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特定技能 | 技能実習制度 | 留学 | 技術・人文知識・国際業務 | EPA | 介護
特定技能
目次
在留資格の概要図
基本的なこと その1
対象国
国ごとに協定を結ぶ。2020年の時点では、協定があるのはフィリピンやカンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイの12か国
新たに加わる可能性が高い職種
「コンビニ、スーパーマーケット、運輸、産業廃棄物処理」
これは特定技能でも技能実習生制度でもいいということのようですが、特定技能で進める方向らしいです。コンビニと産業廃棄物処理は2大日本語学校の学生がやる仕事でした(2019年にも産廃業者での長時間労働で旭川の日本語学校経営者が逮捕されています)。ウーバーイーツも東京オリンピックの前後にアウトになったので、留学生が働く場所はじわじわ無くなっていきそうです。
自民党、外国人労働者の支援や受け入れ推進など政府への提言を議論:【公式】データ・マックス NETIB-NEWS
https://www.data-max.co.jp/article/41975?rank
自民党「外国人労働者等特別委員会提言」 : 2021-08-01|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I031588110-00
人数
リアルタイムでの人数は以下に。
特定技能在留外国人数の公表 | 出入国在留管理庁
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html
条件
- 18才以上30才くらいまで
- 学歴は基本的に不問(中卒の人も一定数いる)
現在、どこの国も在留資格は厳しくなる傾向が強い。
就労ビザ取得のための学歴条件 pic.twitter.com/yjqHSUZBw5
— 平 均 (@225average) September 8, 2022
滞在期間など
最初の5年が特定技能1号で1年単位で最大5年まで。2号は、1~3年単位で更新で期限なし。2号は「その技能において指導者的なポジションをまかせることができる程度」とのこと。技能「実習」的な要素は無い建て前だが、ほとんどの場合、はじめての職種なので実際は技能実習制度と同じような内容。
2号は、配偶者と子に限り、条件を満たせば家族帯同OK。10年に達すれば、永住の道も開かれる(ただ、このこともあるのか、永住の審査は2010年代後半にかなり厳格化された模様)
また、2号の家族帯同、永住は与党内でも批判が多く、安倍政権は一時ストップにした。21年現在で、建設業と造船・舶用工業の2業種しか進めない。2021年度から試験を始める予定。(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
→ 2021年 11月に特定技能の2号への移行が全面的になるかもと日経が報道。
外国人就労「無期限」に 熟練者対象、農業など全分野: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE019ZY0R00C21A9000000/
基本は人手不足対策
2010年代に入り、少子化もあり、技能実習生制度では扱っていない人手不足業種からの突き上げがあった。3年~5年で修了し帰国する制度では対応できなくなりつつあったこともあり、拡張か、別のルートかという選択を迫られていた。留学でアルバイトで出来る時間を拡張しろという案まであった。実習だから習得したら帰国する、という技能実習制度の期限や建て前が次第に邪魔になっていったという側面があったと言われている。
また、2010年代に入り、単純労働、特に介護や看護で他国との奪い合いが激化した。最低時給は韓国に抜かれ、台湾や中国でも介護や看護については特別な最低時給が設定されたりなどと、ほとんど同じかやや安いというところにまで来た。介護や看護は欧米諸国との競争もある。賃金の他の細かい待遇も競争の材料として重視され、イメージの悪い技能実習生制度の看板の付け替えも必要だったということがあったのかもしれません。
技能実習制度は「研修という名目で実際は労働力がほしいだけだ!」と批判されてきたが、この&color(Black,antiquewhite){特定技能は最初から「労働力補填」が目的};。最初から本音だからいい制度、みたいなことになっている。実際は技能実習制度がほぼ引き継がれており、開始当初からいろいろと骨抜きになっている。「賃金など日本人従業員と同じ」というのは技能実習制度でも同じだったので、技能実習制度が廃止になって特定技能になれば解決することは、ほとんど無いと考えたほうがよさそうで、結局はきちんと実施されるかが重要で、引き続き監視が必要。
成立までの経緯
新しい制度なのでまずは経緯を簡単に整理してみます。以下、2018年12月の日経の報道より抜粋。
「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に就労可能な「特定技能1号」を与える。最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば資格を得られる。在留期間は通算5年で、家族の帯同は認めない。
さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人には「特定技能2号」の資格を与える。1~3年ごとなどの期間更新が可能で、更新回数に制限はない。配偶者や子どもなどの家族の帯同も認める。更新時の審査を通過すれば長期の就労も可能だ。10年の滞在で永住権の取得要件の一つを満たし、将来の永住にも道が開ける。
大筋この方向でまとめられた。この在留資格を取得するためには職種別の技能試験と国際交流基金日本語基礎テスト(N4相当のネットの試験)に合格するのが条件となった。家族帯同や転職、永住などは、かなり厳しい条件があり、一部は当面は凍結となっている。
特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針の概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai3/siryou2-2.pdf
特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について 閣議決定案 H30 12月25日
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai3/siryou2-2.pdf
2019年施行時に整理された法務省のページ
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00019.html
基本的には他の在留資格の補完としてビザ延長が可能になり、技能の実習という建前が無くなったことで、単に人手不足の業種の追加もやりやすい、さじ加減ひとつで在留資格を与えることができるという、労働人口補填のための調整弁としてのジョーカー的な存在という考え方もあったが、その後の動きをみるかぎりでは、今後就労系の在留資格の柱としたいという意向も見え隠れする。
👉 技能実習生制度は長く海外からも批判を受け、米国の人身取引報告書にも毎年掲載され警告を受けている。
2018年12月可決
自民党、公明党、維新の会の賛成で11月28日に衆院可決で実質決定。細かいことはその後決めることになり、結局、2号への移行は建設と造船のみでスタートとなった。(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
入管法改正案:衆院通過 委員会審議17時間 与党、採決を強行 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20181128/ddm/001/010/147000c
官邸主導でできた制度
特定技能は、技能実習制度のように官庁主導ではなく、第二次安倍政権の官邸周辺で作られたというイメージが強い。目標は介護を中心に30万前後の人手の確保となっている。現在コロナ下で留学も技能実習生も特定技能で居続けることができるよとなっているが、それほど急いで移行しようとは考えていない模様。
現時点では、技能実習制度に代わるものとして作られたというよりは、多様なルートを作ってやるという方針のひとつと言えそう。事実、第二次安倍政権では、介護だけでも、技能実習、EPA、介護、特定技能、留学と、複数のルートで「かき集める」という方法になっている。そのた高度人材や特区など、人手確保の国際競争のためにはなりふり構わなくなってきた感がある。
基本的に安倍政権では「入国の時点でいわゆる永住権を有する者」が移民の定義なので、特定技能が「実質的な移民政策」と解釈するのは早計で、技能実習生制度を国際的な水準ギリギリレベルに改定して、新たなルートを確保したというもの。技能実習制度は消えてもいいし、人手確保的に残ってもいい、というのが本音とみる見方が強い。つまり、特定技能はやはり一時的な労働力の確保という路線は変わらない。
👉 安倍政権は、開始時に移民政策ではないか?と党内からも批判を受け、2号への移行は建設や造船のみに限定した。(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
自民党の「特定技能推し」
2010年代後半から自民党は自由民主党政務調査会の外国人労働者等特別委員会を中心に、特定技能で外国人を入れるという方向で進めている。
詳細は、日本語教育関係の制度と会議を参照。
初期のあれこれ
- 今のところ、2号への移行は建設と造船のみと言われている。(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
- 2019年春の時点では、介護、ビルクリーニング、宿泊、外食、自動車整備は技能実習制制度からの変更は認められない。
- 海外から特定技能で日本に来るケースは介護ぐらいではないかと言われており、実質的には技能実習制制度の延長と、技能実習制度になかったジャンルのための新たな枠組み、という解釈が正しそうですが、どうなるかはまったくわからない。
- 転職は同じ職種に限られ、地方のほうが人手不足なので都会には出ていけなくなる可能性もあるとのこと。
数年経過して技能実習制度に似たものに
