日本語学校の謎

Contents

 

↓ まず、前提となる基本的なことを整理しました。知ってる人はスルーしてください。

ビザの種類と日本語学校の現状

 

世界で日本語学習者は増えているのか?

増えてません。日本語学習熱はかなり前から、数も震災前から減っているというのが正しいのではと思います。

ここにも書きましたが、おそらくピークは90年代後半から2000~2005年あたりです。もっともポピュラーな日本語能力試験の受験者数のピークは2009年です。以降、実施会場はかなり増え、実施回数も増えたにもかかわらず、学習者数の目安となる(下のレベルはビザの要件になったりなど政治的要因で増減するので、それに関係無い)最上レベルであるN1の合格者はずっと減り続けています。


これはGoogleTrendでの「japanese language」の検索回数です。ピークは2005年以前にあります。

2010年にかけて90年代後半にあった各国の民間の語学学校の日本語コースはほとんど消え、2010年前後にも、海外の大学などでも日本語の講座がかなり消滅しています。2005年以降は、東南アジアなどでの政府の「働きかけ(ODAのおまけとか…)」などによって義務教育や大学などで日本語が採用されたり、各国で語学の選択肢が広がって(ビジネス目的ではなく、文化学習としての語学という流れが強くなり)そこに日本語が入るということもあって数字自体は伸びてはいましたが、直近(2015年)の国際交流基金の調査では、学校などで勉強する人の数字だけの調査ですが、はじめて10%近く減少となりました。日本語学習熱が高まっているとは言い難い。いろいろな数値をみても、震災以前から下降は始まっていたというのが正確なところだと思います。

一部、アジアからの留学生が増えているのは、日本語学習者のほとんどがいるアジア地域に経済力がついてきて、日本の援助も東南アジアに集中しているという理由が大きいと思われます。とはいえ、まだ日本に気軽に自費で留学できる国はほとんどありません。この全体としては退潮傾向だ、ということは、日本語学校の問題を考えるうえで結構重要です。退潮傾向の中、いろいろ無理をしないといけなくなっているということです。

 日本語学習者は増えているのか?
http://webjapanese.com/blog/j/nihongokyooikuarekore/#i-3

 【資料】日本語教育関係のデータ (国内外の日本語学習者数、日本語学校の数、養成講座、教師の数などなど)
http://webjapanese.com/blog/j/suii/

 

ビザの種類

2017年になろうとしている現在、国内で日本語の学習が必要な人は少なくとも50万人以上います。このうち、今、新聞でよく失踪や不法就労で話題になるのは主に技能実習生のビザ(約20万人)と留学ビザ(約20万人)で来た人達がほとんどです。近い将来、この50万人は100万人になるのではと言われています。今後も、留学は頭打ちなので、ふくらむのは主に技能実習生の数のほうです。

 

留学ビザ

・留学といっても、大学や専門学校に通う人達だけではありません。日本語学校の学生も含みます。日本語学校というのは後述しますが、日本語を勉強するために入学して上達して、帰国するという人はほんの一部で、ほとんどは日本で大学や専門学校に進学するための予備校的な学校です。日本語学校は専門学校や大学への推薦枠もたくさん持っていて、それらの集客装置的な役割も担っています。2010年までは、日本語学校の学生のビザは「就学(しゅうがく)ビザ」で「就学生」と呼ばれ、留学ビザ、留学生とは区別されていました。よく話題になるバイトの時間の規定も留学生は週に28時間ですが、就学生は一日4時間でした。2010年に統合され、バイトは事実上28時間に拡張されました。

2004にできた全国日本語学校連合会をはじめとする日本語学校業界が28時間への拡大を求め、署名活動をはじめ、政府に強烈な陳情を繰り返し、ついに2010年の就留一本化で実現したという経緯があります。

アルバイト時間拡大は、学生募集で圧倒的に重要です。日本語学校は学生確保のためにも常に増やしたいものであるようです。韓国は20時間ですが、90年代に比べて今は時給もあがってきた、というような事情もあると考えられます。

・留学ビザを出して学生を日本に呼べるのは正式に認可を受けた教育機関だけです。日本語学校の場合、学校法人は少数派で株式会社や個人経営のところもあるわけですが、法務省の認可を受けることで可能になります。

・留学ビザの取得は高校卒業相当であったりと要件が厳しく、2016年現在、日本国内に20万人ぐらいいて、15万人は、専門学校と大学(とちょっと高校など)で、5万人が日本語学校の学生です。

・日本語学校では留学ビザでも最大2年3ヶ月までしか在籍できません。その後上位の学校(専門学校、大学)に進学すればその学校で在籍中は延長できますから合計で最大6年ちょっと滞在できることになります。

・留学ビザは週に28時間までしかバイトができません。バイトは風俗店などを除けば、日本の大学生がするようなものなら何でもできます。技能実習生に較べると格段にできる仕事の種類が多いです。
コンビニや外食チェーン、引っ越し屋などが一般的で、学校は紹介をするケースもあるようですが、つい最近までは、基本、自分で探すものでした。これが2010年代以降、国内の人手不足もあり、バイトの選択肢が拡大、技能実習生の職場でも働いているケースも増えてきたようです。技能実習生のビザでは仕事の斡旋で利益をあげるのは禁止ですが、留学生のビザはその規制がないので、ここで斡旋、仲介という新たな利益が生まれます。

・留学ビザの人は、世界中から来ます。大多数は東アジア(中韓台)が圧倒的多数ですがピークは過ぎて減少気味。ついでインドネシアとなり、ベトナム、ネパールなど東南アジアからの留学生も増えていて、東アジアから東南アジアにシフトしている最中といったところです。しかし、例えば、ネパールは2012年の国際交流基金の調査では学習者数は2748人なのに、同年日本に留学してる数は2451人。2015年には16250人になってたりして、なんだかよくわからないことになってます。ベトナムも学習者数と留学生数が同じくらい。(普通は留学生数は多くても学習者数の1割程度です)

・2017年から介護ビザというのができました。これはまず日本語学校に留学ビザで入り、その後介護福祉士の資格が取得できる専門学校や大学に進学し、資格を取得(今は卒業すれば取得ですが2022年に資格試験合格がマストに)、その後5年間働ける(延長可)というものです。資格取得までは留学ビザですし、このルートで大量の人が来るのではと言われています。この介護の日本語学校ルートに関しては、別記事で整理中です。

 留学ビザでバイトをする場合、資格外活動の申請が必要で、雇った事業所も届け出をいないといけないことになってます。いわゆる風俗営業許可が必要な店(スナック、パブ、クラブ、キャバレーなど。ゲームセンターも)はダメ、その他は特に制限はありません。
資格外活動の許可
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyuu/shikakugai.html
風俗営業(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E4%BF%97%E5%96%B6%E6%A5%AD

 

技能実習生のビザ

技能実習生のビザは、2016年末の時点でおおよそ20万人。今後、不足していると言われる介護の人材の補填(30万人近く必要と言われている)でもこのビザが使われることになったので、これだけで今後、早いペースで十万人単位で増えそうです。政府は人手不足の職種は、このビザの枠組みでやる意志は強く、対象の職種はどんどん広がっています。ビザもどんどんおりるてるらしいです。オリンピック関連で需要が一時的にピークを迎えた後も着実に増えると思います。

・技能実習生のビザを取得して日本に来る人達は、まず中国、そしてベトナム、東南アジアです。他の地域はほとんどありません。日本語学校の学生募集の地域とマルかぶりです。国はやはり多数なのですが、こちらも東南アジア重視に傾きつつあるというところです。

・技能実習生で問題となるのは、残業が多く、規定どおり残業代が支払われていなかった。時給が最低賃金以下だった、という、労働基準法違反がらみの件がほとんどです。国内でも斡旋で利益をあげることは禁じられていますので、斡旋仲介よりも職場環境関連の問題が多いというわけです。

・技能実習生のビザの場合、留学ビザと違って、送り出し国の団体から日本に入国し仕事に就くまで基本、国のコントロール下にあります。決められたところで働き転職も本人の意志では簡単にはできません。このへんは自由になると混乱しそうなところなので、やむを得ないところかもしれません。

 

留学ビザと技能実習生のビザ。両者のビザは対象国が同じ東南アジアで入口が同じこともあり、最近は、とりあえず日本に行く、行く方法はどっちか都合がいいほう、というノリになりつつあるようで、学生集めも技能実習生の人集めも同じ窓口、同じエージェント、ということが増えているようです。日本語学校で起きる問題は、これが影響しています。学校が就労の隠れ蓑になっているという傾向はバイト時間の制限が今より厳しかった(一日4時間でした)90年代の比ではなく、今後も拡大していくと思われます。留学ビザは、ルール内でも週28時間働けて、技能実習生のように職種の制限がなく、送り出し国からの日本政府の監視もない、斡旋も禁止じゃない、という、いろいろとオイシイルート、というわけです。

 

日本語学校とは

 

一般的な知識として

・そもそも日本語学校は日本にいくつあるのか?は、ハッキリしています。法務省に留学ビザで学生をとっていいよという認可を受けた(正式には「告示を受けた」)日本語教育機関(という呼び方です)は、ここのPDFに掲載されている学校のことです。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho28-2.html

しかし、全学校のリストがあるのはここだけです。

ネット上で日本語学校の公開すべき情報を出しているところなかったのですが、2017年に文科省が出しました。

日本語教育機関における外国人留学生への教育の実施状況の公表について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1382482.htm

現在、すべてがあるわけではないようですが、実際に稼働している学校はほとんど入っていると思います。法務省のリストにあっても実際は募集をしてない学校はけっこうあるので。

後は、日本語学校の業界団体のサイト(日本語教育振興協会全国日本語学校連合会)に加盟校のリストがあるだけ。ただし、業界団体に所属していない学校も増えているので、すべては揃いません。

・留学ビザでも直で大学に行く人達と一旦日本語学校を経由(勉強)して専門学校や大学に進学する人達がいます。日本語学校というのは、最初に書いたように、上の学校に進学するために予備校として通っている人がほとんどです。大学、専門学校への推薦枠があり、また大学や専門学校と同じ学校法人が経営しているとか同じグループ企業だとかというケースもあります。

・日本語学校に入るためには留学ビザが必要です。日本語学校では最大2年3ヶ月まで滞在できます。日本語学校は1年760時間以上授業をしなければならないことになっているので、最低でも1710時間勉強します。通常基礎的なことの学習が終わるのが300時間、+200時間で基礎修了、その後は、人によって1年で上級まで行き大学に合格する人もいれば、2年かかる人もいます。そして、2年でも中級をウロウロしている人などがいて、大学じゃなく専門学校に進学する人のほうが圧倒的に多いです。

・日本語学校の授業は平均一日4時間で、9時にスタート、昼前後には終わるか、午後15時くらいまで時間割があってトータルで4時間くらい勉強したら終わり、というのが一般的です。入学金が10万くらい。授業料が1年で60ー70万、施設費、教材費、選考料など雑費が10万くらいで他の国内の民間のスクールとたいして変わりません(従って、よく言われる「学生が貧しい国から来るから日本語学校の経営は厳しい」という話はダウトです。安定的な学生の確保が難しいという側面はありますが、それは日本語学校に限らないことですし)。

・日本語学校の数は、1990年代から現在まで、だいたい300~400くらいの間で増減しています。2010年代に500校ペースになり、今は年間数十校のペースで増え続けていると言われています。

・日本語学校で問題になるのは規定の28時間以上働いていたという留学ビザ特有のルール違反での不法就労の件です。
ただし、従来は不真面目な学生の仕業、ということでしたが、昨今は、組織的な、時に日本語学校も大きく関与した形での就労目的の留学ビザの取得が問題になっています。バイト紹介ありきで募集し、学費の返済計画を作り、提携先や同グループの国内の斡旋仲介会社を通して働き先を紹介する、という新しいビジネスモデルです。
日本語学校に来るようなほとんどの学生にとってアルバイトは、まだ必要であり、アジアはまだ日本との為替格差も大きく、向学心に燃えた学生の救済措置、という側面も大きいのですが、そういうイメージを隠れ蓑にした犯罪でもあります。

 後で出てきますが、ネット上で確認できる日本語学校のデータを整理してまとめました。2016年以降の新設校はありませんが、稼働している学校はほぼ網羅していると思います。
https://goo.gl/nDT4il

 

日本語を教えることはサイドビジネス?

