2001 / 02

 

2/1

町の図書館に行くと、必ず置いてあるのは旅行のガイドブックだ。
海外と国内が半分づつで、旅行記も多い。

最近、流行っているのは、写真が多いもので、最もページが割かれるのは
「味」つまり、美味しいレストランの案内だ。
特に国内のガイドブックで記述が 激減(げきげん)したのは歴史。
それには理由があって、史跡(しせき)を 訪ねる旅は流行らないからだ。
実際に有名な史跡などは、俗化(ぞくか) してしまって、蝋(ろう)人形 が置いてあり、カセットテープで説明が 流れたりするところも少なくない。

「観光地ずれしている」と言ったりもする。

残念ながら、古い町並みなどは、国の指定がないかぎり残すのは 難しいようだ。
木造住宅は、維持費(いじひ)もかかる。 茅葺(かやぶき)の屋根などは
手入れに年に最低でも100万円以上必要だそうだ。

ある街では、100年以上の建築物には補助金を出すことが決まったが
助成金(じょせいきん)は、年に2万円だそうだ。この補助金を受け取ると、すきま風がはいっても勝手に直すことはできない。
補助金を申し込む人はほとんどいないという。

一方、ベネチアやベルギーなど古い町並みを誇る街は、日本人の 観光客で
いっぱいだという話もある。

 

2001 / 02

 

2/2

男性と女性の会話

「長期予報、やっぱり、当たんなかったね」
「暖冬(だんとう)だったんでしょ? 本来なら」
「そうそう、こんなに雪が降るとは思わなかったよ」
「でも、そのわりには暖かいほうかも」
「そうかな? 暖かいとは言えないんじゃないの」
「そうね、寒くはないというところかな」
「ああ、綾乃(あやの)は、仙台(せんだい)出身だからこういうのは
 暖かいのかな」
「いや、仙台は、東京より少し寒いぐらいよ。仙台は東北っていっても、どっちつかず
 
なのよ」
「ああ、そうか氷点下(ひょうてんか)20度とかっていう世界じゃないもんね」
「そう、北海道の人なんかは、『今日は8度』って、氷点下を省略するらしいよ」
「別世界だな」

仙台は、宮城県(みやぎけん)にある都市。
出身地によって気温の 感じ方はずいぶん違う。

 

2001 / 02

 

2/6

10年ほど前から若者向けの店にもインセンスという呼び名で お香(こう)が
並ぶようになった。

これは木の屑(くず)などを圧縮したり、植物を干したりして作ることが
ほとんどで、インドや東南アジアからの輸入物が多い。
純粋に植物だけから作ったものは少ないらしく、安価なものはゴムや
香料(こうりょう)などから作るそうだ。

お香(こう)は、室町(むろまち)時代から使われていて、当時の ベトナム
あたりから中国を経て輸入したそうだ。茶室でも使われていた。

今でも香道(こうどう)と言われるものはある。茶道と同じような席で 和服で
順番に香りを楽しむ。高いものは数センチの木辺(もくへん)が
何百万もするとのことだ。
これは作法(さほう)も難しく、ほとんどの人には知られていない。

今、若者に人気があるインセンスは、10コ入りで500円ほどのもの。

 

2001 / 02

 

2/7

昔、城があり、その下で栄えた町を城下町(じょうかまち)という。
城下町には、いわゆる都市計画があり、町並みも整然としている。
今でも、かつて城下町であったところには、ピリッとした雰囲気 (ふんいき)が
あるようだ。 県庁(けんちょう)所在地(しょざいち)であることも多く
街の 中心地となっている。

一方、城のかわりに寺があり発達した町を門前町(もんぜんまち)という。
こちらは、参拝客(さんぱいきゃく)をあてこんだ商業地になっている
ことが多い。

こちらのほうは、大手のスーパーなどの進出で 苦しいようだ。
神社仏閣(じんじゃぶっかく)の観光は家族連れには 人気がなく
旅館は閉鎖があいついでいる。

ある場所が、かつてどんなところであったかというのは、ますます
見えにくくなっている。

 

2001 / 02

 

2/8

日本の借金は666兆円だそうだ。
ニュース番組などでは、「約600兆円」などと言うこともあるが 66兆円も
省略するのはこのニュースだけだろう。

昔、オーメンというホラー映画があって、この中で聖書の中で666は不吉な
数字で あると知った。
聖書(せいしょ)の黙示録(もくしろく)に のっているそうだ。

日本の基礎年金(きそねんきん)は、20才以上の人は、一ヶ月に
13000円ほど払うことになっている。
最低25年で最長40年払い続ける。
もし、今、20代から30代の人が25年払い続けたとして、年金を受け取る
時は一ヶ月、いくらもらえるか?
いろいろな試算があるが、どの試算でも13000円をこえることはない。