特定技能は、制度開始後、ほとんど技能実習生制度と同じものになってきており、日本の職場もほぼ同じなので結局「ちゃんとしたところもあれば、ダメなところもある」ということになっている。日本語教育でいえば、一律でCEFRのA2の基金の試験の合格が要件となっており、介護以外日本語要件がほぼなかった技能実習制度より優れているが、A2では生活するのは簡単すぎ、その後の日本語学習の機会はない。
「日本人と同じ労働条件でやる」ということになっているが、それは技能実習制度も労基法を守ることになっているので、新しいことではない。後述するがブローカーに借金して来日する構造も同じ。
2022年に6万人超に
半数がベトナムからの人で、ほとんどの人が技能実習生からの移行。
特定技能、ベトナム人が6割 入国規制で技能実習から移行進む - NNA ASIA・ベトナム・マクロ・統計・その他経済
https://www.nna.jp/news/show/2348977
懸念されるのは一部の日本語教育関係者にある「身内の恥は晒したくない」みたいな体質で、今後、就労系の仕事が増え、特定技能が「身内」だとみなされるようになるに従って、日本語教育からは(日本語学校への批判が出ないように)特定技能の問題に対して批判の声が出なくなるかもしれない、ということでしょうか。
ただし留学と違って一般企業が中心で、関係している人は学校関係者だけでなく、労基法周辺が中心で外部の目も厳しいので、見て見ぬフリをすれば、社会からも、働く外国人からも、問題に加担している側の人間だとみなされる可能性は高そうです。
基本的なこと その2
制度の全貌の理解は大変なので…
特定技能の関連法案、規定などの文章は大量にあり、すべてを読み、理解するのは難しい。ざっくり書くと…
基本的に
- 海外から日本の企業に直接アプライできるのでブローカーが介在しない(これは後述するが、実際はそうならなかった)
- 日本の受け入れを統括する監理団体のようなものがなく、監理は個別の支援機関が担当する。
- 日本語能力は一律で国際交流基金が担当し国際交流基金日本語基礎テストの合格(CEFRのA2)が条件。
- 試験合格以降、日本に入国後の日本語学習の機会は無い。
- 5年経過後、特定技能②号になれば、家族帯同が許されるケースもある(かなり制限が多く、今のところ建築と造船のみ)(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
- 10年経過後、永住への道がある(ただし特定技能スタートと同時に永住の要件が厳しくなった)
- 転職は可能だが、同業種に限られ、推薦なども必要なので、かなりハードルが高い。
職種は、技能実習制度とどこが違うのかとよく比較される。同じビルクリーングがあったり、農業があったりするし、水産加工も似たような区分があるが、どこがどれにカブっているのかは、はっきりわからない。明らかに技能実習制度から漏れているところを手当として追加された「宿泊」や「外食」もある。両方から漏れたもの(コンビニなど)もある。今後、また拡大解釈されたり、増えたりする可能性も高いので、あまりおいかけず、ボチボチ補足していきます。
以下、法務省から出ている概要のパンフレット的な文書を元に簡単に整理します。
特定技能ガイドブック(法務省)
https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf
法務省から特定技能を含む制度の概要の説明PDFが出ている
「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf
在留資格を得る条件
留学と違い学歴要件などは緩い。基本的に、2010年代以降、大卒でないと長期滞在は難しくなり仕事を得るなら修士以上(日本語教育は博士マスト)となりつつある中、ほぼ中卒でも大丈夫で世界の中でも特異な制度。
技能実習からの以降は、技能実習2号を問題なく修了していることが条件となっている。(がコロナで留学もその他の在留資格からもどんどん入れようということになったのでこの辺は流動的)
いきなり2号を取得するのはできない。1号からの移行のみ。
法律上は日本国内の人と同じ
👉 ただし、技能実習生制度も基本的には以下は同じ。
労働関連の法律で保護されます。正規の労働時間は週40時間で残業は年720時間までなので、年52週とすると、2080+720=2800時間。年収だと、時給1000円なら280万円、時給1500円なら420万円です。
全員正規雇用なので給料制で、平均賃金は15~20万。後述しますが「技能実習2号が終了した時点で経験4年目と同等」というような規定もあります。
社会保険(雇用保険、労災、国民健康保険、介護保険)は全加入。国民年金もしくは厚生年金も加入で、年金は帰国時に全額返済されます。
👉 ここまでの時点で民間の日本語学校の日本語教師より待遇はいいことがわかると思います。労基法や関連法律を守っているか監視する監視機構もありますし。
以下は、受け入れ団体や企業が負担する分です。
- 外国人労働者保険
- 健康診断
- 来日の費用
- 来日後の研修費
- 仕事の技能検定の検定料
外国人技能実習生総合保険(何かあった時に300万くらい保障)は任意。
その他労働関連法の下、同じ条件なので…
- 36協定があれば残業も可能
- 法律通りの割り増しでなければならない。
- 年間720時間、一ヶ月あたり45時間を超える時間外労働ができるのは年間最大6回までというのも同じ。
同一賃金に関する規定など
外国人労働者も同じ労基法の下なので、2020年4月改正の同一労働同一賃金ルールが適用される。つまり同じレベルの日本人従業員と同じというのが原則。
技能実習2号を終了した人は職歴4年目の従業員と同水準。1号特定技能外国人は、技能実習2号を修了した外国人と同程度の技能水準であるとみなされるので、少なくとも技能実習2号(1号から3%の昇給が必要)の給与水準以上ということになっている。ただしこれは賃金規定がある場合に限る。
- 賃金規定がない場合は同程度の日本人従業員と同等。
- 賃金規定がなく日本人従業員がいない場合は同業他社の水準に合わせる。
技能実習制度との比較
技能実習制度の違いで説明されることが多い。転職、永住など明らかな違いはあるが、スタート当初はいろいろとあった違いは、ほとんど同じようなものになりつつある。送り出し国の送り出し機関はほぼ同じところが継承し、日本で働く先もほぼ同じ。
技能実習と特定技能の制度比較(概要)
http://construction-industry-cooperative.or.jp/wp-content/uploads/0012931984.pdf
技能実習制度(改)的な要素
技能実習制度は批判も多く、2010年代に入り、政権批判に繋がっていた。米国の年次報告書での批判だけでなく根強い国際的な批判もあった。これらの批判を受けて作られた外国人技能実習機構もあまり機能せず、それらをクリアする新しい制度への転換が検討されはじめた。というような背景があった。
特定技能は「転職が可能」「家族帯同可能」「永住も可能」「日本語能力もサポート」という国際的な批判をかわすための材料が揃っている。そのいずれも、実態は?なものになっているが、表向き説明可能な制度であることが重要という考え方で作られている。これで国内外の批判を乗り切れるものを作ってしまおうというようなことではないかと思われる。
30万人超の外国人労働者の行き来に関わる制度なので、この新たな制度で利益を得る人達(行政書士や支援機関、これを契機に日本国内の日本語教育への参入に成功した国際交流基金など)にとっては「家族帯同可能」「永住も可能」「日本語能力もサポート」という、建て前上の宣伝文句によって「特定技能はフェアな制度である」と主張できるということが重要で、実際にそう声高に言う人も増えている。技能実習制度を廃止して特定技能に移行すれば、いろんな問題は解決すると主張する。
しかし、今のところ、下の論文「安倍政権の外国人政策」にあるところの
「結局のところ,安倍政権の外国人政策は,高度人材を例外として,就労を主たる活動とする外国人を一時的な労働力の提供者として割り切っている。つまり大枠では,過去の方針を継承してい
る。」
と冷静な見方が正確な理解ではないかと思われる。一件きれいになったように見えるがジャイアンであることにはかわりがないので、技能実習制度と同じくおかしなことが行われないか、監視が必要な制度であることは間違いない。
安倍政権の外国人政策(2017)
http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/700_02.pdf
ただし…仕事のほとんどは「日本の若者が選択しなくなった仕事」であるという大前提があり…
- 転職が可能 → 最初に選択した業種内で同じ業務のもののみ。他業種への転職は不可。
- 家族帯同可能 → 配偶者と子まで。2号からなので、最短でも5年後から。2号への移行のハードルは高い。
- 永住も可能 → 10年経過後に申請できる、「素行」「生計」がほぼ満点じゃないと厳しい。税金の滞納なんかもアウト。申請が受理(平均審査期間は数ヶ月)されるかはわからない
- 日本語能力もサポート → CEFRのA2の国際交流基金基礎テストに合格しないと在留資格を取れない(A2合格レベルではやさしい日本語の理解は無理)。その後の要件は原則無し。職種によっては2号から要件が課されることもある。
と、かなり厳しい生活を10年以上続ける必要があり、いわば&color(Black,antiquewhite){10年以上かけて人権を制限した中で監視され審査が続くようなもの。};他国の移民の議論で出てくるもの(入国時に移民の申請をして認められるかどうか、みたいなもの)とはまったく違う。家族帯同まで行く人は少なく、永住まで行く人が出るかどうか…というところでは。
👉 2019年開始なので最短でも家族帯同の申請が始まるのは2024年、永住は2029年。ただし、技能実習制度からの移行など2号からスタートすることも可能なので早めに要件を満たす人はポツポツ出てくる可能性はある。
👉 永住の資格を得る方法は他にもいくつかあり、投資家みたいな人の高度人材の在留資格では1~3年くらいで永住可能。
受け入れ機関と登録支援機関
2国間の取り決めについて
管理体制の比較
監理と支援
