日本語教師の待遇問題

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日本語教師の待遇問題

日本語教師の基本的なデータや資料は日本語教師をみてください。労働法関連も重要です。ここは、これらをふまえて、日本語教師の待遇問題をどう考えるかを整理していきます。

薄利の他の仕事と組み合わせてとか、カリスマ教師になれば、とか太客を掴むことができれば、みたいなネット好みのサクセスストーリーばかり語られますが、語学教師は地味なジャンルです。法律にのっとって普通にやればかなり改善するはずです。そんなに難しい話ではなくシンプルです。ポイントは3つあると思います。やや繰り返しになりますが、整理します。

大前提として働く場所の確保があります。これは、現在、告示校では有資格者がマストになっており、かつ告示で社会保険の加入が求められるという規制があるので、なんとか数千人は仕事として成立しているわけです。2010年代に、新たに介護と看護の在留資格では有資格者による国内の授業が義務づけられました。ただし240時間なので、留学ほどではありません。

この有資格者による業務独占のエリアが法律によって広がることが大前提です。「有資格者に限る」という制約が法1)によって補償されない限り、ダメです。その他の就労系の場所で仕事が増えているといっても、規制がなければ、大きく広がる可能性はありません。

「日本語教育の質保証のためにも日本語の授業は有資格者によって行われるべき」という主張をしていくしかありません。この項目がない時にちゃんと怒ることが重要です。

それに、恐らく、今後、留学は萎み、その文が就労系に流れ込むことが予想されます。つまり、国内の就労系の在留資格で日本語教師の業務独占の範囲が広がらないと、相対的にプロの日本語教師のニーズは萎む可能性が高いということです。

👉 海外ではすべての移民に500時間程度の公的なサポートがあり、そこでプロの教師が大勢働いています。資料はこちら

資格取得が難しくなり希少価値が出るとか、教師のスキルによって資格が細分化されれば待遇は改善する可能性はありますが、おそらく、そういうことは行われないと思います。一定量の教師の数の確保は重要視されており、細分化しても報酬が伴わなければ、教師不足は必須だからです。現在、ボランティアの多数は、高齢化しています。この人達は、配偶者の収入があったり、年金があったりという人達です。あと10年で年金額がガクンと下がる世代が多数になり、この世代は余裕がありません。高齢者だのみができなくなる可能性ぐらいは国は織り込むでしょう。

日本語教師にかぎらないと思いますが、仕事の待遇が改善するポイントは2つあります。多分、これ以外にはありません。

A:業界で労基法が守られること。 B:教師のスキルが学校の利益に繋がっていること

Aは下のラインの底上げで、Bは、上のラインの引き上げになるかと思います。

A:報酬の下のラインを底上げする

まずはこれが重要で、簡単なはずです。今は、雇用関係でも労基法がほぼ守られていません。2010年代後半の働き方改革もまったく影響していません。厳密にやるようにならなくても、他の業界並みになればかなり改善するはずです。中にいるとそのへんがあまりわからなくなるんだと思います。

Aは、他の業界ではすでに裁判などを経て改善されていることが、日本語学校業界にだけ適用されないということがあり、これらを他の業界並みにするだけで、かなり改善します。当たり前のことで書くのが恥ずかしいくらいですが…

  • コマ給ではなく時間給にしてタイムカードで計算する。
  • コマ給なら前後の労働時間を拘束時間として織り込んで出す。トータルで2時間拘束なら最低時給×2以上なので2000円からになる。常識的には3000円くらいから。
  • 教案作成の時間は労働時間なので、提出が義務なら最低でも1時間を労働時間として計算する。
  • その他、業務に関わる仕事はすべて労働時間なので、時給で算出する。
  • 正規雇用の比率を上げる。
  • 業務委託などはできないことにしてすべて雇用関係にする。

その他、まだまだありますが、労基法を他の業界が守っているレベルで守れば、かなり待遇は改善されるはずです。判例も多くあるので、告発すれば改善命令が出るはずです。詳しくは労働法関連をどうぞ。

