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介護
目次
概要
厚労省の推計で2025年には253万人の介護人材が必要だが、38万人近く不足となると報道されたのは、このプレスリリースが元になっています。
2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html
資料はこちらに。今後の高齢者人口の見通しについて http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf
総務省の人口推計では、高齢者の「数」に関しては2025年がほぼピークで、その後微増で2044年以降ゆるやかに下降する、という予測です。ただし、「比率」は20%近くあがりそうです。つまり、25年以降は必要な数(約250万人)は変わらないけど、急激に若者の人口が減るので担い手がいなくなる、という問題が出てきます。仮に、25年までの穴が外国人介護士で埋まったとしても、その後も、問題は膨らみ続ける。ますます外国人介護士に頼らないといけなくなる可能性が高い、というわけです。
1 高齢化の現状と将来像|平成27年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府 https://bit.ly/2Eh9JQk
一方、国内の介護士を作るほうは、日本介護福祉士養成施設協会(介養協)の調査によると2016年の定員(約16700人、377校)に対する入学者の数は7700人で46%とのこと。これは入学者なのでドロップアウトなども考えるとかなり厳しい数字。10年前の2006年は定員が26800人、409校で入学者が19200人だったとのこと。国内では待遇を多少改善しても人が戻ってくるという可能性はあまり見えません。
👉 読売新聞の記事
👉 一年前の調査(3月ごろの記事)2016年、加盟校の400校を対象に入学者数を調べた結果、定員17700人に対し入学者数は8800人、約50%。この5年間減少傾向(5年前は76%)都道府県別では最も低い自治体では30%程度のことのこと。
介護は2030年までに最低でも10万人を確保しなければならないとされており(試算によっては30万人という説もある)現在、いろんなルートでかき集めている最中。
最も古いのはEPAだが、しっかりした制度であることもあり年間1000人程度が限度と言われており、あまり進まなかったので2010年代の後半に、技能実習生制度に追加、特定技能でも、留学的な「介護」という在留資格も作られた。
介護関連の在留資格
厚労省のパワポ文書より https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000656925.pdf
介護関連は、通常の在留資格、技能実習生制度、特定技能、特定活動(EPA)と、いろんな枠組みがあり、それぞれルールが違い、日本語教育関連のハードルも違いますから、おそらく今最も複雑です。
おまけに、とにかく人手不足解消ありきで政策が進むので、人の確保の最も大きな障害となりうる日本語教育のルールに関してはコロコロと方針が変わります。従って、すべては追えません。以下は、2018年あたりまでの政策の整理が軸になっています。最新情報はご自身で確認してください。
EPA
概要
:国際厚生事業団(JICWELS)を通じて来日。来日までの枠組みはキッチリしていて民間の斡旋などはない。送り出し国で研修を受け、能試で足切りラインを越えて来日し、滞在中4年のうちに介護福祉士の資格を取得すれば3年働ける(延長可)。対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムのみ。日本語研修は経産省(国内&教材開発も)、外務省(海外)が主導している。それぞれの国で締結した条件などが違う。
EPAの概要 (厚労省) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/other22/
入管の指針(ビザの延長期限などのルールは微妙に違う)
インドネシア http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_hourei_h10.html
フィリピン http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_hourei_h11.html
ベトナム http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00073.html
来日前
応募の条件はフィリピンは4大卒か看護学校卒、インドネシアは3年以上の高等教育機関か看護学校卒、ベトナムは看護学校卒のみ、とのこと。 国際交流基金による六ヶ月の日本語研修でN5まで行かないと日本に行けない。(N4、N3合格者はこの研修が免除)、ただしインドネシアはN4がマストになりそうとのこと(ただしフィリピン、インドネシアはN4「程度」で能試の合格は今のところ要件にはなっていないとのこと)。ベトナムは12ヶ月研修でN3まで達しないと日本に行けない。
来日後
フィリピン、インドネシアは、6ヶ月、ベトナムは2ヶ月半の日本語研修がある。
と国によって来日前の研修も来日条件も違う。なお日本語研修の費用は日本の受入機関が一人あたり36万円を支払うということ(その他の費用は国が負担)ので本人負担はほぼなさそう。渡航費、滞在費も受け入れ機関が負担。