一般の人のイメージは「あまり儲からないのに、日本語を勉強したい人に日本語を教えるという仕事をしている業界」だと思いますが、実は、ほとんどの日本語学校は21世紀に入って「外国人に日本語を教えて利益を得ているところ」ではなくなりつつあります。90年代はまだ教育業界だったのですが、2000年を境に資格業界的要素が大きくなり、2010年以降、人材派遣業へと変貌しています。

報道などでは「一部の悪質な日本語学校」という言葉をみますが、私の感覚では「良質な日本語学校が一部」です。非常勤が7割をこえ、専任の待遇もひどく離職率が極端に高い。国のガイドラインもほとんど守らない。。。

日本語学校の経営母体は個人も学校法人もあるのですが、2000年以降は日本語を教えることでの利益に加えて、日本語教師養成講座による利益が重要な位置を占めるようになったはずです。国内の日本語教師養成コースは100以上あり、受講者数はここ数年平均4000人前後です。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

留学生に対する日本語の授業は1年で760時間以上という規定があり、学費は1年で約60万円です。学生募集は不安定でコストがかかる。ビザ、住居、バイトの世話、進学の世話がありますが、日本語教師養成講座は規定の時間(420時間)で学費は50~60万でも国内のネット広告だけで学生は集まります。教室など必要なものはすでに所有しています。しかも日本語教師養成講座には講師の規定などはなく、自分の学校の講師を流用できます(2,3年目の教師が講師になった例をよく見ます。日本語教師の給料の補填的な意味あいもあるようです)。決められたカリキュラムを守っていることにすれば3ヶ月コースも設定できますし何でもありです。実は、日本語教師の資格は国内の日本語学校業界の民間資格なので、海外での就職では参考程度、取得しても国内の日本語学校でしか通用せず生活はかなり厳しいのですが、海外で活躍できるかもと多少は若者は集まり、リタイア後のボランティアでと高齢者がドーンと集まります。

 検定試験の主催者であるJEESの2016年の年齢比のデータの画像です。かなり高齢化してます。これは年齢比ではなく資格取得時の年齢なので、教師が高齢化したのではなく、高齢の新人教師が増えて高齢化したということです。仕事としての日本語教師は滅びつつあります。

 2016年現在日本語教師は人手不足と言われていますが、実態は、需給のバランスがおかしく、必要な日本語教師の数に対して10倍超の日本語教師の有資格者が作られています。しかし大学の日本語教育学科で資格をとっても、仕事としては将来がないので、ほとんど一般企業に就職してしまうし、日本語教師に未来がないと非常勤講師になって3~5年でやめる人がとても多いだけなのです。使い捨ての教師を日本語教師養成講座で大量に作る、という構造を持った資格業界でもあります。
詳しくは、こちらを → 日本語教師養成講座の問題 http://webjapanese.com/blog/j/nihongokyooikuarekore/#i-21

しかし、ここまでは、それでも日本語教育関連ビジネスでしたし、「教えること」がメインでもありました。

2004年ごろから、日本での就労を前提した学生募集は事実上、入管もみとめていたようです。

この時点(2004年)では、雇用予定の証明など出す人はいないという状況だったようですが、すでに新聞社では配達員の仕事をする前提での奨学生は海外でありましたし、外食チェーンでもあります。つまり、日本での返済が確実ならばOKという流れがスタートしたのが2004年ごろで、その後、人手不足もあり、雇用証明を出すところはいくらでもある、という状況になった。雇用前提の返済計画もスムーズに通る見通しができた。可能な企業との提携やグループ会社化に繋がっていくということではないかと思われます。

 つまり入管がこの流れを作ったということもあり、なかなかストップがかけられなくなっている、ということもあるように思います。

 画像部分だけ念のため。

2010年代に少子化に苦しむ塾や予備校チェーンなど他業種の参入が始まりました。同時に、地方の土木、建築、農業などの会社と提携した、あるいは、そういう企業体が作った日本語学校、が増えました。日本語学校のサイトに行くと、About usに堂々とそういう企業が名前を連ねます。地方自治体が日本語学校を誘致するケースは2016年増えました。

つまり、国内の人手不足と外国人技能実習生の拡大にともなって状況が大きく変わりました。日本語学校は、国内のバイトの斡旋での利益を取り込むようになりました。人材派遣業界的要素も入ってきたというわけです。

経営母体の規模が大きくなったことで、それまで現地のブローカー頼みだった学生募集を直接やれるようになりました。現地での生徒集めから日本でのアルバイト先の斡旋までカバーできるようになったことで、国内の人材斡旋と学生募集が結びついたということのようです。

もちろん、従来の伝統校や小規模の学校も直接現地での学生募集と国内のバイトの斡旋はしなくても、その種の会社と提携することで、決められた提携先で仕事をすることでの学費返済計画ありきの、パッケージビジネスに参入することができます。新規の学校だけでなく、昔からある日本語学校も派遣業的な学校へと変貌していっているようです。もう現地では派遣ありきの大手の学生募集の力が圧倒的で、根こそぎさらっていくみたいな声も聞こえてきます。

 

法務省の新基準

2016年に法務省から示された日本語学校が守るべきとされる基準です。これに加え、他にも2017年に日本語教師養成講座は文化庁に提出が義務化され、文科省では日本語学校の届け出データのウェブ公開が始まる予定です。2016年~2017年にかけて、日本語学校周辺は、この新基準でより省庁管理という側面が強くなりました。


日本語教育機関の告示基準

日本語教育機関の告示基準解釈指針

厳しくなりました。違反した場合は認可を取り消すということになりました。

設置者(実質的な経営者)の条件が入管法違反がらみの犯罪に関わったら刑が終わってから5年間経営には携われないとか、校舎は賃貸でよかったものが、原則自己所有の物件じゃないとダメみたいなことになり、定員数に応じた専任教師を雇わなければならない(定員の学生数40人に一人。定員数なので定員充足率が低い学校にとってハード)となりました。また、失踪などで学生数が一定数を割ると認可取り消しとなることになりました。

2016年は、日本語学校がパスポートを取り上げたという報道が増えましたが、これは90年代にやはり不法就労が起きた際に問題となり(パスポートを取り上げることは、出国の権利を奪い、その国での身分保障ができなくなるので、国際的にも人権侵害だとされる。日本語学校の「基準」にも確認以上のことをしてはいけないという規定がある)減っていたものが、失踪に関するルールが厳しくなったことで復活してきている、ということだと思われます。

以前のものからの変更点はこちらのサイトに詳しいです。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html

出席管理のルールに関して言えば、一ヶ月の出席率が8割を切った学生には指導しなければならず、5割を切ったらその時点で入管に報告する。ことになってます。職員で生活指導的な立場の人間を作る方向でもあるようです。また「いずれかの1年間に入学した者の半数以上が,在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に在留するに至ったとき。」とあります。半数が失踪して帰国せずに日本に不法残留となったら認可取り消し、というわけです。定員の半数ではなく一年間に入学した者の半数であることも重要です。新規の学校は100人以上で申請できず、順調に学生が増えないと定員の増員はできませんから、定員100人として、入学者数は50-70人くらいが普通ですから、25人でアウトになるというところが結構あるわけです。もし入学者が20人くらいだったら、もう10人でアウトです。

 日本語学校の業界は、これまで長年ほぼ何もしてこなかったという印象しかありません。業界内で競争があるでもなく(学費はなぜか一律で同じ、使う教科書(70年代に経産省が作った教科書)も教え方も20年以上、ほぼすべての学校が同じ、法務省経由で作られた業界の規定も守らなくても罰則はなし、で、校舎などの規制を緩和しろと言うばかり)不安定な学生募集の補填のため、資格ビジネス、派遣ビジネスにただ浸食されていくだけでした。国の管理&監視が強化されたのは歓迎すべきことで、業界には自浄能力がまったくないのは明らかなので仕方ないと思います。2016年も業界団体の加盟校の不祥事が続きましたが、コメントひとつ出しませんでした。

 入学者の半数が失踪で認可取り消し、は日本語学校にとって脅威で、パスポートの取り上げなどが増えているようです。ベンチャー系のIT得意なところはスマホに追跡アプリを仕込んでいるかもしれません。こういう人権侵害は、業界団体や人権団体なりが規制をかけ、監視しないと断ち切れないという側面があります。日本語教育業界は長年、パスポート取り上げに関しても指導はしても罰則はないし、一般的なイメージ(国際的な…とか)とは違います。

 

 日本語教育関連のいろいろなデータは「日本語教育関係のデータ」にあります。国内外の学習者数の推移、日本語教育機関の数など、ネット上で公開されているデータを整理しました。

 完全なものではありませんが、PDF版があります。オフラインで読む場合はどうぞ。
 ただしここのウェブ版が正式なバージョンです。PDF版は一部画像などが抜けていることがあります。
http://webjapanese.com//blog/j/data/files/nazo.pdf

 

新たな収入源?

2010年あたりから日本語学校のビジネスがかなり変わってきているようだということは上で書きました。特に韓国からの留学生が減り(2011年から)東南アジアからの学生が増えたこと、国内の人手不足で外国人の働き先が爆発的に増えたことで、従来のように、ただバイトできるよ、ということだけでなく、仲介、斡旋、さらにバイト先との提携などで、「手数料、斡旋料」を取ることができるようになった(留学生でなく技能実習生枠だと斡旋料を取るのはできない「建前」になっている)。新たな利益の可能性が出てきたということだと思います。

 最初にもふれましたが、これはネパールの「国内の」学習者数が2748人なのに留学生数が2451人となっている、という意味です。これだと学習者がほとんど留学していることになってしまい、ちょっと変なのです。例えば、日本でチェコ語を勉強している人のほとんどが今チェコに留学中というのは、変で、普通は留学するのは、学習者数の1割くらい。

2010年以降、新規の日本語学校も大量に生まれました。特にベンチャーの人材派遣会社系の参入が目立ちます。まずはバイト先の確保ありきで、技能実習生枠で人が確保できない地元の企業や自治体と提携し、じゃあ、日本語学校を介して留学ビザで外国人労働者を入れましょう的な発想だと思われます。Win-Winの関係などと囁かれているのではと思われます。地方自治体でも同じことをやり始めました。もう東南アジアの現地の募集でもバイトでの返済計画コミでの提案になっているという話も聞くようになりました。

新規参入組だけでなく古くからやってる日本語学校もこの「新たな利益」を取り込もうとしているようです。人材派遣系の会社が地方の日本語学校を買う、逆に、大手の日本語学校が技能実習生関連の会社を買収したり提携したりというのをよく目にするようになりました。留学生数は減りつつあり先細りです。中国、韓国、台湾といった国は依然として数は多いものの、東南アジアからの留学生確保がより重要になってきています。より学費を払うのが厳しい人達が対象になっているわけです。バイトありきの返済計画なしでは日本への留学は厳しい、学生の確保は難しい、となっているという環境もあるようです。

2016年冬に以下の報道が続きました。

https://archive.is/r0cIG 
https://archive.is/iquCK
https://archive.is/anjwU

その後の報道では以下のとおり(有料記事のところに新たな事実「賃金(時給1350~1650円)から人材派遣会社への仲介料100円を差し引いた分を受け取り、留学生には800円前後しか払っていなかった」がありました)

https://archive.is/4OZ8E

判決に関する報道。3月11日。起訴から判決まで3,4ヶ月だったでしょうか。入管難民法の初犯の「相場」よりやや重いですが、執行猶予付きでした。
https://archive.is/DYov9

この記事は、これらをふまえて、その新たな動きとは何か、どうお金が動いているのか、いろいろ計算して推察してみたというものです。あくまで「報道されていることが事実なら」という仮定での「推察」です。細かい数字は間違っている可能性がありますし、全体の見立ても違うこともあると思います。

事情に詳しい人が「あれは違うよ、実態はこうだよ」と書いたり、ジャーナリストなどによって「本当はこうなっている」という記事が書かれることで、正確な実態が明確になっていくことを期待して、たたき台として書いてみました。

日本語教師志望者はもちろん、新人の日本語教師は、日本語学校と倉庫の中での違法就労がどう繋がるのかまったく想像がつかない、という人もいると思います。自己防衛のためにも、自分達の職場で何が起こっているのかを考える材料にしてください。

 

2004年の入管の「雇用予定証明」が流れを変えた?

昨今、留学生のアルバイトは週28時間では足りないのだと日本語学校関係者は言います。しかし、これはおかしいのです。かつては20時間で問題ありませんでした。今は28時間でも足りない。進学先の大学や専門学校の学費はそれほどあがってない、時給はむしろあがっている、矛盾します。こんなことではないか、という見立てを書いてみます。

入学前に払うお金ですが、日本語学校にはコースがありますから、そのコースが2年コースなら2年分の学費を入学金は入学時に払うことになっています。入学金が15万、授業料が1年60万で120万、合計135万とします。ただ最近は、2年目の授業料を来日してから払うというケースが多いようです。なので最初は75万。

最初に必要なお金を考えてみます。寮費は、どこも3万程度です。生活費、月5万円とします。生活に毎月8万円。2年目の授業料が60万です。専門学校に進学すると100万円が必要です。これを0から貯めるとなると、日本語学校に2年いるとして、月66000円の貯金が必要ということになります。これで月14万6000円です。自己資金0の留学だと、これを全部自分で稼がないといけません。

 入管は留学時に滞在経費などを払える預貯金額がないと留学ビザを出しませんでしたが、2004年から「雇用予定証明書」があればOKということにしました。つまり来日後に稼ぐでもOKということです。これで自己資金が限りに無く0でも留学できる、ということになってきました。

この2004年の時点では雇用予定証明を出すところは少なかったわけですが、2010年以降はいくらでもあるという状況になりました。

さて、月14万6000円です。
週28時間で一ヶ月を4週間とすると、112時間です。時給は今、コンビニでは地方と都会では格差がありますが、ひとまず800円とします。89600円。これだと無理です。居酒屋などだと時間帯によって1200円くらいですから、月134400円で生活費の5万を3万でやればなんとかなります。今は工場など人手不足のところなら1500円くらい出すところはあります。それなら月168000円でクリアできます。(2016年末の栃木の日本語学校の不祥事の際の報道によると、周辺の工場の外国人労働者の時給は1350~1650円でした)

