働契約の契約期間が満了を迎える前に無期労働契約締結の申込みをした

です。また5年間で半年契約してない期間があったらその前の期間は計算に入れることができません。基本継続していることが大事。2回以上の契約は、日本語学校の場合の期間の契約は年単位は少ないかもしれません。まして5年単位というのも考えにくいので、大丈夫じゃないでしょうか。

3)ですが、申し込みのタイミングは、1年契約ならば、5年契約を消化した6年目です。3年契約なら2度目の契約で5年を消化するので、2度目にします。で7年目からは無期契約ということになります。申し込みをしたら雇い主は断れない(解雇するしかないので相当の理由が必要。普通は無理です)ので、申し込む権利を得たら早めにすることが大事です。「無期転換 申し込み」などで検索して確認してください。

また、申し込みができる間(1年契約なら6年目の契約中、3年契約なら2度目の契約中)に申し込みをしないと、次の契約をしないと言われたら権利は消えてしまいます。タイミングを逃さずすることが重要です。

申し込みの方法

無期転換申込書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet15.pdf

説明はこの申込書様式がある厚労省のページにあります。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/pamphlet.html

実際にどうやるのか、わかりません。権利が発生したら、自分が申し込みができるのか、確認して(労働基準局などで相談すれば教えてくれるはずです)、できれば、同じ考えの人とともに、直接責任者(校長ではなく理事長などに)に渡すのがいいと思います。受け取ったら受理証というのを渡さないといけないので、受理通知書も印刷して一緒にあげてもいいと思います。「受理通知書をいただかないといけないらしいので、すみませんが、ちょっとこちらを作っていただけますか?」と。

受理通知書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet15.pdf

普通の経営者なら、心の中で「キター!」と思っても、「あーはいはい、ちょっと待っててね。後から出します。その前にちょっと話をしようか」ということになるかもしれません。ただ、長期にわたって雇用している非常勤が多い日本語学校は、基本、無期雇用に転換されるのは絶対に困ると考えていると思います。そこから、じわじわと無期転換は困る、しないで、という話が続くかもしれません。三ヶ月契約なら、時間切れまで粘られるかも。無期転換する意志があるなら、期限があるので、対処お願いします。ときっぱり伝えることが大事です。

事前に会社に通達、相談しないで突然渡すのはちょっと…、というなら、まず話し合ってでいいと思います。どういう形がいいのか、まだできたばかりの法律なので、よくはわかりません。しかし、なあなあ、グズグズにしないで、きちんと権利は行使するつもりでやったほうがいいと思います。

 長く働いている非常勤には、それとなく尋ねてくるかもしれません。「無期転換って知ってる?契約社員みたいな形にするという法律で、知らないならいいんだけど。あ、知らない。じゃあ、いいのいいの。じゃあねー」みたいな。

会社は、申し込みを受けたら、無期に転換するか、正社員として雇うかという選択をします。

2018年が最初のヤマだと言われています。

2018年に大量発生する「無期契約社員」はどんな社員か? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online
http://ow.ly/sQTJ309ATQm

無期契約社員と正社員との違い – 弁護士ドットコム
http://ow.ly/yo9G309ATTc

有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック 厚労省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000138212.html

無期転換ルールQ&A
無期転換ルールQ&A
(石川労働局のサイトにあったものを保存したものです。よくファイルのURLが変わるので)

労働契約法に基づく「無期転換ルール」への対応について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000099928.html

素直に転換に応じない学校の場合

 「六ヶ月の空白期間があったら、その前の期間はチャラになる」というルールがあります。これを利用して、半年契約しない、みたいなことも起きると思います。知り合いの学校の経営者に「ウチの非常勤を半年預かってくれない?そっちのと交換留学生みたいな形で、それで5年をチャラにしようよ」みたいなあくどいことを考える学校経営者はいるかもしれません。そして3年目のあなたに言うのです

「次の期から半年は厳しくてウチでの雇用は難しいんだけど、知り合いの学校でその間やってもらえるところを紹介するよ」

あなたは、なんてやさしい人だと思うかもしれません。油断禁物ですよ。。。

役職に関するあれこれ

学校によって、教務主任やその他役職があるケースがあると思います。教務のトップとその下にいくつか役職があるケースもあると思います。法務省の規定上も、日本語学校には「主任」という役職があります。

ロ 留学告示別表第1の1の表若しくは別表第1の2の表,別表第2又は別表第3に掲げる日本語教育機関の常勤の日本語教員として3年以上の経験を有する者であること。

と3年以上の経験が必要です。これは教務主任として届け出をすることになっています。事実上の教務のトップという位置づけです。

 これらの法務省のルールは2016年に新しくなり、認可の取り消しもありゆる厳しいものに変わったので、以上を守っていない学校は、法務省に伝えれば問題となるはずです。窓口がわかりませんが、とりあえず、日本語学校の管理に近いと思われる入管の窓口です。
http://www.immi-moj.go.jp/info/

教務主任は労働基準法上の「管理監督者」にあたるのか?(残業代はなくても仕方ないのか?)

はっきりとした記述はありません。一見、届け出をする必要があること、主任になるための条件が法務省の新基準でハッキリしていることから、管理監督者にあたりそうな気がしますが、肝心の主任の手当てなどのガイドラインもガイドラインを守るための罰則などもありません。

しかし、ほとんどの場合、教務で、つまり日本語教師で、学校内の役職で管理監督者にあたる人はいても1人くらいだと思います。労基法上も、管理監督者は、以下の3つの条件をクリアしてなければならないとなっています。

1)経営者と一体的な立場で仕事をしている。
2)出社、退社や勤務時間について減額な制限を受けていない。
3)その地位にふさわしい待遇がなされている。

会社によって幅があってもいいとされていますが、判例をみても、形ばかりの金額では完全にアウトで、勤務時間で自由な裁量権がなかった場合も、ほぼアウトです。教務全般の人事権もほぼ持っていないといけない。教務主任がそういう待遇を受けているという話はほぼ聞きません。
こうなると、日本語学校でこれにあたるのは校長か大手の学生数がかなり多い(500人以上とか)ところの教務主任くらいでしょうか。それでもワンマン経営が多い日本語学校で、「経営者と一体的な立場で仕事をしている」をクリアしているところは少ないはずです。ほとんどの場合、教務の役職は、労基法上は「管理監督者」にはあたらないのではないか、と思われます。

コマ数契約は問題が多い

時給計算がほとんどのようですが、学校によってはコマ数で契約ということがあるようです。コマ数の場合、1コマで終わりだとしても、「**時までに入ってくれ」「*分前には入っておくのが常識」というようなことなら、その時間もプラスしないと問題です。

複数のコマが続くことがほとんどだと思います。連続の場合、休憩時間が10分あるとして、その10分をどう考えるか、英会話学校のNOVAでは、コマ数契約だったそうで、いろいろ訴訟も起きているようです。
http://generalunion.org/Joomla/index.php/jp/nova-g/1591-123

つまり、ノバでは、授業前後の2分づつは労働時間だとしてカウントするが、残りの6分はカウントしない。この6分は、3コマ続くと18分、それが月20日なら360分で6時間分です。時給が2000円なら1万2千円。年間で14万4000円。かなり大きいのです。

これは支払いを渋るケースもありますが、時間数が増えると雇用保険など社会保険の対象になってしまう、という事情もあるようです。後述しますが、週や月の労働時間によって、会社は非正規雇用の人にも社会保険の加入義務が生じます。月6時間はかなり大きな時間数です。非正規に対するこの種の社会保険逃れの細かいノウハウは、昔から脈々と受け継がれている(社会保険労務士などのアドバイスの定番として)ようで、普通に行われているとのこと。社会保険の適用は今後、拡大されるので、増えそうなケースです。

弁護士ドットコムの「非常勤 コマ」での検索結果
https://www.bengo4.com/c_5/c_1098/bbs/%E9%9D%9E%E5%B8%B8%E5%8B%A4%E8%AC%9B%E5%B8%AB+%E3%82%B3%E3%83%9E/

コマ数契約だと言われたら「そんなものかな」と考える人はいるかもしれませんが、タイムカードでの時給計算のほうが良心的だと思います。面接時に、あるいは事前に確認しておいたほうがいいと思われます。

 たびたび同じこと書きますが、こういうことをいちいち抗議するのは難しいかもしれません。その学校とは距離をとって去るのが得策です。で、去る際に労基署にメール一本送って、SNSで匿名アカでも作って学校名を晒しましょう。「日本語学校」というワードを入れれば、結構な人の目に入ります。

 

日本語教育関係の求人の問題

求人は十分な情報がない場合、法律違反になる可能性があります。一般的に、十分なスペースがあるのに(ネット上では常に十分なスペースはあるはず)、業務内容、契約機関、就業場所、時間、休日など、保険関連などが明確に書かれていないのは、問題とされます。

職業安定法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO141.html

また、求人の記述に関しても法律があり、雇用対策法では、年齢制限してはいけないとあり、男女雇用機会均等法では男女差別が禁止されています。

日本語教師や職員の求人は、一般的には、業界内部のいろいろなサイトなどで行われています。2016年には人手不足からか日振協でも求人の掲載をはじめました。日本語教育学会でも求人を掲載しています。ただし、この両者の求人は加盟校や関係者の学校を審査なしで掲載しているだけのようで、おまけに免責まで踏ませます。「待遇は当校規定による」はスペースがない場合に許されるのであって、ネット上では常にスペースはありますから、NGだと思います。

日本語教育関係の求人は、待遇がハッキリしないものがあります。

職業紹介における労働条件等の明示について
http://shokugyo-kyokai.or.jp/shiryou/shokugyo/01-7.html

これは求人を掲載する側の責任が大きく、まず待遇に関してきちんと確認をとっているか、という問題があります。確認を取らずに掲載したらアウトです。次に待遇を明示すべきか、ですが、これも、明示しなければならないという考え方が一般的です。「当校規定による」というところへの応募はリスクが高いと考えて置いたほうがいいと思います。結果として待遇に問題がなかったとしても、コンプライアンス的に問題がある会社、組織という可能性があるからです。

