2001 / 09

 

9/4

子供が一人で買い物をしている時、店の人の反応は分かれる。

商店街や小さな店、デパートでは、子供なりの対応をする。
子供にもわかるような言葉づかいで、話す人は多い。

それに対して、 大きなスーパーなどでは 大人と同じ扱いをすることが多い。
「いらっしゃいませ」と言い、「ありがとうございました」と言う。
「店の規則で決まっているから」からだろうが、一見、丁寧だが 実は、決まった
対応のほうが楽だということがある。

小さなスーパーなどでは、顔見知りであることも多いからか、こういう ことは
少ない。「あら、一人で来たの? えらいねえ」などと声を かける店の人は多い。

コンビニ(コンビニエンスストア)は、大きなスーパーと同じで、型どおり の
やりとりで終ることが多い。若い店員が多いせいか、「子供は邪魔」 という
雰囲気すらある。

しかし、子供心というのは、複雑で、大人と同じ扱いをされることが
嬉しいこともある。

私も、「いらっしゃいませ」などと言われると 嬉しかった覚えがある。

 

2001 / 09

 

9/5

日本は、トンネルや橋を作る技術は高いらしい。

国土の70%近くが 山林の島国であることが大きな理由だ。
今、日本の4つの島(本州、北海道、九州、四国)のうち、四国と本州は 橋で
他はトンネルで結ばれている。

つい最近まで、トンネル工事に人力がはたす役割は大きく、大きなトンネル
工事だと、死者がでるのは、珍しくなかった。
特に本州と北海道との トンネル工事では多くの犠牲者(ぎせいしゃ)が出ている。

トンネル関係の技術者は、自らを「トンネル屋」という。彼らは橋を作る
技術者を「橋屋」と呼ぶ。トンネル屋は、橋屋がうらやましいそうだ。

作っている過程が誰の目にもすぐにわかり、感謝される。
その点、トンネル屋が感謝されるのは、開通(かいつう)した日ぐらいだ と言う。

 

2001 / 09

 

9/6

日本の車事情で、悪名高いのが、高速道路の料金だ。

もし、一人で東京から大阪まで高速道路を使うと片道約15000円は 覚悟
(かくご)しなければならない。 飛行機と電車で行くのと同じくらいだ。
しかし、車のドライバーは 自分の運転で、自分でガソリン代を払っているので
ある。 せめて半額でないと車で行くメリットはなくなってしまう。

こういった高速道路は、公共事業(こうきょうじぎょう)で作られる。
最近、新しくできた都心と千葉県を結ぶ道路は、海を渡る高度な技術が
使われている。途中までがトンネル、残り半分は橋となっている。

なぜ、半分づつになったのか? 半分づつだと、橋を作る会社とトンネル を
作る会社が、同時に儲るかららしい。セメントも鉄鋼(てっこう)も 必要になる。

この道路は、値段が高く、すこぶる評判が悪い。

 

2001 / 09

 

9/7

「出張で時々、長野(ながの)に行くんだけど」
「え、出張、いいなあ。オレ、まだやったことないんだよ。出張って。」
「ホント、ああ、おまえの会社は、支店ないもんね」
「そうそう。やっぱり、長野名物とか食べに行ったりするの」
「いや、結局、接待(せったい)でね。あまり楽しめないんだよ」
「ああ、なるほどね」
「長野の支店長って、本社から来た若いやつを、いじめるのが好きらしくてさあ」
「ああ、最悪(さいあく)だな」
「2日滞在したんだけど、2日とも付き合いで、疲れた」
「自分の時間はなかったの?」
「ぜんぜん。駅で、お土産かっただけ」
「そうか。出張費はいくらでるの」
「一日8000円ぐらいかな」
「少ないね」
「そう。泊まるところも決まってて、手当が3000円というカンジかな」
「たった3000円か」
「そう、それも、お土産代で消えるんだよ」

 

2001 / 09

 

