14 就労系外国人の日本語学習 ~技能実習生の事例から~

日本語教師読本シリーズ < 就労系外国人の日本語学習

 

『日本語教師読本シリーズ 14 就労系外国人の日本語学習』

日本の大学で研究活動をしていた中国人研究者による、日本における技能実習生制度と、実習生の日本語学習に関する詳細な調査と報告です。

 

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どんな本?

日本の大学で研究活動をしていた中国人研究者による、日本における技能実習生制度と、実習生の日本語学習に関する詳細な調査と報告です。

コンビニに近くにあったゴミ捨て場に捨てられていた三島由紀夫の本、『NANA』、英和辞書、フリーペーパー、テレビ、職場のおばあさん、親切な人、自分にだけゆっくり話す日本人に気づいた悔しさ、テレビだけで合格したN4、パソコンを買って半年勉強が停滞した人、ネットで知ったニュースサイトの音声ファイルでN1まで行った人。スマホで松屋の新製品の丼の写真をとって単語を覚えた人、スマホのカメラで「メモった日本語」を調べる人、実習先でおばあさんと世間話をして上達した人、中国語を教えるうちに日本語もうまくなっていった人。テレビをうまく利用する人、テレビやネットのせいで勉強出来ない人、読書だけで上達してしまう人、職場のおばあさんと話すことでモチベーションを維持する人、試験に不合格でやる気が切れてしまう人、試験対策の勉強がいつのまにか会話の上達に役立ったり。成功した話、失敗した話。まさに多様な学習者の「多様な学習の正解と失敗」がつまった本です。

技能実習生制度の概要と問題点。技能実習生という忙しい、限られた時間の中で、自分なりの方法をみつけて日本語を学習した人達の記録です。

厳しい環境の中で、日本語を学習する技能実習生の多くの例から、明らかに日本は仕事の待遇だけでなく、日本語を学習する環境の整備を怠っている、ということがわかります。そして、何をやるべきかを考えるための格好の材料となる本でもあります。

  • 来日前の3ヶ月の「日本語漬け」の研修とはどんなものなのか
  • N1やN2に合格するためのとてつもない努力とはどういうものだったのか。
  • 日本の受け入れ先は、どういう日本語学習環境を提供すべきか
  • 日本での就労生活の助けとなる周囲の人の理解やサポートにはどういうものがあったか。

著者紹介

栄苗苗(えい みょうみょう)聊城大学(中国)講師
大阪大学文学研究科文化表現論博士課程終了
博士(文学)

 

中身を覗いてみよう
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目次
第1章 日本で働いている外国人労働者

 そもそも技能実習生とは?
  技能実習生のタイプ
  技能実習生の人数
  技能実習生が生まれた背景
  技能実習の制度の変遷
 1989年 改正入管法
 2009年 「外国人技能実習制度」への改正
 2016年 技能実習法の公布
 2019年 「特定技能」在留資格の設立
技能実習生にまつわる問題
 ①技能実習生の過労死・労災問題
 ②外国人実習生の不当な低賃金労働
 ③本来の受入先と異なる企業に技能実習生が派遣される「名義貸し」
 ④強制貯金・パスポート取り上げ・違法賃金などによる人権・権利侵害
 ⑤技能実習生の失踪

第2章 技能実習生の日本語学習の実況 ~111人のデータから~

 日本語の必要性
 調査概要

第3章 来日前の日本語学習

 4つの事例

第4章 来日後の日本語講習期間

 3つの事例

第5章 技能実習中の日本語学習

 テレビ番組を利用した日本語学習 3つの事例
 日本語教室における学習 4つの事例
 周りの日本人からの学び 4つの事例
 日本語能力試験の受験勉強 7つの事例
 その他の日本語の勉強 3つの事例
 携帯を利用した日本語の勉強 孫さんのケース

第6章 これからの就労系外国人の日本語

 調整弁としての日本語能力
 日本語の能力を向上させるための日本語教育
  ①日本語を勉強する時間の確保
  ②日本語教室の設立
  ③同僚の日本人に聞きやすい環境を作る
 就労系外国人のやるべきこと

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本編からちょっとだけ…

🗨 ②外国人実習生の不当な低賃金労働

外国人研修制度が改定される前、研修手当は月額6万円程度に設定されていたが、そこから2万円から3万円の強制貯金が差し引かれ、さらに、第1次受け入れ機関に支払う「会費」や送り出し機関に支払う「管理費」までもが差し引かれ、外国人研修生には数千円が「生活費」として渡されるだけという場合もあった。そして、時給300円といった最低賃金を大幅に下回る残業代で、長時間の残業が行われていた。ある岐阜の縫製工場では、1ケ月の時間外労働が約200時間あったことも報告されている。



🗨 受け入れ企業に日本語の授業があるのは約25%

回答者111人のうち、「受け入れ企業に日本語の授業がある」と回答した人は28人(25.2%)である。また「地域に日本語教室があるか」という質問項目について、回答は「ある」が25人(22.5%)である。受け入れ企業の日本語の授業や地域日本語教室がある場合、技能実習生が日本語の授業を受けた割合はそれぞれ92.9%(26人)と64%(16人)である。このデータから見ると技能実習生の日本語の授業への参加率は高いと言えるだろう。企業側や地域が技能実習生にもっと日本語の授業などのような学習のチャンスを提供すれば、技能実習生の日本語学習はさらに可能になると考えられる。



🗨 事例1:テレビの番組を通して言葉を積み重ねた

Aさんは日本語の学習は二年目の後半からは、よくテレビを利用して学んだ。

テレビは最初から寮においてあったが、見てもよくわからないから、あまり見なかった。一年半の勉強をして、Aさんは語彙の量も増えるし、日本人とのやりとりも少しうまくなった気がしたので、二年目の後半から、よくテレビを見るようになった。そのとき、彼女が一番好きなのはSMAPとARASHIの番組で、毎週月曜日と木曜日を首を長くして待っていた。Aさんは最初にそれらの番組に出たイケメンの出演者たちに惹かれたが、番組を見ていることは日本語の勉強にもなった。


 

🗨 事例4:社長夫人の日本語授業

王さんが所属する会社の社長の奥さんは、技能実習生の日本語を重視していた。1年目の時、日本語の勉強をさせるために社長の奥さんは新しく来た王さんたち3人に毎日日本語で日記を書くように指示した。王さんたちは書いた日記を社長の奥さんに提出した。彼女らが提出した日記は全部読まれたかどうか王さんはわからない。しかし、もしこのような指示がなかったら、もともと日本語の学習が好きではなかった同期の2人は恐らく最初から日本語の学習を諦めただろうと王さんは思った。


 

参考文献・資料

著者による参考文献のリストです。本編の巻末にも同じものがあります。オンラインで読めるものはURLがあります。

2020年厚生労働省外国人労働者数
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000729116.pdf
JITCO「外国人研修・技能実習制度概説」
http://www.jitco.or.jp/download/data/titp/2010/part01.pdf
外国人技能実習生の実習実施者に対する令和2年の監督指導、送検等の状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20618.html
技能実習制度の仕組み
https://www.otit.go.jp/files/user/docs/abstract_139.pdf
国際交流基金日本語基礎テスト
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/about/index.html#se01
出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組 」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf
「特定技能」資格に関する基本方針
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf
法務省「新たな在留資格「特定技能」について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf
令和3年9月特定技能1号在留外国人数
https://www.moj.go.jp/isa/content/001357709.pdf
令和3年外国人技能実習制度について
https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf


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