日本語教師

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日本語教師

日本語教師という職業は注目されはじめていると感じている関係者は多いですが、実は日本語教師そのものの検索は2004年から右肩下がりで減少中です。

このことは中にいるとあまり意識しにくい部分だと思います。

👉 世界におけるjapanese lesson learningなどの検索数も同じような下降曲線です。

👉 2004年はちょうど、なんらかの規制緩和があり、日本語教師養成講座が倍増し、日本語学校で仕事につけない有資格者がプライベートレッスンなどに流れてきたころでもあります。長期的にはここから日本語教師というワードの存在感が下がってきていることは、とても興味深い現象です。

  • 法務省:日本語教員
  • 文科省:日本語指導員と日本語指導員の指導員
  • 文化庁:日本語コーディネーター
  • 外務省:日本語指導助手、日本語専門家、日本語上級専門家、日本語講師(EPA)
  • HIDA:日本語講師
  • 日振協:非言語系ビジネス日本語教師 
  • ヒューマンアカデミー:やさしい日本語指導者
  • 電通?:「入門・やさしい日本語」認定講師
  • 公認日本語教師:2021年までの国の名称の案
  • 登録日本語教師:2022年以降の国の名称の案

省庁ごとに違う。教師をランクづけしたものや、教師相手の指導者、関連の仕事などでどんどん増殖している。

一般的に

  • 授業をする教師の名称
  • 上の一段上的な、スーパー教師的な名称
  • コンサルティング業務が主な仕事の人の名称
  • 周辺の資格に関する名称

があります。


省庁ごとの考え方とバリエーション

  • 法務省:日本語教員(告示では「教員」と呼ぶ)。告示で定義されている有資格をこう呼ぶ。
  • 文科省:日本語教員(解釈指針では「教員」と呼ぶ)。JSL(児童の日本語教育)では日本語指導員と日本語指導員の指導員と呼ぶこともある。ただし、告示の有資格かどうかは関係ない。
  • 文化庁:日本語コーディネーター(地域の監督業務的な?)。教える仕事ではないので文化庁で登録して研修を受けた人をこう呼ぶ。年一の関連の統計では無資格者もボランティア日本語教師としてカウントしている。そこでは「日本語教師」と呼ぶ。
  • 外務省:日本語指導助手、日本語専門家、日本語上級専門家、日本語講師(EPA)、生活日本語コーディネーター(22年から募集とのこと)。告示の定義は昔からスルーしていて応募条件にも入っていない:。日本語専門家は要修士。自前の資格。
  • AOTS:日本語講師(募集時の呼称)。募集時は告示の有資格が要件になっている模様。
  • 日振協:非言語系ビジネス日本語教師(告示校以外で日本語の授業をする教師の認定的な?)。告示の有資格じゃなくてもいい?
  • 全国日本語教師養成協議会:名称はない模様。「自己啓発的な試験」とのこと。スーパ教員的な位置づけ?告示の有資格はマストではない模様。
  • ヒューマンアカデミー:やさしい日本語指導者。2017年スタート。21年現在、サイトのトップからは探せない。開始時はたしか日本語教師養成講座のオプション的なもので、15万円弱だったという記憶があるので、告示の有資格が要件と考えられる。
  • 電通:「入門・やさしい日本語」認定講師(有料講座を受講し、著者と「世界観を共有できれば」認定とのこと)上のヒューマンアカデミーの講座と企画者でもある人物によるもの。上の後継的な?しかし、21年の段階では、告示の有資格者が対象となっている。

👉 外務省(国際交流金)の助手、専門家、上級専門家は、それぞれ年収で約300万、500万、900万前後という区別がある模様。EPAは日本語「講師」と呼んで(報酬も)区別している。ただし、日本語講師と生活日本語コーディネーターの待遇、報酬は専門家以下(300~500万?)である模様。日本語講師(EPA)を除き実際に教える機会は少ないと言われている。

👉 日振協のは就労系の教師の資格らしいが定着はしていない模様。ヒューマンアカデミーのやさしい日本語指導者養成講座は終了したらしく、かわりに関係者である電通の吉開氏が自身の著作を読んだ人を対象に7万円前後で個人的に認定する「「入門・やさしい日本語」認定講師」というものに移行している模様。

日本語教師に関するデータは極端に少ないのが特徴です。国の調査は文化庁が国内の施設や教師の数を数え、国際交流基金が海外の施設にいる学習者数を数えるだけです。日本語学校などの業界組織はまったく調査をしないので、雇用条件、働く環境、収入、待遇、年齢、性別、資格の有無、離職率、などは、ほぼデータがありません。文化庁にある数字から、いろいろと想像して出していくしかありません。

日本語教師についての国の本格的な調査は文化庁の2012年のこれがあるだけ。(業界組織の調査は皆無。一度もちゃんと調査をしたことがありません)

日本語教員等の養成・研修に関する調査結果について

👉 下で紹介する日本語教育実態調査等 |(文化庁)は文化庁が毎年行っている調査ですが、教師にフォーカスしたものではないので、常勤、非常勤の数くらいしかわかりません。

👉 国内の民間の日本語学校は日本語教師養成講座などを運営する資格業界でもある、という特殊な状況があり、日本語教師の働く環境についてデータを出すと資格業界的にはマズい、というようなことがあるのではと思われます。資格は大学に一本化するなど切り離すべきです。

日本語教師に関する国の文書は以下にあります。ブックマークしておいたほうがいいと思います。

厚労省には国際調査などを元にした「日本語教師」の紹介ページというものがありました。文化庁とは違う、国際調査による人数など新たな数字もあります。 日本語教師 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/397


では、日本語教師について整理していきます。数、資格、種類の順です。まずはから

日本語学習者の数と同様、まず定義が必要です。日本語を教えている人をすべてカウントすると無数にいることになります。「報酬を得て教えている」でも、ではいくらから報酬なのか?ということになります。「ボランティアです」と言う教師も交通費と称していくらか貰っています。

「資格を持っている」は一応の目安になります。国が定めたガイドラインに従って誕生した有資格者は1988年前後から累計でおよそ25万人前後いますが、実際に教えている有資格者は、おそらく世界で5万人以下です。有資格者でもボランティアで教えている教師は多数います。

「キャリアとしての日本語教師」で考えるなら「生活できるレベルの収入を得ている」を基準に考えるのが妥当かもしれません。「日本語教師だけで生活している人だけ」ということではなく、たとえ週に数時間でも労基法で決められている報酬をクリアしているかを目安にし、その延長上線でフルタイムで働くことができる可能性があるかどうかも重要です。週3時間なら時給1000円で仕事があるけど、週40時間はできない、というのは原則として入れないということです。しかし、これも厳密な仕分けは難しいので、あくまで目安です。

国内の日本語教師の数は文化庁の日本語教育実態調査等にあり、海外の教師の数は国際交流基金の日本語教育機関調査(国際交流基金)にあります。国内の常勤講師の数はここ10年以上、だいたい4000
5000人前後で推移しています。この「常勤」の教師は日本の労基法をひとまずクリアしていると考えられます。

海外の教師は、基金の調査で約6万人前後となっています。多くは現地採用の教師で日本語ネイティブの教師は15000人前後です。この15000人は「その国の労基法をクリアしているのか?」「その国の労基法の基準は日本の労基法をクリアできるのか?」という2つのハードルがあり、ハッキリしません。おそらく小中学校などで働く現地採用のノンネイティブ教師はその国の標準的な給料を得ている可能性が高いとは思いますが、日本語ネイティブの教師はアシスタントどまりということも多いようです。

これらのデータだけでざっくり言うとメシが食えている日本語教師は国内に4500人。海外に2500人くらいいるというのが正解に近いと思います。以下、説明します。

https://webjapanese.com/dokuhon/files/kyooshikazu.png,500x100 

文化庁の調査では、ここ10年以上、国内の日本語教師は常勤が4~5000人、非常勤が12000人、ボランティアが22000人前後で推移しています。「生活できるレベルの収入を得ている」基準だとボランティアは除外対象となります。非常勤も実態としては厳しいので、仮に「4500人」としてみます。

ST比で考えてみる

ST比は教師一人あたりの学生数のことです。本来、教室の授業が基準なのでバラバラに点在している学習者相手には使えないのですが、他に指標もないので参考までに使って考えてみます。日本の小中学校は20以下、マンモス大学みたいな私立大学でも40くらい。海外は10~20。語学では10~20くらいが理想ではないかと思います。日本語学校の規制は40です。

分子の日本国内に日本語の学習が必要な人は何人いるのか?はだいたい100万人くらいではないかという見立てです。100万人に対して常勤の教師が4500人なので、ST比(通常、常勤講師で計算します)は222です。非常勤やボランティアを足すと約4万人なので25です。おそらく国は「ボランティア入れて25人に教師1人なら、なんとかなっているじゃないか」と考えています。

ボランティアは除いて考えます。

変動しますが、この数十年は、国内で正規雇用(専任)が約5000人、非正規(非常勤)が約15000人、海外で約64000人(日本語ネイティブは14000人)です。 海外の日本語ネイティブ教師で、日本の労基法をクリアするレベルで働いている教師は、アジアで2000人、アジア以外で500人くらい、というところではないかと思われます。以下、検証してみます。海外のノンネイティブの教師が増える傾向があります。

2015年の国際交流基金の調査によると、海外の学習機関で教えている日本語教師の数は、約64000人です。

国際交流基金の概況
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey_2015/all.pdf

同調査によると、このうち日本語母語教師の比率は約22%。約14000人です。

小中高校での比率もやはり2割くらいです。8割は日本語を学習した現地の教師です。

海外で仕事として日本語を教えている教師は…

日本語ネイティブの教師に絞って考えると、約14000人の海外の日本語ネイティブの教師のうち、基金の調査を基に教室で学習している学習者数の比率でわけると、東アジアが60%、東南アジアが15%です。つまり、8400人が東アジア、2100人が東南アジア、合計10500人に、残りの3500人がそれ以外の北米や南米、欧州、アフリカ、つまり、14000人の日本語ネイティブの日本語教師のうち、おそらく半数以上は月給10万前後で、2割は3~5万です。残りの3割4200人のうち、日本の労基法をクリアするレベル(東京労働局試算の月収14万円+手当て)で働いている正規雇用の教師は半数弱の2000人くらいというのが妥当なところでしょうか。

アジア以外の3500人のほとんどは、現地で結婚したり、配偶者の人の家族ビザだったり、レアケースですが、現地の大学を卒業し現地の教員免許を持っている人、あるいは、2000年以前に現地に渡り(当時は修士があれば現地でまだ仕事があった)なんとか続けているという人達です。日本語教師としてワーキングビザで滞在している人は世界に500人いるかな?と個人的には思います。その500人もほとんど修士博士あるいは特殊なコネみたいな人達です。

