WJ ニュースレター 008 9月からウェブマガジンのスタートと来年出版予定の日本語教材について

webjapaneseの荒牧です。

ご報告が遅れましたが、6月末ですべてのロイヤリティのお支払いが済みました。海外など、一部遅れましたこと、お詫び申しあげます。また、既刊の書籍、すべて国立国会図書館への納本を済ませました。国会図書館への納本は引用可能な文献としての要件を満たした、ということになります。

4月からの値上げにもかかわらず売上部数の減少は今のところないようです。ただ、すでにお知らせしておりますが、出版ビジネスの継続は年々厳しくなっており、一昨年からはいっそう厳しくなりました。なかなか新刊も出せず、私も出版以外の仕事に時間をとられる比率が増えているような状況です。現在、数冊執筆進行中のものはありますが出版はほぼ来年以降になりそうです。

出版の仕事を続けていくために、秋以降、始めることが2件進行中です。皆様がご関心を持ってくださるものであるかはわかりませんが、以下、ご紹介させてください。

 

ウェブマガジンについて

オンライン上の雑誌のようなものです。9月仮スタート、10月正式スタート予定です。Noteのような課金可能なブログ形式です。課金だけ外部サービス利用ですが、場所は、webjapanese.com内です。自前で構築しました。

  • 1記事300円で著者の方には100円をお支払いいたします。
  • 書籍の執筆時と同じくGoogleドキュメントを共有して書くだけです。後のすべての作業(掲載、更新、課金周辺、お振り込みまで)はこちらでやります。
  • 3000字を超えてこれで、とご連絡をいただければ簡単な校正と確認をし私どもで連載更新作業をいたします。数回分書きためも可能です。
  • 文字数が5万字を越えましたらご希望があれば必ず書籍として出版いたします。
  • 学術系の出版物などへの転載、引用は自由です。他社からの出版依頼があれば、そちらを優先していただいても大丈夫です(大手から出版されればむしろ嬉しいです)。
  • 更新頻度はおまかせいたします。月一くらいで定期更新のほうが固定の読者がつきやすいと思います。
  • 連載はできればご専門に関することで通底するテーマのようなものがあれば書籍化する際に具合がいいかとは思います。
  • 私どもでご執筆いただいた著者の方々はいつでも連載を始めることができます。

マガジン自体のコンセプトは基本的に「言語に関することがテーマ」ですが柔軟に対応してまいります。一部、海外在留の方の滞在記なども企画しています。単発の原稿依頼をして書いていただくということではなく、一応、あらかじめ連載としてのテーマを決めていただきます。仮でスタートして、そのうち連載の性格が決まっていくかな、でも大丈夫です。月一3000字のエクサイズをするようなお気持ちでご参加ください。

Officeのページに概要を書きました。Noteよりできることは多いと思います。音声、動画、引用、サイト上での再生などネット上でできることはほぼ全てできます。

https://webjapanese.com/office/member/magazine

 

少しだけコンセプトについて

コロナ以降、オンライン化が進んだとはいえ、言語や日本語教育を研究されている方が直接、世界で活動されている現場の日本語教師や、言語や日本語に興味がある方々に届ける方法はあまりありません。

ネット上で検索して出てくること、SNSやその延長線上にあるもの、セミナーで語られていることは「わかりやすく」「すぐに役立つ」と喧伝されるものが多く、その質も?です。

そういう中で、淡々と、静かに、考えを深めていくような、考えるキッカケやヒントになるようなものが読める場所を作りたいと考えました。もちろん広告は無しです。継続性を考えて有料で、月10万円くらいの維持コストがまかなえる程度の利益が出れば続けて行けそうだと考えています。スタート時の価格設定の300円だと月666記事が読まれないと難しいので、かなり目標としては厳しいですが、月一更新の連載が15件始まれば不可能ではないかなと考えています。

私どものような個人の自費出版規模では、執筆依頼をし書き下ろしで書籍を出版してという(1冊4000円で大学に買ってもらうみたいな専門書の出版社的な)モデルで維持するのは難しいので、このような方法しかないかなと思います。デジタルに強いという個性で生き残っていく道です。ただ、ビジネスモデルとしては雑誌の連載を書籍化してというのは、伝統的なスタイルでもあります。オンラインになっただけです。(国内の出版社は自前でのオンライン有料マガジンは業界事情的になかなかやりにくい事情があるようです)

来月から、少しずつ「こういうテーマでいかがでしょうか?」というメールを差し上げる予定ですが、現在、出版業以外のアルバイト的な仕事に時間をとられ、このプロジェクトの準備で手一杯です。正式スタートの10月までに、すべての方々にお声をかけるのは難しいかもしれません。書いてみようという方、連載のアイデアと共にご連絡いただけると大変助かります。

連載している記事は、学術方面での転載、引用は自由です。私どもからの書籍化前提ですが、他社から出すことになっても問題ありません。原稿料はないのですが、1記事100回読まれれば1万円の収入となり、10回連載で10万円となりますので、人気次第では、原稿料としてはそれほど悪くない額になると思います(とはいえ現実問題、100人の方が課金して読むというのはかなり高い目標ではあります)。出版後のロイヤリティも従来どおり40%です。

