日本語教師養成講座の基礎知識

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日本語教師養成講座の基礎知識 
2017年6月16日初版投稿  2018年1月31日改訂 約1万8千字
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About

日本語教師という仕事が気になるな、挑戦したいなという人が、最初に迷うとこである日本語教師養成講座の要点だけ書きました。ネットの情報やムック本は、ほとんどの場合、養成講座の主催者の話か、広告か、広告的なものか、ステマサイト的な説明しかないので、利害関係のない人間が書いたものがネット上にあったほうがよいと考えました。

一般的なブログの記事としては長めです。そのかわり、アフィリエイトも、セミナーへの勧誘もありませんのでご容赦を(そこそこ大きなテーマで、ちゃんと調べてソースを明示して丁寧に書こうと思えば1万字くらいにはなるんです)。養成講座は結構な大金が必要なところなので失敗すると痛手は大きいです。15分くらいで読めるので、ざっと読んでみて下さい。詳しいことが知りたい時は、リンク先(外窓で飛びます)をいろいろとみてください。

大前提の知識を手短に

  • 日本語学校の求人では、ざっくり書くと 1)420コマ時間の養成講座を修了しているか、2)大学で日本語教育を専攻したか、3)日本語教育能力検定試験に合格したか、の3つが応募条件になっていることがほとんどです。
  • しかし、20年以上、420コマ時間重視でした。420時間ならば単独でもOK、しかし検定試験の合格だけでは弱いとされてきました。「国内の民間の日本語学校で働きたいならば」基本、420時間修了はあったほうがいいようです。
  • 420時間の養成講座修了による「有資格者」は日本政府がガイドラインを作ってはいますが「民間資格」です。主催はほぼ民間日本語学校です。適用される範囲は意外と狭く、原則、国内の民間の日本語学校やJICAくらいです。例えば公立小中学校の児童に日本語教育の審議会などでは完全にスルーされてました。ただし、2017年以降は文科省の本格管理がスタートしたので、広がっていく可能性が高いです。
  • 日本語学校とは法務省に正式に「留学ビザを発行するよ」と認められた教育機関のことで告示校(こくじこう)と呼ばれます。
  • 国内の日本語学校は法務省と文科省に管理されています。法務省は入管がメインで、主に出入りを、文科省は学校の質をという棲み分けです。法務省は告示基準、文科省には法務省の告示基準を法務省と調整して作った解釈指針という管理のための法律にあたる文書があります。
  • 日本語学校の管理が本格的に始まったのは実は2017年です。法務省の告示基準は昔からありましたが罰則はなく、ほぼ守られていませんでした。新しくなり認可取り消しも含め積極的に関与していくとなり、文科省は(かつては管轄だったんですが法務省に移った)2017年から本格的に日本語学校の管理に進出したところです。日本語学校が法務省に提出していた学生数などのデータを別途提出させ、公開したり、日本語教師養成講座も監視対象として管理していくことになりました。
  • 海外の日本語学校や日本語教師養成講座は、文科省も法務省も一切関与してません。規制も及びませんし、海外の養成講座を修了しても有資格とは認められません。

参考
法務省:日本語教育機関の開設等に係る相談について http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00044.html

👉 以下は、2017年に保存したものです。細かいところが変わっています。
告示基準
https://t.co/9DJtH0U5JX
告示基準解釈指針
https://t.co/OzBdUJwAJ4

*この記事の更新は、2018年の3月末で終了しました。その後の情報のアップデートはご自身で行って下さい。

 

日本語教師養成講座は正式なものとそうでないものがある

 

これまでのルール

日本語教師養成講座は、1985年に国による検討がはじまり、1988年に今の420時間というルールが出来ました。その後、平成12年(2000年)に大きな方針が出され、420時間のより詳しい内容が決まりました。「文化庁のシラバス」と呼ばれ現在も継承されています。(その後2010年にマイナーアップデートされました)

ただし、2017年4月までは、この420コマ時間の講座修了による有資格認定というのは、あくまで民間資格で、国は「こういうことやってね」という「シラバス」を作っただけです。講師の資格条件など細かいルールはなく、なんと1988年から2017年までの29年間、シラバス通りにやってるかなどをチェックする機関もルールもありませんでした。420時間の講座は民間の日本語学校が主な主催者で、特に2000年以降、ビザが下りるかで左右される不安定な本業を補填する重要な収入源となっていきました。需給のバランスを考えることなく、供給過剰の状態を維持しつつ、零細企業中心の日本語学校が安く参入できるようにハードルは低く、と、業界の都合で、厳しい管理を嫌ったという事情があったように思います。

