日本語教材いろいろ 1 総合教科書

| 1 総合教科書 | 2 副教材・目的別教材・辞書など | 3 教師用の本など | 4 一覧 |

「日本語教材いろいろ」について
・日本語教師のグループ(About us 参照)制作の日本語の教材紹介です。
・私どもはプライベートレッスン専門です。教師は自由に教材を選びます。
 教師は教室授業との兼業も多くこれまで多様な教材の感想、評価が飛び交ってきました。
・その中から教師、学習者に評価が高いものを中心にピックアップしました。
・地域や職場で日本語のクラスを作ろうかというような、日本語教育の
 知識がない方々にもなるべくわかるように書きました。
・値段、ページ数などは掲載時点のものです。目安程度にお考え下さい。

・レベルのN5は初心者という意味です。日本語能力試験のレベルの数字、N5-N1までです。
・基本Printableなものだけ、ウェブ教材などは Nihongo-eななどで調べてください。

・タイトルの教科書名や画像などからアマゾンの該当ページに飛びます。
 アマゾンへのリンクは同窓、他のリンクは原則別窓です。
 ちょいちょい更新します。掲載すべき新たな教材があれば追加します。
 リンクはずれは月1でチェック。改訂したら内容はアップデートします。
 ブックマークして、教材を買う際にご利用ください。

・ お気づきの点あれば、ツイッターか、About usのフォームからお知らせください。

* スクロールダウンするとブラウザーの右下に現れる↑をクリックするとページの一番上に戻ります。

総合教科書編について

総合教科書というのは、読み書き話し聴く、ということが偏りがないよう配慮してある、ということが前提で、加えて、初級でいうと、初級段階で教えるべきとされるようなこと(人により多少の考え方の違いはありますが)をひととおり網羅してある教材、ということになるでしょうか。

中級は初級と比べると何を教えるべきかということは、かなり意見が分かれるところです。ひとつの指標として能力試験のN2,N1という方向があり、民間の日本語学校は、基本的に進学予備校的な色が濃いので、この能試的な枠組み(ざっくり言うと読み書き重視。マークシートで正解的な)で進んで行くようです。総合初級の続編の中級をそのまま使い続ける日本語学校はそれほど多くなく、それよりも試験対策となるようです。日本語の教材は国内の日本語学校の意向の影響下にあるので、進学志向の教材が多く、特に中級以降は年々バリエーションは減っているという印象です。今のところ、初級を終えて、能力試験、大学進学というゴールではない人にはコレ、というモノがなかなかありません。

日本語の教材を出している出版社は、ネットでほとんど教材の情報を提供してくれません。この学習者には、あるいはウチの職場の環境にはどんな教科書がむいているか、は、なかなか難しい問題で、「**向き!」と宣伝していたりそういうタイトルになっているかや、教科書が設定している主人公キャラ(留学で来た、とか日本で仕事をしているとか)や、場面(教科書によってそれほど違いはありません)が身近だから、ということよりも、本編内の会話例の口調が周囲で聞く会話に近い、なんとなく自然に感じる、みたいな感覚で選んだほうがいいかもしれません。

日本語学校でどんな教材が使われているかは、毎年政府が発行している日本語学校全調査という本にざっくりと各学校の使用教科書(の他、住所、連絡先、在籍者の国籍比率、事務、教務責任者名、特色、寮の有無、進学先、能試の合格者数なども)が書いてありますので、だいたいのシェアはわかります。この本は、図書館でも時々みかけます、学校を案内する必要がある場合は参考になるかもしれません。(あと日本語学校全調査で検索するとなぜかgooglebooksにファイルがあがってます)

*初級を終えて、初級をきっちり定着させる段階を初中級と呼んで重要視する考え方もあります。

 

初級

 


みんなの日本語

□ 値段:各2700円
□ ページ:249・247ページ
□ :25課・25課
□ 想定学習時間:150・150時間
□ レベル:N5~N3
□ 翻訳:英、仏、独、西、伊、露、ポルトガル、韓、中、タイ、インドネシア語の文法解説版あり
□ 備考:教室授業で圧倒的シェア(8割ぐらい?)

 

 課ごとに、それぞれ「あいさつ」「これをください」など学習テーマがある。1課は7,8ページ。教科書自体に人間関係の設定があり、それぞれ名前や職業が決まっていて、最初に紹介される。自己紹介からはじまり、設定された社会の中で少しづつ複雑な表現が必要な状況になるという形。特に主人公は決まっていないが、会社員が中心で、大人(20~30代)同士の会話が多い。

1)学ぶ文型と典型的な例文の紹介
2)会話
3)文型の練習いろいろ
4)応用問題(音声を聞きながら)いろいろ

という構成。

教科書の説明の時間数で単純に計算すると1課6時間で45分授業なら8コマで、導入例でも5~7コマとされているが、日本語学校などでは、3,4コマでやるところも多い模様。課によりけりだが、学習者の母語が同じで、文法語彙の翻訳解説版を使いながら教師が媒介語で補足可能なら3コマでもできるのかも。ただもっと早くやって、その後じっくり定着させていくという方法もあるとのこと。使い方いろいろ。

出版社による解説ページ:http://www.3anet.co.jp/ja/141/

Youtubeにも、いろんな人があげた授業、応用例の動画が:https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E

 

民間の日本語学校をはじめ世界で圧倒的なシェアを持つ定番教科書。1974年の「日本語の基礎」→「新・日本語の基礎」→「みんなの日本語」とタイトルが変わったが40年以上シェアトップ。「みん日」と呼ばれることもある。2分冊で計50課を300時間で終えることになっている。教室での授業を前提としており、一般の日本語学校では日に4時間、週5日20時間程度なので、15週で終えることになる。74年に経産省を中心に作られたという経緯を持つ。(経緯についてはここに少し書きました)

