やさしい日本語

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やさしい日本語


NHKによる解説動画お産

現在のところ、やさしい日本語には大きく分けると2つの系統がある。自治体などでも参照する先が分かれている。それぞれのサイトなどに詳しい説明がありますので、ここでは概要だけ。

👉 2019年の年末に文化庁と入管がやさしい日本語のガイドラインを作るという報道がありました。国による統一基準ははじめて作られることになります。

神戸の震災後にスタート。防災、災害時の情報提供が軸。弘前大学は2段階に分ける。旧3級合格が前提でオーソドックスな日本語学習経験を経てきていることが前提となっている。

http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/EJ1a.htm

👉 サイトは2020年の1月17日(神戸の地震の日)に閉鎖されたので、いくつかの文書は独自に保存しました。後述。

上のツイートは、庵氏がネットでみずから投稿したやさしい日本語としては始めてのもの?

国内で生活する人のためのやさしい日本語という位置づけ。自治体などでの活用も促進する。自著の生活日本語(にほんごこれだけ)が目安?150時間くらいの学習。ただし、学習のゴール設定にはしないとのこと。

多文化共生と言語的マイノリティーへの情報提供を考える「やさしい日本語」研究グループのホームページ

やさしい日本語――多文化共生社会へ (岩波新書) 庵 功雄

科研などでも予算をとって、いろいろ自動化なども試みている。

やさにちチェッカー
http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/nsindan/
http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/checker/

形態素解析
http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/unicheck/
http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/komeda/

その他(要ユーザー登録が必要なもの)

  • 例文検索システム
  • 公文書作成支援システム
  • とりもちシステム

上とは別(関連はあるようです)に、自然言語処理の研究者とのコラボでいろいろと自動化も研究されている。

http://www.jnlp.org/research/Japanese_simplification

ほとんどの自治体は弘前大学のものをベースにしている。リンクを貼ることがほとんど(2020年1月以降、これらがすべてリンク外れとなる)。弘前大学の監修を受けて独自に簡易版を作ったケースも多い。「やさしい日本語 ガイドライン」で検索するとたくさんヒットする。

簡易版「やさしい日本語」(書き言葉)の作り方 - 埼玉県
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0306/yasashi-nihongo/kaniban-yasashiinihongo-no-tukurikata.html

長浜市 やさしい日本語の手引き
tebiki.pdf https://www.city.nagahama.lg.jp/cmsfiles/contents/0000006/6329/tebiki.pdf

山形県 やさしい日本語の手引き
https://www.pref.yamagata.jp/ou/kankyoenergy/020072/kochibou/pdf/bosai/yasashii_nihongo/yasashii_nihongo_tebiki.pdf

在留外国人の日本語の習熟度は違い、すでに帰化した人もいるので、この数とサポートすべき言語とは必ずしもシンクロしないが、一応の目安にはなります。法務省は地位別でも出しているので、地域別の偏りもわかります。

日本語学習者数としてカウントされる数とも違うことに注意。多言語はどこまでサポートすべきかは、いろんな考え方があるが、数字も重要。大多数の国で英語は義務教育で学習されていることも無視できない。

言語別のだいたいの順位だと、トップ20で、順に、中国語・ベトナム語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ネパール語・インドネシア語・スペイン語・英語・タイ語・ヒンディー語・ミャンマー語・タミル語・シンハラ語・ウルドゥー語・ベンガル語・クメール語・モンゴル語・マレー語・ロシア語となる。(最後のロシア語は9116人)

となるので、国で多言語サポートの重要言語を決めるなら 中国語・ベトナム語・韓国語(朝鮮語)・フィリピノ語・ポルトガル語・ネパール語・インドネシア語・スペイン語・英語・タイ語の10言語になる? これを基本(サポート義務)として、地域別に+3
5言語とすれば、かなりの部分がカバーされるのでは。

👉 公的な日本語学習コンテンツは、国際交流基金は英語スペイン語重視で中国語が遅れがち。その他の言語はバラバラ。他の省庁の国内向けのものは地域別で統一感がないが、英語、韓国語、中国語、ポルトガル語はあっても、ベトナム語、ネパール語は少なく、明らかに就労系の人達が視野に入っていない。

2021年6月の在留外国人のランキングと人数

No国名人数主な言語
01中国 745,411 中国語
02ベトナム450,046 ベトナム語
03韓国416,389韓国語
04フィリピン277,341フィリピノ語
05ブラジル206,365ポルトガル語
06ネパール97,026ネパール語
07インドネシア63,138インドネシア語
08米国53,907英語
09台湾52,023中国語
10タイ51,409タイ語
11ペルー48,105スペイン語
12インド36,777ヒンディー語
13ミャンマー35,692ミャンマー語
14スリランカ29,353タミル語、シンハラ語
15朝鮮26,792朝鮮語
16パキスタン19,149ウルドゥー語
17バングラデシュ17,394ベンガル語
18英国16,568英語
19カンボジア16,054クメール語
20モンゴル12,976モンゴル語
21フランス11,836フランス語
22カナダ9,762英語
23マレーシア9,587マレー語
24オーストラリア9,138英語
25ロシア9,116ロシア語
26ボリビア6,144スペイン語
27トルコ6,087トルコ語
28ドイツ5,888ドイツ語
29イタリア4,138イタリア語
30イラン4,071ペルシャ語
31ウズベキスタン3,632ウズベク語
32アフガニスタン3,476パシュトゥー語・パーリ語
33ナイジェリア3,309英語
34スペイン3,232スペイン語
35ニュージーランド3,095英語
36アルゼンチン2,936スペイン語
37ラオス2,872ラーオ語
38シンガポール2,785マレー語
39メキシコ2,669スペイン語
40ガーナ2,523英語他
41コロンビア2,471スペイン語
42ルーマニア2,222ルーマニア語
43パラグアイ2,119スペイン語
44エジプト1,933アラビア語
45ウクライナ1,860ウクライナ語
46スウェーデン1,428スウェーデン語
47ポーランド1,390ポーランド語
48オランダ1,230オランダ語
49アイルランド1,106英語
50カメルーン1,052フランス語・英語

👉 多言語の国も多いので、厳密に言うと50位までで1000人以上が話す言語は100以上ある可能性もあります。

👉 在留外国人統計(旧登録外国人統計) 在留外国人統計 月次 2021年6月 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

*城陽市の「家庭ごみの分け方・捨て方

*佐賀市のゴミ関連の動画

*自転車の交通ルール © 公益財団法人 仙台観光国際協会(2016年)

在住外国人向け暮らしに役立つ動画「神戸市からのお知らせ 知っていますか?」

弘前大学は災害時の語彙、表現に関しては手厚い。しかしサイトは2021年1月に閉鎖されました。webjapaneseが独自に保存したファイルについては、Archive参照。

動画など

*東京都による動画

*東京都によるテロに遭ったら、という動画

*大阪市の動画

概要

医療通訳者が不足していることもあり、2018年ごろから医療現場でやさしい日本語を採用するという声が大きくなってきた。ワークショップは行われているが、サイトは少ない。

在住外国人のための医療ハンドブック | おおいた国際交流プラザ
http://www.oitaplaza.jp/japanese/handbook

「やさしい日本語」を用いた外国人診療[提言]|Web医事新報|日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=12357 

オノマトペシート - 医療×「やさしい日本語」研究会
https://easy-japanese.info/onomatopoeia

動画など

*医療におけるやさしい日本語の動画

【ビデオでわかる日本の出産】

法テラスによる法律用語のやさしい日本語化

法律や裁判で使うことば 【用語集】(やさしい日本語)|法テラス https://www.houterasu.or.jp/forforeignnationals/yougoyasasiinihongo/index.html

ヒューマンアカデミー、国際交流基金がやさしい日本語のインバウンドへの活用ということで、「やさしい日本語ツーリズム」というものを始めた。おそらくやさしい日本語に関連して使えるお金は最も多いところなので影響力は大きい。電通と日本語教育関連の大手との提携で進められる。後にやさしい日本語講師という資格に発展する。電通版やさしい日本語とも言えそう。

https://yasashii-nihongo-tourism.jp/

研究会の日本語教師向けのメッセージ研究者向けのメッセージ

2016年夏に、電通の吉開 章氏が中心となり、東京外国語大学の荒川洋平氏を座長に据え、主に台湾からの観光客の呼び込みの方策として観光地の「やさしい日本語」対応が有効であるという主旨でスタート。東海大学の加藤好崇氏、その後、跡見女子大の村上雅巳氏が研究会のメンバーに加わる。

吉開氏は、日本語学習者のFacebookのコミュニティ(2016~? )や、このやさしい日本語ツーリズム(2016)などで日本語教育の世界で知られるようになり、その後、国際交流基金と電通でやさしい日本語のリサーチをやったり、日本語教師養成講座の最大手でやさしい日本語の講師のコースを作ったりと、現在、やさしい日本語関係で、活動をしており、電通の日本語教育関係の事実上の顔として大きな影響力を持っている。

