日本語教育あれこれ

日本語教育あれこれ 2015年 3月 18日初版投稿 ver.1.1
(大幅な修正をしたら0.1バージョンをあげます。簡単な更新履歴はページの一番下に)

目次

はじめに


外国人技能実習制度の問題や留学生の数の話題、日系外国人労働者やその家族、あるいはEPAなどで来日する看護師、介護士など、いろんな場面で日本語教育の話がでます。
これまで個別の議論は多数ありますが、日本国内であるいは世界で日本語学習のニーズがどのくらいあって、どう対応すべきかという議論はほとんどみません。試みに書いてみました。新たに取材をしたわけではなく、ぼんやりと頭にあるものをベースに、資料をあたりながら、ここ20年くらいの国内の日本語教育の状況を加味しつつ、ネット上の日本語教育政策に関するものをまとめて整理しただけです。ともかく「まとめて整理して俯瞰でみて考える」ということが大事だと思いました。

この記事は、まず日本語教師など日本語教育関係者に読んでもらうことを前提に書きましたが、なるべく事情がわからない人にも読める記事にはしました。ただ「なるべく」です。私は、ライターでもブロガーでもないので、補足説明や意見交換などは期待しないでください。ブログの更新は年に一度あるかないかです。コメント欄はいちおう開けておきますが、細かい対応はできません。この記事は、日本語教育に関して考える際の参考ページになればと作ったものです。wikiのように修正&アップデートしながら掲載を続けていく予定です。間違いや修正すべき点のご指摘をコメント欄経由でいただければありがたいです。(コメントは建設的なものだけ残します)

ライセンスはCC BY ND 2.1です。中身を改変しないことと著作者(webjapanese.com日本語公式ブログ)URL(http://webjapanese.com/blog/j/)を明示すれば、全文、あるいは一部を、あなたのサイトが個人のものであっても商用でも、引用してもOKです。(できればバージョンも明記してください。今後、少しづつ更新していくので)詳細はリンク先をご覧ください。

以下からPDF版がダウンロードできます。

PDF版日本語教育あれこれ
* PDFは大幅な修正があった場合にアップデートします。このWeb版のほうが最新版です。

ウェブ上であるいはSNSなどで、目次のURLを利用して該当箇所の引用をすることができます。商用も可です。もちろん、CCのルールの範囲内で、例えばePubにして配るのも売るのもOKです。

まずは、日本語教育に関して知識がない方、あるいは関係者でも、少し前提として以下が共有できないと混乱するかもという点、箇条書きで書いてみます。

  1. 日本語教師にはいちおう資格があります。現在は日本語教育能力検定試験に合格するか、民間の日本語学校の養成講座や大学などで420時間に相当する授業を受けて修了すること、です。どちらも国が方向付けをして、検定試験は日本語関連の政府系組織が、養成講座は、主に大学や民間がガイドラインに従って行っています。免許のように「それがないと教えてはいけない」というものではなく、現状では、民間の日本語学校などで事実上採用条件となる、という程度のものです。民間の日本語学校、専門学校、大学などでは、その資格を持ってることが必要条件ですが、自治体や地域の日本語教室では資格の有無は問われないことが多いようです。しかしボランティア教室の教師が無資格とは限りません。従って「プロの日本語教師」とは、ひとまず、資格の有無ではなく報酬を得ているか、いないか、で考えるほうがわかりやすいと思います。ここでもそういう意味で使います。
  2. 一般の方はもちろん、日本語教育関係者の間でも認識が危うい人もいるのですが、日本語教師に求められる能力は学習者の違いや目的とはほぼ関係ありません。アフリカで教えるのも、ハーバード大学で教えるのも、東北のどこかの無料の日本語教室で3人くらいを相手に教えるのも、難しさの「違い」はあっても、難度の高低はありません。要求される教師の基本的なスキルは変わりません。これはキレイゴトで書いているのではなく、ホントにそうなんです。むしろ、私には「大学の留学生別科より方言や日常会話のやり取りの理解、説明を反射的に求められる地域の日本語教室のほうが質の高い教師が必要」という考え方のほうが説得力があります。
  3. すぐ後に出てきますが、日本語教師は今、国内で35000人ほどおり正規雇用の教師は1割、非常勤が3割、ボランティアが6割です。ここで「プロの日本語教師」と呼ぶ正規雇用の専任講師と非常勤講師は、大学や日本語学校、公的機関などに限られており、民間の日本語学校では、正規(専任)非正規(非常勤)の比率は3:7で、専任は1500人前後です。プロの日本語教師は絶滅危惧種です。
  4. 国際交流基金の調査では日本語学習者は全体で増えているということになっていますが、文化庁の調査によると国内の学習者数のピークは2009年、国内外の学習者の数の指標となる、日本語能力試験でも受験者数のピークも2009年です。特に能力試験の高いレベルの試験の合格者数は減り続けています。
  5. 国内には永住者を含めて現在200万人くらいの外国人在留者がおり、このうち少なく見積もっても現在48万人に日本語教育が必要だと思われます。この48万人のうち、十分な環境でプロの教師に教わっているのは約14万人です。残りの34万人のほとんど(いわゆる外国人技能研修生や日系の在留者、その家族など)はアマチュアもしくはボランティアの教師が教えています。2015年時点の政府の計画では10年後に日本語学習が必要な在留者は建設、林業、農業、漁業、介護、その家族、などで45万人以上増え、合計で93万人以上になる予定です。
  6. この記事は「統計は何かを示している!」というようなものではありません。私には統計の知識がありません。材料としていろんな資料や数字を集めてなんとなく考えを書いた程度のものです。データは政府が出した資料によるものがほとんどで、検索すれば1ページ目に出てくるようなデータばかりです。その先の試算などは大きく間違っては無いと思いますが、正確とはいえません。算数レベルの間違いも多いと思います。ご指摘いただければありがたいです。あくまで参考程度にしてください。あえて1ページにずらずら書きました。長いです。
  7. この記事は2015年ですが、公的な機関のデータで最新のものは2012年であることが多く、20年くらいしか遡れないことが多いので、主に、1992年、2002年、2012年に焦点をあてています。

*日本語教師の資格の取得は、難しいのか簡単なのかは議論があるところですが、ひとまずキャリアをスタートする準備をする基本知識を習得したという目安にはなっています。ちなみに、420時間は、大学などで取得する公立学校の教職で費やす時間とそれほど変わりません。ただ現状ではかなり問題が多いです。後述。

*日本のように、外国人在留者に対して資格を持った語学教師が教えない、総合的な言語対策がとられていない、というのはかなり例外的です。国の言語政策の国際比較はこのページの最後の資料1でいろいろと紹介していますが、とりあえず、このPDFの最後にある一覧がわかりやすいと思います。http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_272/04_sp.pdf

概要

世界の日本語学習者の数 

日本語学習者は増えているのか?