海外で日本の労基法をクリアできる日本語教師の数

日本の労基法をクリアできるレベルで報酬を得ている海外の日本語教師は、2500人、というのがとりあえず出してみた人数です。海外の学習者はここ10年くらいの調査では、350万人くらいいることになっているので6万人なら、ST比は58です。

執筆時(21年9月)は、新資格への移行中です。ひとまず旧資格(~2024?)までのものを軸に整理します。

まず、「地方公共団体・教育委員会」「国際交流協会」の養成講座は正規の420時間ではない可能性が高いのでひとまず除外します。旧資格(~2024?)では、資格を得ることができるのは、大学や短大で学んだ人と、日本語教育機関の420コマ時間の修了者です。

大学や短大などでは、2010年代に入り、日本語教師の資格がとれるという学部が増えましたが、すぐに萎みました。日本語教師の待遇が厳しいことは知られており、新卒者の進路としては選ばれない傾向は続いています。いくつかの通信の講座を持つ大学を例外として基本は微減が続いています。それでも、毎年15000人が学んでおり、資格を得て卒業する学生は毎年4000人ペースは守られています。日本語学校もここ数年は毎年4000人前後の修了者がいます。

つまり1年で8000人の有資格の教師が生まれていることになります。大学での資格取得者は、たいてい文学部などの人で、就職先としては日本語学校はほぼ視野になく、日本語教師を続けるなら大学院に進むしかないと考える人が多数です。その他、大多数は、一般企業に就職するケースがほとんどです。この大学の新卒者の一部に加えて、日本語学校の養成講座の修了者のかなりの部分は日本語教師として仕事をする気はあるでしょうから、少なくとも半数の4000人は新規の教師として考えることができると思います。

資格制度が整備されたのは、1988年。90年代初頭には大学に日本語教育学科ができはじめ、民間の養成講座もすでに今の数と変わらない規模になっており、大学で毎年4000人前後、養成講座は平均で4000人ペースです。毎年8000人。これに1986年にスタートした日本語教育能力検定試験は毎年1000
2000人の合格者を輩出していますが、大学や養成講座での資格取得と試験合格者は重複する可能性も大きいので、500人とすると、1年で8500人の有資格者が生まれる。それが1995年あたりから続いているとして、現在21万人強になる、という計算になります。

👉 このうち稼働しているのが国内で45000人、海外で6万人。ただし海外の教師のうち日本国内の資格を持っているのは、それほど多くないと思われます。

必ずないとダメなところ

  • 国内の日本語教育機関(告示校):学習者数は約9万人
  • JICA:学習者数は500人くらい?
  • その他、EPA関連などでの政府系組織の募集:学習者数は多くて1000人くらい?
  • 技能実習生の「介護」の来日後の200時間学習:学習者数は今は数百人(増えても1万人くらいまで?)。

のみです。大学や海外の教育機関では参考にされません。海外の大学などでは資格はまったく関係なくほぼ博士号マストです。日本語教育でなくても、博士を持っていることが最初の条件です。

日本語教師が食えるかは、この有資格マストの範囲をどう広げていくかにかかっています。

以下は、日本語学校、大学などの採用担当者向けのアンケートです。大学関係者中心ということもあり、有資格であるかどうかはほとんど考慮されていないという結果になっています。 日本語教師採用担当者採用基準アンケート結果

各教育機関がどういう資格、経験を重視しているかの調査です。

一般論として、国家資格は、以下の4つの種類があり、民間資格にも影響しています。

  1. 業務独占資格:医師や看護婦のように、その資格を持っている人だけがその仕事できる。
  2. 名称独占資格:栄養士のように資格を持っている人だけが名乗ることができる。
  3. 設置義務資格:衛生管理者など特定の業務の際にいないとダメ。
  4. 技能検定:建築大工など持ってると業界で優遇されるよというもの。技能実習生などにとっても大きな課題となっています。

今の日本語教師の資格が、一番近いのは、’’設置義務資格’’、ではないかと思います。法務省が留学生を受け入れてもいいよと認定した告示校と呼ばれる日本語教育機関の教師は有資格者でないとダメということになっています。つまり業務独占は、一部のジャンルに限って有効になることもあるわけです。現実的には、日本語教師の資格は、この一部業務独占の範囲を、告示校だけから就労系の現場や児童の日本語教育に広げていくことで、働く場を広げていくことになりそうです。

一部業務独占の範囲

2017年までは告示校のみでした。告示校とは、留学の在留資格を得て語学を勉強する学校のことです。一般に「日本語学校」「800校前後」などと報道されたりする日本語教育機関(正式名称です)のことです。

2017年に、技能実習生制度の介護で、来日後の240時間の学習時間が義務づけられ、その担当は有資格の教師に限るとされ、はじめて告示校からひとつ増えました。

今のところ、この2つだけです。他に省庁関連で日本語教師を募集する際に「有資格」がマストということはありますが、定期的な募集ではなく数も少ないのでここではカウントしません。JICAの海外派遣などでも有資格となっています。

1985年に国(文科省)による検討がはじまり、1988年にスタートしましたが、国はあくまでガイドラインを作るところまでで、国家資格ではありませんでした。監督は文化庁でしたが日本語養成講座の質的チェックはなく、事実上、2017年までは野放し状態でした。2017年から登録手続きができてやや管理が厳しくなりましたが、提出書類の項目が満たされていれば受理するという性格のものなので、現在は以前と変わらない数にまで戻っています。

2020年6月の告示基準はまだ旧要件です。該当部分を全文引用します。


十三 全ての教員が,次のいずれかに該当する者であること。

  • イ 大学(短期大学を除く。以下この号において同じ。)又は大学院において日本語教育に関する教育課程を履修して所定の単位を修得し,かつ,当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者
  • ロ 大学又は大学院において日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し,かつ,当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者
  • ハ 公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する日本語教育能力検定試験に合格した者
  • ニ 学士の学位を有し,かつ,日本語教育に関する研修であって適当と認められるものを420単位時間以上受講し,これを修了した者
  • ホ その他イからニまでに掲げる者と同等以上の能力があると認められる者

—–

ざっくり書くと、大学で決められた単位(主専攻45,副専攻26単位)を取得するか、日本語教育学科を卒業するか、日本語教育能力検定試験に合格するか、420コマ時間の養成講座を修了すること。最後は、言語学博士とか、昔からやってるベテランなどの救済措置です。いわゆる「有資格」かどうかは、この告示基準にある文言が元になっています。2015年以降、文科省の関与が深まり、文科省には4大卒を条件にしたい意向があるようですが、今のところは検定試験の合格者に限り学歴関係なく有資格者ということになっています。

👉 この有資格者は、90年以降、長年、国内の民間の日本語学校の採用条件になっていましたが、420コマ時間のほうが優先され、試験合格は「あるといいね」という程度でした。しかしどちらかあれば就職はできました。よって90年代は多くの短大卒、専門学校卒の教師が活躍し日本語教育を支えてきました。

2022年5月の時点では、以下のサイトに講座の情報は集約されてました。文化庁で受理された民間、大学で有資格となる講座のリストです。

日本語教育機関の告示基準第1条第1項第13号に定める教員の要件にかかる日本語教師養成課程及び研修について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/92159401.html

俗に「420時間」と言われますが、正確には「420単位時間」で1単位(コマ)は最低45分なので、45分×420=315時間です。

👉 募集要項をよくみると、資格スクール系などは315時間ギリギリクリアで、老舗の講座は450「時間」だったりします。要注意です。最初に事務に要確認です。

日本語教師養成講座は、1985年に国による検討がはじまり、1988年に今の420時間というルールが出来ました。その後、平成12年(2000年)に420時間のより詳しい内容が決まりました。「文化庁のシラバス」と呼ばれ現在も継承されています。(その後2010年にマイナーアップデートされました)

監督官庁は文化庁。日本語教師養成講座については以下にデータがあります。
日本語教育実態調査等 | 文化庁 https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

2006年以前のデータは
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9218806/www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/jittaichousa/

養成講座に関する現在のルールは、文化庁にあります。2000年の会議がベースになって作られたものです。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_suishin/nihongokyoiku_yosei/

👉 よく養成講座の広告にある文化庁のシラバスは、このページにあるPDFにあります。

2016年から文化庁に届け出をすることになりました。それまでは「なんとなくシラバスにのっとってます」と言った者勝ちの無法地帯でした。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/
のページある「日本語教員養成研修実施機関・団体」というPDFにあるものだけです。受理された養成講座には番号がふられます。元号(今はH)10桁で、3つのパートに分かれています。おそらくこれは、ずっと今後変わらないはずです。

H290519 40 003

  • Hは平成。29年(2017年)5月19日に受理。最も若いのが29です。昔からある養成講座はたいてい29年中に受理されています。
  • 次の40は地域番号。県別だと思います。北海道が01、福岡で40なので、北から。
  • 最後の3桁はナンバーリング。地域ごとの受付順です。この申請で苦労したところは多く、番号が若いほうが、以前からちゃんとやっていたから、すんなり通った、ということのようです。つまり受理の年が29年で、かつ若い数字であることには意味があります。

これは別ページに詳細があります。

これも2019年までは「大学又は大学院において日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し,かつ,当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者」として資格として認められていました。20年以上にわたり、年間平均4000人前後の有資格者を生んでいますが、ほとんどの場合一般企業に就職します。

これも2022年以降は日本語教育人材の養成・研修の在り方についてに従って行われる。細かい修正ポイントはあるが、いぜんとして大学には甘いという印象。

👉 上は4大卒ではないという理由で採用されなかったという話のようです。このようにルールとしては有資格者といして問題ない場合も、ある種の線引きが行われれば、現場では「民間企業の裁量の範囲」的に都合良く解釈されてしまう例ではないかと思います。

これはネット上、Youtube上での説明は誤りが多く、混乱している。これまでとこれからを整理します。

これまで

  • 資格制度ができてから(1988年)これまで(2021年)、資格の取得に学歴は関係ない。検定試験に合格すれば有資格とされてきた。
  • 日本語教師養成講座は、1988年から2017年までの29年間、シラバス通りにやってるかなどをチェックする機関もルールもなかった。
  • 2017年から文化庁への登録制となりその際、満たすべき条件のチェックがはじまった。しかし新たな条件はほぼ無く。従来の条件のチェックのみ。
  • ただ、2017年に420時間の講座には「学士の資格を有し」という表現が新たに加わり、これによって養成講座を修了しても4大卒でないと資格と認められなくなった。
  • 日本語教師養成講座の紹介でこの4大卒でないと資格の取得はできないと明記することが文化庁から指導されている。
  • ただし養成講座は学歴関係なく募集することは可能。
  • 「学士」は4大卒なので専門学校ではダメ。短大は「準学士」なのでこれもダメ。
  • ただし、この2017年の改訂は過去に遡らないので、過去に有資格となった人は資格は失わない。
  • 2017年以降も、検定試験には学歴の規定はない。これを2020年代にどうするかは議論中。

養成講座で4大卒じゃないと資格と認められなくなった件は揉める可能性が高い。訴えた場合、おそらく…

  • 基本的にはFAQなどで「修了しても検定試験の合格が必要」などと補足があるはず。
  • ただしちゃんと説明したかの判断は裁判次第と思われる。小さい文字で目立たないところなら微妙。
  • 2017年の大卒要件は過去に遡らないルールとして決まったので、スタート時に施行されていなければ学歴関係なく資格とみとめられるはず。文化庁に訊ねればわかるはず。

👉 文化庁は2017年以前はすべての養成講座を把握していないが、過去の養成講座の修了証には年月日を記載するよう文化庁から指導があったはずなので、記載があれば、有資格者とみなされると、文化庁へメールで確認済み。ただし420コマなどを守っていたかは確認できないのでマイナーなところは怪しまれる可能性はある。

これから(2024年あたりから?)

