日本語学校への就職指南の記事はいろいろあります。印象や経験よりデータが重要です。国は2017年から日本語学校の基本データを公開しています。これをしっかり活用しましょう。面接でしっかり質問できるように、日本語学校への規制や就活関連の法律を知ることも重要です。

日本語学校への就職で必ず事前にチェックしておきたいことをずらずらと書いてみます。

 

日本語学校の基本データ(最重要)

2017年から文科省で公開されています。毎年提出義務があります。会社四季報より重要で、これをしっかり読めば、どういう学校なのかわかります。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1370893.htm

みれば800校超と言われる中で稼働している学校は実は400前後だ、みたいなこともわかります。定員、在籍学生数、専任・非常勤講師の数、大学、専門学校への進学者数、能試の合格者数、学生の国籍別の数、など規模や母体の会社、進学率、合格率など日本語教育に熱心であるかもわかります。あなたが重視することを考えて決めるきっかけにもなります。必ず見ましょう。

以下のようなPDF文書です。

その学校の経営母体がどんなところか、経営責任者はどんな人物かは、とても重要です。学校の「正体」がわかるとも言えます。「設置者名」の社名、名前で1時間くらいはGoogleやYoutubeで検索しましょう。

その他のデータも重要です。伝統校、名門校でも成績がひどい「名ばかり名門校」も透けて見えてきます。

PDFだけでまとめたデータになってませんので、私どもが2017年に独自に一覧にしたものがあります。N1N2の全国平均合格率は15%、大学進学率は12%、専門学校進学率は18%、ST比は42.16でした。ちょっと古いですが大きく変わることはないはずです。これを目安にしてください。

日本語教育機関一覧 2017版

*いずれも「平均値」です。ダメ学校が多数という構造なので「中央値」はもっと上です。だいたい倍にした数字が合格ラインなのではないでしょうか。N1,N2の合格率は30%を超えている学校が50校。20%超えが約100校。つまり良質校が50校で、良質校になりうる学校が+50校というのは、ほとんどの人のだいたいの印象に近いはずです。

*文科省は、海外の学習者がよい学校を探せるように、このデータをテキストデータにして検索可能な形で一覧で公開して多言語化すべきだと思います。

 

日本語学校に対する国の規制を知る

法務省:日本語教育機関の開設等に係る相談について

失踪者の数によって「適正校」という認定があるとか、STが40が基準なので定員がわかれば専任の数のボーダーが決まります。ST比ギリギリなのか20なのかは大きな違いです。2010年代の改正で、自社ビルが望ましい、無理でもワンフロア長期契約などでないとダメ、みたいなことになりつつあります。

専任の授業コマ数は週25コマしばりがあります。これを超えて担当している教師がいたらダウトです。

失踪者が多いかもわかります。失踪者の数で決まる「適正校」であるかはサイトで公開していることも多いです。無ければ面接で訊ねましょう。

 

学校で使われている教材

国の調査をベースに毎年刊行されている「日本語学校全調査」(アマゾンで買えます)には、稼働している日本語学校が採用している教材が載っています。

以下には、「日本語学校全調査」を基にした、初級と中級教科書のシェアがあります。
日本語の教材事情」 – 日本語教師読本 Wiki

 

若者雇用促進法

若者雇用促進法はいわゆるブラック企業と呼ばれているところに罰則を設けるための法律です。2016年の3月から施行。面接で訊ねられたら必ず答えなければならない項目などが決められました。主な項目は

      過去3年の採用者数、離職者数
      平均勤続年数
      3年以内の離職率
      研修の有無
      有休の平均取得日数
      月平均の残業時間
      育休、介護休業の実績

若者雇用促進法
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html

これらの質問に答えられないのは論外で、回答を準備していないところは、労働関係の法律を守る気がないと判断してもよさそうです。

これを利用して情報開示請求をした記事がありました。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2242

この改定にともなって、優良企業を認定する制度もできました。 ユースイエール認定企業
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000123441.pdf
→ 若者対象とはいえ「学卒3年以内での募集を行っていること」なので、日本語学校も対象になるはずです。年齢制限もありますが、撤廃の方向で、企業も回答するのが常識となっています。