まずgoogleのここ10年の検索回数をみてみます。

Japanese language
http://www.google.com/trends/explore#q=japanese%20language
* 2015年3月のキャプチャ(記録として)

japanese lesson
http://www.google.com/trends/explore#q=japanese%20lesson
* 2015年3月のキャプチャ(記録として)

世界の日本語学習者数についての調査は国際交流基金が3年おきに行っているものしかありません。調査票を送ったり通知したりして、回収したものやウェブ上のフォームから送信があったものを元にしているとのこと。2012年の調査では学習者数の合計は398万5669人、右肩上がりで増加中とあります。毎回、概要だけ読むと「日本学習者増加中!」となり、そう報道されるのですが、本冊の細かいデータを注意深くみながら、読みすすめると、ちょっと違うことがわかります。2012年の調査の本冊をみていきます。

交流基金の調査の約400万人のうち200万人以上は中学から高校にかけて第二外国語として日本語を勉強している学習者で、このうち9割が東&東南アジアです。これらの国では第二外国語は必ずしも学習者が自由に選択できるわけではない(学校長の方針で第二外国語が決まるなど)こともあり、同調査でも「勉強不熱心」が最大の課題となっています。また「機関の方針で日本語教育を行っていることが多く、必ずしも学習者が自発的に選択したわけではないという事情があると考えられる」と書かれています。特に昨今、飛躍的に日本語学習者数が伸びている東南アジア(ベトナムやインドネシアなど)では政府や州の「指導」で学校に日本語の授業が導入された、というようなことが報じられたりします。(その他、約100万人は大学などで日本語を選択して勉強していて、約56万人が学校制度の外で勉強している人達です)

つまり、400万人のうち300万人以上はそれぞれの国の教育制度の中で第二、第三外国語として選択されて勉強されていて、その「選択」は自分で選んだものではないケースも多く含まれている、ということです。そしてこの世界の学習者における「日本語を学校で選択して学習している」人達の比率は上がっています。
日本語学習者の数は増えているが、いろいろな働きかけの結果、海外の教育制度に日本語が組み込まれ、選択される機会が増えていることが大きな要因のひとつで、少なくとも「世界中で日本語を勉強したいという気運が高まっている」とは言いにくいのではという気がします。

一方で、オーストラリアのように日本との政治的経済的な関係の変化によって極端に減ったりということも起こっています。(2003年は約38万人だったが、2012年に約29万人に)。こういった「働きかけ」が功を奏した国や地域以外では横ばい、自然減が顕著で、1990年代にあった海外の民間の語学学校の日本語コースは減っている、あるいは無くなった、という報告が多く、実質的には21世紀に入ってハッキリと学習者は減る流れになったのではと私はみています。

前述の2012年の調査でも、上位7カ国が突出して多く、7位のタイが約13万人で、8位のベトナムが45000人、20位になると1万人くらいになります。2012年で各地域の国別としてピックアップされていた国だけを対象に単純に国別の日本語学習者増減だけでいうと、、、
増えた国:67
減った国:50
横ばい:3

で、総数で増えているわりには、、、という気がします。全体の数字に影響を与えているのは、一部の、日本語学習者の数が基本的に多く、しかも極端に増えたり減ったりしている国地域の数字がトータルで増えていることが数に出ているのであって、これが、そのまま「世界の日本語教育」の空気を語っているわけではない、というところなのではないでしょうか。

 ちなみにここ数年で学習者が目立って増えた国は、ベトナム、インドネシア(国際交流基金の調査によると、もしかしたら近い将来、第二外国語の選択は自由選択になるかもしれない、という状況だそうです)、タイ、ニュージーランド、ソロモン、トルコ、イタリア、ケニア、コートジボワール、エチオピアなどで、これらの国がその他多数の、横ばいか減少した国々の数を補填している、と言ってもよいと思います。

ここ10年ほど、日本語の教材が売れている、という話は聞きません。中級以降の教材の種類は目にみえて減っています。海外の語学学習サイトは今花盛りですが日本語コースはほぼ見ません。海外の民間の語学学校などで日本語コースは減っているという話のほうが圧倒的に多いのです。21世紀に入って、長年続いてきた大学の日本語学科が閉鎖された、あるいは閉鎖されそうだ、というニュースをよく目にしました。

増加中の400万人のうち、どのくらいの人達が現在進行形で「日本語学習中」だと考えていいのでしょうか?

* 世界の日本語学習者数の過去のデータPDFはこちらに。
http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/result/index.html
国際交流基金は前回(2009)までは調査結果をすべてサイト上で公開してましたが、今回から概要だけ公開で本冊は2000円で買わなければならなくなりました。毎回、発表と共に日本語学習者数の報道がありますが、メディアの方々も記事を書く際は、概要だけでなく本冊も読んでみることをお薦めします。冊子はアマゾンにあります。 
海外の日本語教育の現状-2012年度 日本語教育機関調査より
http://www.amazon.co.jp/dp/4874246087/

日本語能力試験からみた日本語学習者数

「今、日本語を本気で勉強している人」を日本語学習者とするならば、もうひとつの目安に日本語能力試験の受験者数(応募者数ではなく受験者数で考えます)があります。
日本語教育において日本語能力試験の影響力は絶大です。介護や看護など日本での仕事の条件、日本語を使う企業での就職、留学などで必ず日本語能力試験のレベルを問われます。現在、日本語の達成度の唯一の指標で、対外的に日本語を学習したと証明するためのほぼ唯一の手段です。教育課程で日本語を専攻している人はもちろん、一般でも力試しで受けてみる人はとても多いと思われます。

日本語能力試験は、日本語の能力をレベル別に認定する英検のようなスタイル(ただし面接、スピーキングはなく、録音音声の聴解とマークシート方式の試験)のテストです。ここ10年で開催国、地域がかなり増え、2009年から年2回になり試験の回数も増えました。地域別の受験者数のデータがないので、受験者数の増加や広がりに対応したものか、受験者数を増やすための方策かはわからないのですが、地域と回数を増やしても受験者数は減り続けています。

また、2011年から、1234級の4段階だったものが、N1~N5と5段階になりました。数字が少ないものが上級。上の1,2に関しては新旧の方式でもほぼ同じですが、N3は3級よりやや上位という設定になっていて、基礎的な事項の理解が十分かどうかを計るレベルになっています。従来の3級受験者がN3とN4に分けられたと考えるとわかりやすいと思います。
開催国・地域はここ10年での増え方が大きいようです。

能力試験のデータは推移がみられないので、整理してみました。
合格者のデータはこちらにあります。
http://www.jlpt.jp/statistics/archive.html

1992 2002 2009 2010 2011 2012
実施国・地域数 26 39 54 58 62 64
受験者数 68565 242331 768113 607972 608157 572169
N1(1級合格者) 78688 67608 65629 60272
N2(2級)合格者 90772 88437 76647 72410
N3(3級+α)合格者 61262 38009 35390 33013
N4(4級+α)合格者 22951 25038 31685 25031

N3以下のレベルは、2010年から3,4級がN3,4,5と分かれたので、2009年のデータはあまり参考になりせん。
受験者数の歴代のピークは2009年で、以降、開催地域や回数が増えていますが、減少する流れです。(東日本大震災前に減少がはじまっていることも重要な点です)通常、学習者は日本語学校で月金で通って勉強すれば、個人差はあっても三ヶ月から半年でN3レベルに、1年でN1まで行くのは可能ですが、通常は一時学校に通って、その後は自分で勉強したりしながら、勉強を続けるのが一般的です。3~5年くらい継続的に学習が続けば最上級のN1まで到達するかな、というのが平均的なところではないでしょうか。長年学習を継続する人や、継続中の人が学習者としてカウントされつづけるので、新規の学習者が減っていることが数字に現れるのが遅れる、という可能性を考えてみると、N1合格者が減り始めた2009年の年の3~5年前から新規の学習者が減っている可能性がある、ということになります。

