日本語教師読本シリーズ < ネパール語話者に教える
『日本語教師読本シリーズ 38 ネパール語話者に教える』
ネパールの言語とその言語が日本学習に及ぼす影響はもちろん、日本とネパールに在住するネパール人日本語学習者だけでなく、ネパール在住の日本語教師への詳細な調査を元にした、膨大な資料で語る、ネパール語話者の姿。
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ネパールの言語とその言語が日本学習に及ぼす影響はもちろん、著者自身が行った、日本とネパールに在住するネパール人日本語学習者152名へのインタビュー、ネパール在住の日本語教師3人への詳細な聞き取り調査など、膨大な資料で語るネパール語話者の姿です。
多数の言語が混在するネパールの言語事情や教育制度、家庭ではどんな言語が飛び交っているのか、英語はどの程度理解できると考えていいのか、教室でどういう学び方をしているか、学校での試験はどんな方法が多いのか、増加する日本やネパールでの日本語学習者の事情なども、豊富なデータを元に詳しく解説します。
- 試験重視のネパール社会
- 罰金制度も?宿題に悪戦苦闘する義務教育
- コミュニケーション好きも、内弁慶なネパール人気質
- きちんとやる気を引き出す方法を考える
- 福岡、沖縄、東京での実践例
- 「ネパール人向き」の教材とはどんなものか
- 日本に留学する若者は、どういうタイプの人達なのか
- ネパールで有名な教材の特徴と学習者の教材に対する評価
- ネパール語話者にとって、ひらがな、カタカナは難しくはない。なぜか。
著者紹介
引田梨菜
2013年~日本語教師として日本語学校や大学等で教える。
2014年首都大学東京人文科学研究科人間科学専攻日本語教育学教室博士前期課程修了
現在、専修大学文学研究科日本語日本文学専攻博士後期課程在籍中、共立女子大学国際学部非常勤講師、専修大学国際コミュニケーション学部兼任講師
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第1章 ネパールとはどんな国か
1 ネパールとは
2 ネパールの言語
3 増加する日本語学習者
4 日本への留学を目指す人
第2章 どんな教育を受けて来日するのか
1 ネパールの教育制度
2 ネパールの教育
試験
ネパールの学校
宿題について
3 ネパール国内の日本語教育
言語に対する考え方
留学に対する考え方
受講生
日本語学校の乱立
第3章 日本国内の日本語学校での様子
1 ネパール人気質
福岡の例
沖縄の例
2 漢字指導の例
3 年少者教育の例
4 まとめ
第4章 日本語教材に対する考え
1 先行研究
ネパール人日本語学習者について
日本語教育教材に関する先行研究
2 調査内容
調査協力者
調査内容
3 調査結果
『みんなの日本語 ネパール語語彙訳』について
『分類別 語彙』について
聞き取り調査の結果
4 考察
相違点・互換性
聞き取り調査から
5 まとめと今後の展望
第5章 ネパール語と日本語の文字
1 ネパール語について
2 ネパール語の音素と日本語の関係性
第6章 日本語の知覚について
1 先行研究
2 調査方法
調査協力者
調査方法
3 結果
4 考察
着目する点ごとの考察
正答率による正答・誤答の傾向
5 まとめ
6 今後の課題
第7章 日本語の生成について
1 調査内容
調査協力者
調査対象母音
2 結果
母語話者による母音
ネパール人による母音
日本語母音
3 考察
4 まとめ
あとがき
本編からちょっとだけ…
では、ネパール人日本語学習者は教員側からのアクションに対してどのように感じているのでしょうか。ネパール人日本語学習者に尋ねてみました。
授業中に褒められることについて、みんながいる前で褒められるのは、「嬉しい!だけど、少し照れくさい・・・」というような感覚らしく、やはりシャイな面が前面に出ていると思われます。逆に叱られることに対しては、「叱られてしまって恥ずかしい・・・」という気持ちを持ちつつも、同時に「頑張らなきゃ!」という気持ちにも…
ネパールの教育において、試験は非常に重視されています。1クラスのときから、テストは全て記述式で行われていて、日本のようにマーク式や選択肢のある問題はありません。
試験の中でも特に重視されている試験は、中学校卒業や高等学校卒業に値する資格を取得するためのもので、ネパール全土で共通の問題が行われています。それ以外に進級するための試験も行われますが、学年によって、学年ごとのもの、地域ごとのものと行われ方は様々なようです。
このように、ネパールでは試験が重視されているため、普段の授業から試験のための知識詰め込み型の授業が展開されていて、この試験に合格する生徒が多い学校がネパールでは人気の高い学校となります。ネパールでは、これらの試験に応じて、将来が決まりますが、逆に…