教室授業では、圧倒的なシェアなので情報が多く教師間のノウハウの交換でも事実上の標準として扱われている。ネットでも100万件単位でヒットする。ユーザーコミュニティが圧倒的なのが強み。教師用マニュアルの完成度が高く、関連教材が豊富。セットで買えば、他にあれこれ買う必要がない。文法解説本の翻訳版(英、仏、独、西、伊、露、ポルトガル、韓、中、タイ、インドネシア語)が充実してるのも大きなアドバンテージ。

教科書ごとに準備しなくても教材として揃えようとなった時、本冊と教師用指導書と音声ファイルは必須なので、これだけで小さな教室では大きな出費となり、他のワークブック的なものまで手が出ない可能性はある。他にもネット上にもいろいろと教師が作った教案や授業動画などがある。ショッピングモールの書店の本屋にも置いてある可能性が高い。

基本的に、日本語で日本語を教え、学習しましょうという考え方の教科書で、教室である程度の時間的な拘束をして、教師が教える、ということが前提となっている。学習者だけで自習する教科書ではない。予習復習は副教材などで教師が配慮しないと期待できない。最初から学習者はひらがな、カタカナを学ぶ。中級版までは用意されている。

文法をあれこれ説明するというより「文型」として文法事項を文の典型的な形として覚えて使いこなしながら定着させて進める、という80年代から日本語教育では主流の教え方をベースにしている。

 既習事項に「積み上げていく」という考え方で、基本、一日4時間、週5日のペースで学習する密度でガリガリやることを前提としているので、教室授業であっても時間数が少なかったり、間隔が空くケースやモチベーションがそれほど高くない学習者の場合はどうか?地域の教室や実習生、ビジネス関係者相手なら「まるごと」や「げんき」という選択肢も有力だと思われる。たとえ日本語教師が(慣れているし他の教師との連携もとりやすいからと)使いたがったとしても。

 音声は本冊についているのは一部(会話例と問題で音声が設問にからんでいるところ)だけでその他の音声(語彙、文型、例文、練習問題など)は、別売りのCDで提供。これが1と2が各8500円で合計17000円というのは、全日本語教材の中で突出して高い(今は教科書付属か無償でダウンロード)。おそらく教室で使うので、教室単位あるいは学校単位でひとつしか買わないだろう、ということがあるのだろうか?しかしそれだと個人まで確実に届かない可能性があるし、CDは残すとしても、音声は教科書の購入者には無償でダウンロードでいいのでは。

 日本語の教材の出版社のサポートに関しては、こちらにちょっと書きました。ここでは「みん日」に絞って書きます。
なぜか他の出版物にはある「立ち読み」が「みんなの日本語」には無く、中身のサンプルは提供されていない。また教師向け別サイトのみんなの日本語倶楽部は、基本、スリーエーのサイトの中のコンテンツに飛ぶだけ。日本語の教科書では、世界中でほぼ独占状態といってもいいのに、あくまでイチ出版物という程度の紹介ページのみ、SNS系のアカウントも皆無。後述する「大地」も「はじめよう」も同じ。ネットで何か提供しようという気はない様子。このままでは経産省が誇るサポートが厚いMade in Japan品質の威信に関わるのでは?

□ 関連本

教師用指導書(2分冊で表紙は旧版のまま)
みんなの日本語初級1 教え方の手引き
みんなの日本語初級〈2〉教え方の手引き
みんなの日本語初級I 第2版 CD5枚セット
みんなの日本語初級II 第2版 CD5枚セット
みんなの日本語 初級I 第2版 漢字練習帳
みんなの日本語 初級II 第2版 漢字練習帳
みんなの日本語 初級I 第2版 書いて覚える文型練習帳
みんなの日本語 初級II 第2版 漢字練習帳
みんなの日本語 初級I 第2版 標準問題集
みんなの日本語初級II第2版標準問題集

各言語版(これも2分冊。調べた時点でアマゾンで検索してあったものだけ)

みんなの日本語 初級I 第2版 翻訳・文法解説 英語版
みんなの日本語初級II 第2版 翻訳・文法解説 英語版
みんなの日本語 初級I 第2版 翻訳・文法解説 中国語版
みんなの日本語初級〈2〉翻訳・文法解説 中国語版
みんなの日本語初級I 第2版 翻訳・文法解説スペイン語版
みんなの日本語初級I 第2版 翻訳・文法解説ドイツ語版
みんなの日本語初級II 第2版 翻訳・文法解説 ドイツ語版

 


 

げんき GENKI

□ 値段:3780・3780円
□ ページ:384・386ページ
□ :12・11課
□ 想定学習時間:1課9時間、23課で合計200時間
□ レベル:N5~N3
□ 翻訳:本冊に英訳がある。
□ 備考

 2分冊。基本英語での説明の教科書で、自習も可能だと思われる。構成は会話文法と読み書きで分けてあり、Ⅰが1~12課、Ⅱが13~23課、合計23課で想定されている学習時間は200時間。英語での説明があり自習も可能。課のテーマは「忘れ物」「愚痴とうわさ話」といったように場面、状況設定に工夫がされている。

日本に留学に来たメアリーが主人公で、あとは周囲の友人や家族がいる、という設定。

まず会話・文法編があり

1)会話
2)会話の英訳
3)単語リスト(英訳)
4)文法の説明(英語による)
5)練習

という構成。次に読み書き編

1)その課に出てくる漢字のリスト
2)漢字の練習問題
3)短め、とやや長めの文章を読む練習
4)自由作文

テーマに関する補足的な英語のコラム、最後に使える表現の追加、整理などがある。ほぼすべての文に英訳があり、文法などの説明もすべて英語、原則日本語でしか進めない「みんなの日本語」とはまったく違うアプローチだが、文法の説明は従来の日本語教育的な解釈をベースにしているという印象。