お時間がある際に数回分書いて共有しているGoogleドキュメントに「2回目分」などと保存していただければ、こちらで定期的に更新もいたします。やっていただくことは、Googleドキュメントに書くだけです。後は掲載、更新、課金システム、お支払いまで、すべてこちらでやります。

「こういうテーマで連載してみたい」とご連絡いただければ、すぐにGoogleドライブ上に執筆場所を作り共有のご連絡をいたします。

おそらくこれから数年かけて進めるプロジェクトで、私にとっても出版の仕事を続けていくための最後のチャレンジとなると思います。詳細は上のOfficeのページをご覧ください。

よろしくお願いいたします。

(私もICTレクチャー的な連載を始めることを考えています)

 


 

 

2025年1月出版予定の日本語教材について

2025年の1月に出版予定で、去年から準備しています。去年のChatGPT以降のAIの可能性をふまえて「これから必要になるのは」と考えた本です。教材というより学習素材的なもので、必ずしも学習関連とも言えない、かなり特殊な本となりそうです。私どもとして日本語の学習関連で出すものとしては、最後になりそうです。日本語について知るための「ニホンゴ」、ほぼ勉強しないで日本語を使う「Minimum Japanese」があり、日本語を勉強するための素材であるこの本で、日本語関連の三本柱の完結と(勝手に)自称しています。

この本の多言語版も出したいと考えており、ご協力いただける方を探していますので、少し説明させてください。出版前の本のことでもあり、今のところ、以下の内容に関しては出版(遅くとも25年元旦を予定してます)まで内密に願います。

かんたんな概要

サポートありきの本なので特設サポサイトも準備しています。

https://webjapanese.com/nihongo/

ID=authors
Pass=minamihama

日本語の語彙、漢字、文の表現(文型、構文的なもの)をGoogleスプレッドシートで管理して自分の日本語のデータベースを作り、スマホで持ち歩きましょうというのがテーマです。語は3万超、文は1000ぐらい、漢字は3000くらいです。Googleスプレッドシートは、Googleが提供している無料のクラウドサービスで、オンライン版エクセルのようなものです。

語彙は3万語ほど。文・表現(文型的なもの)は、超級レベルまでを含む1000前後、漢字は表外漢字から人名漢字まで3000強のリストを「オマケ」としてつけ(書籍内にダウンロードサイトへのパスを書きます)、書籍はスプレッドシートの使い方の説明だけです。

この「オマケの日本語リスト」は、解説、説明、翻訳はありません。ただリストがあるだけで、それに連番をふり、それを日常生活で使う「必要度(難易度ではない)」で4段階に分けただけです。日本語ノンネイティブなら初級段階で学ぶほうがいいものが「1」次に生活で出てくるという最も広いカテゴリーが「2」、その先のやや高度な「3」。その他の「4」はリスト外としてサポサイトで配布します。

スプレッドシートをご存じの方はわかると思いますが、読者は、このリストを自由にカスタマイズできます。順番も変えられますし、上の1~4の数字も自分用に変更できます。新たな自分のカテゴライズ(勉強用のCEFRや能試の目安、場面、状況、Can-do)などを自分で追加することもできます。固定の連番があるので、他の人と自分なりのカテゴライズをシェアすることもできます。サポートサイトでは、シェアする場所を作る予定です。私ども独自のものも別途配布します。翻訳関数を使った多言語版も作ります。

読者は、書籍でスプレッドシートの使い方を学び、サポサイトからリストをダウンロードして取り込み、眺める、自分の情報を追加して、自分の日本語データベースにするというコンセプトです。

ダウンロードのファイルは以下のようなかんじです。(Officeにアクセスするとファイルをみることができます)

語彙や文の表現のリストは昔、アラマキが90年代からファイルメーカープロでデータベース化していたのものがありまして、それを軸に、日本語関係のコーパスのデータ(
複合動詞レキシコン日本語教育基本語彙データベース など)を参考に追加していったものです。

ここ1年、万単位の語や文表現の整理とチェック、タグ付け(と仮に呼んでます。カテゴライズのことです)手掘りでトンネルを掘るような作業をコツコツやっています。結局、この種のものは、最終的にはニンゲンの判断でタグ付けをするしかないと考えました。ただリスト自体はコーパスによるチェックがあるので、大きな偏りはないと思います。

日本語を使うすべての人が対象です。

この本の対象は「全ての日本語を使う人」です。学習者、教師、日本語ネイティブの間に日本語のレベルのような垣根を作らず、同じ目安で自分の日本語を眺めましょうとい意味も込められています。同じ連番で同じものを共有することに大きな意義があると考えました。曖昧な難易度や、能試やCEFRなどの「教える理屈によるカテゴライズ」もしません。ただ、データを提供し、それを自分でカスタマイズし、学習に使ってもいいし、教える際に使ってもいい。示威的な選択によるものなのでそのまま研究に使えるほどの質はないかもしれませんが、活用はできると思います。ちょっと大げさに言いますと個人にとっての日本語を、教える側の理屈から解放する、みたいな意図があります。学習ありきではなく、知識が多いから優れているというものではないことも込めていきたいです。

