皆さん、こんにちは。日本語教師の早川杏子です。現在、私は一橋大学で留学生に日本語を教えながら、日本語習得や言語研究法などの授業を持っています。
今回は「音」の観点から日中漢字語の類似性についてお話ししたいと思います。日本語と中国語には、「電話」や「交通」など、表記を通じて互いに理解できる漢字語がたくさんあります。そのため、中国語話者にとって、日本語の漢字語は中国語と類似性が高いと感じられるようです。日本語と中国語の漢字語は、そんなによく似ているのでしょうか。ためしに、次の語を発音し比較してみてください。
/kotsu/(日) – /jiao tong/(中)
これは、上の例に挙げた漢字の例「交通」を、日本語と中国語で音表記化したものです。おそらく、よく似ていると感じられた方はあまり多くないのではないかと思います。
もう一つの例「電話」の場合は、次のようになります。
/denwa/(日) – /dian hua/(中)
こちらはどちらかというと似ているという印象を持った方が多かったのではないでしょうか。
このように、日中漢字語には、表記上は同じでも、音にすると日本語と中国語で「似ている」「似ていない」の印象が分かれる単語があります。
表記上、共通するものも多くある日中漢字語ですが、実際、日本語の漢字語のうち、中国語と音韻的に似ている単語と似ていない単語の割合は、だいたいどのぐらいあるのでしょうか。
今回は、「音韻」を通して日中の漢字語を捉え、中国語を母語とする日本語学習者の視点から見て「日本語と中国語の単語って似ているの?」という問いに迫ってみたいと思います。
- 書いた人:早川 杏子(中国語話者のための日本語教育研究会)
- 一橋大学 森有礼高等教育国際流動化機構 国際教育交流センター/言語社会研究科(兼担)准教授。専門は第二言語習得・心理言語学・日本語教育。台湾滞在歴2.5年。
- 著作:「反応時間実験パラダイムによるバイリンガルモデルの検証―中日バイリンガルを対象に―」『外国語としての日本語の実証的習得研究』第4章, 79-100.(ひつじ書房)
「漢字字形の特徴が非漢字圏初級日本語学習者の漢字認識処理に与える影響―漢字学習前後における処理傾向の比較分析―」『データ科学✕日本語教育』第7章, 118-137. (ひつじ書房)