現在国で議論中なので、どうなるのかはわからない。

  • 現在進行中の日本語教師の資格の会議では「国家資格に学歴は条件にならないから日本語教師もそれに準ずるべき」という意見が出て、それに強い反対はなかったとのこと。学歴関係なく資格者となる道は残る可能性が高い(あくまで可能性。確定ではない)
  • しかし2021年までは会議などでも日本語教育学会などは学士を条件にしたい様子だったので、どうなるかは未知数。

実際の資格の扱われ方と問題点

  • 資格の取得方法はいくつかあり、日本語学校の就職でどれが有利かは業界の都合で決まってしまう。
  • 80年代から2000年代あたりまでは420時間修了が最強で、試験の合格はオプション扱いだった。これは日本語学校が養成講座の主催者を兼ねている資格業界でもあったという構造が原因と考えてもいい。かなり勝手な都合とも言える。
  • 90~2000年初頭までは完全な買い手市場だったので、資格は420時間と検定試験合格なら有利。検定試験だけだと不利と言われていた。学歴も重視された。(しかし、同じくらいなら偏差値が高いほうを選ぶ程度のものだったと言える)
  • 2000年以降、検定試験だけでも就職できる例が増えたと言われている。
  • 2015年から2018年の売り手市場(教師不足)の時代は、なんでもいいから資格があればOKだった。学歴も関係なし。
  • しかし2017年の4大卒重視路線からは、4大卒を条件にする日本語学校が増えた。

今後も続く問題点としては

  • 資格の種類でどれが有利かは日本語学校業界の都合で変わる。売り手市場なら条件や経験問わず採用するが、ちょっと買い手市場になるとすぐに、あれこれと条件をつけたがるという傾向がある。
  • 今のところ、求人で4大卒を条件にすることは禁じられていないので、検定試験を合格しても学歴で選別されてしまうなら意味がない。資格取得に学歴を必須としないなら求人でも学歴を条件にすることは禁じるべきではという気がする。しかし建て前上守るだけになってしまうかもしれない。難しいところ。

結論

今後もこれまでと同様、学歴問わず資格を取得できる可能性は高いが、きちんと就職できるかは、教師の需給のバランスと国の指導次第。それがハッキリするのは2024年か、もっと先になりそう。

海外

よく海外に行くには大卒資格が必要なので、実質大卒じゃないとダメと答える人がいるが、海外で日本語教師で在留資格をとれるのは今は修士が最低条件で博士じゃないと難しくなってきている(中国でも学士だけだと難しくなってきている)。4大卒でも海外で働けるのはベトナムなど就労系の在留資格(技能実習制度、特定技能)の協定がある国の一部だけだという説明をするべき。高校、短大卒ではかなり難しいが、企業経由などでは可能性があるらしいです。

👉 90年代、短大卒の日本語教師は多かった。現在のベテラン教師には4大卒ではない人もいるはず。仮に資格が更新制になると、これらの有資格者は合格しないかぎり資格を失うことになるが、更新に学歴の条件がつけば無条件で資格を失うことにもなってしまう。

学歴でフィルタリングする意味は?

2000年以降「大学全入時代」と言われている。つまりすでに大卒というものは学力を証明する資格ではなく、お金と4年の時間を使う余裕(これも実質お金と言ってもいい)があれば誰でも取得できるものになっている。大学への進学率は現在約5割で、家庭の事情で進学を諦めた人は多く、現在、収入格差は広がっていることもあり、大学は淘汰の時代を迎えている。今後、大学進学率は下がる可能性もある。例えば、日本語教師の年収は300万円程度であり、15年働いても400万円を超えるかは怪しい。大学の学費は上がるばかり。つまり家庭を持っても、大学に通わせるのは厳しい。子ども2人は無理では?パートナーが倒れたら、離婚してシングルになったら、介護が始まったら、かなり厳しい。つまり4大卒が条件になれば、日本語教師の子どもは日本語教師になるのは難しいということになる。

大学全入は事実上、もっと昔からそうだったという指摘もある。大卒でなければ資格が取得できないということは単なる差別とも言える。教える仕事であっても大卒を条件にする理由はなく、足切りをするなら、資格取得の420時間の修了試験を設けるとか、検定試験の難易度などで調整すればいいだけではないかと思われる。

以下の記事に学歴要項の議論の経緯について少し詳しく書かれてました。

第30回 ウクライナ避難民の受け入れと日本語教育施策|田尻英三
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2022/05/09/ukeire-30/

2018年ごろから、名称や資格の条件など国で継続議論中です。2023年中に決まるかどうかかもしれません。それまでは名称や資格の取り方などはどうなるかまったくわかりません。決まるまでは、ニュースアーカイブで経緯を記録していきます。

→ 日本語教師養成講座にお金を払うのはストップしたほうがいいと思います。

決まったらここ整理します。


最初のデータで明らかになったように、労基法をクリアするレベルで報酬を得ている日本語教師という基準でいうと、「国内に4500人。海外に4000人くらい」です。文化庁の調査は大学やいわゆる日本語学校、ボランティア団体などが調査対象でプライベートレッスンは学校付属出ない限り含まれないようです。国際交流基金の調査もリアル教室のコースが対象なので、オンラインの学校や個人教授は含まれません。

これまでの調査

文化庁が毎年行ってきた日本語教育実態調査等 |(文化庁)は文化庁が毎年行っている調査ですが、教師にフォーカスしたものではないので、常勤、非常勤の数くらいしかわかりませんでした。2014年からは教師の年齢など多少詳しいデータも追加されましたが。

それとは別のものは、これも文化庁の2012年のこれがあるだけです。 日本語教員等の養成・研修に関する調査結果について

次で述べる2020年に、やっと調査が行われました。日本語教育推進法で整備を進める際の基礎資料として必要ということになったのだと思います。

👉 日振協やJaLSAなどの業界団体は教師の待遇について調査をしたことは、1度もありません。資格業界も兼ねているので、うっかり調査をしてしまうとマズいと考えているのかもしれません。いずれにしても、業界団体がそこで働く人の待遇について何もしないというケースは他であまり見たことがありません。

常勤と非常勤の収入・勤続年数(大学講師への調査を含む)

以下、元データは文化庁の2020年の「令和2年度日本語教師の資格創設に係る状況調査」で結果の概要は
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/93457201_01.pdf
保存したファイル

要項は以下にありましたが、質問用紙へのリンクは消えていました。 https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/92591701_02.pdf

要項を保存したもの

別のところにあった質問用紙を保存したもの

告示校の常勤、非常勤の収入に関する調査は史上初だったと思います。これでやっと明らかになりましたが、アンケートの回収率は告示校の数で約580校と、同時期の告示校の数(800)、コロナ下で陳情をした学校の署名数(約650)を考えると高くはなく、自己申告なので信頼性も担保はされていないことに注意すべきだとは思います。

調査の概要

常勤と非常勤の比率

→ ST比は常勤の教師しかカウントしない。

年代別の数

→ 平均年齢が50代以上というのは、国内企業の経営者の平均年齢とほぼ同じ。一般企業は30台。

→ 教員の年代別比との比較

同じ教える仕事のデータをみてみます。小中学校の教員の年齢構成は地域差が大きく、人数が多い団塊の世代がリタイアを迎え、その補填に苦しんでいます。ここ20年ぐらいで高齢化したと言われていますが、2016年の統計をみると、若い世代も多く、バランスがとれています。教える仕事で、新卒で教職につき、生涯の平均年収が600万くらい、年功序列で、退職金は2200万(日本語教師はほぼ平均を出すと10万くらいなのでは?)定年が60~65才でリタイア後は手厚い年金がある仕事でこういう感じという例として。

小学校の教員

中学校の教員

👉 「平成 28 年度学校教員統計調査 公立学校における本務教員の年齢構成」より

上の分布のグラフで若者が多くじょじょに少なくなっていくピラミッド型がよいと言われますが、今は日本全体が高齢化なのでそれは難しい。ややずんどうくらいでもOKで、上ののような釣鐘型は高齢化の兆しということになっています(日本語教師の年齢分布がいかに異例かがわかります)。世代間のバランスがよいと、若い世代が新しい感覚、テクノロジーなど持ち込むことになり、その世代が20年後は中堅となり、業界全体をアップデートできるサイクルになるというわけです。特に教育関係など、主に若い世代が相手の仕事では、この種の世代のバランスはとても重要です。

→ 日本語教師の平均年齢は50~54歳

現役で働く教師の年代別の調査は文化庁の日本語教育実態調査で2014年(平成26年)から調査が始まりました。

2014年

2018年

比較表

10代20代30代40代50代60代70代以上回答なし
2014186(0.5)2161(6.5)4000(12.1)5085(15.4)6010(18.2)7271(22.0)2601(7.8)5635(17.1)
2018143(0.3)2078(5.0)3801(9.1)6203(14.9)7373(17.7)9119(21.9)4089(9.8)8800(21.2)

10代と20代を×25、30代を×35で計算して平均年齢を出すと、&color(Black,lightpink){平均年齢は約54才になる};。上場企業の平均は40前後で高齢化の問題として語られている。小中学校は43才。日本の企業の社長の平均年齢は59才。