技能実習制度はダメで特定技能になればいいと考える人は技能実習制度の監理団体が管理していない、不正が多いという指摘があるが、技能実習制度では、この監理団体は、非営利法人でなければならない協同組合で、実習生を受け入れる企業を「監理する義務」を負っている。特定技能では、管理する団体、組織そのものが無く、それにあたるのは民間の登録支援機関。この登録支援機関は支援業務をする「法人」で、民間でも自由に参入可能。つまり「民間主導で競争原理を導入すれば解決するだろう」という理屈がベースにある。
監理団体には3ヶ月に1回以上実習実施機関を監査し、必要に応じて当該機関を指導することができますが、登録支援機関にはそういった業務を行う義務はなく、四半期に1回の定期面談、行政への報告業務があるだけ。
技能実習生の制度が機能してなかったのは事実としても、民営化すればうまくいくかは未知数。特定技能の登録支援機関は違反が発覚すれば取り消しもあります。民間は違反すれば継続できないからルールを守るだろうと考える人もいれば、民間の法人である以上は、関係する企業との関係の維持も必要になるので、企業への監視の目は厳しくなりようがないという意見もあります。特定技能は、2019年スタートで、2021年春の段階で3万人前後。メディアもあまり特定技能なのか技能実習制度の人なのか区別がついていない状況で、技能実習生制度は40万人前後で、1993年正式スタートで約30年なので、当然、起きた問題の数は多いです。これからどうなるかをみていくしかなさそうです。
各職種で確保したいとされる人数
海外の単純労働人材確保のためのやり方
今年タイはミャンマーから40万人の労働者を受け入れる予定であると。 pic.twitter.com/GAjg985Wy2
— タキン・ミャンマー太郎🇯🇵🇲🇲 (@myanmartaro) February 3, 2022
東南アジアでの単純労働人材の争奪戦は、特定技能の成立前後に、多く報じられた。特定技能がこの争奪戦の戦略的な切り札的な役割を担っていたことがよくわかる。ライバルとしてあがるのは韓国、台湾、中国、独。
東アジア
日本におけるベトナム人介護人材の行方 ~新たな在留資格に焦点を当てて
「今後、東アジア で 、東南アジアの介護人材獲得競争は激しくなる 様相である 。筆者は、 2018 年 2 月、インドネシアにある高級有料老人ホーム13を併設する介護専門学校を訪問した。「 中国からは その 介護専門学校 に 100 人規模での送り出し要請が届いていた 」(秦 2019 。韓国は 「 2010 年の高齢化率 11.1 %から 2040 年の 30.5 %になるまでに 30 年ほどしかかからず、 日本と似た 超高齢社会の介護人材問題を抱え る であろう 」(秦 2018 )」
欧州
EU内では、比較的自由な移動が約束されていることもあって、基本的にはEU内で確保するという方針があるが、それでも不足気味でドイツなどは一部アジアの国々と2国間協定を結び、アジアから確保するルートを作る動きもある。
欧州諸国における介護分野に従事する外国人労働者―ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、フランス5カ国調査―(2014年)
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2014/documents/0139.pdf
ドイツ
ドイツはセルビア、ボスニア、フィリピン、ベトナムと介護人材確保の協定を結んでいる。さらにインドや韓国、中国などもターゲットとなっている模様。上の調査では2013年の時点ですでに時給は9ユーロとなっており、日本の最低時給より高水準。
ドイツの介護事情
諸外国における介護人材確保の動向確保に向けて
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/sorupi5.pdf
ドイツ、ベトナム人熟練労働者の雇用促進 月給50万円 [経済] - VIETJOベトナムニュース
https://www.viet-jo.com/news/economy/221115123739.html
その他の国
イタリアもアフリカ、フィリピン、中国などから外国人労働者を受けいれたことがあり、スウェーデンも2008年から積極的に外国人労働者を受け入れはじめており、2013年の時点で月給は15~20万の間とのこと。
外国人労働力は介護人材不足を解消しない 大和証券
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/social-securities/20170405_011885.pdf
対象国の法律
原則として、日本と対象国の2国間の協定であり、両国の法律が反映されたものとなるが、日本では労基法が有効であるのと同じく、現地では現地の法律が優先される。
今月1日から労働契約に基づきベトナム国外で労働するベトナム人労働者に関する法律(新法)が施行されるようなのですが、法律に「仲介料を労働者から徴収してはならない」という条文があるようです。 https://t.co/LKqfKy5WtT https://t.co/a94rTQUxgE https://t.co/bGWrkmIe1K
— 元・のぞみ日本語センター/元・のぞみ日本留学センター NOZOMI (@duhocnozomi) January 5, 2022
資格の取得の方法
途中からスタートした制度でもあり、技能実習生制度からの乗り換えだけでなく、ほぼ就労目的で留学で日本に来るケースを是正するために留学から就労へ仕分けるという方向があった。さらにコロナがあり、特定技能はあらゆる在留資格の変更先として利用されるようになっていった。
最初から取得
最初から特定技能の在留資格で日本に来るのは介護くらいではないかと言われていたが、その後、じわじわと増え、2021年6月の時点で約3万人前後となっているが、ほとんど技能実習制度からの移行、もしくは留学など他の在留資格からの移行。基本、資格の変更や一度他の資格で日本に滞在した人が再び来るためのものとなっている。
特定技能1号から特定技能1号へ
各種特定技能の技能試験の受験は自由なので、理屈の上では各5年づつ渡り歩くことが可能。
特定技能1号から特定技能2号へ
当分の間、凍結だが、建設と造船のみ。(→その後21年の11月に他の業種に拡大していくと表明)
2022年4月 はじめての取得
「特定技能2号」の在留資格 中国人の男性が初めて取得 | NHK | 外国人材
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220413/k10013581201000.html
他の在留資格からの変更
2020年1月、法務省は特定技能の要件となっている日本語の試験に関する4月からの規制緩和を突然発表した。
ざっくり言うと「働きたいなら就労ビザだします」という政策。日本語学校の退学者や失踪した技能実習生にまで試験の受験が認められたことで、両方からの特定技能への流入が加速する可能性が出てきた。これによって、技能実習生からの取り込みも増え、留学の受け皿としての日本語教育機関はさらなる縮小を余儀なくされる可能性は大きいと思われる。国際交流基金日本語基礎テストの影響力も増し、当然、結果として試験にパスすれば日本語学習は不要という事態、認識が進む。結果として日本国内の外国人の日本語を学習する権利が奪われる1)傾向も加速することになる。
就労系の制度は人手不足が解消されなければ、条件はどんどんディスカウントされることは確実で、日本語の要件は真っ先に緩和される可能性がある。
法務省:試験関係 【重要なお知らせ】令和2年4月1日から国内試験の受験資格が拡大されます。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00135.html
👉 失踪者、退学、除籍者を特定技能に仲介する業者なども出てくるかもしれない。
その他、特定技能で課される技能試験は日本にどんなビザで滞在していても受験可能なので、合格後、在留資格変更ができればビザを変更できる。
法務省:在留資格「特定技能」へ変更予定の方に対する特例措置について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00195.html
留学ビザから
日本語教育機関に留学ビザで滞在中も特定技能の技能試験は受験可能で、在学中でも在留資格の変更申請はできる。学校が在留資格変更を見越して学生募集をしているかがポイントになる。当然資格変更となれば学費はそこで終わりになるし、入学時のローン契約などがどうなるのか、という問題もある。学校側が必要書類の作成に協力的であるかもポイントになる。
ただし特定技能への変更を前提にした留学は、数年の移行期間を経て、できないようにする方向。
→だったが、退学や除籍者も移行できるとなれば有名無実化する可能性がある。
法務省:日本国とベトナム社会主義共和国との間の在留資格「特定技能」に係る協力覚書(MOC)の交換について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00026.html
技能実習制度から
2020年月から失踪者にも切り替えのチャンスが与えられることになったので、これも事実上、移行へのハードルは試験だけになった。
EPAから
4年EPAで日本に滞在すれば「日本語能力はあるだろうということで」国家試験の結果が合格基準点の5割以上(31回試験では36点)であれば特定技能介護の試験は免除となった。(2019)
住環境の問題
住環境の問題はこれまでも問題だったが、21年の夏の大規模クラスター多発などもあり大きな課題となった。
一人あたり7.5㎡
法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について-」の一部改正について
(一人あたり7.5㎡の記載がある文書)
http://www.moj.go.jp/content/001306062.pdf
特定技能に関しては、技能実習制度や留学から移行して引き続き国内で働き続けられるという施策は進んでいますが、技能実習生制度と同様、健康管理やコロナ関連の追加的なサポート、住環境、日本語、多言語サポートなどに関しては具体的なものは何もありません。
法務省=入管庁
法務省:新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取扱いについて
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00026.html
特定技能に転職の自由はあるか?