おそらく2004年あたりから新設校も増え、政府の東南アジアシフトも始まった。東南アジアなどのより貧しい国々で学生募集をする必要性が高まった。自己資金はほとんどない人を留学生に仕立てなければならなくなった。そのために「雇用予定証明」が生まれた。それが効果を発揮するようになったのは2010年あたりからで、結果、ここ数年の学生は自己資金がほぼなく、仕送りもないという学生が多数を占めるようになり、働かざるをえなくなっている。それで「28時間でも足りない」ということになったなのではないか、と思われます。

「28時間では足りない」と言われ始めたのはここ数年のことです。専門学校や大学の学費はここ10年それほど変わっていません。時給はむしろあがっています。足りなくなる要素はない。やはり、ここ数年、母国で自己資金がほとんどない人を「日本で全部稼げばいいから」という形で勧誘することになっていることが大きいと思われます。

この「雇用予定証明」は日本語学校と派遣業界の結びつきを始めた、強くした。日本語学校の派遣業界化を進めることになったのではと思います。

 そもそも奨学金もほぼないのに、まったく資金がない若者を無理やり日本に連れてくる必要はないと思います。他国はそうなのです。そういう若者を援助したければ留学させるのではなく、現地で学校を作るのが正解です。2004年の「雇用予定証明」と就学、留学統合でのバイト時間を28時間にしたのが失敗です。

 

時給1350-1650円と800円と775円

上の記事、報道された当初は1350円で学生には900円払ったとのことでしたが、その後、時給はそもそも1350~1650円で仲介料で100円。学生に払ったのは800円ということでした。また変わるかもしれませんが、だいたいの相場がわかったので、これで考えてみようと思います。最初に、学生に払った額と最低賃金の差額が、なんとなくひっかかってました。

報道によると、就労先から支払われるのは時給1350円~だったとのこと。この時給は、グレーなケースの額なのでやや高いのかも、とは思いますが、今、具体的に外国人単純労働に払われている(あるいは払える)額ということなので参考になります。基本的に技能実習生をはじめ単純労働の現場で外国人労働者に支払われる時給はその県の最低賃金に近いものだと言われています。しかし雇用側が払う金額は、人手不足もあってかなり上がっている、おそらく斡旋、仲介に払われる金額も増えている。そこで新しい利益が生まれ、そこに日本語学校も関与するようになってきていると考えることができます。

仲介料の100円を引いて(この仲介料は仲介があれば生じる最低金額的なもの?)残りの450円は宙に浮いたお金です。これは通常は斡旋会社などが得ることになっていて、それをこの校長は自ら経営する斡旋会社を通すことでピンハネしていた、という説明になってます。通常斡旋会社が時給単位で450円をピンハネできるというのも、あまり理解できない(給料からの天引きは労基法違法じゃないの?)ですが、ともかくそういう文脈になっている。

しかし、栃木の最低賃金は2016年10月の時点で775円です。800円との間に25円の差額がある。これがなんとなくひっかかってました。家賃4万円のアパートに6人住まわせて一人3万円近く家賃を水増し徴収する人がなぜ800円払ったのか?

 斡旋はこの経営者の人材派遣会社でやってたとのことですし、100円の「仲介料」は謎です。

 

日本語学校の学生のバイトで生まれる利益の額

視点を変えてみます。

まず、技能実習生の斡旋の相場(斡旋料は違法なんですが公然と行われるとのこと)はどうなのか?ですが、この朝日新聞の記事
https://archive.is/3cWqP
によると2016年ですが、、、

今年度は20人確保するため人材派遣会社に1200万円を払った。別の介護施設の担当者は「技能実習生なら5年は働く。1人100万~200万円の手数料を払ってもいい」と漏らす。

とありました。これは日本国内の施設が払ってもいいという額ですね。同記事には

「基本的な日本語を理解できる(4級=N5?)人材は20万円」「3級なら30万円」と、あっせん費用を引き上げる。上乗せ分を奨学金として実習希望者に渡せば、他社より集められるという戦略だ。当面は月70人の送り出しを目標にする。

という記述も。これは送り出し国(東南アジアなど)が得る利益です。70万の差額は送り出し国と雇用するところの間に入るところが得るということでしょうか。

つまり技能実習生のほうでは、日本語学校の事件のように時給単位で上前をはねる式ではなく「一人いくら」で前払いの斡旋料となってるみたいだ、ということです。時給単位で抜くというほぼ違法のやり方は、日本語学校が関与するようなケースで地元で国内で関係が深い間柄ではじめて可能になるやり方ということでしょうか。失踪したり帰国したりのリスクもあるので、斡旋料として一括だとリスクがある。実際に働いた時間から分け前を、という取り決めのほうがシコリが残らないし、スッキリするということなんでしょうか。

日本語学校の学生のようにまだ学生は日本語能力も低い(来日時はほとんど初心者レベル)で、介護の現場など、きちんとしたところでは仕事ができない場合は、一括払いの斡旋料では「値がつきにくい」ということかもしれません。しかし、この受け入れ企業では5年働くなら100~200万は出してもい、という「相場」があるのは覚えて置いたほうがいいと思います。実は介護ビザでも、同じような声があるそうです。介護ビザの日本語学校ルートでは、学生募集時にこの受け入れ施設からの100万円を「奨学金」として返済計画にして、学生を集めるケースが増えているとのことでした。

2017年の朝日新聞の記事には

https://archive.is/dwIVU

日本留学には学費や生活費を支払えることを示す資産証明を入管に出す必要があるが、多くの留学生や家族はそんな資産は持たない。「学校が貸し付け、資産証明書を発行している。貧しくても生徒は必ず留学できる。学校は手数料と利息でもうかる

とありました。日本語学校が最初の段階で授業料などを貸し付けている、ということがかかれています。当然、日本できちんとバイトをして返済してもらう計画と込みになっているはずで、そのバイト先の保証は学校のグループ会社になっている可能性が高いと思います。

 

日本語学校の学生とアルバイト

日本語学校の学生は留学生です。留学ビザ。週28時間までのアルバイトが認められています。日本語学校の学生がこの規定以上アルバイトをしているというケースは90年代からあるわけですが、90年代はこの規定は日に4時間でした。2010年にドンと増えたわけです。

同じころに、技能実習生が増えてきた背景があり、このころから日本語学校の学生と技能実習生の区分けがあいまいになってきました。もはや普通の街で働く外国人は珍しいものではなくなり、実習生なのか、バイトに制限がある留学生なのかは、わかりにくくなりました。週28時間は平日だけなら一日5時間超で、かなり長時間です。

日本語学校もどんどん増えました。2010年以降人材派遣系の会社が日本語学校を作るケースが増えました。もちろん古くからある日本語学校も人材派遣系の学生集めの手法を取り入れるところも出てきました。留学生の国籍が中国韓国の東アジアから東南アジアにシフトする時期とも重なっています。より収入の格差が大きい(平均年収で10分の1くらい)国の学生が増えたので、当然バイトの必要性も高いというわけです。

 

「斡旋、仲介」で生まれる新たな利益

最初に書いた日本語学校の基準には「禁止事項」として以下の記述があります。

四十 職業安定法(昭和22年法律第141号)上の許可を受けて同法の定めるところにより手数料又は報酬を受ける場合を除き,生徒の在籍中若しくは離籍後の就労又は進学に関し,生徒,就労先の事業者若しくは進学先の教育機関又は仲介者からあっせん又は紹介の対価を得ず,かつ,役員,校長,教員及び職員をしてこれを得させないこととしていること。

学校が仕事や進学の斡旋で利益を得るのは禁止とあります。ただし許可があればいいことになってます。別会社でも大丈夫です。このへんに「スキマ」があり、昨今、このスキマをグイと広げつつあるところが増えているということだと思います。直接関与していなくても迂回して学校に利益として入っていたり、グループ企業の利益となっているケースがあるようです。

また学校は直接関与せず利益を得なくても、斡旋前提で授業料の返済計画を作り、学生の募集を代行するような会社もあるようです。学校から学生の斡旋、紹介料をもらい、学生本人からも留学斡旋で、そして返済計画では日本国内の雇用先から斡旋料を稼ぐ。三重に手数料が取れるわけです。日本語学校はそういうところに委託すれば確実に学生が確保できる、という仕組みがあるのではと思います。

日本語学校は設立時の定員は100人以下からと決められています。2016年の新基準で定員は増やしにくくなりました。日本語学校の稼働率はそもそも低く、すぐに100人埋まるのは難しい。だいたい50人以上確保できるメドがたってスタートでしょうか。で、50~70人くらいが最初の5年くらいの平均。

 2016年の日本語学校の稼働率と定員、専任講師の比率などの一覧
https://goo.gl/nDT4il

仮に70人としてこのうち50人がバイトをするとします(先日報道された日本語学校もこんなカンジだったようです)。規定通りでも週28時間、月で170時間くらい。

さて、まずは、ここで本人には最低賃金(755円)が渡ればいいとします、それが入学時の約束だったみたいな理由です。日本語学校にはサイトで学校の立地がある県の最低時給の額を示して「バイト保証」をうたうところも出てきています。雇用主から払われる額が最低賃金であれば、雇用主から学生本人にお金が渡るだけです。学校は紹介しただけ。

しかし報道によると、2016年の単純作業の時給は、北関東で1350円~ということでした。ひとまず1350円として、差額は575円です。一人あたり月額575円×170時間=97750円です。

規定通りの週28時間でも、50人なら月488万7500円。

このお金が10年前にはほぼ存在しなかったお金、で、斡旋、仲介手数料みたいな名目で、今、誰かのふところに入っているわけです。

規定時間外で労働させる場合、例えば週28時間を40時間やらせれば、週+12時間、月で約50時間の増加です。月額で一人575円×50=28750円これが50人ですから

週40時間労働なら +143万7500円です。

つまり、学生50人に仕事を斡旋、仲介して差額を抜いて得られる利益は、月に500~650万円くらい、1年で6000万~7800万です。

このお金は先日の事件では、学校経営者が自らの会社で斡旋もしててピンハネしてたと報道されたわけですが、通常は他の斡旋会社のふところに入るというニュアンスでした。でも、そういう場合でも、その斡旋会社は、学校とまったく関係のないところかはわからないわけです。別会社で別会計だけどつながりがある(実は同じグループだとか)ということもある。あるいは、完全に別会社でも、日本語学校に紹介手数料としてキックバックが入っている可能性もあるわけです。完全な売り手市場である以上、日本語学校次第でどうにでもなるはずです。学校の経営が苦しければちょっと手を伸ばせば(キックバックが得られるところを探せば)簡単に補填できるという状況なのではないでしょうか。

 先日の事件では、時給800円で本人に支払われていたので、仲介料をひいた差額は450円。規定通りではなく週40時間くらいは働いていたようなので、×220時間。40時間で計算すると、ピンハネしていたのは、一人月額9万9000円。50人で495万円。年で5940万円。

仮に日本語学校へのキックバックが斡旋会社に支払われる額の2割ぐらいだったとしても、年に1000万強の利益になります。100人規模の日本語学校の年間の学費は、約6000万円ですから、1000万はかなり大きな額です。一度受け取ることになったら、もう失うことはできないくらいの。。。

私は、これらの「収益」がたとえきちんと処理されていて法的に問題がなくても、日本語学校の収支にこのお金が組み込まれたら、日本語学校がこのお金に手を出したら、もう教育機関としては終わりだと思います。学生がバイトしないと利益にならない、バイトが必要な学生のほうが利益があがるなんてことになってしまっている学校なんてどうしようもないわけです。

仮に日本語学校が、これらのお金の流れに直接関与しなくて、利益を得ていないとしても、学生募集と日本でのバイト先の斡旋に限って業務を他社に委託するというケースもあるのではと思います。直接はタッチせず、結果、学校は学生が確保できて、募集の経費も不要になる、バイト先を紹介する必要もなくなる。確かに学校はキックバックという形では直接利益を得てはいませんが、仕事上、最も大事な部分を委託しているわけですから、もう、切っても切れない関係になっているということは変わりません。

 ちなみに、日本語学校の学費は平均月5万円前後です。バイトの斡旋仲介で学費以上の利益をあげられる可能性があるわけです。

 もちろん最低賃金で雇用されても、そこからさらに抜くという話はあります。これにはさすがに日本語学校は関与していないと思いたいですが、需給のバランスが変わって外国人労働者の時給が下がりはじめたら(オリンピック関連はあと数年でピークと言われてます)、何が起きてもおかしくありません。

 職業を斡旋するのは厚生労働省の認可が必要です。手数料も決められています。
http://www.jil.go.jp/rodoqa/07_jinji/07-Q03.html
技能実習生は営利を目的としたあっせんは禁止となっています。もちろん給料からの管理費などの天引き行為は禁止です。
https://www.jitco.or.jp/system/data/guideline02.pdf

 

時給800円の理由?