日本語能力試験の数を軸に世界の学習者数を出すならば、ここ10年で開催地域を倍近くにして、回数を増やしても、2009年のピーク時で申込者が約76万人、2013年が約57万人。特にここ5年は、学習者は減る傾向がはっきりしてきた。今後、微増はあったとしても、下げ基調は続きそう、今は、下げ止まりがどのへんになるのか見極める段階、というところかもしれません。
また、2012年の57万人に、すでに能力試験を卒業したレベルの人達、試験を受けない人達を足すとしても、進行形の日本語学習者は、だいたい100万人+α、というのがリアルなところかもしれません。(10年後に日本国内で日本語学習が必要な人が93万人になると、国内外ほぼ同数になります)

* おそらく、2015年から16年にかけて、介護や看護などの仕事で日本に来る際の条件として能力試験の合否が問われることになると思います。仮にN3になると、N3の合格者は増加に転じるということが起きる可能性があります。
* 長期的に日本語学習者の数の推移をみる上で指標となるのは、ビザの要件となったり、学校で受けさせられることが多いN4,3あたりよりも、自分の意志で受ける、また学習しないと到達しないN1の合格者数ではないかと思われます。
* 2009年以前のレベル別の合格者の数字は非公開。
* 2015年現在、受験料は国内で5500円。海外では日本円で、2~3000円というところらしいです。学校や企業の補助で受験する人も多いのではないかと思われます。
* 主催は公益財団 日本国際教育支援協会 と国際交流基金。組織の概要はこのページの最後のほうに。
* 日本語能力試験の収支に関しては、よくわからない。ここに少し報告が。http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/dgh/kikin_21/pdfs/seat21.pdf

* ちなみに、中国文化部によると世界の中国語学習者数は2013年で1億5000万人とのこと。この数字も正確にはどうなのかはわかりません。2015年時点でそのくらいいても不思議じゃないような気がします。ただ、他の言語で学習者数を調べているところはあまりないようです。そもそも「**語学習者数」に信憑性を求めるのは難しいということかもしれません。


ただ、この文の目的は、学習者数の正確な把握ではなく、国内の日本語教育がメインなので、以降は、国内の数字を軸に進めていきたいと思います。

国内の日本語学習者の数 

日本に滞在している外国人在留者は何人?

必ずしも外国人在留者=日本語学習者ではないのですが、ひとまず。。。
2014年の法務省の統計によると2014年6月の時点で235万9461人。このうち観光、商用など短期滞在の人が25万1187人なので、長期在住者は、210万8274人となります。このうち永住者が66万4949人(特別永住者が36万3893人)です。(ちなみに、外国人技能実習生制度関連の人は16万2157人。EPA関係は1580人です)

法務省統計
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html

要約版PDF
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000049149.pdf

*日系定住者には特別枠があります。上の数字だと統計上は永住者に含まれるようです。現在は18万人前後と言われています。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_NINTEI/index_zn3.html

この定住者には日本語教育が不十分だという政府の報告があります。
http://www8.cao.go.jp/teiju/guideline/pdf/fulltext.pdf

*外国人研修制度と外国人技能実習制度、は、ちょっと違うようです。いちお、研修制度で勉強して、技能実習制度で仕事をしながらさらに技術を磨く、となってます。今は検索する場合は「外国人技能実習制度」のほうがいいようです。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_NINTEI/zairyu_nintei10_0.html
が、ここでは、同じものとして扱います。

*ちなみに、2020年までに外国人技能実習制度で補填したいとする人の数は15万人、介護人材の不足が30万人と言われてますので合計で45万人です。(いちお事前に基礎的な日本語学習を終えてから来るはずですが、実態はかなり怪しい。いずれにしても、基礎的な日本語研修を終えたとしても、国内で学習を続ける必要はあります)210万人が255万人になるわけです。ちなみに、日本の人口1億2700万人に対する比率は1.6%から2%になります。

→  参考までに欧州の移民の比率はだいたい10%前後、カナダで約20%、

各国の移民人口の推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1171.html

各国の移民人口比率
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1170a.html

OECD International Migration outlook(ソース、動画あり)
http://www.oecd.org/migration/international-migration-outlook-1999124x.htm

国内で日本語学習を必要としている人はどのくらいか?

国内の学習者数に関しては、文化庁の調査があります。文化庁で把握している日本語教育機関に調査票を送って回答があったものの統計です。


http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

H24年のデータ
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/h24/
と過去のデータ
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad198801/hpad198801_2_198.html

を参考にすると

1987 43368人
1978 10889人

1992 69950人
1998 83086人
2002 126305人
2008 166631人
2009 170858人
2010 167594人
2011 128161人
2012 139613人

となっています。ちなみにピークの年は2009年、留学生が10万人になったのは2003年。2012年の留学生数は137756人なので国内学習者数とは2000人程度の差です。

つまり、この数字は、ほぼ留学生と自分の意志で学校に通っている人の数です。「日本語教育が必要な数」とは違います。ここから漏れた数として考えられるのは、まず外国人実習生の16万人、南米などから来て永住権を得ている約18万人です。この計約34万人は今のところ、日本語の学習が必要な可能性が高い。公立小中学校にもすでに1校あたり約2名、合計6万人以上の学習が必要な児童がいると文科省の調査にもありますし、その他、カウントされない学習者(あるいは学習サポートがされるべき人達)はまだいるはずです。在留資格でいえば「家族滞在」の12万人も無視できない今後拡大する枠だと考えられます。

長期在留者の合計210万人のうち、仮に上の34万人だけに絞ったとしても、これに文化庁の13万7756人をプラスして、約48万人が現状で国内で日本語教育を必要としている人達だと、ひとまず、考えられます。(「ひとまず」です。いわゆる中国在留邦人、難民など、まだまだいますが、まず数を仮で確定したほうがこの後、進めやすいので)

これに、10年後の2025年まで不足すると言われている介護士30万人と、オリンピックまでにのべで必要と言われている技能研修生の15万人が、10年後にはプラスされる予定です。介護士は永住までの道が整備されることもあり、「家族滞在」も飛躍的に伸びる可能性があります。もちろん日本の国籍を持っていても日本語学習が必要な人もいます。ただここは、確実に一般の人にもわかりやすく、かつ多くの人に理解が得られる最小限の数字で試算してみます。すると、単純に、今48万人で10年後には少なくとも45万人が増える、合計で93万人、おそらく100万人を越えるのは確実だということがわかります。

国内の総合的な日本語教育施策は、2013年に関係省庁で調整しながら対策を出すことになっています。
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_suishin/
が、第一回の議事録の「関連組織、団体、関連省庁」をみると、とても連携が可能とは思えないとタメイキが出ます。国やいろんな省庁や関連法人にとって「日本語教育」は、総合対策をやると大変だ、ただ、ちょこちょこ予算がとれる便利なテーマだ、ということなのかもしれません。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_suishin/01/pdf/shiryo_1_1.pdf

すこし個別にみてみます。

介護、看護師の日本語教育

看護師は今後もEPAを中心に受け入れを続けていくようです。EPAルートの場合は、日本語能力試験を来日の要件にする方向で進んでいます。ただしEPAでは年間でも百人から千人程度のペースなので、より人手不足が深刻な介護士は技能研修生枠でということになりそうです。

2014年に政府から出された「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」があります。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000073122.pdf

「現場の要請」ではN4でも許可してほしいという声が多い、というような内容です。

これに対し、日本語教育学会は次にような抗議を出しました。
http://www.nkg.or.jp/oshirase/2015/kaichoseimei.pdf

日本語教育関係者は、日本語能力試験そのものの評価はともかく、N3合格が基礎的な能力の証明に最適、というコンセンサスはあるので、N4は不足であることは一致するところかなと思います。N3なのかN2なのかは議論があるところです。これは事前に十分な能力を要件にするか、日本で研修するかという考え方の違いではないかと思います。私は、後述する「日本語教育ネットワーク」のようなもので、実際に働く地域で方言含めた研修をやるほうが効率的だと思います。