 英語圏でシェアを伸ばしていて、かつてのJapanese for busy people に代わって英語圏の日本語教科書の定番となりつつある。個人相手に売れているという意味では多分トップ。北米では人気で有名大学でも利用されているとのこと。教師用指導書、ワークブック、がある。音声は教科書付属CDで提供。多言語化はされる様子はない。

げんきの内容は、サブドメイン(日英)で詳しく紹介されている。ゲーム的なアプリもある。
http://genki.japantimes.co.jp/
このページのリソースライブラリでは、教師用の素材(授業の素材、一覧など)が配布されている。
また、学習者向けにひらがなや漢字の練習などのクイズ的なウェブ素材がある。「げんきな自習室」では一部動画もある。

追記

2017年4月、げんきの新しい動画が公開されました。長くても90秒くらいでYoutubeアップというセオリー通りで、見やすく、アクセスしやすいものでした。

中身のサンプル:http://genki.japantimes.co.jp/about/about08

  一時期JapanesTimesの出版部門は日本語教育から撤退というニュースが流れたが、2010年に改訂もされており、今後も出版は継続されるもよう。新しい教科書のわりに構成、学習項目、説明などはオーソドックス。

□ 関連本

KANJI LOOK AND LEARN
→ 準拠ではないそうですが、セットで宣伝されている漢字教材。独立した漢字教材としてもすぐれている。

GENKI: [ Teacher’s Manual ](2nd Edition)
GENKI: Workbook I [Second Edition] 初級日本語 げんき ワークブック I [第2版]
GENKI: Workbook II [Second Edition] 初級日本語 げんき ワークブック II [第2版] [ペーパーバック]
GENKI: Picture Cards on CD-ROM I [Second Edition] 初級日本語 げんき げんきな絵カード I イラストデータ版 [第2版]
GENKI: Picture Cards on CD-ROM II [Second Edition] 初級日本語 げんき げんきな絵カード II イラストデータ版 [第2版]

GENKI: Answer Key [Second Edition] 初級日本語 げんき 解答 [第2版]
(本冊、ワークブックの設問の回答や原稿など。教師用指導書には別冊でついてくるとのこと。Webで配布でもいいのでは。。。)

 


 

まるごと 日本のことばと文化

□ 値段:各1800-2000円前後
□ ページ:各180~200ページ前後
□ :各9課
□ 想定学習時間:—
□ レベル:N5~N3
□ 翻訳:基本英語のみ。
□ 備考

 初級で理解編と活動編でワンセットで3分冊、合計6冊。教室用教科書としては多言語対応(にする予定?)でみんなの日本語に取って代わる教科書にしたいと、関係者の鼻息も荒いです。文の形の定着練習でも、音声の聴き取りとミックスさせたりといろいろと工夫が施されている。音声ファイルはネットで提供(要ユーザー登録)なのは画期的。今後音声はネット提供で希望者には実費でCD購入の道を作るというこのまるごと形式がスタンダードになってほしいところ。

「りかい」と「かつどう」は、同じ課の数でテーマも同じ。テーマを元に設定した場面でキーワード、表現を覚えて聴いたり話したりをやり場面ごとの課題を解決するというのが「かつどう」で、テーマ周辺の表現の説明、理解は読み書きも含め「りかい」でやるということになっている。「かつどう」をサバイバル教材として使ってもいいし、りかいを組み合わせれば総合初級教材として使えるというように考えることもできるし、「りかい」をメインの教科書にして「かつどう」は自作で済ますということも可能と思われる。自由度が高い初級のための「素材系教科書」というところか。

フルカラーで一課に数枚写真が使われているが比率としてはイラストのほうが多い。最初に6ページくらいこの教材の元々のコンセプトから使い方などの説明が英語と日本語である(合計12ページ)。他の教科書のように、主人公、周囲の環境、人間関係、というようなきっちりした設定はない。

りかい編

1)まずその課のタスク(これができるようになるというような目標)が日本語と英語で示される。
2)次に語彙、表現、漢字など必要な素材を練習しながら
3)会話例、重要な文法事項、練習が2セットぐらい
4)読解、作文系の設問

半分くらいで音声も使われている。また、かつどう編では、聴く練習が多く、単語、フレーズなどを駆使して状況を解決するという体裁になっている。教室で展開するための写真イラストや設問などがある。

 

 A4サイズ。他の総合教科書と違って、ワークブック的なものはウェブで無料で配布される(要登録)。語彙と文法説明も多言語化はされていない。教師用指導書の代わりに1課につき1ページ程度の「教え方のポイント」が交流基金のサイトで「教師用リソース」としてPDFで配布されている。ウェブでゲットできる副教材を揃えても、一般的な教室ではやや練習の絶対量が不足気味になりそうなので、何か別途問題集などが必要になるかもしれない。教師のやる気と工夫が問われる教科書。

 養成講座修了しましたというぐらいの経験の少ない教師にはサイトの指導のヒントだけでは難しいかもしれない。最初の使い方、巻末のポートフォリオも英語のみ。ローマ字もヘボン式で英語色が強い。多言語対応が待たれます(サイトは今のところ英語、西語対応なので予定はあると思いますが)。できれば準拠の辞書も作って欲しい。簡単なデジタル例文辞書でいいので。巻末の助詞の整理、初出の課に加えてページがほしい(電子化の際は内部リンクで)サクッと文脈確かめたいでしょうし。