9/11

Cubeというカナダ映画があった。
四角いパズルのような立方体に 人々が閉じ込められるというサスペンス映画。

日本には、カプセルホテルというものがある。この映画のシナリオライター は
このホテルに泊まったことがあるのかもしれない。

カプセルホテルは、長さ2mほどの棺桶(かんおけ)の幅を4倍に したぐらいの
サイズのホテルのことだ。しかし、この棺桶には、テレビ が付いており、
換気(かんき)も悪くない。夏場は冷房(れいぼう)も 効いている。
1泊3000-4000円ほどであり、これは、日本では安いほうだ。

たいていのカプセルホテルは、2階建てになっている。狭いスペースに 何人も
泊まれるので、例えば高級ホテルのスイートの広さがあれば 30人くらいの部屋が
作れることになる。

これが最近、日本を訪れる外国人に人気らしい。
もちろん、居心地は 悪いけれども、SF映画の主人公になったような気分になれる。

ただし、カプセルホテルには、少々、品の悪い人々も泊まっているので 御注意を。
殺人犯が逃亡する時に、カプセルホテルを泊まり歩いていた。
などというニュースはよく聞く。

まあ、それも、SF映画気分を盛り上げる大事な小道具(こどうぐ)だと 思えば
悪くはないが。

 

2001 / 09

 

9/12

世界貿易(せかいぼうえき)センタービルの事件は日本では 夜の10時ごろに
報道が始まった。 金融機関(きんゆうきかん)が集まるこのビルには
日本の企業(きぎょう) も多く入っている。

日本にある、アメリカ軍の基地(きち)も、厳戒体制(げんかいたいせい) に
入ったそうだ。 このサイトは、アメリカからのアクセスが最も多い。
大学などの学校や、国防総省(こくぼうそうしょう)からもある。
もちろん、これまで何人ものアメリカ人、金融関係者を教えてきた。

明日のレッスンもニューヨーク出身のアメリカ人だ。
一人でも多くの命が助かってほしい。

 

2001 / 09

 

9/13

一機目がビルに突っ込んだ時は、事故の可能性を疑った。
コンピューター関係の故障を考えた人も多かったのではないだろうか。

二機目で、テロだと確信を持った。しかし、あれほど簡単にビルが崩壊
(ほうかい)すると予想した人は少ないだろう。

日本では、日本人の生存者(せいぞんしゃ)に関する報道の他は、CNNや CBSの
報道をそのまま翻訳(ほんやく)したような情報が流されている。
東京には、7つのテレビ局があるが、そのうちの国営の教育テレビを 除くすべての
局は、事故発生から翌日まで一日中、報道番組を 流している。
夕方のニュースの時間帯(5-7pm)が終ると、通常の番組も始まった。
しかし9時を過ぎると、半数の局が、再び報道番組を始めた。

予定していた「ダイハード」などのテレビ映画はキャンセルとなり 過激
(かげき)なゲームソフトのコマーシャルも自粛(じしゅく) されている。

外に出て、近所を散歩してみたが、人通りは少なく感じる。
近くのスーパーの駐車場は、いつもより車が少ない。

日本でも、多くの人が、おそらく世界中の人々が口にしただろう 「映画みたいだ」
というセリフを呟きつつ、繰り返される事故の場面を 眺めている。
この場面は、どんどん新しくなり、はっきりとした映像に 切り替わっている。

ニューヨークでビデオキャメラを持って歩いている 人は多いはずだ。
今後はもっといろんな画像を見ることになるだろう。

今日、レッスンをするはずだったニューヨーク出身のアメリカ人は
「気持ちが落ち着かない」とレッスンをキャンセルしてきた。

 

2001 / 09

 

9/14

「映画のような」テレビ画像が繰り返し放送されることで人々の関心 も
薄れはじめているようだ。

日本では話題は、経済への影響に移っている。 これからのことを考えると
非観的(ひかんてき)にならざるをえない。

アメリカは、そのイメージとは反対に、共和党政権のほうが、有事の 際は
比較的慎重な対応をとることが多い。しかし、今回は、そうは いかない
かもしれない。

「冷戦構造(れいせんこうぞう)は終った」というのが
ここ10年の キーワードであった。

2001年の9月で、冷戦は終ったことは確認された。 また、「構造」という名の
安定した状態も終りを告げたと考えても よいのではないだろうか。

この不安定な、HOT WARの時代は、ナイフ一本で始まった。
これから10年がどんな世界になるかは、アメリカの対応にかかっている。

 