しかし、2017年以降は、文化庁に届け出をし、受理されないと正式な養成講座とは認められないことになりました。2016年の秋に呼びかけをしましたが、西日本新聞の報道によると、初年度は初期に届け出をしたのは100講座以下となったそうです。それまで養成講座は文化庁が把握しているもので200くらい、把握外で、通学、通信合わせて「420時間講座」とうたっていたのものはかなりあったと思われますので、半数以上はこの届け出制がスタートしたことをきっかけに撤退したとみられます。

👉 この届け出も、最初は形式的なものではないかと見られていたようで、思っていたより審査が厳しいという印象だったようです。しかし次第に受理のノウハウが共有されてくるにしたがって「?」というようなところも受理されるようになってきました。この届け出制で、どうにもならないひどいところは消えた、でも受理=良質とは言えない。今後の管理次第、というところでしょうか。

👉 細かい経緯は、こちらにまとめてあります。
日本語教師養成講座の問題 日本語教育あれこれ
https://webjapanese.com/blog/j/nihongokyooikuarekore/#i-21

 

2017年8月からの新ルール

2017年からの文化庁の届け出制は、同年の法務省の新基準に準じたものです。ここに説明があります。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/
ここの真ん中あたりにある「1.文化庁国語課への届出を受理された日本語教員養成研修実施機関・団体」の下の「日本語教員養成研修実施機関・団体」というPDFにある日本語教師養成講座だけが、正式な資格となる講座です。

2017年の8月1日以降は、この受理された日本語教師養成講座の修了者でないと正式な資格とは認められません。日本語学校は有資格者しか雇えない決まりになっていますので、国内の日本語学校では雇用されません。また、文科省の「大学入学のための準備教育課程の指定等に関する規程」にも追加されましたので、その他の準備教育の学校(大学の留学生別科など)でも正式に要件のひとつとなりました。

ただし、2017年の4月以前にスタートしたものは、修了者となるとされるようです。過去の修了は原則として救済される、ということです。

つまり、今、日本語教師養成講座を受講するなら、絶対にこの受理校じゃないとまずい、ということです。今後受理校は追加されると思われます。講座の窓口の人などに「提出しているしそのうち受理されるから」と言われても、受理されるまで待ちましょう。審査は、来年以降も続くそうです。

現在、受理された日本語教師養成講座は「文化庁受理!」「受理校!」と宣伝を始めています。

受理された学校を見る限りでは、講座の質というより講座の運営力重視となっているという印象です。受理された講座は、最低限度の運営力があるとは言えますが、質は保証されているとは言えないところに注意です。受理されたといってもすべてお勧めできるということではなく、最低ラインはクリアした、ということです。ここからいいところを探してください。(ここ、来年は会社自体存続してるの?というところもあります。受理は受けたけど、コストに合わないなら止める、というところも出てくると思います。注意してください)。

👉 また、2017年から420時間の講座には「学士の資格を有し」という表現が入りました。解釈基準でも明確に学士の資格を有していることが必要な条件になっています。つまり短大や専門学校卒業の人は420時間の修了は、資格ではなく「勉強したという証明にすぎない」ということです。ただし、日本語教育能力検定試験は、合格すれば学歴に関係なく、告示校で働ける資格を満たすことになります。2017年以降、求人などでは「4年生大学卒業」と書くところが増えてきました。実質的には4年生大学を卒業していないと国内の日本語学校では就職は厳しくなってきたと言っていいかもしれません。もちろん、検定試験合格でも採用されるケースはあり、420時間修了をプラス材料として考慮するところもあります。
海外で教える場合も4大卒が条件となる場合が多く、ビザが下りないケースもあります。仕事のビザは世界的に厳しくなる傾向があります。特に教える仕事は修士でも難しいという国が増えています。日本語教師志望者の方は、4年生大学じゃないとかなり厳しいと知っておいた方がいいと思います。かつては短大卒のいい教師はたくさんいましたし、日本語教師の資質に学歴はまったく関係ないと個人的には思うのでとても残念なんですが。

 

今後はどうなるか?