日本語学習者は今後、日本語教授法の多様化の時代に中で、これから自分で自分の日本語を管理していくことが重要になりますし、日本語ネイティブでも自分の日本語ポートフォリオを持っていいのではと考えた次第です。ポートフォリオとしての活用も強く意図しています。ポートフォリオはCEFRの文脈で出てきた(?)せいか、Can-do的なものであるべきということになっていますが、(おそらくあまり質が高くない)タスクシラバス主流となりそうな中では、学習項目を軸にした構成のポートフォリオがある意味が出てくるのではと考えています。スプレッドシートの高いカスタマイズ性、クラウド的性格をそのまま使うポートフォリオという点でも先進的ではないかと考えています。学校などで学習者に「日本語ってだいたいこんなかんじだよ」と最初に配布する意義はあるはずです。

基本的にGoogleスプレッドシート利用ですし、Office互換ソフトでもやれるので、本を買ってやり方を学べば、後は無料でやれます。自分の日本語のデータベースを自分のパソコンやスマホで管理し、スマホで持ち運べるということになります。Googleスプレッドシートは、今年、かなり進化して処理速度が増し、翻訳はもちろん、基本処理速度も大幅にアップしたので、3万語のスプレッドシートなら、格安スマホでも、持ち歩いてサクッと参照できます。この機能進化による速度アップも「スプレッドシートをポートフォリオとして使える」と感じた大きな要因のひとつでした。

AIありきのコンセプト

AIの語学学習への活用は、23年の春以来、ちょこちょこ検証してました。

https://webjapanese.com/dokuhon/ai%E7%A0%94%E7%A9%B6_4_%E6%A4%9C%E8%A8%BC

ID=authors
Pass=minamihama

でログインすれば過去の検証を閲覧できます。AIの進化取り込むのではなく、AIによる活用の素材として作るということを考えました。当然、このリスト作りでもAIを活用はしています。基本的には生のリストを提供することが重要で、教材的なカテゴライズ(難易度、場面、状況、Can-doなどシラバス的な要素)はもう無くてもいいのでは、と考えました。ナンバーリングと、実用度だけですが、この2つはAI活用において、かなり重要になるだろうとも考えています。シラバスフリーの教材であり、ポートフォリオでもある、というようなモノを目指しました。

多言語化の協力者を募集しています

日本語関連では「ニホンゴ」も「Minimum Japanese」も、それぞれ類書がない決定版だと思っているのですが、正直売上は厳しいこともあり、この本も執筆者を募る決断はできませんでした。ただ、翻訳版に関しては、私どもではどうにもならないので、出版後に日本語版がそこそこ売れて利益がでそうだということになったらで結構ですので、もしご興味があれば、ということで、以下、ご検討いただければ幸いです。

書籍では本編のほとんどはGoogleスプレッドシートの使い方で「おまけの日本語リスト」についての補足があるだけです。できれば3~5万字以内で抑えようと考えています。つまりかなり翻訳フレンドリーなシンプルな内容です。

日本語版を出しますが、その後、多言語版、日本語教師版なども可能なら出したいと考えています。ただ、ご協力いただける方が必要ですので募集いたします。原稿料は無く、ロイヤリティは10%です。もちろん監修、翻訳としてお名前をクレジットいたします。デジタルが苦手な方だと、おそらくGoogleスプレッドシートの基本的な使い方の知識が必要ですが、それはこちらでレクチャーいたしますし翻訳時もサポートできます。書籍以外でもリストの語彙の自動翻訳のチェックなどもお願いすることになる可能性が高いです。やや多いですが、こちらは出版とは別なので、お時間かかっても大丈夫です。

厳しい条件ですが、本の主旨などにご興味がありやってもいいよ、という方、いらっしゃいましたら、お知らせいただけれるとありがたいです。この件も、こちらからメールでお尋ねすると思います。ご検討いただけると助かります。

多言語版、特に中国語、英語、ベトナム語、ネパール語など日本語学習者が多い言語は、どうしても作りたいので、2025年の間に翻訳をしてくださる方がみつからない場合は、AI翻訳でも(AIやDeepLなどによる翻訳だと断った上で)出版することになるかもしれません。本の内容はほぼGoogleスプレッドシートの使い方の説明で、日本語に関することは無いので、なんとかやれるかもしれません。(あるいは自動翻訳で作ったもののチェックだけでも、やってくださるならありがたいです)

タイトルは「自分の日本語」を予定しています。

ニュースレターは以上です。今月からマガジンの連載に関して、少しづつメールを差し上げると思います。よろしければ、連載をご検討ください。できれば10名くらいの方の連載で始められればと思っています。。。