1998 / 08

 

08/02

2.3年前から電車の中で中国語を勉強している男性が増えた。
日本にとっても 中国は新しくて、魅力的(みりょくてき)な市場(しじょう)だ。

現在、日本では女性を中心に源氏物語(げんじものがたり)が流行している。
女性作家による新しい翻訳(ほんやく)が発表され、それを記念した展覧会にも
大勢の人が訪れたらしい。

男性は漢文(かんぶん)、女性は源氏、というのは、なんだか、江戸時代のようだ
もっとも、江戸初期には、源氏物語は、あまり上品な読み物とはされていなかったようで、源氏物語が 「教養(きょうよう)」として認められはじめたのは、江戸後期に入ってかららしい。
漢文のほうは、男性にとって、中世以前から、出世するには、必要な学問であった

150年前の日本語は、普通の人は読むのはとても難しい。文法や語彙(ごい)が難しいこと もあるが、源氏物語や、日本の古典文学、中国のいくつかの本は、読者は当然、知っているという前提(ぜんてい)で書かれているからだ。

 

1998 / 08

 

08/04

ここ二三日は、むし暑い日が続いている。

東京は、デパートや、コンビニエンスストアは冷房(れいぼう)が 強すぎて、長時間いられないことになっている。ランチメニューで人気のある店の椅子は、座りにくいものに なっているそうだ。

日本の会社の多くは12時から1時までお昼ご飯。会社の近くのレストランや食堂は、この1時間で 店の運命が決まる。少なくとも1時間のうちに3回は、お客さんの入れ替えがないと採算(さいさん)が合わない。

そこで、椅子は座りにくいものでなければならない。冷房も強くする。これは、最初に店に入った印象が強いからという理由もある。

食べたら、すぐに帰ってほしい。 もちろん、そういうことがなくても、日本人はせっかちだ。20分ほどでほとんど帰ってしまう。また、10分以内に注文したものがこないと、 「我慢できない」と考える人が多く、食堂を始める人は、まず、そのことに注意しなければならないそうだ。

短い時間に何度もおきゃくさんが、入ったり、出たりすることを「回転率(かいてんりつ)」といい、その 回転率の高さを競(きそ)う。

ところで、日本の会社は、会議が長いことで知られている。また、何かが決まるのが遅いことでも有名だ。

会議室の経営を、食堂に依託(いたく)するのはどうだろう。 固く、座りにくい椅子。会議が30分を過ぎると、急に冷房が強くなり、コーヒーを持ってくる秘書が 段々、不機嫌(ふきげん)になる。 会議が終わると、急に愛想がよくなり、「また、おこしください」なんて言うようにすれば、会議も短くなるかもしれない。

 

1998 / 08

 

08/05

今年は冷夏(れいか)だという発表があってから、その経済的なダメージを 心配する記事が増えた。
日本では、何かと経済効果(けいざいこうか)に結び付けて語られる。

まず、冷房(れいぼう)が売れない。海へ向かう観光客がへり、交通機関 (こうつうきかん)の収入が見込(みこ)めない。

いちばんの問題は、 「ビールが売れない」ことらしい。 居酒屋(いざかや)では、まず、最初にビールを注文することが多い。 国内には、有名なビール会社が3.4社あり、戦前から、ずっと大企業(だいきぎょう)だ。

私の知人もビール会社に勤めている。冷夏のときは、いつも、元気がない。

 

1998 / 08

 

08/06

私の祖母は広島に住んでいる。

広島に引っ越したのは、戦後のことで、 原子爆弾(げんしばくだん)に関しては、当然、記憶(きおく)がない。

昔、そのことを知らずに、「原子爆弾は大丈夫だったの?」と祖母に 聞いたが
「ようわからん(よくわからない)。戦争が終わってから、ずっとあとで知った。」と 言っていた。

日本では「唯一(ゆいいつ)の被爆国(ひばくこく)として」という表現は、 よく使われるが、フランスや中国、インド、パキスタンなどに、 「被爆国の国民として」なにかを言う気にはならない。

原子爆弾は、第二次世界大戦の終わりを告げた。
戦後は、もはや、 兵器(へいき)ではなくひとつの象徴となって、50年を越えて 機能(きのう)してきた。 生産コストも下がり、旧ソビエトの崩壊(ほうかい)による科学者の流出(りゅうしゅつ)で 昨今(さっこん)は、比較的、作りやすい兵器ということだ。威力(いりょく) も増した。 ただし、実効性(じっこうせい)には疑問符(ぎもんふ)がつくらしい。