このことから、ネパール人日本語学習者は「話す」こととその他の三技能「聞く」・「書く」・「読む」の認識や作業が一致していない可能性があるのではないかと推察しました。それを明らかにするために、今回は、いわゆる特殊拍のうち長音と促音、さらにメッセージの誤用を踏まえ、拗音にも着目しました。
着目する部分を長音・促音・拗音の3つにした理由は先述したネパール人日本語学習者に挙げられる特徴だけではありません。ネパール国内で公用語であるネパール語では、母音の長短や子音+半母音/j/に関して、文字表記と実際の発音にずれが見られる場合があり、それが日本語の誤用に影響するのではないか、と考えたためです…
今回の調査協力者は以下の通りです。
・日本に在住のネパール人日本語学習者(以下、在日ネパール人とします)
来日後、日本国内の日本語学校で1年3ヵ月以上学習した経験を持つ人、52名
・ネパールに在住のネパール人日本語学習者(以下、在ネパールネパール人とします)
ネパール国内において留学準備のため、日本語教育機関にて、日本語を学習している人、52名
~中略~
事前に東京都出身の東京方言話者である、プロのナレーターの女性に、調査で使用する文を読み上げてもらい録音しました。録音した文は1文につき2回ずつ聞かせ、長音・促音・拗音を含んだ語である必要箇所のみを書き取ってもらいました。音声は1つの問題につき、2回ずつ流れます。調査協力者が1つの問題の答えを書き終わってから、次の問題の音声を流すようにしました。また、問題の順序による正答率の偏りを避けるために、流れる文の順番はランダムに並び替えています。
書き取る語とそれを含む文は以下の通りです。それぞれの文の後ろにある( )内の語が調査協力者が解答すべき正答です。
表7 知覚実験に用いた文
あそこに ( )が います。(おばあさん / おばさん)
あそこに ( )が あります。(チーズ / 地図)
昨日まで ( ) でした。(良好 / 旅行)
彼と、( )に 一度で いいから ヒマラヤが 見たいです。(一生 / 一緒)
…
著者による参考文献のリストです。本編の巻末にも同じものがあります。オンラインで読めるものはURLがあります。
・外務省「ネパール」
https://www.mofa.go.jp/mpfaj/area/nepal/
・国際連合統計局(2017)『世界統計年鑑2017 vol.60』原書房
・法務省「在留外国人統計統計表」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statics/toukei_ichiran_touroku.html
・日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査」
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/zaiseki/index.html
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https://www.mofa.go.jp/mofaj/toyo/world_school/01asia/infoC10900.html
・引田梨菜(ひきたりな)(2019)「[調査報告]ネパールにおける日本語教育の実態―聞き取り調査を通して―」、『日本語教育研究』、(65)、210-228、長沼言語文化研究所
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・嘉手川隼(かでかわしゅん)(2016)「沖縄県内の日本語学校におけるネパール人学習者の現状と特徴についてーA日本語学校の事例を中心にー」『地域文化論叢』、(17)、37-60
・土屋理恵(つちやりえ)(2013)「“漢字を教える”ということを考えるーベトナム・ネパール人学生に対する初級日本語教育を通してー」『教育研究フォーラム:学校法人タイケン学園グループ研究誌』、(5)、70-78、タイケン
・柳基憲(2017)「ネパール人留学生の実態に関する研究ー福岡で学ぶ留学生を対象としてー」『都市政策研究』、(18)、113-125
・若井知草(わかいちぐさ)(2015)「ネパール人学校の児童に対する日本語学習支援」『人と教育』(9)、85-90、目白大学教育研究所
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👉 上のリンクの短縮URLです。 https://bit.ly/3tPggI8
・引田梨菜(ひきたりな)(2019)「ネパール人日本語学習者に対する知覚実験―長音・促音・拗音に着目して―」、『専修国文』、(105)、43-60、専修大学日本語日本文学文化学会
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・石井溥(いしいひろし)(1986)『基礎ネパール語』大学書林