→ 全体的に手厚いし研修も無料だが、扱える人数に限界がある。元々母国で看護の資格を持っている人が多く母国でも仕事に就けるということで、日本に定着しにくい(母国の経済状況がいいと成立しない)2015年で568人。7年累計で約2000人。
日本語教育関連
日本語教育の担当は? 厚労省が関連団体などに委託しているとのこと。
「介護分野の技能実習生の日本語学習方法及び学習教材等の調査開発事業」として厚労省から委託されているのは、国際厚生事業団とのことでした。また、実際にEPA介護福祉士候補者の日本語教育支援を担当しているのは横浜の日本語教師のグループである「国際交流&日本語支援Y」で、技能実習生のほうもやることになりそうとのことでした。
その他、日本語以外の介護の学習ツール開発などで公益社団法人日本介護福祉士会が採択されているとのこと。
技能実習生制度
概要
対象国は、中国、インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイ、ペルー、ラオス、スリランカ、インド、ミャンマー、モンゴル、ウズベキスタン、カンボジア、ネパール、バングラディシュ。(アジアが主ですが、韓国、台湾、マレーシア、シンガポールなどは入っていない)
:中学卒業と同等であれば申し込み可能。技能実習生のビザで来日。こちらも来日から介護施設への派遣まで国の枠組み。来日のためのビザ取得にはN4相当が必要、入国後1年でN3程度でないと帰国。最初から介護施設で実習だが、やることが細かく決められている。介護施設の常勤職員10人に1人しか雇えない決まりがあったが、2017年、規制緩和があり、段階を経て職員と同数まで雇用が可能になった。やれる仕事の規制もどんどん緩和される流れがある。
日本語教育関連
以下に日本語教育の要件などが書いてある。
- 来日要件はN4程度、来日して1年以内にN3合格程度にならなければビザ延長なし。
- 来日後の研修は日本語教師は有資格者マスト。
- 来日前の研修も来日後の研修免除になるには有資格者でなければならない。
- N4,N3程度の「程度」は、J-TEST、NAT-TESTでそれに相当するレベルであること。
外国人技能実習制度への介護職種の追加について http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html
ただし、この日本語能力の要件は、すぐにN3→N4となりました。今後も人が集まらなければ基準は下がることになりそうです。
240時間
日本語学習については、2017年に来日後240時間のうち200時間で、有資格者によるものでなければならないということになった。
検定試験関連
技能検定について 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/ability_skill/ginoukentei/index.html
技能実習生等向け技能検定の概要 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/ability_skill/ginoukentei/kisokyu.html
中央職業開発能力協会(JAVADA) :厚生省所管の特別民間法人で、技能検定試験などを主催しており技能実習生向けの試験も行っている。 https://www.javada.or.jp/
一般社団法人日本建設機械施工協会 :各種検定試験を行っている。 https://jcmanet.or.jp/gaikokujinginoujisshu/
専用の教材など
学んでみよう日本の介護 JACCW 日本介護福祉士協会 http://www.jaccw.or.jp/pdf/home/foreign/gakusyutext.pdf
「介護」
技術・人文知識・国際業務 のひとつとして作られた独立した在留資格。ルートとしては留学に近い。
概要
日本語学校(最長2年3ヶ月)に留学ビザで入り、介護コースがある厚労省指定の学校(大学は4年、専門学校はほぼ2年)に進んで介護福祉士の資格を取得すれば、在留資格を変更してその後5年働ける(延長可)。合計9~11年日本に滞在可能で、延長もできる。対象国は限定なし。留学ビザなので来日時の日本語能力は問われない。お金があればOK。最初の入国のハードルは最も低いと思われる。EPAの枠はまったく期待できないし、技能実習生枠は1割ルールがあり、この枠も当然必要ということになるので、かなり期待されているはず。必要な人手が10万人として半分以上はこの枠で埋める予定?(今のところ、1施設で何人までというような雇用の制限のルールなどは見当たらない)
日本語能力に関しては最もハードルが低く介護福祉士に合格すればそのまま就労できる。そのかわり日本語関係の国の補助はなく全額自己負担(後述する介護施設紐付きの「奨学金制度」はあるらしい)。
介護ビザに関する法律
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(法務省) http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00010.html
介護福祉士の指定養成施設は介養協のサイトに http://www.kaiyokyo.net/school/
指定施設の関連法律 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S62/S62F03601000050.html
介護福祉士の国家試験の延長