同一分野内であっても,使われる技能が異なる業務が複数存在し得る分野があります。そのような分野については,当該外国人が従事する業務に対応する技能を有していることが確保されてはじめて転職が認められる
「転職の自由」とは、自分の意志で今やっている仕事を辞めて、他の仕事を始めることができることなので、それは無いと言える。基本的には、在留資格を取得した技能に関する仕事に限られる。塗装で取得した人がコンビ二はもちろん、とびの仕事に転職することはできない。何かアイデアを得たからと起業することもできない。外食や宿泊などは転職先が多いが、塗装だとか建築関係は同業他社じゃないと無理なので選択肢は狭い。
転職の条件は厳しい
- 今所有している在留資格に関する技能との関連性がある職種のみ。
- 今働いている会社に「特定技能雇用契約に係る届出」と「受入れ困難に係る届出」の2つの文書を出して貰う必要がある。
- 技能を証明する試験の合格証や実習先の研修評価表が必要。
つまり今働いている会社が文書を出してくれる(出すのは義務だが渋って出さない可能性もある)というのが条件なので、関係が良好でないといけないという大きなハードルが存在する。特定技能に関わる企業は技能実習生制度(最近は留学生のアルバイト先も)とほぼ同じなので、建て前上はできても、実態としては転職したくともできないということになる可能性は高そう。
👉 他国の移民に関わる制度でこのような「転職の不自由」があるということはほとんど聞かない。多くの国には奴隷制度という歴史の傷と反省があり、移民には移動の自由、職業選択の自由が完全に保障されなければならないと考えられている。つまりこの点だけとっても特定技能は国際的に移民制度と認められる可能性はない。
転職期間は仕事ができない
転職は勤め先が倒産するなどの場合を除き、自己理由の際は転職するまでにアルバイトができない。在留資格変更許可申請には一般的に数週間とされているが、場合によっては三ヶ月かかることもあり、この間の生活費をどうするかという問題がある。
転職先、地域に関して業界内での規制が存在する
特定技能所属機関による外国人労働者の引き抜き防止に係る申し合わせ
→ 食品産業特定技能協議会によるもの。これはより条件のよい大企業や時給が高く人気がある都会の業者に偏ることを防止するため業界団体が転職に制限を設けることができることを示している。ここは文書をネットで公開しているが(悪いとは考えていないからでしょうけども。裁判になれば移動の自由、転職の自由を侵害するものだとされる可能性が高い)、他の業界でも内々に文書があったり、不文律として共有されている可能性を示す。つまり同じようなことは起きている可能性は高い。
悪質な企業であると法的に認められるハードルは高い
特定技能の転職制度は、悪質な企業から逃げることができると解釈されるが、悪質な企業が悪質だと法的にも認められるハードルは高い。実は、就労系の在留資格に関わる企業の労基法違反率はその他の一般企業の全国平均より低い。もちろん日本語の能力が低く、労基署に申し出たり、裁判に訴えることができないことをふまえた悪質なものが多いが、技能実習生制度や特定技能、留学生が働く職場のどこも同じくらい酷い、ということは言える。
👉 例えば、教案を自宅で作らせて、その時間を労働時間に換算しないのは労基法違反で予備校や専門学校では過去に裁判も行われ、時給に反映するなど改善されているが、1980年以降、労基署に認識され指導を受け、報道されたのは、index.phpがはじめて。
2020年の時点で「労働力補填のために制度を利用している」という点では技能実習、特定技能、留学は同じ。一部の留学生を除き、働く場所もほぼ同じ。2020年の時点で約4000人の特定技能と、25万人が働く技能実習生制度でどっちが就労の制度としてマシかを比べるのも早計。技能実習制度は問題が多いが、だからといって特定技能がいいというわけでもない。マシとは言えるが、マシだと言ってしまうことは就労系の外国人の労働環境のみならず基本的人権の整備に関して根本的な解決を遠ざけることにもなる。
日本語教育関係者は、特定技能は技能実習制度よりはマシだと考え、留学制度には甘く、技能実習制度には厳しいという傾向がある。ただ、日本語教育関係者は、これらの在留資格で日本語教育や試験制度など様々な立場で関与し、利益を受けている立場でもある。制度の優劣を語るなら、制度の「仕組み」と「実態」の2つを知っておく必要がある。これらの全体の知識なしに、特定の制度ばかり批判する、あるいは持ち上げるという行為はポジショントークを疑われても仕方が無い。
永住への道は?
条件
永住の資格を取得するための条件
- 素行が善良であること
- 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- 日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
- 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
- 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
- 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
- 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
*ただし,日本人,永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には,(1)及び(2)に適合することを要しない。また,難民の認定を受けている者の場合には,(2)に適合することを要しない。
以上、入管のサイト(永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定) | 出入国在留管理庁)から引用。高度人材など例外措置はあります。
特定技能ルートでの永住権
- 原則として引き続き10年以上日本に在留していること。
- ただし、この期間のうち、就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していること。
- 「技能実習の期間」と「特定技能1号で働いていた期間」は、「引き続き10年以上日本に在留し、この期間のうち、就労資格で5年在留していること」の対象ではない
つまり特定技能で来日して最初の五年(1号)は加算されないので、普通は15年かかることになる。
しかし、特定2号の申請は雇用主、仲介者の書類などが必要(しかも同じ地域、同じ業種であれば、かなり狭いコミュニティによる審査となる)なのでこれが事実上の内申書みたいなものになりそう。永住までの10年超の間、ちょっとでもトラブったらアウトかもしれないし、健康状態などの変化や、身体が弱くて仕事を休みがちだとおそらく認められる可能性は低いというかなり高いハードル。この政策を作った政権も世間の反対の声に押されて「しばらくは2号へ進む道は凍結」と言っており、世間の風向き、政権のさじ加減で変わる可能性があることも懸念材料のひとつ。
永住権取得の条件はまた別
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan50.html
ただ、今の政権では当分2号への移行は認めないとのこと。いずれにしても、ここ5年くらいで決まったことは、すぐに変わる可能性があり流動的。ここもあまり細かいことを書きません。きちんと情報をアップデートできるかはわからないので。上に書いてあることは参考程度にして、最新情報を検索して確認してください。
移民の比率は日本は約1.6%。5万人増えてもほぼかわらない。欧州は10%くらい、米国は約15%、カナダは20%超。 https://finance-gfp.com/?p=5635
👉 この特定技能がスタート前の2017年の数字で、申請して永住の権利を得ている一般永住者は約75万人おり、ここ数年、3.5%、年2~3万人くらい増えている。特定技能は2024年までの5年で25~35万人を見込んでいるとのことなので、30万人として、このうち仮に5%が永住者となっても5年で15000人。家族が来て3倍として45000人増えるだけ。(多分希望するかもわからないし、ハードルも高いしで、10年を経て永住申請までいくのは5%もないのでは)
永住権を希望する人は何人いるか?
2021年の時点で、国も日本語教育関係者も数えたことがないのでハッキリしない。ざっくりと言えば、留学生(30万人)と技能実習生制度と特定技能(45万人)だけで、75万人で、この人達はほぼ日本語のレベルは0に近い形で来日する。永住者など、すでに住んでいる人で日本語学習のサポートが必要な人は10万人以上はいて、その他の在留資格で来日し、日本語の学習が必要な人も10万人前後はいるとすると、だいたい100万人±数十万人はいるという計算になる。
児童は義務教育がありますが、就労系の人達(75万人)のうち、15万人くらいは介護、看護の予定なので、ここは技能試験でも日本語要素が多く、事実上、日本語教育はマストとなっていると考えていいと思います。就労系の残りの60万人をどうするか、というのがテーマになります。
特に特定技能の家族帯同、永住となると日本語学習を義務化すべきではないかという議論があります。しかし、現状、まったく日本語学習の機会が与えられていない状況で義務化や試験による足切りからはじめることには違和感も覚えます。なにしろ、この人達は、日本が人手不足で呼んだ人達であって、欧州のように来てしまった人達とは違う。まずは日本語学習機会を整備するのが先です。そして、整備し、受講できる体制(授業時間は就労と同じ時給が支給されるなど)を作れば、受講は促進され、日本語は十分に上達するはずです。
その数も試算してみます。
2019年の時点で技能実習生制度で、41万人で3号(4~5年)まで進んだのは約25000人。3年前の2016年(H28)はだいたい30万人だったので、約8.3%です。60万人の8.3%は、49800人、4年目に進むのが約5万人です。5年目に到達し、6年目、つまり特定技能2号に進むのは(ここからは完全に推定ですが)5年以上労働力を確保するのが特定技能の目的でもあるので、特定技能2号に高いハードルは課せない。とはいえ、4年目までに8.3%に減ってしまうわけですから、特定技能の2号に進むのは多く見積もっても、約20%の10000人くらいと考えてみます。
この1万人のうち、家族帯同や永住を希望する人が何人いるのか?
