日本語教師の資格関連
目次
どうなるかは全然わからない
2018年ごろから、名称や資格の条件など国で継続議論中です。2024年にスタート予定らしいので、2023年中に決まるかどうかかもしれません。それまでは名称や資格の取り方などはどうなるかまったくわかりません。ここで経緯を記録していきます。
ただ、国の都合で英語教育の方針に準拠する形で10年更新制が決まったと思ったら推進派の議員が影響力低下で英語でポシャったから日本語も無しになったりしているのを見ていると、このニュースを追うことにどれほどの意味があるのか?という気がしてます。特に言語政策に関して意見もない人達が「ちゃんと呼んで意見を聞いたからな」というアリバイ作りのために国の会議に呼ばれ、結局は省庁が準備したものに「ちゃんと話を聞いて(ちょっとだけ)反映しましたよ」と肉付けして完成で終わりになりそうです。
個人的には「多分、2024年に一応形が決まる。おそらくいいものにはならない。今後10年くらい修正しながら改良していくためのタタキダイということになる。しかし日本語教育関係者は一旦決まったら、それに従ってやるという人達なので、たいして改良もされないだろう」と思ってます。
国が決めるということは、予算がおりるということなので、その傘下で生活したい人は、ここに適応しながらやるしかない。ただ、それと関係なく、学習者と向き合いながら学習者の評価を手がかりに続けていく道もあるとは思います。資格だけ決まったことに従って取得して、あとは勝手にやる方法もあるわけです。語学は結果を出せばお金を払う人はいますから。
→ ただ、今の日本語教師養成講座にお金を払うのはストップしたほうがいいと思います。資格スクール系の企業の政治的影響力は無視できないはずなので、無にはならないでしょうけれども、どうなるかは全然わかりませんから。検定試験も同じです。「こうなる」と予測しても仕方ないです。
決まったら日本語教師に整理します。
2010年代後半
新資格は迷走しました。その迷走の理解のために、周辺の事情を少し考えてみます。
「国家資格化」の資格を作るという動きが出てきたのは2010年代後半、文科省が日本語教育の主導権を取るということになったことが発端と言えそうです。法律の整備と共に日本語教師の資格の整備も必要だとなったということだと思います。
今の日本語教育の改革を進めている2016年にできた日本語教育推進議員連盟というのは、基本法を作った人達ですが、ほぼ文科省の大臣経験者で、ここ数十年の文科省の改革を進めてきた人達が中心です。この改革派の議員は「ネオ文教族」などと呼ばれています。
議論の流れは、日本語教育の現場の実情よりも、文科省でコントロールするのだ、文科省の方針に準じたものにするのだ、という方向になったという印象です。JaLSAなどと関係も長い下村健一氏の元、馳浩氏は「(この議連の会議と法制化で)日本語学校の管理を法務省から文科省に取り戻す」とスピーチしたりしてました。
この文教族と言われる人達の周辺にいる文科省の官僚の人達が英語教育でやってきたことを、そのまま(かなり無理矢理)日本語教育でもやることにした、あとはこの時代の官邸のお気に入りの外務省=国際交流基金1)と一緒に「内は文科省、外は外務省」でやってしまおう、というのが、2010年代後半の日本語教育の改革なのかなと思います。結果、外務省は特定技能の試験で国内の日本語教育に参入するというオマケもつきました。
まとめると、この改革で大きく影響したのは
- 文科省の日本語教育への関与が強まり、文科省のモロモロ(小中高大の改革路線とか英語教育の路線とか)の方針の影響を強く受けるようになった。
- 日本語教育振興基本法の日本語教育サポート義務のラインを定める際に就労系のラインであるCEFRのA2で揃えたいという意向が(多分)あった。
の二点ではないかと思います。
「A2で統一」は、まず就労系の在留資格の日本語教育を軸に決められたのだと思います。当然、人手確保のために高いハードルは課せないということがありました。そのA2は、留学にも影響しました。英語教育でも採用になったCEFRでいいか、国際的な説明も楽だし、という流れがあったような気がします。2018年に日本語学校は学生の7割が来日一年でCEFRのA2をクリアできない状態が3年続くと認可取り消しというルールが会議で了承され、即追加されました。当時、ほぼ100%に近い学校が文型シラバスの教科書で教えていた留学生を扱う日本語学校で、CEFRを基準にするみたいなことを日本語教育関係者で議論していた人はいなかったと思います。日本語学校の事情を知らない人じゃないとこんな乱暴なことはできないような気がします。原案を書いた人が「なんか基準的なものが決まった例はないの?」と拾って「これでいいじゃん」と作った、という印象です。