日本語教育関係の求人では、日振協も日本語教育学会でもこの「当校規定による」で待遇を明示しないまま求人を出しています。まず、その規定を確認しているのか?が問題になると思います。その上で、待遇を明示しないまま掲載することの是非も問われるべきでしょう。基本的には、玉石混交の日本語学校の求人において、待遇を明示しないで求人をだすのはアウトだと思います。

これまでは小さな業界でもあってか、養成講座の学校からの紹介などでおさまってきたのですが、学校数も増え、ネットでの求人も増えました。2015年以降の教師の人手不足もあり、求人、仲介がビジネスとして注目されてきた側面もあるようです。

一般的に、ネットなどでの求人の掲載に法的なしばりはないようです。免責があってもなくても、掲載者は責任を問われない。ただし、当然、それなりの組織団体が求人を掲載する以上は職業上の倫理は求められますし、信頼、信用を損なうということがあるはずです。日振協が加盟している学校の求人を掲載して「トラブルが起きても責任はとらない」というのは疑問なわけです。

 


 

法律だけでなく、例えば、リクルート系の企業が加盟している公益社団法人 全国求人情報協会というものがあります。
https://www.zenkyukyo.or.jp/
ここでは、倫理綱領・掲載基準が公開されています。
https://zenkyukyo.or.jp/?page_id=69

この倫理規定に従って考えると日本語学校の教師や職員の求人を掲載するためには以下のことが最低限必要となります。

1)掲載内容が正確かどうか確認し人事担当者の捺印が必要。
2)過去にトラブルがなかったか確認
3)新規の掲載の場合は訪問するなどして所在の確認をとる。
4)監督官庁の許認可が必要な事業ならその確認が必要
5)労基法違反の事実がある、あるいはあった場合掲載不可(つまり確認が必要)
6)応募者が負担を強いられる研修(労基法違反)などがある場合は掲載不可
7)労働問題などで争議になっているところは掲載不可
8)データ更新日、情報の出所を明記

残念ながら、日本語教育関係の求人を出してるところでこの倫理綱領を守っているところは皆無だと思います。「倫理規定だからリクルート系の会社だって守ってるかどうかはわからない、どこも同じ」という考え方もあるかもしれませんが、少なくとも、こういう倫理規定があり公開されている以上は結果責任は負うことになっているはずです(そうでないとあなたも困るはずです。あなたはよくてもあなたの友人、知人、家族が仕事を探す時に、こういう倫理規定に守られて欲しいと思うはず)。つまり、この規定にはすべての一般求人は縛られるはずです。

求人をみて応募し、職員となったけれど、パワハラがらみでいろんなことをやらされた末に発覚して理事長が逮捕され、職員も当然知りうる立場であったとされて書類送検される、みたいなことになっても、泣き寝入りではなく、求人を掲載したところにクレームぐらいは入れたほうがいいと思います。クレームが面倒なら、「ここの掲載情報で就職した」とSNSで書いてほしいところです。倫理的な責任は存在することになっている以上は、信頼を失うという社会的なダメージくらいは受けるべきです。

 

海外の求人は安くても仕方が無い?

よくアジアなどで現地通貨で月給3万円くらいでの募集があります。2016年によくみかけたNECのインドの日本語教育機関の募集も6万円前後でした。一般的に、日本語教師の求人は現地通貨、現地のレートなので安くても仕方が無いという風潮があります。
しかし、NECは同じインドの法人の求人でマネージャーの月給は駐在員レベルの月給20万円代からになっていました。つまり相場によって都合良く設定されているということだと思われます。日本語教師は現地基準で募集しても集まる、的なことでしょう。では、法律的にはどうなのか?

独立行政法人 労働政策研究・研修機構
海外に派遣されている労働者には、日本の労働法規は適用されるのでしょうか。
http://www.jil.go.jp/rodoqa/11_jakunen/11-Q06.html

個別のケースでの適用の範囲は

・原則として、労働基準法は国内にある事業所にのみ効力を発揮することになっている。
・日本の労働基準法にのっとってやるかは契約時の合意で決まる。

ということのようです。ただ慣習的に

海外赴任と日本の労働法の適用
http://www.tokyokeikyo.jp/laborlawQ%26A/52kaigai.houtekiyou.pdf

海外で労働基準法違反があった場合、「労働基準法違反行為が国外で行われた場合には,刑法総則の定めるところにより罰則は適用されない。ただし日本国内にある使用者に責任がある場合にはこの使用者は処罰される。」とのことです。

また、「海外に管理、指揮命令を行う独立した事業所がないところへ赴任させる場合は、労働基準法が適用される」という記述もありました。つまり、指揮系統が日本にあり、日本で雇用契約が結ばれるなら、日本の給料に準じるのが常識的なセンだということでしょうか。これらは基本、日本の会社で雇用して現地に出張、出向、などのケースです。現地企業に一時的に所属するみたいな複雑なケースもあります。

基本的に、契約時に現地の法律優先と提示して契約したら、それは現地の法律に従うものとなる、ということのようです。つまり現地並みの報酬での募集の場合は日本の労働基準法適用外だ、と考えていい。現地法人の雇用で、求人の際に出ている会社や学校法人が日本にあっても、それは基本的には仲介程度のことという可能性が大きい。おそらく契約時に交わす書類では日本の労働基準法に準拠しない旨が書かれているはずです。かなり注意が必要です。賃金だけでなく、残業や勤務時間、ケガや病気の際の保証など、法的な保護もない可能性が極めて高いわけです(口約束程度のことはするかもしれませんが)。

 ただし、「責任がある場合には」トラブルがあった場合、労基署に申し立てをすれば、労基法適用外とはいっても責任者は処罰される可能性もありとのころですから相談する価値はあると思います。日本語教師を派遣するような場合、現地との提携関係があるでしょうから、一時的な仲介とはいえず、日本の会社名で、その信頼で募集した以上は「責任がある」とみなされる可能性もあると思います。

 また、労働基準法の準拠しないような形で海外の仕事を紹介、斡旋、仲介するようなことは、国内で法務省に認定された日本語教育機関としてふさわしいのか?また学校法人が行ってもいいことなのか? 疑問が残ります。今のところ日本語教育業界にはルールはないようです。

 

勉強会、研究会という名の研修

個人でやるなら、基本、お金をとられることはないし、問題ないのですが、最近は「勉強会」という名前で有料のアレコレに誘導するためのセミナーをやるところもあるようです。こういう、じわりと世界が住みにくくなるようなことは、やるほうは「自分にはビジネスセンスがある!」と罪の意識はないので困ったもんです。

もうひとつ、トラップがあります。こっちがなかなか難しい。

まず大前提にあるのは、労働基準法で会社は仕事に必要な研修は、会社の費用で行う義務がある、と決められている、ということです。これを勉強会としてやって、逃れようというところがあります。無料だから感謝しろというところもありますが、これは就業時間内にやるか、時間外なら残業として時給を払ってやるべきことなのです。

最近は、実質的に学校が主催するようなものがあるようです。専任の教師や教務担当が(時には校長の指示のもと)、「自主的に」勉強会をする。参加費は無料でお茶などが出る。でも、それは、本来やるべき研修を時給を払わずにやってるだけです。労基法では、その仕事に必要な研修の類いを賃金を払わずに就業時間外にすることは違反です。

研修期間中に賃金が発生するか
http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/practicewage.html

研修はその会社(学校)で働いている場合は、参加が義務か義務的であれば、ほぼ賃金は発生する。つまり時給を払って研修しなければならないということです。また仮にその会社で働いてなくても、義務的なもので、そこで働くことになるなら、受けた時間の時給は支払わなければならない可能性がある。この可能性とは研修を受けることが条件になっていれば支払わなければならない可能性が高い、と解釈してもいいのではと思います。

ポイントは「参加が義務的であるかどうか」ですが「義務じゃないよ」ということになっていても、参加によって採用や昇進などに影響するならアウトで、実質的に義務だとみなされるはずです。専任でも、非常勤でも、査定(昇進や非常勤なら専任になるための査定)に影響するつまり、義務であるかどうかは別として外部の研修を学校が主催するのは、かぎりなくグレーな行為に近づくこととなります。就業時間内にやって時給を支払えばいいだけの話ですから。やっているところは、学校としての見識が問われると言ってもいいと思います。長くいるべき学校ではないと思います。

勉強会という名前でも同じことですが、「勉強会 労働基準法」で検索すると以下のようなページがありました。

教えてGoo
残業代が出ない終業後の勉強会について
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/6731746.html 

採用前や面接合格後の本採用前の研修

日本語学校で、採用前や、採用後に勉強会と称して研修をやるところが結構あります。無料だから親切だと感じる人もいるようですし、学校側も「しっかりとやってます」的に宣伝したりしてます。有料の研修をして正式に就職したら返金みたいなところもあります。ただし、これは「実態として」ほぼ参加が義務となっているので、業務として行われていることです。学校は時給を払う義務があるはずです。今は、まともな会社は、こういうことはしません。ちゃんと就業時間内にやります。少なくとも訴えられたら、ほぼアウトなはずです。状況的に雇用する側が強いので訴訟になることが少ないだけです。

抗議はしにくいかもしれません。なんせ現在進行形で採用されたとか採用してほしい、という立場でしょうし。でも、こういうことをする学校は、基本、教師を育てるコストは払いたくないという考えであることはハッキリしています。学校で最も大事な教えることにお金を使わない学校です。そこで働くことになったのなら、すでに最初にひとつダウトからのスタートです。遅くとも、もうひとつ、怪しいと感じることがあったら、さっさと転職を考えたほうがいいでしょう。いろいろ調べたかぎりでは、まともなところは、常勤や非常勤を就業時間内にちゃんと育てるところが多いようです。そりゃそうです。教師をどう育てるかは、語学学校にとって最重要課題であるはずですから。

 