おそらく10年働くことができれば満足で、貯金と技術をもって帰国する人も多数いるのではと思われます。例えば20才で来日した人は35才ですから、親世代の世話が現実的になってくる年齢でもあります。家族帯同は配偶者と子のみで、親は呼べませんから帰国という選択肢は大きくなりそうです。1割が永住希望するとして、1000人です。この1000人に、来日時から、500時間の無償の日本語学習機会が与えられていれば、10年後には、十分に日本で生活できる日本語能力は身につくのではと思います。特定技能2号に進み、永住が視野になってきて勉強をはじめても、5年ありますから、永住申請ができる10年目にN3をクリアするのは難しくなく、N2も可能ではないかと思います。無理に学習を義務化したり、試験で足切りを設ける必要はないと思われます。
混在することになります
同一賃金に関する規定など
技能実習2号を終了した人は職歴4年目の従業員と同水準。1号特定技能外国人は、技能実習2号を修了した外国人と同程度の技能水準であるとみなされるので、少なくとも技能実習2号の給与水準以上ということになっている。ただしこれは賃金規定がある場合に限る。
- 賃金規定がない場合は同程度の日本人従業員と同等。
- 賃金規定がなく日本人従業員がいない場合は同業他社の水準に合わせる。
2022年のJITCOのアンケート
外国人材受入れの実務者を対象としたアンケート調査結果を公表しました | ニュース・お知らせ | JITCO - 公益財団法人 国際人材協力機構 https://www.jitco.or.jp/ja/news/article/23467/
問題点
日越ともいき支援会
— NPO法人日越ともいき支援会 (@tomoiki2020) January 16, 2022
昨年から支援している農家で働いている『特定技能』の在留資格のベトナムの若者。毎月、定期的にタイムカードを写メして送ってくれる。残業代はもらえずお休みもないそうです。。。一月の食品加工の試験が合格できたら、転職したいそうです。
半年間よく我慢した。。。
偉い。。。 pic.twitter.com/QG4m4Q4kGZ
特定技能のことになると日本語教育関係者のRTやイイネは極端に減る。SNSで大きな影響力を持つ国際交流基金関係者は特定技能の億単位の予算を獲得し日本語教育を担当する当事者であり、その人達からの批判がないことも大きい。ネットには技能実習制度については批判してもいいが、特定技能には遠慮するという不文律のようなものが生まれつつある。
同じ問題が起きても、技能実習生制度のことだと基金の関係者がまっさきにRTで拡散し、あれこれと批判が始まるのだが。。。
直接雇用ではなくなりつつある。
ちなみに私はインドネシアにおいて日本への介護労働者送出しでは、技能実習から特定技能へと移行しました。それはインドネシアでは特定技能で日本側が現地で直接雇用が認められるからできたことで、直接雇用が認められない他国であれば今も技能実習での送出しに関わっていた可能性は高いと思います。
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) January 24, 2022
特定技能は、技能実習生制度と違って、日本の企業と直接やり取りをするので、紹介、斡旋料が生じないという建前だったが、結局、日本とそれぞれの協定で決まるので、技能実習生制度と同じ送り出し機関を通してくれということになるケースが増えている(様々な理由がある模様。送り出し業界からのプレッシャー、直接雇用に対する不安など)。
これだと、借金を背負う構造は変わらない。これが変わらないと借金を背負って来日する構造は変わらない。すでにカンボジア、ベトナムは直接雇用はできなくなっている。その他の国も難しいケースが多いとのこと。
本来、直接契約して日本に行く制度だったが、ベトナムとの間では、技能自習生制度と同様に、送り出し機関を介在することが残ったことで、紹介料などのお金が発生することになった。入管庁の担当者は「直接契約して日本に来ることができるという立て付けではあるが、それぞれの国で自国民がよその国に働きに行く手続きを定めている場合があり、ベトナムもそれに該当する」と述べた。「それぞれの国の法律などで定められている手続きなので、従っていただくことになる。ベトナムと覚書を交換した時点で、推薦者表のフォーマットも別添で載っていた」と述べたとのこと。
外国人労働者の中間搾取温存? 特定技能も送り出し機関介在義務化―ベトナム、カンボジア(米元文秋) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yonemotofumiaki/20210125-00219258
送り出し機関の関与強まる
それぞれの国で(技能実習生制度のように)送り出し機関も儲けさせろという要望が送り出し国から出るようになり、2国間の協定に入れられるような傾向になっているとのこと。つまり、ブローカーの関与、借金を背負う構造もともに特定技能に受け継がれつつある。ほぼ技能実習生制度と同じになりつつある。
モンゴル人を特定技能人材として受け入れるには、特定技能所属機関と人材紹介所がGOLWSと双務契約を結ぶなどモンゴル国内の送出し制度を通す必要があります。カンボジアベトナムタイフィリピンでも類似の制度があり関与を強めてきてます。https://t.co/neqHcp5jpI
— 間瀬英智/外国人VISA専門行政書士 (@hidetomo_mase) December 25, 2021
特定技能制度 両国関係者らが協議
https://montsame.mn/jp/read/285193
技能実習生制度から受け継がれる労基法違反の問題
労基法違反が多いという指摘がされるが、それは特に外国人労働者の環境が特に多いというわけではないことは以下の件を参照してください。ただし、一般の平均と比較していいわけでもないという点に注意。特定技能になったからそれが改善される理由はほとんど見当たらない。
この点は技能実習制度で検証したものがある。
SNSでもいろいろと指摘が。。。
労基法が遵守される制度設計ではないという指摘
特定技能ではOTITのような監視機構の関わりが薄い代わりに、登録支援機関が労基署に通報することになっているが、登録支援機関にとって企業は取引先であるという問題がある。以下の記事でも指摘されている。
&color(#8f8667,White){ 労基法違反などが発覚すれば登録支援機関は労基署などに通報するシステムになっている。「制度上はかなり手厚い保護の枠組みがあります」と杉田弁護士。しかし、現実的に機能するかどうかは別の話であるという。登録支援機関の利用は各企業の任意であり、利用する場合は企業が機関に委託料を支払う。つまり、登録支援機関にとって企業はクライアントとなるのだ。&color(Black,antiquewhite){杉田弁護士は「お客さんのことを簡単に労基署に通報できるでしょうか」と疑問を呈する};。};
【技能実習・特定技能】「外から見えぬところでブラック労働がまかり通っている」 入管法改正から1年、外国人労働のいま(前編)
https://blogos.com/article/446807/
借金を背負う技能実習生の闇 入管法改正から1年、外国人労働のいま(後編)
https://blogos.com/article/447083/
2020年11月に労基署から是正勧告
2020年11月には神奈川で、特定技能の関連企業が残業代未払いで労基署から是正勧告を受けている。制度開始直後で1万人ちょっとの段階ですでにこの種の事件が出ているということは、今後は増えそうな気配。
生活上の問題
妊娠
総合サポートユニオンは、牛タンのチェーン店を経営する(株)ねぎしフードサービスに団体交渉を申し入れました。同社のスリランカ人技能実習生が妊娠した際、同社は産休・育休の権利について説明せず、産休・育休を使って子どもを産みながら働く選択肢が示されず、帰国に追い込まれそうになったのです。 pic.twitter.com/Q4BjJfDpGs
— 青木耕太郎(総合サポートユニオン共同代表) (@kotaro_aoki) October 4, 2021
日越ともいき支援会
— NPO法人日越ともいき支援会 (@tomoiki2020) June 13, 2022
特定技能1年目の妊婦さんからの相談🤰(続き~)
帰国して出産をしたベトナムの若者に対し『退職』したと言っていたのに、会社側は誓約書まで準備していた。誓約書を準備してるのは退職していないってことですよね?意地悪しすぎ。やはり特定技能は問題だらけ。ちなみに自社支援😡 pic.twitter.com/yl2yfai5Zg
妊娠したので解雇、帰国、という問題が増えていると言われています。
入管からも文書が出ています。
技能実習生の妊娠・出産について | 出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/10_00033.html
以下、問題点の検証の連ツイです。
立憲民主党の牧山ひろえ議員の報告によれば、技能実習における技能実習困難時届で、妊娠・出産を理由にしたものが3年2カ月間に、637件(企業単独型10件、団体管理型627件)」、そのうち技能実習の継続意思を有するものは47 件ありました。#技能実習生の妊娠・出産 https://t.co/QV3FfiR8yd
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) September 11, 2021
技能実習の継続意思を表明した47件中、技能実習を再開する技能実習計画の認定が確認できたものは11 件ですので妊娠した技能実習生で実習を継続したいと言えたのは7%で技能実習を再開出来たのは僅か1%ということになります(2017年11月から2020年12月31日までの3年2ヶ月の集計データ)。
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) September 11, 2021
厚労省への国会議員の関連質問
技能実習生の妊娠・出産事案に関する新たな事実が判明。 | 牧山ひろえ 立憲民主党 神奈川県選挙区 参議院議員
https://archive.is/MVHQ0
以上は技能実習生制度の話だが、当然、特定技能でも同じ問題は起こっている模様。これも制度が始まったばかりでまだ数万人規模ですでに起きているので、技能実習制度と同じ比率で同じように起きると考えるのが自然。
日越ともいき支援会
— NPO法人日越ともいき支援会 (@tomoiki2020) May 30, 2022
技能実習を3年間終え、現在特定技能1年目のベトナムの若者。妊娠5か月で登録支援機関に相談をしたら、帰国してくださいと言われたらしい。先程、登録支援機関に連絡がとれ、日本で出産できるように話し合いました。出産費用の心配をしていたが、貯金は500万あるそうです。えらい! pic.twitter.com/IbwU5K9kH5
生活指導の強化?