それはともかく、介護士、看護師はどんな枠組みで来日するにしても、地域で実際に人と接する仕事をすることになりますから、日本での継続的な日本語研修は必須であることは間違いありません。そして、そのための日本語に関する総合対策はまだないはずです。

介護士が日本に来るルートが技能研修枠になるということは、研修生として実務に就くまで「外国人技能実習制度」の枠組みになることを意味します。多少の考慮はされるはず(希望的観測)ですが、この枠組み自体、まったく日本語教育を重視していないのが心配です。外国人技能実習制度の日本語教育に関しては後述します。

「日系定住外国人」への日本語教育

日系の在留者18万人は、そのほとんどが南米から来た人達です。現在、減少しつつあります。しかしながら無視できない規模の数であり、家庭を持ち定着している人達も多数います。比較的新しい政府の報告では、今のところ下げ止まりとみたのか、「日系定住外国人」と位置づけ、定住を支援していくという姿勢があるようです。

日系定住外国人施策の推進について
http://www8.cao.go.jp/teiju/suisin/sesaku/index.html

日本語教育関係の話の前に基本的なプロセスをざっくりと。

80年代の後半はバブルで人手不足、ビザ免除の協定がある国からたくさんの外国人労働者が来たが、不法就労問題などもあり、80年代後半に方針を転換。1989年に入管法改正で日系の人達に家族を含めた移住を許可することになった。ただ当初は永住前提の移住が目的だったようで「出稼ぎ」は想定してなかったとのこと。
http://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/SO/0040/SO00400L001.pdf

例えば、ブラジルでは、日本とブラジルの間で、あまり法的なすりあわせが行われていなかったようで、日本に来て、日本国籍を取得する人も増えたが、ブラジルは国籍離脱を認めておらず、日本国籍を取得した場合は、結果としてブラジルとの二重国籍ということになるとのこと。日本政府は二重国籍は認めていないので、ブラジルでは国籍を離脱したことになってないけど、日本では「事実上の日本国籍者」として扱われる、というかなりこみ入ったことになっている。こういう実態上二重国籍になる可能性はブラジルに限らずあるので、日本も二重国籍は認めるべきでは?という気がします。

原案を作成した当時の法務官僚、入国管理局の中の人の話
http://jipi.or.jp/?p=779
興味深いので一部少し引用します。

1988年4月、私は法務省入国管理局の総括補佐官というポストにあったが、そんな私に、突然上司から、「入管法の在留資格はいまの時代に合わない。外国人労働者問題に対応するため在留資格の全面的な見直し案を作るように」との特命が下った。

役所に入ってまもない私は、日本政府が最優先に入国を認めるべき外国人は、日本人の子供であり、また日本人の配偶者であると思っていた。それは、国民の福利を守るという行政目的から導かれる自然な考えであった。

実際、英国など諸外国の入国管理法制を見てみても、自国民との間で、血縁関係や婚姻関係を有する外国人がもっとも優遇されていた。そのような考え方は、世界のどの国でも同じで、入管当局の共通認識だと思っていた。

ところが驚くべきことに、当時の入管法は、「日本人の子」と「日本人の配偶者」を正面から受け入れる仕組みになっていなかったのだ。

法改正にあたって私は、「日本人移民の子孫たちに対して入管行政は何ができるのか」という視点を在留資格に反映させたいと考えていた。

私が原案作成で主導的な役割をはたした入管法の改正法は、1989年の国会で成立し、翌年6月から施行された。

改正入管法の施行により、私の悲願であった日本人の配偶者および日本人の子として出生した者を受け入れるための「日本人の配偶者等」の在留資格と、日系人の子孫(「日本人の実子」および「日本人の実子の実子」に限る)などを受け入れるための「定住者」の在留資格が新設された。

「出稼ぎ」は想定されてなかったとしても、「労働力補填」という意図はあったようです。

まず「日系」の定義はいろいろと難しそうだと思ったら、やはりいろいろ議論があるようです。

1990 年入管法改正を経た〈日系人〉カテゴリーの動態
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ce/2009/ic01a.pdf

その後、15~20万人で推移していたが、0年代後半、仕事が激減し、2009年4月から一年間、帰国希望者に30万円、家族に1人当たり20万円、を支給し、3年間は再入国できない、という「帰国支援制度」を実施し、この制度を利用して2万1675人が帰国した。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin15/kikoku_shien.html

しかし、3年を経過しても日本は、再入国を認めておらず、問題となっています。
http://minorityyouthjapan.jp/projects/view/5

この帰国支援制度に関しては、海外でも、いろいろと報道されています。
http://www.globalpost.com/dispatches/globalpost-blogs/weird-wide-web/top-5-worst-countries-for-immigrants

http://foreignpolicy.com/2010/04/29/the-worlds-worst-immigration-laws/

本題の日本語教育について

元々、出稼ぎは想定してなかったとするなら、定住前提の方策だったとなります。なおさら国に日本語教育のサポートをする義務はあるわけです。帰国支援で一旦帰国して再入国を希望している人も多いと聞きますし、政府の方針によっては、また増加する可能性も残しています。

先にあげた政府の報告にもあるように、日本語教育が不十分であるという認識は国にもあり、基本的には、文化庁の日本語教育推進会議
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_suishin/
で決まったことをベースに文化庁主導でやっていくようです。ここは、各機関の「情報交換」が目的で、日本語学習に関しては、「各種手続の機会を捉え、日本語習得状況について確認し、必要に応じ日本語教育を受けることを促す」と、今のところは「日本語勉強したほうがいいよ」と啓発していく程度のことみたいです。そして学習のサポートは基本、自治体まかせです。また、この会議の目的は定住者で日本語のサポートが必要な人、特に児童の日本語教育が主なテーマで、ここには外国人技能研修生などは含まれません。

文化庁の基本政策、日本語コーディネーター。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/seikatsusha/
年間の予算2億では、1県あたり500万円ですから、コーディネーターの謝礼と、地域の教室にわずかな補助金が出て終わり、という可能性が高いです。しかも「日本語コーディネーター」は、地域によって偏りがあり、定着が進めば進むほど(例えば学習者が結婚して引っ越すとか)カバーできなくなっていきますし、後述する近い将来の日本語学習者の広がり(介護や看護で国内にまんべんなく日本語学習のニーズが広がっていく)にも対応できなくなるはずです。

その他、児童の日本語教育に関しては、文科省が公立学校ベースでは100億円近い予算(H24年度で80億円規模)で、「不就学・自宅待機となっている外国につながる子ども」には、国際移住機関を通じて「虹の架け橋教室」という日本語サポートを展開しているようです(2015年の時点で継続は未定)。公立学校の児童教育はリタイアした国語教師などがあたるとしており、校舎の「教室」も日本語教師の資格の有無は問われません。つまり日本語を教える場面で、日本語を教える資格をもち訓練をした日本語教師は不要でボランティアで十分という考え方をベースにした予算と言えます。

国際移住機関
http://www.iomjapan.org/japan/kakehashi_top.cfm

H21年度の国際移住機関への補助金は約37億円。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2011/08/15/1309746_05.pdf

この機関がサポートするのは公募で決まり、2014年は22の機関。
http://www.iomjapan.org/img/usr/2014_jisshidantai_ichiran.pdf