おさらいですが、2017年の4月以前にスタートした420時間の講座の修了生は有資格者とみなされることと、2017年4月1日以降にスタートした講座は、文化庁が受理した講座の修了生しか有資格者とされないことは決まっています。有資格者とされれば就職活動はできます。

で、2017年の8月1日から施行される、この届け出制による新ルールで、今後、有資格者は、4つぐらいに分けられることになると思います。

以下、届け出→受理 で再提出があったみたいなことが言われてました。そのことを書いていましたが、文化庁より書類が揃った順だとの回答があったので、削除しました。

1)受理された養成講座

受理日までの補講が必要(講述)ですが、修了すれば有資格者です。

2)提出をしたが受理されてない養成講座

現在、不受理の講座は、受理されるまでは、2017年4月以降にスタートした講座の修了者は、有資格者とは認められません。さらに、2017年4月以前の修了者も、有資格ではあるものの、養成講座に問題があったところの修了者という事実を背負っていくことになります。受理されれば2)のグループと同じとなりますが、受理は遅れれば遅れるほど過去の養成講座に問題が大きかったということではないでしょうか。

👉 おそらく養成講座の提出と受理という手続きは、今後ずっと続くはずです。ということは「2017年4月以降にスタートした講座を同年10月に修了したけど、講座の受理は2018年だった」というケースが出てくるかもしれません。通っていたころは受理されてなかったので、有資格者じゃないのか、微妙です。しかし2017年4月以前はテキトーな講座でも有資格者だったわけでアンフェアだという気もします。でも、そうやってOKにしたら、10年後に受理された講座はどうなのか、ということになってしまいます。このへんはわかりません。文化庁に問い合わせてください。

3)届け出をしなかった養成講座

文化庁に提出をしていない講座は、2017年4月以降にスタートした講座は、有資格者として認められることはありません。審査されるなら、コストがかかるなら辞めたと夜逃げをしたようなものです。2017年4月以前の修了者も「だめだった時代の養成講座の修了者」という烙印を押され続けることになります。届け出をする気がないところは100~200くらいあるんじゃないでしょうか。消えてしまって連絡がつかなくなるところも多数出ると思います。

👉 420時間という指針が出たのが1988年、民間で日本語教師養成講座が増えたのが2000年前後(特に2004年に100以上も増えた。規制緩和?)です。これまで30年に存在した420時間の講座は、新ルールでは原則すべて有資格者としてみなすと考えると、これまでに現れては消えた420時間の講座は、もっと多いのではという気もします。現在(文化庁の届け出制が始まって8ヶ月が経過した2017年の6月)でもおそらく文化庁とは無縁な420時間の講座がかなりネットで見つかるような状態ですので。しかし、ここでは100~200としておきました。

👉 独自路線?
海外の日本語教師養成講座は審査対象ではないということになっています(2018年3月の時点)、今後どうなるかは、わかりませんが、受理されているかどうかは、必ずチェックしたほうがよいと思います。
民間資格とはいえ、文科省の大学入学のための準備教育課程の指定等に関する規程にも正式に書かれることになりましたので、今後は日本国内の告示校だけでなく、海外でもいろんな場面で「受理講座なのか?」ということはチェックされることになると思います。受理されてない日本語教師養成講座を修了することのデメリットは大きくなっていく可能性が高いと思います。

👉 仮に、現在受理されていない講座の主催者が「受理されるべく申請中」「受理される見通しがある」と言ったとしても、受講するのは避けたほうが賢明です。事実であるとしても、文化庁は2017年8月の時点では海外の講座は対象外と書いています。受講前に文化省にメールで訊ねましょう。受理される可能性があるとしても、受理日までの受講の単位は認定されませんから、補講をしないと正式な資格と認められません。「受理されてから受講する」が正解です。

 


 

今後、養成講座が受理された日本語学校がイニシアティブをとっていくことになるでしょうし、教師の新陳代謝は激しい業界です。過去の修了者の肩身は狭くなっていくことは避けられず、420時間の資格の修了者の格差は大きくなっていくと思われます。もちろん、日本語教師に責任はなく、責められるべきは日本語学校業界です。養成講座の質管理をきちんとやってこなかったことによるものです。

👉 受理された講座のところでは、新たに養成講座の講師の募集をするところが多いようです。修士がマストになっているところも多く、文化庁の審査で講師の質に関して指導があったことを伺わせます。これまでのように自前の日本語教師の流用ではなく、ちゃんと修士の講師を確保できる資金力があるところ、が受理となっているのかもしれません。

👉 もちろん、2017年の4月以降に新たにスタートした日本語教師養成講座は別です。

受理番号で受理日がわかる

受理された養成講座には番号がふられます。元号(今はH)10桁で、3つのパートに分かれています。おそらくこれは、ずっと今後変わらないはずです。


H290519 40 003

Hは平成。29年(2017年)5月19日に受理。
次の40は地域番号。県別だと思います。北海道が01、福岡で40なので、北から。
最後の3桁はナンバーリング。地域ごとの受付順です。