以下のブログには、現場の関係者の感覚のひとつの例が示されているように感じます。曰く「妊娠してるヒマなんかない…」と「そのポイントにバイアスをかけた目標をけしかけていく」とのこと。はっきりしませんが、基本は妊娠は起きてはならないものとされていることは同じで、成人に対する姿勢としては人権感覚が欠如していることには変わりはないのですが、現場ではこの高校生に対する生活指導的発想が限界なのかもしれません。
妊娠、失踪、転職などトラブルを未然に防ぐ根本的な方法 | PRE-STAGE(win4all and then…)
https://gaikokujin.link/blog/?p=9075
宗教的な習慣
「EPA介護福祉士と勤務中の宗教行為の禁止などについて。」
https://twitter.com/i/events/1473554954560294915
刺青は?
当然制度として禁止はされていないが、会社によってはNGのところも多い。受け入れ団体、企業でOKでも派遣先でNGとなったりする可能性もあるらしい。地域によっては、特にタブーということもなく、来日後に気軽に入れて、それが原因で仕事を失う、ということも起きているとのこと。
22年2月1日にアップされた動画のキャプチャ。(おそらくは)刺青をいれたことを問い詰めるもの。「先日の2年間虐待を受けていたベトナム人技能実習生の動画では、ありません」とキャプションがあり、前月に起き、大きく報道された虐待事件を意識したものだと思われる。
https://www.facebook.com/lovelymomotan/videos/942888679934186
銀行口座開設でできない問題
があるとのこと。
法令で口座振り込みとなっているが、在住期間が6ヶ月未満の外国人は口座開設が出来ないという問題があるとのこと。
⚡️「特定技能の外国人が来日時に銀行口座が作れず、給料の振り込みができないという件のまとめ」
https://twitter.com/i/events/1529614281737895936
建設関係の仕事環境
最新版/職種別・技能実習生失踪者数
— 澤田晃宏(高卒進路記者/ジャーナリスト) (@sawadaa078) February 7, 2022
図にまとめたので貼っておきます。
ほぼ、半分が建設関係。 pic.twitter.com/cURp0CVOLm
圧倒的に失踪率が高く、職場環境でもパワハラが横行していると言われている。暴行など問題が起きるのも建築関係が多く、外国人を雇う資格があるのかが問われそう。
新年会で「症状」手渡す 男性社員の自殺「パワハラ原因」遺族が住宅建築会社提訴
https://archive.ph/HxZsN
特定技能ならではの問題
雇用が不安定?
特定技能に変われば、すべて解決みたい人多いですけど、特定技能は最長5年間在留できる在留資格やけど、一度に許可される在留期間は最長1年、6か月、4か月の場合も。入管法上、雇用期間に特段の定めはなく、気にいらなければ在留期間の更新に協力せず、極論、クビできる。目下、そんな事件が続出中
— 澤田晃宏(高卒進路記者/ジャーナリスト) (@sawadaa078) January 20, 2022
もうすぐ、日本が外国人労働者の「失踪天国」になる日がやってくる…!「特定技能」拡大の落とし穴(澤田 晃宏) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)
国際交流基金関係者のポジショントーク
2018年から、国際交流基金は、特定技能の予算(年間5~10億単位となっている)で『いろどり』を作成し、関連の試験の運用もまかされています。これらは日本語教育の法律が整備される直前で、ほぼ官邸主導で進められました。
2010年代、一般的に批判の対象となった技能実習生制度への批判は基金関係者もポツリポツリと言及していた程度でしたが、基金が本格的に特定技能に関わることになった2017年前後から技能実習生への批判は激しさを増しています。一方で、特定技能に関しては、ネット上で問題点を指摘したり、トラブルの報道に言及することはほぼありません。特定技能は転職も可能で移民を推進する制度で、労働環境も解決するという主張が繰り広げられます。
労基法違反は0でないと許容しない?
#技能実習
— Yoshifumi Murakami (@Midogonpapa) September 3, 2021
労働力輸入ではなく国際協力の制度なので、一件でも労基法違反なんてことがあっちゃいけないんですよ。嫌なら転職できる日本人とは違います。悪いことがいくらでもできるバワーバランスの偏りが問題なんです。
と技能実習制度の労基法違反に関して、厳しく批判している。しかし官公庁でも違反率は30%前後で、日本の企業の平均は70~80%で、実は技能実習制度の関連企業の違反率より高い。ゼロじゃないとダメというのは無理。しかし、「労働力輸入ではなく国際協力の制度なので、一件でも労基法違反なんてことがあっちゃいけない」というのは、国際協力という建前の技能実習生制度はダメだが、労働力輸入の特定技能は多少はOKという理屈が隠れているのかもしれない。このへん、巧妙な前置きが隠されている。
基金の関係者は、花畑牧場のような特定技能ですでに生じ始めている問題についてはほぼ言及しない。しかし、技能実習生制度で問題が多いのは事実でそれを批判することは、SNS上では正義なので、このポジショントークによる偏りは注目されない。
就労の制度は、この労基法違反が起きがちな業種が多く構造は特定技能でもほぼ継承されるので、働く先、企業は同じ。残念ながら労基法違反もすでに起きている。また、労基法違反問題だけでなく、送り出し機関が継承され借金を背負う体質も同じ。技能実習制度と違い、簡単に解雇されてしまう、という特定技能ならではの問題も増えている。
👉 基金は2010年代以降、電通との協力関係も強めていますが、電通の労基法違反についても言及はされない。
「監理団体には実習生の保護責任と、受け入れ企業の監督責任がある」から #技能実習制度 のほうが優れてる?