勉強会とノウハウ伝授とお悩み相談

実費を分担して行う勉強会は大丈夫なのですが、ノウハウ伝授的なセミナーを行うとなってくると、いろいろ注意すべきことが出てきます。オンラインでやるとなると、特定商取引法に従って、名前や住所など決まった項目を同じサイト上で公開するなどの決まりがあります。

特定商取引法ガイド
http://www.no-trouble.go.jp/

特定商取引法まではいかないものであっても、少なくともウェブで集客して有料で何かをやるなら、主催者は、本名と住所、電話など連絡先をきちんと公開し、ネット上でも、Facebookなどの個人と紐ついたものも公開して名前などが確認できるようにする、という情報公開の姿勢が必要になってくると思います。特定商取引法で公開せよ、となっているものは、例えば通信販売ならば、ここにあります。

http://www.no-trouble.go.jp/what/mailorder/
ここに準ずる形で、業態に応じて必要なものは公開していく、ということで考えるのがよいのではないでしょうか。

 この特定商取引法のページは、連鎖販売取引に関する法律もあります。サービスを拡張する際に、販売員を増やしてマージンをとり拡大していくような詐欺的商法でよく使われるものです。最近、ネットでも増えてます。ざっと目を通したほうがいいと思います。

逆に言うと、そういうものがきちんとしていないものに参加するのは避けた方がいいということです。問題があると思われるものは、消費者庁に問い合わせるといいと思います。

消費者庁
http://www.caa.go.jp/

「あくまで個人の感想です」というような打ち消し表示をすることも2017年から強く規制されることになりました。
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=34641

また、日本語教師が日本語を教えるノウハウを伝授するまでのものと、悩み相談は、違います。例えば職場の問題であったとしても、お悩み相談になってくると、個人の心の問題を扱うことになってくるからです。心理学の知見に基づいたカウンセリングは、その資格を持った人によって行われています。

Wikipedia 日本の心理学に関する資格一覧
https://goo.gl/bvyoSj

民間の資格はたくさんあるわけですが、プロとしてお金をとってカウンセリングをしている臨床心理士などは、業界団体などを通じて、訴訟のための保険に加入していることが多いそうです。つまり人の心の相談をお金で引き受けるということは、とてもリスキーな仕事である、ということです。何か不幸な事件があった場合、責任問題になる可能性もあります。

日本語教師のセミナーでは、あくまで日本語を教えるスキルとその関連、例えば教室をコントロールするコツ的なものまでの「伝授」までにとどめて、カウンセリングにまで踏み込まないほうが無難です。国家資格があって、理論にもとづいてカウンセリングを行っても訴訟が避けられないのですから、民間資格や個人の経験を元にアレコレと応じないほうがいい、ということです。この線引きを意識してください。

2019年から認定心理士という資格がスタートします。大学心理学を学んだ人が取得できる国家資格です。この国家資格かによって、民間の「なんとか心理学」を元にしたカウンセリングは、おそらくやりにくくなるのではという気がします。これまで「カウンセリング」と称していた人達は、こぞって「コンサルティング」という用語に変更しているようです。

日本語学校には問題が多く、そこでいろんな悩みを抱えている人はいます。個人的に相談にのってあげるなら悪くないかもしれませんが、不特定多数相手に有料でこの種の相談にのるのは、例えば具体的に日本語学校などと契約関係があり、就職案内ができる(これはこれで職業紹介事業になるので国に届け出が必要です)みたいなケースを除き、避けるべきで、越えない方がいい一線です。

職場の悩みを経験者に訊きたいというニーズはありますし、そういうニーズがあるよと、ビジネス化を勧める人達も多いです。メルマガから、メールサポート、スカイプなどを使った個人カウンセリングと、自己啓発的なビジネス手法が応用できるジャンルでもあるからです(ネットにはその種のビジネスがあふれています)。しかし、日本語教師がやるものであれば、あくまで日本語を教えるスキルの伝授までにとどめておくべきだと思います。

仕事のあれこれで悩んでいる人は…

職場に相談できる人がいないと悩む人は、まだ誰にも相談していない、という人もいます。当たってくだけろで3人くらいピックアップして思いきって話してみるのはどうでしょうか? 専任でも非常勤でもかまいません。最初に相談した人がたまたまいい人であったとしても、あと2人にも相談してみる。セカンドオピニオンも大事です。3人に話してみて、ダメなら、きちんと相談できる人を求めて学校を変えるのもよい選択だと思います。日本語教師にとって学校を変えるのは普通のことです。いい指導者がいる学校で経験を積むほうがいいです。非常勤であることがほとんどでしょうから、1コマでもいいので収支は度外視して、他の学校で仕事をする機会を作る。日本語学校は多種多様なので、たくさんみたほういいです。

人に背中を押してもらおう、などと考えず、自分で具体的なアクションを起こすのが一番です。自分で調べて、自分で決断する。自分の決断には責任を持つ。それができない人は、日本語教師はむいていないかもしれません。日本語教師はどこかでずっと安定して仕事ができる可能性はかなり低く、基本的には自分で考え決断し動かないと続けられない仕事ですから。(ホントはもうちょっとゆったりとキャリアを積めるところであってほしいとは思うんですが…)

もし、職場が違う同業者に相談をうけたら「これをビジネスに繋げよう」などとは考えずに、友人としてわかる範囲で答えて、後は、上記のように、自分が働いている学校で相談できる人を探すのが一番だよ、と返答するのがいいんじゃないでしょうか。

 あるいは、匿名でツイッターのアカウントでも作って、いろんな日本語関係者をフォローするのはどうでしょうか?そして、フォローしてくれる人がそこそこできたら、具体的に「こういうことわからないです」とツイートしてみましょう。

 仕事上の相談は「キャリアカウンセラー」というこれまた国家資格のテリトリーとなりつつあるようです、この資格は日本語教師とはあまり関係無いようですが。

個人のセミナーなどは、まだまだグレーな部分が多く法律との兼ね合いも難しいです。この項目は、また新たなことがわかったら書き足していきいます。

参考文献、サイトなど

カウンセリングにおける法と倫理 その1─民事訴訟法におけるカウンセラーの証人適確、証言拒絶 – さいころじすと日記 http://ow.ly/h7o730eguqx

有料お悩み相談まで踏み込むと、法律知識無しではやれません。以下、参考までに。

心の専門家が出会う法律[新版]: 臨床実践のために 金子 和夫
http://amzn.to/2vDaspD

カウンセラーのための法律相談―心理援助をささえる実践的Q&A 出口 治男
http://amzn.to/2vDgAOq

 

学生募集とアルバイト周辺と労基法

 以下は、日本語学校の謎 からの引用です。

学校の費用をローンで支払うというのは、奨学金という名目で結構悪質なことが行われたりしています。奨学金という名前でなくても、ローンの返済が就労が前提である場合は違法性が増し、さらに特定の就労先での勤務でなけれならない、と就労先が固定されると、違法性は高くなります。

よって、奨学金にはかなりいろいろな規制があり、リスクがあります。就労とセットのものは、ほぼ日本ではありません。新聞奨学生も、違法性が指摘されたりしています。

日本語学校の留学生がらみのローンは、2010年以降、従来の現地で借金をして、日本でアルバイトをして返済する、という形ではなく、日本語学校がバイト先とグループ会社を作り、そこでの就労を前提に学費の返済計画(ローン)を組み、学生を募集する、というタイプがあるようです。今は、技能実習生が働くような場所やそれ以外でも人手不足ですから、斡旋仲介ができる留学ビザ(技能実習生は斡旋で利益をあげるのは禁止)の学生はターゲットになっています。

二国間にまたがっているので、ハッキリみえませんが、日本国内ではアウトなので、いろいろと工夫がされているようです。日本語教育業界は、そういうものと縁を切る(直接利益を得ることはなくても紹介料を払って委託するだけでも違法性を問われる可能性大です)決断をしないとかなりまずいはずです。

就労前提のローンは憲法の「職業選択の自由」があるかどうかを、裁判で時間をかけて争うようなことになってしまいます。しかし最初から明確に法律にひっかかるのであれば、即アウトです。悪質なローンも奨学金もそのギリギリのところでやっている様子がうかがえますが、まず訴えられたら契約は紙切れみたいなことがほとんどだと思います。訴えられないだろうという見込みで行われている。

まずひっかかりそうな法律を考えていきます。

 

これだけ労働基準法にひっかかる

労働基準法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html

まず、17条があります。

 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

これで、ほぼ学費のローンと就労契約のセットはアウトになるはずです。日本にこの種のローンがない理由もこれです。ただ「奨学金」という名目ならやれると考える人はいるようですが、名前だけ変えても、同じです。これがなぜか留学生相手だとOKになっているのは不思議です。これらは訴訟があって、はじめて契約が無効になるので、訴訟ができない留学生という立場を利用した悪質なスキマビジネスだと考えることができます。少なくとも日本語教育関係者が関与すべき領域ではないと思います。

3条
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

賃金格差があった場合、これにふれます。2017年以降、特に外国人相手の賃金は厳しく監視される方向です。

5条 (強制労働の禁止)
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

ローンと学費が結びつくと、まずこれがひっかかります。後述しますが、暴力的な、ということがなくても、高額の返済計画があれば「労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種」と判断される判例がありました。

14条 労働契約は3年を越えてはいけない。(2003年の改正で1年から3年に)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000036407.pdf

日本語学校での滞在上限は2年3カ月ですが、専門学校とセットになっているような場合、3年を越えての就労前提でのローンが組まれる可能性があります。

15条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

奨学金名目でも、ローン返済が就労前提になっている場合、あらかじめ賃金、労働時間が明示されていなかったらアウトです。別になっていても、労働契約がなかったらアウト。これは今後、時給が最低賃金だったりした場合、3条の違反となる可能性があるので、最初はうやむやにするケースがあると思います。

16条は、「賠償予定の禁止」

労働契約には辞めることによる違約金や損害賠償金を設定できない。
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/011.html