第二次大戦後、核爆弾というのは「使われないこと」によって、その威力 を増してきたといえるだろう。 その意味では、使うことよりも、保有(ほゆう)したり
実験したりするほうが罪が 重いとも言える。
彼等は、広島や長崎の惨状(さんじょう)を、意識的に利用しているわけだから。

その意味で実験することと、保有することは等価値(とうかち)だ。核実験 を批判(ひはん)するならば、同じ視線を保有国に対しても向けなければ ならない。

「唯一の被爆国の国民」はそれができるだろうか? 
また、それをやってきただろうか?

 

1998 / 08

 

08/07

夏の果物(くだもの)と言えば、西瓜(すいか)だ。

ひとつ1500円くらい。 種を飛ばすのも楽しいらしい。 「らしい」というのは
私は西瓜が嫌いで、いつも、そのかわりに 葡萄(ぶどう)を食べていた。
時々、梨(なし)や桃(もも)の時もあった。

夏の果物には、階級(かいきゅう)がある。
西瓜の変わりにぶどうなら 大丈夫だ。他の子供も納得(なっとく)していた。 でも桃の時は、他の子供の嫉妬(しっと)を感じながら食べた。

西瓜といっしょに、私に出される桃の量も少なかった。 時々、李(すもも)も食べた。他の子供は、「李なら、仕方がない」 というような顔をしていた。
私は少し安心しながら食べた。

さて、クイズです。下のことばは、どんな意味でしょう? 答えは下。

「すもももももももものうち」


李も桃も桃の中。:李も桃も桃の仲間(なかま)だ。という意味。

 

1998 / 08

 

08/10

普段、我々が「静かだ」というとき、音がまったく聞こえない。という意味ではない。

夏ならば、蝉(せみ)の声がしなければならない。子供の遊び声も 「静かさ」を邪魔(じゃま)するものではない。もちろん川の音も。 つまりそれらの自然の音が聞こえる程に「静か」であることが大事なのであり、音は、静かさを味わうために欠かせないスパイスとなる。

大きな都市では、それは味わえない。特に東京では、どの店に入っても 趣味の悪い音楽が大音量(だいおんりょう)でかかっている。
スーパーでも、喫茶店(きっさてん)でも居酒屋(いざかや)でも同じ。

逃げるようにして、家に帰ると、必ず近くで、新しいアパートの工事を やっているのだ。

 

1998 / 08

 

08/11

東京の道路を走る車の70%はトラックだ。 そのほとんどが食物。魚や野菜、肉などを運んでいる。

また、宅配(たくはい)サービス も充実(じゅうじつ)していて、東京から北海道まで2日以内で届くのが 普通だ。 遅れることはほとんどない。

一度、台風で、飛行機が飛ばない時も、 わずか半日遅れて荷物はやってきた。
配達人は、「遅れてすみません」と言った。

 

1998 / 08

 

08/12

今年は、天気のよい日はあまり続かず、夕立ち(ゆうだち)が多い。

会社で働いている人は、予備(よび)の傘(かさ)を会社に置いている。 これを「置(お)き傘(がさ)」と呼び、「置き傘をする」という。 しかし、これをしない人もいる。なぜなら、雨が降ると、「ビニール傘」 という500円くらいの傘を売り出すからだ。

このビニール傘は、こわれやすく、すぐに錆(さ)びるので、何度も 使われることはない。 捨てるのも勿体(もったい)ないので、家には、多くのビニール傘が溜(た)まることになる。

調査(ちょうさ)した人はいないが、私は、すでに、日本の人口(じんこう) を越えたのではないかと、考えている。

 

1998 / 08

 

08/13

今は、お盆(ぼん)休み。会社も休みになり、東京は静かだ。

東京に住む人の半数以上は、地方から来た人なので、お盆は、 お墓参りのための宗教的な行事(ぎょうじ)というより、実家(じっか)に 帰ることが、主な目的だ。 これを、「里帰(さとがえ)りをする」とか「帰省する」という。

今ごろ、株価(かぶか)が下がったり、円が安くなったりしているニュースを 聞きながら、日本のサラリーマンは、子供の頃(ころ)に歩いた道などを 散歩しているかもしれない。

