日本語に関する指標いろいろ

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日本語に関する指標いろいろ

ここで触れるのは、日本語に関する指標と言えるものの概要だけです。個別のことについては、各ページで整理していきます。各ページへは上のメニューからも行けますし、下の各項目のタイトルから飛べます。(個々のページがない場合もあります)


2021年の段階では、省庁ごと(文科省、厚労省、文化庁、外務省)に参照枠的なものが作られ、それぞれ「参照枠」「標準」「指標」「目安」と名乗っています。

国の制度として作られる以上は、これまでと違い、これらの指標がどう機能していくのかを注視し、考え、議論していくことが重要になってきます。

このページでは「指標」という言葉を使っています。「判断するための目印」くらいのニュートラルな意味です。以下で整理するいろいろな指標は、元々は単なる指標ですが、どういう意図で作られたかに関係なく(その呼び方が参照枠であろうと標準であろうと)、以下の2つの要素によって性格は変わります。

  1. 何の判断基準になるのか
  2. 誰の判断基準になるのか

結果として、どういう制度の下で判断基準になるのかによって、在留資格の取得ができなくなる足切りの「基準」になったり、より学習のサポートが必要だという「目安」になったりしますし、「誰の判断基準」つまり、国が主語なのか、学校か、あるいは学習者自身かによっても大きく違ってきます。

どういう意図で作られたかを知ることも大事ですが、実態としてどういうものになっているのか、そして、それは正しく機能しているのかという視点も重要です。この「正しく」は「効率的に」とか「役にたっているか」だけではなく、「作られた意図どおり」であるかが重要です。「学習者個人のための参照枠」であったものならば、参照枠の枠を超えて「国や制度のための判断基準」として学習者を抑圧してしまうことにも注意を払う必要があるというわけです。つまり

  • その指標は学習者を、あるいは日本語学習そのものを、どの程度拘束するか

ということでしょうか。拘束は「抑圧」と言ってもいいかもしれません。例えば、大学受験が日本における学習ということそのものに与える影響(=拘束=抑圧)や、現在、日本語能力試験が国内外の日本語学習に与えてきた影響(=拘束=抑圧)もあります。

このような指標が国の制度となるというのは始めてのことですから、これからどういう影響(=拘束=抑圧)を与えていくのかは未知数です。

すでに、特定技能においてはすでに2019年に在留資格と日本語能力の判定が紐つけられています。JF日本語教育スタンダードという指標が基準になった試験の合否が在留資格の取得の判定使われたほとんど始めての例です。今後30万人以上が期待されている就労系の在留資格ですから大きな影響を与えていくことになります。

今のところ、日本語教育関係者は、在留資格や進学、サポートの基準に使われることについて否定的な意見はないようです。このまま今後、こういうことが増えていけば、これら数々の指標は、その呼び方に関係なく、国内外の日本語教育の絶対的な基準になる可能性は高そうです。それは「参照枠」という名前にふさわしいものなのか、議論が起きるかどうかはわかりません。

本家CEFRのもの、JF日本語教育スタンダード関連(JFCan-doと生活Can-doといろどり関連)、文化庁のもの、厚労省のもの、などがあります。以下は、エクセルファイルで配布されていたものだけを統合したもの

Can-doいろいろ

日本語能力試験のCan-doリストというものもあります。2010年以降、能試はJF日本語教育スタンダード準拠の方向2路線変更となったので、それに沿って(かなり無理矢理に)Can-do的に説明をつけたもの。

能試Can-doリスト
上の作成報告書

以下、概要だけずらずらと書きます。詳細はそれぞれの個別のページを参照してください。

https://webjapanese.com/dokuhon/files/sanshoowaku01.png

2021年に決まりました。制度上、日本語教育振興基本法の下に作られた日本語教育推進会議ー日本語教育推進関係者会議の下位にあたる会議で作られ、決議されたものなので、今後、国で作られるすべての指標の上位に来るものになりそうです。

(これは関連文書がほぼ残っていないので個別のページではなく、ここの説明がすべてです)

国が作った指標としては、JSL(児童のための日本語教育の指針。90年前後)に次いで最も古い部類だと思います。ただし、正式な会議を経て作られたものはないようで(なんからの会議はあったでしょうが記録がない)厚労省でも後に削除したりしてます。オフィシャルなものではない?