国全体の年齢別の就業率は政府の2019年の統計によると、65才以下は77.7%、以上が24.9%となっているので、65才以上の率はそれほど突出したものではないが、この一部上場企業の年齢別の統計などをみると、平均年齢は35~45(情報通信は35をきっている)となっており、ホワイトカラー系の会社の平均は35~40の間。デスクワーク主体の日本語教育業界が、50~60代に偏っていて、若い世代が極端に少ないのは異様です。

さらに、もっとネガティブな要素があります。それは、日本語教師の高齢の教師は、キャリアを積んで高齢化したのではなく、ほとんどの高齢者は50才以上で「新人」として入った人達だということです。それは、日本語教育能力検定試験の結果から類推することができます。

2019年の日本語教育能力試験の受験者の世代別データです。65%が40才以上です。 https://webjapanese.com/dokuhon/files/kenteinenrei.png

👉 財団法人日本国際教育協会提供。

一般的に、小中学校の教員も企業も、20代前半でキャリアをスタートし、10年で新人を脱し、15年で「中堅」の仲間入り。余裕が生まれ、仕事に対する視野も広がって、40代ともなると裁量権も広がり、組織に風を吹き込み(現在企業のデジタル化を進めているのも最初に「デジタルネイティブ」と呼ばれた40代)、若手を育て、組織の大黒柱として組織を支える存在になっていくというサイクルになっているが、上のデータをみる限り、日本語学校は明らかに若い世代が定着する業界ではなく、ここ15年くらいそこを埋める存在だった50代でキャリアをスタートした人達は20年を待たずに再度リタイアとなる。つまり、最も大事な経験20年くらいの中堅の層が生まれない構造になっている。

👉 2015年前後に始まった「日本語教師の売り手市場」は、2019年の特定技能の誕生に伴う政府の留学と就労の仕分けへの転換とコロナであっという間に終焉を迎えた。

2020年の文化庁の調査を元にした計算

日本語教育実態調査等 | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

20代を18才、その他を40代なら45才として計算して平均を出すと49.88才でした。

→ ボランティアが確保できるのはあと10年くらい?

すでに2020年代も高齢世代(80~90年代にかけて日本語教育に関わった世代も含め、高齢になって関わることになった1970年生まれ以前の世代)は、リタイアすることが増えており、さらに、あと10年くらいで年金に余裕がある世代(19070年生まれあたりを境に、年金の額は極端に減ります。)=ボランティアができる世代が日本語教育周辺でもほぼ消えることになりそうです。半数以上をボランティアで確保できる保証はまったくないということになります。

常勤(専任)の勤続年数

極端に短い。

参考 図13-1 平均勤続年数|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0213_01.html

常勤(専任)の年収

非常勤の給与形態

非常勤の時間給

非常勤のコマ給

非常勤は週何時間働くか

非常勤の勤続年数

常勤と非常勤の最終学歴・男女の比率(大学講師への調査を含む)

最終学歴

男女別の数

https://webjapanese.com/dokuhon/files/2020choosa_danjobetsu.png

*なお質問用紙の選択肢には男女の別しかありませんでした。 https://webjapanese.com/dokuhon/files/2020choosa_danjobetsu2.png

→ 女性にとって働きやすい職場であるか

これまで日本語学校業界が女性にとって働きやすい職場にするために具体的なアクションを起こしたことはありません。(専任は妊娠すると非常勤に降格、みたいな話しは溢れてますが)2010年代後半に育児など法改正が進みましたが、これらも適正に行われているという話しはありません。調査もありません。以下、これまでにあったデータをずらずらと。

https://webjapanese.com/dokuhon/files/gakkaidanjo.png

2017年に政府のヒアリングで提出された資料にあったグラフ。数字が無く、調査のソースもない日本語教育学会の会員の男女比

文化庁の日本語教育実態調査では男女比の調査ありません。

日本語教育能力検定試験の調査では、男性は20~30%です。転職を考えた時、検定試験は420時間よりも働きながら取得しやすいので男性が多いのではないかと言われています。
http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm

文科省が新たに2017年に公表した日本語学校の基本データからみてみます。ここには校長と教務主任の名前がありますので、名前から男女を推測して、数えてみました。(一部記載がないところもあり、数え間違いもあると思います誤差は+-5前後?比率にはあまり影響ないはずです。)

  • 校長:360校中 男性は275人で76.3% 女性は85人で23.6%
  • 主任:354校中 男性は107人で30.2% 女性は247人で69.7%です。

主任の女性の比率は男女比の構成(8割)からすると、若干女性が少ないという印象です。校長になると、女性はわずか23.6%。日本語学校の場合、経営は理事長なので、校長は教務のトップということになるんですが、校長は理事長と仲のいい人が雇われ校長みたいな形で座ることもあります。つまり女性は日本語学校での出世は、主任どまり、ということになります。ただし、大きな学校では複数の主任がいて、そのトップという役職もあるとは思います。

日本語教育関連団体の役員の女性の比率

以下、名前からの類推ですが、日本語教育学会の役員は22名中女性は10名。評議員40名中女性は17名と会員の比率(女性が75%)とはかなり違います。 (調べたのは2015年の名簿です)

日本語振興協会の役員は12名中女性は1名。評議員25名中女性は3名と圧倒的に男性が多いようです。 http://www.nisshinkyo.org/about/pdf/j46.pdf
全国日本語学校連合会は、役員18名中女性は2名です。 http://www.jalsa.jp/soshiki.html

学会でも女性の比率が役員の数には反映されておらず、民間では経営者から選ばれることもあって、完全に男性優位ということがうかがい知れます。

職業別女性の比率というのがここにあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/04/blog-post_28.html
→ 美容師、図書館司書、介護職員と比率が似ているというところでしょうか。

2019年以降の様々な法改正。 育児・介護休業法について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
産前産後休暇について
http://www.roudou.net/ki_sanikukaigo.htm

もうちょっと細かい実態

1000円刻みではわからないので、実際はどうなのか記録として、少し書いてみます。

日本語学校の非常勤講師

ざっくりと書きますと、教室授業の非常勤講師の時給の相場は1コマ(45分)1500円程度で2000円を超えることはほとんどありません。ベテランでも平均するとおそらく2500円あたりが上限です。プライベートレッスンの広告をみると、相場は1時間3000円ですから教師の手取りは交通費、経費を引くとやはりこれも2000円くらい。スカイプなどのオンラインレッスンは30分500円ですから教師の時給は1000円前後です。コマ給なので1500円とすると時給で2000円ですが、実質的な拘束時間は2時間くらいというケースが多いようです。特に新人教師は授業前に引き継ぎ、打ち合わせ、授業後にレクチャーがあり、授業の準備は自宅ですから、2時間+準備時間となっています。(もちろんこれは「違法」ですが、なかなか改善されません)

オンラインレッスン

2020年の時点では、オンライン日本語レッスンはそれほど市場は広くなく、かつ、相場が30分500円、ということになってきているので、時給で換算しても、東京都の最低賃金をクリアするのは難しいということになっています。大手の法人がやるオンラインレッスンでも1時間2000円程度の授業料です。Udemyなどもありますし、個人で顧客を掴んでやっている人もいるとは思いますが、それほど多くはないでしょう。日本の労基法ではアメリカのように貧困ライン的な定義はありませんが、最低賃金で計算した月収はだいたい月14万前後とのこと。これをクリアできるフリーランスの教師は、国内外あわせても500人いるかどうか、というところではないかと思います。

800時間

日本語教師が年間教える時間数は800時間くらいです。常勤で週25コマが上限という国の規制があるのでフル(45週とします)にやって約850時間(1125コマ)、非常勤でアチコチでやっても週25コマはほとんど不可能です。プライベートレッスンやオンラインレッスンはほぼ無休でやっても週15時間、年700時間が限界だと思います。

日本語教師が年間授業ができる時間数は、現実的には、コマ数なら1000コマ、時間だと800時間くらいが目安になるでしょうか。ざっくり言うと、日本語教師が教えるスキルで年間いくら稼げるかは、800時間×時給で決まるというわけです。

👉 国内の日本語教師の専任、非常勤、ボランティアの数は文化庁が調査しています。4000人の専任の教師のうちいわゆる日本語学校が3000人、大学の別科などの教師が約1000人です。別科の日本語教師は修士マストですが5年で雇い止めなども起きています。民間の日本語学校の専任の身分も不安定で、非常勤と行ったり来たりになったりします。ひとつの学校で何十年も働き続けられるのはレアケースです。

労働条件

ざっくり書きますと、ほとんどの日本語学校では、新卒でも資格取得後の中途でも専任での採用はほぼありません。非常勤講師からスタート。時給はほとんどの場合、コマ給で、1コマ45分です。このコマ給には、授業前の準備と教案提出と引き継ぎ、授業後の指導と引き継ぎ時間は含まれます。だいたい45分の契約でも拘束は2時間というところです。もちろん45分しか払わない学校は違法ですが、まだ一部あるようです。

相場

2010年まで

相場は2010年までは1000~1500円で、5年同じ時給で非常勤をやって、運がよければ専任になれる。専任は月20万、ボーナス2回10万づつで、250~300万が10年くらい続く。サービス残業は月50時間くらいでした。

2015年以降

2015年前後に新設校が増え教師の数が足りなくなり、非常勤講師のコマ給(45分)は1700円ほどまであがりました。時給換算で2200円ほどです。新設校では揃えなければならない専任の数が必要なので、専任にも希望すれば3年くらいでなれる、ということも増えてきました。専任の給料はおそらく平均で300万くらいになり、2020年の5年間にかけては、すこしづつ上がることもあったようです。

大手学習塾や専門学校などの学校法人グループ、介護などの医療法人グループの参入が増え、小さな学校は統合されることも置きました。こういう百人規模の法人では給料も一般中小企業並みであることが多く、中には(多分2割くらい?)、20年で年収500万くらいにはなるよ、というところもあるようです。

2016年から実施しているアンケートがあります。2020年3月12日より結果は以下で公開しています。たまーに更新します。 http://bit.ly/2W2hsbH

👉 「専任を希望すれば」と書いたのは、昔から日本語教師は正規雇用にならなくてもいいという人達が多く、2010年以前は、10人のうち専任になりたいのは3人くらい、5人は長年パートのままで働く人達で、2人はどちらでもいい、というタイプの人達でした。

2020年代

日本語学校の数は減少していくことが確実で、大手の学校法人、医療法人グループなどを除き、2010年以前の状況に戻る可能性が高いと思います。

コマ給問題

時給ではなくコマ給はまだ多いようです。コマ給はこれまで労基法逃れで活用され多くの裁判が起きていますが、日本語学校にはまだ残っています。ある意味、いい目安になっています。時給であることが最初の基準といえます。コマ給の問題については労働法関連に少し書いています。