👉 国内日本語教育の基準をCEFRにするというのは、2013年あたりが起源だと思われます。経緯は日本語能力に係る試験の合格率の基準に関する有識者会議にあります。
👉 しかし、2020年前後に、この改革路線は急速に勢いを失い。混乱の末、ほぼ何も決められないまま2021年8月の報告となってしまいました。以下に整理します。
新資格の議論(2019~)
日本語教師の資格は、1990年あたりから2010年代までは10年ぐらいごとに開かれる会議で決まってました。そのへんは文化審議会国語分科会日本語教育小委員会に少し説明があります。
上記のように、2010年代後半になって国家資格として本格的に資格化が議論されました。その新しい議論は新しく編成された日本語教育の今後の方針に関する会議(文化庁小委員会)で議論されることになり、この議論は「標準化」と「判定」に分かれて前者は、日本語教育の方針を、後者は日本語教師の資格について話し合うことになりました。その後者の会議の概要は次で触れる「日本語教育能力の判定に関するワーキンググループ」です。
「日本語教育能力の判定に関するワーキンググループ」(2019年)
令和元年(2019)6月~9月の4回
委員
- 井上 靖夫 学校法人柴永国際学園JET日本語学校長
- 神吉 宇一 武蔵野大学大学院准教授
- 野田 尚史 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所教授
- 戸田 佐和 公益社団法人国際日本語普及協会常務理事
- 浜田 麻里 国立大学法人京都教育大学教授
- 協力者: 小 林 ミナ 早稲田大学教授
- 協力者: 辻 和子 ヒューマンアカデミー日本語学校東京校校長
議事録は以下
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo_kyoiku_wg/
この頃は、ハッキリと文科省主導だったという印象です。文科省のこれまでの改革路線に合わせるのが基本。委員の発言でも「教員も10年で更新なんだから日本語教師もそれでいいでしょ」「学歴は4大卒でいいでしょ(文科省は長年、短大の四年大化を進めてきました)」的なものが出たりと、基本的には省庁から出されたペーパーを承認する前提でしながら淡々と進むという印象でした。
次の日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議に引き継がれたということのようです。
「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」(20~21年7月)
令和2年(2020)7月~令和3年(2021)7月
に引き継がれた(このへんはよくわからない。ワーキンググループが準備会議で、これが本物ということ?ともあれ、引き継がれた)。現場の人も多いが、それゆえに、意見がアレコレと出て、まとまらない状況が続いたという印象です。この会議の議事録と田尻氏の報告をあわせて読むと、だいたいの概要がわかりますが、議論は混乱しており、スッキリわかるとはいいがたいです。
委員
- 石井 恵理子 東京女子大学 教授
- ○伊東 祐郎 国際教養大学専門職大学院 日本語教育実践領域 代表
- 井上 靖夫 JET日本語学校 前校長
- 加藤 早苗 インターカルト日本語学校 学校長
- 神吉 宇一 武蔵野大学グローバル学部 准教授
- 工藤 尚美 株式会社オリジネーター取締役専務執行役員
- 黒崎 誠 ラボ日本語教育研修所 所長
- 仙田 武司 公益財団法人しまね国際センター 課長
- 田尻 英三 龍谷大学 名誉教授
- 石坂 守啓 浜松市企画調整部長
- 新居 みどり NPO法人国際活動市民中心 理事
- ◎西原 鈴子 NPO法人日本語教育研究所 理事長
- 野田 尚史 日本大学文理学部 教授
- 浜田 麻里 国立大学法人京都教育大学 教授
- 村田 春文 独立行政法人国際交流基金日本語第1事業部 部長
- 渡邊 貴和 横浜市国際局国際政策部担当部長
議事録は以下に
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/92369001.html