 

1998 / 08

 

08/14

日本人は、外国旅行へ行くと、饒舌(じょうぜつ)になる。

といっても英語が上手なのではなくて、レストランやホテルなどで
「けんじ!そっちいっちゃだめ!」とか
「みき!これみて、かわいー!」 などという声がよく聞かれる。

一方、国内では、静かにしなければならない場所がある。 エレベーターの中や、電車の中など、密閉(みっぺい)された空間(くうかん) では、まるで葬式(そうしき)のように静かだ。 時々、大声で話す人がいるが、あまり上品ではないと考えられている。

ただし、これも夕方の7時までで、お酒を飲むと、ガラリと変わる。 ほとんどのバーや居酒屋では、大きな音で音楽をかけているので、 遠慮することなく、大きな声を出せる。

おそらく、これも、大きな声で話すのは、下品だという考えが無意識の中にあり、あの うるさい音楽は、それをカムフラージュするための音のカーテンなのではないだろうか。

 

1998 / 08

 

08/18

日本は、南北(なんぼく)に長いので、いろいろと便利なことがある。
つまり、暑い地域のノウハウ(know how?)も寒い地域のノウハウも あるということだ。

暑い時は、暑いところ、すなわち、沖縄(おきなわ)料理がおいしい。

沖縄では、ぶた肉をよく使う。これは、九州全体でも同じだ。 また、沖縄では、寿命(じゅみょう)が長く、80才、90才になっても、 男女共に働いている人が多い。(女性のほうがよく働くそうだ)

また、沖縄の陶器(とうき)類もすばらしいし、音楽も面白い。

沖縄のこと、沖縄料理のことは、Yahooで「沖縄料理」と書いて、探してください。たくさんありますよ。

 

1998 / 08

 

08/19

宇野(うの)総理(そうり)は10年前、選挙(せんきょ)で負けた責任を とってやめた。総理だったのは、69日の短い期間(きかん)だった。 選挙に負けたのは、いろいろと理由があるが、直前(ちょくぜん)に 愛人と言われている人のインタビューが雑誌(ざっし)に載ったのが 大きかった。

戦後の一時期(いちじき)までは、日本人は、こうしたことに比較的 (ひかくてき)、寛容(かんよう)だった。 初代の総理である伊東博文(いとうひろぶみ)は、何人もの愛人がいたと 言われている。

アメリカでは、大統領(だいとうりょう)のスキャンダルにうんざり しているそうだが、日本でもこれはトップニュースで、伝えられている。

ところで、宇野氏とクリントンさんには、「2つめの」共通点(きょうつうてん)を御存じだろうか。

両者とも楽器(がっき)ができるということだ。 宇野氏は、ピアノ。ただし、リズム感は最悪(さいあく)。 クリントンさんは、テナーサックス。リズム感はまあまあだが、フレーズの バリエーションが少ない。音も迫力(はくりょく)に欠ける

つまり、両者とも音楽の才能(さいのう)はない。
もちろん、音楽の才能は、政治家には必要ないのだが。

 

1998 / 08

 

08/20

日本で最も人気があるスポーツは野球(やきゅう)だ。

今は、高校生の野球の全国大会(ぜんこく たいかい)が行われている。
これはテレビで全国に中継(ちゅうけい)され、非常に人気がある。

テレビで中継されるので、私立(しりつ)の高校にとっては、よい 宣伝(せんでん)になる。 宗教団体は競って高校を作り、全国からよい選手を集め、強いチームを作る。

もちろん、ユニフォームには、高校の名前が大きく書いてある。

 

1998 / 08

 

08/24

8月後半になると、「残暑(ざんしょ)」という。
これは、「残った暑さ」という意味。

電話で話した後、すぐに切ると、「残心(ざんしん)がない」ということがある。

これは、話しが終わって、すぐ電話を切るのは、ちょっと失礼だということで、 話しが終わりかけたら、そろそろ終わりますという、雰囲気(ふんいき) を相手に伝えなければならないということ。

具体的(ぐたいてき)に言うと、少し、話すスピードが遅くなる。 話しが途切(とぎ)れるようにする。 それから、また、電話するか、会うことを確認する。
それから、「電話を終わるのは残念ですが....」という口調で
「それでは、失礼いたします」とか「ごめんください」と言って切る。

最後のセリフを言う前に、「あっ、すみません、子供が...」などとうそを付く
人もいる。

最後にこれが大事。「電話はこちらから切らない。相手が切った音を 聞いてから、切る」のがよいマナーと言われている。

このルールを両者が知っている場合は、どうするか?