生涯賃金

20代で就職し65才まで働くとして、生涯賃金は小中学校の教員はだいたい2億7000万くらい、会社員の平均が2億ちょっとと言われています。日本語教師はまず非常勤で始まり、5~10年でうまく専任になってそのまま働き続けたとして35年。転職が数回(=退職金はリセットされるので期待できない(小中学校の教員は2200万))。300万で始まって退職時になんとか400万になったとして、、、だいたい1億2000万くらい。小中学校の教員の半分以下ということになります。もしあなたが今大学在学中なら、教職とって、地域で日本語を教えるのがいいと思います。

労働問題

何かあった際の対処のやり方を労働法関連に整理しています。

👉 詳しくは日本語教師の待遇問題に整理しています。ここは概要のみ。

日本語教師が本来受け取るべき報酬はどのくらいが適切なのか?そんなことはケースバイケースだと言っていても始まりません。ある程度日本語教師側におおまかなコンセンサスがないと交渉ができません。一般的に日本語教師が要求する額は低すぎるという傾向があります。基本的に4大卒であることが義務づけられることになり、さらにそれなりのお金を期間で新たに資格を取得し、日本語を教えるスキルをコツコツを積み上げていく、時にはいくかの言語の知識も必要になります。大卒の生涯の平均年収(年収で約676万。専門学校卒は約500万)は当然指標になるとして、ここからどう考えていくかです。

日本語学校は不安定ではありますが、学生が払う学費は年間70万前後からと特に安いわけではありません。経営力があるところなら十分に利益は確保できる。また告示校は留学ビジネスしかできないわけではありません。ネットの活用もできる。震災やコロナ禍などがあると不安定さが際立ちますが、他の業種でも同じことを乗り越えて続けています。日本語教師の給料が安くて仕方ないでしょというものではないと考えましょう。

2つのケースから考えます。いずれも準公務員、公務員なので、高くも低くもなく、国が標準的だと考える額なので、参考になると思います。

国の事業からみる日本語教師の適正な給料

フルタイムの日本語教師に対して、国が直接給与を出しているのは国際交流基金の「日本語専門家」ぐらいなので、これをまず軸に考えてみます。給料だけでなく、日本語を教える組織としての人員の配置のバランスの在り方も、国のお墨付きのモデルとして参考になるはずです。国際交流基金では、日本語教師は教材の開発もしますが、基本、日本語の授業をして経験を積んだ後、日本語教師の育成にも関わる、というのが主な業務のようです。これは、一般の日本語学校や大学の業務と同じです。

■ 日本語教師の構成(専任、非常勤)

国際交流基金は、日本語教師を、日本語上級専門家(39)、日本語専門家(66)日本語指導助手(22)、米国若手日本語教員(22)の4種類に分けています。(数字はポストの数、合計149ポスト。(データは2015年の以下のサイトから)
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/

最後の米国若手日本語教員は、特別枠と考えられるので除外してそれぞれの位置づけをするならば、「指導助手」は見習いで、「専門家」は教師「上級専門家」は教師の育成(ノンネイティブ教師も含めた)にも携わるというようなことかと思われます。 実際の配置のされ方はともかく、この教師の経験に対応した1:2:1という比率が日本語教育を行う組織で、日本語教師の構成を考えた時に必要なバランスだと想定されているということだと考えられます。

国内の状況にあてはめると、経験豊かな専任が1人、中堅の専任が2人、非常勤が1人というところでしょうか。専任3に対して非常勤1というバランスです。

■ 給料

事業仕分けは、不意打ちのような形で行われたので、そこで出た数字はそこそこにリアルで、今も、だいたいこんなところだという大きな目安になると思います。日本語教育専門家の平均年収の「だいたいこのへん」というものを出してみます。 日本語専門家は原則業務委託という形式なので正式な雇用関係はなく社会保障費などは自己負担とのこと。ただ基本的には継続的な雇用の保障はある程度はあるようです。また、募集要項によると、原則、交流基金の規定で報酬が決まり、上級専門家で経験年数15年で800万前後、専門家(7年未満)で500万前後で、住居費の8割が支給されるとのこと。住居費の負担と社会保険自己負担で相殺されるとして、「平均年収」は勤続20~25年目あたりの額と同じであることが多いので、ひとまず事業仕分けにあった国内外の職員の平均年収である904万円(ただし社会保険費無し)がひとつの目安になります。

事業仕分けでは高いという指摘でしたが、一般的な収入にプラスして専門知識が必要な領域での仕事なので、という主張が通り、最終的には、事業仕分けでも承認されたということは、日本語教師という仕事に払われるべき金額は少なくとも公務員の平均額くらいはあってもよいという考えが国際交流基金や国にあるというだけでなく社会のコンセンサスにも見合っていると判断されたと見てもよいのではないかと考えられます。

ただし日本語専門家と国際交流基金は業務委託契約なので、社会保険などは自分でやることになります。雇用関係ではないので退職金がどうなのか、それに変わるようなものがあるのか、まったく情報公開が行われていないのでわかりませんが、仮に無いとしても継続的な雇用はほぼ約束されているようで、生涯の資金計画はたてやすいかなと思います。

👉 初出時に事業仕分けのやり取りを元に「864万円(社会保険費含む)」と書きましたが、2015年3月19日に国際交流基金の関係者の方(確認済)から匿名で「「仕分けの答弁にある平均額は国内勤務の平均額ではないかと思料します。」というご指摘がありました。「思料」は「思います」というようなことでしょうか。事業仕分けの議事録をみるかぎり言葉使いは双方ともにあいまいでハッキリしませんので、事業仕分けで出た「内外職員の平均年収の904万円」をベースに新たに募集要項などから概算で出してみました。(「日本語専門家 募集要項」などで検索すると最新の給与の条件が出てきます)

この「目安」は、日本語専門家と日本語上級専門家は、修士の取得が応募条件になっていますし、海外勤務の過酷さも加味された額でもあります。国内で公的な機関で働く教員の給料としては、少々高すぎるかもしれません。しかし、たびたび書きますが、日本語を教える、さらに教師を指導することに関して日本語教師に要求される能力はアフリカでも、イギリスでも、東北の地域の日本語教室でも同じです。従って、国際交流基金の日本語専門家がやや好待遇であっても妥当性があるというのは専門性の高さというより職場環境が過酷な点が大きな理由となっていると考えられます。

小中学校の国語教員というモデル

もうひとつのモデルとして提案したいのは公立学校の国語教師です。国際交流基金の日本語専門家の仕事から環境適応の厳しさなどを割り引いた例としてわかりやすいのではと思います。公立学校の教師は、国が給料を決めます。現状、高いという批判はありますし、実際に今後地方では勝ち組に所属することになるのかもしれませんが、しかし日本語教師が要求されているスキル、条件は、国語教師と同等かそれ以上だと考えてもいいと思います。 昨今、小中学校の教師の仕事の環境は厳しすぎると批判があり、働く時間は減る傾向にあるようです。日本語学校の専任も校務が増えており、仕事内容はほぼ同じと考えてもよさそうです。実は教員養成の取得にかかる単位数も日本語教養成講座の420単位時間とそれほど変わりません。

資料4-2 (関連資料)教員養成の段階で習得すべき内容について(補足資料)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo11/001/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/10/31/1312531_02.pdf

公立の中学校の国語教師の年収は検索すればでてきます。平均で約600~700万で、リタイア直前はだいたい800~900万。教頭、校長になると1000万超えになります。公立の小中学校の教諭の給料は変動します。今後下がる可能性もありますが日本語教師の適正な報酬としての目安としては、その変動も含めちょうどいいのではと思っています。

教員は雇用契約なので社会保険は充実しています。退職金の平均も2200万円となっています。

ではいくらが適性なのか?

日本語教師が自らの権利を社会に主張する際に、戦略としても、適正な給料として主張する際はしっかりと金額を定めたほうがよいと思います。教員のような安定性は望むべくもない状況を考えると、教員よりは高い水準でなければならない。600万くらいを下限に、700万くらいを基準に据えて議論を進めていくのが普通ではないかと考えます。非常勤はかつては「修行中」の教師のものだとして不当に安く設定されていましたが、実態とし5~7割が非常勤という状況において、非常勤講師は学校の質を左右する大きな存在となっており、社会保険がないこと退職金がないことを考慮すると、どうとうに働いて専任よりも高い報酬は約束されなければなりません。返金年収が600万の仕事と同等以上の時給を考えると、予備校などと同等だとしても、新人でも3000円から、経験に応じて数万円でもおかしくないはずです。

市場原理で給料はあがるか?

今後、仮に日本語教師の組織ができて待遇改善を求めていくなら、理由と共に具体的な金額などを定める必要が出てくると思います。大企業のような待遇は望めないとしても、公務員の待遇はひとつの強い根拠となると思われます。仮に今の日本語学校業界でこのくらいの年収を支払う力がないのなら、業界を出て新たなパトロンを探すことも今の業界にとって良い圧力になると思いますし、あるいは、業界の新規参入を促し、大手の会社の投資や参入がしやすいようなレギュレーションを提案し、構造自体を壊していくような提案をすることも選択肢のひとつです。現状でいうと、例えば告示の1教室20人の制限は大手の教育関係の業界にとって参入しにくい壁となっていると思われます(塾は中大教室を活用しないと利益がでにくい)し、オンライン授業が何割かでも告示の規定の授業時間にあてることができれば、ICTの活用が得意なところの参入もあるかもしれません。告示の規制は既存の学校を守るために存在し参入障壁となっているいう側面もあるということです。

また、他の教育業界では当然のようにある「教える力による健全な競争」が生まれるような構造になれば、教師の報酬は上がります。学校の情報のネットによる可視化も健全な競争の促進にプラスの効果があります。この種の情報公開を促進することも長い目でみれば、教師への利益は大きいということです。ノンネイティブの教師による媒介語を使った授業なども増えていくことになると思われます。これは日本語教師も対応を迫られる部分です。

教師と学習者にとってよい環境で日本語を教えて報酬が得られれば器自体はなんでもいいわけなので。時には器を変えたり壊したりということは必要です。

ただ、下り坂の国で、少数の成功者の数が増えることはほぼ無いでしょうから、多くの日本語教師が現実に幸せになる道は、間違いなく国内の日本語教師という仕事を少しでも小中学校の教師に近づけることだと思いますが、なぜかそう考える人は増えません。

成功したいですか?