最終報告が出たのは8月20日
報告等 | 文化庁
議事録と下の田尻氏のブログをあわせて読んでみてください。
第一回の参加者は
- 委 員:西原座長、伊東副座長、井上委員、加藤委員、神吉委員、黒崎委員、
- 田尻委員、野田委員、浜田委員、村田委員
- 文化庁:高橋国語課長、平山専門官、増田日本語教育調査官
となっており、常時出席したのはこのメンバーが中心となった。他の人は時々来て意見を出すというところ。
会議の迷走と不十分な議論
会議は、留学、就労、生活の3つの類型化の話に集中した。それぞれの現場の人が、専門性の高さを語り、分けるなら縄張りをきちんとしてくれ、いや他の領域もやる、みたいな議論が続いた。専門性を強調することで、それぞれの資格として細分化するみたいな話にもなり…
議事録で出たもので国が考えている方針めいたものは
- 最短で全面施行が令和6年
- 全国規模で国が研修をする
- 告示校の制度は継続で、有資格者による業務独占も「原則」継続。
あたりが見えました。
留学、就労、生活の類型化の議論では、それぞれが「専門性」を強調したことで、まとまらなかった。大学の別科のレベルも低いから有資格者がやるべき、みたいな意見もあった。それぞれの現場の人達は、今の自分達の領域が変わるのが困るというような印象でした。ボランティアでやってるところに資格が必要となるのはちょっと…みたいなニュアンスもあった。以下、議事録でみかけたものです。
- 大卒マストじゃないと対外的に印象がよくないし、待遇もあがらないだろう
- 誰でもとれる資格にすると印象が悪い
- オンラインは授業として認められないのか
- 留学生別科の位置づけがあいまい
- 実務経験が考慮されるのが告示校だけ?どうして?
- ボランティアの教室の選別に繋がるのでは
当然、今の資格からの移行はどうするのか?みたいな話もあった。
第五回では
「現職日本語教師や日本語教育機関が、この議論によって混乱している面がある。法制化に際して、昨年パブリックコメントまで行って取りまとめた「日本語教師の資格の在り方について」の報告の通りにいかないということは理解できるが、多くのことが具体的に定まっていないにもかかわらず、報告書が取りまとまろうとしているような印象を与えているのかもしれない。」
という意見も出た。予定では次の第六回で終わりのはずだったということなので、もう何も決まらないまま終わりそうだったといえます。最終的に九回まで延長されたのは、まとめるためでしたが、結局、バタバタと終わりました。
開始当初の「日本語教育能力の判定に関するワーキンググループ」(2019年)の頃のムードと違い、2021年に入って、議員連盟の文教族の主要議員達が引退したり(あるいは政治的に何かあった?)で影響力を失い、文科省の中でも改革派は力を失った。中教審で更新制廃止の答申が出たりして、次々と英語教育や大学の試験などの「本体(小中高大のほう)」の改革が否定された。それがあっという間に日本語教育に押し寄せてきて、このへんの一旦決まりかけたものが最終的に全部消えました。
類型化の議論は、議事録が公開されている6回までは、どうみてもまとまりそうにないという印象でした。
で、2021年7月、更新制は無し。学歴要項無しになって、類型化はもうわからんから留学だけやりますと、最後にバタバタと終わりました。名称独占とか業務独占みたいなことも、ちゃんと議論した形跡はないと思います。
会議の参加者による報告
会議の参加者による報告は以下の田尻氏のものしか見当たりません。
第三回から最後までの参加の感想が書かれています。
第19回 見えてきた日本語教育の将来像と関係者のそれに対する理解の無さ|田尻英三
:第三回会議について。「日本語教師の国家資格化は、この類型化の前提としての了解事項」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/03/08/ukeire-19/
第20回 日本語教師の国家資格はほぼ決定|田尻英三 | 未草
:第四回会議について「従来の日本語教育能力検定試験は民間資格でしたが、新しい試験は国家資格が取れるように意図したもの」「国家資格取得要件に学士要件は入れられない」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/04/05/ukeire-20/
第21回 議連総会と文化庁の会議で何が決まったのか|田尻英三 | 未草