留学生の場合、進学できないとか、仕送りが途絶えたとか病気だとかで、帰国せざるを得ないということはよくあります。その場合、就労前提のローンでは「全額返金」となっている場合がありますが、これに違約金、損害賠償金をかしてはいけない、ということです。

 この履行できなかった場合の「全額返金」は国内では(ケースバイケースですが)認めれることもあります。が、留学生の場合、途中で解約となった場合、全額を帰国後に支払うことになります。日本語学校の学費2年分なら約150万円、例えばベトナムなら平均年収は30万円ですから、賃金格差はだいたい13倍、1950万円相当の借金を背負うことになります。

18条  使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。

これも留学生に無駄遣いをさせないために「貯蓄は日本の文化」などと言って強制するところがあるようです。で貯蓄だからと天引きすると、、、

24条  賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

これはいわゆる天引きはダメということです。全額でなければならない。例外は社会保険などです。貯蓄だと言って天引きした分を経営者が理屈をつけて使うケースも多いです。ケガした際の治療費とか。

 

お礼奉公と留学生ローンは似ている

お礼奉公とは、医療関係で行われている奨学金制度(のようなもの?)で、病院からお金を借り看護学校などの費用にあてる、国家試験に合格した後、一定期間その病院に看護師として勤務すれば、返済が免除になるという制度があります。おそらくEPAの下敷きになったと思われます。しかし、就労とパッケージでのローンは違法性が高い、そこで「一定期間勤務する」のをあくまで紳士協定で「お礼奉公」と呼ぶということのようです。就労と学費のローンのパッケージという点で人材派遣系の日本語学校の留学生ローンと似ています。

参考サイト

お礼奉公契約は有効ですか/弁護士河原崎法律事務所
http://ow.ly/6z5r307zlNU
いわゆる看護師の奨学金制度のお礼奉公に関する判例が載っています。就労をもって奨学金ローンを組むという意味では今の留学生ローンと形態が似ており、参考になるはずです。

この中で注目すべき判例があります。

2002年11月1日大阪地裁判決:
修学資金などの返還または免除の合意契約は,その条項の形式的な規定の仕方からのみ判断するのではなく,貸与契約の目的・趣旨などから,当該契約が,本来本人が負担すべき費用を使用者が貸与し,一定期間勤務すればその返還債務を免除するというものであれば労基法16条に違反しないが,使用者がその業務に関し,技能者養成の一環として使用者の費用で修学させ,修学後に労働者を自分のところで確保するために一定期間の勤務を約束させるものであれば,労基法16条に違反する
看護学校への入学につき,入学金,授業料,施設設備費などを貸し付ける「看護婦等修学資金貸与契約」,およびその契約に対する連帯保証契約が,労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種であるとして,労基法14条および16条の禁止規定に違反するとされ,看護学校退学者らに対する賃金返還請求が棄却された

 判例の詳細はこちら
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08026.html

つまり、就労が人手不足など雇用者の都合で行われたことは労基法の16条違反と判断され、さらに、奨学金の範囲内であっても、経済的足止めとなるような額であれば、14条違反となる、とされたというケースです。

これは外国人留学生の奨学金、返済ローンにあてはまるケースが多いはずです。留学生の場合、日本語学校の1年分の学費100万円以下であっても、日本で働いて返すことができない以上、賃金格差を加味すると、東南アジアのどこの国であっても10倍にはなりますから、1000万円です。これは、契約形態そのものが労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種となる可能性があると言えるのではと思います。裁判になれば、就労先と学費ローンの債権者の関係が少しでも証明されれば、アウトなのではと思います。また、そのことを知りつつ学生集めを委託した日本語学校も違法性を問われる可能性があります。

これまで、労基法での問題となっていないのは、留学生が訴訟を起こしていない、訴訟をおこす費用も時間もない、からだと思われます。日本語学校は法務省管轄下ですが、主に入管方面なので、労基法との問題などはあまり考えられていないのでは、という気がします。しかし、今後は、技能実習生の監視をするという新しい機構に入管の人が入るとのことですし、日本語学校と就労の問題は注目されると思います。

「若者雇用促進法」関連

若者雇用促進法はいわゆるブラック企業と呼ばれているところに罰則を設けるための法律です。2016年の3月から施行。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html

これを利用して情報開示請求をした記事がありました。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2242

この改定にともなって、優良企業を認定する制度もできました。
ユースイエール認定企業
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000123441.pdf
→ 若者対象とはいえ「学卒3年以内での募集を行っていること」なので、日本語学校も対象になるはずです。その他の条件は、待遇や求人の透明性、職業訓練制度がきちんとしている、など職場の環境に関することです。

ユースエール認定企業は、こちらに
若者雇用促進総合サイト
https://wakamono-koyou-sokushin.mhlw.go.jp/search/service/top.action
→日本語学校は登録無しです。

*「離職率」の理解も。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A2%E8%81%B7%E7%8E%87

「次世代育成支援対策推進法」関連

1999年(H11)に成立した少子化社会対策基本法に基づき、2005年にスタートした施策で、主に育児休暇に関してきちんと取りましょうという政策。最初は従業員301人以上の企業に計画を提出させ、認定基準を満たしたところには「認定企業(くるみん認定企業)」として名簿に載せて公開、というものだったが、2011年以降は中小企業にも拡大された。今後はほとんどの日本語学校があてはまる「従業員100人以下の企業」も努力義務から義務へとなる可能性は高い。(女性が多い日本語教育業界では注目すべき施策であるが、2016年秋の時点で、日本語教育業界で話題になったことはない。認定された学校も見当たらない)

次世代育成支援対策推進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/jisedai-suisinhou-gaiyou.html

その後の改正と中小企業、100人以下の企業への適用拡大など。
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/02/01.html

基準認定企業の一覧
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jisedai/kijuntekigou/index.html

パンフレット(認定基準などの解説がある)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/26.html

 

2017年の厚労省の「指針」

 

「使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」ということになりました。そして、「「過少申告」が行われていないかどうか、企業側に実態調査をするよう求めた。」とのことです。

2016年から働き方改革の流れで、新たにこれまで曖昧だった準備や勉強の時間が労働時間であると明確に認められるようになりそうです。

・会社や上司の指示がなくても、結果として業務に必要な勉強などをしなければならなくなった時はその時間は労働時間と認められる。

これは、コマ数契約の際、問題になる点です。コマ数契約は、授業の準備の時間などは労働時間に入れないという考え方をより進めたものですから、今の流れとは反対になります。また、研修や勉強など仕事に必要な勉強の時間も労働時間です。これは教師にとっては大きな変化です。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html

 

転職や辞める際の法律いろいろ

 

2つのパターンに分けます。

1)他の仕事から日本語学校へ、またその逆

2)日本語学校から日本語学校への転職

失業保険

失業保険は、雇用保険に加入していないと支払われません。日本語学校だと専任は社会保険全加入になってますから「おそらく」大丈夫ですが、非常勤にはありません。「おそらく」というのは、こういうケースもあるからです。

これは、日本語学校連合会という日本語学校の業界団体が公開している文書です。つまり法務省に申請する際は、専任は社会保険加入がルールなので加入するが、受理されたら社会保険を抜けて、支払いをしない、ということですね。本人には伝えているのかはわかりません。(多分伝えてないはず)。油断できませんね。。。

失業保険に関しては、雇用保険に加入していれば受け取れます。申請が必要なのでググってください。

また、就職先が決まった場合はまた再就職手当てなどが受け取れます。
ハローワークなどで、尋ねてみてください。再就職先が今の職場より給料が安い場合は「就業促進定着手当」がもらえることがあります。一般の会社から日本語学校に就職した場合は、このケースが多いのでは?と思います。この際もらえるものはもっておきましょう。ちゃんと払った分なので。

ハローワークインターネットサービス – 就職促進給付
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_stepup.html

 

給料が未払い&学校がつぶれた

 

未払い賃金立替払制度

日振協の事業報告書によると廃校となるのは年に5校前後のようです。日振協の加盟校は6割弱なので、全体では、おそらく7~10校くらい廃校になっているはずです。また廃校にならずとも、学生が集まらないまま休眠中(買ってくるところがあったら売るかも)みたいなところもあると思います。2017年で法務省で認可された学校が550校前後で、文科省にデータを提出したのが370校前後。データ提出をしていない学校は理由はわかりませんが、稼働してない可能性が高いので、ざっくりと400校くらいは稼働していて、年10校が消える。40校に1校くらいのペースでつぶれているということになります。

学校法人や株式会社、個人経営などの運営形態によって、また倒産の形態によって違うとのこと。しかしはっきりと法律上の倒産ではなくても事実上倒産状態(事業がストップとか給料が未払い状態)なら、国が未払いの給料を保障してくれる制度があります。問い合わせてみて下さい。上限88万円~296万円くらいまでで、8割くらいは受け取れる可能性があるようです。仮に50万くらいが戻ってきて、質魚保険が月15万、3ヶ月間出れば、再就職のための資金にはなりますし、独立の資金にもなります。

未払賃金立替払制度の概要 |厚生労働省
http://ow.ly/ykL0309Zx1j

独立法人労働者健康安全機構 (問い合わせ先があります)
https://www.johas.go.jp/tabid/417/Default.aspx

 

学生の様子がおかしい

 

入管法で

日本語学校には28時間というバイトの枠があり、これを越えるとわかると、わりと簡単に入管法違反で生徒と理事長が逮捕されます。「実際は28時間以上働いている」などと言われていかにも黙認されているようですが、はっきりとした証拠が掴めれば動きます。これは法務省の入管の仕事なので、入管の窓口がよいと思います。ウェブ上にもフォームがあります。

入国管理局には情報を受ける窓口があります。不法就労が疑われる場合は、ここです。

総合窓口
http://www.immi-moj.go.jp/zyouhou/index.html

各地域の入管の連絡先
http://www.immi-moj.go.jp/soshiki/index.html

労基法で

しかし、28時間は守っていても、労基法上違法な形で働かされているケースがあります。詳しいことは後述しますが、これが2010年以降に増えたケースです。法務省=入管は、28時間には厳しくても、労基法に関してはスルーです。通報先は、その地域の労働基準監督署です。