吉開氏には以下の論文があるとのこと。
訪日観光客・日本製品消費者としての日本語自律学習者についての考察〜
https://goo.gl/bstrP8

ここで、査読付き論文となった経緯として「国際交流基金上級専門家で「冒険家(独学者)」の応援団長の 村上 吉文 (Yoshifumi Murakami)先生や、当時香港で余暇・消費としての日本語教育に注目していた、現茨城大学の Masaki Seo先生、そして 野島 恵美子 (Emiko Nojima)先生ほか初期の頃から「日本語コミュニティ」を支えてくださった先生方のおかげです。」という説明がされている。

電通と国際交流基金の共同調査

2016年12月 電通と国際交流基金の共同調査が発表される。国際交流基金が日本語学習者に関してインバウンドがらみの調査をするのは異例。

電通と国際交流基金がやさしい日本語はインバウンドに有効であるという調査結果を発表しました。 その後、補足として調査に偏りがあるという説明が掲載されました。

補足から以下抜粋

  1. この調査は各国地域の18-64歳男女を対象としています。高校生以下で日本語を学習している人、65歳以上で日本語を話す人など、各国地域で多数いますが、その数字は含まれません。また台湾は中国語(繁体字)、香港は広東語、韓国は韓国語で質問をしていますので、これらの言葉を解しない人(例えば香港における海外からの労働者)などは入っていません。
  2. 本調査は調査会社が保有する回答協力者(パネル)を対象に実施したWebアンケートであり、世論調査のような、地域性も反映した層化抽出法などは使用していません。回答サンプルにおいては都市部に偏っている可能性はあります。
  3. 学習経験率が各地域とも高いため、本調査では性年齢別の学習経験者を母集団とした各種分析が実現できていますが、一部母集団サンプルが30未満の層は参考値としています。学習経験率が低い国地域で人口推計と各種分析まで同時に行うにはサンプル数を大幅に増やす必要があり、全世界の国地域で実施するのは事実上不可能といえます。
  4. 学習方法については、台湾では独学についてネットやテレビなどの回答を分けていません。
  5. 学習方法の「大学、短大、専門学校の専攻・第2外国語として」は、各国地域の教育制度に応じて多少翻訳を変えています。

調査の意図は?

この調査では、結論として「3人集まれば70
80%の確率で1人は日本語を話せる人がいる」とわかりにくい文言で書かれており、調査後の講演などでは「台湾の観光客は3人に1人は日本語が話せる」と説明されている。「4人に1人」でいいと思うが、3人に1人と言いたかったのだと思われる。さらにやさしい日本語は外国人観光客を呼び込むのに有効であると結論づけている。

しかし、そもそも補足にあるような地域、年齢のサンプルの偏りがあり、世界の中でも超例外的に日本語学習者の比率が高い台湾の結果を他国に当てはめるのは無理なことは明らかで、台湾だけに絞っても、無理矢理に調査結果から考えたとしても、台湾から来た人にどの程度「やさしい日本語」でいけるのか、それを日本語学習者1)に限定したらどうか、さらに他の国からの観光客ではどうか、みたいなことが観光地の人は知りたいところだとすると、順に10人に2人、10人に4人、最後はわからない、と解釈するのが自然だと思われる。サンプルに偏りがあるとしながら調査結果の伝え方もかなり恣意的で疑問が残る。こういう調査を電通が行うのはいいとしても、長年学習者数調査をしてきた国際交流基金が行う理由はよくわからない。

👉 もう少し詳しい検証はこちらで

やさしい日本語講師?

電通とヒューマンアカデミーが作った新たな資格。

2017年1月からヒューマンアカデミーでやさしい日本語講師養成講座がスタート。電通と共同で発足した「やさしい日本語ツーリズム研究会」において「やさしい日本語」を教えるリーダー育成プログラムを開発したとのこと。その後1月からスタート。

ニュースリリース

現在の講座の説明のページ

http://haa.athuman.com/academy/japanese/course/detail/11621330.asp

スタート時は、受講資格はヒューマンアカデミーの日本語教師養成講座の受講者で、文法事項の受講を修了した上で追加の25時間の講義を受ければ「やさしい日本語講師」として認定するということになっている。入学金込みで144000円。ただしヒューマンアカデミーが考える「やさしい日本語」がどういうものなのか、という説明や論文などは見当たらない。しかし、その後、電通の協力もあるのか「有資格者」であるとして、自治体などいろんなところに派遣されている模様。

しかしやさしい日本語は他にも独自に活動する団体があり、レクチャーなどもしている。1社が作った「有資格」をやさしい日本語を教える資格として流通させることに問題がないか?という議論はあってもよいのではないかと思われます。そもそもヒューマンアカデミーが考えるやさしい日本語とは何か?という十分な説明がないのも不安です。

インバウンド色は消える?

2017年3月に荒川氏退任。東海大学の加藤好崇教授が代表に。

2018年以降は、ツーリズム関連の記事は減り、やさしい日本語の普及にシフトした模様。2019年6月の時点でやさしい日本語ツーリズム研究会からは学術関係者の名前は消え、やさしい日本語の観光地における有効性ややさしい日本語そのものに関する学会発表や論文などは見当たらないまま。国際交流基金のサイトにもやさしい日本語のインバウンドへの活用に関する記述は見当たらない。台湾の日本語学習者調査の資料として活用されているということも無い模様。

2019年7月から新体制とのこと。

https://yasashii-nihongo-tourism.jp/aboutus2019

初期メンバーのインバウンド系の会社の人物が外れ、災害時の翻訳サポートなどで有名な翻訳会社が協賛となり、インバウンド色は消えました。「産学連携を解消し」学術関係者の名前も消えました。電通のダイバーシティラボの一事業として継続、「産学連携および1社協賛形式を解消し、電通を主体とした、より広がりと推進力のあるプロジェクトとして再スタートします。」とのこと。今後は、やさしい日本語のスポンサー的なサポートになるような印象です。

やさしい日本語の認定ビジネス

参加費用は79,750円(税込)で、ヒューマンアカデミーやさしい日本語指導者養成講座修了生は1割引の71,775円(税込)と連携がある模様。出版社では修了者の名前を公開している。

「入門・やさしい日本語 認定講師養成講座」修了者一覧 - アスク出版
https://www.ask-books.com/yasashii_nihongo/

追記1 ヒューマンの講座終了?

2021年の2月にサイトを確認したところ、上記の講座の記述はなく、オンラインの月々3000円の講座になったいた。ヒューマンアカデミーの講座は終了した?

追記2 アスク出版に移行。吉開氏の著作の理解がやさしい日本語講師の認定基準に

かわりに2020年10月から、以下で継続する模様。zoomによるオンライン講座で約一ヶ月、木日の11日、各2時間合計22時間。

参加費用は79,750円(税込)で、「ヒューマンアカデミー「やさしい日本語指導者養成講座」および「日本人のための「やさしい日本語」活用講座」(まとめて「ヒューマンやさ日関連講座」)修了または受講中の方は、1割引の71,775円」とのこと。

「入門・やさしい日本語」認定講師養成講座
https://kokucheese.com/event/index/600883/

  • 主催:にほんごぷらっと(ことばとまなびインターナショナル株式会社)
  • 協力:株式会社アスク出版
  • 後援:株式会社BRICK's
  • 企画・運営:吉開章(「入門・やさしい日本語」著者)

→ 「講座は、アスク出版「入門・やさしい日本語」の中で紹介した方々を中心に外部講師としてお呼びし、著者である私の世界観を共有するという趣旨で構成しました」とのこと。「私の世界観を共有」して認定講師になるというのは、よくわからないが…(数ヶ月後、この世界観という語は消えました)。

22年1月22日の名取市のやさしい日本語講座では「「入門・やさしい日本語」認定講師」という肩書きの人が講師になっていた。おそらく電通が地方自治体に派遣するようなパイプがあるのではと思われる。自治体でこれが慣例となれば、今後、この「入門・やさしい日本語」の「認定」の影響力は大きくなっていくのでは。
宮城県名取市で、やさしい日本語を勉強するイベントがあります | やさにちウォッチ
https://tsutaeru.cloud/watch/entries/20211223120000.html

追記3 「正式な認定講師」本格的な電通版やさしい日本語認定ビジネスが開始

書籍に関連したやさしい日本語を学習する教材の配布が始まった模様で、無償だが以下の条件が課されている。

  1. 個人的に使うのは自由です。よろしければ書籍『入門・やさしい日本語』もぜひご購読ください。
  2. 企業・団体・グループの勉強会でご使用される際、
  • A 外部講師を呼ぶ場合は必ず『入門・やさしい日本語』認定講師または著者を招いてください。
  • B 外部講師を呼ばない勉強会、または自習の場合は、参考書として書籍版『入門・やさしい日本語』の購読をご推奨ください。