 書名が覚えにくく(まるごとの後にスペース、日本と文化だけ漢字。でナンバーリングが絶望的にわかりにくい(入門A1りかい・かつどう→初級1A2りかい・かつどう→初級2A2りかい・かつどう)。書店に行っても、まず順番どおりに並んでません。日本語が上達すれば危険度(何の?生活の?まあともかく…)も下がっていく(赤→オレンジ→黄→緑)と覚えるしかないような気がします。でもこのオレンジと黄色の見分けがまた難しいんですが。。。

サポートなど

□ Youtubeのmarugotosupportというチャンネルに教科書の紹介動画が数本ある。

中身のサンプルはこちら: http://marugotonihongo.jp/introduction/

サポートサイトは4つあり、複雑。簡単に書きますと、、、

1)jfstandard.jp
:指導書的な各課の簡単なコンセプトが説明された教師用リソースがダウンロードできる。コンセプトの本格的な紹介(PDF文書が100近くある)

2)marugoto.org
:公式サイト。ただし中身はなく、他の3つのサイトに飛ぶポータル。

3)marugotonihongo.jp
:出版社(三修社)によるサポートサイト。音声ファイル配布などサポート的なサイト(日英)。教材のサンプルPDFや音声ファイル(要登録)がある。

4)marugotoweb.jp
:学習者向けのウェブ学習コンテンツのサイト。FlashなのでモバイルOSで動かないことに注意。

 

 


 

まるごと 日本のことばと文化 初中級 A2/B1

□ 値段:2376円
□ ページ:168ページ
□ :9
□ 想定学習時間:—
□ レベル:N4~N3
□ 翻訳:—
□ 備考

  A2/B1 というのもCEFR的な区割りと整合性のためのナンバーリングだと思われる。ここ以降は「りかい」「かつどう」は分けずに行きそう。今のところ、この初中級編まで刊行済。

 


 

日本語初級 大地

□ 値段:各2800円
□ ページ:195・187
□ :22・20
□ 想定学習時間:各100~120時間
□ レベル:N5~N3
□ 翻訳:文型説明は英語、中国語、韓国語がある。
□ 備考

 「みんなの日本語」のスリーエーネットワークが作った、留学生向けの、やや短期促成的な?、教科書とのこと。多少、「みん日」より実際に使われる場面に関連づけて作ったという意図は(ちょっとだけ)感じる。音声は付属CDにて提供。語彙訳のみインドネシア、タイ、ベトナム、繁体字、スペイン、ポルトガルは、無料でダウンロードできる。

最初に教科書全体で人間関係の図がある。このへんは「みん日」的な構成

1)会話例
2)会話の文の練習
3)設問、練習用の素材

ここまでは「みんなの日本語」とほぼ同じ。これに

4)自由会話用の素材

という構成。

説明はこちらのサイトに。「みんなの日本語」同様、イチ出版物の紹介ページ。
http://www.3anet.co.jp/ja/143/

中身のサンプルは:http://www.3anet.co.jp/ja/1802/
(みんなの日本語にはないサンプルが準備されている)

出版社にはお役立ちリンク集といのがあるが、かなり残念なカンジ:http://www.3anet.co.jp/ja/2156/

 「はじめよう」が「みん日」の、よりコミュニカティブな方向のバリエーションなら、この「大地」は「みん日」のライト版? ただ、いわゆる迷惑受け身はあったりして、単純なライト版ではない様子。(どこかにあるのかもしれないが)もう少し開発意図、コンセプトなどの説明がほしい。しかしたっぷりお金がかかっていて副教材なども豊富。書店でもみないし、正直、使っているという話を聞いたことがないけれど、ライト版の存在意義はあるように思います。今後の(ライト版としての)進化に期待(なにしろこんなにお金かけて総合教科書を作れるのはスリーエーくらいだと思うので)

 スリーエーネットワークは、「みんなの日本語」「大地」「はじめよう」の詳細な比較ページを作って欲しいところ。学習項目の比較一覧だけでなく、コンセプトの違いが知りたい。

関連本

日本語初級〈1〉大地―教師用ガイド「教え方」と「文型説明」
日本語初級〈2〉大地―教師用ガイド「教え方」と「文型説明」
日本語初級〈1〉大地―文型説明と翻訳 英語版
日本語初級〈2〉大地―文型説明と翻訳 英語版
日本語初級〈1〉大地 文型説明と翻訳 中国語版
日本語初級〈2〉大地―文型説明と翻訳 中国語版
日本語初級〈1〉大地 文型説明と翻訳 韓国語版
日本語初級〈2〉大地―文型説明と翻訳 韓国語版
日本語初級〈2〉大地 漢字学習帳―英語版

日本語初級〈1〉大地 基礎問題集
日本語初級〈2〉大地―基礎問題集
日本語初級1 大地 漢字学習帳 〈英語版〉
日本語初級〈2〉大地 漢字学習帳―英語版

 


 

できる日本語

□ 値段:各3672円
□ ページ:302,304
□ :15・15
□ 想定学習時間:それぞれ150時間?
□ レベル:N5~N4前半、N4後半~N3前半
□ 翻訳:基本日本語で場面説明などに英語、中国語、韓国語がある。
□ 備考

 場面ベースの構成だが各課ごとに「行動目標」がある。初級の項目を揃えてそれにプラスして初中級までをカバーした教科書。中級もあり。音声は付属CDで提供。語彙は英語・中国語・韓国語・ベトナム語が版元からダウンロードできる。(要メアド登録)

出版社による解説:http://www.alc.co.jp/jpn/article/dekirunihongo/
開発元(アクラス日本語研究所)には特設ページが:http://www.acras.jp/

中身のサンプルはこちら:http://www.alc.co.jp/jpn/article/dekirunihongo/look/

 できれば教科書名でドメインをとるなどして、サポートを一元化してほしいところ。アルクのページは率直に言ってサイトの設計、構造がダメなので見にくいし、アクラスではブログの記事をカテゴリーでまとめただけ。あと本冊は、ちょっと文字が見にくい。紙質かフォントの問題?