内閣の定住外国人ポータルサイトはこちら
http://www8.cao.go.jp/teiju-portal/jpn/

一般就労者には日系人就労準備研修というものがあり、日本語資格コースとして240時間が割り当てられているようです。この一般財団法人 日本国際協力センター(JICE)というところは、元々外務省所管の組織で、JICAと連携して国際的な人材派遣などをしていたところみたいです。ここでも独自の「JICEならではの日本語講習」をするそうですが、授業、カリキュラム、教材、いずれも不明です。講師の資格が問われるのかは不明です。
http://sv2.jice.org/jigyou/tabunka_gaiyo.htm

在留者は「一定の質が保証された」日本語教育を受ける権利があると考えるのは自然なことで、現在の状態は、日本が批准している国連人権A規約、子供の権利条約に違反しているという指摘もあります。
http://www.kanaloco.jp/article/84593/cms_id/127849

国連人権A規約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2b_004.html
子供の権利条約
http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html

いわゆる「外国人技能実習制度」の日本語教育

外国人技能実習制度は、1993年スタート。日系移住者の政策に次いで、大きな方針転換。バブル後期のビザ免除国からの出稼ぎ労働者問題からの転換で労働力確保はこの制度でやっていくとなった、ということだと思います。

この制度で来た人達は、ピーク時の2008年ごろは20万人近く、現在は、日本にいるだけで16万人、公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO)によると、8割が20才代、今後、オリンピックの建設需要などで2020年までに15万人、さらには介護士もこの枠でという声があります。

これまで多くの問題点が指摘され、報道されています。

外国人技能実習生の現状と課題
http://r-cube.ritsumei.ac.jp/bitstream/10367/4899/1/as36_yoshida.pdf
外国人受入れ制度検討分科会 議事
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri06_00032.html

外国人技能実習で検索すると最低賃金での試算結果を示して「コストを削減!」「人手不足解消!」をうたい文句にした組織がたくさんヒットします。また、よく農業、漁業に焦点があたりますが、対象職種はかなり幅広いです。
http://www.jitco.or.jp/system/shokushu-hanni.html

しかし、ここでは、なるべく日本語教育に焦点をあてて書いていきます。

派遣前の日本語教育に関しては、このガイドラインが基準となっています。
日本語の授業は最低でも、例として月金で一日3時間で3ヶ月、などと、まとまって200時間程度の日本語研修が示されています。
http://www.jitco.or.jp/pdf/guideline_hakenmaenihongo.pdf

*上のPDF、2015年3月22日に削除されました。改訂中とのこと。新しいものがアップされるまで保存したものを以下に。2007年版です。
研修生派遣前教育ガイドライン 日本語教育編

実際に200時間以上実施されているようです。
http://www.jitco.or.jp/nihongo/data/enjo_jittai_okuridashi.pdf

ただし、このPDFを読む限りでは、日本語教師に関する規定はないようです。ガイドラインの中であるのはこれだけ。短いので全文引用します。

派遣前日本語教育の目標を設定し、その達成に向けて必要なカリキュラムをこなしていくためには、相応の日本語指導員を配置する
ことが必要です。日本語指導員は、派遣前の日本語教育を担当する者として、日本語指導に関する基本的な知識やノウハウが必要であることは言うまでもありません。送出し国の事情にもよりますが、その送出し国出身の指導員であれば、地元の高等教育機関等で日本語を学んだ人や、日本への留学経験者等が考えられます。日本の生活や社会情勢、経済事情等についても精通し、指導員自らの経験もって説明できるような経歴があれば、なお望ましいでしょう。
日本人の指導員であれば、日本国内で一般的に日本語教育の専門家に求められる要件、すなわち、日本語教育能力検定試験の合格者や所定の養成講座を修了した人が考えられます。しかし、一般的に、送出し国で日本人の日本語指導員を継続的に確保するのは難しく、現状では、送出し国出身の日本語指導員が派遣前の日本語教育を担当する場合が大勢を占めています。母国語で説明することにより、指導内容を十分理解させることができるのは送出し国出身の指導者ならではの利点といえるでしょう。
他方、こうした送出し国出身の日本語指導員がより効果的な日本語指導を行うためには、正しい発音を伝えることに留意する必要があります。日本人の発音を吹き込んだCD教材等を適宜活用すると、発音練習や聞き取り練習を行う際の不便さを補い、正確な発音を指導することができます。

「日本人の発音」「母国語」というような表現は、日本語教育の専門家は使わないと思われますが、それはともかく、いろいろ大変だろうから、そっちで決めていいよ。ということでしょうか。

ガイドラインにも、JITCOの日本語指導の手引き
http://www.jitco.or.jp/download/data/nihongo_shido.pdf
にもありますが、日本に来る前に、1)ひらがな、かたかなの読み書き2)聞いたことが書き取れる。3)簡単な文が書ける。4)「禁止」などの実用漢字が読めなくても意味がわかる。5)数字、日付が聞き取れ言える6)簡単な指示を理解し行動できる。まではやること、入国後は日本の生活習慣を学び、生活の中でふれる表現になれる。となっています。

「8割以上が20才代」と言われる学習者相手に、200時間の日本語研修をするにしては、この「手引き」の目標設定は極端に低いと言わざるを得ません。

さらに入国後は、最初の受け入れ機関(第一次受け入れ機関)で平均173時間(うち方言に関しては2時間)の日本語研修を受けているようです。(その後日本語研修を続けるところは6割となっていますがアンケートの回答率が65%なので、全体の比率は実際はもっと低いことが予想される。3割以下?おそらく、ほとんどの研修生にとってこの373時間で日本語の研修は終わりです)

実際に研修を行う機関(第二次受け入れ機関)に行くまで、最低でも平均で373時間の日本語研修を受けていることになります。

*日本語の学習時間と到達するレベルの目安

日本語の学習時間と達成できるレベルに関しては、明確なものがありませんが、いちおうの基準として日本語能力試験が以前設定していた時間があります。4級(=N3~N4)で300時間、3級(=N4~N5)で600時間というものです。ただし実際は、毎日勉強できるような環境ではもっと短く設定されています。また、日本語教育の場でも最も使われている初級の総合教科書である「みんなの日本語」では、300時間で終了するとなっています。「みんなの日本語」を終えて理解度が高い学習者は、N3は合格すると見込まれています。N3は介護や看護の入国基準として有力とされている基準で、日常会話はなんとかこなせるだけのレベルと言ってもいいと思います。(日本語学校では、漢字圏の学習者は多少有利なので必要な学習時間は七掛けか八掛けくらいで考えることが多いです)

まずは300時間で基礎的な部分の学習時間は終わる。個人差もあるし、学習したことが定着して「使える」ようになるまで+200~300時間、合計500~600で、「日常会話ならなんとか大丈夫」というところまで行くかな、というところでしょうか。もちろん、これはN3レベルで漢字は300~500くらいです。この後の継続的な学習は必要です。学習を継続するための最低限の準備として最初の300時間は必要と考えたほうがいいでしょうか。(参考までに、日本の義務教育の英語の学習時間はだいたい900時間、オーストラリアやカナダなどでも外国人在留者への英語教育では500時間前後が「初級」の目安になってるようです)

しかし実際は、373時間の学習を経て、実際に研修を行う段階になっても、ほぼ話せない聞き取れないということが起こっているというのは、まず、母国での200時間が形骸化していること、国内との連携に問題があること、国内の日本語学習環境(後述しますがプロの日本語教師は3割という調査結果)など、いろんなところが機能していないということだと思われます。