やさしい日本語ツーリズム研究会 - 投稿 | Facebook

関連論文、書籍

観光接触場面における「やさしい日本語」の可能性と課題 : 柳川市やさしい日本語ツーリズム事業の実例からの考察
https://ci.nii.ac.jp/naid/40021535866
観光接触場面のツーリスト・トーク研究 : 観光先進国に向けた新たなオモテナシの生成
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006497777

やさしい日本語とやさしい英語でおもてなし 加藤好崇 藤田 玲子
https://amzn.to/2LqMbKg

「やさしい日本語」で観光客を迎えよう—インバウンドの新しい風 加藤好崇
https://amzn.to/2Jaqzzf

やさしい日本語と手話

やさしい日本語との関連の書籍が2021年に発売され、以下のような議論があった。関連の書評なども以下にまとめてあります。

⚡️「『ろうと手話 やさしい日本語がひらく未来』に関する議論」
https://twitter.com/i/events/1458583567114506243

その後、著者はFB上でも議論については言及はなく、監修者の好意的な書評を引用するのみで、関わった日本語教育関係者によるネット上の言及もピタリと無くなった。少なくとも日本語教育の世界のネット上では上の議論は無かったことになりつつある。書名で検索すると、全国の公立図書館などに大量に納本されていることが報告されている。

関連記事

ろう教育と「やさしい日本語」――学会の研究テーマにも     | にほんごぷらっと
http://www.nihongoplat.org/2018/08/22/yasasii_nihongo/

21年の12月の日本語教育関係者のSNS上の読書イベントの課題図書だったことは前月に決まっており、それが始まったタイミングでの出来事だった。日本語教師のツイッター上の読書イベントの21年の12月の課題図書だった模様。主催者の友人でもある吉開氏の自薦だったとのことだったが…読書イベントでも無かったこと扱いになり課題図書のサイトのリストからも削除されている。
https://sites.google.com/view/japanese-teachers-bookclub

電通からにほんごぷらっとに事業移管

電通から2023年の元日に以下のアナウンスがあり

「2023年1月1日より「やさしい日本語ツーリズム研究会」の事業主体が株式会社電通から日本語教育関連メディアで『入門・やさしい日本語』認定講師養成講座を主催する「にほんごぷらっと(日本語教育情報プラットフォーム)」(代表世話人石原進)に移行します。実務的はにほんごぷらっとの運営事務局であることばとまなびインターナショナル株式会社(代表取締役社長木内健太)への移管となります。」

にほんごぷらっとは、「私たちが開設した日本語教育情報プラットフォーム、通称「にほんごぷらっと」は、そうした多種多様で多彩な日本語教育のニーズに応えるためのホームページだと考えています。日本語教育をめぐる様々な情報を多くの人たちと共有し、課題の解決のための足掛かりを発掘できないか。そんな問題意識を持っています。(2023年1月1日のサイトより引用)」ということだったのですが、メディアではなく、日本語教育関連の事業体ということだったようです。

22年の12月に別府大学教授の篠崎大司氏主催の「篠研企画 庵功雄オンラインセミナー「やさしい日本語」の理論と実践-日本社会との関係性について考える-」というものが行われ、庵功雄が講師として招かれている。ZOOMでのオンラインセミナーで、9:00-16:30 で」20名。会員は18,000円(税込19,800円)、一般は20,000円(税込22,000円)ということになっている。

会員とは「※なお、「会員」とは、篠研の検定会員(正会員、閲覧会員、普通会員)および修了生、サロン会員(「篠研サロン-ビジネス実践部」「同-教育実践部」)ならびに「教えて!」会員(正会員・閲覧会員)をいいます。「一般」とは、上記サービスをご利用でない方を言います。なお、大躍進会員は無料。無料メルマガにご登録のみの方は、会員には含まれませんのでお間違いのないようご注意ください。」とのこと。

会員の種別は、なかなか見当たらないが、このページによると月1回のオンラインイベントで、会員は6,600円/月(税込)(ただし、初月500円(税込)を納めることになっているようで、主催者の個別コンサルティングの料金は、1時間77000円のところ以下のような料金設定になっているので、2種類の「会員」がいる模様ですが、会員、正会員、大躍進会員の区別はよくわかりませんでした。

  • ■検定修了生、「篠研サロン-ビジネス実践部」メンバー、大躍進会員 : 33,000円(税込)
  • ■篠 研 会 員  : 55,000円(税込)
  • ■一   般 : 77,000円(税込)

このセミナーは日本語教育学会の研究会情報にも掲載されていました。

それぞれのやさしい日本語に即したツールは上記のとおり。ここでは、汎用的に使えるツールや情報などを中心に。

日本語教育関係者にはおなじみの機能ですが、ふりがなは、ワード、ワード互換ソフト、一太郎などのソフトで手動で入れることができます。「ソフト名 るび ふりがな」などで検索すると入れる方法が出てきます。一太郎は独自の自動ふりがな機能があります。10万字でも1,2分で終わります。90%以上の精度があると思いますので、後はふりがな機能があるソフトで開いて修正すればOKです。

デジタルのあれこれ でもデジタル文書上のふりながについて説明があります。

活用できそうなツールなど。

食べられるインクを活用した包装しない「脱プラスチック野菜直売所」
食べ物含む実物に印刷出来る。
https://www.mdn.co.jp/di/newstopics/69915/

Wordpress のプラグイン

伝えるウェブ | やさしい日本語エディタ Word Pressプラグイン
https://tsutaeru.cloud/plugins/wordpress.html

  • やさしい日本語へのAI変換+わかちがき
  • 手動のルビ振り
  • 無料は300字で月間コール数(呼び出し回数のことだと思われる。これを超えると変換はできなくなる?多分、書き直したり修正したりする数もカウントされるので、=投稿回数ではなさそう)が、300まで。有料(月額1万、2万、問い合わせの3段階)は、1000,1万、無制限に近い?という三段階。

検証

インストールしましたが、エラーでAPIキーが取得できなかったので、仕様をみての感想です。

ふりがな機能は他にも選択肢がある

手動のふりがな振りは、すでに無料で着実にアップデートされているプラグインのWP-Yomiganaがあり、他にも選択肢がある。おそらく開発が終了しても、誰かが作るであろうと思われる。従ってふりがな機能は他のサービスで無料で代替可能。

👉 そのWP-Yomiganaプラグインでやったサンプル

AI変換は未知数

あとはAI変換とわかちがき変換の性能に月額1万円を払う価値があるかどうかだが、現状、やさしい日本語の自動変換の完成度は高いとは言えず、結局、元文書から(変換されやすいように)校正から変換、変換後も修正してになるので、利用する価値は疑問。変換は他のオープンソースの変換サービスもあ。やさしい日本語になれた人なら、変換サービスの利用は必要ない。

音声読み上げ?

音声読み上げも、Wordpressには、無料、有料のプラグインが無数にあり、信頼性の高いものを選べるという状況を考えると、この会社の有料サービスを使う理由はあまり無い。つまり、このサービスはかなり割高という印象。パッケージになっているから便利ということを考慮に入れても、有料プラグインの相場を考えても、無料で1万字まで、3000円で無制限のライセンスでアップデートのサポート付き、くらいが妥当な金額なのでは?

公的サイトなどで導入は進む?