現在は、外務省系の国際交流基金の生活Can-do(2019)があり、厚労省の「就労場面で必要な日本語能力の目標設定ツール(2021)」がありますが、両者の関係は不明です。これらよりも先に、実は、2003年に作られた技能実習生向けのものがあります。おそらく日本語教育関係者(AJALT?)が関与して作られたのではないかと思います。

例えば就労系の日本語では厚労省系のJITCOが作ったガイドラインがあります。

講習の日本語指導ガイド

こちらがダウンロードして保存したものです

上のガイドから。 https://webjapanese.com/dokuhon/files/jitco01.png

https://webjapanese.com/dokuhon/files/jitco02.png

https://webjapanese.com/dokuhon/files/jitco03.png

https://webjapanese.com/dokuhon/files/jitco04.png

概要

2019年に在留資格の特定技能の日本語能力の測定を目的に突如作られた。JF日本語教育スタンダードが目安となっている。

  • 正式名称:国際交流基金日本語基礎テスト Japan foundation test For Basic Japanese (JFT-Basic)
  • 主催:国際交流基金
  • 開始年:2019年
  • 受験者数:
  • 実施頻度:
  • 実施国:9 か国(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中. 国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)
  • 試験の形式:「コンピュータ・ベースト・テスティング(CBT:Computer Based Testing)方式により行われます。各国のテスト会場でコンピュータを-使用して出題、解答します。ブースで、コンピュータの画面に表示される問題やヘッドフォンに流れる音声をもとに、画面上で解答します。」とのこと
  • 作問:国際交流基金
  • レベル認定:JFスタンダードのA2に達しているかという判定のみ。
  • 費用:フィリピンでは1500ペソ(約3000円)とのこと。
  • サイト:
  • 一般用

国際交流基金による説明
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/

「国際交流基金日本語基礎テスト」の開発-生活場面でのコミュニケーションに必要な言語能力(A2レベル)を判定するCBT-
https://ci.nii.ac.jp/naid/120007002935

「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、JF日本語教育スタンダードの考えに基づき、「日本語で何がどれだけできるか」を測ることを目的に開発されたものです。」(2019年8月の時点の説明)

生活日本語のための教材(教材シラバス案、教材サンプル)|国際交流基金日本語国際センター
https://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_rsorcs/kyozai.html

👉 あとで追加された略称は、JFT-Basicと、わざわざBasicとなっているので、この上にadvancedなど追加されるのかもしれません。

国際交流基金による説明の図

試験の項目とレベルに関する説明

https://webjapanese.com/dokuhon/files/JFtest2.png https://webjapanese.com/dokuhon/files/JFtest3.png

経緯

前述のように、この「テスト」は特定技能の計画のスタート時の2017年から計画され、2018年の6月には国によって予算化されていた。正式なスタートは2019年春。このの段階で公的には突然登場し、何の予告も説明もなく始まった。実施された後もどういう性格の試験なのか、どういう考えに基づき作られ、認定するのかは上の一覧以外説明はないまま数ヶ月が過ぎた。おそらく水面下で政府と調整してきたものだと思われる。このことを基金関係者以外で知っていた人はおそらくほとんどおらず、日本語の試験というより政治的な施策。

今後、おそらくこのテストは、特定技能で日本に来る人達が、日本で働くために十分な日本語能力を持つという証明となり、合格さえすれば、日本語を学習する必要はない(国や自治体などは学習環境、時間の確保などに予算を割く必要はない)という根拠として機能し、結果として、日本語学習者の日本語を学ぶ時間、権利を奪う根拠として機能することになりそう。日本語教育の施策に大きな影響を与えていくことになるのでは。

就労場面で必要な日本語能力の目標設定ツールを開発しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18220.html

2021年6月 厚労省が出したもの。基金の生活Can-doとは違う指標になっている。レベルも本家の改訂版を意識したのか、さらに細かくなっている。来日前と来日後では違う指標でやる?

あくまで参照枠となっているが、今後、就労系でも在留資格の延長などと試験の合格が紐つけられれば、参照枠は終わり、単なる指標となる。参照枠を維持するために、紐つけに反対する日本語教育関係者はいるだろうか?

「てびき」によると開発者は以下のとおり。文化庁の参照枠の会議の参加者は金田氏のみ。

https://webjapanese.com/dokuhon/files/kooroocando.png

  • 大木 栄一 玉川大学経営学部国際経営学科教授
  • 金田 智子  学習院大学文学部日本語日本文学科教授
  • 近藤 彩 麗澤大学国際学部教授 
  • 品田 潤子 公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
  • 島田徳子 武蔵野大学グローバル学部グローバルコミュニケション学科教授
  • 谷山慎一 学校法人 服部学園 YAMASA 言語文化研究所 所長
  • 長山 和夫 一般財団法人 国際協力センター 国際協力推進部 部長
  • 森島 聡 株式会社デンソー コアスキル開発部 次長
  • 文化庁国語科
  • 篠藤亮、藤原暁子、石原かおり、古賀慎子、西澤一徳、鶴貝貴子

👉 島田氏が座長。JF日本語教育スタンダードのタスクフォースのメンバー。

国際交流基金が特定技能の試験である国際交流基金日本語基礎テストのために作った「生活Can-do」 とは、区分けの段階も内容も(厚労省のは2018年の改定準拠?)違う模様。生活と就労でCan-doも分けるということ?これは文化庁がオブザーバーとして参加ということなので、厚労省+文化庁の作品で、生活日本語は外務省の作品として別ということ?