介護福祉士の資格は指定要請施設を卒業すれば自動的に取得できたが、2022年からは介護福祉士の国家試験合格が必要。 これは2016年からだったものが人手不足で、6年先送りになったもの。ただし、これから6年は移行期間で、17~21年の移行期の人は、試験を受けて合格するか、卒業後は合格無しでも、働き始めて5年以上連続で働き続ける限り合格無しでもOKとのこと(ややこしい)。この件は、関係者の間でも「もう確定」「また先送りになる」と意見が分かれるようです。
検索したかぎりでは、移行期間がハッキリ決められたこともあり2022年から合格マストになりそうです。介護福祉士の試験は、合格率60%以上の比較的簡単な試験なので、日本語ネイティブの人なら、5年チャレンジできるなら、長く働くつもりなら、受験して合格する道をとると思われます。
ということで、最終的には、国家試験に合格しないと働き続けられないということになりそうです。また、基本、人材確保のためにハードルを低く、という事情によるものなので、外国人留学生に関しては合格マストになる可能性はより高いのではと個人的には思います。
技能実習生枠で期限に達して帰国した人が、この介護ビザ枠で再来日することができるのかは、まだ明らかになってませんが、他の技能実習生は別の資格で再来日OKにしようという流れがあります。再入国の受け皿的なビザになるのかも。
特定技能
介護分野における新たな外国人材の受入れについて | 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
特定技能は来日のハードルに以下のテストがある。CEFRのA2。
国際交流基金日本語基礎テスト https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/education/jft_basic/index.html
特定技能にも介護が出来ました。介護に限っては、とにかくいろんな入り口や延長の道を作ってかき集めるという方針のようです。介護の仕事は要求される日本語のレベルはひょっとすると大学進学よりも高いものが必要という気がしますが、そこも考慮される可能性は低くなったと言わざるを得ません。
問題点
某誌の原稿ためのまとめたので貼っておきます。
— 澤田晃宏(高卒進路記者/ジャーナリスト) (@sawadaa078) December 14, 2021
専門学校などの介護福祉士の養成施設の入学者数は5割を下回る状況が続いていたが、外国人留学生の急増で定員充足率がようやく5割超え。
何も、介護士になりたい外国人が多いわけではなく、返済不要の奨学金など、国や介護事業者が準備したから。 pic.twitter.com/A6IHmaYLLH
共通する問題
宗教的な習慣
イスラム教周辺については関連の連ツイがありました。
勤務中の宗教行為の禁止(お祈り、断食、ジルバブ着用)については労働基準局とかなりやり合いましたが、最終的に勤務規程として禁止することは違法ではないと言う回答でした。ただ募集では宗教行為の禁止は問題だと言う回答もあり、結局は雇用主の匙加減次第ということになってしまいます。 pic.twitter.com/hQTj7VaRZ8
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) December 19, 2021
以下にまとめました。 EPA介護福祉士と勤務中の宗教行為の禁止などについて
関連研究
EPA介護福祉士と勤務中の宗教行為の禁止などについて。 https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-25463315/25463315seika.pdf
シンガポールにおけるムスリム女性のヒジャブの規制をめぐる考察 http://jams92.org/pdf/MSJ05/msj05(035)_ichioka.pdf
イスラム教徒女性のスカーフめくる 看護師試験の監督員:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL2R66XRL2RUTFK01M.html
よく比較となるナースキャップはアメリカやイギリスでは1990年頃までにほとんどの施設でナースキャップが廃止されており、日本でも、基本、廃止が進んでおり、不衛生、器具などに触れる可能性があり危険、ジェンダー的な押しつけなど、多くの理由があり、廃止を求めてきたという経緯がある模様。この問題を論ずる時は、文化や宗教への理解や不寛容ということだけではなく、いろいろとふまえなければならないことが多いという印象。
ナースキャップ着用の有無に関する調査 https://www.yachts.ac.jp/off/library/kiyou/ronbun/99.09.pdf
ナースキャップの表現する看護婦像とフェミニズム https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/25/2/25_20020212007/_article/-char/ja/
イスラム圏においても、ジェンダー問題として語られることもあるとのこと。 イスラームと性差別の問題を、さまざまな視点から | 東京大学 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/fsi009.html
介護福祉士
介護福祉士|全国社会福祉協議会 :仕事についての概要など https://www.shakyo.or.jp/guide/shikaku/setsumei/02.html