ではなぜ最低賃金の775円ではなく、800円だったのか?この学校経営者は学生により多くのお金を支払おうと考えたのか?それはちょっと考えにくい、それなら、寮費を水増しするなんてことはしないでしょうから。

もちろん、違法性が高い斡旋なので相場より高い額は学生への口止め効果も期待していた、ということも考えられますが、仮に、ホントに時給800円で計算した金額が留学生に払われていたなら、おそらく学生募集段階で「ウチは時給800円の仕事を紹介できる」ということをウリにしていた可能性があります。他の募集エージェントとの競争の結果、時給があがった、という可能性です。おそらく地域差もあるので、栃木県の最低賃金だと他の地域より安いので地域間の競争もあり、800円にしないといけなかった、みたいなことも考えられます(これ、つい最近、2016年まではそれぞれの地域の最低賃金だったと思います。日本語学校がその地域の最低賃金をサイト上で示して「この時給で働ける仕事を紹介します」と書いてるのをみました)。

今、日本語学校が学生を集める際、現地では、日本でのバイト紹介を保証する、時給も明示して、返済計画とパッケージで提案する。つまり、授業料がいくら、生活費がいくらなので、1年留学して入学金や留学費用が返済できるという計画コミになっているということがあるようです。そこでの競争があり、日本語学校として実績がないところは、金銭的によりよい条件を提示しないと学生を集めにくいということがあるのかもしれません。

「技能実習生に関しては」最低賃金ではいけない。同一動労同一賃金というようなことが言われはじめています。この差額が作れなくなれば、こういうスキマビジネスも生まれにくくなることは喜ばしいのですが、はたして技能実習生以外の留学ビザのアルバイトにまで適用されるかは、わかりません。技能実習生制度の対象でないところで、あるいは、違法性が高い仕事を探す業者はあるのではと思います。

 現地では、とりあえず日本に行く意志がある人を集めて、留学ビザが取れる人(高卒相当の学歴があり条件をパスできて、資金がそこそこある)は、そのコースで、その他は、実習生枠の人は別、で、集めてから振り分ける、その先は、学校によって提示される返済計画パッケージ次第みたいなことかもしれません。

 前にもちょっとふれましたが、介護ビザの場合は、この返済計画に受け入れ介護施設からの100万円超があります。あくまで指定のところで働いて返す「奨学金」という名目です。この就労ありきの返済計画とそれほど構造自体は変わらないような気がします。介護の日本語学校ルートに関しては、別記事を参照してください。

 

自治体の人手不足と補助金と

「人材派遣系」の会社が日本語教育を介して地方自治体と提携するパターンも増えています。産学連携、Win-Winと新聞でも好意的に扱われています。広告代理店でも、地方自治体と外国人人材、日本語教育との連携みたいなことをサポートするところもでてきました。2015年前後から、ある種のトレンドになりつつあります。(リンク先は記事にではなく記録アーカイブです。新聞記事のリンクはすぐ消えるので)

奥多摩町 廃校を日本語学校に 定住化促進 /東京
https://archive.is/1B62N

出稼ぎ留学生(3)過疎の島に日本語学校 西日本新聞
https://archive.is/jOkzF

「日本語学校を誘致」函館商議所の久保新会頭
https://archive.is/XdRBT

奥多摩は、JellyFishというところ。奄美大島はカケハシインターナショナルというところで、いずれも新しい人材派遣系ベンチャーで、最近、日本語教育にも関わるようになったようです。

佐賀の学校はヒューマンアカデミーという資格業界の大手で、日本語教育業界の最大手でもあります。日本語学校も運営していますが、業界では圧倒的に日本語教師養成講座のほうが有名です。養成講座のところ、日本語学校の周辺(資格関連)のビジネスを得意とするところ、という印象です。

JellyFishは、2015年から栃木国際教育学院という日本語学校を経営していて、そこには「インターンコース」なるものがあり、週20時間無給で提携している飲食店で掃除をしたり料理補助をして「日本のビジネスマナー、就労習慣、日本のおもてなしを学ぶ」とのこと(法的にどういう仕組みでやっているのかわかりませんが…)。また、合宿免許的な日本語教師養成講座をやっています(講師など内容はどうなのか全然わかりませんが…)。

函館の記事は、有料部分でこう続きます。

 「来年は格安航空会社(LCC)のバニラ・エアの函館就航も増え、開業効果は加速するとみている。ただ、ホテルの宿泊能力が不足しており、客を逃している。リネンやベッドメーキングなど宿泊に伴う仕事をする人材が不足している」

 「外国人留学生が学ぶ日本語学校を函館に誘致する計画を進めている。地域内の観光施設では、東南アジアを中心に増加する訪日客に対応できる人材の不足が深刻だ。アルバイトを希望する日本語学校の留学生には観光施設を紹介する仕組みもつくる。留学生と地元企業の双方にメリットがあり、将来的には留学生が函館で就職することも期待できる」

格安航空会社の便数が増えるので観光客相手の人手が不足する。だから日本語学校を作る、という話です。格安航空会社の便数なんて年単位であっさりカットになったりするんですが。

 


 

記事をみるかぎりでは、自治体の規模にもよるでしょうけど、日本語学校に結構な額の補助金を出すようです。これらの人材派遣系の日本語学校は教育そのものにはあまり投資しないので、教師の待遇はあまりよくないようですから、教師の人件費の半額も出してくれて校舎や寮を提供してくれるなら、日本語学校でやっかいな初期コスト(都心では億単位かかる)もかなり軽減できますし、人件費がほとんどのランニングコストも半額なら、かなり効率のいいビジネスです。

 例えばヒューマンアカデミーが経営する学校は専任講師の比率が3割前後でかなり少なく、規定ギリギリのラインです。教育の質への投資は少ない「非常勤でまわす日本語学校」と言ってもいいと思います。他のところは日本語学校の業界団体に所属しておらず、データ非公開です。
日本語教育機関一覧
https://goo.gl/nDT4il

なにより、会社として、学生集めに自治体のお墨付きの留学先というひとつ選択肢が加わることで、かなり学生集めに有利になるという側面があるはずです。技能実習生枠と違って、留学ビザ枠は、バイトの種類がほとんど問われないので、寮費や生活費も安いということなら、募集時の強力なメリットですし、自治体提携というお墨付きはアジア現地での営業で大きなブランドになります。これらの会社は、一度に現地で大量の学生を集めて、日本国内の自社グループや提携先に振り分けるということをやっているところもあるので、ますます学生の獲得数が増え、拡大していくことになるのではないでしょうか。

一方、過疎地では、定員が増えていけば人手不足も解消されるし、そこで進学、就職してくれれば、という期待もあるようですが、日本に来て、都心に旅行もするでしょうし、過疎地で就職するでしょうか。。。在学中の2年間のバイト以上の効果は厳しいかもしれません。今は留学生は、ほとんどの場合、帰国しますし。。。

問題は日本語学校というのは、あくまで大学や専門学校に進学するための予備校的存在であることです。一般の人は留学生なんだからバイトしながら大学に通ってるんだろうと捉えているようですが、実際は、バイトで返済することを前提に予備校に入学させ、予備校生に一4時間働かせている、ということです。こういう形での人手不足解消に地方自治体が助成するのは疑問です。地方の人手不足は技能実習生など、枠組みがしっかりした就労前提のビザで補填すべきではないでしょうか?
そして、自治体が支援をするなら、バイトの分、奨学金でサポートし、少なくとも大学に進学するまでは勉強に集中してもらう、というのが筋なのでは

例えば、奄美の例でいうと、週16時間バイトをしているなら月で約60時間。仮に時給900円で54000円なので、27人なら月約145万円。1年で1740万。奄美市の年間予算は約300億ですから、1740万くらいは出せそうです。ホントに留学生を支援したいのなら。奨学金を出し、不足している人手は就労のビザで来る人達で補填すればいいはずです。

技能実習生枠には制限があるので、留学生枠を使う、というようなスキマ利用を、留学生支援という建前で地方自治体みずからやっていて、それに日本語教育業界が便乗しているだけなのでは?という気がします(後述しますが、就労ありきのローンはたとえ自治体がやろうと、違法性が疑われるケースがあるのです)

しかし、疲弊している地方では、日本語学校誘致は、人手不足解消の策として歓迎されているようです。今のところはじまったばかりで不法就労の話も出ていません。学校作ったらとりあえず100人くらいは週28時間働いてくれるんだろう、くらいのことで話が進み、そういう話(「「土地は余ってるでしょうから提供してくれ、人材の手当ても保証できるし、学費返済があるので、辞められない。ゆくゆくは現地で就職したり生活したりで町が活性化しますよ」みたいな)を持って行く、コンサルや派遣会社系の日本語学校があるということだと思います。私は関わっているところのほとんどが日本語教育に熱心とは言い難いところなのが気になってます(現地でも共生、留学生支援というのは一部で、本音では人手不足解消と消費が+になればOKというような人がほとんどなのでは)。

 自治体のプロジェクトに関わる人達は、例えば自分の子供を、海外で人手不足解消のために過疎地に作った学校にバイトやらなければならない条件で留学させるでしょうか?子供は行きたがるでしょうか?

 児童の日本語教育など地方で大学や日本語学校との連携を模索している動きは以前からあります。しかし人手不足解消と留学ビザでの学生集めはそこには入ってこなかった。従来のものとは区別する必要があると思います。

 

学生にバイトをしてもらわないと困る日本語学校

(ここ重要な変化なので)繰り返しになりますが、ここで大きな問題なのは、こういう人材派遣系の日本語学校は、最初から構造的に、日本語学校に来た留学生にはバイトをしてもらわないと困る、という仕組みになっている、ということです。斡旋で利益を得る場合も地方自治体の助成を目当てに人材を補填するというビジネスモデルでも同じです。学生に働いてもらうことによって学校が直接、間接的に利益を得るという構造になっている。学校も自治体も「留学生に働いてもらわないと困る」という仕組みの中で利益を得ています。

貧しい学生のための救済措置という建前があるので、日本語学校はバイト紹介に関してあまり悪いことだという意識はありません。しかし日本語学校はあくまで進学前提の「予備校」です。予備校生に最初にバイトを紹介しますからという返済計画ありきで学生を集める、募集時になんらかの契約(例えば最低時給800円保証とか)をするとなると、話はまったく違ってきます。もう学生は貧しくなければならない、ということになっていきます。普通に学費を払える学生は斡旋での利益に繋がらないし儲からないわけですから。

 今はこのお金に手を出していなくても、すでに学生募集の段階でバイトの斡旋がお約束になってしまえば、通常ルートでの学生募集は細っていくばかりです。学生は、基本、自己資金が少なくて済む方法を選びます。だんだん手を出さざるを得なくなる。そして、たとえば学生が集まらない年があり資金繰りに苦しいという時に、キックバックが大きな斡旋業者に学生を紹介すれば、すぐになんとかなる状況が、今はすぐ隣にある状況だということです。

 

日本語学校の「地域性」

はっきりとはわかりませんが、地域によってかなり違うようです。日本語学校は大都市に集中していますが、人手不足が深刻な地域では、労働力補填的なニュアンスが強くなります。

これは、2016年末に沖縄の日本語学校がパスポート取り上げしていたという事件が起こり、その関連で継続取材として行われたもののひとつです。アンケートでは、沖縄の日本語学校の過半数がアルバイトの規制を緩和しもっとバイトができるようにしてほしいと回答しています。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/79051

そこで、沖縄県の日本語学校の状況を調べてみました。ソースは、日本語教育振興協会の日本語学校データです。

沖縄県と同じくらいの数の日本語学校と総学生数の広島県と比較してみます。

広島県 沖縄県
総学生数 927 923
ベトナム人学生数 662 86
ネパール人学生数 0 719
N1 合格者 / 受験者 29/112 1/2
N2 合格者 / 受験者 90/253 5/12
N3 合格者 / 受験者 52/221 36/171

留学生における国籍別の比率は、2015年の調査で中国が約45%、ベトナムが19%、ネパールが8%ですから、広島県はベトナム人が約71%で、かなり多い、沖縄県はネパール人の比率が78%と、これも多い、ということになっています。これは、最初に書いたように、日本語学校は、昔から、東京や大阪などの大都市に集中しており、そこでは、昔から中国、韓国の学生が多く、比率が高い、地方では、新興勢力である東南アジアからの学生が多い、という傾向があるのだと思われます。

また気になるのは、日本語能力試験の合格率と受験者数です。広島は地方の平均値なのかなという印象ですが、沖縄は、N1やN2は、受験すらしていないのが気になります。常識的に考えて、日本語学校のビザの期限は最大2年3ヶ月、少なくとも1500時間以上は勉強をするわけです。N3の合格目安が300~500時間、N2は、1000時間ぐらいだとして、沖縄県の923人のうち、N1合格が1人、N2合格が5人、というのは留学目的で来日した若者としては「異常」だと思います。

広島県の日本語学校のデータ

沖縄県の日本語学校のデータ

以下は名門校という言われる日本語学校の能力試験の合格率です。名前で営業ができる学校で良質な学生が来ることもあって、かなり能試の合格率は高いです。平均値よりかなり高いと思われますが、進学目的の学生が来る学校であれば、2年間でここまで結果が出せるというモデルでもあります。


 広島と沖縄のデータは学校名は伏せてあります。日振協のサイトで2017年の2月7日の時点の最新データです。学校によって、2,3年前のデータであることがあります。

 文中出てくる九州経済連合会の規制緩和の動きというのは、こちらの記事にあります。
https://www.rodo.co.jp/news/7318/
28時間規制があると、大学生が就職活動の際にインターンができない、という趣旨で、これを留学ビザのバイト規制緩和と考えるのは無理があります。インターンは労働にあたる行為はダメなど、厳しい取り決めがありますし、あくまでのその枠組みの中で例外としてやればいいことなので。
インターンシップの導入と運用のための手引き 総務省
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/san_gaku_ps/sanko_6.pdf

 