130000円ではありません。つまり払った額よりも減ることになる。

日本に住んでいると数字の感覚が狂ってくる。
特に上の二つの数字は いくら外国人に説明してもわかってもらえない
代表的なものだ。

 

2001 / 02

 

2/9

20代の親が生後間も無い子供を、「なつかない」「泣き声がうるさい」
という簡単な理由で虐待(ぎゃくたい)し、殺すというニュースが 続いている。

「どうして子供の虐待が多いんだろうね」
「最近、そういうニュース多いね」
「突然増えたのかな」
「ほら、マスコミって同じようなニュースを探すじゃない」
「そうだけど、虐待のニュースは、やっぱり増えたよ」
「そうかもね」
「最近、動物もね、子供を育てられない親が増えてるらしいよ」
「へえ」
「動物園のゴリラの半分がそうなんだって」
「じゃあ、やっぱり環境のせいなのかな」
「うん、僕の考えでは、安全なのがよくないんじゃないかな」
「今の日本が? 車とか多いよ」
「いや、いちお、食べ物もみんなスーパーで買うし、山で迷ったりしないし」
「ああ、そうか、無意識のうちに危機感みたいなのが薄れているってこと」
「そう、すごく深い無意識に作用してるんじゃないかな」
「最初から危機感がないと、母性本能も弱まるってことか」
「おそらく、その親も同じような環境で育ってきて、2世代目にして
  表れたんじゃないかな」
「ゴリラはもう少し、表れるのが早いってことね」
「そう、多分ね」
「なかなか説得力がある説(せつ)ね」

 

2001 / 02

 

2/13

トイレの一般的な呼び方は、「トイレ」。

他に「便所(べんじょ)」「お手洗(てあら)い」などもある。
「お手洗い」がもっとも無難(ぶなん)な呼び方だろうか。

さて、トイレには、いろいろなタイプがある。
戦後もっとも一般的なのは 和式(わしき)と呼ばれるもので、地面に穴があり
そのまわりを便器で 囲んだもの。
野球(やきゅう)のキャッチャーのようにしゃがんで 使う。

70年代ごろから洋式トイレの普及(ふきゅう)が進んだ。同時に 汲み取り式から
水洗式(すいせんしき)に変わっていった。
現在、都心で、新しい家やビルが作られる場合、ほとんどが洋式であると言っても
いいだろう。

オフィスビルなどでは和式と洋式が半分づつ 作られることが多い。
水洗式のトイレもおそらく50%以上だと思われるが、都市と農村部では
まったく事情が異なる。

日本へ来る外国人が困るのは、公園や喫茶店などで 男女共用のトイレ があることだろうか。
少なくなったとは言うものの 時々見かける。

まあ、世界的にも、トイレが今のような形になったのは、20世紀の
はじめのことなので、普及には1世紀以上かかるということですね。

 

2001 / 02

 

2/14

日本は木造建築が中心だったせいか、昔から火事(かじ)が多かった。

江戸時代には、民間の消防団(しょうぼうだん)がいくつも組織 されていた。
当時の消防(しょうぼう)は、火を消すのではなく 火事の周辺の建物を壊し
延焼(えんしょう)を極力防ぐ、といった ものだったらしい。

民間の消防には、普段はヤクザ生活をしているものも多かったというが いざ
火事となると大活躍し、町中でも一目(いちもく)置かれていた そうだ。

当然、放火(ほうか)に対する刑罰(けいばつ)は厳しかった。
もちろん死刑で、放火の動機(どうき)によって、より残酷(ざんこく) な
死刑も細かく用意されていた。

火事に関する法律は、今でも、日本は国際的に厳しいらしい。
殺人は「死刑か、無期(むき)懲役、3年以上の刑(けい)」だが
放火は「死刑か、無期、5年以上の刑」だ。

国によって法律は当然違う。

 

2001 / 02

 

2/15

江戸時代、放火(ほうか)に対する法律は厳しく、ほとんど死刑(しけい)
だった。

17世紀の中ごろ、井原西鶴(いはらさいかく)という作家が実話(じつわ) を
基にした、放火を題材にした短い一編を書いた。
現在、八百屋お七(しち)として知られるその物語りは浄瑠璃(じょうるり)や
歌舞伎(かぶき)、落語(らくご)の素材として何度も使われることに なった。

大火事がきっかけで知り合った男が忘れられず、再び放火をし、火あぶり の刑
となる女性を描いた悲劇は、それほど長いものではないが普遍的な 文学性を
持っている。

同世代の近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)という巨人と共に 西鶴は
次々に力強い物語を残した。