最初の6桁の数字の受理日が大事です。早めにパスしたところは準備ができていて、それまでの体制にも問題がなかった、という証明になると思います。個人的には、H290519 に西日本新聞で最初の提出は出そろったという報道がでたので、それを信じるならば、このGW前の受理校は、届け出も早く、スムーズに受理されたところだと言えると思います。

 

日本語教師養成講座の誇大広告

 

日本語教師養成講座の「就職率」は5%以下

「就職率」は、いろいろな計算方法があります。

資格ビジネスというのは正規雇用指向の人がターゲットなので、基本、正規雇用の数で勝負です。非正規は含めないのが一般的です。また、大学などと違って、生徒は就職前提で学校に来るので学生の数は就職希望者ではなく、総数で計算すべきです。高額を支払って資格スクールに通ったのに就職を希望しないのは、資格そのものの魅力や資格をめぐる環境に問題があるとしても、それも引き受けるのが資格スクールですから。

そういう意味では、日本語教師養成講座の計算方法は、逆の最も甘い数値の取り方をしているわけで、しかも、ほぼ非正規雇用ということは隠したままで、資格ビジネスとしてはかなり疑問が残る計算方法です。それは資格を与えているだけでなく、その受け入れ先も日本語学校で、相互チェックがない、緊張関係がない、ということも大きいと思います。

そういうモラル的な問題とは別に、法律的な問題もあります。

日本語学校の管理は国内では主に文科省がやっています。実は文科省には就職率に関してルールがあります。かいつまんでいうと、分母は「就職希望者の数」でいいんですが、分子は、基本正規雇用として就職した人か、非正規でも1年以上の契約でないといけません。日本語学校の非常勤の契約は1年以上であることはほぼない(通常三ヶ月単位です)ので、非常勤契約は入れてはいけないことになります。入れるならば、非常勤で就職した人の追跡調査をやらねばなりません。

最近は最初から専任として正規雇用で雇うところも、わずかにありますが、あっても5%以下ですし、ここ数年の新設校ラッシュで専任講師として雇わないと行けなくなったという状況がおさまれば、以前のようにほぼ100%最初は非常勤からということになるはずです。

つまり、日本語教師養成講座の就職率は、正規雇用で考えると、おそらく5%以下。4大卒マストで、60万かけて、420コマやるのに、ほぼ非正規としてしか就職できない。が正しいのです。

👉 日本語教師養成講座のこのような根拠を示さない就職率での勧誘は消費者庁の景品表示法違反の可能性があると思います。過去に就職率に関連して問題となったケースがあります。

提案 ~公正な競争のために~

日本語教師養成講座の就職率の統一ルールを考えてみたいと思います。

1)分母は「修了者数」

文科省の分母の定義が「就職希望の者」になっているのは、学校は必ずしも就職のために行くところではない、という考え方がベースにあると思います。卒業して世界一周旅行をしてもいいわけです。そこでの計算の際に分母を卒業者全員ではなく就職希望の者に絞ることには正当性があります。
ただ、民間の資格スクールは違います。日本語教師の資格を必ず仕事に結びつけなければならないとは言えませんが、ほとんどの場合、仕事として始めるために420時間修了が条件になっているので受講する、と言う人であるはずです。就職率が高いと競うのであれば、修了者が分母であるべきです。
また、「修了者のうち就職希望の者」は多くの定義が可能です。就職活動を一度でもした、求人票を出した、アンケートで就職希望だと書いたなどなど。つまり統一ルールが作りにくいというのが最も大きな理由です。また、修了者数を分母にすると、就職希望しない人が少ないところが有利になります。これは、その講座にどれだけ本気の人が集まっているかがハッキリするのでよいことです。これも、受講者にとっては大事なことです。

2)分子:就職は専任と非常勤に分ける

これは当然やるべきことです。

3)分子:非常勤は契約期間別に分ける。

これも、当然やるべきことです。文科省のルールでは1年以上の契約でないと分子に含められないので、最低でも1年未満か、以上かは分けないといけません。非常勤でも会社は、必ず労働条件通知書を渡さなければならないことになっており、そこに契約期間を明記することになっています。ただし日本語学校ではこれを出さないところもあるようです。「分からない」という回答は、労働条件通知書をもらっていないということになりますから、そこも明らかにできるというメリットがあります。3ヶ月、半年、1年、1年以上くらいの区分でいいのではと思います。