日本に入国後の日本語教育に関しては、外国人研修制度を請け負っている公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO)では研修生の日本語教育に関して以下の調査をしています。(前述のように調査のアンケート回収率はとても悪く、第一次受け入れ機関が65%程度、2次受け入れ機関だと50%です。日本語教育に関する質問もあるのですが、日本語教育の専門知識もない人に「どこに問題があるか」と尋ねてもあまり意味がないように思います。例えば、「母国で日本語ネイティブ教師の指導を受けていないからダメ」という回答がありますが、資格をもち経験を積んだ日本語教師であれば、日本語ネイティブかどうかはその質には関係ありません。

 第一次受け入れ機関とは、入国後最初に受け入れる組織団体などのことで、第二次は実務を行ういわゆる「現場」ということのようです。
http://www.immi-moj.go.jp/hourei/shishin_h19.html

日本語教育実態調査ホーム
http://www.jitco.or.jp/about/chousa_houkoku.html

第一次受け入れ機関の日本語教育研修のアンケート調査
http://www.jitco.or.jp/nihongo/nihongotyousa.html
ここに日本語研修の中身、達成度などがあります。ただし、どのレベルにまでいったかは、具体的な記述なし。以下のような記述があるのみ。以下のような記述のみです。

実際に日本語学習が十分なのかについては、以下のような結果がありました。引用します。

まずは仕事上の問題。

日本語に起因する実務研修実施上の問題点

研修生の日本語が不十分であることに起因する実務研修実施上の問題については、企業の担当者や経営者から「問題などを聞いている」と回答した第一次機関が66.0%、「問題などを聞いていない」としたところが33.3%であった(第33図)。
第33図 日本語に起因する実務研修実施上の問題点
「問題などを聞いている」と回答した347カ所の第一次機関が聞いた問題点は、「日本人社員とのコミュニケーションができない」が61.7%と群を抜いて高かった。このことは、研修生の未だ十分でない日本語能力が隘路となっているものと考えられる。さらに、「報告・連絡・相談などが行われない」が37.5%、「社内の約束事や取決めが守れない」が36.0%、「技術・技能の移転が思うように進まない」が35.7%と、これらの3点も比較的多い問題点であった

研修生の日本語が不十分であることに起因する日常生活上のトラブルに関し、企業の担当者や経営者から「問題などを聞いている」と回答した機関が54.6%、「問題などを聞いていない」機関は45.4%であり、「問題などを聞いている」方が9.2ポイント上回った

繰り返しますが、調査で戻ってきた調査票は65%なので、実態は上よりも悪い可能性があります

ただ、結論はこうなっています。

「集合研修終了時」では「殆どできない」が激減して1%程となり、「少しできる」が30%程度と半減し、「ある程度できる」が50%台になる等、大幅な改善がみられた。さらに「かなりできる」が10%台となり、1%台とわずかではあるが「とても良くできる」との評価も出現した。このことから、研修生の日本語能力の改善に関し「集合研修」がいかに重要であるか理解できよう。

なにがどう「できる」のかはよくわかりません。集合研修とは、第一次受け入れ機関の研修終了時(その後日本語研修は行われいるところは3割以下)つまり373時間の実質的な研修が終了した時点ということだと思われます。

また、この国内の日本語教育のほぼすべてを担当すると思われる第一次受け入れ機関の日本語教師について

第一次機関が実施する集合研修における日本語教育の教師は誰かとの問いに対しては、「当機関又は傘下企業社員(海外勤務経験なし)」が31.4%、「当機関又は傘下企業社員(海外勤務経験あり)」が27.0%であり、次いで「外部委託した日本語専門機関の教師」が30.6%(161カ所)、「地域のボランティア」が15.2%であり、ボランティアの協力度も高い。
また、「その他」も34.0%占めたが、その具体的内容は「元中学・高校の教師」、「通訳」、「日本人と結婚した中国人」等であった

とのことです。「海外勤務がある」かどうかが日本語を教える能力とどのような関係があるのか、よくわかりません。少なくとも、有資格者のプロの日本語教師は、3割以下、(繰り返しますが)調査票の回収率が65%であることを考慮すると2割以下、ということでしょうか。これでは、入国前の200時間の教師の質に関してあれこれ指導を期待するのは無理でしょう。つまり外国人技能研修制度を利用して日本に来る人達が受ける日本語の研修は、そのほとんどを素人が教えているということです。

研修生の日本語教育の一部はこの国際研修協力機構から(あるいは日中技能者交流センターという組織を介して?)委託をうけ公益財団法人国際日本語普及協会(AJALT)が主に行っているようです。
http://www.ajalt.org/study/tech/

あたらしいじっせんにほんご (技能実習編)
http://www.amazon.co.jp/dp/4906096204
という教科書も作っています。

日本語教育の指導方針として日中技能者交流センターのサイトにAJALTの講師による「日本語教育再考」という連載があります。
http://www.jcsec.or.jp/files/archives02.html

「現場のニーズにこたえる」「重要なことは、教室活動と現場を結びつけること」とするこの「あたらしいじっせんにほんご」という教科書をベースにした日本語教授の考え方における「現場のニーズ」は、学習者のニーズというより雇用者のニーズに近いようです。例えば、日本語教育・再考のその4には「現場」を見学したという講師が以下のようなことを書いています。

しかし学習者の実習の現場、働く現場は、その丁寧な言い方より、「こっちへ来い」「まだ!」「向こうへ運んで」「ここに置いて」「スイッチ切れ!」などの表現をよく聞きます。学習者は教室の中での日本語と現場の日本語のギャップにびっくりします。もちろんギャップはあるのは当然ですが、できるだけ、少しでもそのギャップを少なくすることが大切だと考えます。『あたらしいじっせんにほんご』は一課から両方が出てきます。一課から慣れていくことが大切だからです。

その6には

実習生や働く外国人にとって一番大切な、仕事場での日本語の指示を聞きとって、すぐに行動出来るようになるための練習をします。

などという記述があります。

「現場のニーズ」にそって、ひとつ現実的な提案させてください。技能研修生に日本国内で行われる日本語の研修が、すでに200時間を学習した人を対象にするのであるならば、一課は「労働基準監督署に申し立てをする」からスタートするのはどうでしょうか。「現場のニーズ」から作っていく教材として、また、労働管理に頭を悩ませている関係各所にとっても「ニーズ」は一致するはずです。もちろん、労働基準法については、すでに学習者の母語で十分にレクチャー済みであると思いますので。あとは具体的に申し立てをする方法をまじえて場面を作って構成するだけです。匿名でもメールでも申し立てはできますし、実名でより本格的な申し立て(こっちは監督署の監査が入ります)をするところまでは行けるのではないかと思います。

また、日本語教育・再考 その9には、興味深い記述があります。「現場」からの質問として

来日前に自国で200時間以上も日本語を学習し、教科書も2冊くらい終了していると記載されている実習生達が実際にはこちらの質問にほとんど答えられないのですが、虚偽の記載ということでしょうか。そのような学習者にはどのように教えたらいいのでしょうか。(漢字圏の実習生の例)

という問いがあり、これに「その9」の執筆者は次のように答えています。

確かにオーバーに書かれていることもあるかもしれませんが、ほぼ事実です。しかし、学び方が違います。教科書を読んだり、書いたりすることが中心の学習を自国でしてきたのです。来日前の日本語研修の視察に伺ったときに、教室内から聞こえてくる言語は自国語がほとんどで、日本語は皆で読んだり、書いたり、暗記して発表しているときだけでした。また、先生方の多くは来日したことがないということでした。しかし、その学習は無駄ではありません。頭の中にはたくさんの日本語が入っているからです。ただそれをどのような場でどのように使うかを学習していないのです。せっかく学んだ日本語を使えるように指導する。つまり、日本語の運用能力をつけることです。