👉 【参考】日本の保育制度 千葉大学

B:報酬の上の可能性を広げる

熟達度、スキルによって報酬が上がる仕組みがあることも重要です。天井が上がれば、全体を引っ張り上げる力になります。

Bは、スキルが報酬に反映される構造に転換することです。これは学校が日本語を教える能力での競争があることが大前提です。現在のように学校の質に関係なく、営業力だけで学生数の確保が決まるかぎり、教師の質は問われないわけです。予備校のように、教師の力量が報酬となって反映されるようにするためには、結果が明らかで、それで学生が学校を選ぶことにならないと不可能です。

その数字が可視化され、公表されることが前提です。文科省は2017年からサイトで能試の合格者数や進学者数を公開していましたが、現在はストップとなっています。これは「試験の成績で語学学校を評価していいのか」と反対があるようですが、留学する学習者にとって、教える能力に関わる情報が無いまま学校を選ばなければならない状況のほうが異常なわけです。新しい告示規定で、日本語学校の質評価では、試験は能試に限らないことになりましたが、その他の試験も含め、全試験の合格者数、合格率は公表すべきです。

キャリア認定制度私案

👉 以下は、以前、日本語教師のユニオンで進めてもいいのではと提案したものの抜粋を、少しアレンジしたものです。突飛なものではなく、他の業界でも海外でも普通にあるものです。

提案 日本語教師のキャリア認定の制度化

非常勤で時給契約をする際に、経験がリセットされてしまうという問題があります。「他所の学校での経験はうちは考慮しない」と言われたら終わりです。90年代から2015年までは国内外の経験は、ほぼリセットされていました。名門と言われる学校ほどそういう傾向がありました。つまり、買い手市場になると、こういう傾向は強くなります。売り手市場の時に、こういうことはきちんとルールとして整備しておいたほうがいいと思います。これを解決する方法はおそらくひとつだけです。経験を公式に記録、認定し可視化するシステムを作ることです。

日振協やJaLSAなどの業界団体に、非常勤講師に対して、働いた時間数(コマ時間は学校によって違うので時間数で)を記録し、正式な証書として申請時には発行することを義務化させます。これにより、日本語教師の経験を時間数で証明することができるようになります。海外の日本語教育機関でも発行をする学校は良質校ということに持って行くことはできると思います。

1000時間、3000,5000,1万など、教師の経験時間に応じた最低時給を日本語教師の組織で提案し公開したうえで、業界団体と交渉することができると思います。教師は経験がかなり重要な職業です。日本語学校業界が経験をきちんと評価することにならないかぎり若者が職業として日本語教師を選択することはないはずです。きちんと法律にのっとって法的に問題を解決していくことは、個人の問題だけでなく、他の教師や未来の教師達にとっても大きな影響を与えます。

👉 まずは1万時間までくらいは数段階にわけて最低賃金を決めることが重要だと思います。1万時間を超えたら、時間数で上がるのではなく「1万時間越えの教師を一定の比率で雇わなければならない」ということで交渉するのがいいのではと思います。

👉 日本語学校の告示は30年近く「専任は全体の3割でよい」というルールでした。2017年以降は専任の数を分母、定員を分子にしたST比が40を上回ると認可取り消しもありえるというルールに変わりました。これでも非常勤の比率は依然として高く、半数以上は非常勤という実情は変わらないと思います。非常勤頼みである以上、非常勤の待遇を業界が考えることは重要です。とりわけ、業界全体でフェアに経験を査定する枠組み作りは、非常勤が安心して業界でキャリアを積む上で最も大事なことになると思います。