しかし、この会社が作っている官庁系で使われているCMSにも対応しているようで、おそらくやさしい日本語に省庁が本腰を入れたので、地方自治体などの法人需要をみこして、ワードプレスにも対応したのだと思われる。今後、各所で予算化され、区役所や市役所で、このプラグインの導入が進むのかもしれないが、公的なサイトのやさしい日本語化を1社の変換技術に依存するのもリスクが高いように思われる。

結論:基本、不要。高い

結論:個人や公的なサイトでも、やさしい日本語がわかる人がいれば、このプラグインは不要。WP-Yomiganaと、音声読み上げを案内するなら、その都度クオリティが高いプラグインを探せばいい。でも、パッケージになっていて楽だし予算は出るからということで、今後省庁から地方自体体まで、導入は進むのかもしれない。この会社の「やさしい日本語」が日本のやさしい日本語のスタンダードになる可能性もある。となると、在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインに関する有識者会議は、このサービスをしっかりチェックしウォッチする必要があるように思われる。

👉 Simplified Japaneseという英訳だと、簡体字(Simplified Chinese)と繁体字(Traditionnal Chinese)との関係と同じという誤解を生みそう。やさしい日本語は関係者によって「簡易日本語という考え方とは違う」という説明がされているようなので、それとの整合性も疑問。

2019年あたりから法務省と文化庁がやさしい日本語を本格的に推進することになった。

2020年、法務省と文化庁でガイドラインを作ることを発表

法務省:「在留支援のためにやさしい日本語ガイドライン」に関する有識者会議の開催について
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/nyuukokukanri15_00004.html

有識者メンバー

  • 庵 功 雄 一橋大学国際教育交流センター・言語社会研究科教授
  • 岩 田 一 成 聖心女子大学文学部日本語日本文学科准教授
  • 新 居 みどり 特定非営利活動法人国際活動市民中心理事
  • 水 野 義 道 京都工芸繊維大学名誉教授
  • 山 口 照 美 大阪市生野区長
  • 山 脇 啓 造 明治大学国際日本学部専任教授
  • 横 田 宗 親 一般財団法人自治体国際化協会(クレア)多文化共生部長

4回の会議を経て、2020年にガイドラインが作られた。

在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/plainjapanese_guideline.html

具体的なやさしい日本語の作り方、言い換えは無く、おおまかなやり方だけが説明されることになった模様。言い換え例は自治体の文書で出てくるような名詞の用語の説明文のみ。

動画ではなぜか子どもっぽい話し方のコトリン?が進行する。「子どもに話しかけるように優しく」というイメージ?違和感が残る。

2020年8月に公開。おそらく今後は自治体のやさしい日本語関連はこれが基準になりそう。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri15_00026.html

2019年(令和元年)の文化庁の国語に関する世論調査に「外国人と日本語に関する意識」という項目がが追加された。やさしい日本語は法務省と文化庁で推進することになった模様なのでそれが反映されたという形。今後継続的に続く項目になるのかは不明。

委員

  • 岩 田 一 成 聖心女子大学現代教養学部日本語日本文学科教授
  • 関 根 なつき 一般財団法人自治体国際化協会(クレア)多文化共生部多文化共生課長
  • ダンチュンフン 神戸市市長室国際部国際課多文化共生専門員
  • 新 居 みどり 特定非営利活動法人国際活動市民中心理事
  • 平 田 春 奈 静岡県くらし・環境部県民生活局多文化共生課
  • 村 田 陽 次 東京都生活文化スポーツ局都民生活部地域活動推進課課長代理
  • 山 脇 啓 造 明治大学国際日本学部専任教授

話し言葉のやさしい日本語の活用促進に関する会議 | 出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/12_00053.html

  • 岩田 一成 聖心女子大学 日本語日本文学科 教授
  • 大神あゆみ 大神労働衛生コンサルタント事務所 所長
  • 加部  勇 株式会社クボタ 専属産業医
  • 齋藤 秀弥 中央労働災害防止協会 技術支援部 技術支援課長
  • 高木 元也 労働安全衛生総合研究所 新技術安全研究グループ 特任研究員
  • 田中 通洋(座長)労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント(ミドリ安全株式会社 シニアテクニカルアドバイザー)
  • 長山 和夫 一般財団法人 日本国際協力センター 国際協力推進部長
  • 久富 康生 外国人技能実習機構 監理団体部長
  • 細谷 浩昭 建設労務安全研究会 副理事長(鉄建建設株式会社 安全推進室 安全品質環境部長)

外国人労働者の安全衛生対策について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html

👉 衝撃的だったのでPDFを保存しました

やさしい日本語は、日本語教育関係者の間でも「なんとなくああいうカンジ」と認識されていますが、しっかり議論されているのをあまり見ないので、あえていろいろと書いてみます。

  • 「やさしい」は「優しい」と「易しい」の意味があるというネーミングだが、これで「やさしい日本語」には「優しさ」というキャラがついてしまった。「易しく」なっているかよりも「優しさ」があるかが大事であるとなると「優しさでやったことにケチをつけるな」ということが起きる可能性がある。「日本語を母語としない人にとって理解が容易だ」というニュアンスだけにしたほうが「しっかり易しくなっているか」「きちんと届いて、具体的な行動にむすびついたか」に目がいったのではないかと思われる2)
  • また、テキスト表現としてのやさしい日本語にこだわるあまり、画像や動画、アニメーション、色などが使われないということがある。「そこはイラストか何かでやったほうがいいのでは?」というケースがよく起きる。例えばこれは2019年7月2日のNHKのニュースサイトの画像。ここにある日本語表現は易しいだろうか?イラストなど他の表現方法があってもいいのでは?


👉 画像のライセンスは不明なまま引用しました。問題があるとNHKからご指摘があれば削除します。

  • メディアなどでやさしい日本語表現として使われるものは、誰が「やさしい」と認定しているのかがわからない。ひらがなか漢字か、文の長さは適当か、語の選択は適切か、意見がわかれることは多い。災害時などは特に生死に関わることにもなり、メディアによって表現が違う3)と、易しくないことになってしまう。当然、ガイドラインが求められることになるはずで、誰かが運用に責任をもってやっていくしかなくなることが予想される。誰がやるのか?
  • 自治体で採用されるケースが増えると、ここでもガイドラインが求められるし、おそらく作られることになる4)。こういうことが積み重なって、だんだん硬直的なものになっていく可能性は大きいと思われる。
  • また日本語ネイティブにとって、やさしい日本語を身につけるのは結構難しいが、日本語教育関係者にとっては自分のスキルの延長線上にあるものなので、その難しさに対して鈍感なところがある。仮に数回のレクチャーでそこそこできるようになったとしても、日常生活においてティーチャートークを行わない人にとっては、覚えておくのは難しいという問題がある。
  • やさしい日本語がカバーできるのはどこまでか、実際に有効であったか、検証が少ない。災害時の検証も「提供されたかどうか」が主で、きちんと情報が伝わり理解されたのか、適切な行動に結びついたのかの検証は薄いように感じる5)。日本で日本語の学習が必要な人は100~200万人の間くらいとして、そのうちどのくらいの人がやさしい日本語を正確に理解できるのか?また観光客は年間2000万人、月に200万人弱いるが、この人達に災害時はやさしい日本語は通じない。おそらく災害時にやさしい日本語でカバーできるのは50%以下だと思われる。カバーすることに限界があることも検証し伝えていく必要があるのでは。
  • やさしい日本語は文字情報に偏っており、音声でどう提供されていくべきなのかも未知数。方言はどうなるのか?そしてテキスト読み上げで読まれる日本語は日本語学習者には聞き取りにくい可能性がある。
  • デジタル環境においては、ふりがなはAPI(もしくはルビ関連のタグ)でまかなえる。ポップアップ辞書も使える。読み上げも可能。紙と電子では違うやさしい日本語が考えられてもよいのではと思うが、日本語教育関係者はデジタルに弱く、遅れているように感じる。

👉 ふりがなAPIを利用してのふりがなをふる機能は、SNS上でも動作します。100%正確ではありませんが、基本的な語ならかなり正確です。

  • やさしい日本語が広がっていき、災害時のスタンダードになり、自治体でも提供が義務化されるとなると、国内外の日本語教育において影響は大きい。日本で生活するための最低ラインとされ、在留資格の目安となると、日本語教育の最初のゴールとして絶対的な指標になる可能性が高い。日本語教育関係者の間に、そういう意識があるのかは今のところ疑わしい。
  • 予算が少ない地方自治体にとって多言語対応は難しいので、やさしい日本語で済ますというようなことが起きる可能性がある。

→ 論文などで、やさしい日本語の採用、本格的な導入で、自治体や国の多言語対応の予算は増えたのか?減ったのか?を、各自治体の予算の推移を持ち寄って検証してほしいと思います。やさしい日本語が+1として考えらているなら、かなり増えないとオカシイ。同じでもオカシイ、と考えられるはずです。

  • 「やさしい日本語」の最も大きな問題は、やさしい日本語が理解できるようになる学習環境が整っていないことと、いわゆるオーソドックスな教科書でオーソドックスな教え方の元に習得した知識が前提となっていること。技能実習生のほとんどは日本語の学習時間は保証されておらず、特定技能の日本語能力のハードルではやさしい日本語はほぼ理解されない可能性が高い。国内で日本語の学習が必要な人の過半数は理解できない現状があり、今後、就労系の人が増えるのは確実なので理解できない人の比率はどんどん上がっていくはず。前述のように災害時の観光客などもあり、やさしい日本語に置き去りにされる人達のこともきちんと検証されるべきでは?
  • 医療におけるやさしい日本語は医療通訳の絶対数が足りないこともあり2018年ごろからさかんにワークショップなどが行われるようになったが、やさしい日本語はやさしい日本語が理解できるレベルに達しているという前提ではじめて機能するものであり、万能ではない(おそらく半数以上の人は理解は難しい)ということがあまり語られない。少なくとも問診レベルで、何を尋ね、医者はそれによってどう切り分けたいのか?ぐらいは、チャート化し、多言語化し、それを無償で(例えばクラウド上で)共有できる仕組ぐらいはすぐに作れるはずなので、そこをまずやったほうがいいのでは(医療情報の共有サービスはたくさんあるので簡単にやれるのでは)?
  • やさしい日本語のニュースやコンテンツが増えてきた。しかしニュースは「ほのぼのニュース」が多く、コンテンツや教材は人畜無害的なものが選ばれる。無難で中立的であるべきという「編集」があるのでは?やさしくすることによってニュースから排除されがちなニュアンス(批判やジャーナリスティックな視点など)は何か?も検証されるべき。今後自治体などで予算化されるようになれば、この傾向はますます拍車がかかるかもしれない。この選択の偏りの問題はどうやって解決していくべきか?