:第五回会議について「留学生別科の全体像は、現在に至っても不明のまま」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/05/14/ukeire-21/
第22回 「資格会議」はどこへ向かうのか|田尻英三 | 未草
:第六回の会議について。「まとまりのわるいものになってしまいました。」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/06/14/ukeire-22/
第23回 浮島議員の活躍と「資格会議」での類型「生活」など|田尻英三 | 未草
:第七回の会議について。「検討内容のまとまりがない」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/07/12/ukeire-23/
第24回 「資格会議」の報告はどうなるのか|田尻英三 | 未草
:第八回、九回について「残念ながら、これでこの「資格会議」は終了となりました。多くの問題は積み残しのままで、今後どのように扱われるかは未定です。」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/08/17/ukeire-24/
第25回 外国人の受け入れに日本語教育は関われるのか|田尻英三 | 未草
:報告とパブコメについて。「報告」に今後検討するとある項目を列挙すれば、おのずとこの「報告」の限界も見えてきます。」
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/09/09/ukeire-25/
24回の文中、田尻氏がすべての日本語教育関係者は必読だと書いた「外国人材の受入れに係る施策に関する会計検査の結果について」は以下にあります。本文はPDFで180ページ超。概要はわずか2ページ、報告のポイントも図表が3つなので、本文に目を通すしかありません。コロナ以降のことも織り込んだものです。技能実習制度や特定技能の概要についても知ってないと理解は難しいと思われます。
https://webjapanese.com/dokuhon/files/kaikeikensa.png
国会からの検査要請事項に関する報告(3年7月16日) | 検査結果(令和3年分) | 検査結果 | 検査関係 | 公表資料 | 会計検査院 Board of Audit of Japan
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/r030716.html
念のため保存したもの
この田尻氏のコラム以外に、きちんとこの資格化を論じたものはネット上にありません。SNSでは、資格の更新制は「古いみん日を使うような教師を排除するには有効」みたいな乱暴な議論の他に、学歴についての議論があったくらいでしたが、資格の要件にするのかというテーマからはズレていき、消えました。神吉氏も後半はnoteでの簡単な報告さえしなくなりました。
田尻氏のコラムはもうすぐ終わりそうですが、私の知るかぎりでは、SNSでまったく話題にならないままでした。とても残念です。
最終報告とパブコメまで (2021)
結局、2021年の8月下旬に最終報告がでてました。まとめたのは上の「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」です。
この、バタバタとまとめたような案を軸にパブコメを募集して承認でスタートすることになりました。会議のあれこれが反映されたとも言えず、最後になんとなく大枠だけ体裁を整えたから、あとはパブコメで承認されたら、こっちで勝手に進めます。その先、どうなるかもまだわかりません。というものだという印象です。
7回以降の議事録がないので、わかりませんが、田尻氏の報告などをみるかぎりでは、結局、類型化はまとまらないままだったような印象です。現実的にやれそうな、今の告示校の有資格をどうするかという点に絞って終わった。就労については最後まで「「就労」は実質的に扱われなかった」となっています。最終報告では、類型化については、ハッキリ書かれてないです。継続審議ということでしょう。
しかし、資格の取得の方法は、第四回の会議の方向性を軸にそこそこ具体的に示されています。その指定日本語教育機関とか教育実習などの議論は第7回なので議事録無しですが、このへんを参考に作られたのではと思います。