4)専任、非常勤別に、就職先でも区分けをして数字を出す。

日本語教師はボランティアで働く先がたくさんあります。例えば、就職は、専任の場合、年収で250万円以上、非常勤で時給1500円以上で雇用された場合に限る。と定義してもいいでしょう。これが難しければ、就職先別のデータも公表すべきです。日本語学校であるか、企業であるかでの区別は大変なので、やはり年収、時給で区別したほうがいいと思います。専任だと200万以下、200~300万、300万以上。非常勤だと1000円以下。1000~1200円。1200~1500円、1500円以上、などなど。

5)「5年後就職率」を出す

日本語教師は非常勤の年収は100万以下のこともあります。よくて150万程度。5年で専任になれなければあきらめる人がほとんどです。追跡調査をし、5年後に専任になったか、非常勤のままか、転職したかというアンケートをして出して欲しいと思います。本当によい養成講座であれば、受講者の就職への意識は高く、専任を目指し、学校でも評価される。5年後には専任になっているはずです。分母はもちろん「修了者数」です。きちんと修了生を追跡できているかの目安にもなります。

*もちろん、こちらも就職先別のデータも出します。

以上、好き勝手な定義で出すのではなく、就職率と5年後就職率の2つを出すことにして業界でルール化し、就職率を出したいなら、同じルールで公表することにすれば、日本語教師養成講座の透明性は高まるのではないでしょうか?現状は計算方法さえわからないまま、勝手な定義で出している数字を広告で掲げているわけなので、そのうち法的に問題とされるのを待つより、業界で統一ルールを作ったほうがいいはずです。

👉 どの日本語教師養成講座も就職率は90%以上だと宣伝しているわけですが、日本語教師不足が落ち着いてきた2016年以降、養成講座の主催の学校が求人で経験半年以上などと条件をつけることが増えてます。もはや、修了しただけでは応募もできないわけです。

 

日本語教師養成講座を重視しないところは結構多い

2017年から文科省が積極的に管理していくことになったので、国内の民間の日本語学校やそれに準ずる地方のボランティア協会などでは重視されると思います。420時間の修了者が必須となっているのは以下の4つだけです。

・日本国内の民間の日本語学校
・日本の国内のボランティア教室など
・JICAの派遣の条件
・国内で省庁などが「日本語講師」を募集する時

日本語教師に安いとはいえお金を払ってくれるところは、今のところ国内の民間の日本語学校か国内の大学しかありません。しかし、、、

 

420時間修了は大学で仕事をする際はほぼ意味のない資格

基本的に大学で教えるのは、2種類あります。ひとつは、大学付属の留学生センターとか留学生別科と呼ばれる、付属日本語学校みたいなところと大学本体で学部生を教えるケースです。前者は、420時間修了者も尊重しろ、ということに若干なりそうですが、大学次第ですから、最低でも修士が必要な現状は変わらないと思います。学部生を教えるのは大学院の学生など大学でまかなうので、これも420時間修了はほぼ関係ありません。

2016年の金沢大学の調査があります。

すこしわかりにくいのですが、重視するランキングがあります。
左から1)全体 2)海外 3)国内 4)大学 5)日本語学校 で、最下位は65です。

海外、大学では、420時間修了も日本語教育能力検定試験も最下位近くです。「有資格者」は、かなり限定的なエリアでしか重視されないことになっています。日本語学校でもそれほど上位ではないことにも注目です。元々職人気質な日本語学校には、おそらく法務省の基準で有資格者を雇えというルールがなければ、420時間や検定試験合格は採用の目安ではないという考え方があるように思います。今後は420時間の養成講座は業界の一部の利益にすぎなくなるので、有資格者は軽視される傾向が強まるかもしれません。

 

「海外で活躍!」はできない。

– 海外では「あったほうがいい」程度 –

上の金沢大学の調査でも、明らかですが、最近多いアジアの求人などでも、一応条件には有資格者と書いても、実際は、それほど重視されない、それよりも賃金の低さを我慢できる「根性」や「適応能力」で決まることも多いようです。

海外の募集はベトナムなど日本に派遣する前提のところでは、有資格者が条件となっていますが、その他はそうでもないようです。なにしろ条件が厳しい(ベトナムでも月5万くらいから)ので、月3万円で住居は提供、みたいな条件さえのんでくれるなら採用となったりというケースも多いようです。

特に、アジアで仕事をしている派遣業界的な人は、日本語教育のことなどほぼ知らないのでテキトーです。就職して「資格あるの?あー420時間というやつ?ええがなーなおさらええがなー、がんばってや!」などと言われることもあるようです。

海外の大学の求人では、420時間はほぼ条件になっていません。まったく意味がないと言ってもいいでしょう。そもそも教える仕事でビザを取るのは修士でも厳しくなってきています。また、たいていの場合(特に中国など)、日本語だけでなく、日本文学とか歴史、日本ビジネス事情など、なんでも教えてね、ということになっているので、日本語教育関係なく、日本文学とか経済とかの修士をもってる人が採用されたりします。