・野津治仁(のづはるひと)(2006)『CDエクスプレス ネパール語』白水社
・沖森卓也(おきもりたくや)・木村義之(きむらよしゆき)・陳力衛(ちんりきえい)・山本真吾(やまもとしんご)(2006)『図解 日本語』三省堂
・馬渕和夫(まぶちかずお)(1993)『五十音図の話』大修館書店
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・岩切朋彦(いわきりともひこ)(2017)「「働く留学生」をめぐる諸問題についての考察(1)ーグローバルな移民現象としてのネパール人留学生ー」『鹿児島助詞短期大学紀要』、(53)、15-24、鹿児島女子短期大学
・岩切朋彦(いわきりともひこ)(2018)「「働く留学生」をめぐる諸問題についての考察(2)ー福岡市の日本語学校に通うネパール人留学生のエスノグラフィー」『鹿児島女子短期大学』、(54)、37-48、鹿児島女子短期大学
・小熊利江(おぐまりえ)(2002)「学習者の自然発話に見られる日本語リズムの特徴」『言語文化と日本語教育』、(24)、1-12、お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
・嘉手川隼(かでかわしゅん)(2016)「沖縄県内の日本語学校におけるネパール人学習者の現状と特徴についてーA日本語学校の事例を中心にー」『地域文化論叢』、(17)、37-60、沖縄国際大学大学院地域文化研究科
・土屋理恵(つちやりえ)(2013)「”漢字を教える“ということを考えるーベトナム・ネパール人学生に対する初級日本語教育を通してー」『教育研究フォーラム:学校法人タイケン学園グループ研究誌』、(5)、70-78、タイケン
・野津治仁(のづはるひと)(2006)『CDエクスプレス ネパール語』白水社
・本橋美樹(もとはしみき)(2013)「文字表記と音声知覚の関連性ー表記と聴取データの比較からー」『関西外国語大学留学生別科日本語教育論集』、(23)、95-108、関西外国語大学留学生別科
・本橋美樹・石澤徹(もとはしみき・いしざわとおる)(2015)「日本語初級学習者による文字表記の誤りの特徴ー無意味語との比較からー」『関西外国語大学留学生別科日本語教育論集』、(25)、15-23、関西外国語大学留学生別科
・柳基憲(2017)「ネパール人留学生の実態に関する研究ー福岡で学ぶ留学生を対象としてー」『都市政策研究』、(18)、113-125、福岡アジア都市研究所
👉 開く時にクリックしたところをもう一度クリックすると閉じることができます。
・嘉手川隼(かでかわしゅん)(2016)「沖縄県内の日本語学校におけるネパール人学習者の現状と特徴についてーA日本語学校の事例を中心にー」『地域文化論叢』17、37-60、沖縄国際大学大学院地域文化研究科
・スリーエーネットワーク(2015)『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 ネパール語語彙訳』スリーエーネットワーク
・スリーエーネットワーク(2015)『みんなの日本語 初級Ⅱ 第2版 ネパール語語彙訳』スリーエーネットワーク
・スリーエーネットワーク(2012)『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版 翻訳・文法解説 中国語版』スリーネットワーク
・引田梨菜(ひきたりな)(2019)「ネパールにおける日本語教育の実態」『日本語教育研究』65、210-228、長沼言語文化研究所
・ヘラカジ・シャキャ(2008)『分類別 語彙』カトマンズ:スバスティックアファセット出版
・丸山敬介(まるやまけいすけ)(2008)「日本語教育において『教科書で教える』が意味するもの(特集 教科書で教える)」『日本語教育論集』24、3-18、国立国語研究所
・柳基憲(2017)「ネパール人留学生の実態に関する研究ー福岡で学ぶ留学生を対象としてー」『都市政策研究』18、113-125、福岡アジア都市研究所
・みんなの日本語初級Ⅰ 第2版 翻訳・文法解説 英語版
https://www.3anet.co.jp.np/books/2302/
図7,8,9の画像のカラー版
本編で「黒の円」とされているものが以下では緑で、「グレーの円」とされているものがオレンジになっています。
図8
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👉 本編内4章のQRコードがある一覧は上の4章のところにあります。
👉 書籍内で使った地図です。CC BY SAなので自由にお使いください。
▷ このシリーズには編集部責任編集のオマケの日本語教師読本Wikiがあります。テーマに応じた情報を随時追加&更新しています。