就労ありきの返済計画の違法性

学校の費用をローンで支払うというのは、奨学金という名目で結構悪質なことが行われたりしています。奨学金という名前でなくても、ローンの返済が就労が前提である場合は違法性が増し、さらに特定の就労先での勤務でなけれならない、と就労先が固定されると、違法性は高くなります。

よって、奨学金にはかなりいろいろな規制があり、リスクがあります。就労とセットのものは、ほぼ日本ではありません。新聞奨学生も、違法性が指摘されたりしています。

日本語学校の留学生がらみのローンは、2010年以降、従来の現地で借金をして、日本でアルバイトをして返済する、という形ではなく、日本語学校がバイト先とグループ会社を作り、そこでの就労を前提に学費の返済計画(ローン)を組み、学生を募集する、というタイプがあるようです。今は、技能実習生が働くような場所やそれ以外でも人手不足ですから、斡旋仲介ができる留学ビザ(技能実習生は斡旋で利益をあげるのは禁止)の学生はターゲットになっています。

二国間にまたがっているので、ハッキリみえませんが、日本国内ではアウトなので、いろいろと工夫がされているようです。日本語教育業界は、そういうものと縁を切る(直接利益を得ることはなくても紹介料を払って委託するだけでも違法性を問われる可能性大です)決断をしないとかなりまずいはずです。

就労前提のローンは憲法の「職業選択の自由」があるかどうかを、裁判で時間をかけて争うようなことになってしまいます。しかし最初から明確に法律にひっかかるのであれば、即アウトです。悪質なローンも奨学金もそのギリギリのところでやっている様子がうかがえますが、まず訴えられたら契約は紙切れみたいなことがほとんどだと思います。訴えられないだろうという見込みで行われている。

まずひっかかりそうな法律を考えていきます。

 

これだけ労働基準法にひっかかる

労働基準法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html

まず、17条があります。

 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

これで、ほぼ学費のローンと就労契約のセットはアウトになるはずです。日本にこの種のローンがない理由もこれです。ただ「奨学金」という名目ならやれると考える人はいるようですが、名前だけ変えても、同じです。これがなぜか留学生相手だとOKになっているのは不思議です。これらは訴訟があって、はじめて契約が無効になるので、訴訟ができない留学生という立場を利用した悪質なスキマビジネスだと考えることができます。少なくとも日本語教育関係者が関与すべき領域ではないと思います。

3条
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

賃金格差があった場合、これにふれます。2017年以降、特に外国人相手の賃金は厳しく監視される方向です。

5条 (強制労働の禁止)
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

ローンと学費が結びつくと、まずこれがひっかかります。後述しますが、暴力的な、ということがなくても、高額の返済計画があれば「労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種」と判断される判例がありました。

14条 労働契約は3年を越えてはいけない。(2003年の改正で1年から3年に)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000036407.pdf

日本語学校での滞在上限は2年3カ月ですが、専門学校とセットになっているような場合、3年を越えての就労前提でのローンが組まれる可能性があります。

15条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

奨学金名目でも、ローン返済が就労前提になっている場合、あらかじめ賃金、労働時間が明示されていなかったらアウトです。別になっていても、労働契約がなかったらアウト。これは今後、時給が最低賃金だったりした場合、3条の違反となる可能性があるので、最初はうやむやにするケースがあると思います。

16条は、「賠償予定の禁止」

労働契約には辞めることによる違約金や損害賠償金を設定できない。
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/011.html

留学生の場合、進学できないとか、仕送りが途絶えたとか病気だとかで、帰国せざるを得ないということはよくあります。その場合、就労前提のローンでは「全額返金」となっている場合がありますが、これに違約金、損害賠償金をかしてはいけない、ということです。

 この履行できなかった場合の「全額返金」は国内では(ケースバイケースですが)認められることもあります。が、留学生の場合、途中で解約となった場合、全額を帰国後に支払うことになります。日本語学校の学費2年分なら約150万円、例えばベトナムなら平均年収は30万円ですから、賃金格差はだいたい13倍、1950万円相当の借金を背負うことになります。

18条  使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。

これも留学生に無駄遣いをさせないために「貯蓄は日本の文化」などと言って強制するところがあるようです。で貯蓄だからと天引きすると、、、

24条  賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

これはいわゆる天引きはダメということです。全額でなければならない。例外は社会保険などです。貯蓄だと言って天引きした分を経営者が理屈をつけて使うケースも多いです。ケガした際の治療費とか。

 

お礼奉公と留学生ローンは似ている。

お礼奉公とは、医療関係で行われている奨学金制度(のようなもの?)で、病院からお金を借り看護学校などの費用にあてる、国家試験に合格した後、一定期間その病院に看護師として勤務すれば、返済が免除になるという制度があります。おそらくEPAの下敷きになったと思われます。しかし、就労とパッケージでのローンは違法性が高い、そこで「一定期間勤務する」のをあくまで紳士協定で「お礼奉公」と呼ぶということのようです。就労と学費のローンのパッケージという点で人材派遣系の日本語学校の留学生ローンと似ています。

参考サイト

お礼奉公契約は有効ですか/弁護士河原崎法律事務所
http://ow.ly/6z5r307zlNU
いわゆる看護師の奨学金制度のお礼奉公に関する判例が載っています。就労をもって奨学金ローンを組むという意味では今の留学生ローンと形態が似ており、参考になるはずです。

この中で注目すべき判例があります。

2002年11月1日大阪地裁判決:
修学資金などの返還または免除の合意契約は,その条項の形式的な規定の仕方からのみ判断するのではなく,貸与契約の目的・趣旨などから,当該契約が,本来本人が負担すべき費用を使用者が貸与し,一定期間勤務すればその返還債務を免除するというものであれば労基法16条に違反しないが,使用者がその業務に関し,技能者養成の一環として使用者の費用で修学させ,修学後に労働者を自分のところで確保するために一定期間の勤務を約束させるものであれば,労基法16条に違反する
看護学校への入学につき,入学金,授業料,施設設備費などを貸し付ける「看護婦等修学資金貸与契約」,およびその契約に対する連帯保証契約が,労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種であるとして,労基法14条および16条の禁止規定に違反するとされ,看護学校退学者らに対する賃金返還請求が棄却された

 判例の詳細はこちら
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08026.html

つまり、就労が人手不足など雇用者の都合で行われたことは労基法の16条違反と判断され、さらに、奨学金の範囲内であっても、経済的足止めとなるような額であれば、14条違反となる、とされたというケースです。

これは外国人留学生の奨学金、返済ローンにあてはまるケースが多いはずです。留学生の場合、日本語学校の1年分の学費100万円以下であっても、日本で働いて返すことができない以上、賃金格差を加味すると、東南アジアのどこの国であっても10倍にはなりますから、1000万円です。これは、契約形態そのものが労働者の就労を強制する経済的足止め策の一種となる可能性があると言えるのではと思います。裁判になれば、就労先と学費ローンの債権者の関係が少しでも証明されれば、アウトなのではと思います。また、そのことを知りつつ学生集めを委託した日本語学校も違法性を問われる可能性があります。

これまで、労基法での問題となっていないのは、留学生が訴訟を起こしていない、訴訟をおこす費用も時間もない、からだと思われます。日本語学校は法務省管轄下ですが、主に入管方面なので、労基法との問題などはあまり考えられていないのでは、という気がします。しかし、今後は、技能実習生の監視をするという新しい機構に入管の人が入るとのことですし、日本語学校と就労の問題は注目されると思います。

 

逮捕されても罪は軽い

しかしながら、不法就労を助けたという不法就労助長罪、ほうじょ、は、初犯なら逮捕されても懲役1年に執行猶予がつくのが相場です。年間数千万稼げるなら、やってもいいという人達は国内にたくさんいるはず。日本語学校でも法務省の基準で5年設置者になれないだけです。業界団体には倫理規定のようなものはなく、おそらく5年で復帰すれば、黙認されるはずです。

不法就労助長罪|労働政策研究・研修機構(JILPT)
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/103.html

 

それでもまだやりますか?

労基法はクリアするように配慮している、というところは多いと思います。借金と就労の関係性が立証されなければ問題ない、そう配慮している、というような。

仮にそうであっても、これだけギリギリなのです。これだけ不法就労が問題となっている中で、書類上関係がなくても実態があるという小さな証拠があがれば、即アウトなはずです。「配慮している」という言葉も怪しいわけです。看護師のお礼奉公も、違法性はないとほとんどの人が考えていて、今も「慣例」としてやっているところはあるようです。訴訟が起こり始めて、あ、アウトだったんだとなります。留学生は訴訟をするのはかなり難しい、そういう留学生の足下をみて作ったような仕組みに日本語学校が関与していいんでしょうか?

2017年以降、技能実習生の問題をうけて、賃金格差の取り締まりは厳しくなるはずです。新しい機構も違法な就労はどんどんあげていくと言われています。日本語学校も同罪、高額の返済ローンが前提の業界全体がクロ判定を受ける可能性もあります。日本語教育振興協会と全国日本語学校連合は、学費のローンに関して、今、きちんと線引きをしておかないと近い将来「違法性を知りながら」見過ごした組織だとみなされるのでは。

 

これをやめるには、無理をして留学生を作ることをやめなければなりません。「貧しい地域の留学生のための救済策」という建前は、そろそろ見透かされようとしています。まだ続けますか?

 

日本語教師からみた変化 ~黒歴史にしないために~

学生が授業で寝てて、経営者が進学にあまり興味がないという学校でもいい、勤め先の経営者が逮捕されるスリリングな経験をしてみたい、というのならそれで問題ないんですが、ちゃんと日本語を教えたい、教師としてキャリアを積みたいと考えるなら、「人材派遣系」は避けるのが賢明だと思います。2010年以降に出来た学校はまず軽くダウトです。

以降、ダウトの数が増えたら、避けたほうが賢明です。

技能実習生の職場が多い地域(関東だと北関東など。栃木、群馬、岐阜など)の新設校(2010年以降くらいにできたところ)は、やはりリスクが高いという気がします。ひとつダウトと考えたほうがいいかもしれません。

昔からある大手の日本語学校でも技能実習生も取り込もうとしています。まずは学校のサイトにいってください。サイトにモロにそういうことが書いてあるケースが結構多いです。「ウチは人材派遣もやるよ」と、そういう関係者にアピールしたいのでしょう。また、体裁は学校だけども、経営者(理事長という肩書きが多い)の挨拶で、国内の経済の活性化に寄与したい、などとついつい書くケースが多いようです。もちろん、名前でも検索してください。他のサイトでインタビューに答えてアレコレと(先をみてやってる的に自慢げに)話している場合もあります。他に協同組合(実習生の受け入れ組織に多い名前)も経営しているというところもよく見ます。

中には学校のサイトで、滞在中、しっかりとアルバイトを紹介します、ということを堂々と書くところも増えてきました。そういうところは、おそらくバイト先は日本語学校と提携しているところに限られていて、そこでしかバイトはできないようになっているはずです。募集段階からの学生との契約、決め事である可能性が高い。そして、そういう場合は提携先、斡旋会社との深い関係がある可能性もある。かなり濃いダウトです。提携先と親会社は同じというケースもあるでしょうし。寮も提携先の会社のアパートに提供してもらってるのかもしれません。

昔なら、時々学校に斡旋会社とか提携先から電話がかかってきて、事務職員や日本語教師は、なんとなく気づくと思いますが、今は、経営者と携帯で直でやり取りするでしょうから、出入りする人で判断は難しいかもしれません。卒業生の就職の斡旋の人としてよく日本語学校に来る人は、実は、バイトの斡旋もやってる、業務拡張で学生集めもやりはじめた、そういうとこと提携した、みたいなこともあるでしょう。ほぼ同じ業界なので。

それでも、それらしき会社の人が学校に出入りしていて、そこで学生が大量に働いている、留学生に理解のある会社の気のいいオジサン、が、実は相場の時給より安い額しか学生に払っておらず(例えば800円なら、最低賃金もクリアしているし、そこそこ払ってると思いがちですが、実際は1350円だったということがあったわけです)、差額分は学校と折半になってる、みたいなことは大いにありえるわけです。そういう関係があったら、もうその学校は学生にはバイトをしてもらわないと困る、2年バイトしながら学校に在籍してもらえばいい、ということになっています。

それほど勉強しなくてもお金が貯まれば専門学校くらいなら推薦で入れてやれる。専門学校はまた同じようにバイトをして学費を払ってくれるお客さんが確保できる、というわけです。たとえ週28時間以内であっても、きっちりやらないと授業料が返済できない契約になっているなら、平日毎日5時間労働です。年間760時間以上コマ数がある「予備校生」のバイト時間として、多いと思いませんか?