パブコメ
「日本語教育の推進のための仕組みについて」に関する意見募集の実施について|e-Govパブリック・コメント(21年8月20日~9月17日)
パブコメの結果は以下に。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/ikenboshu/nihongoiken_suishin/pdf/93458201_01.pdf
パブコメで求められているもの
最終報告は、議事録を丹念に読んだ人ほど、なんで最後にこんな報告になったのかは全然わからないというものになっていると思います。つまりこの報告だけでは、パブコメを書くのはほぼ無理です。何がどう決まったのか、そのうち何をパブコメで問うているのかもわからないはずです。
【参考】以下は現在の教員免状の取得までのハードルです。
資料5-2 教員免許状取得に係る必要単位数等の概要(文科省)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/__icsFiles/afieldfile/2014/04/23/1347091_03.pdf
あまり決まっていないこと
以下は報告書ではあいまいです。したがってパブコメで意見を書いてもあまり意味はないかもしれません。資格の議論をみてもわかるように、急にまたどこかの政治勢力が(例えば移民庁が作られてそこで国内外の日本語教育の一元化するとか)力をもって、そこが日本語教育を仕切るのだ!みたいなことになったら、またリセットになる可能性もあります。
1)「留学」「就労」「生活」の区別
日本語教師の仕事場を「留学」「就労」「生活」に分けてどうこう、は議事録にあるように最後の最後でリセットになったので今回は問われていない。どうなるかわかりません。とりあえず日本語教育機関のことならこれまでの延長線上で決められるから、今回はそこまで。その他はもう全然ワカランよ、ということだと思います。
👉 個人的には、類型化は、働く場所としての整備のためには議論が必要だけれども、資格とは絡めず、上の方法で取得して正式な資格を得た後に、オプション的に研修を受けたら働ける、程度でいいような気がします。最初から特化するほどの違いはないはずです。
2)名称独占、業務独占
これもあいまいですが、一応、報告では
「資格の名称は「公認日本語教師」とし、名称独占の国家資格として設計することが適当である。」
とあります。いちおう最終報告では議論で名称独占という意見も出たし、勝手に無くすことはできない。名称独占としてもいけるようには準備する。しかしどうなるかはわからない。というところだと思います。パブコメで意見は言えても、そこは問われているとは言い難いです。
これまでも日本語教師の資格は、告示校と介護の一部で業務独占でした。そしてこれは「告示」で決められてます。一定の範囲なら、告示は法律の下の政令や省令の下で、国会の議決が必要でもなく、省庁の都合で決められる程度のものですから、これからどうにでもなりそうです。完全な業務独占になることは有り得ないでしょうし。
👉 名称独占に反対する理由はないとは思います。結果として業務独占の範囲をひろげるのに有利であることは間違いないので
問題点
以下は、まだハッキリと決まっていないものです。
- CEFRを基準にすること
- 教師の資格の細分化
の2つです。
問題点1 CEFR
CEFRは日本語教育において、どう解釈するかのコンセンサスはありません。厚労省や外務省などがそれぞれ、それぞれの解釈でCan-doを作ったりしていますし、文化庁や法務省は、Can-do的な方向とは違うやさしい日本語推しだったりと、統一感がありません。
問題点2 資格の細分化
まずすべての日本語教師に必要なものとしては…
- 一般的な教科書の範囲(これはシラバス関係なく学習すべき項目はだいたい似ている)で、しっかり説明でき
- どういう方法で教えるとどういう効果が期待できるか、あるいはあまり期待できないかを知り。
- 同様に学習者の評価の方法と何が測定できるのかを知る
という汎用性が高い基本的な知識に絞って整理することができると思います。まずは資格を付与すればよいはずで、あとは教師自身が選んだ現場(留学、就労、生活、児童など)で研鑽を積んで一人前になっていくのが自然なやり方です。資格取得までは細分化せず途中で方向転換可能な基本に絞ればいい。つまり、小中学校の教員と同じく、教師の育成を資格の取得とその後の研鑽の時間を10年くらいのパッケージで考えることが重要です。