2001 / 09

 

9/18

先週の水曜日から、同時通訳(どうじつうやく)付きで、ABCのニュースを
見ている。

世界の支援(しえん)、支持(しじ)という時には、ヨーロッパの国々が
紹介され、事件の卑劣(ひれつ)さを語る時には、「パールハーバー」 のことが
語られる。
また、規模(きぼ)を語る時には、「広島(ひろしま)原爆(げんばく) の
50分の一」と言われる。

ニューヨークでは、市場が開き、注目されている。現在のところ、9000ドル
あたりで、なんとか、踏ん張っている。株価より、むしろ、ドルの下落
(げらく)が心配されており、前日に、日本政府は、この点を憂慮 (ゆうりょ)
して、市場に介入している。

 

2001 / 09

 

9/19

テロ事件から一週間が経った。

この間の日本のニュースを少し紹介しましょう。 大きなニュースは二つ。
大手スーパーの倒産(とうさん)と狂牛病 (きょうぎゅうびょう)だ。

このスーパーの倒産は、以前から噂となっていたので、それほど大きな ニュースとは言えない。

汚染(おせん)された牛は一頭で、政府は、発見と同時に、安全性に
問題はないと発表した。 しかし、日本では、何か問題が起きると、すぐに政府
から「安全である」 という報告がなされる。

その後、「まだ調査しないとわからない」と いうことになった。 政府による
安全宣言(あんぜんせんげん)は、もう信用できないというのは 私だけでは
ないだろう。おまけに発見から発表まで2日もかかっている。

こういう時に、日本では、「私達の使う牛肉は安全です」ということを
言うところは少ない。なるべく騒ぎを大きくしないように、パニックに
ならないようにと、静かに、何も言わないという対応がなされる。

大手のハンバーガーチェーンや牛丼(ぎゅうどん)チェーンのサイトでは
ひっそりと、腫物(はれもの)に触るように、告知がされている。
「狂牛病」という言葉は、いっさい使われていない。

火事場(かじば)どろぼう、というのは、火事のドサクサに紛(まぎ)れて
泥棒をする者のことだ。ニューヨークでも少なからずいるらしい。
私は、こういう単純な犯罪は、まだ人間味(にんげんみ)があるような 気がする。
私も、目の前に価値のありそうな証券(しょうけん)でも 落ちていたら
拾うかもしれない。

しかし、こういった悲劇的な大事件に隠れて、巧妙にこっそりと悪事が処理
(しょり)されることがあるとすれば、許されないことだ。

 

2001 / 09

 

9/20

70年代の石油ショックで、日本は、石油政策の一環としての中東研究が
進んだことを除けば、一般にアラブ世界と日本との接点は少ない。

80年代の後半から、好景気(こうけいき)の日本に仕事を求めて 多くの人々が
イランやパキスタンから来た。一時は東京の公園は イラン人の交流の場と
なっていた。 その後、バブル崩壊(ほうかい)で、仕事を失ったイラン人達は
ビザを失い、不法滞在(ふほうたいざい)が社会問題となったが そのほとんどは
日本を離れた。

今では、パキスタン人のほうが多いかなという印象だ。 一部の人は、日本人と
結婚するなどして、日本に定着し、東京には、立派な モスクができた。

中東(ちゅうとう)の情勢(じょうせい)に詳しい人を、日本で 探すのは難しい。
一般の人は、ほとんど何も知らないと言ってもいい。

特別に無知(むち)だということではない。例えば、北米やヨーロッパで 東アジアの 軍事バランス(非常に複雑だ)について知っている人の数を 考えると
参考になるかもしれない。
同じようなものだと思う。

 

2001 / 09

 