2017年に宮崎の日本語学校で問題が起きました。報道されているとおりなら、労基法違反です。しかも、強制労働は、違法性があるなし以上に国際問題に発展する可能性がある悪質な事件です。ただ、こういう労働契約をしている日本語学校は多いと思われます。

留学生に強制労働 容疑で4法人書類送検 都城
https://archive.is/QdTds

厚生労働省 長時間労働削減に向けた取組
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html
→ 労働基準法や労働安全衛生法などに違反して送検された事業場はここで公開されています。学生がバイトをしている会社とかぶってないか、チェックしてみましょう。2017年5月10日から。

 一年で削除されるとのことです。一応保存してみました。 20170510

技能実習生

日本語学校の学生がバイトをするところとカブるケースがあります。また、最近は、日本語学校では技能実習生の請け負いをするところが増えてきました。学校にとっては重要な取引先です。ここ何十年も、8割近い技能実習生の受け入れ企業がなんらかの違反をしているという調査結果がありますので、常態化していて「ああいうのが普通だから」「ひどいところに較べると良心的」とスルーされるようになっています。

技能実習生周辺は送り出し国の組織、仲介をする業者、受け入れ国の管理団体、協同組合などの組織、受け入れ企業、いろいろあるわけですが、実習生の生活環境や労働環境をきちんとしなければと動く組織は、ほぼありません。実習生もお金がほしいんだから、少々のことは見て見ぬフリするのがお互いの暗黙の了解、みたいなケースもあるようです。

留学生と違って、学校やコンビニなどのバイト先で日本社会と接するわけではありませんし日本語能力も総じて低い。技能実習生の周囲に味方はいません。つまり、技能実習生の労働環境に関して、利害関係が薄く、問題に気づいて、法的な対処まで導くことができるのは、日本語教師だけかもしれません。

厚生労働省
外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成26年の監督指導、送検の状況を公表します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000098716.html

まともな賃金が払われていない、残業代がない、居住費生活費と称していろいろと天引きされている、仲介業者が不当に利益を得ている、いろんなところで、少しづつ、いろんなところがお金を抜いている、というような構造があり、さらに、パワハラ、セクハラ、虐待に近いことが行われている(けど、出身国で同じような環境だったので実習生は気づかないということもある)。教室で寝ている生徒が受け取っている報酬は時給換算で300円くらいで、気づかずに満足している、という可能性があるわけです。

技能実習生は研修だから労働基準法は適用されない、という人がいます。最初はそうでしたが、今は違います。以下のPDFをざっと眺めておきましょう(これ当然自分にもあてはまりますし)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002ag3s-att/2r9852000002ag9v.pdf
労働基準法は、あらゆる契約に優先するので、契約時に時給300円だったというのはレッドカードです。地域ごとに決まっている最低賃金は支払わなければなりませんし、時間外手当ては割り増しですし、残業は一ヶ月45時間を越えてはいけません。給料から勝手に天引きするのは違法ですし、休暇がない、休み時間がない、貯金させるみたいなことも禁止です。

例えば、もし、これらの日本の労働関連の法律が実習生の母国よりも優れているとするなら、相対的な優位とはいえ、それは日本事情の重要なジャンルとして教え伝えるべきことではないでしょうか。母子手帳制度や進んでいる災害対応などと並んで日本の「クールな」側面としてとりあげたい材料です。帰国して、自分の国の労働環境の整備に携わろうとする人が出てくるかもしれません。

技能実習生の受け入れ先も、悪気はなく「お互いに了解済み」「日本人ももっと働いている」という理屈で、ずるずるとヒドい労働環境となっているケースは多いようです。例えば、スマホを一瞬でも預かるようなことをするところは、追跡アプリを仕込む可能性があるわけです。いろんな可能性を知っておいてほうがいいし、知ってて見過ごすとなると、生徒募集から関わる学校もありますし、おかしなところと提携している日本語学校が処罰の対象になる可能性はあります。日本語教師は、生徒の話を聞いておかしいなと思ったら、それとなく確認して、対処することはできます。

技能実習生に関しては、管理する組織である外国人技能実習機構が2017年にできました。
http://www.otit.go.jp/
札幌、仙台、東京、水戸、長野、名古屋、富山、大阪、広島、高松、松山、福岡、熊本に窓口があり電話で通報を受け付けています。
http://www.otit.go.jp/html/map.html

 追跡アプリはその人がいる場所をGPS機能を使って調べるものです。一時「彼氏チェック」的なアプリとして話題になりました。たくさんあります。「追跡アプリ 検出」などで検索すると、追跡アプリを探し出すアプリがいろいろと紹介されているページが現れます。

*参考記事LINEも、通話も、位置情報も スマホを遠隔から監視、操作できる「Androidアナライザー」を悪用した利用者が続々逮捕|I believe in technology http://ow.ly/IcbW306x9g2

公的な管理組織もありますが、利害関係がない第三者の立場で動いてくれそうなところは、労働基準監督署か、弁護士団体、しかありません。

外国人技能実習生問題弁護士連絡会
http://kenbenren.www.k-chuolaw.com/

日本弁護士連合会の意見書
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130620_4.html

神奈川県弁護士会 
外国人労働者と技能実習生のための無料電話相談
http://www.kanaben.or.jp/news/event/2012/post-40.html

厚生労働省 技能実習生のみなさんへ(日中インドネシア、ベトナム、タガログ語の労働基準法などの説明パンフ)

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/foreigner/technical_intern/

国内で技能実習生のことを管轄しているのは、公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO ジツコ)でしたが、2016年からは外国人技能実習機構がより厳しく管理していくことになりました。2つの組織となったことで、JITCOも以前より厳しく監視するようになったという話もあります。

JITCO関連

問い合わせは
http://www.jitco.or.jp/about/inquiry.html

実習生の労働環境に関するガイドラインもあり、セクハラ関連や、妊娠、出産などでの不利益取り扱いの禁止、など細かい規則が書かれています。労働基準法以外の部分で、ここに書かれていることに違反していれば即アウトと考えていいはずです。

外国人技能実習生労務管理ハンドブック
https://www.jitco.or.jp/download/data/handbook.pdf

新しい外国人技能実習機構は入管OBもいて捜査権があります。管理や摘発が中心ということでしょうか。JITCOよりはすぐに動いてくれそうです。
http://www.otit.go.jp/

 パスポート取り上げは、日振協やJaLSAなどでも禁止事項とされてますが、どこに通報していいのか難しいところです。パスポート取り上げで問題になるのは、主に移動の自由を奪った、ある意味軟禁した、とみなされるのですが、警察でちゃんと扱ってくれるかはわかりません。可能性があるのは入管の窓口でしょうか。サイトからやってみてください。ただ、マイナンバーの通知書を取り上げるのは、職業選択の自由を奪ったとして書類送検された事例がありますから明らかに犯罪で労基署案件です。学校関係者が生徒のマイナンバーを管理しているようだとなったら、管轄の労基署に連絡すれば動いてくれるのではと思います。

 


 

近い将来起こりそうな問題 - 社会保険 –

2019年の10月1日から社会保険は中小零細企業にも適用が拡大されると言われています。

社会保険とは

社会保険とは、いろいろ考え方はありますが、基本的には「健康保険」「厚生年金」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」のことです。会社に入ると、会社と個人で折半して払うことになり支払いは会社給料から天引きされる、というシステムです。

社会保険は従業員5人以上が常に働いているところは加入義務があります。
対象は正社員だけでなく、契約社員やパートにも適用されます。一般的な正社員の所定労働時間は週5日、一日8時間となっているので週40時間を目安とし、おおむね四分の三以上働き、二ヶ月以上雇用見込みの場合は、会社は社会保険に加入できるようにしなければならにことになってます。「月に120時間以上」が目安となっているという話もあります。この「おおむね」の解釈でこれまで問題になってきた歴史があり、会社側は四分の三以上にならないよう調整する、あれこれと少なく解釈して要件に満たないとする、で、契約社員やパートに訴えられて裁判に、ということがあったとのこと。

日本語学校も90年代にすべて加入すべしという通達があったようです。90年代に「無理だよ」「社会保険大変だよ」という日本語学校経営者の声を聞いたことがあります。現在は、専任の教員は社会保険に入ることが法務省の日本語教育機関の認定の要件となっています。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html

自己負担分の目安と社会保険加入のメリット

健康保険は、給与の5%前後が自己負担。自営業の国民健康保険よりも自己負担は減り、出産手当て金(出産で42万円、産後休業分で56日×一日の報酬額)や傷病手当金(ケガや病気で会社を休んだ時に一日の報酬額の三分の二が支給)など手厚くなります。

厚生年金は、給与の8-9%前後が自己負担。国民年金に+され、支給額もかなり多くなります。厚生年金の支払い額は国民年金も含まれているので支払う額としては一本化されます。

介護保険は40才になったら支払うシステムです。

労災保険は全額会社負担。仕事でケガをしたり病気をしたりしたときの保証をしてくれます。

雇用保険は給与の約0.5%が自己負担とのことです。会社の加入義務は他の保険より厳しく、週20時間働く人で31日以上雇用の見込みがある場合は会社が加入する義務があり罰則もあります。失業時の再就職までの期間、失業手当(7,000円前後×90~150日分)等が給付されます。また、育児・介護休養の際の補償(給与の約67%)もされます。

すべて合わせると、給料の15%近くは引かれるわけです。20万円なら3万円。ただ、健康保険、介護保険は、自営業になっても払う(合計で15000円くらい?)ので、年金も増えて、いろいろ手厚くなりますし、仕事をしている間のケガ病気の保障もある、日本語教育業界は失業のリスクは高いし、今は、扶養でいいといっても、例えば、経済的な自立がないことが、将来、離婚という選択肢の障害になるかもしれない、となると、長い目でみれば、やはり加入したほうが圧倒的に得という気がします。

 