👉 多言語医療問診票サイト MULTILINGUAL MEDICAL QUESTIONNAIRE

👉 ⚡️ 「やさしい日本語に関する観察と考察」

日本に来て一定の期間生活する外国人に対して、どこまで日本語学習を保証するのかは、日本語教育振興基本法にも明確には書かれていないが、2020年代は、就労や留学においても「CEFRのA2」が基準とされている模様。一方で、地方自治体や災害時は「やさしい日本語」を軸に進めていくという方針がかたまりつつある。この「CEFRのA2」はやさしい日本語が十分に理解できるレベルなのか?という議論がある。

省庁の縦割りによる日本語政策の混乱

就労系で、技能実習生、及び来日後の特定技能も基本は監督は厚生労働省。このうち特定技能は送り出しは外務省で、国際交流基金がおこなう国際交流基金日本語基礎テストで、CEFRのA2レベルの合格がマストとなっている。 留学は文科省と法務省。やさしい日本語は文化庁と法務省で法整備が進められている。

厚労省

厚労省の就労者向けの目安は2021年の6月に発表された。「就労場面で必要な日本語能力の目標設定ツール」というものがある。

手引き
目標設定ツール

外務省

今後、日本の就労系の在留資格のマジョリティになりそうな(30万人近くが想定されている)特定技能の来日要件になった国際交流基金日本語基礎テストは、CEFRのA2(≑N4)が目安となっており、少なくともメディアで使われているやさしい日本語や自治体のもの(多くは弘前大学のN3基準のものが参考にされている)は、理解が難しいと考えられる。

基金のCan-doには災害時のアナウンスの理解が目標となっているが、やさしい日本語に関する言及はなく、日本語政策としてちぐはぐな印象。

学習者への二重の負担?

日本に来日する学習者は、文型シラバスの教科書で勉強するなら、やさしい日本語への到達も明確なので、それでひとつ柱が通っていることになるが、外務省は文型シラバスは採用していない。Can-doで生活のあれこれを解決するのは、やさしい日本語とは、やや違うアプローチになる。

しかし日本での生活にはやさしい日本語の理解はマストになりつつある。

→ やさしい日本語の理解をCan-doで切り分けるのは難しいので、能力記述文に「やさしい日本語の理解」を盛り込むとか?ただ、そうなるとどう考えてもA2では無理そうなのでB1とかB2になりそう。しかし、そうなると就労系の来日の基準はB1にせざるを得ないということになる(ゴミだしの日本語や災害時の日本語の理解は生活日本語として重要なので)。

かといって、B1だと合格率はかなり下がることが予想されるので、人手の確保に支障がでると、国や産業界からストップがかかりそう。

日本に来る人にとって生活に必要な日本語とは何か?それを理解するレベルに達するために、どういう道を整備するか、という意味ではスッキリしないという印象。日本語教育関係者によってなんらかの調整は必要ない?

さらに違うCan-doが…

基金の生活Can-doと厚労省の「就労場面で必要な日本語能力の目標設定ツール」もかなり違う。前者は基金のJF日本語教育スタンダード準拠なので、2001年版CEFR版がベースになっており、A1、A2、B1、B2、C1,C2の6段階で、そのうち最初の2段階のA2までとなっており、後者は、CEFRの2018年改訂版以降の区分けがベースになっている模様で、レベル7:【A1、A2.1、A2.2、B1.1、B1.2、B2.1、B2.2】と細分化され、能力記述のコンセプトもカテゴライズも違う。日本語教育の参照枠に準拠したのかもしれない(作成者は一部同じ)が、参照枠のほうは、CEFR2001年準拠ということになっている。

👉 CEFRは2018年の改訂でPre-A1, A1, A2, A2+, B1, B1+, B2, B2+, C1, C2, Above C2 と11段階に細分化された。

有識者会議では、方言の話題は出てこない。当然、在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインにも関連の記述はない。しかし、例文に方言は出てこない。

しかし、このガイドラインにも出てくる地方のガイドライン(愛知県、島根県)には、必ずと言って良いほど、方言は「×」「難しい表現」とされ、「標準語(Standard Language)」にせよ、という項目が出てくる。共通語(Common Language)という語は使われない。(神奈川県には方言に関する記述は無い)、その他、各地域のガイドラインをみると、「方言はダメ!(多数)」「方言→標準語」などと強く書くものもあれば、少数だが「できるだけ方言を使わない(大阪市)」とするものもあった。

これは、やさしい日本語のガイドラインが厳密なものを目指さないという方針があるからだと思われるが、厳密であってはいけないという方針はないとも考えられる。つまり、「方言を禁じるべきではない」とは書いておらず、ガイドラインで紹介する地域のガイドラインには「方言×標準語○」と書かれてあることからすると、この種の解釈は許容していると考えられる。

やさしい日本語は方言についての文献が少ない。

→ CiNii Articles 検索 - やさしい日本語 方言
→ 検索 - Jstageやさしい日本語 方言

以下のことが考えられる。

  • 国のガイドラインは方言を禁じることを禁じていない。
  • 地域で暮らしている外国人にとって、方言のほうが難しいとは限らないのではないか?
  • 方言が難しいのは、日本語を教科書で勉強した人に限られるかもしれない。
  • 日本に来た外国人は方言を学ぶ機会を失ってしまう。多様な言語文化に触れられないだけでなく、地域で方言を使わない存在となってしまう可能性もある。
  • 地方のガイドラインで禁じられる方言とは何を指すのだろうか。語の変化?特殊な語?イントネーション?
  • 国で厳密な規定を作らないことが逆に、国から地域、民間(のやさしい日本語講師的な人達)となるにつれて(場合によっては硬直的な方向に)変化していくことをコントロールできないという結果を生んでいる。(解釈改憲的な?)このことは、方言以外でも起こる可能性がある。
  • 日本語教育に携わる人はもちろん、国や自治体がどんな理由であれ、人に方言を禁じるということは許されるだろうか?許されるとしたら、どういう条件下だろうか?

2018年に日本語教育学会が日本語議連にプレゼンをした資料ややさしい日本語関連の論文などで「やさしい日本語は日本国内の日本語の学習が必要な人の7割近くが理解できる」と書かれていますが、これには国内の日本語の学習が必要な人におけるマジョリティである就労系の人がほぼ含まれておらず大きな誤りです。また、国内の外国籍の人をそのまま日本語が出来ない数にするのも、この国籍別で多言語化の際の言語の優先順位を決めるのも誤りです。

今後増加が予想される就労系の外国人が数に入っていない誤ったデータを元に政策提言をするリスク、誤った認識が一般の人に広まるリスク6)を考えるべきです。

日本語教育学会や研究者は、国のアバウトな古い調査を使うのではなく、実態に即した数字を独自に出すべくきちんと調査をすべきなのでは?