キャリアがリセットされてしまう問題は、日本語教育業界が未成熟のままである象徴だとも言えます。 業界から目安を出すべきといっても多分、無理なので、こちらからまずたたき台を提案し話し合いのテーブルを作るといいと思います。仕事の切りわけは、こうあるべきと出したうえで、教師のスキルそのものの評価は、こうあるべきという提案です。もちろん、学校独時の切り口があってもいいけれど、最低保障と、キャリアに応じて評価があがる最低の仕組みは守って貰う。複数の学校の行き来がある日本語教師は、業界全体でキャリアを認定するのでないと意味がない。授業時間数の評価の目安がないと、日本語教師が安心してキャリアを積めません。 経験年数でなく、カウント可能な授業の時間数で出し、それをキャリアの目安にする。授業時間数をちゃんと記録し、経験に応じた最低賃金をユニオンと業界で締結するということができると思います。

経験時間の策定

各学校が日振協なりが発行する書式に従って決まった計算式で出した授業時間数を記載して、教師が求めれば必ず出すことにする、もちろん時間数の操作などは絶対にできない、というイメージです。契約期間に教師が消化したコマ数を時間に換算して出すくらいのことは、まともな学校ならできるはずです。この証明書を学校が出すことにして、それの積算が1000時間ならば、1000時間の教師としての最低賃金が決まる、少なくとも国内の日本語教育機関は、そのラインを守らなければならない、というような仕組みです。 これはまず、経験0の教師の時給のスタートラインも取り決めで決めておく必要があります。仮に1500円で合意したとして、その上の経験のキャリア査定の合意は例えば以下のような形になります。

教師の経験時間の査定よる教師の種別 5つの段階 最低賃金が時給で2000円(45分コマで1500円)の場合

  • +0             経験がない教師     → 2000円
  • +~999時間         新人教師        → 2100円
  • +1000~2999時間      経験がある教師     → 2300円
  • +3000時間~4999時間    十分な経験がある教師  → 2500円
  • +5000時間~        高度なスキルがある教師 → 3000円

この5段階で、いくらづつアップするかを取り決めを定めるわけです。まずは、100円づつアップすることでもよいと思います。5000時間以上の教師は、最低でも円以上でないといけない、その上は、学校にまかせる。ということです。これでもまだかなり安いですが、まずはこの枠組みができれば、国内では安心してキャリアを積むことができます。額に関しては、交渉を重ねて、上げていけばよいのです。

こうなると、学校側は安い時給の教師を雇おうとするかもしれませんが、そこは経験時間が多い教師を*%雇わねばならないという取り決めをつくればいいと思います。その情報公開をすることで、例えば「あの学校の教師の平均経験時間は■■*時間だ」と、経験が豊富な教師を雇っている学校はどこなのかが可視化されます。

👉 これは業界の認定基準なので、証明が難しい告示校以外での経験はカウントするのは難しいのですが、大学や海外の教育機関での経験の計算方法も別途作っておき、ユニオンと協定を結ぶ形で証明書を出すことにすればよいと思います。この提携関係がない海外や大学などでは就職しても価値がないとなれば、提携は進むはずです。

👉 もちろん、コマ級でなく時給計算でやるべきです。1コマは2時間相当になる前提です。このユニオンと業界との取り決めが成立すれば、求人などでは、経験5000時間まではユニオンとの取り決めに準じます。と書けば終わりで、あとは、学校独時のプラス分(例えばユニオンとの取り決めに+50円増しとか、1万時間以上はいくらなど)を書けばいい、ということになります。

👉 これは強気な提案のようですが、Noと言いにくいはずです。Noと言えば、ウチは上げないよ、ということだけではなく、日本語教育業界というのは、キャリアを積んでも給料はあげないよ、と言っているようなものですから。そういうところで仕事をするのだとなると日本語教師養成講座に来る人も減ってしまう。「資格業界」でもある日本語教育業界にとって、大事なポイントです。提言をすることでいろんなことを露わにしていくのも大事な戦略です。