2016年からパートも社会保険加入に

2016年10月からパートタイムであっても一定の条件を満たす人は、社会保険に加入することになりました。また結婚していて配偶者の扶養下でいられる上限の金額が年収で106万円となります。

パートタイムで社会保険に加入できる要件は

1. 週所定労働時間が20時間以上
2. 年収が106万円以上
3. 月収が88,000円以上 
4. 雇用期間が1年以上
5. 企業規模が従業員501名以上(*平成31年9月30日までの時限措置)

厚生労働省 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000099460.pdf

 2017年、パートの扶養控除の年収の上限は150万円になりました。

*週の時間は残業代は含めません。なので、19時間+残業みたいなセコイことをしてくるかもしれません(ただし残業分は当然割り増しになってないとアウトです)。月収の計算は日本語学校のように休みが多少あっても、基本、週の労働時間×52週を12で割るで出る額でよさそうです。

が「いちおうの目安」とのこと。2017年の4月からは、労使の合意があれば、社会保険への加入はできることになりました。さらに平成31年(2019年)10月からは、従業員規模のハードルが下がると言われています。日本語学校でも十分に射程内に入ると思われます。年収による「シバリ」も撤廃すべきではという議論は時々起こってますから、これらもどうなるかわかりません。

つまり流れとしては、今年から数年のうちに、週20時間以上働く人は、加入マスト、となる可能性はかなり大きく、2019年以降は、ほぼすべてのパート、非常勤は、加入する流れです。

当然、専任講師に準ずる形で仕事をしている非常勤講師も社会保険に加入という流れになりそうです。もちろん、配偶者の扶養内でやりたいという人は、授業時間を減らすという調整を学校側とすることになると思われますが、問題は、扶養の条件関係なく働こうという教師が学校側の意向によって、社会保険に加入させてもらえない、あるいは、条件を満たさないように、働く時間を制限されてしまう、というケースです。

これはこれまでも、ベテラン教師などに社会保険出す余裕がないので契約社員として週30時間越えないように、あるいは雇用保険の20時間越えないように契約してね、という日本語学校はあったはずです、これが週20時間になると、ちょっとコマ数が多い非常勤講師は加入させなければならなくなりますから、今後、そういう非常勤、契約の教師の労働時間が、軒並み20時間以下にさせられる、という可能性はおおいにあると思います。

社会保険は個人が払う額の半額を会社が払うことになっており、雇用側にとっても、かなり大きな負担です。日本語学校が専任教師の比率をあげられないのも、この社会保険の負担が大きな要因となっていると思われます。ネット上にも経営者に向けて「いかにパートに社会保険に加入させないようにするか」という情報をあれこれ書いてるサイトがたくさんあります。#加入逃れ 一語で検索して出来るのは、事業主が社会保険の加入から逃れるサイトばかりです。

いろいろと訴訟も起こっています。
ベルリッツの講師、日本年金機構に勝訴
http://generalunion.org/jp/2014-08-06-05-33-55/1473-2016-07-14-02-35-15

これは、今後、問題となる可能性がある事項として、書いておきます。今からでも、もし、非常勤として仕事をする場合、あるいは契約社員の場合、2019年10月以降、社会保険に加入できるのかをまず確認したほうがいいと思います。本人が希望するなら加入する方向で整備していきたい、というような学校は多くないかもしれません。

 2017年に決まった扶養控除の上限額の150万円は、仮に時給1500円で計算すると、ちょうど1000時間です。日本語学校は実働は、年40週くらいでしょうか?40週で計算すると、週25時間。つまり扶養がいいという人にとってはもっと働けるようになった、ということになるわけです。日本語学校にとっては有利な法改正です。学校は、社会保険を払わずに済む、結婚していて扶養でやる人を雇いたいという傾向は強くなるかもしれません。

 もちろん、結婚している、してない、する予定があるないで、採用不採用を決めるのも、面接時に関連の質問をするのも、採用後に妊娠結婚で退職を迫るのも、男女雇用均等法違反です。 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/q-a.html

日本語学校には長年非常勤で実質専任並みに仕事をしている教師がいるケースが結構あります。そういう人達が、すでに社会保険に加入している学校なら、日本語教師と長く付き合っていこうというところ。ベテラン教師が軒並み契約社員で、週30時間以下で調整されてきた。今、20時間以下で再調整、というところは、基本、日本語教師に保険料を払いたくないというところと考えてもいいと思います。

社会保険は、出産や子育てに対する保護が手厚く、働く女性を支える制度という要素も大きいです。女性が多い日本語教育業界で社会保険への加入を渋るということは、ますます日本語教育業界は女性にやさしくないところだということになってしまいます。この新たな社会保険の基準は、基本的には働く女性の自立を促しサポートする改正です。「週20時間以上働く人を社員と同等に扱えない会社は淘汰されても仕方が無い」という考え方もあるように思います。日本語学校は小規模の会社が多く、経営が不安定で社会保険を適用していたら経営が立ち行かない、ということなら、経営統合や多角化などで体力をつければいいのです。

日本語教育振興協会、全国日本語学校連合会などの業界団体も、会社規模に関係なく一律で20時間以上の講師に社会保険の適用を義務づける方向で動くべきではないでしょうか?

 

例えば今、今年の10月の施行のタイミングで「国内の民間の日本語学校は、一定規模の学校は最初から、平成31年(2019年)10月からは、すべての私達の組織の登録校は、すべての20時間以上働く教師を社会保険加入を義務化します」と宣言すれば、女性が働きやすい仕事だという強い印象を与えることができるのではないでしょうか?

 

社会保険に関しておかしいなと思ったら

社会保険の管轄はいろいろ違うので相談する先が違います。学校がきちんと説明しない、加入させない、みたいなことは、先にあげた全国労働基準監督署でいいと思いますが、個別の問い合わせ、相談なら、以下に。

□ 雇用保険未加入の相談先は全国ハローワーク。
ハローワーク
http://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html

□ 労災保険未加入の相談先は労働基準監督署の労働保険適用担当
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/

□ 健康保険未加入の相談先は全国健康保険協会の近くの支部
全国健康保険協会
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/

□ 厚生年金未加入の相談先は日本年金機構
日本年金機構 ねんきんダイヤル
http://www.nenkin.go.jp/section/tel/

その他リンク

日本年金機構 平成28年10月より短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が始まります。
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/0516.html

*年金機能強化法
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201407/1.html

離婚後の社会保険
http://www.rikonmondai.jp/problem/hoken/

 


 

個人でできること

勤め先に問題があると思った時は、ぼんやりとツイッターで悪口をいったりボヤいたりするよりも、まず労働基準法の概要だけでも読んで、判例などもざっとチェックする(労働基準法は違反だから訴えれば勝てるというものではないのが難しいところなので)といいと思います。現実にはどのへんからイエロー、レッドなのかを知っておくことは結構重要なので。

監督官庁に

まず担当の省庁にメールで通報するという方法があります。

日本語学校の質的管理は2017年からは文科省がやるとのこと
宛先はここに
http://www.mext.go.jp/mail/
日本語教育の関連ページには「高等教育局学生・留学生課留学交流支援係」とあるので、ここの「外国人留学生の大学への受入れ及び外国留学に関すること」でいいと思います。(2017年8月の時点では日本語教育機関という項目がないので)

日本語学校のもうひとつの監督官庁は法務省です。これは法務省の中でも入管なので、後述します。

日本語教師養成講座は文化庁です。

ここに情報があります。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/
ここの一番下に問い合わせ先があります。メールでの問い合わせをしたことがありますが、回答まで一ヶ月ちょっとでした。忙しい時期だともっとかかるかもしれません。担当者は2人という噂がありますし。。。しかし問い合わせをする価値はあります。

留学生の就労に関しては、入管でもいいんですが、あまり動かないという話もあります。労基署のほうが人も多く、簡単に事業所に立ち入ることもできるので、地元の労基署がいいのではと思います。
労働基準監督署 地名 で検索してみてください。

日本語学校では

日本語学校の場合ですと、絵に描いたような乱暴な物言いよりも「修行のうちだから」「やる気のない教師はダメ」「昔は無給でがんばったものだ」「**先生はやった」というような理屈でサービス残業などを強いられたり、無理な仕事を受けざるを得ない状況に追い込まれたり、ということが多いような気がします。あるいは同様の理屈(きちんとした客観評価ではなく「やる気が感じられない」的なあいまいな理由で)でコマ数を不当に減らされたり、というようなことも多いはずです。やさしくニッコリと「がんばって!」などと言われて「いい先輩に恵まれた」と思ってしまう的なこともホントにあるあるです。

年々巧妙化!ブラック企業の10の手口を徹底解説
http://diamond.jp/articles/-/79476

「良心的な私達の学校を救うために安い賃金で働いてくれ」ということもよく聞きます。「学生に負担をかけるわけにはいかない」から教師の給料はあげられない、というような理屈も。

しかし、留学生の数は一定数あるわけですから、経営力のない日本語学校が潰れても何の問題もありません。力のある教師であれば、潰れた学校からならすぐに転職できるはず。

また、1教室20人という規制がありますが、これは民間の学校の基準としてはかなり厳しいものです。普通は常に20人近くいないと採算は合うはずはありません。教室に学生がいない、年によって学生数の増減が激しい、というのは、単純に学校の経営に問題があるからです。経営力がない学校は淘汰され、統合され、日本語教師にまっとうな給料を払い、教師を時間をかけて育てて、長く働ける環境を提供できる学校が残るような健康な競争が、新陳代謝が、日本語教育業界には必要です。

証拠が重要

サービス残業やタイムカードの書き換えなどは、査察が入ればハッキリしますが、ハラスメントのタグイは証拠をきちんと積み上げないといけません。録音が決め手になることは多いようです。深刻なことになる前から、少しづつやれることはやったほうがいいようです。セクハラはストーカー化したりする可能性もありますし。可能な限り早い段階から証拠集めはやるべし、というのが定番の対処法とのこと。