👉 これも、別の記事で、日本語教師に求められるもののアンケート調査などいろいろご紹介してます。

 

実は420時間ではない

1990年代当初は文字通りの420時間でしたが、その後、420コマ時間とされ、1コマは45分でよいと規定されました。文書をよく読むと「420時間」ではなく「420単位時間」とか「420コマ時間」と書いてあります。

「420単位時間」は、45分×420=315時間です。今は、315時間ちょっと講座と420時間ちょっとの講座が混在しています。古くからやっている日本語学校主催の講座は420時間あるいはそれ以上とのところが多いのですが、資格業よりのところは、当然315時間近辺です。100時間違うとコストも全く違いますから。要注意です。

仮に60万円として420時間と315時間では、かなり違います。計算してみました。

例えばヒューマンアカデミーは2017年3月15日のデータですが、「180分×109回」と書いていますから327時間です。授業料が税込み572400円入学金が32400円、テキスト代はネットに37590円という情報がありました。合計642390円です。1時間あたりは1964円。

インターカルト日本語学校の講座は、授業料が571600円、入学金が54000円で教材費込みとのことなので625600円。420時間とハッキリ書いていますから、420時間で割ると1時間あたり約1489円です。
相場は今60万円前後ですが、時間数では100時間くらい違うことがある、ということに注意です。

 

養成講座の説明をするサイトはステマだらけ

ある程度ネットに慣れてる人はスルーできるんですが、日本語学校業界というのは経営者は若くても50代くらいなのでネットのころはどこか安いところに丸投げというケースが多いようで、名門校、伝統校も、新規参入のあしげなところも、安っぽいステマサイトに名前がでてきます。

そういうサイトは、ランサーズにような安いところで体験談をでっちあげるライターを募集していたりします。

養成講座の評価をきちんとしてあるサイトは2018年の2月の段階でまだひとつもみたことがありません。比較サイトはほぼ、この種のステマサイトだと思って間違いありません。似たようなところの名前が出て、同じような養成講座が「いい!」と評価されてリンクがあります。言うまでも無く「教えます」「説明します」「ここだけの口コミ情報」みたいなものは、ぜーんぜん信用する価値はないのですが、他の業界では廃れつつある露骨なステマもネットに弱い日本語教師相手にはまだまだいける、ということなのか、他所でダメになった業者などがやってるっぽいんですね。

 

高齢者は歓迎される?

日本語教師養成講座に限らず資格試験のほうも、ターゲットは50代以上です。この高齢化は日本語教育のことを考えると深刻なのですが、養成講座や資格ビジネス界隈は、むしろ「高齢者でも挑戦できる!」という広告で勧誘しています。しかし、2018年3月の時点で調べたところ、たとえば、ヒューマンアカデミーは、自分の日本語学校の教師の求人は40才代までで、日本語教師以外の職員の求人は35才までです。

👉 受講する日本語教師養成講座を主催する母体の学校の求人は必ずチェックしましょう。「校名 求人」で検索すれば出てくるはずです。

👉 日本語教師の年齢に関する調査は少ないですが、日本語教育能力検定試験の年齢比はこちらあります。
https://webjapanese.com/blog/j/shiryoo/suii/#i-10

 

文化庁への質問と回答

文化庁の説明のページに問い合わせ先のメールアドレスがありましたので、質問を送ってみました。比較的早く回答をいただきましたので、全文を引用する形で掲載します。最初は主に資格の認定に関するルールの確認です。次に、認定の内容に関してメールを送っています。今は、2通目の回答待ちです。

文化庁のサイト
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/

以下、質問と回答です。編集なしで全文転載しています。□ではじまるピンクの字の部分が文化庁の回答です。

 

1通目 主に認定の期間などに関する質問 

送ったメールの原文

———————-ココカラ———————-

日本語教室を目指される方のためのサイトを運営されているとのこと,情報提供に御協力をいただき,ありがとうございます。文化庁としても,問合せや広報に努めているところですが,現在は届出の処理を優先対応すべきという観点から,HPの広報が十分できておらず,担当として申し訳なく思っております。

頂いた御質問について以下お答えいたします。

1)平成29年4月1日以降の届け出と受理までの期間の単位の認定はどうなるのか?

