選挙前の各党の日本語教育政策、外国人政策は「歓迎すべきかどうか」とボンヤリと尋ねて、その回答の文章を外国人フレンドリーかどうかみたいな「採点」を「先生」がするみたいに論じるものが多いです。一般有権者の投票行動のためという建て前で作るとこういう薄味のものになるのは理解できますが、しかし、これはほとんど意味がなく、特に選挙時のこの種の回答は、選挙前の各党の自分の支持者に向けたポエムになるだけです。与党は言えることが少ないし、政権が近づくと野党も言いにくくなる。少数政党や泡沫政党ほど好きなことが言えるという状況も、ある意味アンフェアで、現実味が薄れる要素です。いつもモヤモヤします。
政党別の政策比較では、外国人技能実習制度、移民政策みたいなことは、全然出てきませんが、近い将来、必ず選挙や再編の争点になるはずなので、今のうちに、各議員がどう考えてるか言質をとる意味でも、聞いておけばいいのにと思うんですが。
— webjapanese.com (@webjapanese) December 6, 2014
上の投稿は2014年ですが、実は、2022年までは選挙で外国人政策はほぼ争点にはなっていませんでした。メディアもネットも外国人政策はついでに書くくらいでした。そのせいか、2025年の夏の参院選では外国人政策はクローズアップされたものの、各党、現在もボンヤリしたままです。
2025年の参院選は、少数政党が盛んに外国人政策を語ることにひっぱられる形で、2025年では争点となりつつあるようです。正直、争点になるほどの問題は起こっていないはずですが、少数政党の乱暴な言説についてあれこれ言いたがる人達も多く、売り言葉に買い言葉でネットでやり取りが生じて、結果として常にトレンド入りでバズってしまい、争点化してしまうのは、なんとも残念なことだと個人的には思ってます。。(他国では、国政選挙では、ほぼ対トランプ政権どうするかが争点ですが、参院選ではそこもまったく争点にはならない模様)
この種のものは、一般有権者向けに投票行動の指標として、わかりやすくすると曖昧になるだけですし、ほらこんな酷い回答だと晒すような意図も感じるものもあります。熱狂時(=選挙時)のポエムの添削より、質問ができるチャンスを生かして、具体的な政策を記録として残すことのほうが意義があるように思います。
とはいえ、ほとんどの場合、日本語教育政策を尋ねてもほぼ回答はない(元々持ってない)はずなので、基本センは外国人政策ベースで、なんとなく質問文では、現状をおさえつつ、日本語教育だけでなく、外国人の周辺で働く人達に響くポイントを逃さない質問をしたほうがいいと思います。日本語教師だけだと2万人ですが、就労系の外国人関係者含むとなると、そのバックの外国人を雇用する企業なども数に入るので、多少はプレッシャーも増すような気がします。
参考までに、国内の外国人の数は約350万人ですが、外国人の周辺で働く人の数はあまり語られません。
技能実習生と特定技能の管理関係の団体だけで5000近くあり、留学生が所属する日本語学校、専門学校、大学は合計およそ1000以上、これに外国人が働く事業所の約35万を加えると、外国人周辺で働く人達は100万人を超えるのは確実です。つまり、100万人超の有権者が、外国人政策の影響を受けます。選挙の際は、こういう数も伝えるのは重要です。よくわかってない人は多いので。
就労系や留学の受け入れ先は日本の隅々に広がってます。以下はそれをマッピングしたものです。
以下は、数年前に書いたものをベースに、ざっくり考えてみました。多文化共生についてどう思うかみたいなことではなく、具体的な政策についての考えを問うようなものです。サンプルです。政権担当するならば、これらの外国人政策について、少なくとも方向性は決まってることが重要だ的な前置きで、ところどころ、最低限の政策の策定で、おさえるべきこれまでのプロセスや文書を示しながら(多分、ほとんどの政治家は知らないでしょうから)、例えば…
1)育成就労制度を評価するか?
- ○ 評価する
- △ 要改善
- × 評価しない
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
2)現在、約68万人(令和5年で技能実習生46万人、特定技能は22万人。)の外国人労働が存在する、これをどうすべきか
- ○ 必要に応じて拡大もある
- × 廃止、縮小の方向
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
3)上で×の回答の方、68万人をどう埋めるか?まず大きな方向性としてはは、2つが考えられる。どちらですか?