生活のための日本語(2009年 国研)

「日本に住んでいる外国人に通じる言語」としてよく引用される調査
「生活のための日本語」に関する調査研究 | 国立国語研究所
https://www.ninjal.ac.jp/archives/nihongo-syllabus/research/

👉 アンケートの配布は日本語教育関係者、自治体の国際交流協会を通じて行われており、基本的に日本語を勉強中で勉強をしにきた人達が中心。(日本語を学習するチャンスがなく能力も低いことが予想される)技能実習生など就労系の外国人には届いていない可能性が高い。それでも38%が日本語は日常生活で使える言語と考えていない。(日本国内において日本語の学習が必要な人のうち、技能実習生はこの調査の2009年の段階でも、留学生数より多かったはず)。また、このアンケートではベトナム国籍の比率は3%。その後の変化も重要。

日本語に対する意識調査(2001年 文化庁)

約20年前の調査。これもやさしい日本語関連で引用される。書籍「街の公共サインを点検する」でも引用されているもの。
日本語に対する在住外国人の意識に関する実態調査 | 文化庁
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/zaiju_gaikokujin.html

👉 これも「全国12地域の日本語教室に通っている16歳以上の男女(在住外国人)600人」が対象なので、技能実習生などが入っている可能性は少ない。文化庁に限らず、日本語教育関係者が考える「生活日本語」の「生活者」には(国内の日本語の学習者が必要な人のうち最も多数派であるところの)就労系の人達は入らない。

技能実習生の日本語

技能実習生は、JITCOによると、来日前に200時間、来日後には平均173時間程度の日本語学習機会があるが、義務ではなく教師の資格も問われない。来日前の200時間は形骸化している。

アンケート(これも任意で回収率は6割前後と低い。2006年に一度行われたきり)によると、日本語の能力に問題があるとされるのは41.8%。回収率を考えると、もっと多くの人が「問題がある」と考えているのではないかと思われる。この問題があるかどうかも、どういう基準なのかがないので、雇用者が問題ないと思えば問題ないになってしまう。技能実習生周辺の声を聞いても、日本語は「ほとんどできないまま来日し、来日後の研修後も挨拶程度しかできない」というものがほとんど。この2006年の調査以降、対策はまったくとられていない。やさしい日本語の理解はほぼ無理だと思われます。

2017年以降、介護ビザに関しては、来日後の有資格教師による200時間の研修が義務化された。しかし、介護以外は何も無いまま。

技能実習生の日本語に関する調査(JITCO 2006年)
日本語教育実態調査ホーム
http://www.jitco.or.jp/about/chousa_houkoku.html

第一次受け入れ機関の日本語教育研修のアンケート調査
http://www.jitco.or.jp/nihongo/nihongotyousa.html

メディアでやさしい日本語のニュースが書かれることが増えましたが、ほのぼのニュースしかやさしい日本語化されず、社会問題についても通常の紙面とは違う無難で穏やかな論調になるというニュースの偏りの問題。あまり議論されませんが、結構重要だという気がします。

外国人に喜ばれそう(と伝える側が勝手に考えているもの)で、社会や経済のことはほとんど取り上げられないので、これを情報源として使う人はいないのではないかと思われます。

それにしても、花見みたいな年中行事とか再生エネルギー、SDGsみたいな教材みたいな記事が多いです。芸能とかスポーツはほぼ無く、時事問題が扱われるのも振り返りで数日後。はたして本気で読んでいる学習者がいるのかどうか。。。

定点観測

2022年3月の一般紙の記事をピックアップしてみます。

  • 前月の24日にロシアのウクライナ侵攻
  • 3月16日に東北で震度6強の地震
  • まん防、21日に全面解除
  • コロナの感染者数は1日に65000人、31日に52000人と減少せず。
  • 留学、技能実習生の数十万人の入国規制緩和が始まりました。
  • パラリンピック終了
  • サッカー日本代表がW杯の出場権獲得
  • 韓国の大統領が決まり
  • 国会でウクライナ大統領がスピーチ
  • 「ドライブマイカー」が海外の映画賞をとり
  • 日興證券が24日幹部が逮捕され
  • 映画監督の青山真治氏が亡くなった。
  • アカデミー賞式典でウイルスミスが司会者をビンタ事件
  • ガーシーch(芸能暴露系ユーチューバー)が次々とスキャンダルを公開
  • 日本映画界の監督、関係者による長きにわたるセクハラ告発が続く。海外で賞をとった有名監督も。

時事通信社2022年3月の出来事
https://www.jijiphoto.jp/ext/news/year/2022/index.html#mar

芸能の新着ニュース 2022年3月|【西日本スポーツ】
https://www.nishinippon.co.jp/nsp/category/entertainment/?m=3&y=2022

朝日新聞の22年3月1日のニュース一覧(以降31日まであり)
https://www.asahi.com/news/daily/0301.html

西日本新聞

3月の記事は

  • 草で 作った「ストロー」を、使った 後に 動物のために また 使う
  • 公園に ごみを 捨てないように お願いする ポスター
  • 老舗中華料理店が閉店
  • 福岡氏にマンションが増えている
  • 板金の会社で技能実習生が働いているという話し
  • ラーメン味のお菓子
  • 桜の花見
  • 日本語学校の発表会
  • ロシアがウクライナに侵攻したという話
  • 博多どんたくのパレード
  • 福岡国際マラソンがあるという話
  • 佐賀県の市役所の太陽光活用
  • 港のクレーンがきりんが描かれた話
  • 市役所の国際課の話
  • ウクライナ色のライトアップの話
  • 太宰府市の市長と留学生が会った話し
  • コンサート会場の避難訓練
  • 熊本城のライトアップ(黄色と青のウクライナ色の)の紹介
  • 熊本のスイカの紹介

過去ニュース一覧
https://www.nishinippon.co.jp/theme/easy_japanese/

河北新報

3月の記事は4つ

  • 馬のいるカフェができました 山形のみはらしの丘
    • 馬がいるカフェが出来たという話
  • 有名な伊達政宗の像が斜めになりました
    • 16日の地震の後日談(23日)で銅像にヒビが入ったという話
  • 山で採ったタケノコを売ってもいいことになりました 
    • 原発事故以来、はじめてタケノコを売ってもいいことになったという話
  • ウクライナの家族かぞくや友ともだちが心配しんぱいです 
    • 石巻市のウクライナ人が家族を心配しているという話(3月7日)
  • 働く人がいないので、24時間営業をやめます 
    • 24時間営業をやめたという話

https://kahoku.news/easyjapanese/?inyear=2022&inmth=03

定点観測2

2022年の7月の参議院議員選挙前後のニュースをみてみました。以下は7月19日の時点のものです。 選挙からこの19日にかけては大きな出来事がありました。

  • 参議院選挙
    • 神道政治連盟の同性愛は依存症という記事(6月29日)
  • AU国内のモバイル通信24時間不通に(7月2日)
  • 安倍首相が撃たれ死亡(7月8日)
    • 統一教会と政治家のリストが報道(7月16日)
  • コロナ感染者が過去最大に(7月16日)

しかし、19日の時点で上に触れたやさしい日本語ニュースは以下の選挙があったという記事だけでした。

【やさしい日本語】「参議院」の 議員を 決める 選挙が 終わった|【西日本新聞me】
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/954740/

やさしい日本語は、一部で英語偏重への批判とセットで語られることがある。しかし災害時などは現実に有効なものは活用されるべきであり、議論の切り離しが必要ではないかという気がする。

よくやさしい日本語の必要性を説く記事や資料で「英語よりも、やさしい日本語のほうが有効」と紹介されるが、上で述べたように、根拠となる調査は十分な日本語教育を受ける機会を与えられていない就労系の人が含まれておらず、やさしい日本語の有効性はもっと低いことが予想される。また日本に住む外国籍の人が「英語ができるできない」という根拠にするにはあまりに貧弱な調査であることにも注目すべきです。日本人に「日常生活に困らない言語」を訊ねたら「英語」を入れる人は何%いるでしょうか?(しかし、辞書にひきながらなら理解できる人はかなりいます)。

一方でアジアを含め、ほとんどの国で英語は義務教育で習うことになっており、各調査においても日本よりアジア各国のほうが英語の成績はいい(そして、おそらく今後世界中で英語教育はますます強化される可能性が高い)。英語偏重への批判は理解できるとしても、現実問題、災害時に届く方法を考えた時に、シンプルな英語はより多くの人への情報提供として依然として有効であるということまで否定する必要はないのでは?

諸外国,地域の学校情報 | 外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/01asia/index01.html

(キッズ外務省)世界の学校を見てみよう!|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/kuni/index.html

British Council Survey of Policy and Practice in Primary English Language Teaching Worldwide Shelagh Rixon
世界の小学校英語教育についての政策と実践
https://www.britishcouncil.jp/sites/default/files/ees-reportprimaryenglishlanguageteaching-jp.pdf

-訪日外国人6000万人時代に向けた「やさしい日本語」の応用と展開 - プレインイングリッシュの併用とハーディング効果で安全を高める

やさしいルビ?