— Yoshifumi Murakami (@Midogonpapa) January 22, 2022
そりゃ、まともな監理団体ならそうかもしれないけど、実際にはグルになってる事例が多すぎる。受け入れ企業が監理団体を作るんだから、構造として重大な欠陥がある。https://t.co/UU3m9jfqqA
どちらの制度であっても、その犠牲者となる人にとっては、制度の善し悪しや、どちらがマシだということは関係ないと思われますが、AとBを比較して、AのためにBの問題点を悪意でもって拡大解釈する、Aの問題点は語られない、という、いわゆるわら人形的な論法は基金の人はよく使うので、何かそういう研修があるのかもしれません。結果として「どちらがマシか」という雑な議論にしてしまいます。
単純な疑問なのですが、「現場で実際に関わっている」方々は、技能実習制度の問題点は認めつつも、廃止すべきではない、という認識でほぼ一致してるってことなんでしょうか? https://t.co/wYXLBBVbYh
— 磯村一弘 ISOMURA,Kazuhiro (@Honigon3D) January 23, 2022
少なくとも就労系の日本語教育に関わってきた人達は「廃止すべきでない」という主張をしている人は少なく「ほぼ一致している」のもまったく違いますが、ここでも無理矢理な拡大解釈による印象操作が行われます。最初から「けんか腰」でもあるわけで、「そうじゃないよ」とリプライしても無駄だろうと考える人は多そうです。しかし結果として、今のSNSでは人にリプライを送りにくい空気があり、このSNS上の「演説」は誰からも否定されないものとして残るので、これが正しいのだと受け取る人が出てきます。
しかし、それでも、フォロワーが多く、影響力が強い人の発言が誤りであることは問題だからと、誠実に穏やかに「そうじゃないですよ」とリプライする人はまだいます。上のツイートについたリプライをみてもわかるように、現場の人達は、確かに技能実習制度の維持に固執する人達はいますが、少なくとも日本語教育関係者は、どちらが優れているというより、それぞれに問題がある。特定技能は実態としては技能実習生制度に近づいており、制度としては諸手を挙げて素晴らしいとはいえなくなりつつある現状もある。逆に技能実習生制度にはない問題も出てきている、という指摘がある、ということだと思われます。日本語教育関係者は常に、制度の味方ではなく学習者の味方であるべきですので。
現在増えているジャーナリストによる就労関係の外国人の記事の主旨は技能実習制度批判から、特定技能も含めたものに転換しつつあります。当然、「技能実習制度のほうが優れている」ということでも「廃止すべきではない」ということでもないのは明らかで、特定技能が骨抜きにされつつあるよという貴重な指摘もされており、基金のように、制度を支える側が、日本語学習者の立場にたって、特定技能の問題もきちんとすくい上げて、改善に繋げる姿勢を持つことが求められています。日本語教育に関わる人の「ポジション」はあくまで学習者であるべきで、自らが所属する組織ではないはずです。
しかし、就労系の外国人問題=技能実習生であり、特定技能という制度は救世主のように扱われている現状があり、一般の認識も日本語教育関係者の認識もアップデートされないので、(特定技能推しという隠し味の)技能実習生制度批判のネットの投稿は多数のイイネが付く。付くから投稿も増える。ということが起きています。
今後、両制度は統合なのか、共存なのかは、わかりませんが、確実に起こる特定技能の労働問題は、技能実習制度のように、日本語教育関係者からきちんと指摘がでるか、学習者が置き去りにされないか、が心配です。日本語教育関係者は、きちんと学習者の立場にたって物事を見て、考えることができるか、試されそうです。
不明確なルール、抜け道は多いという指摘
技能実習生、特定技能の関係者のFBの投稿:外国人材活用のコンサルタント(技能実習・特定技能) 人財ソリューション ライトブレスという方のコロナ時の投稿では
「技能実習制度を廃止して、特定技能1本化が良いか?「日本人同等以上」という言葉に誤魔化され、ルールが更に明確化されない部分で、入国時のルール、強制解雇などは技能実習制度以上に多発すると思います。」 という指摘が。
転職で時給の高い大都市に集中するという問題
これも特定技能スタート以前から予想されている問題、同一労働同一賃金で解消するという人もいるが、抜け道は多く、ほとんどの会社で施されていない実情がある。
報道など
花畑牧場で特定技能の人達が雇い止め
生キャラメルの花畑牧場 ベトナム人従業員と対立、40人雇い止めか | 毎日新聞
→ 以下の北海道新聞の続報によると特定技能の人達とのこと。
「同社で「特定技能」などの在留資格で働く135人のベトナム人労働者のうち計41人について契約を更新しないとした。」
雇い止め「不当ではない」 抗議に花畑牧場が見解:北海道新聞 どうしん電子版
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/651073
花畑牧場側の反論
「登録支援機関(FUNtoFUN 株式会社)が次の仕事をみつける」とのこと。ここからも特定技能であることがわかる。
http://www.hanabatakebokujo.com/common/pdf/top/20220228.pdf
念のため保存したもの
FUNtoFUN 株式会社のGoogle Mapの口コミ。2には「近隣の日本語学校や現地での採用にはじまり、」とあるので日本語学校もここを通じてアルバイトをしてる模様。拠点は日本各地にある。
特定技能は支援機関が次の仕事を世話することになってるから簡単に解雇できる、という特定技能の制度的な問題点が話題になるべきだったと思いますが、元々評判が悪いところだったこともあってか「酷い会社VS技能実習生」みたいなわかりやすい図式で語られ、記憶され、終わりになってしまったということで残念です。
対立点に関する記事
https://webjapanese.com/dokuhon/files/hanahata01.jpg
花畑牧場ベトナム人「雇い止め」問題 双方の見解に大きな隔たり | 十勝毎日新聞電子版
訴訟合戦となってます。
名誉毀損でベトナム人告訴 北海道の花畑牧場(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/456ec6085bee3ef6dac57b79cc01e3b08168292b
花畑牧場の雇用問題、入管に契約と違う書類 | 共同通信
https://nordot.app/876425499562573824
花畑牧場側が全面謝罪で和解
花畑牧場がベトナム人従業員と和解 問題認め賠償請求も取り下げ:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASQ3M3V53Q3MIIPE005.html
裁判になってなかったら、解雇で賠償請求まで続いていた可能性もあり、怖い事件でした。
→ 連日、大手メディアでもかなり大きく報道されましたが、基金関係者はスルーでした。
技能実習生制度と間違われがち問題
上の花畑牧場の問題は、2022年の2月24日に報道され、その後、メディアでも「技能実習生など」と報じられるケースが多かったこともあり、ツイッター上でも「技能実習生またか!」と騒がれました。しかし、初期報道で「2019年から」「雇い止め」というのをみて「特定技能の可能性があるかも」と考える人は、そこそこいるはずでした。
おそらくこれまでも、この種の問題は技能実習生制度と間違われて報じされ、騒がれたケースが結構あるのではと思いました。
ちょっと検証してみました。
これは、2022年2月23日から3月2日までで「花畑 技能実習」で検索したものです。無数のツイートがありました。
これは同じ期間で「花畑 特定技能」で検索したもの。わずか6件。私どものツイートの後もまったくありませんでした。
北海道新聞が特定技能だと報じたのは03/01 12:45で、花畑牧場が特定技能だと書いた文書を出したのは、2月28日なので、制度をきちんと知っている報道関係者なら、2月28日の時点で特定技能だとわかるはずですし、一般の人も続報を追っていれば、北海道新聞の報道で気づくはずですが、2月28日以降も、3月1日以降も技能実習制度として報じるメディアは多く、ツイッター上では完全に技能実習生制度の問題として語られ続けていました。
3/1(火) 18:14の共同通信の記事でも在留資格には触れられないまま。
花畑牧場、ストライキ事前認識か ベトナム人側「主張違う」(共同通信) - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8a287640f94ecd28262249a822cb0e816cf53f4
これは3月1日から3日のツイート。特定技能と書いたツイートはわずか3件。発信元は2つ。まったく訂正されないままでした。
つまり、第一報がすべてで、誰もその後に関心をもたずに、ただ「また技能実習生が犠牲に!」とツイートする人達は、ほぼすべて、続報を読んでいない。新聞記者でさえわからないままなので仕方ないのかもしれないが、すべてを通じて感じるのは「外国人に対する関心の薄さ」でしかなく残念。共生みたいなことを言う人達も日本語教育関係者も、なんとなく(基金関係者が言うような)特定技能になれば問題が解決するということを信じているのか、そういうことにしたいのか、薄い関心しか示さないのが怖い。働く先はほぼ同じなので、転職できるくらいで簡単に解決するなら、日本中の労働問題が解決しているはずで、そうではないことは明白なのに。
22年の時点で特定技能は5万人近くになっているので、これからこの種の問題は増えるはず。きちんと考える人が増えるかどうかはわかりませんが。
ワタミの参入
居酒屋など外食産業で有名になった企業
「2.学校・送出し機関との運営提携 カンボジア・ベトナム・バングラデシュ(予定)・フィリピン(予定)で、入国前の夢教育、日本語・技術教育を実施。質の高い人材に向けて教育します。」とのこと。
ワタミエージェント 特定技能外国人農業派遣事業
https://watami-agent.com/
W&I DREAM MODEL 株式会社/外国人材サポート
https://wi-dream.co.jp/
ワタミ「夢応援型」人材サービス業参入 カンボジア政府からの期待(夕刊フジ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8214ba991f90766b9cb0fe7944778dbee1e518a5
「子会社ワタミエージェントを通じて、このたび、カンボジアにある「ARS(アジアリクルートスタッフ)」を他社との共同出資から完全グループ化した。」とのこと。
ワタミは2008年、過労死事件で有名となった企業。
ワタミ過労死事件と和解の社会的意義