9/21

30代のサラリーマンの会話、共に男性

「すごいことになったね」
「ああ、行方不明(ゆくえふめい)の人が神戸(こうべ)の地震(じしん)
と同じくらいだものね」
「うん。神戸の時は電車が動く前だったけど、今度は9時過ぎだからね」
「むしろ、被害者(ひがいしゃ)が少ないほうかもね」
「避難(ひなん)もスムーズだったし、警察とかレスキューの到着が
  早かったもんね」
「でも、神戸(こうべ)は天災(てんさい)だけど、今度はテロだからねえ」
「そうだな。ちょっと想像(そうぞう)できないね」
「日本も危ないな」
「そうだな。でも、日本の経済とか政治の象徴(しょうちょう)のビル って
  あるかな」
「国会とか丸の内とか」
「今は、丸の内にオフィスがある会社は減ってるし」
「政治は国会というより、料亭(りょうてい)だから赤坂(あかさか)か」

 

2001 / 09

 

9/25

今ごろ、小泉(こいずみ)さんは、アメリカに向かう飛行機の中だ。

小泉さんは、テロを受けた第一声(だいいっせい)の会見(かいけん)で
「報復(ほうふく)を支持(しじ)する」と言ったが、これは
勇(いさ)み足で、現在の日本では、できることと、できないことがある。
現在の憲法(けんぽう)と法律を常識的に解釈すると、日本は軍隊 (ぐんたい)
日本では自衛隊(じえいたい)と言うが、の海外派遣 (はけん)はかなり
限定される。

つい最近できた周辺(しゅうへん)事態(じたい)法というのは アメリカの
圧力で、台湾(たいわん)と中国、北朝鮮(きたちょうせん) の緊張
(きんちょう)を意識して作られたものだが、表立って、国を 特定することは
できないので、「『周辺』というのは、地理的な 概念(がいねん)ではなく
『日本に危険がおよぶ事態』という意味だ」 との政府の公式見解
(こうしきけんかい)がある。

これまでの日本ならば、明確(めいかく)な証拠、国連(こくれん)の決議
(けつぎ)、原子爆弾(げんしばくだん)と生物化学兵器
(せいぶつ かがくへいき)の不使用、などを条件にしての支援(しえん)と
いうのが 常識的な線だと思うのだが、今回は、かなり踏み込んだことを約束
しそうだ。

国内でも、野党(やとう)も賛成(さんせい)にまわるそうだ。

 

2001 / 09

 

9/26

今回のテロ事件で驚かされたのは政府やニューヨーク市の対応の 早さだ。

メディアの対応も早かった。不明者の名簿は、データベースとして まとめられ
現在では、顔写真付きのものがインターネットでいつでも みることができる。
日本のメディアでは、日本人の不明者でさえ、常時掲載していない新聞も ある。
まして他の国の不明者を掲載しているところは、私の知る限り ひとつもない。

今、日本では、狂牛病(きょうぎゅうびょう)のニュースがテロの事件 に
代わってトップニュースとなりつつある。 政府の発表は、あいまいで、遅く
訂正の記者会見もたびたび開かれる。

ひとつには、牛肉が輸出産業ではない ということがあるようだ。 国際的な評価は、後回しにしても、影響は それほど大きくはない。 消費者よりも、生産者の保護を優先する、というのは これまでどおりの 対応だ。

早くも、国内では牛肉の消費量が落ちている。当然のことだ。

 

2001 / 09

 

9/27

エイプリル イン パリスという曲がある。
オータム イン ニューヨークという曲がある。

ニューヨークでは、10月にすばらしく美しい一週間があるそうだ。

冬仕度を始めて、街中も秋の装いになる。風も涼しくなり、外を歩くのが
楽しくなる。スタンドのコーヒーも美味しい。

ニューヨーク生まれの知人が 言っていた。 言葉には出さないけれども、皆「ニューヨークの秋が始まった」と 感じるそうである。
ボストンの美しさとは、ちょっと違った大都市 ならではの 美しさがあるという。

今年のニューヨークの秋は、瓦礫(がれき)を眺めながらになるかも
しれないけれども、やはり秋は美しくあってほしい。

 

2001 / 09

 

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