日本語学校業界は「経験軽視」の業界

ネット上では、経験はすべてではない、経験が長い教師は柔軟性を失うものだ、と語られたりしますが、仮にそういう傾向があるとしても、待遇に関しては、経験がきちんと評価される土壌がない限り、教師を長く続けることはできません。公教育の小中高の教師は、新卒で就職し30代には年収が500万となり、リタイア時には800万円代。平均で600万円代で、退職金は平均2200万円で手厚い年金を得ます。これはライフプランに応じたカーブ(子育て、子どもの進学、介護などお金がかかる時期は年齢とともにやってくる)と共に上昇することも大事ですが、長年の貢献や経験への報酬でもあります。

日本語学校は、教師不足になれば経験不問で募集をしますが、ほとんどの場合、2~3年の経験を要求したいと考えています。これは、ほとんどの場合「0から研修するのが面倒だから」という理由です。即戦力のほうが手間(=コスト)がかからないからです。そして、10年の経験を高収入で雇うというケースはほとんどありませんし、専任の年収も非常勤の時給も、教師不足だった3年間(2015~2018年頃まで)を除いて、ほぼ上がりませんでした。

上の提案からもわかるように、業界で、他校の経験を評価するというコンセンサスも無く、「うちはうちの規定で0からやっていただくことになります」と、勝手に他の仕事の経験をリセットされてしまいます。海外経験が評価されないという話もありますし、つまり、そもそも日本語学校業界は経験重視ではまったくないわけです。ここも忘れられがちで重要な問題です。キャリアが評価されないわけですから。長く働く理由はありません。

若い教師は雇って貰いたいということもあって、経験にはあまり意味がないなどと言いがちですが、(そういう若い人にウケるためにそう語るベテランもいますが)、結局、経験軽視を肯定してしまうと、すぐに自分の首を絞めることになります。なんとか日本語学校で非常勤になっても、数年後には、その同じ学校業界がつくり出した新人の教師と入れ替えられる可能性が高くなるだけです。

教師は、いろんな教材、学習者、教え方を経験し、担当した学習者が、その後、どう伸びたか、あるいは伸びなかったを見て、やり方にフィードバックすることも重要です。つまり年月も必要です。他の職業と比較しても、本来、明らかに、経験が生きる仕事であることは明らかです。「日本語教師は経験を重視せよ!」と主張すべきです。

もうひとつ重要な要件があります。それは「日本語教師の需給のバランスがとれていること」です。

コロナ以前、学習者数が伸びている状況で、毎年、新規の教師のニーズは1500人。仮に1万人増えても既存の教師のコマ数を増やせばいいので、おそらく新規の教師の確保は数百人で済む。しかし、毎年1万人近くの新規の有資格者が生まれており、おそらく5000人以上の人が「安くてもいいから経験したい」と就活をはじめます。

大学で資格を取得した人は院に進まなければ、日本語教師は選択しないケースが圧倒的と言われています。もし、日本語教師が国家資格化で準公務員的な待遇となったら、かなりの数がそのまま新規採用で日本語教師を選択する可能性もあります。大学が生む新規の有資格社は年間約4000人なので、十分に補填可能な計算となり、民間の日本語教師養成講座は不要ということになります。

今は、民間の日本語学校は資格ビジネスも兼ねていますから、新人を大量に生み出せば、講座で利益にもなるし、安い教師への入れ替え要員も作れる、と、いいことばかりです。この構造にもメスを入れる必要があります。

国家資格は、たいていの場合、国がこの需給のバランスを調査し、調整を行います。保育士もそうです。今後、国がこれをちゃんとやるかを、ウォッチする必要があります。

👉 民間の日本語学校から教師養成ビジネスを取り上げるのが最もよい解決法だと思います。理論を大学(国家資格なら講師の要件に修士以上はマストでしょうし)でやり、日本語学校は研修場所くらいにして、まずは民間から教師養成のイニシアティブを奪う方向でやればいいのではと思います。養成講座の講師という仕事は減りますが、長い目でみれば、需給のバランス調整を国がやり、結果として、授業の報酬がしっかり保証されるようになることのほうが重要です。