弁護士ドットコム「パワハラ・セクハラの証拠集めは「犯罪」ではない」
https://www.bengo4.com/c_5/n_1705/

相手に無断で録音したものが証拠とならないケースはほとんどの場合刑事裁判のことで、労働問題のような民事裁判ではほぼ証拠として採用されると言われています。

録音はスマホのボイスメモ的なアプリが一番簡単で怪しまれないと思います。常に携帯していても自然ですし、ボイスメモのアプリはたくさんあります。動画も撮れますし。ICレコーダーも、USBメモリタイプ(逆に、職場の謎のUSBメモリには注意しましょう…)などいろんな種類があります。デジタルビデオでもアクションカメラというカテゴリでは、高画質で小さいものがいろいろありますので、探してみて下さい。

いざ交渉という時にセットしておくみたいにこっそりやる、という方法もありますが「このやり取りは録画します」と宣言してやる方法もあります。交渉の場で前向きな約束などがされた場合の証拠にもなるからです。

 アマゾン関連機器の検索結果 https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%E7%9B%97%E8%81%B4
自分でもできる!こうやって見つける「盗聴器の発見方法」 – NAVER まとめ http://ow.ly/WzQz302jEW7

匿名メールで

で、第一歩としては先にあげた匿名でメールで厚生省にメールする、というステップがあります。匿名の申し立てでは動かないと言われてますが、記録はのこる。いつか何かの判断材料にはなります。できれば、具体的に行われていることを書き、労働基準法の*違反ではないか、と証拠になりそうな事実をきちんと書いたほうがいいようです。タイムカードがあるか、どう使われているか、給料明細をコンビニでスキャンして添付するなど。

実名で申し立て

次の段階は直接管轄の労働基準監督署に言って実名で申し立てをする、これは証拠がとれそうなら、動いてくれる可能性は高まるようです。この申し立ても、ただ「ひどいんです」と言うよりも、労働基準法を理解したうえで、「**条に違反している」と言うのとでは、対応が全然違うと言われてます。もしかしたら学校をやめる覚悟が必要になるかもしれませんが、転職するなら、後につづく教師のためにもやる価値は大きいと思います。

*労基署について書かれた記事です。

労基署はみている
http://bizgate.nikkei.co.jp/series/013181/index.html

記事によると、、、

労働基準監督署には「労働基準行政情報システム」というものがあり、全国の各監督署を専用回線でつなぎ、情報を共有することができる。このなかで、それぞれの事業場が、個別事業場情報管理のサブシステムにより登録され、ここに様々な情報が貼りつけられている。

 そういう形で、次々に各監督署においてデータを入力することで情報の蓄積を行い、その情報を共有することになっているのだ。そのため、異動などで新たな監督署に勤務することになっても、データを確認すれば、管内の企業の情報はすぐにわかる仕組みになっている。
 臨検監督を拒否したといったことがあれば、その情報もわかり、次にそういう形で問題が出てくれば、知らない会社であっても、すぐに事件として取り組むべき企業かどうかが、わかることになるのである。
 そういうことから、現在、申告常習事業場は、引き継ぎで伝達されなくても、全国のネットワークにより問題企業として洗い出すことができるのである。

とのことでした。匿名の申し立てではなかなか動いてくれない、実名でも動かないこともある、とよく言われますが、記録は残ります。労基署のウォッチ対象になるということで、後々救われる人がいると思います。

訴訟の前段階 ~「なんとか士」の方々に~

訴訟は最後の手段ですが、小さな会社の場合、明らかに違法みたいなケースでは、弁護士に相談する前に司法書士の人に相談して書面作って送れば、あわてて対応して解決、ということもあると思います。ネットでいろいろ調べて、じゃあ何かアクションを起こすか、という際は、まずは司法書士に相談することから始めてもいいかもしれません。いろいろあるので関係がある「なんとか士」についてちょっと調べました。

司法書士

裁判に関わる相談も受け、場合によっては代理として裁判に関わってくれることもありますし、弁護士をたてるかどうかみたいなアドバイスもしてくれます。町にひとつは事務所がある(市役所の近くとか)ので、ちょっと相談してみる、あるいは「こういうことについて法的に何かできないか考えている、ついては、ご相談する費用など教えてください」と、尋ねてみてはどうでしょうか。

司法書士連合会
http://www.shiho-shoshi.or.jp/

行政書士

行政書士事務所が舞台のマンガ、カバチタレで有名になりました。あんなに社会正義に燃えた海千山千の人がいるとは限らないみたいですが、不当な解雇だとか、パワハラみたいな件でも相談できると思います。基本、官庁などに提出する書類など、国や政府とのやり取りの際の書類作成が専門ということですが、会社などを相手に法的にどう対応するのがいいか、などのアドバイスなどをしてくれるはずですし、司法書士と同じく法律関連の仕事が多く、弁護士との関係も近いので、必要ならば弁護士を紹介してくれると思います。
国籍取得やビザの書き換えなども主な仕事のうちなので、外国人関係の問題、トラブルの相談もできるはずです。

日本行政書士連合会
https://www.gyosei.or.jp/

社会保険労務士(社労士)

どちらかというと企業の顧問となって法律に沿った経営が行われているかをみてもらうみたいな形で仕事をしている人が多いようで、どちらかというと、会社とのやり取りでは会社側にいるほうの人達です。労働訴訟対策などもやります。時には、よからぬアドバイスをシャチョーにするという社労士もいるみたいな話はよく聞きます。

全国社会保険労務士会連合会
http://www.shakaihokenroumushi.jp/consult/tabid/208/Default.aspx

いずれも、専門、得意な分野がありますし、個人の客はあまりとらない、みたいな人もいます。今はネット上にサイトを持ってるところが多いので、自分が住んでる地域と「なんとか士」で検索して相談できそうなところをピックアップしてメールを出してみる、でもいいかもしれません。

 

とはいえ、相手の経営者が内容証明くらいならスルーで顧問の社労士に相談して、逆にあれこれとプレッシャーかけてくる、犯人捜しをしてくる、みたいに悪質だったり、セクハラみたいな場合は、解決するなら警察か裁判か、ということしかないかもしれません。

訴訟

訴訟も辞さず、ということなら、組合的な組織に相談する、直で労働問題に強そうな弁護士に相談する方法があります。費用などは、まず相談すればきちんと明示してくれると思います。数名でも人数が揃うなら、こっちのほうが心強いかも。

こういう動きに対してプレッシャーをかける、犯人捜しをする、という行為も違法です。申し立てをする、訴訟をするとこまではいかないと思っても、書類から会話記録まで(iPhoneで簡単に録音できます)記録できるものは記録しておきましょう。

公益通報者保護法
http://www.caa.go.jp/planning/koueki/gaiyo/

東京弁護士会 公益通報Q&A
http://www.toben.or.jp/bengoshi/koueki/qa/

大阪弁護士会 公益通報者サービスセンター
https://www.osakaben.or.jp/01-aboutus/committee/01/

日弁連
http://www.nichibenren.or.jp/

*組合も弁護士事務所も、穏やかなところから、とにかく訴訟、というところまでいろいろあるようです。話をして納得いくところで、納得のいくやりかたでどうぞ。

外国人技能実習生問題弁護士連絡会/トップページ
http://kenbenren.www.k-chuolaw.com/

費用

労働関係は裁判になると弁護士費用などを含め50~100万円ほどかかるようなので、個人だと、例えば取り戻したい金額があって裁判で勝ったとしても赤字は免れないような気がします。

ただ、裁判の前段階の「労働審判」だと弁護士はいなくてもできるので安く済みます。2万円くらいとのこと。司法書士や弁護士に相談だけしても合計10万円くらいでできそうです。労働審判は個人と会社との関係を判断するものということなので、集団での訴訟はできないのですが、グループを作り、費用を出し合い、誰かが代表してやるという形でやるわけです。( #労働審判 #費用 で検索してみてください)

ただセクハラ、パワハラとなると、労働審判では「セクハラ、パワハラを放置していた」と会社を訴えることはできても当事者本人を訴えるのはできないそうです。これは弁護士が必要ですが、費用などは、セクハラ、パワハラの被害者のグループなどに相談するのがいいかも。

これまで日本語教師が日本語学校を訴えた記事は読んだことがありません。訴訟になれば社会的にかなりインパクトは強いので学校はその前になんとかしようということになる可能性は高いです。労働審判まで行っても和解を目指すでしょう。ただ、もしかしたら、そうやって表にでないことで、結果、セクハラやパワハラ、違法な労働環境が続いているということもあると思われます。悪質なら、訴訟は脅しで使うのではなく、実際にやってみれば、業界全体への影響は大きいのではないでしょうか。30年できなかったことが、アッサリ動くきっかけになるかもしれません。

 いざという時に訴訟ができるような体勢(顧問弁護士を雇うとか訴訟費用をプールしておくとか)を持つためにも日本語教師ユニオンを作る意義はあると思います。100人の日本語教師が年間1万円、もしくは、300人の教師が年間3000円出し合えば、ひとつ訴訟ができる体勢が作れます。

 ただ、「なんとか士」も弁護士も、相談してサポートしてもらうのであって、どうするかを決めてもらうのではありません。最終的にはあなたがどうしたいかで決断してください。

メディアに

今は、SNSなどで「こういう問題がある」と発信することができます。ただ、実名アカウントで、相手も実名で、具体的な証拠の写真などを添えて発言しても、ただ、書いただけでは、それが何かに繋がる可能性は低いです。メディアの代表アカウントにリプライしても難しいですが、多分、情報提供のページから送信すれば会社の誰かの目には止まります。ダメ元で気軽に送ればいいと思います。

新聞社や出版社、政党には、必ず報道してほしいという旨を送るフォームがあります。

朝日新聞 
情報提供:こちら調査報道班
https://www.joho.asahi.com/
SNSアカウント(グループ)
http://www.asahi.com/twitter/
SNSアカウント(記者)
http://www.asahi.com/sns/reporter/

毎日新聞
情報提供:問い合わせ https://form.mainichi.co.jp/toiawase/index.html
SNSアカウント http://mainichi.jp/social/