授業が終わって、皆揃って、同じところに仕事に向かう、みたいな学校はもう「かなり濃いダウト」かもしれません。ひと目につかない、例えば工場とか倉庫での作業だと何時間働いたかなんて、わかりません。お金がほしい学生は「ちゃんと時給分は払うから、そのかわりタイムカードはいじるね」という取り決めに応じる留学生はいるでしょう。

もちろん地元の会社と良好な関係を長年続けていて、というケースもあると思います。あと、学生のバイト先がコンビニや有名外食チェーンが主だ、というところのほうが安心です。さすがに大手は、ビザの確認くらいはするでしょう。

日振協やJaLSAに、この種のことをチェックする機能はなさそうです。「人材派遣系」の学校でも特に問題なく組織に加盟できています(両者は仲が悪く、加盟校数を争っているムードがありますから…)。従って、加盟校もどんどん摘発されてます。加盟、非加盟は、安全の目安にはなりそうもありません。

つまり、法務省に日本語教育機関と認定されていても、業界団体に所属していても、歴史ある名門校でも、Facebookで学生がイベントで楽しそうにしている写真があっても、専任や主任の日本語教師が「私たちは(学校の事情はともかく)目の前の学生に日本語を教えることに集中することが大事だから」とニッコリ微笑む「いい人」であっても、なんの判断基準にもならない、ということです。

もちろん、北関東にもいい日本語学校はあると思います。ダウトが多いところは、就職先として考えるなら用心したほうがいいのでは、ということに過ぎません。とにかくいろいろ調べて自己防衛するしかありませんから。

悲惨な学校でのキャリアは黒歴史にしかなりません。地元の企業に学生を売るような経営者も、新たに参入してきた人材派遣系の起業家然としたスーツの若者も、和やかに接しながら、本音では「日本語教師というのは、少々のことは見て見ぬフリをする、小心で、安く雇えるチョロいヤツラだ」くらいに考えているかもしれません。そして、そういう人達は、オリンピックを境に建設需要が終わり、技能実習生枠が拡大して日本語学校を経由するウマミがなくなれば、あっという間に他のスキマを求めて日本語教育業界から消えていくんじゃないでしょうか。

今の状況が続くなら、今後も日本語学校はどんどん摘発されると思います。歴史ある学校であっても、数百人規模の学校でも、あっという間に潰れますよ。

 ここに少しネットでの日本語学校のデータ集めについて書きました。
http://webjapanese.com/books/online/sakusakukiso/#i-8

 

日本語学校を介した不法就労、解決方法は?

問題点を書くだけでなく、やはり提案もしたいので、考えてみました。

 

今の延長線上では無理

そもそも、これまでも日本語学校は学生のバイト時間の管理は事実上できていませんでした。日本語学校の業界団体が規定違反でペナルティを与えたとか、日本語学校の業界の調査によって日本語学校が摘発されたということを聞いたことがありません。
留学ビザは風俗営業以外どこでも働けますから、普通は技能実習生と見分けるのは無理です。また、2015年以降、技能実習生だけでなく、地方自治体の枠での実習生のような資格で来た人や、特区など、いろんな資格で日本に来て仕事をしている人が増えています。その中で日本語学校の学生だけをピックアップして28時間以上であると見分ける、摘発するのはますます難しくなるはずです。

 

留学生を再び2つに分ける

少なくともチェックができる体制作りのためにもまず「日本語学校の学生はバイトは全面禁止にする」しかないのではと、思われます。

2010年までは、専門学校や大学で学ぶ人を留学生(留学ビザ)、日本語学校はその留学生になるための予備校生的な存在なので就学生(就学ビザ)と呼ぶ、という区分けがありました。ビザも別。それぞれバイト時間も留学生は週28時間、就学生は一日4時間でした。日本語学校は過去も現在も、日本語を勉強するために留学する学校ではなく、専門学校や大学に進学するための予備校的な存在です。

なぜ留学生と就学生が統合されたのかはわかりません。ただここにあるように、海外と日本では留学生のカウントの方法が違う、他所の国は語学留学も留学生に入れたりしている。じゃあ、ウチもそのほうが数が増えるから、という事情があったことは確実なようです。「30万人計画」のために見た目の留学生数が増えるというメリットはひとつあります(2020年までという目標があります。統合が決まったのは2010年)。
しかし、日本語学校への留学は語学だけが目的で上達したら帰国するというパターンは超レアで、実際は進学のための受験勉強なわけですが、それも「留学」にするかは、判断の分かれるところでしょう。

ただし、日本語学校の学生のバイト時間の上限が一日4時間から28時間に事実上増えた理由は謎です。このころ、すでに国内の人手不足が明らかになってきた頃でもあり、日本語学校の学生を労働力として使いたい業界はあったでしょう。また、バイト時間が増えれば日本語学校の学生募集に有利なことは確実なのでそういう業界(日本語学校だけでなくその先の大学、専門学校業界)からもなにがしかのプレッシャーがあったのかもしれません(つまり、このバイト時間のある種の規制緩和は学校関係者は歓迎だったはずです。この時間は絶対に減らされると困るはずです)。

日本語学校の学生のバイト時間が増えたほうがいい、ということに関しては、国と業界の利害は一致しているというわけです。

 入管法改正 http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact/newimmiact.html

 バイトができる時間を短く(20時間にという話が出ているそうです)すれば不法就労が減るとは思えません。稼がなければならない金額は変わらず決まっているわけなので、やる人はやります。ルールが20時間でも28時間でも、規定時間を越えたかどうかを調査する手間は変わりません。0ならば、就労そのものがルール違反なので、かなり違ってくるはずです。

 

就労前提の留学をできなくする(バイト完全禁止)

考え方の基本は、斡旋にいくら規制をかけても抜け道はあるので「日本で稼げる」「留学費用は日本で働けばいい」ということを出来なくすることで、留学の斡旋ビジネスのうまみを無くすということです。優秀で事前にある程度の日本語能力があり、かつ、学費が払えなければ留学できないことにする。留学生は減りますが、困るのは日本語学校と留学生頼みの一部の大学や専門学校だけです。

介護ビザのように、日本語学校ルートで入る場合も、日本語学校在学中はバイトができなれば、少なくとも最初の1~2年間働いての返済の計画が作れませんから、留学スタート時の就労ありきの返済計画での募集はかなりやりにくくなるはずです。2年後に進学できる保証はなく、きちんと働きはじめるかどうかわからないわけですから。

そもそも、世界の日本語学習熱はかなり前から下降ぎみ、2015年の国際交流基金の調査ではハッキリと減少と数字がでました。つまり、少子化を留学生で補填するという発想の大学や専門学校、それにぶら下がって存在している日本語学校も、ジリ貧であることは間違いなく、淘汰は免れないのではと思います。

留学したい人は奨学金を申し込んで直で大学や専門学校に行く。多少の余裕があれば日本語学校経由でいく。就労目的ならば技能実習生枠などにきちんと誘導する。技能実習生枠も広がってきましたから、そっちでカバーできるようになるはずです。入口で留学と就労をきっちり分ける。技能実習生枠は、問題山積ですが、送り出しから受け入れまで、政府が強く関与していますし、斡旋自体が禁止です。いろいろ問題も起きていますが、監視の目は、留学ビザより圧倒的に厳しいのです。それほどおかしなことはできません。新しい管理機構もできることになりましたから。国内での外国人就労がらみの問題は減少していくはずです。

 バイトが禁止になれば、日本語学校に送り出す場合、母国で学費を作らないと無理ということになります。少なくとも日本で働くことを前提に返済がされる、在学中に働かないといけない、みたいなことは無くなります。大学や専門学校に入った後はバイトが可能になりますから、そこでの違法就労は続くかもしれません。日本語学校より授業が少ないし拘束力も薄いですから。そこは大学や専門学校で管理してもらうしかありませんが、ほぼ学校法人であり、経営規模も大きい、許認可取り消しも含め、不法就労やその他の犯罪に関わるリスクは限りなく高いですから管理は難しくはないはずです。少なくとも個人経営から学校法人までが入り乱れていて、ダメ元でやってしまえ!的な人も出入りしやすい日本語学校よりは管理しやすいのではと思います。

大学や専門学校は「留学生」と日本語学校は「留学予備校生」

この就学と留学の区分けを復活させて、大学や専門学校の学生はバイトもひとつの生活習慣を学ぶ場としてある程度みとめるが、予備校生的な存在である「就学生」はバイト禁止、でいいと思うのです。そもそも週28時間は平日毎日5時間以上です。いずれも、「予備校」に通いながら費やす時間としては疑問です。全面禁止なら、資格外活動の申請もできないし、職場も日本語学校の就労は一切受けることができない、仕事をしている人の外国人登録証をみて就学ビザだったらアウト、シンプルです。

日本語学校の学生の就労が発覚したら就労させていたところに重いペナルティを課す(例えば一般の就労ビザや実習生枠の人も一定期間雇えないとか)ことにする。就労者を出した日本語学校もペナルティのポイントが積み重ねれば認可取り消しになる。1時間でもアウトなので、発覚で警告とペナルティ、2度目で認可取り消しなどと監視&管理はしやすくなるはずです。28時間のバイト時間が30時間を越えたかどうかをチェックするのは抜け道がたくさんあり、至難のワザですが。

 留学生のバイトに関しては、この論文に各国の時間数など資料がありました。日本は他国(他国は留学生に日本語学校のような語学学校は含めていない可能性もあるので注意)と比較しても許されているアルバイト時間が多く、中でも専門学校生や日本語学校の学生のバイト時間が多い。
外国人留学生の受入れとアルバイトに関する近年の傾向について
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/09/pdf/098-115.pdf
ベトナム人、ネパール人留学生の特徴と増加の背景
http://www.jasso.go.jp/ryugaku/related/kouryu/2016/__icsFiles/afieldfile/2016/06/07/201606satoyuriko.pdf

 

日本語学校の学生(就学生)をさらに切りわける

現在、日本語学校には常時5万人超の留学生がいるわけですが、進学できないまま帰国する学生も多く、勉強をして進学する、あるいは、推薦でなく受験して大学に進む学生は一部です。バイト三昧で日本語学校で2年過ごし、推薦枠でとりあえず拾ってくれる(外国人で補填したいだけの)専門学校や大学に行って、バイトを続ける、4年働ける権利を買う、という発想で進学する、それを見込んで外国人留学生を日本語学校への推薦枠やユルい合格ラインで(在学中の単位取得もユルユルで)集める大学や専門学校、という構図があります。「留学生30万人計画の建前のために無理をして」という側面も確かにあるのですが、留学生の水増しは、少子化で本来淘汰されるべき大学や専門学校の延命、救済となっている、という側面も見逃せません。こちらのほうが、留学目的と就労目的を仕分けする際の抵抗勢力としてはより大きいはずです。

日振協の日本語学校のデータには、進学先が書かれています。これは「これまでの進学実績」であって、どこまで過去に遡ったものかはわかりません。それでも、大学に進学するのはレアケース、ほとんどが専門学校です。またかなりの部分が、大学や専門学校から日本語学校にきたユルい「推薦枠」を利用したものだと思われます。この日本語学校からの推薦枠で生き延びている地方の私大や専門学校は多いはずです。
http://www.nisshinkyo.org/search/

この就労目的の学生と、本気で勉強したい学生を現時点で強く線引きをして分けたほうがいいのではと思います。管理も別系統、学校も別にする。日本語学校を2つに分ける。

おそらくバイトができない日本語学校を留学先として選択する人は激減すると思います。
しかし、本気の人を選別し、人数を絞ったうえで手厚くサポートするほうが長い目でみれば、よいはずです。そして本気の学生を、例えば、規定上のバイトで得られる金額を奨学金として支給すれば、バイトが必要な学生をサポートできます。かつ、最低限の留学生の数は確保出来ると思います。

 大学や専門学校がどのくらい日本語学校に推薦枠を与えているのか、実際に推薦枠で入ってくる学生の数はどうなのか、公開されているデータはありません。大学や専門学校では留学生数や学生数における留学生の比率などもサイト上で公開しているところは少なく、このへんの情報公開があれば、いろいろとハッキリするのではないでしょうか。

 

進学目的の学生を奨学金でしっかりサポートする

私のおおまかな印象ですが、日本語学校の5万人超の学生は就労できないとなれば、自費での留学になるだけでなく、バイトで母国に仕送りもできませんから、バイト無しで留学する数は1万人程度に減るのではないと思います。それに加えて、もちろん学費が払えないけど進学したいという人もいます。この人達を本気で進学する枠としてしっかりサポートするほうが合理的です。奨学金でサポートできれば、その分だけ見込めます。1万人なら合計2万人くらいです。これは、激減といっても、90年代でも2万人くらいの時はありましたから、オカシナ数字ではありません。

週28時間のバイトで得られるのは月約5万、年60万ですから、これを基準にできるはずです。1万人に奨学金として月5万円支給すればいいのです。年額で60億。最低賃金を考慮して格差が大きい国の学生に重点的にサポートする。

そのかわり、来日前に入口で日本語能力試験のN4あたりのレベルをパスを条件に足切りしてさらに選考して決める(ただしこの条件で1万人集まるかはわかりません。多ければ能試のレベルをあげて調整できますが…)。勉強目的で留学するならN4(日本語の基礎が確実ではないけどそこそこ入っているレベル)くらいはクリアしてきてもいいでしょう。これで本気度の選別はかなりできます。もちろん留学中の出席、成績で支給額の減額やストップもあり、となれば、日本語学校で学生が失踪する、あるいは、困ったことをする可能性は激減するはずです。

奨学金不要でバイト無しでも日本語学校に留学したいという人は、豊かになった東アジアを中心にあと1万人+αくらいはいる、もしくは今後増える可能性があります。ここも大事にします。自費と奨学金の留学生の合計2万人には、地方自治体などから住居の提供や家賃補助があれば、とりあえず勉強に集中しようと思えばできます。現在もこのくらいで生活している(つまりバイトをして返済と仕送りをした残額がこのくらい)日本語学校の学生はたくさんいると聞きます。住居の提供の体制作りが課題ですが、5万人は無理でも2万人なら(もうちょっと地方に分散すれば)可能ではないかと思います。合計で2万人です。日本語学校が本来集められるリアルな学生数は、だいたいこの「自費で1万人。奨学金ありなら1万人」くらいなのでは?