https://www.jskr.net/wp-content/uploads/2016/09/66cf6bc000d7e91df701ba83b8b5d20f.pdf
送り出し・受け入れ業者のモラルの問題
アカウントを消して、ネットから消える人も多いので、記録として論評抜きで。
□ 2019 ベトナムで炎上
日本人起業家おじさん、ベトナムのスタバでイキる → 現地メディアで報道されベトナム人が激怒 #ひさけん - なんJ
https://yoshidakenkou.net/post-19621/
久田健氏(ツイアカは削除)
ユニクロ退職後に起業とのこと。
https://found-er.com/entrepreneurs/11149/
NewsPicks - 久田 健 https://newspicks.com/user/834802/
□ 2022年11月 ツイッターで炎上
11月11日のツイッター上のやり取りに多くの批判のリプライがあった。その後、拡大した。しかし一週間後には関連投稿はすべて削除。一部アカウントも削除され。ネット上の記録としては消えた。
- 宮本勇樹氏(ツイアカは炎上翌日に即削除)(ベトナム送り出し機関 LACOLI 取締役/日本語教師)(FB https://www.facebook.com/profile.php?id=100076521527914)(https://life.viet-jo.com/column/jellyfish-hr/405 )
- 監理団体設立%技能実習・特定技能コンサル@笹本(数日後に「仲間内のこととは言え」と謝罪ツイートするも1週間後にはそのツイートも含め関連ツイート全削除)(@akiras3)(笹本 晃氏 笹本国際貿易株式会社 https://sasamoto.site/ )
- 元技能実習生監理団体職員j `jinzai5005 (炎上後も言及は無し)(@jinzai5005)(https://gaikokujin.link/blog/)(FB https://www.facebook.com/motokanridantaishokuin/)サイト上では、完全匿名でドメイン管理者もわかりませんが、特定商取引法に基づく情報開示によると、静岡県浜松市の国際人財支援機構株式会社の代表 高井修一氏となっている。FB https://www.facebook.com/shuichi.takai.9 https://www.facebook.com/motokanridantaishokuin/ https://twitter.com/shuichi_takai
日本語教育
2023年にスタートした技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議で決められる予定だが、会議では日本語能力は入国前N5、入国後N4、延長にはN3と、「N基準」でざっくりと理想が語られているが、現場に近い人はそれはハードル高すぎという空気。
国際交流基金が担当
日本語教育は技能実習にあるような来日前の日本語研修に対する助成もなく、来日後の研修もない。次で説明する国際交流基金のテストが来日要件となっており、このCEFRのA2のテストをクリアしたら、国は日本語教育振興基本法の日本語学習機会の義務を果たしたことにしたい模様。日本語教育学会など関連の研究者からの指摘もない。
特定技能の日本語教育については、今のところ海外では国際交流基金が一手に引き受けている。年間億単位の予算を獲得し、教材「いろどり」の作成や国際交流基金日本語基礎テストの実施に使われている。
外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)関連 令和2年度当初予算等について(単位:千円)によると関連の記述は以下のとおり。
単位は千なので、合計、6億3254万1000円とのこと。定期的に開催されるので今後も億単位の予算が投入されつづけることになりそう。
テストの開発、実施、教材(いろどりのことではないかと思われる)、現地の教師育成なども含まれるがほぼ、特定技能の試験といろどりのことがメインと思われます。
国際交流基金の国際交流基金日本語基礎テスト
日本語教育に関しては、国際交流基金日本語基礎テストに合格することが条件だが、ネットでの簡単な試験で、別途、学習時間の確保、その質的保証(有資格者であるかなど)はなく、実質的には人の確保の調整弁として日本語能力のハードルを下げた就労系資格として使われる可能性が高い。日本語教育関係者は日本語教育学会をはじめ就労系の学習者に対して関心は薄く、今後も日本語学習の環境が提供される可能性は低いと思われる。
この試験は、特定技能制度の開始と共に2019年の4月に突然始まった。おそらくは当時の安倍政権とその周辺の特定技能制度の制度設計の人達と共に水面下で動いていたと思われる。この試験で国際交流基金は悲願だった日本国内の日本語教育への参入を許された形になった。(それまでは国内は文科省と法務省、外務省=基金は海外、という「縄張り」があった)
日本語教育関係者へのアナウンスは事後報告のような形で、2019年8月、国際交流基金はこのテストの開発にともない日本で生活するための指標となる日本語生活Can-doというものを公開した。
国内の日本語教育の試験と在留資格との関連付けは、告示校のCEFR採用が有識者会議などを経て2019年末に決まり、その他は日本語教育推進基本法をベースに新たに作られた日本語教育推進関係者会議で議論が2020年にスタートしたが、この特定技能の基金のテストだけは、この議論を経ずに官邸主導で決められたということになる。2018年の6月には、すでに基金で予算化されている。
国際交流基金の野心
今後、10年間で数十万人となり、日本国内の最大のシェアになる特定技能の日本語教育は国際交流基金がコントロールすることになり、そのうちこの試験を足がかりに日本国内の日本語教育への関与も深まる可能性が高い。留学は文科省、就労系は基金という棲み分けで進みそう。
国際交流基金の日本語専門家は特定技能がスタートしたあたりからしきりに「ドイツのように」日本語教育の整備をせよ、と言うようになったが、これはドイツの基金的な組織であるゲーテインスティテュートがドイツ国内の日本語教育を担当しているからだと思われ、国内の日本語教育への進出の野心を隠そうとしていない。
しかし、国際交流基金的な組織(英、西、中、韓など各国あります)、つまり海外の言語の普及の組織が、国内の移民の言語教育を担当する例はドイツのみで、他の国は、海外と国内は別組織でやっている。
基金は国内の生活日本語や就労系の日本語教育の蓄積はほぼ無く、そのほとんどは文化庁にあるのだが、省庁間の力関係と特定技能推しの安倍政権に近かったということで、今回こうなった模様。普通に考えれば、基金の日本語教育は海外専門で、日本国内の生活体験も薄く、日本国内の日本語教育を担当するのは不自然で、本来なら、この試験も厚労省と文化庁がやって、基金はせいぜい試験監督くらいが常識的なセンだったはず。
👉 しかし、文化庁や文科省などで生活日本語をやっていた人達もやさしい日本語の関係者も、昔から、留学と児童の日本語教育には関心があるものの、就労系の日本語教育に対する関心が薄く「そのうち帰る人達」としか考えてこなかった。手を挙げようとしないので仕方ないのかもしれません。
参照枠のA2が基準に(2022)
特定技能における受入れ見込数の見直し及び制度の改善について(令和4年8月30日閣議決定)で、特定技能分野別運用要領の日本語能力水準に『「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるもの』が加わったが、日本語教育の参照枠が独り歩きして意図とは違う形で利用されているのでは?
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) September 16, 2022
就労系の日本語能力
就労系の在留資格の日本語能力は、人手不足の解消の調整弁として使われてしまう傾向が強い。人手不足の際はゆるく、飽和状態となれば厳しくし、場合によっては在留期限の条件にすることで帰国させることもできる。一般論として普通の人の外国人労働者に対する日本語能力に対する要求は高く、国はその世論を利用すればいつでもハードルは上げられるという事情もある。
2018年に技能実習制度の介護に日本語能力試験の4級というハードルが課せられたのを皮切りに、就労系の在留資格と日本語の試験の合格が要件となった。その後、2019年特定技能スタート時のハードルはCEFR A2と、かなり低いところからのスタートとなっている(留学の来日要件は能試のN5というより低い条件となっているが有名無実化しており留学には実質的にハードルはない)。
今のところ、就労系の在留資格で学習時間の確保が決められているのは技能実習生制度の介護の資格のみだが、これも2017年に最初に決めた「来日はN4、来日後1年でN3相当の試験に合格しないと延長せず帰国」だったものは、2019年にどちらも「合格しなくても学習する意志があればOK」とはやくも変更となっている。就労系の在留資格と日本語能力の関係は結局、人手の確保優先で決められる。今後も、省庁よりも政権に意向が強くでそう。この試験が本当に「日本で生活するために必要な日本語能力」を測るものになっているか、「日本語教育推進関係者会議」がちゃんとチェックできるかは不明。現時点では議論の対象外となっている模様。
現時点では、このCEFR A2の試験に合格すれば、日本で生活するための日本語能力は大丈夫ということになっているが、これは「やさしい日本語」の理解も不可能なレベルであり、来日後の日本語教育サポートは不可欠であることは明らか。他国のように500時間程度の無償の日本語学習の保障がないかぎり、技能実習生制度と同じく、日本語教育的にはまともな制度とは言えない。
就労系の人達が、きちんと日本語教育のサポートを受け、今後、国際交流基金が、都合のいい調整弁であることを拒否し、しっかり就労系の人達にとって必要な日本語能力とは何かという筋を通すこと。 また、日本語教育関係者が、就労系の人達に対し、その後の日本語サポートをしていくことが重要。文科省関係者が多い「日本語教育推進関係者会議」が、この基金のテストを含め、就労系の日本語教育にもきちんとコミットしていくかにかかっている。
日本語教育の一線を超える「指導」
普段は足を組んだり大声で話をしているフィリピン人が廊下の隅を体を小さくして遠慮がちに挨拶をして通るようになっていた。日本語教師によれば「そのような態度を身に着けた方が配属先でかわいがられるから」とのこと
— border(HIRAI TATSUYA) (@border0023) July 30, 2022
「東アジアにおける移住ケア労働者の構築」小川玲子https://t.co/bGn487MQt0
「東アジアにおける移住ケア労働者の構築」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsr/70/3/70_241/_pdf