□ 関連本

わたしの文法ノート 初級 (できる日本語)
できる日本語 わたしの文法ノート 初中級
わたしのことばノート 初級 (できる日本語)
できる日本語 わたしのことばノート 初中級
漢字たまご 初級
漢字たまご 初中級
(「漢字たまご」は準拠の漢字教材)
できる日本語準拠 たのしい読みもの55 初級&初中級
できる日本語 初級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM
できる日本語 初中級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM

 


 

はじめよう日本語初級

□ 値段:各2600円
□ ページ:240・240
□ :12・10
□ 想定学習時間:150・150
□ レベル:N5~
□ 翻訳
□ 備考

 基本は「みんなの日本語」ベースのようですが、それを場面、話題(自己紹介、病院、道順、将来の夢、とオーソドックス)で組み替えて、コミュニケーションよりにした(「みんな」ではできない冒険をここで?)という印象。目次は英語と中国語、韓国語で本編は日本語のみ。会話例があり、続いて教室で教師が使う素材としてのイラストや設問がある。ワークブックが問題集として完成度が高く単独でも使える。執筆は民間の日本語学校、TIJ東京日本語研修所。音声は付属CDで提供。

出版社による解説ページ:http://www.3anet.co.jp/ja/144/

中身のサンプル:http://www.3anet.co.jp/ja/4502/

出版社のチャンネル配信の開発元(TIJ東京日本語研修所)による授業サンプル動画

関連本

改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級1授業の進め方
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級2授業の進め方
毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級〈1〉ドリルと文法
毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級〈2〉ドリルと文法
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト英語訳 English
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト中国語訳 中文
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リストベトナム語訳Tiếng Việt
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト韓国語訳한국어

語彙リストと指導書はkingle版がある。ただ、アマゾン上では紙とkindleで相互リンクが貼られていない。

改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級1授業の進め方〈デジタル版〉
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級2授業の進め方〈デジタル版〉

改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト英語訳 English〈デジタル版〉
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト中国語訳 中文〈デジタル版〉
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リストベトナム語訳〈デジタル版〉
改訂版 毎日使えてしっかり身につく はじめよう日本語初級語彙リスト韓国語訳〈デジタル版〉

 


 

中級

 

中級からは、民間の日本語学校は基本、大学への進学予備校なので、このへんから能力試験対策にシフトしますが、初級と違って総合教科書的なものだけではなくいろんな教材との組み合わせになるようです。
本来、語学学習では、中級あたりからは学習者のゴールによっていろんなバリエーションがあってもいいのですが、中級をうたう教材は総合とあっても読み書きに重きがおかれ、最終的には能試を意識したものになっているように思います。能試的な方向ではない、いろんなバリエーションの中級の教科書があってもいいと思います。

*90年代は会話重視の中級教材はそこそこありましたが、今はかなり減りました。初級に比べて学習者の絶対数が少ない中級は教科書の栄枯盛衰も激しいです。日本語学校で採用されなければ早々に消えるみたいなところがあるのかも。

 


 

テーマ別 中級から学ぶ日本語

□ 値段:2484円
□ ページ:156ページ
□ :—
□ 想定学習時間:—
□ レベル:N3~N2
□ 翻訳:日本語のみ
□ 備考:三訂版

 

 日本語学校では最もよく使われているのではという中級の総合教科書。20年以上前からの定番。2014年に改訂で、2014年の時点で累計31万部とのこと(中級教科書としてはかなり多いと思います)

1)単語、テーマの提示があり
2)長文
3)文型的な練習
4)まとめ

というような構成。総合教科書という体裁をとりつつも読み書き重視で、じわりと能力試験シフトで日本語学校ウケもいいのかな、という印象。これをとりあえずの軸として使いつつ、試験対策問題集なども入れつつ、そのまま同じシリーズの上級編(テーマ別 上級で学ぶ日本語)にというところも多いようです。能力試験のN1合格がゴールであるならひとつの選択肢ということかも。

出版社による紹介ページ:http://webshop.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-38465-4.html

中身のサンプルはPDFで提供:http://www.kenkyusha.co.jp/purec/images/mokuji/chukyu3-panph-hp.pdf

関連本

テーマ別 中級から学ぶ日本語 〈三訂版〉 ワークブック
テーマ別 中級から学ぶ日本語〈三訂版〉 教え方の手引き(教師用マニュアル)
テーマ別 中級から学ぶ日本語 〈三訂版〉 ワークブック CD ()

 改訂も最近行われたばかりだが、アマゾンでも出版社でも旧版が混在していてわかりにくい。本編の音声ファイルは出版社のサイトから自由にMP3をダウンロードできる。iTunes経由でも。ただ、ワークブックのCD別売りで4500円は。。。

 


 

みんなの日本語 中級

□ 値段:各2800・2500円
□ ページ:203・247ページ
□ :12・12課
□ 想定学習時間:各100~150時間
□ レベル:N3~N2
□ 翻訳:英、仏、独、西、伊、露、ポルトガル、韓、中、タイ、インドネシアの文法解説版あり
□ 備考