そう、だから、電話を終えるのは、難しいのだ。

 

1998 / 08

 

08/25

夏は冷奴(ひややっこ)がおいしい。

例えば幸運(こううん)なことに近所に多くの豆腐屋(とうふや)があるとすると。。。

豆腐を買ってくる。通(つう)は木綿(もめん)。 生姜(しょうが)を、おろして、鰹節(かつおぶし)を削(けず)る。 それらを豆腐の上にかけて、しょうゆをかける。 好きな人は葱(ねぎ)も刻(きざ)む。

これだけ。 豆腐はいろんな料理があるが、これがいちばんおいしい。 また、これは、豆腐も鰹節も、しょうゆも、いいものでないとダメ。

現在、世界中に日本料理店があるが、これがまずいところはダメ。 日本料理店の真価(しんか)が問われる料理だ。 近所の日本料理店で「ひややっこ、できる?」と聞いてみよう。

 

1998 / 08

 

08/27

今日は、朝から大雨。時々、かみなりも鳴(な)っている。

笠智衆(りゅう ちしゅう)著(ちょ)『俳優(はいゆう)になろうか』 によると、日本の名監督(かんとく)、清水宏(ひろし)の 戦前のロケ(ロケーション)はリヤカーにカメラを積(つ)んで、ムシロを 抱(かか)えてトコトコ歩くといったやり方だったらしい。

戦前や戦争中に日本の映画監督が何をしていたか、というのは、 興味深(きょうみぶか)い。小津安二郎監督は、シンガポールで イギリスの捕虜(ほりょ)になって、施設(しせつ)の中でオーソンウエルズ の新作を見たりしている。

笠智衆さんは、日本を代表する俳優で、亡くなる前に、ドイツ人監督のベンダースの 「Tokyo-ga」に出演(しゅつえん)している。 もちろん、小津安二郎監督の作品にはほとんど出演している。

 

1998 / 08

 

08/28

東京では、アパートが多い町には、必ず銭湯(せんとう)がある。
値段は現在一回385円。タオルや石鹸(せっけん)、シャンプーなどは 売ってもいるが、普通は自分で持っていく。

現在、風呂(ふろ)やシャワーがないアパートは少なくなったが、 東京でシャワー、風呂が付いたアパートは7万円。ないアパートは3万円 なので、まだ需要(じゅよう)はある。 学生が多い街にはたいていある。

一般的には銭湯には若い人は少なく、老人が多い。
「今日は、ずいぶん早いね」
「孫といっしょにディズニーランド行って、疲れた」 という会話が聞ける。

私の近所の銭湯には日本の詩人(しじん)が書いた詩の一節(いっせつ) が貼
(は)ってある。

「銭湯すたれば、人情(にんじょう)すたる」

「すたる」というのは、人気がなくなる。少なくなる。無くなる。という意味。 作者は、田村隆一(たむらりゅういち)。昨日、亡くなった。

 

1998 / 08

 

08/30

関東地方は大雨で、川が増水(ぞうすい)し、死者(ししゃ)もでた。 中国、韓国でも、同じような被害(ひがい)がでている。

日本の山林(さんりん)は、ほとんどが植林(しょくりん)で、そのため 自然が持つ保水力(ほすいりょく)が失われ、少しの雨でも、増水(ぞうすい)する ようになったと言われている。

いや、昔から、水害(すいがい)は多かったとの指摘(してき)もある。
古くは12世紀ごろから、水害の記述はあり、川の氾濫(はんらん)は 日常茶飯事
(にちじょうさはんじ)だったそうだ。

日本の国土は60%以上が山林で、小さな島国のわりには、川が多い。 私の子供のころも、川は子供が遊ぶ場所としては最高の場所だった。 親は、危険なので、いい顔をしないが、「危険」は子供のごちそうでもある。

今は、川で泳ぐことを禁止しているところが多いらしい。 そうとうな田舎でも大人が川の増水の予想(よそう)ができなくなったからだそうだ。 昔はそういうことに詳しい人が必ずいたものだが。

もっとも、子供も、川で遊ぶよりディズニーランドに行きたがるらしい。

 

1998 / 08

 

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