母国で200時間でインプットされているのだから、後は日本でアウトプットすることを学べばよい、という主旨だと思いますが、まず、JITCOが設定した200時間の達成目標は、日本語教育におけるせいぜい50時間分程度であり、「たくさんの日本語が入っている」状況にはほど遠いようですし、おそらくほとんどの日本語教育関係者は、最初からインプットとアウトプットをバランス良く教えていけばいいのでは?と考えると思います。

現在、日本語の教え方は「生活者としての日本語」「Can do と日本語教育」「タスク優先」いろんな新たな考え方を軸に再構成されつつあり、転換期といえます。個々の是非はともかく、これらの言葉の表面的な意味だけが流通し、現実に、技能研修生相手の日本語教育を考える際に「現場のニーズにあった」と安易に読み替えられていく動きをみると、やはり、今、日本語教育関係者は、一旦「日本語教育の多様化」という紋切り型はNGワードにして、日本語学習者、日本語教育を政治的経済的なプレッシャーから守る戦略として、例えば「初級の学習者に対しては、ゴール設定のいかんに関わらず、最低でも**までは達成目標とするべき」というようなガイドラインを示し、政策の中に、安全装置として、今のうちに織り込むことを働きかけておくべきではないでしょうか?それがやれそうで、やるべきなのは日本語教育学会しか思い当たりませんが、いかがでしょう?

 他の国々との比較

「技能を学ぶ場」というより事実上、単純労働者確保の国際競争であるという側面も一般の知るところとなってきました。いろいろと比較研究もあるようです。以下は直接的な競合相手となる(と考えられていた時代のレポなので)アジアの例ですが、最初のほうでご紹介したように、(いろいろ国に入ってくるプロセスが違うとか政策も変わったりしているようで一概にはいえませんが)一般的にカナダ、オーストラリア、欧州では、特に区別することなく、在留外国人すべてを対象に無償の言語サポートが作られています。利用率は高くはないようですが、希望すればプロの教師としっかりしたプログラムが用意されている、ということが重要です。

それはひとまず横に置いて、、、
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/23530266/2012/11/ja.en.html
ここでは、まず単純労働者とされる人達への外国語教育に絞ってわかるかぎりの資料をあげてみます。ただし、単純労働者の言語教育は、移民政策における言語教育と別枠で語られるべきことなのかは議論があると思います。ワタクシは後述する「日本語教育ネットワークで」同枠でやるべきだと考えています。移民政策としての言語教育に関しては、このページの一番下に「資料 1」として、リンクを中心に紹介してます。

韓国

日本の外国人労働者受入れ政策に対する示唆点⑴
http://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/dspace/bitstream/10270/4162/1/18-224.pdf

韓国でも送り出し国と入国後で語学研修を分けているようですが実務研修に入る際、雇用時に韓国語の試験があり合格しないとアウトとのこと。
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2011/pdf/115_ch8.pdf

少し詳しいことがここに。
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_rnote/e_rnote010/e_rnote005.pdf

入国前は150時間、入国後は20時間、合計170時間(日本は前200後173時間で合計373時間)だったものが、このテストの導入によって入国前の時間が85時間に減ったと書かれている。しかし、現状では、研修の現場では、韓国語ができないという問題が37%となっていて解決したという報告はない。合格率60%(日本の原付の免許の合格率がこのくらい)というところにカラクリがありそうで、学習時間数を減らす名目で導入されたか、合理化を試みたが、結果、労働需要の声におされてテストは形式的なものになってしまったという可能性があり、学習時間を削る目的で「独自の試験」を作るのはリスクが高い。日本でやるなら独自試験ではなく客観性を担保できる日本語能力試験しかないように思える。(変更前も韓国語が話せない問題は散見され、その際「日本に較べて学習時間が少ないからではないか」という声があがっていた)

台湾

この調査によると
http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/17927/p069.pdf
送り出し国では簡単な会話のみで、入国後も決まった研修はなさそう。

その他の国々に関してはこちらに
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g50924a01j.pdf
言語教育に関する項目はほとんどありませんが、仕事が遂行できるレベルが要件となっていることがわかります。

まとめ

  • 外国人研修生の日本語学習時間は、実際に研修に入る前に入国前に200時間、入国後173時間、合計373時間。
  • 日本の373時間は他国と比較してもかなり多いが時間数に相応の成果をあげていない。
  • 最初の200時間のゴール設定も、入国後の研修のゴール設定も373時間の学習のものとしてはかなり低い。
  • 入国前の200時間の時点、第一次受け入れ機関の173時間を修了した時点での達成度をチェック、確認する手段がない。
  • 373時間は、資格をもったプロの日本語教師が指導することはかなり少ないと思われる。入国前は講師の資格は事実上問われず入国後も有資格者の日本語教師の比率はおそらく3割以下。
  • 技能実習生は、現在16万人、今後10年で倍以上になることが見込まれている。
  • さらに介護士をこの枠組みで入れるならプラス30万人で、60万人近く。
  • 技能研修生制度の日本語教育はもう何十年も現在の体制で行われており、成果も出していないし、客観的な質のチェックを受けていない。
    • どうすべきか?

      A案:入国の要件としてN4合格にするかそれに準じた統一試験を設定する。
      B案:入国前の研修は廃止し、入国後に300時間程度を正しいカリキュラムでプロの日本語教師の元で行う。

      → A案は、韓国のように「独自試験」を採用するとなると学習時間が削減され結果として機能しない可能性が高い。(人手の需要に応じて恣意的に試験の難度を調整可能)B案、もしくはN5を入国の要件にして、入国後に最初の受け入れ機関、できれば公的な日本語教育機関&施設を新設して、そこで、しっかりとしたカリキュラムで日本語の指導を行うほうが有資格者の教師の確保も簡単で、合理的でかつ、効果も高いと思われます。カリキュラム、講師が整った施設で集中的に行い、修了試験を次のステップの要件にするなど、きちんとした管理下で行えば、300時間の学習時間ならば、ほぼ日常会話ができるレベルに持って行けるはずです。
      一般的な日本語学校では、一日4~5時間の授業なので、月金で20~25時間、約15週分です。3ヶ月以内に日常会話が可能なところまでいけば、その他の研修も圧倒的にスムーズに進むばかりでなく、しっかりとした基礎力が養われれば、次の受け入れ機関で地域の日本語学習期間に通うことで、より高いレベルまで行くことも簡単になります。

      今のところ、技能実習生は、長くても5年で帰国することが前提となっています。しっかりとした日本語サポートがあれば、5年で「日本語」という技能を身につけた人達が帰国して世界に広がっていくメリットは果てしなく大きいのではないでしょうか?

      最後にひとつ。
      技能研修生の日本語教育の在り方と日系在留者の日本語教育の政策に対し(現在のAJALTの「新しい日本語教育」に対しても)日本語教育学会が積極的に意見し、議論し、関与してくべきではないでしょうか?今のままでは、日本語教育関係者は「留学生にはよい学習環境が必要だが、日系在留者や単純労働者にはそれなりの日本語学習環境でよい」と考えていると捉えられても仕方が無いのでは?

