今回は日本語の自動詞と他動詞を取り上げます。中でも、中国語を母語とする日本語初中級学習者が、和語動詞の自動詞と他動詞の使い分けのどこに難しさを感じているかについて紹介します。
動詞の自他は、活用と並んで、日本語のレベルを判定する際に最も重要な要素の1つです。学習者によく見られる代表的な間違いの1つであることからも、学習者にとって日本語の自他の習得は容易ではないと言えるでしょう。
ただし、ここでは単に動詞と助詞の共起に関する誤用について述べるものではありません。なぜならばこの類の単純な誤用は通常辞書を引けば解決できるからです。ここでは、学習者がたとえ注意深く共起する助詞を意識していても、つい間違ってしまう和語動詞はどのようなものか、その背後に学習者がどのような意識を持っているのかについて述べたいと思います。
この回の執筆者
- 書いた人:劉 志偉(中国語話者のための日本語教育研究会)
- 埼玉大学人文社会科学研究科教授。専門は日本語教育・日本語文法研究史・日中言語対照研究。
- 著作:『日本語教師読本シリーズ 33 中国語話者に教える』、「学習過程における「モヤモヤ感」について」(『日本語文法』23、2023)