例えば、書く、オンライン、という項目があり、翻訳ソフトを使う想定になっているが、キーボード入力とかフリック入力の習熟はCan-doには無い。「やさしい日本語」は雇用者側の配慮として「やったほうがいこと」として出てくるのみ。

いろいろ謎が多いが、もうとにかく国内の日本語教育政策はCan-doでやることにはなったらしい。いつ、日本語教育関係者の間でそういう合意ができたのかはわかりませんが。

基金の生活Can-doとの整合性に疑問

同じ就労系の「指標」である基金(外務省)の特定技能向けの生活Can-doとの整合性、関係はわからないままです。

生活日本語は文化庁です。 日本語教育 | 文化庁には、生活ガイドなどいろいろな関連コンテンツがありますが、目安的なものとしては

「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容・方法の充実 (カリキュラム案,ガイドブック,教材例集,日本語能力評価,指導力評価,ハンドブック) | 文化庁

というものがあります。これも、基金の生活Can-doとは違うアプローチと言えます。

やさしい日本語

https://webjapanese.com/dokuhon/files/yasashiigaiyoo.png

👉 上の画像は2020に作られたガイドラインの「概要」から。

2021年の時点では、公的な資格や試験などはないが、法務省と文化庁がやさしい日本語のガイドラインの策定を進めており、おそらく、地方自治体、あらゆる公的文書、災害対策、メディアなど、もしかすると、日本語教育に関する最も大きな制約になる可能性がある。

2020年、法務省と文化庁でガイドラインを作ることを発表

法務省:「在留支援のためにやさしい日本語ガイドライン」に関する有識者会議の開催について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri15_00001.html


有識者メンバー

  • 庵 功 雄 一橋大学国際教育交流センター・言語社会研究科教授
  • 岩 田 一 成 聖心女子大学文学部日本語日本文学科准教授
  • 新 居 みどり 特定非営利活動法人国際活動市民中心理事
  • 水 野 義 道 京都工芸繊維大学名誉教授
  • 山 口 照 美 大阪市生野区長
  • 山 脇 啓 造 明治大学国際日本学部専任教授
  • 横 田 宗 親 一般財団法人自治体国際化協会(クレア)多文化共生部長

4回の会議を経て、2020年にガイドラインが作られた。

在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/plainjapanese_guideline.html

https://webjapanese.com/dokuhon/files/DLA.png

👉 下のDLA資料より

小中学校における日本語教育は90年代から文科省と日本語教育学会がJSLカリキュラムとして行ってきたこともあり論文など研究は多い。「年少者」「児童」という言葉で表現されることが多い。「外国につながる子供」は比較的論文に多く、メディアでは2015年ごろから「外国にルーツを持つ子供」という呼び方も増えてきた。

JSLカリキュラム開発の基本構想 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/001/008/001.htm

外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1345413.htm

外国人児童は国語とは別に設定されている。

小中学校

帰国・外国人児童生徒教育情報:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003.htm

高校

小中高の外国人児童の日本語支援に関しては、小中はある程度整備されていた(ので論文も多いが)高校の支援は2010年代後半に始まったばかり。

高等学校における日本語指導の在り方に関する検討会議:文部科学省

年少者日本語教育における「日本語 能力測定」に関する観点と方法

かつての大検。試験問題は公開されており、留学生の基準ともなるので、ざっと目を通しておく必要はある。

高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定):文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/

-高等学校卒業程度認定試験問題(高卒認定試験) 解答・過去問題:文部科学

https://webjapanese.com/dokuhon/files/shitsugo.png

👉 下の「検討課題」より

発達障がいなど、言語の運用に関する基準、目安というものも複数ある模様。

言語障害者・児の発話分析を行うための試案策定についての考察

障害認定基準(言語機能の障害)の検討課題について

OECDによる基準

信州大学 比較教育学研究室: 研究紹介: PISA2015の結果と考察

↑の解説のブログです。PISA2015の解説動画 | あすこまっ

OECD生徒の学習到達度調査(PISA):国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html

PISA調査における読解力の定義,特徴等:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/1379669.htm

PISA型読解力について考える
https://www.keinet.ne.jp/magazine/guideline/backnumber/08/04/pisa.pdf

国際バカロレア(IB):欧州を起点に始まった大学入学資格試験の標準化の試み。スイスの非営利団体主催。

「言語と文学」(グループ1)は、「言語A:文学」「言語A:言語と文学」「文学とパフォーマンス」(学際的科目)に分かれている。

「言語A:文学」 指導の手引き

「言語A:言語と文学」 指導の手引き

国際バカロレアが求める言語能力とは

国際バカロレアの言語教育に関する一考察―国語教育とリベラルアーツ教育との関連から―

2001年のWHO策定。障害を持った人を含む総合教育の指標のひとつ。

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)、邦訳は国際生活機能分類です。 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf






研究

最後の授業のペテン
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~kwatanab/virt-S/ronjutsu1.htm

「ことばのちから」というイデオロギー—言語現象を「能力化」するまなざしを問う—
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/tanakak/2016secondthurs2%20kotoba%20no%20chikara.pdf

Council of Europe Language Policy Portal
https://www.coe.int/en/web/language-policy/home

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  • 最終更新: 2022/09/29 01:56
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