「やさしいルビ」というべきものも登場。

この「やさしいルビ」は、いろんなことを考えることができるものだと思いますので、少し補足的に書いてみます。

「外国人向けの日本語の教科書」に沿った日本語の表現」というのは、弘前大学のやさしい日本語では「みんなの日本語」のような教科書が想定されていたが、庵氏の場合は、そうでもない模様。2020年代は文型シラバス的な教科書の採用は減りそうな状況なので、このへんは何とも言えないところという気がします。

【追記】

以下、まとめが出来ていました。当然「通常のルビと混同しそう」という指摘がありました。家庭には「かてい」と読みのルビがあり、優先には「さき」と意味ルビ的なものがあり、すでにこの文で2種類があります。

-「乳幼児」に「あかちゃん」とフリガナを付けるような『やさしい日本語』は、英語よりも日本語の方が分かる外国人のためにある - Togetter

👉 日本語教育関係者からは、素晴らしいというツイートがちらほらあるくらいでした。SNSでは、ささいな指摘でもネガティブだと排除されがちな傾向が強くなったので、モヤモヤした人がいたとしても、投稿までには至らなかったということかなと思います。やさしい日本語やその取り組みにはネガティブな言及はしにくいという空気もありそうです。しかし、日本語教育関係者、特に初級を担当するような人達、はど真ん中の当事者でもあるので、やはり気づいたことは言ったほうがいいように思います。ネット上で問いかけることは、多くの人が深く考える材料になります。

ルビは画像なら自由に作れますが、Office系などでは上か下かのどちらかを選択するしかありません。両方付けられるなら上がルビ、下が意味、みたいなことも出来ますが、これをルール化するのもコンセンサスが作られることを期待するのもちょっと厳しいという気がします。やはり混乱しそうです。

文の易しさ

「赤ちゃんのいる家庭が先だ」という文がやさしいか?という点も気になりました。これに限らず、やさしい日本語はガイドラインが作られつつはあるものの、やさしくなっているか?は、個々の判断ということになっているので正解はないのですが。これは「家庭」とあるので災害時なのかもしれません。しかし「かてい」「さき(優先)」は難しいような気がします。これはイラストありきで、セットで伝わるということかもしれません。

【参考】 大規模コーパスに基づく日本語教育語彙表の作成: 東京外国語大学学術成果コレクション
http://repository.tufs.ac.jp/handle/10108/86126
ではどちらも優先度は高いとされていますが、家庭は初級教科書であまりみません。

みんなの日本語語彙チェッカー
http://basil.is.konan-u.ac.jp/cgi-bin/minna.cgi

家庭はありませんでした。初級教科書であまり見たことがありません。先は「お先に失礼します」「先生」などで出てきますが…。

イラストとの組み合わせでの易しさ評価

このようにイラストありきでテキスト情報が「添えられている」という場合(ある種の主従関係がみえる場合?)、セットで伝わるかという判断は、文だけで判断できず、ケースバイケースでまた難しいなという気がします。また、イラストは意外と解釈の幅が広く、必ずしもわかりやすくなるとは限らないこともありますし、テキスト情報があることでミスリードすることも起きると思います。この総合判断をする人、基準が必要です。

上の看板(?)は、イラストだけとか→を添えるみたいなことのほうがいいということもあるかもしれません。読めず理解できない文があると逆に混乱するかもしれません。「家庭」はイラストでもテキストでもうまく表現できない難しいところですが、familyとすれば(あるいはそう意味ルビをふれば?)、ほぼ伝わるような気もします。ただ、英語でルビをふるのは賛成する人は少なそうです。また「優先」を表すのも難しい。筋肉もりもりの元気な人が、杖をついている人、子どもを抱く人の後ろに並ぶ、みたいなイラストのほうがいいような気もします。

考えてみると、「伝わればいい、(やさしい日本語の範疇外でも)どんなものでも利用すべき」という立場と「やさしい日本語とその周辺で成立させるところまで」という立場があるように思います。

と、いろいろと論点が出てくるものだという気がしました。

やさしい日本語に限らず、この種の生活に根ざしたものは、検証が必要です。生活Can-doでも、必要だと思います。

コロナ下で考えた「たたき台」

2021年のコロナ下でかんがえてみたたたき台です。

熊本地震の際は弘前大学のやさしい日本語の研究者が現地に入り、状況を調査したと報道された。どういう調査だったのかはわからないが、やさしい日本語など災害時のノンネイティブへのサポートは、まず「多言語での情報提供がやられているかどうか」だけを問題にしがちで、その情報提供がきちんと届き、適切な行動に結びついたのかの検証がされないことが問題だと思われる。

検証の前に3点の確認事項

  • まず、自治体のGoogleの自動翻訳は止めるべきだと思います。そこそこ自然に訳されるようになったと言っても不正確ですし、ほとんどの場合、英語や中国語でさえ、きちんと翻訳されているのかの検証はされていないはずです。ゴミの出し方の翻訳が違うだけでトラブルになるわけなので、災害時に翻訳が不正確で死者が出る可能性すらあると思います。(そもそも感染症、ワクチンの正確な知識をちゃんと翻訳するのは不可能)。
  • 自治体は少なくとも外国人在住者の上位*カ国で使われる主な言語(=*ではないこともある)は提供する義務があるなどど(できれば国で)ルールを決めるべきだと思います。そして、その順位は毎年アップデートする必要があります。10年前の順位がガラリと変わることは珍しいことではありません。また、国籍だけだと必要度は正確にはわかりません。日本語の熟達度も考え、日本語以外のサポートが必要な人がどのくらいいるのか、補正も必要です。
  • やさしい日本語がカバーできるのは外国人の半数以下だと考える。
    • そもそも、やさしい日本語に到達しないと理解できない
    • やさしい日本語に到達するプログラムは技能実習制度にも特定技能にもない
    • 留学生の半数くらいはやさしい日本語が理解できない(来日時は無理。そして現状の留学制度では1年後にちゃんと理解できるかも怪しい)と考えるべき
    • 当然観光客はわからない

検証モデル

多言語での情報が提供される場合、検証のモデルが必要。以下はそのたたき台で仮で作ったモノです。提供があったのか、から伝わったのかというフローチャート、チェックシートのようなものがあるといいと思います。

情報提供はあったのか

  1. 平時での情報提供、提供場所の認知はどうだったか。(平時から外国時向けのページがあり、そのURLが固定されており、紙の配布物などでもQRコードなどで周知が徹底されていることが理想的。さらにそのページは平時でも有益な情報更新をして「時々覗くページ」になっておく必要がある。可能ならslackなどのコミュニティがあるのが理想的)
    1. 情報提供はどこに、どういう形であったのか。自治体のサイトならトップページからわかりやすい誘導があったのか。

情報提供の方法は適切だったか

  1. やさしい日本語だけでなく多言語での提供はどうだったか。Googleの自動翻訳など問題があるものでなかったか。
    1. 緊急時の特設サイトの構成はどうだったか?サイト上だけでなくPDFでの提供との比率はどうか(基本、アクセシビリティ上も、PDFは避け、サイト上でテキストで行うべき。Google翻訳なのにPDFが中心みたいなチグハグなものも多い)
    2. 適切にアップデートされていたか。古い情報が二次災害に繋がるリスクを考慮されていたか。
    3. 本当に伝わるものであったか。(やさしい日本語で伝えることが可能な範囲ものであったか。無理なら他の方法がとられていたか)

どの程度伝わったか

  1. +サイト上の情報提供はアクセス解析の分析が必須。どういう経路で辿り着き、どの程度滞在したか、他のどこを参照したか、データは出るはず。ウェブの知識が必要。
    1. PDFなどはダウンロード数を記録する。
    2. やさしい日本語と数言語だけだった場合、そこから漏れる人達にはどういう対応があったか。
    3. 技能実習制度(ほぼ日本語補助はない)と特定技能(CEFR A2まで)では、やさしい日本語が理解できるレベルに達するのは不可能である。ここにきちんと対応できていたか。
    4. 観光客(国内旅行や遠出で移動中に被災した他県の人も含め)への対応はどうだったか。
  1. 情報提供を受けて、適切な行動に繋がったか
    1. これは事後の追跡調査が必要。これが達成されていなければ、全面的な見直しが必須。

検証する人には、ウェブの知識に加えデジタル関係の基本的な知識が必要です。動画を作るなら、多言語で字幕を入れる。編集で動画に入れるのではなく、Youtubeで字幕を切り替えるような仕様に従ってやれば、1本で多言語動画になる、みたいな知識と共にサイトやアプリ、文書のデザイン(UI,UX)も重要です。この辺、日本語教育関係者は圧倒的に弱いです。

伝わるデザイン|研究発表のユニバーサルデザイン
https://tsutawarudesign.com/

事例

□ 熊本地震のやさしい日本語周辺の検証の記録

⚡️「2016年4月 熊本地震と日本語教育業界」
https://twitter.com/i/events/798395741827907584

□ コロナ第五波の沖縄での情報提供周辺の記録
⚡️「2021年8月コロナ第五波。医療体制ひっ迫。多言語情報の提供はどうだったか。」
https://twitter.com/i/events/1425949947556286465

なんとなく「やさしい日本語になっている?」という微妙なものを集めてみます。

202203私大連の留学生向けメッセージ

日本への留学生のみなさんへ(会長メッセージ) | 一般社団法人 日本私立大学連盟
https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=3478

発表されたPDFは翌日削除されていたが、以下はキャプチャ。 https://webjapanese.com/dokuhon/files/yasashii01.jpg

2022年11月22日 東京都のコロナ関連の動画メッセージ

東京都知事のやさしい日本語によるコロナ関連の動画。国会議員や首長などが仕事で発信するものとしては、ほぼはじめてのものという気がします。

👉 やさしい日本語化はどこが担当したのかは不明だが、助詞や「ぜひ」など、いろいろと疑問点も多い。今後は公的な発信のやさしい日本語はスクリプト担当を明記したほうがいいのでは?