教授や日本語上級専門家はだいたい50代からですが、教える仕事からは遠ざかる。外国人の人材派遣系など日本語を教える仕事から離れれば30代でも1千万円プレーヤーはいます。一方、小学校の国語の教師は、新卒採用でリタイアまで現役で続けられ、最後は60才前後に1千万近くになり退職金は2200万円。

小中学校の教員までは無理でも、少数の成功者以外は生涯300万そこそこで、数年でバタバタ辞めていく世界より、子どもが進学したり介護がはじまる頃には年収が500万にはなるよ、という環境で安心してあれこれ日本語の教え方を考えたりする世界、つまり日本語教師の仕事を国語教師の待遇に近づけていくことを、日本語教師みんなで考えていくほうがいいと思うんですけどね。

👉 日本の研究レベルは下降傾向ですし、中長期的には留学は先細りの可能性は高く、国内の人手不足もあと20年くらいでピークアウトと言われており、移民の数は結局それほど増えないと言われてますから、大学の日本語教育の教授ポストがそれほど増えるとは思えません。また、独立行政法人が日本語教育の専門家を内製するという時代が今後も長く続くとは思えません。行革風で一気に無くなるかもしれません。業務委託契約ですし。

「フリーランス」に希望はあるか?

ネットでは、フリーランスに希望があるような話が多いので、中立的に現実的なラインであえて書いてみます。

そもそも民間の日本語学校では専任(正規雇用)であっても、身分が安定しているとは言い難く、学校の経営も不安定ですし、「非常勤に戻って」と頼まれてNOと言えない、みたいなこともよく聞きます。つまり、民間の日本語学校の教師は、すべてフリーランスみたいなものかもしれません。

日本語教育のニーズは高まっている!と言われますが、大事なことは、そのニーズが報酬にきちんと結びつくかです。ここを冷静に、きちんと見ることが必要です。

フリーランスの生涯設計

一般的に、会社をやめて独立する際の目安の収入は「同世代の平均の倍」と言われています。社会保険、厚生年金、労災などが無くなります。30代なら平均500万として一千万くらい。個人だと出るお金も多いし、安定して仕事を得るのも難しい。病気などいろんなリスクを織り込んでの「倍」です。また、「あらゆるフリーランスは年を取ると不利」という現実があります。若く安い単価の人に押し出されてプツリと仕事が来なくなるというタイミングがだいたい40歳くらいと言われています。40までに、それに備えておく必要もあるというわけです。

👉 40歳は、結婚していれば、子どもの学費が増え、介護などでどちらか一方が仕事ができなくなるようなタイミングです。日本の介護制度は基本、完全に寝込むまでは家庭でやるという方針です。

副収入で?

日本語教師をしながら、日本語教育周辺の仕事で補うというのも、希望は薄いです。ライターやアフィリエイト、セミナー、やさしい日本語関連、はいずれも参入障壁が低く、競争は激しくなるばかりで、すでに飽和状態というところもあります。高額セミナーに誘導するような激辛ビジネスはネットで炎上したら終わりです。時間あたりの報酬の天井も低く、養成講座の講師はおそらく修士マストになる可能性大ですが、それでもせいぜい時給3000円くらいです。

単価が安い仕事をアチコチでやってずるずる続けるのはリスキーです。今、大学生なら教職をとって国語教師などになり、地域で日本語を教えることに関わるのが得策だと思います。今、日本語教師をしていて、将来が見えない人は、他の仕事(公務員とか…)への方向転換を考える選択も視野に入れたほうがいいと思います。

オンラインレッスン

オンラインレッスンが普及しています。1時間の手取りが1000円くらいだと週20コマ(ヘトヘトだと思います)やっても2万円。月8万円で、これが一生続くわけですから、仕事としてはかなり厳しいです。おそらく最大限に成功して、1時間手取り2000円で安定して週10コマ入れられても、同じ2万円、月8万円です。日本語教師にとってかなり天井が低い場所で、今のところ、日本語教師の価値のディスカウントにしか貢献していないビジネスモデルと言えます。

今は、コロナで環境が整備されたということもあり、増えていますが、日本語学習に関して言うと、学習者の大多数は(基金の調査では機関学習者の9割近くが)東アジアと東南アジアです。ここが市場になるには、インフラが整備されることと、為替格差が2倍以下くらいになることが条件ではないかと思います。10年でいくつの国がそうなるか…という見通しを作る必要があります。

また、アジアの日本語学習者にとって日本語学習は「日本に行って、学士の資格をとったり、日系企業に就職したり、アルバイトで稼いだり」ということとセットになっていることがほとんどです。純粋に日本語を学習し、上達したいというニーズは、かなり少ない。つまりこれのセットが無くなると、日本語学習へのモチベーションも無くなる可能性が高いということです。これもリスク要因です。単純にアジアの発展と共に日本語学習者も顧客も増えるとは言い難いところがあります。

方向転換できるうちにしたほうがいいかも

そもそもメイクアップアーティストやイラストレーターなどと違って、報酬の天井がかなり低い仕事であるという現実があります。語学教師に1時間5000円を払う人は超レアであって、これが増える可能性はないと思います。往々にして語学の上級者は自分の能力のおかげで上達したと考えるものです。

もちろん、ユーチューバー、カリスマ日本語教師、企業の日本語プログラムの開発顧問など、超レアな成功例は出てくると思います。しかし成功例は声高に語られますが、その周辺には多くの、黙って消えた死屍累々がいます。

今のところ、最も安定してそこそこの給料を払ってくれる可能性があるのは、国内の日本語学校のみです。ここの職場環境が上のように健全な競争や労基法の遵守で改善し、良質校や大手の専門学校などで、ポジションを得ることを目指すしかないような気がします。

V字回復は難しい

ただ、コロナで正規雇用の席を失った方も多いようです。

近い将来、コロナで減った分が、そのまま戻ってくると考えるのは難しいと思います。コロナ前の2010年代後半に、国は留学生の数を絞り、特定技能に仕分ける、就労と留学を分けるという方針を示しており、留学生が増える可能性は低いのではと思います。中長期的にみて、国内の日本語学習のニーズが高くなるのは間違いないとは思いますが、今後、留学は伸びる要素は、あまり無いように思います。

日本語学校はいつまでも日本語教師の働き場所ではないかも、という視点もあったほうがいいように思います。

👉 冒頭でも書きましたが、国内の就労系の在留資格で業務独占の範囲が広がらないと、日本語教師のニーズは萎む可能性が高いということです。

国内

国内の日本語学校でも告示校と呼ばれる学校は800校前後で、留学という在留資格の人を受けることができるよ、という意味で、ほとんどの場合、学生は留学生でしたが、最近は、就労系の人を受け入れるところも増えています。つまり技能実習生や特定技能、その他介護や医療系の在留資格で来日して、さらなる勉強のための受け皿となっているというところです。就労系の受け入れ機関が運営する学校も2015年あたりから増えてきました。告示校ではない日本語学校、つまり留学生は受けることはできないけど、就労系の学習者専門の学校もあります。

データがなくハッキリしませんが、経営主体が医療法人であったり、技能実習生の受け入れ機関であったりします。告示校のように正規雇用でなければならないという国の規制もないので、雇用契約はいろいろです。非常勤が多く、賃金は告示校とあまり変わらないという印象です。eLearningなどにも積極的ですが、教師が有資格であるとか、ST比の規制があって、何人教師を雇わないといけない、というような国の規制はないので、不要になったらカットされる、もしくは他の仕事に移動になるということもあるようです。

海外

東南アジアを中心に、日本の技能実習生や特定技能の受け入れ機関や、外国人労働者が欲しい中小企業などがスポンサーとなっている日本語学校で働く日本語教師も増えています。

現地採用なので、雇用契約はいろいろ、最初から正規雇用的なケースが多いですが、例えばベトナムでは月収5~10万円くらいから、ということが多いようです。ミャンマーでは3万円くらいということもあります。住居は用意され、健康保険にも加入できるようですが、きちんとした調査はなく、ハッキリしません。とりあえず「現地では普通の生活は営める」という程度の収入しか得られないことが多いと考えたほうがよさそうです。

日本の労基法を超えるレベルの賃金を得るのは難しい印象です。就労系の受け入れ機関はよく潰れますし、外国人労働者が必要な中小企業の経営環境を考えると、この種の日本語学校の経営が不安定であろうことも想像できます。

就労系の日本語学校では、スポンサー企業の社訓を覚えさせたりというような日本語の授業があるところも多いようです。学校の宣伝で、同じ制服を着て、おじぎをしている写真や動画などがネットに出ています、これは「日本で即戦力の人を育成してますよ」という学校側のスポンサーに対する目配せのようなもので、こういう環境で日本語の教師として働くのは、語学教師というだけではない仕事をする覚悟が必要なようです。

👉 ミャンマーやベトナムでも英語教師は月20万くらいで仕事があります。最低でも15万くらいです。日本語教師の給料が低いのは、現地の若者などの英語を勉強したという強いモチベーションやニーズに比べると、日本で稼ぐために必要だからという消極的なニーズであることや、日本語教師は、その程度の条件でも集まると、かなり足下を見られているということもありそうです。

その他、省庁関係で働く日本語教師がいますが、すべてを合わせても1000人くらいかなと思われます。以下、簡単に説明します。

国際交流基金の日本語専門家

日本語上級専門家・日本語専門家・日本語指導助手の3ステップ。ただし基金の職員ではなく業務委託契約となっている。事業仕分けで明らかになった範囲では、基金は職員でと考えていたが、国には認められなかったと回答。形式的には、毎回募集して採用ということになっているが、内部昇進は多く、継続的な雇用、職員並みの報酬(基金職員の平均年収は約900万円)と昇進はよほどのことがないかぎり保証されている模様。

日本語専門家の海外派遣
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/

https://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/
(「日本語専門家 公募」などで検索すると直近の募集要項が出ます)

→ 2017年の例 日本語専門家日本語上級専門家

2011年の事業経費をみると

  • 拠点での教室運営         3億0987万5921円 (派遣20名)
  • 米国拠点での教室運営&派遣      6230万8009円 (派遣15名)
  • 日本語派遣 日本語ネイティブ派遣  8123万4508円 (52名)
  • 日本語上級専門家派遣        4億9788万8177円 (61名)
  • 日本語専門家派遣         2億2979万2691円  (64名)
  • 日本語指導助手派遣          5958万2173円 (24名)
  • シニア専門家派遣           607万1015円(1名)

日本語専門家一人当たり一千万超、だいたい年間10億ぐらいの予算が組まれているということのようです。

👉 70年代に始まった制度ですが、大学に日本語教育学科が増えたこともあり、省庁で日本語教育の専門家を育成する必要性は無くなったと言えます。海外の日本語教育のコーディネーター的な仕事は存続するとしても、リアル授業がいつまで必要なのかは議論が分かれるようです。リセッションで行革風が吹けばどうなるかはわかりません。