- 人手不足の産業自体の整理、縮小の方向
- 国内労働力の付け替えなど代わりになる人手を作る。
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
4) 現在に至るまで、就労系の在留資格は、介護と看護以外は日本語学習に国の補助はなく自腹です。一般的に英語圏の国々では同様の政策では500時間程度は無償で学べることになっていますので、500時間を目安としてみます。
- 自腹は継続。試験で足切りすればよい。
- 有償で500時間学習の仕組みを作る
- 無償で500時間学習の仕組みを作る
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
5) 新しくできる育成就労制度では、最初の育成機関の3年があり、次に特定技能1号が5年、特定技能2号(来日8年後)に、それぞれ技能試験などを経て移行できれば原則配偶者と子を呼べます。この制度は
- より緩やかに(例えば5年に短縮など)すべき。
- このままで良い
- より厳しく
- 延長線上で家族帯同を認めるべきでは無い
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
6) 同様に、特定技能2号(来日8年後)から永住申請可能です。この制度は
- より緩やかに(例えば5年に短縮など)
- このままで良い
- より厳しく
- 認めるべきでは無い
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
7)就労系の外国人労働者確保は現在、東アジアの国々に欧州なども参戦し、賃金がほぼ同じであることから、労働環境での整備はもちろん、その先での条件による獲得競争というフェイズになっています。在留資格の取得、家族帯同、永住の3段階でハードルとして日本語能力を課すべきだと考えますか? 日本語能力は、国が主導して作った日本語教育の参照枠において、現在国際的な指標であるCEFRの6段階が目安となっていますので、A1 A2 B1 B2 C1 C2 でお答えください。
- 在留資格の取得 [ ]
- 家族帯同 [ ]
- 永住 [ ]
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
8)「ハードル」として、日本語能力の他によくあがるのが「日本文化の理解」「日本の慣習、ルールの遵守」ですが、今ひとつ曖昧です。具体的にはどういうもので、どうやって理解を深めるのか?の2点を書いてください。
[ ]
9)留学の在留資格は、現在週のアルバイトは28時間になっています。これは国際比較で突出して多いもので、他国はILOの週の労働時間の40時間の半分の20時間以下が目安。それぞれの国の法定労働時間の半分が国際的な基準で、日本語学校のような語学学校は、留学ではなく留学準備的な在留資格として位置づけされ、アルバイト禁止の国が多数派です。留学を就労の補填として利用することについて賛成ですか?
- 賛成 現状のままでよい。
- 要改善 留学のアルバイト時間を国際標準に合わせるべき
- より厳密に国際標準である留学(アルバイト20時間)と留学準備(0時間もしくは経験程度)、就労ルートで棲み分けをはかるべき
選択肢の他にご意見あれば、以下に書いてください。
[ ]
10) 国内の外国人政策について、在留資格別におおまかな方針などを書いてください。また、2019年に出来た日本語教育の法律について改善案があればそれも書いてください。
[ ]
移民の言語政策の国際比較については、こちらも参照してください。
パッと思いついたものだけですが、これくらいの具体的な項目で回答が揃えば、一般の人はわかりにくいかもしれませんが、外国人受け入れ関係者ならば、各党の外国人政策のスタンスの解像度は増すと思います。
8や10は自由回答でポエム化しそうですが、気持ちよく書きたい項目も作っておくのもいいかもしれません。7などは日本語能力を課す前提の質問なのはいかがなものか?という気もしますが、日本語教育に関しては、あまり深い考えを期待できるとも思えないので、パッと回答できそうなものにしました。
多分、5つぐらいに絞って、選択肢を選ぶだけにすること、あと、アンケートを出す主体があまり政治的な色がないことが重要なのかもしれません。制度を含めた現状を書いて「これ当然知ってますよね」と回答をしなければならない空気を醸し出しつつ、言質をとるような厳しいものではなく、おおまかな方向性を問う式にして、選択肢はわりと簡単にする。でも具体的なざっくりとした方向性だけはないと回答できないので、党の方針(そんなもの無い政党もあるでしょうけども)をふまえる必要がある。ぐらいのカンジにするのがいいのかな、という気がします。
この種のアンケートは、選択肢に選べるものが無いとなりがちなので、それ以外を設けて自由記述にする方法もありますが、それは設けたほうがいいのかはわかりません。おおまかな方向性にすれば、回避できるかなとは思いますが、どうでしょうか。
例えば日本語教師の組織があって、会員が数千人いて、現役の教師への影響力があり、国内で3万人の教師がいる、3万人とその周辺で働く就労系の受け入れ組織などにも影響があるアンケートなら回答があるかもしれません。こういう質問でも、わりと無責任に実現不可能なことを言うところは出ますが、それはそれで、実現可能性についての議論になればOKと考えればいいです。この時点でこう回答したが、政権がとれそうだったので、あるいは、議席数が増えてあんまり変なことは言えなくなったから(実は予定通り)路線変更となったとしても、そのプロセスが可視化されるというメリットがありますし、単に、ポエムを見比べるよりはマシではないかという気がします。
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【参考】
移住連の移民政策に関する政党アンケート 2022参院選 https://migrants.jp/news/voice/20220710.html
これは22年の参院選の各党の日本語関連政策と関連の記事です。
ChatGPTに尋ねてみました
「SNS時代は、好ましくない人や組織について言及すればするほど、話題になるという意味、批判の論調や口調がきにくわない、あの人達が批判するならば逆によいのではないか、というようなことで、結果として相手を利するということがあるように思いますが、そういう調査研究はありますか? 政治の世界では、そういうことを利用したマーケティングはすでにあるように思いますが、どうでしょうか。」
SNS批判の逆効果 https://chatgpt.com/share/68671a00-957c-8013-ba36-f52cfbfc1d47