ちなみに豪州ではコロナ発生直後、教育省の大臣がやさしい英語の動画をネットにあげている。

英語でも、古くはBasic english などいろいろな試みがあった、移民の言語教育という文脈だけでなく、訴訟がらみで最低限、文のロジックが整備されていないと問題が生じるというようなことから始まったものもある。現在でもシンプル英語版Wikipediaなどが存在する。

NHKや西日本新聞などに加え河北新報も22年にスタート。

やさしいにほんごニュース
:児童音声による読み音声はやや聞き取りにくい。
https://cona.kahoku.co.jp/easyjapanese/

記者ログ(2/8):やさしい日本語 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
https://kahoku.news/articles/20220208khn000022.html

易しい、優しいの意味を投影したものでなければならないという考え方もあれば、言語表現としての特徴を盛り込むべきという考え方もある模様。ただ「優しい」かどうかは受け取る側にはほとんど関係がないことなので、訳は受け取る側に正確に伝わるかを考えると「易しい」がまず伝わることが重要だと思われる。しかし、「易しい」のニュアンスもいろいろある。これは、やさしい日本語の理解の幅(それを多様と呼ぶか混乱と呼ぶかも含め)を示すものだと思われる。

英語の知識がある人は、訳は正確な理解に通じるもの、最も通じやすいと思われるのは「plain Japanese」と考える人は多そう。以下でもそうなっている。

第31回 「やさしい日本語」の英訳はどうしたらよいか|コラム|多文化共生ポータルサイト
http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/114811.php

この記事ではeasyとplainは混在している。 An interdisciplinary study for the development of integral Japanese textbooks for foreign-rooted children using Yasashii-Nihongo (Easy Japanese)

しかし、やさしい日本語は日本語ネイティブに対して「優しくあるべき」という考えも込められており、多くの人にとって「理解が簡単=学ぶのが簡単」という受け取り側が意識されたニュアンスとして思いつく「easy」を使うところが多い。NHKもそうだし、多くの日本語教育関係者もeasyを使う。単純にplainという語の難易度も関係しているのかもしれないが。

上記のWord pressのプラグインではsimplifiedが使われている。これは表記寄りの訳という印象。「やさしい日本語」は話し言葉としては「何をもってやさしいとするか?」という議論があまり無い(例えば方言はどうなのか?みたいな)こともあり、これはこれでひとつのスタンスだが、前述のように中国語のtraditonal-simplified という語が定着しているので、その関係から類推する人は多そうという問題がある。

やさしい日本語周辺の人は、英語でなんとかなるというような考え方に与しないというある種の反発からやさしい日本語であるべきだという考えの人もおり、翻訳がどうなのかは、英語に限ってあれこれ考える必要はないと言う人もいる模様。ただ、今後は公的な表記も含め、英語でまず探すという機会が増えるので、定訳はあったほうがよさそうなのは間違いない。

有識者会議では以下のようなやり取りがあった

議事録では以下のような発言があり、英語の公文書の簡易化で使われたPlain が意識されたものだとなっている。

英語のプレーンイングリッシュ(公的文書を一般市民の人が分かりやすいように平易な英語にする取組)というものがあるが,プレーンジャパニーズの取組が官公庁で取り組まれれば,非常に望ましいことである。
(1)は英語のプレインイングリッシュがどのようなものかを説明し,(2)は外国人向けのやさしい日本語について説明をすることにしてはどうか。

その他

2020年2月 コロナウイルス関連で厚労省が出したやさしい日本語版の解説

01

02

以下はやさしい日本語の自動化を研究している人達の発表動画。

勉強会/役所からの公的文書に対する「やさしい日本語」への変換システムの構築

卒論発表/やさしい日本語格フレームの構築による係り受け解析




研究

「やさしい日本語」で助けあおう|あの日、そして明日へ|NHK
https://www.nhk.or.jp/ashita/yasashii/

2019年10月
NHKの「やさしいにほんご」は、英語を解さず母語での災害情報もない本当のマイノリティのためにある - Togetter
https://togetter.com/li/1415759 

「やさしい日本語」についてちょっとだけ 誰がログ
https://dlit.hatenadiary.com/entry/2019/10/15/081457

もっとやさしい日本語 :バリエーション

第324回 山下暁美さん:『災害時命綱カード(方言訳付)』について | 地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―(言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics) | 三省堂 ことばのコラム
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/chiikigo324

KAKEN — 災害時および防災時にいかなる語彙が必要になるのかの調査を、自治体の防災パンフレットや自治体ホームページ、また「平成28年熊本地震」後の地元新聞紙を対象として実施した。そこから、災害時に必要になる語彙およそ110語を選定した。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-15K02672/15K02672seika/

英語の例

Federal plain language guidelines | plainlanguage.gov
https://plainlanguage.gov/guidelines/

Wikipedia (Simple english)
https://simple.wikipedia.org/wiki/Main_Page

関連書籍

〈やさしい日本語〉と多文化共生 庵 功雄、岩田 一成、佐藤 琢三、栁田 直美
https://amzn.to/2Jd7kEZ

やさしい日本語のしくみ 庵 功雄
https://amzn.to/2J9JKZN

やさしい日本語」は何を目指すか: 多文化共生社会を実現するために 庵 功雄
https://amzn.to/2LqSH3B

読み手に伝わる公用文: 〈やさしい日本語〉の視点から 岩田一成
https://amzn.to/2Jh5tiO

<研究ノート> 日本人就労者の英語使用頻度 : ウェブパネル利用の質問紙調査に基づいて
https://kwansei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=29927&item_no=1&page_id=30&block_id=85

緊急時における外国人住民のコミュニケーション問題 : 東日本大震災と阪神大震災から学べること http://ow.ly/Pyzt303OINm

非母語話者は母語話者の〈説明〉をどのように評価するか―評価に影響を与える観点と言語行動の分析― http://www.nkg.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/177_2abstract.pdf

An interdisciplinary study for the development of integral Japanese textbooks for foreign-rooted children using Yasashii-Nihongo (Easy Japanese) https://www.ingentaconnect.com/content/sil/impact/2021/00002021/00000004/art00010?crawler=true&mimetype=application/pdf

その他、Ci Niiでは、「やさしい日本語」で100件前後ヒットす

中国語教育文法の設計と「やさしい中国語」

やさしい日本語の検証、あるいは批判的な文献など

「やさしい日本語」は在留外国人にとって「やさしい」のか?|第1回 私にとっての「やさしい英語」とは。/「やさしい日本語」は書き言葉なのか話し言葉なのか。|永田高志 | 未草
http://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/01/12/yn-01/

やさしい日本語シラバスを用いたビジネスパーソン向け日本語教育に関するケーススタディー
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/28753/kokusai0000801570.pdf

-ej


→ その連続ツイートのまとめ
⚡️ “やさしい日本語批判に対する庵氏のツイート”
https://twitter.com/i/moments/1357520623921057798


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1)
しかし、日本語を勉強している人達は日本で現地の人が話す普通の日本語と接する機会を楽しみにしているのではないか?通じたり、聞き取れなかったしてガッカリするのも語学学習者にとって貴重な体験なのでは?日本に行って教室で教師が話すような日本語でやり取りをして楽しいのか?という疑問はこのプロジェクトに関わる日本語教育関係者から出なかったんでしょうか。
2)
一般の人の理解も「日本語は難しい」という認識が強いので易しくすることに理解は得られるはず。「優しさ」を発揮しろと言われるよりはいいのではないか?
3)
例えば「避難する」「逃げる」はどちらも被災した時に目にする、耳にする可能性が高いのでどちらも必要という理屈があるとして、実際は「**公園に行く」が正解かもしれない。避難場所が変わる時は「市役所に移動してください」と言われるかもしれない。災害時は特例としても、4つ必要な表現が出てくる、状況、重要度に応じてどう使い分けるのか統一見解は無くていい?
4)
今は何事も国単位でやりたがらないので自治体まかせになるかもしれない。そうなると自治体によってやさしい日本語の表現が違うことになる。これも災害時に問題となる可能性がある
5)
やさしい日本語を理解できず困ったという報告をほとんど見ない。客観的な検証は行われているのだろうか?
6)
すでに多数派であり、今後ますます国内で存在感を増してくるであろう就労系の外国人は制度上日本語の学習機会がほとんど与えられていないのに、やさしい日本語さえ理解できない、勉強する気がない人達であると考える人は出てくるでしょう。その誤解が広がるリスクはとても大きい
  • やさしい日本語.txt
  • 最終更新: 2022/12/31 19:43
  • by webjapanese