👉 マッチングの紹介プラットフォームみたいなところは、サービス提供会社に決定権があるので、そのプラットフォーム内にいるかぎり何もをしても限界があります。抜け出すなら独立するしかありません。

日本語教師の組織を作るなら

上のようなことを実現するには、日本語教師の利益を代表する組織が必要です。

日本語学校のように長年慣習として違法な状態が続いてる場合、業界全体も働いているベテラン教師もそれを「仕方が無いもの」と考えているので、勇気を出して、個人で申し入れをしても非常勤なら担当コマ数を減らされるか、あっさりクビになる、というようなことになる可能性があります。中には「そんなことを言うと他所でも雇ってくれないよ」と脅す学校(やベテラン教師)もあるようです(実際はそんなことはほぼ起きないのですが)。

残業などの時間外手当ても、話し合いで解決することになったとしても、一律のわずかな手当をつけるみたいなことで曖昧になっていますが、手当というのは、基本的に、自由換算などで通常の報酬に「加算して」払われるお金のことです。ところが、日本語学校では採点業務は一律月数千円手当が出て終わり、みたいな形になっていることが多いようです。これは現実の時間外労働で発生するべき額を超えても固定のままなら違法です。日本語学校業界ではこういう他の業界で裁判などを経て行われなくなった違法なやり方が残っていることがあります。

こういう場合は正攻法で正面からの解決で社会にも訴えていくことが結局は早いはずです。基本的に、労働関連の法律に違反している場合、特に、日本語学校のようにすでに他の業界では訴訟が起こりやらなったことを続けているようなことが多い場合は、労働組合を作ってきちんと申し入れをすればあっさりと解決するはずです。しかし、専任やベテラン非常勤は、会社に従順であることで生き残ってきた人達です。学校で労働組合を作るのは厳しいかもしれません(専門学校や予備校などでは普通に組合はあるのですが、零細企業で家族経営、ワンマン経営が多く、経営者のモラルが低い日本語学校業界では難しいといというケースが多いようです)。

個人の抗議ならクビにできますが、労働組合を作る、労働関係の申し立てをすることを妨害することは違法になりできません。法律にのっとってきちんとやったほうがリスクは少ないわけです。学校法人などですでに組合があるところもあるかもしれません。

👉 労働組合はなにやら「政治的な行為」という印象がありますが、普通のことです。会社というのは、こういう正攻法でこられると困るので、個人が文句を言う程度ので早めにクビにするか、適当な話し合いで解決したいと考えます。しかし教育関係は、学校法人も実は家族経営が多い(相続税がかからないなど税制上の優遇が多いので家族経営になりがち)ので、労働組合はあるけど経営陣の言いなり、みたいなところもあるようです…。

年間の会費を3000円くらいから始めて、100人集まれば30万ですから、顧問弁護士は雇えなくても、相談くらいはできます。300人集まれば顧問弁護士が雇えます。

法律にのっとってまずは業界団体に申し入れをする。日本語教師の労働環境として問題な点は労働法関連でも、触れました。おそらく今、最も改善すべきポイントとして大事なのは

  • 求人に関するガイドラインを求める
  • コマ給を廃止し時間給にする
  • 業務委託契約で雇用はできないようにする
  • 授業の準備(教案作り)の時間を時給として計算する
  • 5年での無期転換を実施する
  • 専任の残業時間は手当ではなく時間給計算をする。
  • 主任や役職手当の最低ラインを決める

でしょうか。コマ給の問題などは、他の業界(予備校講師など)では、すでに訴訟を経て厚労省から指導があり改善されつつあるような事項ですし、問題提起をすれば動かざるとえないところです。日本語学校は法務省と文科省とかなり関係が深い業界ですからこういう明らかにダメな労基法違反を見逃すことは社会的に許されないというアドバンテージもあります。きちんと社会にもアピールしながら進めれば、業界団体のガイドラインに盛り込んで、遵守しているかのチェックと情報公開を迫ることは難しくないはずです。

