「みなと」雑感

はじめに

以下は、国際交流基金の新しい eLearning サイト、みなと( https://minato-jf.jp/ )とオンラインコース  ( https://www.marugoto-online.jp/info/jp/ ) をざっとみた感想です。

 

感想をずらずらと。。。

 

□ eLearning サイトなのに、紙の教科書と関連付けたのは残念。独立したものを0から作って欲しかった。JF スタンダートと関連づけるのは理解できるとしても。

□ なんと PC 版ではまだフラッシュを使っている。(PC でも主要ブラウザーでサポート終了が続々と発表されている)

□ 推奨環境は 1.5Mbps で ADSL もしくは 3G が安定していればなんとかというところ。日本語学習者が集中している東南アジアなどでは厳しい。動画コンテンツは 10Mbps でインフラ先進国しか無理。エリンのように動画が軸にはなっていないようなので、まだいいとしても、インフラ環境で差が出るのは残念。日本語学習者が多い地域を基準に、テキストベースで作るか、アプリを軸に作るのが現実的だったのでは。なんとなく「そろそろ eLearning サイトを作らないとまずいから作った」という印象。(Duolingo に日本語コースができたら勝てるだろうか?)

□ サンプルをみた限りでは、自習コースは、「まるごと」の提出順にコンテンツを並べてあるだけで、確認テストなどがあるとはいえ、学習者モチベーションに依存しすぎかもという印象(学習者のモチベーションを過大評価しがちなのは、日本の elearning 関係者あるあるだと思う)。これだけみると、まるごとはなくても大丈夫と言いつつも、まるごとユーザー以外を呼び込むのは厳しそうで、実質的にはまるごとユーザーのサポートサイトという意味あいもあるのかも。

□ 2017 年から海外の拠点も、ということなので、将来的には、今のチームだけでなく、日本語専門家がある程度サポートしつつ、教室でのまるごとの活用のひとつとして使っていくと思われる。言語圏別にコミュニティを作ったり教室間の交流にも使うのかもしれない。(しかしそうすると、「身内感」「まるごと準拠感」が強くなりそうで、それも、新規ユーザー獲得のハードルになってしまう可能性もある)

□ ただ、今のコース構成ではオンライン上では、コーチングというところまでで、その先(多様なコンテンツを組み合わせてコース設計をしていくとか、いろいろ自動化する、みたいなこと)まではやらないのかも。採算化は厳しいし、予算もあまり出なさそうだし、人をつぎ込めないはず。有料化しないとは書いていないので、どうなるかはわからない。(ただ、独法の場合、採算度外視で、人が必要なので予算が~というやり方もあるのかもしれません。しかし、eLearning でそれをやるとサイトが廃墟化する可能性もあるわけで、きちんと稼働しているか、ラインの設定が求められることになるはず。となると難しいのかも)

□ 登録の性別の選択肢は、日本語も英語も x-gender となっているが英語はこれで大丈夫?(和製英語なのでは?)

□ 同じく登録データで、これは配慮なのかどうかはわからないが、学習データの収集目的ならば第一言語はあってもいいのでは?しかし、プライバシーポリシーは型どおりのものだし、積極的にデータとして活用する気はないのかも。(個人的にはせっかく eLearning サイトをやるなら、いろいろとデータは収集すべきだと思う。サイトの改良だけでなく、その他でもいろいろ使えるはずなので。もったいない)

□ また、まるごと関連のドメインが増えた(5 つめ)。似たようなサイトの2つ、MARUGOTOPlus は、教科書のサポート、「みなと」はまるごとベースの eLearning という棲み分け?また、国際交流基金が学習者がユーザー登録するコミュニティは他に「エリン」があり、今後、ユーザ登録を統一するのかは、不透明。

□ 「みなと」の制作は ブレイン ( http://www.brain-net.co.jp/ ) というところとなっている。ここは関連会社に国際交流促進協議会 ( http://ainexnpo.org/ )というのがあり外務省のイベントなどをやっているとのこと。「まるごと」を出している出版社「三修社」は同じグループ会社。「エリン」のサイトを作ったところ。つまり、「身内」みたいなところですが、今回も PC 版はフラッシュ。eLearning サイトを作る力はホントにある?

□ ただ、「みなと」の DNS 管理者は http://netlearning.co.jp/ らしいので、技術力はあるのかもしれないが、会社概要をみると、教育方面をはじめたのは 2013 年。SNS 運営ノウハウがあるのかはわからない。

□ 「みなととは?」で「みなさんの『日本・日本人・日本語』への理解を広げてみませんか」とあるが、なぜ「日本人」が入っているのかはわからない。日本語教育が教える「日本人」とは何なんでしょうか? 国際交流基金の日本人の定義とは?