 みんなの日本語の中級版。中級用教科書としては後発で、中級からは学習者のゴール設定によって変わってくるため、この中級版を使っているところは初級版に比べるとかなり少ない様子。能力試験なら試験対策に、会話重視なら会話を軸にした教科書に移行するということか。ただ、多言語対応がある中級の教科書は貴重。

出版社による説明ページはこちら:http://www.3anet.co.jp/ja/142/

中身のサンプル:http://www.3anet.co.jp/ja/1784/

関連本

みんなの日本語 中級〈1〉教え方の手引き
みんなの日本語 中級II 教え方の手引き
みんなの日本語中級I標準問題集
みんなの日本語中級I くり返して覚える単語帳

翻訳版(アマゾンの在庫に限って言えば翻訳版は中級のほうが充実している)

みんなの日本語 中級〈1〉翻訳・文法解説 英語版
みんなの日本語中級II 翻訳・文法解説 英語版
みんなの日本語 中級〈1〉翻訳・文法解説 中国語版
みんなの日本語中級II 翻訳・文法解説 中国語版
みんなの日本語 中級I 翻訳・文法解説 ベトナム語版
みんなの日本語 中級〈1〉翻訳・文法解説 フランス語版
みんなの日本語中級2 翻訳・文法解説 フランス語版
みんなの日本語 中級〈1〉翻訳・文法解説 ドイツ語版
みんなの日本語中級〈2〉翻訳・文法解説―ドイツ語版
みんなの日本語中級II 翻訳・文法解説 ポルトガル語版
みんなの日本語 中級〈1〉翻訳・文法解説 韓国語版
みんなの日本語中級II翻訳・文法解説 スペイン語版

 


 

できる日本語 中級

□ 値段:3672円
□ ページ:320
□ :20課
□ 想定学習時間
□ レベル:N3後半からN2
□ 翻訳:なし。
□ 備考

 中級版。音声は付属CDで提供。語彙は英語・中国語・韓国語・ベトナム語が版元からダウンロードできる。(要メアド登録)

出版社による解説ページ
http://www.alc.co.jp/book/7008004/ 
http://www.alc.co.jp/jpn/article/dekirunihongo/

中身のサンプルはPDFで提供:http://www.alc.co.jp/book/img/7008004.pdf

制作した法人によるシラバス公開
http://www.acras.jp/?p=1055

 サポートサイトを!

 


 

中級日本語文法要点整理ポイント20

□ 値段:2000円
□ ページ:296ページ
□ 
□ 想定学習時間
□ レベル
□ 翻訳:本編に英中韓で補足あり
□ 備考

 教科書として進めていくという教材というより、中級の表現がまとめて整理してあるという本。既習事項の再整理に。整理がわかりやすく学習者にも評判がよかった。

出版社による紹介ページ:http://www.3anet.co.jp/ja/1278/

中身のサンプル:http://www.3anet.co.jp/ja/1845/

 


 

その他まとめて

初級

初級の総合教科書は他にも文化初級日本語は、関連教材もそれなりに豊富で、初級 日本語
と共に長く使われていますが、ここでは、扱いませんでした。ノウハウの蓄積がある「みんなの日本語」や新しいコンセプトで作られている「げんき」や「まるごと」ではなく「コレを使う」という積極的な理由が見いだせませんでした。(「一覧」にはリンクあります)

Japanese for busy peopleも、かつて英語圏の自習もできる教科書として定番でした。3分冊で、想定されている学習時間は合計300時間で他の教科書とほぼ同じか長めで、実は、busy people向けというカンジではありません。欧州ではまだ人気がありますが、20年以上基本的な構成が変わらないJBPより、今なら新たな構成、考え方で作られた「げんき」を選ぶのが自然じゃないでしょうか。

中級

90年代にいくつかあった中級の総合教科書は、姿を消しつつあります。これも日本語学校で初級を終えた後に総合教科書を続けることが少なく、基本、能力試験に一直線になること、同じく初級を終えて能試に興味がない学習者は会話重視にシフトすることが影響しているように思います。大学が中級の総合教科書を作っていたという印象があるんですが、教科書ではなくオリジナルな教材や方法でやることにしたんでしょうか。中級を総合教科書でやるべきかは議論が分かれるところかもしれません。

今のところ、総合教科書としては多分一番売れている「テーマ別 中級から学ぶ日本語 」があり、これに「みん日」の中級と「できる日本語」の中級、おそらくこれから作られるであろう(?)「まるごと」の中級がある。後は、能力試験のための整理的な方向のものが多く(それらは別ページの「副教材・目的別教材・辞書など」で紹介しています)ここであげた「中級日本語文法要点整理ポイント20」はその整理と総合教科書的の中間くらいの存在かなと思います。

その他、日本語学校で使われている教科書としては、ニューアプローチ中級日本語[基礎編] 改訂版のシリーズがあり、個人向けでは、わかって使える日本語―中級レベルなども使われたりしています。

短期促成的な教科書は、別ページの「副教材・目的別教材・辞書など」で項目を作っていくつかピックアップします。

他にもまだあるのですが、今のところは、無理に探さなくても、ここでピックアップしたお金を時間をかけて作られた教科書の中からとりあえず選んで、後は教える際に工夫して学習者のニーズにあうように調整すればいいのでは、という気がします。「**向け!」と書かれた教科書が向いているとは限りませんし、それより教科書としての完成度のほうが大事なので。

 


 

日本語の初級教材概観

 

ざっくりと

学校で使うような総合初級教材は、ほぼ国内の出版社で独占しているはずです。つまりこのページにある教科書が世界の日本語学習者のほとんどをカバーしている。良くも悪くも、このページにある教科書が日本語教育の最前線です。