□ 原則として受理日以降の入学者が対象となります。ただし,今回は4月開講の教育機関が11月に届出書類を提出された場合でも,書類審査や差し替えに時間を要し,開講日を過ぎてから受理され るというケースも発生しております。そのため,届出書類を提出いただいた教育機関に対しては,受理日前に開講した場合,受理された内容と同様の教育が行われるよう補講などで適切に対応いただいた上で,届出受理番号記載の修了証を発行するように指導を行っております。

□ 上記の件については,届出いただいた全ての教育機関に伝達しておりまして,お問合せいただいた教育機関にも伝えております。ただ,■■様以外にも多くの方から問合せをいただきましたので,当該教育機関には担当者を文化庁に呼び,個別に指導を行っております。

→ 受理日が基準で、その日より前の単位は、認定されない。補講をしないといけない。

→ そして、このこと(受理日以前の単位は認定されない)は、すべての届け出期間に届け出時に通達済ということ。後の回答でも「届出受理後に講座を開設されることを原則として指導しております」とあります。2017年4月以降に始まった日本語教師養成講座は、受理まではやるべきではなかった。ただし「指導」なので強制力はない。
そして、認定されないことを知っていて開講を強行したところは、最初に「受理されるまでの単位は認定されない」とアナウンスをしていないところはオカシイ、ということになります。もちろん無料で補講はされなければ詐欺ですが、されたとしても無駄に使った時間に対する保証はどうなるんでしょうか?

2)GW前に受理された養成講座は最初の審査で受理された。その後は、再提出になったと聞いています。しかしこれは西日本新聞の報道によるもので、文化庁のサイトではアナウンスされていません。この「違い」は、公式に存在するものなのでしょうか?

□ その情報は正しくありません。11月から届出の受理が始まっており,届出書類が到着した教育機関から,順次書類の確認を行っており,確認が済んだ教育機関から受理の手続きを行っております。11月に申請をいただいても,受理されるのがGW明けということもあります。書類確認の期間については,2か月程度を目途としてアナウンスしておりますが,修正が必要な資料が多い場合,また適切に修正が行われない場合は受理に時間がかかることがあります。

→ 再提出ではない。届け出順で、書類の確認が終わった順番であった。ということですね。私も西日本新聞の報道で何かの区切りがあったかとツイートしたり、一覧にも書いたので、修正しておきます。ただし、届け出が100講座以下だったということは確実なようで、数的には、それほど多くはないこともあり、書類の不備でのすんなり提出できなかった、みたいなことはあったのでは、とは思います。実際の学校側から問題があってストップしているという証言もありましたし。しかし、個別の件は回答できないでしょう。わかったのは、この期限の切り方(GW前後で再提出)は違う、ということですね。

3)届け出と受理は、8月以降も継続して行われるのでしょうか?それとも、平成29年分はこれで終了で、来年はまたあるのでしょうか?

□ 期限は特に区切っておりません。その必要はないと考えております。現在も随時,相談及び書類の提出が続いており,これまで同様の書類確認を行っております。

→ 審査は継続していて、今後も受理講座は増える可能性がある。しかし受理後から開講という原則はあるので、受理された講座のPDFは定期的にチェックする必要がありそうです。

(*4)の質問は、区切りがあるなら、という前提の質問だったので省略)

5)同じく、3)に関連して、届け出と受理が年をまたいで継続的に行われる場合「受理される日までの単位は認定されない」というルールなのでしょうか?

□ 申請団体には,届出受理後に講座を開設されることを原則として指導しております。既に開講されている講座の申請(遡っての申請)は認めておりません。

→ 受理日が基準ということですね。最初に受理されたのは、4月7日です。本来なら、受理されてない段階で開講してはいけなかった。2017年の4月や7月に受理されていない状況で日本語教師養成講座を始めたところは、問題だと思います。私が知る限り、今受理されている日本語教師養成講座は、ほとんど4月生も募集していてスタートしていたはずです。ヒューマンは受理されていない間も、4月生も7月生と募集していました。サイトでこの受理の件を説明したのは自分の講座が受理された7月後半でした。
無償の補講は当然ですが、受理までは単位認定されないことを知っていたわけですから、最初に説明&合意の確認がなかったのなら信用に関わる大問題です。また、補講があったとしても、無駄になった時間分の保証もすべきなのではと思います。

6)過去の修了者であるという証明について

平成29年4月1日以前に講座をはじめたところは文化庁の受理がなくても、日本語教師としての要件を満たすと解釈していますが、この平成29年4月1日以前に420単位時間の日本語教師養成講座であった、という証明が難しいところがあるようです。就職の際に、どうやって修了者であると証明するか、よりどころとなるものがありません。

□ その必要はありません。修了証書及び成績証明書には,講座の受講期間(入学日と修了日)を記載していただいております。記載がない場合は,その旨確認を行うこととなります。

→ 修了証書、成績証明書が必須ということですね。また、このやり取りで、平成29年4月1日以前にスタートした講座が有資格であることも改めて確認できました。

これ以外にあるということを確認する方法はありますでしょうか?できれば、文化庁の実態調査で420時間の講座を提供していたとわかっているところ(おそらく通信や海外などすべてをカバーはできないと思いますが)のリストを公表していただければと思います。ご検討いたいだけないでしょうか?

