学校の住所や設置者、連絡先など基本データは90年前後から法務省に提出され、冊子で公開されてきたものと同じですが、その他の重要な数字がごっそり抜けており、結論からいうと、情報公開度は著しく下がったとしか言えないと思います。
- 日本語を教える力を示す数字が全カット
- 定員に対する在籍者数がカットで定員充足率がわからなくなった
まず重要なことは、日本語を教える力に関する客観的なデータが消えたということです。学習者やその保護者が学校を選ぶ際に最も重視されるものであるはずです。次に定員はあるものの現在在籍している学生数が消えた。これで定員充足率はわからなくなりました。これは何を意味しているかというと、経営状況です。大学などで最も重視され充足率が下がれば(80%が下限と言われてます)整理の対象になり、100%を数%でも超えると、過剰に学生を入れたとされ補助金カットの対象になります。
教育関係者ではない人は、定員より多い分にはいいじゃないかと考えがちですが、ST比など教育の質における数値が悪化する原因となり、施設の規制なども定員の数を前提の規制なので安全性なども危うくなります。何より、外国人留学生の受け入れでは、定員オーバーで学生を集めるだけ集めて~という問題が過去に多かったこともあり、経営状態だけでなく、その学校の受け入れ姿勢が問われる部分です。
これらは、すべて学習者とその保護者にとって最も重要な数字で、かつ学校で働く教職員にとっても、その学校の健康状態、本音の経営姿勢がわかる部分でした。代わりに増えたのは、認定の提出時に書かれた「学校側の作文」です。
新規校は元々データがないので、古めの学校で比較してみます。与野学院を例にとってやってみます。
2017年
2017年の文科省公開データがあるのは
平成29年度日本語教育機関における外国人留学生への教育の実施状況の公表について:文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1382482.htm
です。
現在も公開されているファイル
2017年中は、このPDFの英語版も公開されていましたが、1年後に公開停止となっています。理由は明らかにされていません。
2024年
情報があるページは以下です。
認定日本語教育機関案内
https://www.nihongokyouiku.mext.go.jp/top/guide-japanese-language-institution
与野学院のページは
https://www.nihongokyouiku.mext.go.jp/top/guide-japanese-language-institution/detail?certification_number=20241110003
です。
以上です。
認定の際の文科省の「ご指導」
これも公開されています。
認定日本語教育機関の認定結果:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1420729_00017.htm
与野学院のページは以下
https://www.mext.go.jp/content/20241030-mxt_nihongo01-000038503_1.pdf#page=2
日本語教育の参照枠を含む一連の認定法への対応にあたり、他の教員の指導を行うのに必要な知識・技能がやや弱いように思われる。
今後も参照枠や日本語教育の最新の動向把握に努めること。これまでの教育内容から移行して今回の教育課程の内容を実施をする中で、カリキュラムについては語彙文法等の言語知識獲得やJLPT重視のものから行動中心アプローチに寄せていき、評価方法についてはルーブリックの導入やパフォーマンス評価・ポートフォリオ評価・ピア評価などを各レベルで導入するなど、引き続き見直しを進めることが望まれる。
と「指導」があるものの認定はしたという経緯のようです。
多言語化
ちなみに2014年の10月の時点では翻訳は自動翻訳。英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、ベトナム語のみです。ネパール語は無し。
翻訳を選ぶと、以下のような断りがでます。
The following pages are translated by a machine translation system.
Note that the machine translation system doesn’t guarantee 100% correctness.
Some proper nouns might not be translated correctly.
与野学院の理念の翻訳は以下のとおり
1、基本理念:日本語教育を通じ、学生・教職員の幸福を追求し、地域・社会に貢献する。
2、教育目標:①バランスよく幅広い日本語力の習得、②日本社会の習慣の理解を深め、日本社会への適応力を養う。
1. Basic philosophy: To contribute to the community and society by fostering the well-being of students, faculty, and staff through Japanese language education.
2. Objectives of education: 1) To acquire a well-balanced and broad range of Japanese language skills, 2) To deepen understanding of Japanese social customs and develop adaptability to Japanese society.
かなり酷い英語だと思います。認可されるための日本語の文章なので、どの学校の理念も翻訳される前提になっていないのが原因だと思います。
ちなみに、90年前後から法務省が毎年告示校に提出を求め冊子で出版されていたものがあります。この法務省提出データの出版を委託された民間出版者がさらに使用教科書や教務主任の名前などを尋ねたデータを追加した冊子はアマゾンで購入できます。この冊子の出版も2020年でストップしていますから、2024年以降は、日本語教育機関の国による情報公開はこの文科省のものだけになるのかもしれません。
告示校には、学校の基本データを公開せよという文言があり、基本的には認定でも引き継がれているはずですが、各自の学校のサイトでの公開となっても、守る学校は少なく、守っても、サイトの奧のほうに、ひっそり公開するみたいなケースもあります。また進学実績、能試の合格者数などは提出義務があるのかもわからないままです。
従来の情報公開のルールについては以下を
https://webjapanese.com/dokuhon/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E5%AD%A6%E6%A0%A1#%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%85%AC%E9%96%8B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%A6%8F%E5%AE%9A
ほとんどの日本語教育関係者は、自分が進学する学校を選ぶ際に、学校の定員数や理念で選ばなかったはずです。自分の子供が選ぶ学校でもそうでしょう。理念などに関係なく、入れる範囲でより偏差値が高い学校を選んできたと思います。まして、海外の留学生は保護者の年収の数倍の学費を借金として背負い日本に行く。日本で闇落ちする可能性も当然知っている。その留学先の学校を選ぶのに、学校が書いた(ほぼ横並びの)作文だけで選ばなければならない、ということになってしまっています。