AJALT

公益社団法人 日本語国際普及協会(AJALT) 70年スタート。2017年の時点で普通会員192名 賛助個人会員33名とのこと。 Japanese for busy people、Japanese for young peopleなどを制作。技能実習生の日本語研修も一部担当。

文化庁の地域日本語教育コーディネーター

地域日本語教育コーディネーター研修 | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/coordinator_kenshu/

自治体の日本語関係組織からの推薦などで(自費で)研修を受けた者がなるということになっているが、報酬や生活実態などは公開されていない。全体の予算は3~5億なので、コーディネーターへの報酬は謝礼程度しかない模様。

http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/

文科省 JSL指導員

文科省の教員研修センターでは、93年から続いている教員相手に日本語教育の指導をするJSLプログラムというものがあるようです。そこには「日本語指導員」という肩書きがあるとのこと。児童の日本語教育の計画を作ったりしています。ここも謎の機関で、どういう人が指導員になるのか、どういうことをしているのか、まったくわかりません。日本語教育学会の役員が関係者に名前を連ねています。

経産省

AOTSは日本語教育の世界でかなりのシェアを持つ「みんなの日本語」の元になった「日本語の基礎」という教科書を作った組織です。(元々、AOTSで、一時、HIDAになり、またAOTSになりました。検索する際などは注意が必要です)。 そういう意味では影響力は大きいのですが、経産省が予算を割いて日本語教育に関与しているということでもなく、現在は、このAOTSという組織を軸にEPA関連(看護、介護はこの枠組みから技能実習生枠になりそう)をメインに展開しているようです。

日本語教育センターで、(おそらく)企業から委託を受けた学生や研修生の授業をやったり、教師を派遣したりしているようです。2008年からは来日したEPA関連の人の授業もやっているとのこと。登録している日本語教師は2016年の時点で160人とありますが、募集は時々見ます。420時間、検定試験合格などの条件と多少の経験が必要っぽいです。時給3600円は破格ですが、「登録教師」なので、基本的には非常勤なのではと思われます。どの程度定期的に、あるいはまとまった仕事があるのかは、わかりません。

EPA関連 (国際交流基金+経産省)

EPAという枠組みがあります。2008年スタートで看護と介護の人材を日本に派遣する仕組みです。 この制度の運用を仕切っているのは厚労省系の国際厚生事業団というところですが、日本語教育に関してはなぜか国内は経産省、海外は外務省(国際交流基金)でやることになっています。

フィリピン、インドネシア、ベトナムとの三カ国との協定で決まったもので、しかも、それぞれの国で結んだ協定が違うので、ややこしいです。ざっくり言うと、送り出し国である程度のレベルまであげる研修があり能試で足切りラインに合格したら、日本に送る。日本でも日本語の研修がある。送り出し国と日本で日本語を教える仕事がある、というわけです。

日本国内では、上のAOTSがいろんなところに教師を派遣しています。海外では、国際交流基金が日本語専門家と同じように募集しています。現地で教えることになるようです。

ただ、EPAの枠組みで日本で看護師となるのは、スタートから7年で2000人程度、じわじわ増えていますが、2015年で500人。制度がきっちりしているし、日本の受け入れ施設が費用を負担するので、この枠組みはあまり大きくなりそうもありません。1000人が限界という声もありますから、規模が大きくなる可能性は低いです。しかも、介護に関しては、2017年からは、技能実習生や日本語学校を経由して福祉系専門学校という、よりハードルが低い、2つのルートができたので、将来どうなるかわかりません。3カ国との協定なので、日本の都合では止められないと思いますが。。。

募集、条件など

経産省の募集は上の項目にあるAOTSで募集。国際交流基金は、この送り出し国の日本語教師を「日本語講師」という名前で時々募集しています。条件は、いわゆる有資格者で、新規の派遣で月14万、二回目以降は17万円、旅費は出ますが住居手当はなしで寮を提供と日本語専門家とは待遇がまったく違います。JICAと同じくらいというところでしょうか。7ヶ月単位での派遣で、各国30人くらい募集がある、という形です。

待遇もイマイチで、期間限定、制度そのものがいつまで続くかわからないわけですが、継続的に派遣されるケースもあるようですし、元々看護や介護が得意分野の方などは、看護はともかく介護の日本語のエキスパートとして、送り出し国の事情を知っている日本語教師として、例えば福祉系の専門学校や大学など、国内で就職に繋がる可能性はあると思います。

「日本語講師 国際交流基金」 で検索するといろいろと出てきます。

国立国語研究所

元々、90年代から日本語教師に対する研修やセミナーをやっていましたが、近年、日本語教育関係の研究も増えています。国内の研究者が講師で、かなりレベルが高いです。ただ調査研究が中心なので、日本語教師を登録して派遣したりということは、今のところはないようです。
http://www.ninjal.ac.jp/

研究者プロフィール | 国立国語研究所
https://www.ninjal.ac.jp/organization/researcher/#RESEARCHER

*日本語教師の仕事 [#h878d54a]

授業以外の仕事

コマ給といっても、授業だけやって帰ることはできません。1コマで2時間程度は拘束されることがあります。非常勤だから割り振られた授業をやる。授業の前には教案を作って出し、上司の教師のOKをもらう、引き継ぎなどの打ち合わせや会議に出席する。関連の書類を作る、というような仕事があります。この拘束時間の分の時給は「支払われない」ことが多く、これは違法です。仮に1コマ1500円とすると、1時間で2000円。2時間拘束で2000円だった場合、東京都の最低賃金を割り込みます。

また、非常勤でも、担当するコマ数が増えてくると、いろいろと負担も増えてくるようです。時給が上がったら、その分、これとこれをやってね、というところもあれば、時給関係無く、ジワリと増えるということもあるとのこと。専任での雇用をちらつかせながらアレコレと仕事を頼むという日本語学校は90年代から無くなりません。そういうところは専任になったとしてもまた同じようなことが当然、起きると思います。

休めるのか?

休めるんですが、学校によってかなり違うようです。急病以外は、*日前までに、というようなルールがある(そして罰則がある)ケースもあれば、暗黙のうちに「休むなら自分で同僚や上司に連絡して代講をやれる人の手配に協力しろ」という空気がある、ということもあるそうです。いろいろな話を総合すると、専任はもちろん、非常勤も、「急に休むなら代講も探してからにしてくれ」というところも少なくないようです。もちろん、急な欠勤の際も授業の管理をするのは学校の責任で休む教師は、関与する必要はないんですが。

もちろん、当日や前日に授業ができないと連絡すれば学校に迷惑がかかるのは事実ですが、休む理由の軽重はなかなか一致点をみつけるのは難しいものです。例えば、育児(子供の急病)には理解があっても、介護にはない、個人的な理由で急に休まなければということはあるものです。風邪などのフィジカルな病気の場合ははっきりしていますが、精神的なコンディションの場合は、伝えにくいということもありますし、診断書も簡単には出ません(持病など、学校には病気を告げたくないということもあるものです)、病欠であっても、細かいことは言う必要はないはずです。しかし、どんな理由だろうと急な欠勤はマイナス査定として考えるという体質は日本語学校にはあるように思います。

正直、日本語学校には休みたい時に休める雰囲気はないと思います。時々休みがち、というような人は非常勤スタートでは、なかなか信用を得ることはできないかもしれません。理不尽な話ですが、現実はそうなっているようです。

基本、零細企業の社員なので、仕事はある分だけ、全員でシェアしないと、という発想のところが多いようです。ほぼどの学校でも経営者や「現場の実質的な経営者」ひとりの判断によって人事が決まるので、サービス残業などの貢献度が重視されることになります。際限なく仕事があります。

2010年以降流行っている「これからは終身雇用の時代は終わる。だれもが個人事業主だ。一人一人が経営者感覚を持つことが大事」というフレーズは、ベンチャーや日本語教育業界では「会社の維持に必要な仕事なんだからやれ」という理由として使われることがあるようです。

専任の教師がやっているという仕事で、これまでに聞いたことがあるのは…

翻訳通訳はもちろん、**語ができるとなると、電話応対、学生募集の現地の人との交渉、■■国に住んでたことがあるなら話し相手に政治家の秘書とか官僚OBとの会食に同席、寮の掃除、学生のバイト先の訪問、生活指導的な事(アパートの近所とかカラオケ店に行って謝ってくるとか。警察に身元を引き受けに行ったりとか)、進学先の大学や専門学校との交渉、学生の面接練習、面接付き添い、連絡が途絶えた非常勤にコンタクト、「パソコン詳しい**さん」になってしまうと、ルーターの設定からサイトのメンテナンス、「**さん、ごめんトイレットペーパー買ってきて!」などなど、「これはしなくていい」という仕事は経理と重要書類を扱うことくらいでしょうか。(しかし昔経理していたなどとウッカリ履歴書に書くと「ちょっとごめん…」ということになるかも)

2010年代後半、生活指導は法務省の告示でも必要性が強調されるようになりましたが、職員がやるのか教師がやるのかは明確でなく、当然、経営が厳しいところ(厳しくないところは極少数ですが)は教師がやることになります。

教務だけ、教える仕事だけで理論的な支柱、みたいな教員は、学校にとっては、それほど大事ではなく(替えがききますから。プライドが高くて「その仕事はしません」みたいな空気出す人は学校側からは敬遠されます)、いろいろやってくれて(学生も非常勤に対しても)面倒見がいいみたいな人が主任になり、偉くなっていきます。「教務事務」などという役職も90年代からありました。要するに事務もやってね、ということなんですが。

しかし、もろもろの仕事に手当てがつくかどうかは学校次第です。通常業務のうちだと言われてしまえばそれまでなので。「ウチは教務と事務の線引きはちゃんとしてます」という学校でも、経営が厳しくなってくるとどんどん人が減っていき、そうは言ってられなくなります。しかも、入管がちょっと審査を厳しくしただけで学生数が半減、経営はぐらつくのです。

👉 この「手当て」もくせ者です。労働時間をきちんと記録し時給に応じた報酬を支払う。手当てはそれに「上乗せされるもの」ですが、月1万円の手当で延々と仕事をさせられるというような高度成長期のような習慣がある日本語学校も存在するようです。

専任の比率が増えることになったが…

2017年の告示の改正で、専任の教師の比率はST比で出すことになり、その数字は40に到達せよ、ということになりました。定員が400人であれば、専任の教師は10人、これまでの「教員の3割以上が専任教師でなければならない」という旧ルールの時代からは増えることになります。