読売新聞
情報提供:https://info.yomiuri.co.jp/contact/index.html?from=yfooter

日本経済新聞
SNSアカウント http://www.nikkei.com/edit/sns/?n_cid=DSSCN001

ハフィントンポスト
情報提供 http://www.huffingtonpost.jp/p/huffingtonpostjp-contact-us.html

週刊新潮
情報提供 http://www.shinchosha.co.jp/help/ask.html#contentAnchor4

西日本新聞は2016年の年末から2017年にかけて、ネパールや地元の日本語学校など長期にわたり取材してくれました。
新移民時代
http://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/

以下は、その連載時に紙の紙面にあった新移民取材班の連絡先です。連載は終わっても取材した記者はいると思います。
手紙は〒810-8721で西日本新聞 新移民取材班 で届くそうです。
ファックスは 092 711 6246
imin(アットマーク)nishinippon-np.jp
英語対応可とあったので生徒に知らせてもいいですね。

2016年に正式にスタートした日本語教育振興議員連盟の事務局長ははせ浩氏です。はせ氏のサイトのお問い合わせフォームは以下に。

その他、ウェブメディアもたいてい下のほうに、「お問い合わせ」リンクがあるので、そこから情報提供ができます。

 ダメ元で記者のツイッターアカウントなどにリプライをしてみるのもいいかもしれません。朝日、毎日、日経などはたくさんあります。例えば、朝日の岡田記者 ( @OkadaG)は、福岡の日本語学校を取材して閉校に追い込んだ記事に関わっていたようです。
また、出井康博氏は、留学生関連の記事や本を書いているフリーのジャーナリストで、ルポ ニッポン絶望工場 (講談社+α新書)などの著作があり、ネット上に関連の記事も書かれています。ツイッターアカウントがあります。

その他

外国人が被害者という場合、大使館に通報するという方法もあると思います。

ベトナム大使館
http://www.vnembassy-jp.org/
フィリピン大使館
http://tokyo.philembassy.net/ja/
中国大使館
http://www.china-embassy.or.jp/jpn/
インドネシア大使館
http://kbritokyo.jp/ja/

ベトナム大使館は、頻発する事件を受けて、2017年4月に技能実習生や留学生向けに窓口を作りました。ここは活用すべきだと思います。
日本への留学、技能実習を希望される皆様へ
http://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_DuhocNBjp.html

 

法律以外のこと

法律は人身売買や奴隷的拘束などには意外と弱いです。

2016年に起きた栃木の日本語学校の事件では

・学費のために時給800円で働かせ。
・しかもその時給は派遣先からは1350~1600円近くを得ていて
・差額を日本語学校の経営者が別会社の斡旋会社で斡旋仲介料として中抜き
・働かない学生に叱咤、暴言で脅し
・借り上げていたアパートの寮費、相場でだいたい4万円のところに3人以上住まわせて一人3万円以上の水増し家賃を徴収し
・家賃の差額もふところに入れていた

とのことでした。またその後の西日本新聞社の「新 移民時代」という取材では、その他いろんな日本語学校の現状がわかっています。

・グループ上位の専門学校に進学させるために、他の大学や専門学校への出願書類を出さない
・生徒指導の「見せしめ」のために遅刻程度のミスで強制帰国させる。

 一連の措置は「強制帰国」と呼ばれ、この専門学校と系列の日本語学校で「歴代職員にノウハウが引き継がれている」。そのノウハウには「パスポートや携帯電話は空港の手荷物検査ゲートまで預かる」「携帯電話は動画を再生し続けるなどしてバッテリーを使い切る」などがあるという。

専門学校を監督する福岡県は「事実であれば、教育機関として不適切な人権侵害行為」とする。一方、日本語学校を監督する福岡入国管理局は「学校管理の問題もあり、一概に人権侵害行為に当たるかは非常に難しい」とするにとどめた。

西日本新聞 新 移民時代
http://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/309940

最後の県と入管の見解の相違は興味深いです。入管=法務省は、日本語学校に生徒管理を丸投げしているので、ある程度は目をつぶるしかない。それならビザを出さなければいいと思いますが、出せという圧力があるんだろうと思います。(ビザはその時の政権の政策によってかなり変わります)県は、というより、一般論としては人権侵害の恐れがあるので、指導しないといけない。ここに温度差があります。日本語学校にとっては学生の数が増えるのも減るのも、法務省=入管次第なので、ここが絶対です。労基法とか人権よりも入管=法務省の意向を伺いながらやる、入管=法務省がスルーすることはやってもOK、ということになっています。

そして、日本語学校の職員や日本語教師が「これは人権問題なのではないか?」と思った時に、通報したり告発するところがない。ということになってしまっています。

2016年の事件の日本語学校の経営者(理事長)は、稼いだお金で新たに日本語学校を作り、足利銀行の館林支店から1億8000万の融資まで取り付け、次は、介護人材まで広げようとしていたのですが、判決は相場どおり求刑2年でした。群馬県は2017年にベトナム人材活用の方針を出していて、この種の事業には融資がでやすい、ということもあったと思われます(そしてそれは全国的にそうなりつつあります)
おそらく相場どおり「1年」で執行猶予がつくと思われます。日本では人身売買は初犯なら執行猶予がつく程度の犯罪というわけです。

法律以外のことをみてみましょう。

日本の憲法では18条があります。
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」
上にあげたようなことは、明らかに奴隷的拘束にあたります。

国際的な規約で日本が批准しているものにも、いろいろと抵触します。

国際人権規約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/kiyaku.html

この人権規約は規約人権委員会によって監視され、国に対して勧告がだされることがあります。この勧告を無視することはできません。
http://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/libraries/research_guide/themes/human_rights/#a3-6

規約人権委員会のサイト
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CCPR/Pages/CCPRIndex.aspx

人権侵害を国際的に監視している団体は、アムネスティがあります。

国際人権NGO アムネスティ日本 AMNESTY
http://www.amnesty.or.jp/

ILO(国際労働機関)の日本事務所もあります。
http://www.ilo.org/tokyo/lang–ja/index.htm

国連人権活動日本委員会というのもあるようです。
http://jwchr.s59.xrea.com/

国際的な機関にコンタクトしてみるのも悪くないのではと思います。動いてくれたら最強ですから。ダメ元で、コンタクト先、もしくは、役員や代表宛てに、手紙、メールを書く、ということはやる意味はあると思います。

また、少なくとも県や労働基準管理局は、入管=法務省とは違うルールで動いているので、そこにまず話をするのはひとつの選択肢だと思います。あとは人権、外国人問題に強い弁護士グループなども有効かなと思います。人権問題の専門家という弁護士は多いのですが、できれば外国人問題に関心があり、国際的な告発までを視野に入れてくれる人だといいかもしれません。場合によっては外国語なども使った告発も視野に入れていかないといけないかもしれないので。多くはないと思いますが。

 

 


 

 

とりあえずのまとめ

日本語教育関連は、責任の所在がはっきりしない、と言われますが、いろんな省庁が少しづつ関与しています。で、それぞれが予算をもらってるので手放したくないというところがあるのかもしれません。手放したくないけど責任はとらないところで距離を保つ的な。。。。

日本語学校の管理。これは、入管=法務省です。新基準は唯一の日本語学校のガイドラインですし、2016年の新基準からは、許可取り消しもあるという踏み込んだものになっています。学生数が増えるのも減るのも入管次第なので、日本語学校は入管=法務省を向くしかありません。また入管=法務省も、時に政財界からのプレッシャーでビザをゆるくするしかない、ようなこともあり、その先の管理を日本語学校に預けているという事情もあるので、日本語学校に対しては少々のことは目をつぶる、というようなことになっているようです。

日本語教師養成講座は、2017年から文科省=文化庁が届け出制として管理することになりました。が、最初に届け出をするだけで、ガイドラインは存在しません。書類が埋まればOKというものです。今後も混乱は続くと思います。

日本語学校業界の自主管理は、ほぼ絶望的です。業界団体は、現在2つに分裂しています。日振協は入管=法務省ラインの組織ですが、加盟率は6割を切っています。JaLSAは、140校前後で25%程度。どちらにも所属していない学校は25%近くではと思われます。仮になんらかのガイドラインを作っても全体を管理するのは無理。2つの団体が歩調を合わせても25%に及ばなければ実効性は厳しいです。

労基法関連では、技能実習生は従来はJITCOがあり、新しい管理、監視機構ができましたが、技能実習生とはルールがかなり違うので、日本語学校まではターゲットになっていないはずです。ここはほとんど野放しといってもいいと思います。

個々の日本語学校の生徒指導に行き過ぎがないか、という問題。これもガイドラインがありません。内部告発でもないかぎりわからないままですが、生徒は日本語もできませんし、法律などの仕組みも知らない可能性が高いので、マスコミが取材しないかぎりは表にはでないと思われます。

2016年の栃木の日本語学校の事件では、職員の裁判での証言は決めてになったということです。最終的には、日本語学校で働く職員や日本語教師の目が頼りになるのではと思います。

次の世代のために。できることから、できる範囲で

そこまでする気はないよ、という人がほとんどだと思います。90年代からずっとそうです。あなたの現在の労働環境は、あなたの先輩達が「そこまでする気はないよ」とスルーしてきた結果です。あなたはよくても、日本語教育を目指そうという若い人には、大きな障害になっています。これは、日本語教育業界としても大きな損失です。まともな経営者であれば、業界の働く環境が整備されることは大事だと考えるはず。

今後、国内で日本語の学習が必要な人口は確実に増え、日本語教育の認知度も高まります。注目度もあがるはず。トラブルも増える、日本語教育の成果はどうなんだ?と厳しく問われ、近い将来「これまで何してきたの?」と言われる日が来ます。

何もしなければ、不当な待遇もパワハラもセクハラも、女性が働きにくい環境も続きます。そろそろちゃんとする時期ではないでしょうか。匿名で労働基準監督署にメール出すあたりからはじめてみては?

 


 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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