日本語学校の学費を払うのが難しければ、日本語学校を経由せずに大学や専門学校に直接進学する。大学や専門学校は独自の奨学金もありますし、国費の奨学制度も枠は少ないですが手厚いので可能性はあります。勉強して結果を出せば道はまだあります。

 60億は人口1万~2万の小さな町(村)の年間の予算程度の額です。地方自治体の日本語学校への補助は住まいの提供と家賃補助でやってもらうことをメインにしてもらえば、仕送りがなくても、とりあえずバイト無しでも最低限の生活はできる。ベーシックインカム的な補助です。「バイトで稼げない就学ビザ」はおそらく激減するはずです。60億は大きいようですが、今は、このくらいのサポートをしても日本語学校に勉強目的で留学する人が1万人集まるかどうかというのがホントのところだと思います。

 国公立と私立の大学、専門学校で基金を作って原資にする方法もあると思います。日本語学校の学生はほとんど進学するわけですから。大学は約750校、専門学校は2800校だそうです。留学生が入学できる学校が半数としても、1500校あります。60億なら1校あたり400万円です。学生一人が卒業するまでの学費程度です。すぐに集まるのでは。

 現在も日本語学校の留学生が対象の奨学金はあります。月額3万円。しかし、2015年での支給対象はわずか700人(1.4%。年額2億5000万円)です。月3万円は結局アルバイトをしなければならない額です。
http://www.jasso.go.jp/ryugaku/tantosha/study_j/scholarship/shoureihi/

 2万人というのは、だいたい2000年あたりの数です。90年代で不法就労が問題になった時代を経て落ち着いたころの数です。そこから一旦、3万4万と増えるわけですが、2005年に一旦25000人になっています(この2005年あたりから日本語学習者数の減少がはじまった可能性があると私は考えています)。無理をしなければ2万くらい。3万を超えると問題が起きる、というところなのではないでしょうか。

 資料 日本語学校の学生数の推移

 

2万人以外は就労ビザに

現在5万人の日本語学校の学生のうち、残りの3万弱は就労目的だったのなら、自然と技能実習生枠に合流するのではないでしょうか。

そしてこの3万人分の日本語学校は、まだ日本語学校を続ける気があるなら、新しくできる技能実習制度の組織の管理下で進学目的の学校とは別の就労者専用の日本語学校として続ければいいと思います。私は個人的には、もう公的サポートしかないと思ってますが、移行期として、技能実習生の介護枠で来る人は増えるはずですし、そこをケアする日本語教育機関は必要です。NPO化してもいいですし。

その上で、就労系のビザの日本語学校でも成績優秀者には進学の道を作る。例えば、留学条件(高卒程度など)が揃っていて、滞在中にN1に合格すれば進学のビザに切り替え可能とか。

切りわけ、棲み分けがきちんと進めば、日本語学校は減らずに済みますが、進学も就労目的の学生も取り込みたいという(おそらく大多数の)学校はどちらかを選ぶしかなくなります。やはり、全体としてパイは減るかもしれません。

日本語学校業界から、こういう提案は出てこないでしょうし、なにより困るのは日本語学校から学生を供給してもらっている専門学校や私大だと思われます。おそらく、これまでも、ここが最も大きな壁だったはずです。日本語学校とこれらの専門学校や大学は両者は持ちつ持たれつの関係で、日本語学校はこれらの大学や専門学校にぶら下がっているだけという見方もできます。留学生を直で呼べない大学や専門学校は消えてもらう、ここの淘汰を進めることも込みでやらないとできないわけです。

国内の少子化はもちろん、そもそも日本語学習者も減り始めているわけですから、受け皿のどこかを減らすことからはじめないと何もはじまらないのではと思います。結果として、質の高い日本語学校が残り、そこに本気の学生が実績に応じて割り当てられる。しかも、きちんと国が奨学金でサポートし、しっかり勉強できる体制が整った専門学校と大学に進学する、バイト先で苦しむことなく、日本から手厚いサポートを受けた学生達はそのことを忘れないでしょうし、日本語学校周辺の不法就労問題は解決するとは言わないまでもかなりシンプルになる、これらのメリットは計り知れないと思います。

技能実習生枠を手当てする日本語学校は、技能実習生制度の管理下で新たな管理機構の元で、再出発すればよいと思います。進学系、就労系、それぞれの学校に求められている日本語学習は違います。ニーズに最適化された効率のよい教育ノウハウの蓄積が行われるはずです。

 

未来を先取りする

バイト禁止は、留学生の数には影響大ですが、不法就労が減るだけではなく、滞在中の就労ができなければ、日本語学校は、バイト前提の返済計画ありきの入学の契約はできなくなります。日本語学校を経由して大学に入るなら、まず日本語学校の学費を払い、2年後に進学先の学費を払う。ということになります。留学できるのは、事前に日本語学校や大学の学費が払える人だけになります。

おそらく留学目的で日本に来る人は激減しますから「留学生としてカウントできる数」は見た目上は減ります。留学生30万人計画は2020年までの達成は不可能だと思います。しかし、元々、予備校生的な学生と就労目的の学生の日本語学校の学生数を入れて水増ししてたわけですからより実態に近い数字で再出発するしか仕方ありません。

今後、アジアは今後急速に豊かになっていくはずです。事前に留学費用が準備できる人達の選択肢になれるか?という競争の中で、やっていけばいいと思います。近い将来は、そこが主戦場となるはずです。なるべく早く「自前で費用を負担して留学するという国際レース」に参戦して、その中で切磋琢磨をして鍛えていく。「稼げる留学先」ではなく、「勉強のために留学する価値がある国」を目指すべきです。

世界の日本語学習熱はずっと前からさめつつあり、学習者は減っています。ここで無理をして、見た目の数のために、日本語学校や大学や専門学校が就労目的の学生も取り込まないとやっていけないという延命治療を続けてもいいことなど何もないのではと思います。

現実を直視して身の丈にあった規模で、数を追求するのではなく、進学と就労は早めに切り離して、質の高い学生を確保するためにも、留学サポートを手厚くすることで質を追求していくことにシフトしたほうがよいのではと思います。一旦リセットボタンを押して2万人からリスタートする。ゆくゆくは質が量に繋がります。

 

 

国内の日本語学校というビジネスモデルは時代遅れ

かつては海外には日本語の学習のためのリソースは少なく、日本に「語学」留学する意味はありました。

しかし、90年代に較べると、海外にいながらにして、ネットを介して、日本語の学習リソースを手に入れることができます。インフラがもうちょっと整備されれば、日本語学習者が多い東南アジアでもスカイプなどを通じてのリアルタイムレッスンやMOOCなどで安く日本語を学ぶ機会が訪れるはずです。日本に留学しなければ日本語が上達しないという時代はもうすぐ終わります。留学は語学ではなく、大学の質勝負になるはずです。きちんとした高等教育を提供できるかどうかになるはずです。

自由な社会で、大学で得られる多様な価値観や様々なジャンルでの先端技術、日本語に翻訳された学術関係のリソースなど、まだまだ日本に留学する価値はあるでしょう。しかし、日本語の学習のためだけに日本に留学する(しかも日本語学校は学位も提供できないし、1年の学費は海外の大学並みの70~80万です)価値はあるでしょうか?あったとしても、今後、どうなるだろうか?と考えた方がいいのではと思います。

日本語学校を技能実習生など国内の日本語学習の基地としてという考えもあるようですが、外国人での介護の人材補填が決まった以上、今後日本語学習が必要な人達は、全国にまんべんなく広がっていくはずです。むしろ過疎地に増える可能性もあります。民間の日本語学校では無理です。公的なサポートで対応することになるはずです。そもそも国内の日本語学習が必要な人は少なく見積もっても現在で50万人。政府の計画どおりなら、おそらく2020年には100万人になります。日本語学校が手当てできているのは、今でも5万人前後なので、とても追いつきません。

日本語学校は肝心の日本語教育の質の向上に投資する力がありません。専任の比率はもう20年近く約3割です。狭き門ですが、専任の待遇も底辺レベルです。


 アンケート「日本語教師への10の質問」より https://goo.gl/zM1lpI

留学生が先細りなら、ネットに早めに転換すればトップが取れるかもしれません。もしリアル授業にこだわる、途上国の学生を支援したいのならば、国内にとどまって日本でただ留学してくれるのを待つのではなく、アジアに拠点を移せばいいのです。現地で日本語ノンネイティブの教師を育成&活用しながら長年つちかったノウハウを融合させればかなり戦えるはずです。専門学校や私大への学生を共有する基地であったり、人手不足の工場に人材を派遣する「箱」でありつづけるより、よほど意義があるはずです。

 しかし、2017年になっても、民間の日本語学校がネットで海外の学習者をターゲットに起業した、転換した、という話は聞きません。海外にも出ない。ただ、留学生を待っているだけです。数が減ると、国や企業がどうにかしてくれないかと陳情する。日本語学校が増えた90年代はじめから続けている学校の経営者は、今は、若くても60才近くです。日本語学校のサイトは外注で安く作って「お知らせ」だけ更新するようなサイトばかり。小さな会社がほとんどなので経営者が変わることは少ない。「会社の寿命は30年」と言いますが、もう思い切った転換が不可能になっているのかもしれません。

 民間の日本語学校に日本に留学したという若者を託すには、他にもいろいろ問題があります。
・先にICT化している大学や専門学校と較べると、基本零細企業の日本語学校にはICT化は無理。
・留学生を地震国で耐震性に疑問のある校舎や「雑居ビル」で勉強させてしまうリスク(2011年の日本語教育業界の震災対応は悲惨なものでした)。
*閲覧にはツイッターアカウントが必要です。メールアドレスだけで無料で取得できますので、アカウント取得後ログインして以下のURLにアクセスしてください。

 諸外国の大学の学費(文科省)(日本語学校は年間70~80万円)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/syogaikoku/1379305.htm

 「日本語学校の時代」の終わり
http://webjapanese.com/blog/j/nihongokyooikuarekore/#i-18

 

国や日本語学校の業界団体に管理は可能?

 

2015年前後から

個々の日本語学校にバイトの時間のチェックを期待するのはほぼ無理だと思います。そもそもこれまで不祥事があった日本語学校はほぼすべて入管の捜査で明らかになったもので、日本語学校からの通報とか日本語学校の業界団体のガイドライン違反から発覚みたいなことはなかったと思います。2016年、不祥事が報道された際にいろんなところで「一度法務省に認可されたらチェックはない」と書かれてましたが、日本語教育振興協会というところは、3年に一度審査をしています。書類上のチェックと訪問と面接があります。ただしすべての日本語学校が加盟しているわけではありませんし、チェックも形式的なもので機能してないことは明らかですが。

また、おかしな動きが増えてきたのは2012年以降です。留学生がドンと増えたのは2013年。そのころから内々に検討が始まったのかもしれませんが、2015年あたりから法務省、文化庁、文科省に、具体的な動きが見えてきました。最初に書きましたが、形式上日本語学校を管理監督する責任省庁の法務省は、20年くらいあったガイドラインを2016年に新しくした「新基準」を出し認可の取り消しもあるというルールにし、管理強化することになりました。文化庁は日本語学校の日本語教師養成講座の管理をはじめることになり、文科省は法務省と連携して日本語学校の情報公開を進めることにしたようです。

今は、省庁主導でいろいろ進んでいます。一部に「事業仕分けで日本語学校の業界団体の自主的な管理権限をとりあげて法務省に戻したから問題が起きた」と言われているようですが、この「日本語学校の業界団体」は日本語教育振興協会だと思いますが、事業仕分け以前に、業界団体が実効性が期待できる何かをしたという記憶はまったくありません。省庁主導でいいのかは、わかりません。本来なら業界団体が自主的にやれるならそれがいいとは思うのですが、日本語教育業界に限っていえば、まず無理だと思います。

現在どんなカンジなのか、これまでどうだったのか、整理しながら、わかるかぎり書いてみます。

 

国や政府の監視体制

日本語学校管理しているのは法務省です。法務省によって留学ビザで学生を取っていいという認可を受ける必要があります。ルールは以下のとおり

日本語教育機関の開設等に係る相談について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html

認可を受けた日本語学校のリストはここに。約500校くらいです。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho28-2.html

法務省は基本、日本語学校の教育内容には興味はなく、違法在留だとか失踪、などの犯罪防止が主眼です。そのために内容でシバリをかけたほうがいいならする、というスタンスのようです。(教育内容に関与する省庁は文科省ですが、書類チェックのみ。教師数が足りてるかとか認可の際にチェックする)学校として認可されれば、あとは定員を増やす際に書類の提出があるくらいです。操作の手が入り、上のサイトにある基準の違反が明らかにならないかぎり国によるチェックは事実上なく、継続可能です。

 入管は全国の不法就労を監視しているわけですが、技能実習生も含め、対象は50万人超で、職員数は1500人くらいです。すべてに目を配るのは無理だと思います。

 

業界団体によるチェック

日本語学校の業界の組織団体は今は2つあります。事実上の分裂状態で、日本語学校の多数がいる団体は今はありません。500校以上ある日本語学校のうち350校くらいは日振協に、150校くらいはJaLSAに加盟しています。超仲が悪いのですが、両方加盟しているチャッカリした学校も結構あります。どちらにも加盟してない学校もジワジワ増えています。