一般的に語学の教科書は、教室で授業をするためのものと、自習も可能なものに分かれます。もうひとつの軸は、ゴール設定です。だいたい初級で学ぶべきものとされているものをカバーしようという総合教科書と学習時間がとれないなどの事情を考慮して日常会話で役に立つようなものを中心に構成されたサバイバル系教科書に分けることができます。いろいろ比較軸はありますが、ひとまずこれでマッピングしてみると。。。

教科書

他のサバイバル系、自習向きの教材は英語圏向けに限れば数点あるのですが、ここは広く一般学習者向けということなので入れませんでした。日本語の教材は自習可能なものがほとんどなく「教室で」「教師が教える」ものにかなり偏っています。(海外の出版社、特に英語圏の日本語学習教材はこの左下をターゲットにしたものが多いです。自習できてサバイバル的なもの、能力試験はスルーして会話に特化したもの、などなどです。(「NEJ」と「これだけ」は、副教材のページに掲載しています。)

また、ほとんどの日本語学校(基本的には国内の民間日本語学校は大学や専門学校に入るための予備校的要素が強い)で、中級以降は能力試験のN1(最上級)対策重視となってしまい、語学学習で本来あるべき中級以降の多様なニーズ、に対応しきれていないのも、日本語教材の問題点です。「やっぱり売れるのは初級だから」「能試関連以外はもう…」という声をよく聞きます。

 


 

教室で使われる初級総合教科書は「みんなの日本語」が圧倒的なシェア(ハッキリしませんが世界の日本語クラスで8割以上?)を持っているため、多言語対応と副教材の制作、教師用指導書、海外での販売網などが必須の「教室で使われる総合教科書」というジャンルに挑戦するところは少なく、今のところ対抗できるのは、多言語化はされていませんが、公的補助で作られる国際交流基金の「まるごと」ぐらいだと思います。

かつてそこそこシェアがあり評判のよかった教科書(例えば英語圏学習者の定番だったAn Introduction to Modern Japaneseとか日米会話学院の初級からビジネスパーソン対象で教えるという個性的な日本語でビジネス会話(リンク先は中級編。初級編見当たらず)とか、早稲田のTOTAL JAPANESEとか)も改訂されなくなったまま本屋でみることはなくなりました。

ここでピックアップした教科書では「大地」「はじめよう日本語初級」が最初からワークブック、指導書、多言語で出せていて、継続できるというのも「みんなの日本語」を有するスリーエーネットワークだから、ということかもしれません。

初級で、今後も改訂しながら継続されそうな教科書は「みん日」と、公的な資金で作られている国際交流基金の「まるごと」。英語圏でベストセラーの「げんき」ぐらいかもしれません。その他はどうなるかわかりません。

「げんき」の台頭で、英語圏では長年ベストセラーだったJapanese for busy poepleはそろそろ役割を終えるかもしれません。JBPはアマゾンでも旧版新版入り乱れて混乱状態。制作のAJALT(国際日本語普及協会)は文科省など国内で政府の委託を受けることが多い公益社団法人ですが技能実習生向けの教材作りでもいろいろと疑問が残りますし、別ページで紹介しているJapanaese for young peopleも音声は今だにカセットで提供です。

近い将来、AJALTに代わる、国の委託で技能実習生や児童用の日本語教科書を作る新しい組織が、若い日本語教育の研究者を中心に作られることを願ってます。

コミュニカティブ?

今、売っている初級の日本語の教科書は、どれも「よりリアルなコミュニケーションを想定した」的な宣伝文句がおどります。つまり、これまではそうでなかった、という日本語の教え方の流れがあったということです。

特に2000年代になってからは大学などで日本語教育を研究している人達の間でも「もうこれまでの初級の定義そのものから洗い直すべき」ということになっているのですが、それに本格的に対応しようという教科書はそれほど多くありません。長く続く総合教科書は、どれも2000年以降、大幅な改訂をしているのですが、改訂の度合いもかなり違います。

どこで買えるのか

日本語の教科書は、国内のリアル書店でひととおり揃っているのは、麹町の凡人社、神保町のそうがく社ぐらいです。(ただネット上のストアは残念ながら、どちらも一見さんお断り、関係者が知ってる教科書を追加注文するためにある、いうカンジです)

地方の大都市ではジュンク堂や紀伊國屋があり、そこそこ日本語の教材はあるのですが、日本語の教材コーナーは多いところで棚1m×4段くらい。このページで紹介した教科書が全部揃うことはありません。その他の地方ではリアル書店はツタヤ(「ほぼ無い」と言ってもいい)かモールの書店ぐらいです。棚は1m×2段あればいいほう。1段が日本語能力試験と日本語教育能力検定試験(日本語教師になるための試験)。「みん日」関係が1段の半分。残りを他の教科書と漢字、で終わりです。

というわけで日本語の教材を買うのは、実質的にはアマゾンの一択かなと思います。書店が減る中、出版物のサイト上の本の紹介はかなり重要になってきているのですが、日本語関連の教材を作る主要な出版社は、アマゾンの紹介以上のものはなく、サンプルを作らずアマゾンのなか見検索にも未対応なことが多いので、もう地方では、中身を見ることすらできません。(教材の中身を見ずに買うのはギャンブルすぎます。どうすればいいんでしょう?)

