旧有資格者が何人いるかは調査して正確な数字を出すのは難しく、推定するしかないです。そもそも2010年代の後半に日本語教育の法律を作ろうとなるまで、国はほとんど何も管理しておらず、民間の組織も何も調査をしていないので、数字がまったく残ってないからです。特に日本語教師に関する調査は0に近い。どんな教え方で、どんな結果が出たかの調査もほぼ無しです。
2015年くらいまでの日本語教育がどうだったかは、全部推定で言うしかないわけです。
2025年に文科省が再開拓可能な有資格者の日本語教師は10万人くらいはいるんじゃないかと言ったそうですが、これは妥当といえば妥当という気がします。若干多めに見積もるくらいで推定で26万人で、そのうち2025年に現役の日本語教師ではなく、復帰可能な数を出すために、引き算をしていくと、10万人くらいになると思います。
この数字の推定と引き算を考える際に重要な基本事項です
- 資格は大学と試験と養成講座の3つが主
- 大学も養成講座も90年代半ば以降は教師養成ビジネスに力を入れており、雑誌メディアの広告もほと養成講座だった。平均年4000人の有資格者を輩出していたはず。
- 大学は90年前後からのトータルでは年平均3000人あたりか?しかし教師になる人はほとんどいなかったはず。
- 養成講座も90年前後から多めに見積もって年平均3000人?修了者の平均年齢は40~60代。現役で働けたのはせいぜい20年。
- 試験は86年から毎年平均約1500人。年齢は養成講座とほぼ同じ。ただし講座修了とのダブりはかなり多い。
👉 大学での有資格者は調べればだいたい正確な数字が出るはずです。3000人は35年の平均としてはだいたい妥当なところだと思います。大学の日本語教師養成に対するチェックもほぼ皆無だったはずで、私大を中心に通信などで「4大卒と日本語教師の資格をダブルで取得!」などという宣伝をよく見ました。
3つのルートがあり、大学と養成講座のダブりは少ないとしても、養成講座と試験合格での取得のダブりは大きい。で、試験の合格者は数に入れないとして、大学と養成講座だけに絞って年6000人として、90~25年の35年間で約21万人とします。
グレーゾーンの有資格者数は数万人単位でいる
ただ! 国が出す養成講座もその修了者数も文化庁が把握していた講座のみです。これが大きなトラップで、文化庁は2017年にガイドラインを作って審査を始めるまで、日本語教師養成講座の全体象は把握していなかったはずで、当然内容のチェックも無しなので認定、公認みたいなものも無しでした。養成講座関連のの民間の団体も数校だけの小さな組織だけで、養成講座の管理的な仕事をするところは事実上、ありませんでした。日振協やJaLSAは、会員校の養成講座について、ある程度把握していたとしても養成講座のチェックは無く、両者に属していない日本語養成講座は国内外(特に豪州)に無数にありました。
中には短期促成の合宿での取得だとかDVDが送られてくるだけの有名な通信の日本語教師養成講座もありましたが、日本語教育関係メディアにバンバン広告を出していた。どうみても文化庁のシラバス通りに420コマ時間やってたとは思えないコース説明でも「文化庁が認めた正式な資格です」などとうたって募集してました。仮に100時間だったとしても、2017年までは、自分は正式な有資格者だと思い込んでいた人達も多かったはずですし、2017年までに辞めた人は、いまもそう思っている可能性は高いでしょう。これらのグレーゾーンの養成講座の修了者は有資格者かどうか誰もわからないままです。
無法状態だったわけですが、日本語学校はグレーの養成機関でも人手不足の時は雇うことは多かった模様です。日本語学校も、他所の日本語教師養成講座が正式なものかは判定できないですから。2017年に文化庁がガイドラインを作り提出制となった時に、グレーの養成講座のほとんど雲隠れしました。法務省に教師として提出する数のチェックも無いので、2017年の日本語教師養成講座の正統性や有資格かどうかは、完全なブラックボックスです。
文化庁、文科省は一応30年以上、文科省で10年ごとにシラバスを検討していたにも関わらず、管理はしてなかったことは黒歴史なので、このへんは常に曖昧にしています。把握している養成講座の修了者は有資格者と言えても、管理してなかったから、把握していない養成講座の修了者を正式な有資格者じゃないとも言えない(おそらく訴訟などになったら国の管理体制も問題になるでしょうから)。なので、「ムニャムニャムニャ(根拠は曖昧なまま)で10万人くらいじゃないですか?」と言うしかないという事情があるんじゃないかと思います。
このグレーの有資格者を仮に文科省が把握している10万人の半分の5万人くらいいたとして、それを足すと、累計の有資格者の日本語教師は、21万人+5万人=26万人の日本語教師の有資格者がいる可能性があるということになります。
しかし、この記事では、ここ以降、このグレーの5万人は計算からは外します。理由は以下。