これにより、事務員を減らし、その分を専任教師にやらせるところが増えたという話をよく聞きます。この改正は、日本語学校を留学ルートの軸として温存するという2018年までの国の方針の下、日本語学校の職場環境を改善する目的で作られましたが、その後、2019年に特定技能を軸に留学ルートは実質的に見捨てられることになり、留学目的だけにしろ、ということになりました。これにより、留学が軸の日本語学校の先行きは見えなくなり、専任を増やす、その他の新ルールの負担がけが残り、それらが重くのしかかることになりました。結果、事務員を減らし、事務仕事を専任にやらせるという方向になっている模様です。

日本語学校にはベテランが非常勤で居続けるということがあり、この中には経営者との関係などが濃く、安い時給とサービス残業で事務仕事やイベントなどを引き受けるというケースもあるようです。よって専任と非常勤の仕事の違いは学校によるということになり、かなり線引きは曖昧ですが、授業は週に25コマまでという規定があり、2010年代後半に監視は厳しくなりました。これは、文科省の監督となり小中学校の教員の担当コマ数の規制が日本語学校にも下りてきたということかもしれません。小中学校の教員は週20コマでも多いと問題になっており、このコマ数はより厳しくなることはあっても緩和されることはないと思われます。

これは、時代によって移り変わりがあります。簡単な図を作ってみました。

2020年の秋に「事務ができる日本語教師は重宝される」みたいなセミナーの広告をみかけました。結局、買い手市場下では、雇ってもらえるなら何でもしますという教師は増えるでしょうから、このへんに歯止めをかけるのは難しいと思われます。2010年代後半に数が増えた日本語教師は、これから数年、買い手市場の中で、自らより厳しい環境を作り、ズルズルと悲惨なことになるかもしれません。

可能性があるとしたら、日本語教師の労働環境に意見が言えるような教師の組織が、職場である日本語学校をウォッチし、ガイドラインを作ることを求めていくことですが、しかし、そういう組織を作る話はまったくないので、今後も雇用者側の都合で右往左往するしかないということになりそうです。残念ですが。

教師の需給のバランスの調整があれば、極端な買い手市場となることはないのですが、教師養成も日本語学校関係の会社が握っているので、調整は業界の都合で決まるという構造があります。この需給の調整に国が関与することになれば、多少は変わるかもしれません。

毎年大学で4000人前後(微減中)、検定試験で2000人前後、民間の養成講座5000人強の有資格者が誕生しています。

一年の非常勤講師の募集の数がどのくらいあるか? いろんな求人の状況からざっくり試算してみます。

「若干名」は基本1、2名でよい人がいれば3名でもいいかなというケースが多いので、2名とします。登録だけというケースもあるので除くと、募集が多い月(入学時期が4月10月なので、年に2回程度)で100~200名、少ない時期は50名いくかどうかです。年間で約800名近くの募集があり、おそらく採用されるのは500名程度だと思われます。

1)自然減の補填分

自然減もありますから、新規の増加分だけでなく、補填しなければなりません。「日本語教師の数」で述べましたが、国内の総数でいうと、ここ数年の日本語教師の数は、専任で約4000人、非常勤が約一万人で推移しています。比較対象としては一般企業と公立学校の例が考えられると思いますが、一般企業の採用比率は景気や業績によっても変わるので、ひとまず公立学校の教職員で考えてみます。分母が大きいですし「自然減の補填」の比率を出すという意味では、それほど間違った数字はでないはずです。

後にも出てきますが、全国の公立の小中学校の教員数は約66万人です。文科省の2012年の教員採用試験のデータがあります。 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1329248.htm
小中合わせて採用数が21754人(受験者は122023人、競争率は約5.6倍)、補填するべき比率は3.2%となります。日本語教師にあてはめると、専任だけで計算すると毎年128人、専任と非常勤を合わせた数で出すと、448人です。後者は、ちょうど、求人数よりちょっと少ない数です。

2) 離職率の高さを加味する

離職率は、大卒の3年後離職率の平均が32.3%。パートの離職率は約15%。職場環境に問題があるとされている業種で3年離職率が40%超えです。

業界はデータをとっていませんが。日本語教師の場合はおそらくかなり高いと思われます。最初は、非常勤は年収100万ちょっとで数年過ごさなければならず、仮に専任の道がみえても、この最初の数年であきらめる人が多い。また、新規の教師の大部分が50才以上ですから、当然キャリアも短いことになります。公立学校の教師の自然減の3.2%は終身雇用のものであり、公務員の離職率は1%台と極端に低い。ので、この「自然減の補填に必要な数」の数値が違う可能性があります。

計算しなおしてみます。

3年離職率が仮に40%なら、非常勤1万人のうち4000人がやめてしまう計算になります。1年で1333人。この補填が必要になります。

日本語教師の自然減の補填は、毎年1500人程度が必要ではないか?としてみます。

👉 日本語学校業界は離職率に関してはこれまで言及したことはありません。大卒の有資格者が民間の日本語学校で働く選択をしないことと、この離職率の高さは、民間の日本語学校が職場としていかに過酷か、ということを示しています。ひとたび日本語教師養成講座に人が来なくなれば完全にバランスが崩れてしまう脆弱さがあります。ここが最大の問題である可能性があります。

3) 留学生が増加したら

学生の増加が仮に1万人だったとして、単純に法務省のルール(学生40人に1人の専任)だと専任は250人、平均的な非常勤の数が588人、合計838人が必要ということになりますが、定員を超えての募集はできませんし、専任のST比ルールは定員が基準ですから、専任はほぼ増やさなくても大丈夫なはずです。また、非常勤は新規で雇うよりも、これまでの契約者の担当コマ数を増やすことが多いので、新規で必要になるのは実はそれほど多くない。588人のうち多く見積もっても半分程度ではないかと思います。つまり1万人の増加で新規に必要になる日本語教師は多くても200~300名というところではないでしょうか。

👉 これまで20年間、日本語学校の留学生数は増えても年に5000人程度。しかし2013年以降は、年間1万人前後増えることも起きている。これから減少するとして、不要になる教師の数もだいたい上のような数になると思います。1万人減れば2~300人は不要になるわけです。

👉 2017年の文科省提出データによると非常勤の数が5491 学生数は95326人なので、学生17人に1人非常勤が必要ということになる。500人なら約30人。これも覚えて置いたほうがいい数字です。

以上のことから、需給のバランスを考える際の数字は、基本的に毎年、自然減で1500人近く必要で、留学生が1万人増加すると300名、合計1800人が新規に必要になる。ただし、実際の求人は500名前後で、おそらく非常勤のコマ数を増やすことで対応している。これに応募者数が3倍いればいいとすると、1500人。これに対して、前述のように、有資格者の日本語教師は、毎年8500人超(最近は増加中)生まれています。

数のうえでは供給過剰と言ってもよい状況です。これは離職率が高いということが大きな原因です。日本語学校の働く環境さえ改善すれば、離職率も下がり、大学で資格を得た新卒の若者が民間の日本語学校を就職先として選ぶようになるはずですから、民間の日本語教師養成講座修了生の分はそのままそっくり消えても大丈夫なくらいのバランスではないかと思います。

→ ご意見ありがとうございます。以下は記事を書いた者の見解です。

これは「日本語教育の現場は高齢化しているか?」がテーマなのでボランティアの数は入れるべきだと考えています。なぜなら、国内で日本語の学習が必要な人は、、だいたい100万人くらいではないかという見立てです)のうち有資格者または同等の教師が教える告示校と大学などがカバーできているのはおそらく2~3割くらいで、残りはボランティアの人達が支えているという現実(それがいいのかは別の話です)があります。まずはその「現場」の実態の把握が大事です。学習者にとってはプロもボランティアも同じ教師です。学習者の立場から考えても日本国内の日本語教育の実態を示す数字を出すために入れるべきということになります。
当然、ボランティア教師の数を外して計算するべきテーマもあります。例えば、日本語教師のキャリア構築などはその典型だと思います。キャリアとして考えるならば、きちんと生活ができるラインの報酬を得ている(非正規=非常勤ならば希望すれば正規雇用になれる可能性がある)教師を対象にして数字を出さないとリアリティを獲得することは出来ません。



👉 このページに関連する私達の出版物のご紹介です。


新人教師が、安心してまかせられる教師になり、その先の道をみつけるまでの手堅いガイド役。

作田 奈苗 東京外国語大学 非常勤講師
加藤みゆき 東京外国語大学世界言語社会教育センター特任助教 著
出版社による紹介ページへ




研究

日本語教師辞めました。韓国で日本語教師として語学院で働いて感じたことを正直にお話します。
https://chame-blog.com/quit_japaneseteacher-inkorea/

上は2015年の時点の試算でした。以下は2021年の今後のことについての試算です。

  1. 告示校のリスト(法務省):告示校のリスト
  2. 日本語教育機関の開設等に係る相談について:「日本語教育機関の告示基準」と「日本語教育機関の告示基準解釈指針」が置いてあるページ
  3. 日本語教員養成研修の届出について(文化庁):日本語教師養成講座に関することの規制など。
  4. 日本語教育実態調査等 |(文化庁):国内の日本語学校と日本語教師養成講座
  5. 日本語教育機関調査(国際交流基金):3年ごとの海外の日本語教育機関の調査
  6. 留学生に関する調査 JASSO(文科省):留学生の国籍別の推移など
  7. 日本語能力試験:過去の受験者などのデータ
  8. 日本語教育能力検定試験(JEES ):教師の年代別比率がわかる資料。

日本語能力試験に関するデータは、以下のサイトに古くからのデータがあります。 JLPT主な国・地域別受験者数(1984~2016)
http://www5a.biglobe.ne.jp/
t-koron/jlpt-data1.html
留学生試験のデータも。
http://www5a.biglobe.ne.jp/
t-koron/eju-data.html

日本語学校関係のデータについては以下にあります。
http://www5a.biglobe.ne.jp/
t-koron/ryu.html

言語政策研究と日本語教育
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihongokyoiku/150/0/150_56/_article/-char/ja/
2017年度の日本語教育施策
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006706276
日本語教育と日本の移民政策
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006644971

国際交流基金の日本語教育政策転換について「日本語教育スタンダード」の構築をめぐって
http://ow.ly/nHG0302BwYw
国際交流基金のレトリックが日本語教育から見えなくするもの
http://ow.ly/tt0p302Bx3g
日本語教育の危機とその構造 : 「1990年体制」の枠組みの中で
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/30117
「日本語教師は食べていけない」言説 : その起こりと定着
https://ci.nii.ac.jp/naid/120005648378
「日本語教師は食べていけない」言説 : 『月刊日本語』の分析から
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006310042


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  • 最終更新: 2023/02/02 21:46
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