また、残念なことに、日本語の教材の出版社は基本的にアマゾンに商品を置くことに対して積極的ではありません。在庫無しが多く、古い版が混在していて探しにくい。海外のアマゾンでは、超メジャーな教科書がかろうじて置いてあるだけです。在庫切れも多い。当然ながら、学習者のほとんどは海外にいるのですが。。。

海外で学習者が日本の出版社の日本語教材を購入するのが難しいのは、大きな課題です。日本の出版社の日本語教材で、海外のアマゾンで買え、売れているのは、Japanese for busy peopleとげんき、くらいです。2010年代に入って「まるごと」が買えるようになりましたが、「まるごと」はそもそも自習は難しいので個人の購入はあまり期待できません。教室授業偏重で個人相手の教材開発が遅れていることで、海外のアマゾンで個人相手に勝負できる教材が少ないのです。海外の出版社の日本語教材は本格的なものは少しあるのですが、かなり古く値段も高いものばかりです。

みんなの日本語」「できる日本語」は、一応、置いてはいるけれども、みん日は、本の紹介文はツイッター並み。「できる」は紹介文すら載せていないし、どう検索しても初級の1がやっとで、2が出てこない。本気で海外のネットストアで個人相手に売る意欲はなさそうです。レビューも全然ついてません。
参考までに、米アマゾン英アマゾンの日本語テキストジャンルのランキングです。

 日本語の教材を出している出版社のウェブ活用の問題点についてはここに少し書きました。

誰が買っているのか?

これが結構重要なことで、国内外で、政府系の組織に教材などの打診があったりして決まることも多いようです。国内関係はAJALT(文科省、文化庁関連)が難民や技能実習生を請け負い、最近でも技能研修生向け教材を作ったりしています。海外は、子供用ならAJALTの Japanese for young people、どこを経由してどこに打診があるかによって、HIDA(経産省)系の「みんなの日本語」、か、国際交流基金(外務省)の「まるごと」、というカンジです。

民間の日本語学校では、ほぼ「みんなの日本語」です。教師用指導書もよく出来ていて、90年代以降、養成講座もこの教科書で授業をする前提でやっているようなところもあり、事実上のデファクトスタンダード。非常勤講師が7割程度で教師の出入りも激しい学校側としても、違う教科書を使うとかオリジナルの教科書を開発して使うより都合がいい、ということがあるようです。

つまり、日本語の教材(特に教室で使う初級の教科書)のほとんどは、政府の関係機関が作ったものを、法人や政府機関、民間の日本語学校のグループが「採用している」というカンジです。これは多分、ここ30年くらい同じです。

教科書はどうやって選ぶべきか

ボランティア教室や自治体や企業で日本語のクラスをやろうかとなった時、クラスの運営責任者が、教科書を選ぶ時が来るかもしれません。地方自治体の助成の対象はまちまちですが、教師分の教科書代までは出ることが多いようですから、この教科書の選定でクラスの性格が決まる可能性があります。

日本語教師に決めさせると「みんなの日本語」を使いたがるかもしれません。使い慣れてますから。でも、他の教科書もみて比較して考えてみて下さい。せっかく選べるんですから。

ただ、前述のように、教科書の出版社によるサポートページは基本、日本語教師向けに書かれています。業界用語も多いです。ただ、今後何年も使うことになる教科書なので、できれば、候補になりそうなものを数冊買ってみて、あるいはサンプルをプリントアウトして、じっくり読んでみて下さい。そして、それを知り合いの日本語教師にみせて(「みんなの日本語」以外ちゃんと読んだこと無い教師は多いはずです)「どれが私達の対象の学習者に合ってるだろうか?」と相談してみてください。10年くらい経験がある教師なら答えられるはずです。教材選びに関心がなく「みんなの日本語しか知らない」あるいは「みんなの日本語でいいんじゃないの」という教師は疑問です。「みんなの日本語」がダメというわけじゃないんですが。

今後、教材は出るのか?

こちらにも書きましたが、日本語学習者は客観的にみるかぎりではここ15年で減り続けています。特に個人の学習者は減り、その減ったところを東南アジアの国々などで政策として学校で決められた必須科目として勉強する人の数が増えたことで補っていて、見た目の数は横ばいか微減に「見える」というのが、私の見立てです。

個人で教材を買おうという層は元々少ないうえに減っている。教材は「購入」されるものではなく政府や学校単位で「採用」されるものでないと生き残れない傾向に拍車がかかっていると思います。

一方で、介護、看護、技能研修生などをターゲットにした教材は、今後、いくつか出るかもしれません。これまでと違う出版社が出したり、東南アジアに進出している日本語学校が新たな教材を開発して出版する可能性はあります。技能研修生やEPA関連で日本で生活する人が増えることも予想されていますから、これまでのように留学生中心ではない「生活するための日本語」を軸にした教材開発も少し動きがあります。今のところ、国として総合対策はなく自治体単位で対応することになっていますから、自治体で採用されることを想定して作られる日本語の教科書は増えるかもしれません。

電子化は

基本、海外で売る気はあまりないことは書きましたが、当然電子化にも積極的ではありません。
今、シェアをもっているところは、紙よりさらにローリターン(これは2011-14年に関しては私どもで調査済。米キンドルストアで年間1位でも年数百部のはずです)の電子化を進めるメリットはないかもしれません。特に教材は、kindleできっちり表示されるものを作るのは結構大変です。スリーエー、アルク、講談社はすでに電子書籍化の実績がありますが、元々個人相手であまり動かない業界ですから一般の出版社に電子化は、当分の間、厳しいのではという気がします。「まるごと」は予算はあるかもしれませんが、スリーエーネットワーク(「みんなの日本語」)とJapan times(「げんき」)が始めないことには、日本語の教材の電子化は進まないと思います。

* kindle化された教材に関しては「教師用の本など」にまとめました。

日本語教材の出版社のウェブサポートの課題は

こちらにまとめて書きました。

http://webjapanese.com/blog/j/nihongosupport/

 


 

LINEで送る
Share on reddit
Pocket

コメントは停止中です。