□ コミュニティは、アクティブユーザー数で価値が決まると思いますが、カウントの仕方によりますが、常識的には SNS などでも使われる「過去一ヶ月にログインした数」でしょうか。どのあたりを目標にしているんでしょうか。「まるごと」を使っている国際交流基金の教室中心にサポートサイト的に使う、で、教室の学習者は登録させる方向とすると、すべてが登録しないとしても登録者は 1000 人単位になる可能性がある。コミュニティが掲示板方式ではなく、簡易 SNS という方向なのは悪くないと思う。ただ、SNS 的なコミュニティは数を増やしながら運営していくのはものすごく大変(私も何度かやってみては挫折しました)。SNS 的なコミュニティがユーザー主体(要所要所でモデレーターをやってもらったり)で動いていくには常駐できる管理者が必要で、しかも、かなり上手な舵取りをしないといけない(ダメな人をアク禁にしたりとか)。100 人超えると、もう 1 人では対応できない。かなり大変なはず。

 

*まるごとの部数は、2013 年 8 月発売、初版1万、半年後の 2014 年 2 月の時点で約六千部で これは国際交流基金の教室の学習者(5000 人弱)とほぼ一致する。もちろん、ウェブの活用を進めていくとしても、すべてがコミュニティのアクティブ ユーザーになるのは難しいかもしれない。

→部数に関しては、こちらに
平成 25 年度国際交流基金 項目別評価シート 55 ページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000050199.pdf

 

□ I have a dream…

 

こうやればいいのに、ということを無責任に書いてみます。

 

1)整理、統合する

国際交流基金のサイトのトップで気軽に登録できる「JF アカウント」的なものを作り、アカウントは、メアドとニックネームくらいで十分。それですべての国際交流基金のすべてのコンテンツを楽しめるようにする。日本語のコンテンツもログインできる。で、日本語に興味が出てきたら、ポートフォリオを作ってもらい MyPage 作成もできる。これなら冷やかしで国際交流基金のサイトに来た人も、日本語関連コンテンツの体験まではひっぱってこれる。

日本語学習の入口として「みなと」を据える。国際交流基金の日本語コンテンツの入口、総合ポータルにする。ドメインはひとつで、オンライン学習コンテンツはこのドメインの下位にすべて集約する。エリン、アニメ、は、HTML5 化して、おまけ学習コンテンツとして、eLearning サイトに統合するのが妥当だと思われる。「アニメ・マンガの日本語コース」を作るならその先に、置けばなんとかおさまりはつくのでは。理想を言えば、MyPage には、ポートフォリオ、コミュニティの新着、運営からの新着がおけるコンテナがあって、そこにさらに、単語帳や、学習項目のパーツを引用できるみたいな仕掛けが欲しいところ。(こういうポータルはそろそろ流行らなくなりそうですが、このくらいの使い勝手は要求されるかも)

 

2)棲み分け

 

eLeaning は、JF スタンダードには準拠する(その代わり「みなと」のメインメニューでしっかり動画などをまじえて、CEFR との関連などわかりやすく説明する)としても「まるごと」とは切り離して作るほうがいいと思う。

 

□ まだわかりません。

 

まだサンプルも少ないですし、オンラインコースのサイトのトップはアクセスできませんし、どうなるかわかりません。eLearning やコミュニティは、これまでの単発のサイトとは違った、継続的に人とお金を投入して改良、改善しながらやっていかないといけない一大プロジェクトなので、目標設定をして、本気でやってほしいなと思います。「みなと」の開発者の日本語教師向け SNS アカウントとか、呼び込むための学習者向け SNS アカなども作って、いろいろと声を拾っていくのはどうでしょうか。

追記

2016年12月10日、アクセスを調べてみました。
https://www.similarweb.com/

access

正式公開の7-8月は月の訪問者は7万でしたが、11月は2万です。アジアからのアクセスが少ないのも気になります。

月2万は、、、例えるなら、個人ブログなら、ブロガーになるのはあきらめるしかない、地方のアイドルのサイトくらいの数です。

日本語を学校で勉強している人が世界で約350~400万。自習している人の数は未知数ですが、同数いるとして、世界に、合計700万人近くの日本語学習者がいると仮定します。インフラが弱いアジア地域の学習者が7割以上なので、ネットにアクセスできて、この「まるごと」を動かせる環境下にあるユーザーは、おそらく200万人くらいかもしれません。ただし、現状では、国際交流基金の初級レベルのウェブサイトで(動画中心でカバーするレベルも狭く総合サイトとまではいえないコンテンツです)最も人気があるもので、月12万前後です。

初級から中級までとりこむ総合学習コンテンツで、リピーターが期待されるSNS機能もあるサイトならば、目標にすべきは50~100万あたりではないでしょうか。

 語学学習サイトのアクセス、特に日本語学習に関しては、こちらに書きました。
http://webjapanese.com/blog/j/nihongokyooikuarekore/#i-41

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