□ 文化庁は,日本語教師養成講座のすべてを把握し,管轄しているのではありません。今回は法務省告示基準に基づき,あくまで届出をいただいた教育機関の教育内容については確認いたしますが,届出を行わない養成講座は各団体の裁量によって多様な養成講座を実施いただいているものと考えており,他の機関をリスト化することは考えておりません。

→ 過去に行われていた日本語教師養成講座に関して、文化庁で把握していたもの(文化庁の実態調査に届け出をしていたところ)は、問い合わせれば回答できるが、すべては把握していない。リストの公表はないとのこと。

→ 例えば、2017年4月以降の受理講座の修了生以外は、就職時の面接の時などは、学校が文化庁に問い合わせをしてくれるかもわからないし、文化庁で把握しているかわからない可能性もあるので、日本語教師がまず自分で文化庁に確認する、文化庁で把握してなければ、自分で証明できるものを探すしかない、ということになりそうです。受理校はだいたい文化庁は把握していると考えてもいいかなと思います。確実ではないですが。

文化庁実態調査
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

御質問いただきまして,ありがとうございました。
同様の御質問は,文化庁にもお電話やメールなどで多数寄せられておりまして,多くの方に情報が届いていないということは,私どもも痛感しております。業界団体のセミナーや講演・研修会などで御説明させていただくとともに,HPでの正確な情報の開示に努めてまいります。

———————-ココマデ———————-

以上です。

 

2通目 受理の基準など

海外の講座、NLP心理学などシラバス外の講座との線引き、受理の基準、受理後の定期審査はあるのか? というような質問を2017年の8月14日に送りました(11月27日に、ブログを読んだ方から情報提供があったので、その「海外の講座は受理制度前のものでも資格と認めないという噂があるが本当か?」という追加の質問を送りました)。2018年3月29日の時点で回答はありませんが、返信があり次第、掲載します。

👉 追記 2018年9月の時点で回答はありませんでした。おそらく回答が来ることはないと思います。残念です。

 

まとめと展望

今後は日本語教育検定試験を重視するんじゃないか?という話もあります。しかし、それはわかりません。おそらく、文化庁に受理された日本語教師養成講座が増え、業界のマジョリティになったら、また420時間重視になるでしょう。業界の都合で右往左往するのはバカバカしいという気がします。

今、これなら日本語教育でメシが食えそうだ、と言えるのは2つしかありません。

大学で博士課程まで進むか(修士だけだと大学でも長く安定して仕事をするのは無理になりつつあります。海外でも博士マストになりつつあるそうです)、もしあなたが若いなら、大学で国語の教員免許を取るべきです。小中学校は平均年収600万。職場環境はこれからどんどん整備されるはずです。引退時の年収は1000万近く。地域で日本語を教えるチャンスもあります。海外の日本人学校の就職でも教員免許は必須です。

もうひとつ、日本語教師の働き先として、可能性が出てきたものに介護があります。

2017年に、技能実習生の介護のビザの日本語研修は日本国内で行われる可能性が大きくなってきました。

技能実習生制度では、国内の受入機関が日本語サポートをやることになるので、そういうところ(なんとか協同組合みたいなところ)がやるか、そういうところからの外注を受託してやるか、ということになりそうです。民間の日本語学校が外注先になる可能性もあります。いずれにせよ、日本語教師にとっては、民間の日本語学校とは違う雇用主が現れることになる、ということです。しかも、介護では今後10年間で10万人単位、最終的には30万くらいの補填が必要という試算もありますか、留学生の数を超えることは確実です。

また、技能実習生とは別の「介護ビザ」という資格もできました。介護はとにかく人材不足が深刻なので、いくつかルートを作っている最中です。この介護ビザは、基本的には留学ビザと同じで、民間の日本語学校に2年間勉強して、介護系の専門学校に進むというものです。これもどうなるかはわかりませんが、すでに従来の日本語学校ではなく介護や医療系の法人が日本語学校を作り始めたりということになってきています。

この2つは可能性があるのではと思いますが、あくまで「可能性」です。ご自身で情報収集をして、道を模索してください。

 


 

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