一般財団法人 日本語教育振興協会(日振協)加盟は300校ちょっと。設立は1989年。
http://www.nisshinkyo.org/

→ 事業仕分けで一旦廃止となりましたが、その後政権交代などもあり継続しています。
http://webjapanese.com/blog/j/data/files/NisshinkyoooShiwakeKekka.pdf

一般社団法人 全国日本語学校連合会 (JaLSA)加盟は150校弱。設立は2004年

→事業仕分けの際にできた新組織。
http://www.jalsa.jp/

 日振協は事業仕分けで、常勤職員4人中3人が天下り、日本語学校の審査も参考にはするけど、あってもなくてもいいものと法務省に突き放されて廃止となったんですが、その後グズグズになって今も存続しています。業界では業務仕分けは「無かったこと」になってます。でも、当時は、「これまで審査料を払ってきたのはなんだったの?」「返せ」みたいなことになってました。
事業仕分けでの議事
http://webjapanese.com/blog/j/data/files/NisshinkyoooShiwakeGiji.pdf
結果
http://webjapanese.com/blog/j/data/files/NisshinkyoooShiwakeKekka.pdf
動画
https://www.youtube.com/watch?v=W3gSUslh6r8

 


 

1)日振協による日本語学校の審査、認定

http://www.nisshinkyo.org/review/
→事業仕分けを受けて、この認定は法務省の認定とは関係ないと書かれるようになりました。がまだなんとなく続いてます。法務省も「参考にはしてます」ということにしたようです。
またここには
http://www.nisshinkyo.org/search/daisan3.html
認定の提出書類、その審査が公開されています。2016の評価を読むかぎりでは、財務状況などは、決算書(貸借対照表・損益計算書)は当日の「提示」でいいらしく添付での提出は義務ではなさそうです。監査が行われているかは問われるが、財務状況そのものに対しては評価はなく、その基準はなさそうです。細かいお金の移動に関するチェックはもちろんできないと思われます。基本、ちゃんとやってますという提出のみ。

日本語教育振興協会による日本語学校に行われる「審査」は一回10万円程度の審査料を支払います。この審査も、上の評価を読む限りでは3年に一度(新設校は2年後)決められた書類を提出し、その書類を評価(基本「がんばってます」と書いて提出し「(読みましたよ)がんばってますね」と評価されるだけのようです。審査委員が学校を訪問し、経営者と面接をして終わりです。面接訪問日が近づくと職員が折りたたみベッドで保健室を作ったり、古本屋で適当に本をかって図書としたりという光景は90年代から今も続いているようです。私がみたものや人から聞いた話を総合すると、決められた日に「おじいさん」がやってきて、学校の責任者と世間話をしながら学校内をブラブラ歩き、応接室でお茶を飲んで帰る、というものです。年間予算が1億円規模の財団法人で一回10万の審査料ではこのへんが限界ということかもしれません。

 事業報告に日本語学校の審査、認定の結果が報告されていますが、直近の2006(H18)~2015(H27)年では、新規校の審査(132校)は申請したところはすべて通っていて、通常の審査(713校)では認定されなかったのが6校でしたが、結果認定取り消しは0なので、これも、すべて通ってます。

 法務省の新基準の前も20年以上、基準があったわけですが、専任教師の比率などは20年以上ほとんど守られてきませんでした。現在も同じです。

 最大の業界団体である日本語教育振興協会の年間の予算は約1億。ほぼすべてが人件費、定期イベントなど組織の維持に使われるようで、個別の調査にかけられる予算はどうみてもありません(学校の審査は別途10万円の審査料を支払うことになっている)。
日本語教育振興協会の収支
http://www.nisshinkyo.org/article/index.html

 財務状況のチェックは、ルールを厳しくして、お金をかければ、もうちょっとやれるかもしれません。また、寮や施設のチェックはネットを利用して合理化はできるかもしれません。例えば事前に動画で学校と寮の動画を提出、学校と寮のWiFiひくのを義務化して、年に1,2度、抜き打ちで担当者にライブで中継してもらう、みたいな…。それでもすべての学校が加盟している組織がきちんとした予算をつけてやらないと無理ですが。。。

2)では、全国日本語学校連合会は?

加盟校は145校で大きくなっています。基本的には、政府に陳情するためのロビー団体という印象です。賛助団体が多く、設立時には、大物代議士に何度もあいさつをした、などと書かれていて、近況でも、いろいろな申し入れをした、というようなことが代表者らしき人(?)のコラムで伝えられています。組織の在り方に関しては、政財界への人脈が豊富な代表者の意向が強く反映しているようで、政治力で勝負という組織っぽいです。特にコラムには力が入っており、2016年、神武天皇からはじまる留学生のための物語日本史の連載が突然始まりました。

しかし、日本語学校こうあるべき、というような抽象的な倫理規定は定款にあるのですが、数少ない具体的な数字がある「専任教員のST比40」や「非常勤は最低賃金の2倍」などは、加盟校にまったく守られていませんし、検証もされた形跡がありません。日本語学校のための具体的な数値を示したガイドラインはないし、審査やチェックをしているという記述はサイト上にまったくありませんし、2016年にJaLSA役員の加盟校の経営者が逮捕されても、コメントもありませんでした。日振協のように形だけでも審査をするということはなさそうです。

 日本語学校の定員充足率や専任の比率(3割以上。2017年からはST比で40以下)を示した一覧です。専任の比率が40以下の学校は、30%前後。どちらかというと、日振協加盟校よりJaLSAのほうが数値が悪いです。
https://goo.gl/nDT4il

 


 

業界団体に日本語学校の管理、監視を期待するのは無理

日振協の理事(元法務相入国管理局長、国際研修協力機構の出入国部長)は2016年冬のインタビューで、日振協に所属しない学校が問題をおこしているという趣旨の発言をされていましたが、2016年、新聞で報道された不祥事の日本語学校4校のうち、2校は日振協の加盟校(この文書の報道の記事の学校も加盟校)。1校はJaLSAの役員の学校でした。両団体は、今では加盟校の数を競っている空気もありますから、加盟するためのハードルは下がることはあっても上がることはないのではと思われます。また、昨今は、どちらにも加盟していない学校も増えています。比較的新しく規模が大きい、これまでと違う業界からの参入の学校が多いようです。これらの学校も当然何もチェックがされないわけです。

今年、サイト上で不祥事を起こした学校に関してそれぞれ所属する業界団体からのコメントはありませんでしたし、これまで、何十年もの間、この種の事件の際にコメントがあったことは記憶している限りではありません。そもそも管理責任はない、もしくは下手にリアクションをすると責任を認めた形になるのでやらない、という考えがあるのかもしれません。

 

入管の体制

入国管理局
http://www.immi-moj.go.jp/

この平成25年のデータによると、不法就労の摘発に従事する職員はわずか1500人前後です。

元ファイル(PDF)
http://www.moj.go.jp/content/000110204.pdf

失踪者が1万人以上いて、技能実習生だけで現在20万超、今後50万になろうかという状況で、日本語学校の5万人以上の学生、現状500校(どんどん増え続けている)の日本語学校のバイトや寮までウォッチして監視してくれ、というのは、無理なのではと思います。

 

職員や日本語教師が通報できる窓口を作る

→ 日本語学校は零細企業なので、匿名でフォームで通報でき、通報を受けて動く場合も慎重にという手順が確保されることが重要です。でないとすぐに「犯人捜し」が始まってしまいます。悪質な学校はどういうところと結びついているかわかりませんから、危険なことが起きる可能性も高い。窓口は入管など公的組織が理想的です。簡単な通報のためのガイドラインが必要だと思われます。寮や学生の様子がオカシイぐらいから始まって、明らかな不正行為まで、自由にポストできるようにしておく。通報者の匿名性を必ず守る。そこから先は、情報の濃淡で総合判断ということで。

→ 仮に日本語教育振興協会やJaLSAなどの組織が通報の窓口を作ったとしても、これらは日本語学校の経営者が作った組織です。役員も経営者です。2016年は役員の学校が摘発されましたが、コメントもなくスルー、加盟も継続ということがありました。役員の学校に関する問題がきちんと処理される保証はありません。通報があっても、職員や日本語教師より経営者の利益を優先するのではないか?という疑問は残ります。やはり入管などの公的機関が作るべきだと思われます。技能実習生では新しい管理機関ができ、そこに入管の職員も出向するそうです。そこでもいいですし、日本語学校も全国に500以上あるわけなので、ひとつくらいは専用の窓口を作ってもいいのではと思います。

*入国管理局には情報を受ける窓口があります。

総合窓口
http://www.immi-moj.go.jp/zyouhou/index.html

各地域の入管の連絡先
http://www.immi-moj.go.jp/soshiki/index.html

 入国管理局の職員数は4000人弱で、そのうち入国審査に関わる入国審査官が約2000人、不法滞在などの摘発をする入国警備官が約1500人です。捜査対象が日本中にわたることを考えるとかなり少ないです。

 

介護ビザという新たなルート

従来、介護はEPAというフィリピン、ベトナム、インドネシアの三カ国との協定による入国だけでしたが、2008年スタートで約2000人、2015年は約500人と増えてきたものの、足りないということで、「技能実習生枠」と「介護ビザ」というルートが出来ました。このうち介護ルートは、まず日本語学校に留学ビザで来日し、その後介護系の大学か専門学校に進学後に介護福祉士の資格を取得し、その後、5年間働ける、というものです。

日本語学校にとっては、大規模な学生募集の機会なので、あれこれと始まっているようです。ですが、現状、スキマだらけなのに、この介護ルートはさらに大きなスキマができる可能性もあります。またいろいろと決まってないことも多く、始まってみないとわからないので、これは別枠で「学習ノート」としていろいろと情報を収集しながら掲載を続けていくことにしました。そちらをご覧ください。

介護ビザに関する学習ノート
http://webjapanese.com/blog/j/kaigo/

 


 

 

さいごに

最初にご紹介したこの2016年の一連の事件

https://archive.is/r0cIG 
https://archive.is/iquCK
https://archive.is/anjwU

に戻ります。

日本語教育関係者による「一部の学校がやっていること」は不祥事があるたびに90年代から繰り返されてきた言葉ですが、一部の学校を見分ける術も基準もそれを監視する体制も業界内にはありません。今年新聞沙汰になった日本語学校は直前まで業界組織に所属しており、普通に求人を行っていた普通の学校でした。突然の新聞報道で多くの人々と共に日本語教師は知るところとなったわけです。

学生が住むアパートの家賃を実際の3倍、4倍徴収していた。学費はバイトを紹介して返済させるようになっていた。バイト先を紹介する斡旋料として時給からかなりの額を抜き自ら経営する斡旋会社の利益にしていた、というのはひどい話ですが、今の日本語学校の実態とまったくかけ離れたものではありません。結局28時間以上働かせた、くらいのことで終わるのではないでしょうか。

ニュースをみて、「もしかしたらウチの学校もやってるかも…」と感じた日本語教師は多いはずです。そして、良心的な日本語教師ならば、たとえ学生数が減り、仕事の席が減ったとしても、きちんと日本語を勉強して進学したいという人を教えたいと考えているはずです。日本語学校業界がこういう雰囲気になってしまったのは、明らかにここ5年くらいのことです。そこ(2010年)に戻って、留学生就学生の仕分けから考え直すしかないのではないでしょうか?

 

 

この記事について

私どもは、東京を中心にプライベートレッスンを請け負う日本語教師のグループで、現在は日本語関連の出版を中心に活動しています。1997年から日本語学習者向けサイト(このブログがあるサイトのことです)を運営していて、ずっと学習者向けにウェブ教材なども作ってきました。これまで多くの日本語教師と仕事をしてきました。この記事は、それらの話を参考にわかるかぎりのことを書いてみた、というものです。事実関係など間違いも多いと思います。

ずっとネットを軸に仕事をしてきたので、出版業界も日本語教育業界も、いわゆる関係者みたいな方々とは、お付き合いはありません。90年代から業界を一步外から観察してきました。特に、ここ数年、日本語学校の様子がおかしいという話は日本語教師の間でよく語られています。報道をみても、2016年に出来た日本語教育推進議員連盟の報告などをみても、そこはあまり伝わってないなと感じます。私は現場の人間ではありませんが、そのすき間を埋めるものをとりあえず書いてみようと考えました。

なるべく事情がわからない人にも読める記事にはしました。ただ「なるべく」です。私は、ライターでもブロガーでもないので、補足説明や意見交換などは期待しないでください。ブログの更新は年に数回あるかないかです。細かい対応はできません。この記事は、取材をする方々や議員連盟の参加者、などが、日本語教育に関して考える際の参考ページになればと書いたものです。間違いがあれば、修正&アップデートしながら掲載を続けていく予定です。間違いや修正すべき点のご指摘をコメント欄経由でいただければありがたいです。

ここに書いたことが、何かひとつでもヒントになればうれしいですし「私のほうがアイデアがある、上手く書ける」というような新たな書き手の出現の呼び水になればと思っています。最後に書いた提案も「どうすればいいのか」の選択肢のひとつに加えていただければうれしいです。また、他の記事も日本語教育にご関心がある方には読んでいただければいいなと考えています。

*ご指摘などはブログのフォームか、ツイッターのリプライでお願いします。間違いがあれば修正します。

by-nd
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