シェークスピアが亡くなったのが1616年。
その28年後に西鶴が生まれ 西鶴の誕生から9年後に近松が生まれた。
当時、日本は鎖国(さこく)でまったくヨーロッパとの交流はないし
シェークスピアの翻訳を日本人が読むのは200年以上も後のことだ。

何かが連鎖(れんさ)していた。不思議なものですね。

 

2001 / 02

 

2/16

男性2人と女性一人の会話。男性は30代。女性は20代。

「なんか最近、和食に目覚めちゃってね」
「おまえも? おれもなんだよ。もう脂っこいのがだめね」
「ああ、やっぱり、お互いに歳なのかな」

「なに辛気(しんき)くさいこと話してるの」
「ばか、辛気くさいんじゃなくて、現実の話しだよ、おまえももうすぐだぜ」
「私は30まであと3年もあるし、死ぬまでイタリア料理を食べ続けるわよ」
「けいこちゃんは、今でもイタリア料理ばっかりなの」
「そう、家でもパスタばっかりよ」
「お米は?」
「お米はサラダ感覚で少しだけね」
「『サラダ感覚』っていったって、おまえ、山形の出身だろ。
  子供の頃は毎日米食ってたくせに」
「そうそう、田舎もんに限って、『イタリア料理しか食べない』
  なんて言うんだよ」
「うるさいわね。東京のお米はまずくて食べられないの!」
「え、やっぱり山形の米って美味しいの?」
「そうよ。米だけじゃないわよ。何でも美味しいの!」

男性二人は、急に無口になる。

「。。。。ああ、いいなあ。。。」
「山形か、老後は山形に住みたいなあ」
「和食好きにはいいんじゃない? 私、東京に出て来た時、何もかも
  まずいんで、びっくりしたもの」
「う〜ん。信憑性(しんぴょうせい)があるなあ」
「お酒も美味しいわよ」
「そうか!米がうまいってことは、酒もうまいってことだ!」
「どうしたの2人とも?」

二人とも老後の山形での暮らしを想像しながら、うっとりしていた。

 

2001 / 02

 

2/20

日本のプロチームに招かれたアメリカの野球選手がプレイもせずに
わずか一週間で帰国してしまったことがある。

原因はゴキブリ。

ロッカールームでゴキブリを発見したこの選手は、
「これからこんな ところで働かねばならないのか」と悩み、ついに契約を
破棄(はき)して 帰ることにした。
しかし、最近、ゴキブリは少なくなった。
畳の部屋が少なくなったことと関係がある のだろうか。

害虫(がいちゅう)を駆除(くじょ)する製品は数多く売られている。
蚊(か)や蠅(はえ)、ねずみ、ごきぶり、などは代表的なものだ。

そういえば、蠅やねずみも、20年ほど前に比べると格段に少なくなって いる
はずだ。 これは、本当にいいことなのだろうか。少し心配になってきた。

 

2001 / 02

 

2/21

動物園で人気があるのは、象(ぞう)、きりん、さる、ライオン。
大きな動物園にはパンダがいる。いずれも子供に大人気だ。

日本では各県にひとつは公営の動物園があると言ってもいい。
これらの 動物園は地方自治体から予算が出ている。
学校のカリキュラムにも 入っており、経営は苦しいようだが、なんとか
大丈夫らしい。

民営の動物園は、たいへんだ。
小さな動物園では、動物を買う予算も飼育(しいく)する予算も少なく
一つの檻(おり)に一匹の動物だけがいるといった状態になる。
しかし、子供に人気の動物がいないと商売にならないので、ライオンや 猿( さる)は確保(かくほ)する。
象やきりんは、飼育が難しく 維持費もかかるのでなかなか飼うのは 難しいらしい。

時々、地方へ行くと、人気(ひとけ)のない動物園で、ポツリと座っている
ライオンなどに出会う。

檻(おり)の札(ふだ)には、 「ライオン アフリカ」などと書いてある。
寂しいものだ。

 

2001 / 02

 

2/22

「根回(ねまわ)し」というのは、会議などで重要なことを決める 時に
事前に会議の参加者に、議題について意見を聞いておき 方向性(ほうこうせい)
を確かめるということ。

日本では会社でも政治でも、会議が行われた時には、ほぼ決定している ことが
ほとんどで、会議の中で議論がされ、その場で新しいことが決まることは あまりない。

つまり、会議は発表し、承認するプロセスのひとつに過ぎない。

外国人が日本の会社で戸惑うのがこの習慣だという話はよく聞く。

「さあ、今日は会議だ」と出席してみると、どうも雰囲気(ふんいき)が 変だ。
議論はほとんどされず、ひとつの流れが出来てしまっている。 ということらしい。

「場の雰囲気を読む」とか「空気を読む」という言葉は日常的に 使われる。
例えば、若いカップルが恋人とデートをしていて 「今、キスがしてもいいか」
迷うような時に、大事なことですね。
これが、日常的に必要だと言ったら、言い過ぎだろうか。