- 2015年以降、日本語教師が足りない状況がコロナの2020年初めまで続きましたから、グレーの資格でも採用された可能性は高いですが、5万人の半数くらいは就職は厳しかった可能性がある。
- 2017年の文化庁の養成講座の認定がはじまった際にはじめて養成講座の正統性のガイドラインができたので、ここで大きなフルイにはかけられている。
- 2019年末からのコロナで非常勤中心に多くの教師が解雇されている。この時、専任であっても資格がグレーの人はカットされた可能性があります。非常勤ならなおさら。
- グレーのまま2017年までに日本語学校に就職し、2024年まで継続して働いていて、かつ、登録日本語教師に移行しようという人は、かなり少ないのでは無いかと思われる。
登録日本語教師に移行した際に、どこまでこのグレーの人達が登録日本語教師に応募したのか、これからするのかはわかりません。おそらくは文科省は把握していない講座を旧資格者と見做さないということは(管理をしていなかった以上)できないはずですが、養成講座を正式に修了したかどうかを審査するデータは持っていないはず。2024年の時点で講座の修了者として働き続ていた人は、グレーのまま登録日本後教師の移行措置の対象になったかもしれない。しかし、ここはわかりません。
ということで、一旦5万人は除いて考えます。
👉 このグレーの有資格者は制度の曖昧さの被害者でもありますが、今後、国の日本語教育政策の黒歴史として触れられないままになりそうです。
メモ 日本語教師養成講座の問題
ちなみに、上のグレーゾーンの養成講座だけでなく、大手の養成講座にも問題はありました。日本語教育の言語政策_4_日本語教師の資格関連 [日本語教師読本Wiki] 90年前後から2017年まで でも整理しています。大手の正式な日本語教師養成講座も、2017年以前は、就職率を文科省のガイドラインを守らずに95%などとうたったり(文科省のガイドラインでは大学も専門学校も非正規での就職は就職とみなされない)、420コマ時間なので、正確には時間数は1コマ45分で315時間なのに、「コマ」を省略して宣伝したり(商品表示法違反)、4大卒という要件が2017年に明確になり養成講座を修了しても短大卒、高卒は正式な資格にはならないと決まっても、ウェブ上ではきちんと告知せず、応募した際の募集要項に小さく書くだけでトラブルになったり(文化庁の指導を全然聞かなかったという話です)、と問題山積でした。業界全体が「行儀が悪いところ」だったわけです。
21万人からの引き算
で、ここから、2025年現在、いわゆる戦力になる人がどれだけいるかを推定するために、引き算になります。21万人からの引き算です。
自然減の推定が難しいが… ひとまず、-6万人?
ただし「自然減(死亡、高齢でのリタイア)」の推定は難しいです。つまり一般の仕事の資格などと違って、高齢で取得した人が多いので、有資格者は結構亡くなっているか、高齢で無理な人の比率が高いので、自然減も推定で出すしかないわけです。
仮にやるとして、男女比は女性8割、男性2割。平均寿命が80としてがんばっても70歳でリタイアとすると、90代に大学で取得した23歳は現在58~68歳。養成講座が平均40歳として75~85歳。
つまり90年代に取得した人達はほぼリタイア組と考えて、90年代組を一旦外して、計算すると、2000年から2025年の25年間で概算で出すと6000×25で15万人です。これは多めの推定ですが。
15万人からの調整
15万人は、ひとまず2025年の時点でも登録日本語教師に移行する可能性はあると言えます。
15万人として、もう日本語教師を再び選ばないだろうという人達の数を考えるために、参考になりそうなことは…
- 資格を取得した人のうち大学で取得した人の9割は日本語教師にはおそらくなっていない。
- 養成講座で取得した人のうち3割くらいもおそらく選んでいない。日本語教師の氷河期と言われた90年代は就職自体が難しかった。
これらの人達は旧資格を持っているけれども、再び認定日本語教師になろうと考える可能性は少しはありそうです。資格取得時に日本語教師を「選ばなかった人」は毎年2700人+900人で年3600人なので、2000~2025年の25年で9万人いたということになります。このうち何割が日本語教師をやってみようかとなるかはわかりません。
ここ20年くらい、文化庁の調査では国内の日本語教師数は、専任が5000人で非常勤が15000人。ボランティアが2万人で推移していますから、15万人のうち、現在も、現役で働いている有資格者は2万人くらいです。残りは13万人。
結論
10万人は、まあまあ妥当なセンかもしれません。多いという気はしますが、最大限に言うならば。
👉 これが国語教員免許を持ってる人ならかなり正確な数字が出ます。取得年齢が25前後で、毎年調査があり、定年も決まってますから。日本語教師の資格者の数が推定するしかないし、推定もかなり難しい。推定で出した数が正確かどうかを議論しても意味がないです。
日本語教師読本 Wikiでも少し書いています。