「離職率」の理解は以下で。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A2%E8%81%B7%E7%8E%87

 

日本語教師養成講座を運営しているか

も、多少は経営状況の判断材料になりそうです。文化庁が認めた正式な日本語教師養成講座のリストは以下にあります。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/92159401.html

養成講座の宣伝で「就職率)90%!」などと書いているのに、未経験者は採用しないとか、「高齢者に向いている!」と勧誘しているのに自分の学校の採用では年齢制限がある日本語学校なんてたくさんあります。こういうところからも企業として姿勢がわかることがあります。

*ちなみに「就職率」の定義は文科省にあります。基本、正規雇用じゃないとカウントできません。(非正規の場合は1年以内に正規雇用に移行がマスト)非常勤採用からスタートで1年以内に常勤にならないのなら就職率はほぼ「0」に近いのです。文科省の定義では。

業界の審査はアテにならない
業界でどんな審査があるかも知っておきましょう。文書が公開されていますが、業界の第三者評価を受けた学校は数校で、おまけにどういう「第三者」なのか、ハッキリしません。レポートを読むと、「レポート読んだ、多分、大丈夫だろう」的なもので、ほとんど機能していません。つまりこれらの新がが「アテにならない」ということを知っておくことも重要です。

https://webjapanese.com/dokuhon/index.php?%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E6%A0%A1#ic797b1b

 

日本語学校の判断基準とは?

移動が多い業界ですから「いい人がいるか」は重要じゃありません。いい人というのは学校がやっているダメなことをスルーしがちで見て見ぬフリをしてくれる「都合のいい人」でもある、ということは往々にしてあります。やはり就職先なのですが、学校に法律や規制を守る気があるかが最初にチェックすべき点ではないかと思います。

そして学生を大事にしているか。これは寮運営に出ます。特にコロナ以降、学生に個室を与えているか、健康管理をどうやっているか、具体的に訊ねれば、ダメなとことは多少わかるのではと思います。きちんとした健康管理の体制がないのに、募集の再開ばかり考えているところは多いです。今は、そのへんが最もハッキリする時期かもしれません。

教師に対しても感染予防のための配慮があるか、健康診断など受けさせてくれるか。いざという時のための病院確保をしているか、なども面接で訊ねてみましょう。

時々SNSで語られますが「ICTの活用に熱心か」は、いうまでも無く、よい学校の目安にはなりません。単にICTの活用に熱心だというだけです。これはビジネス書などで語られる「トイレがきれいな会社がいい会社」程度のボンヤリしたイメージにすぎません。今、日本語学校に本格的なICTへの投資を期待するのは無理です。ICTへの投資が指標になるのは、今のような緊急事態の時ではなく、数年先だと思います。

それよりも、日本語学校が持っているいろんな「資産」、もちろん日本語を教えるという蓄積、海外の人が日本で生活するのを支援するノウハウ、地域での外国人との共生の拠点としての力、海外のネットワーク、これらを留学生の受け入れだけでなく、他のことに展開できないか?という視点があるかは重要かもしれません。

面接で「留学生受け入れ以外でどういう展開を考えているか?」は質問する価値がありそうです。

とはいえ、学生を人材派遣業者に売っぱらう、みたいなことが新たなビジネス展開だということになってしまった名門校もあります。何事もトラップはあります。いろんな要素があるので、できるだけたくさん自分なりのチェック項目を持つということは重要です。紹介や評判など他人の視点ではなく、自分の価値観、自分の目で選んだほうがいいと思います。まずは一次ソースに近いデータをみましょう。

この時期、日本語教育に携わろう、続けようと考えてくださる方は貴重な存在だと思います。ご健闘を。

 

参考ページ

以上、私どもの「日本語教師読本Wiki」の以下のページにもまとめています。ご参考になさってください。

日本語学校
→この記事の補足などがあります。

労働法関連
→日本語教師が知っておきべき労働関連の法律が整理してあります。

日本語教師
→日本語教師の資格や数、平均年齢などのデータです。

日本語教育マップ
→ 国内外の日本語学校をはじめ、日本語教育関係の組織がマッピングしてあります。