森首相は、あっという間に、首になる雰囲気が出来てしまった。

ほんの半月前は、単に人気がない首相であったが、今では、自分の 所属する
政党にも、「何故あんな人を選んだのか」と言われる始末だ。
政界(せいかい)では、実力者の一言で、この流れが出来てしまうことが 多い。
おそらく森さんは、来月にも首になると思うが、実は支持率 (しじりつ)が
下がった他には、具体的な理由ははっきりしていない。

首になることが決定的となった今、与党(よとう)も野党(やとう)も
マスコミも、改めて、首相を首にするに価する理由を探すのに
やっきになっているといったところだろうか。

 

2001 / 02

 

2/23

男性二人。昼休み、食事の後で。

「中国のさ、朝ごはんっておいしそうだよね」
「ああ、お粥(かゆ)ね」
「屋台(やたい)か露店(ろてん)みたいな店でさ」
「ああ、あるね。お粥ばかりとはかぎらないらしいけど」
「あ、そう。パンなんかも食べるのかな」
「食べるらしいよ。でもあのお粥はいいよね」
「よく日曜日に海外の旅行番組やってるでしょ?この前、上海 (しゃんはい)を
  やってたんだ」
「あ、そう、あれ、いつも、イタリアとかフランスでつまんないよね」
「女優とか歌手が買い物するやつね。飛行機会社がスポンサーで」
「そうそう、毎週同じだもんなあ」
「いや、だから上海が新鮮(しんせん)だったんだよ」
「そうか。もう上海って、聞いただけでおいしそうだもんな」
「はは、食意地(くいいじ)がはってるな。でも確かにそうだな」
「やっぱり安いのかな」
「テレビ番組だから高そうなレストランが多かったけどね」
「ああ、ああいうのOL向けだからな」
「でも、時々朝市なんかも映ってたけど、安いしうまそうなんだよ」
「朝市、いいねえ。」

日曜日の午後は、必ず旅行番組をやっている。
不景気だと言われるが 海外旅行の需要は減らないそうだ。

 

2001 / 02

 

2/27

この時期、天気予報に花粉(かふん)情報が加わる。

日本では90年代に杉(すぎ)の花粉のアレルギーが爆発的(ばくはつてき) に
増えたと言われている。 鼻水(はなみず)が出る。目が痒(かゆ)くなる。
くしゃみが出る。 など症状(しょうじょう)は決まっている。
一年ほどかけて定期的に注射(ちゅうしゃ)をうてば治るらしいが
薬で済ます人がほとんどだ。

日本の国土の60%以上が山林だが、そのうち70%以上が植林(しょくりん)
だそうだ。ほとんどが成長の早い針葉樹(しんようじゅ)で、杉は特にたくさん
植林された。

花粉症は、老人はかかりにくい、とか、都会の人ほど症状が悪い。
などと言われていて、現代人の食生活との関連も研究されている。
アレルギーは、世界的にも増える傾向にあるそうだ。

 

2001 / 02

 

2/28

東京を散歩しているといろんな所に記念碑(きねんひ)や石碑 (せきひ)が
建っているのに気付く。

かつての文学者の家があったところや、坂の名前のいわれなどが 刻まれている。
中には地名の由来(ゆらい)などが書いてあるものもあって 丁寧に見て歩くと
ちょっとした物知りになることができる。 ただ、それらの歴史を感じさせる
町並みは完全に無くなっていることが多いが。

東京を歩くと、「オランダ」という国名をよく見ることができる。

19世紀の後半から20世紀のはじめにかけて多くのオランダ人が政府に 雇われ
現在の東京の都市計画に関して、主に土木技術の面において 貢献した。
東京湾(わん)の干拓(かんたく)事業や公園、建築など多方面で
活躍したらしい。
電車の駅である東京駅に八重洲(やえす)という地名が あるがこれは
オランダ人の名前から取ったものだ。 都心の桜の名所である上野公園もオランダ人
によるもの。 これを知る日本人は少ない。

今は、オランダは遠い国になってしまった。

江戸後期(こうき)は、オランダ語が流行し、読み書きに関しては、 政府関係者や
地方のインテリは不自由しなかったと言われている。

その後、ドイツやイギリス、アメリカといった列強(れっきょう)が 進出し
オランダ語は、すたれていった。 現在、オランダ語をはなせる人の数は
江戸時代より増えているのだろうか。 もちろん、比率から言うと、圧倒的に
減っているに違いない。

それにしても、オランダ語を話す侍(さむらい)というのは、ちょっと
想像できませんね。

 

2001 / 02

 

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