専任の労働環境は統一したラインを決めるのは難しい側面がありますが、これも労基法や専門学校や予備校の訴訟や判例をみて常識的なセンで進めるだけで、かなり労働環境はよくなるはずです。

法律的なバックアップ

個人で訴訟を起こすのはかなり大変です。日本語教師の組織が支援する体制を作ることが重要です。支援できる体制がある組織をあるということが、業界に対するプレッシャーにもなります。つまり、日本語教師の組織は人数も大事ですが、ある程度の資金力も大事です。組織として訴訟を起こせる資金があるかどうかで、影響力が違ってくるからです。収入が少ない日本語教師にとっては厳しいですが、顧問弁護士を雇い、もし問題がある行為があったら訴訟の支援ができる程度の資金力を目標にすべきです。

労基法は業界によってはまったく守られていないということが起きますが、その違いは、労働組合の力もありますが、実際に訴訟があったかどうかにかなり左右されています。訴訟が起こり、その業界では、ここまでがセーフで、これがアウトだと、判例が作られることが大事です。判例ができれば管轄省庁もそのラインに従って監視していくしかありませんし、業界団体も対応することになります。

日本語学校業界では、確実に勝てて、証拠が集められるケースをみつけるのは難しくないはずです。まずは日本語学校での労働環境を向上させるために象徴的なケースとして組織として訴訟を起こし、支援していく、という方法は有効だと思います。

自らガイドラインを作る

日本語教師の組織が大きくなり、影響力が強くなれば、自ら作ったガイドラインを業界に守るように迫ることもできます。日振協やJaLSAなどの業界団体が応じなければ、学校単位で、自ら申し入れをし、ガイドラインを守らない学校は就職に適さないと学校の一覧を公開することもできます。サイトで公開しなくても内々に公開するだけで、かなりプレッシャーを与えることができるはずです。あるいは、日本語教師の組織の加盟者しか雇えないという交渉の仕方もあります。アメリカの映画業界などは労働組合の力がかなり強く、組合に加入していない人は雇えない、簡単にアルバイトを雇うこともできない、という話しがあります。

👉 アメリカをはじめ教師の組合というのは公立、私立問わず、組織率も高く、かなり強いのが特徴です。資金力も豊富で、現実路線で、自らの労働環境の改善が第一のテーマで政治的な影響力も強い。どこもTenure(終身雇用制)が大きなテーマで、給料は高くはないけど安定し、一旦雇ったらよほどのことがないと解雇は無理で、残業はほぼ無しか、あっても割増料金はきっちり支払われるのが普通です。TI関係のように高給で転職してキャリアを作るところとは違うので、法律遵守と安定がテーマになるのは当然のことです。日本は公務員以外は、どんな仕事でも低賃金のままフリーランスとして小銭を稼ぎましょうみたいなことになってますが。

「経験」の可視化

上の「キャリア認定制度私案」のような経験を数値化、ルール化し業界で共有することも大きな目標のひとつになると思います。

他の業界では?

何十年も続いているような業界には必ず働く人が中心となった組織があり、雇用だけでなく政策にも大きな影響を与えています。こういう組織があって、なんとかバランスがとれる、ということになっています。政府も重要な会議にはバランスを取るために働く人達の組織の代表者を招きます。

看護職の賃金・給与 | 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/chingin/index.html

👉 このページに関連する私達の出版物のご紹介です。

『日本語教師読本 3 : 日本語学校の選び方』


労働関連の法律や働き方改革で作られた新しい法律を元に日本語学校が守るべき法律は何かを整理していきます。日本語教師だけでなく、日本語学校への就職を考えている職員の方や日本語教師以外の講師稼業の方々にも!

webjapanese編集部 著
出版社による紹介ページへ



研究


1)
まではいかなくても告示で十分なわけですが
  • 日本語教師の待遇問題.txt
  • 最終更新: 2022/11/14 05:59
  • by webjapanese