[介護福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター :試験の概要 https://www.sssc.or.jp/kaigo/
★介護福祉士国家試験に留学生616名が合格 【留学生新聞】
— 留学生ニュース (@RyugakuseiNews) March 26, 2022
今年1月に行われた「介護福祉士国家試験」の合格者が発表され、全合格者約6万人の内ほぼ1%に相当する616名が、現役の外国人留学生だったことが分かった。留学生の受験者総数は2053名で、合格率は30%。 https://t.co/3EvDbXBjas
介護人材の奪い合い
海外の単純労働人材確保のためのやり方にも書きましたが、北米、豪州だけでなく、欧州もアジアからの労働力確保にシフトしています。
ネパール「カトマンズポスト」より
— 澤田晃宏(高卒進路記者/ジャーナリスト) (@sawadaa078) November 11, 2022
"Besides Israel and Japan with which Nepal has signed formal agreements to send caregivers, the United Kingdom, Canada, Australia and some Gulf countries have informally asked for Nepali caregivers" https://t.co/CMXiBwRkk9
介護の日本語の最先端を走る研究者が、介護の現場の実践を通して得た実態をふまえ、介護と日本語の関係についてゼロからやさしく解説します。
武内 博子 東京都立大学博士研究員、日本語講師 著
出版社による紹介ページへ
記事
学んでみよう日本の介護 JACCW http://www.jaccw.or.jp/pdf/home/foreign/gakusyutext.pdf
外国人介護人材の介護技能及び日本語能力の評価方法に関する調査研究事業 報告書 三菱UFJリサーチによる介護の日本語能力に関する総合的な報告書 https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/04/koukai_190410_1.pdf
資料
法務省 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00127.html
2019年法務省が各都道府県での説明に使ったスライド http://www.moj.go.jp/content/001282796.pdf
骨子の説明スライド http://www.moj.go.jp/content/001288453.pdf
2019年施行時に整理された法務省のページ http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00019.html
介護技能実習生とその他の制度の違い http://www.ibr-c.com/business/care/system/
留学生ビザの新設について http://www.tn-office.jp/14240775020843
国際研修協力機構 JITCO :厚労省管轄で長年管理を担当。総合的な情報、資料は豊富。 https://www.jitco.or.jp/
:JITCO 制度の概要 https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/index.html
:JITCO 外国人技能実習制度・研修 :仕事の定義や仕事内容などが書いてあります。 https://www.jitco.or.jp/system/shokushu-hanni.html
外国人技能実習機構 OTIT :2017年に出来た監視もやる組織。入管の捜査権を持った職員がいるので通報先としては有効か。多言語化はこちらのほうが進んでいる。 https://www.otit.go.jp/
:OTIT 外国人技能実習機構による検定試験の案内 https://www.otit.go.jp/jyuken_kikan_list/
論文
医療現場における患者の方言使用問題を問う : 「共創空間」開発技法(CCHDモデル)からのアプローチ https://ci.nii.ac.jp/naid/120004739189
医療現場における方言問題の現状とニーズ- 日台の看護師への調査から- https://www.jstage.jst.go.jp/article/nitsendaih/46/0/46_12/_pdf/-char/ja
看護師・介護福祉士候補者に対する専門日本語教育:初級からの取り組み https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtje/15/0/15_23/_article/-char/ja/
過疎地・地方都市で働く外国人介護者 http://ow.ly/2Kb4306VpGc
福祉の現場から 外国人介護福祉士候補者の自律学習研究の必要性 : 候補者に対する日本語教育及び学習支援の現状報告 http://ow.ly/BqOn30hHwxv
介護分野における専門日本語教育 : 教科書教材を中心に http://ow.ly/oX7B30i0IEg
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