現在は、告示校の教師の最低ラインの収入の保障も怪しい2)うえに、&color(Black,lightpink){就労だ生活だと細々と分けても、それぞれの道の先は告示校以上に報酬を得る可能性はまったく保証されていません。};にもかかわらず、最初の資格の取得の段階で向いているとか、向いてないとか、対応できるとかできないみたいな制限や選別をすることは全くバカバカしいことだという気がします。類型化は、職場の整備の問題として、資格とは別のところで議論してほしいと思います。
👉 具体的には、この就労や生活でも、告示校のように公認日本語教師が業務独占できるかが重要です。教師の職場が広がるだけでなく、就労系の人々にはCEFRのA2以降の日本語学習サポートは必要ですし、地域の教室でも質の高い教師による授業が義務づけられるほうがいいことは間違いないのです。
今後は就労、生活がメインになるはず
それに、日本国内だけをみると、日本語学習者のマジョリティはすでに就労系です。家族帯同、永住なども視野に入ってきたので、児童など生活日本語も重要になります。留学はどう考えても先細りで、もっとも小さく弱いジャンルでもあります。今の日本語教育関係者は(特に有識者会議に呼ばれるような人達のほとんどは)留学しか見えていないので、このへんをしっかり道すじを考えることができる人がいないのかもしれません。
就労や生活はそのへんをきちんと考えてきた人達が中心になって決めていくことになるのではと思います。
海外の語学学習制度を元に考えてみる
今の留学制度では告示校は有資格者に限定され業務独占となっています。一年に最低義務づけられている学習時間は760コマ時間。1コマ最低45分なので、570時間。
その他、就労で来日後、義務づけられているのは介護の240時間のみです。
今の基本法だと国や自治体、企業が日本語教育の提供の責務を負います。やや責任の所在が曖昧です。それはともかく、逆にいうと、来日した人は日本語を学習する「権利」がある。この学習の権利を「試験の合格(選別)」にするのか「学習時間の保障(権利)」にするのかは大きな違いで、当然、後者であるべきです。
試験の合格は、認定される試験の性格によって「どんな日本語を学ぶべきか」を国がコントロールすることにもなります。
生活、就労全体に義務づけるなら、だいたい500時間くらいでしょうか。中級の入り口までは十分に行けて、その後は自分で学習できる可能性があるところまで。もちろん、その先もほぼ無料で学習が保障されていることが海外の制度では多いです。
以下を参考にしてください。
海外の語学学習制度についてはこちらが一番わかりやすいです。
海外における在住外国人の言語学習制度
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_272/04_sp.pdf
公認から登録 名称の迷走(2022)
現状を眺めながら…
— webjapanese 日本語教育 (@webjapaneseJ) September 19, 2022
・大先生:要博士。中先生指導、理論、教材開発
・中先生:要修士。小先生の資格取得と研修
・小先生:ほぼ4大卒+資格取得+ジャンル研修修了がマスト。
小先生の「登録」の数が需要を満たせば政策としてOKで、国は小先生の生活保障はしなくてもいいという制度。
👉 上は、少し違う角度からみると、こうみえる、ということです。
教員免許は日本語教育で2年に短縮
教員免許取得、最短2年で 特例で開設へ
— 日本教育新聞 (@nikkyoweb) September 9, 2022
文科省は9日、教員の養成・採用・研修の改善を議論している中央教育審議会の特別部会で、教員免許状(一種)を最短2年間で取得できる教職課程を特例的に設ける方針を示した。https://t.co/2ju3I0pYjt
日本語関連の単位が短縮取得のものとして認められることになりそうで、学校ではこれで教員免許が必須になり、日本語教師の資格だけでの参加は難しくなったと思います。
2022年以降
日本語教育関係の制度と会議にある「日本語教育人材の養成・研修に関するWG」と「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」で継続審議となってます。ジャンル別かと思うと、総合的な能力の議論があったり、養成のうち理論と研修はどうするのか、どこがやるのか、どこまでやるのか、などなど。。。