      *入国時にN5合格が保証されているなら、入国後300時間で日常会話はもちろん、実務上の会話が問題ないレベルまでもっていくのはたやすいのではないかと思われるが、送り出し国の講師確保が望めない現状が改善されないなら、入国前の研修は無駄であり、N5を要件にしても意味はない。まじめに学習する意欲があるかのチェックのみで、日本語は、入国後の研修ですべてやる、でもいいかもしれない。(ただ、N5レベルというのは、前述の、現在、JITCOが日本語指導の手引きで定めている入国前にクリアすべきレベルとさほど変わらず、プロの日本語教師がしかるべきカリキュラムでやれば、200時間どころか50時間で十分に達成できるはずなのです。送り出し国でプロの日本語教師が確保できない現状なら、やらないほうが合理的という意味です)

      *少なくとも、現状、技能研修生の日本語能力がどうなのか、客観的な指標がありません。「日本語能力に問題がある」のはアンケートやいろいろな現場の報告からもあきらかだとは思いますが、日本語能力試験など客観的な指標になるものが必要です。そして、AJALTが、今後も技能研修生の日本語学習に関わるのならば、研修生の日本語能力の客観的な評価を出すべきですし、その結果に対して責任を負う、場合によっては、他の委託先に変更もありえるようなシステムを(今後も他の組織に委託するような体制を続けるならば、ですが)構築するべきではないか?と考えます。

      *もちろん、私は技能研修生の日本語学習は、もう関連法人に丸投げするのではなく、入国前の学習は無くすか簡素化して、入国後に後述する「日本語教育ネットワーク」でやればいいと考えています。



      日本語教師の数 

      国内の日本語教育に関しては、この文化庁の調査(H24年度)に、ここ10年の推移のデータがあります。常勤、非常勤、ボランティアに分けた数の推移です。
      http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/

      さらに、ここにその前の10年のデータがありました。(2015年のリニューアルでページが消えました)http://www.bunka.go.jp/1aramasi/17_nihongokyouiku/gaikoku_6_02.html

      データは、平成だとわかりにくいので西暦にしました。

      この20年での推移です。専任、非常勤、ボランティア、数と比率。

      1992 2002 2012
      教師数 16276 27372 34392
      専任 2317 (14%) 4042 (14%) 3975 (11%)
      非常勤 6325 (38%) 10091 (36%) 9631 (28%)
      専任+非常勤 8642 (53%) 14133 (51%) 13606 (39%)
      ボランティア 7634 (46%) 13239 (48%) 20786 (58%)

      2002年からの10年間の変化が大きいことがわかります。非常勤の減った10%がボランティアに移動したというところです。専+非 は、報酬を得て教えているプロの教師という意味です。日本語教師の数の需給のバランスに関しては、後に「日本語教師の需給のバランスはどこ?」で、表とともに触れます。

      日本語教師のデータで最も深刻なのはこれです。

      ・日本語教育能力検定試験の全科目受験者 年代別比 推移

      1994 2002 2012 2014
      50才以上 587 (24%) 702 (11%) 1225 (25%) 1290 (29%)
      45-49 362 (5%) 323 (15%) 356 (7%) 396 (9%)
      40-45 482 (19%) 359 (5%) 490 (10%) 425 (9%)
      35-39 468 (7%) 450 (7%) 488 (10%) 415 (9%)
      30-34 667 (10%) 724 (11%) 545 (11%) 452 (10%)
      25-29 1137 (18%) 1402 (22%) 787 (16%) 675 (15%)
      20-24 2429 (39%) 2153 (35%) 863 (17%) 678 (15%)
      20未満 0 0 44 (-) 32 (-)

      ここでも、2002年から2012年の10年間に劇的な変化があったことがわかります。私にも、日本語教師の需給のバランスが崩れ、供給過剰がはっきりしたのが2003,4年ごろではないか、という実感があります。
      東京都心のプライベートレッスンの相場は2000年までは1時間6000円弱(90年代は8000円前後でした。高いようですが往復の時間入れて3時間で割るとなかなか厳しい額です。移動時間があるので一日3レッスンで週10コマが限界、3コマで一日4時間電車になることになり、仕事ができるのは年間45週ほど。かけ算で出た金額が一生続くのです)でしたが、2003年前後に、ネットをベースにしたいろんなグループの参入もあり、突然3000円を切りました。

      おそらく日本語学校に就職できなかった、あるいは、コマ数が減った教師達がプライベートレッスンで補填しようと流れてきたのではと分析しています。民間の教室での授業の時給は1500円。プライベートで3000円でも、クラス授業のすき間に入れれば、0よりまし、という発想だったのではないでしょうか。

      * 受験者数のピークは、2004年の6688人。
      * 20才以下の受験が可能になったのは2003年から。

      主催する日本国際教育支援協会のデータによる。
      http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm
      最新のデータ
      http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/graphs/2014_jltct_3_nendaibetsu.pdf
      やや古い時代のデータ
      http://retirement.jp/files/ne09-01-3.pdf

      学習者数と教師のバランス 

      まず、文化庁の日本語学習者数をベースに10年ごとに、もうひとつ、上で出した、現在日本で日本語学習が必要な数をベースに出したものを追加しました。それを教師数だけでざっくりと計算してみます。2014(実数)は、文化庁の数字に含まれていない日本語学習者が必要な数を概算で加算したもの。2024(推定)は、現在、予定されている介護や外国人労働者の増加分を推定で加算したもの。10年で目標人数を達成した場合で試算してみました。教師数は2012年の数字のままとします。

      1992 2002 2012 2014(実数) 2024(推定)
      学習者数 126305 127372 139613 480000 930000
      教師数 16276 27372 34392 34392(2012年) 40000?
      教師1人あたりの学習者数 4.29 4.61 4.05 13.95 23.25
      専任1人あたりの学習者数 30.1 30.8 35.1 120.75 232.50
      専任+非常勤1人あたりの学習者数 8.0 8.9 10.2 35.27 58.125

      *2024年の専任、非常勤は1割、4割の比率で出してみました。次も同じです。

      バランスをみるならば、クラス単位でも考える必要があります。環境はさまざまですがここでは、日本語教育振興協会が適切と考える1教室20人を目安に単純に学習者数を20で割って教室数としてみます。

      1992 2002 2012 2014〔実数) 2024(推定)
      教室数 3497 6315 6980 25000 47500
      一教室あたりの専任の数 0.66 0.63 0.56 0.15 0.08
      一教室あたりの専任+非常勤の数 2.41 2.23 1.94 0.54 0.33

      現状でも日本語教育が必要な実数(48万人)で計算すると、専任と非常勤で対応するとしても、現状の13606人では間に合っていないことになります。10年後、現在の教師の種別の比率で対応すると、日本語教室の85%くらいはボランティアの教師によるものとなりますが、それだけの手当てのために、あと2~3万人のボランティア教師の増員が必要です。多分、物理的に無理ですし、仮に集まっても、現状でも平均値でいうと教師の質に問題がある中、日本語教室の質は下がるばかりです。(ボランティアはフルタイムで働けないのでおそらくもっと多くの人数が必要になると思います)

      * もちろん、1教室20人みたいに効率よく配分される可能性はほぼありません地域によるばらつきも考えると、日本語学校などで学習する人以外はいろんなところで、5人クラスがポツポツとある、あたりが実状かもしれません。仮に、5人で1教室だとすると、上の「あたりの」各数字は4分の1になります。

      * 2012年の時点で、日本語教育が必要な48万人のうち文化庁の約14万人(28%)はほぼ教育機関で手当がされている人達と考えることができると思います。留学生数とほぼ一致しますので、この14万人は専任、非常勤のプロの教師に教わっていることになります。10年後は、労働者として来日する外国人の比率が増えることが確実なので、上の試算だと、プロの日本語教師に教わることができる人の比率は、10年後、93万人に対して留学生が20万人ならば、この28%は、21%になります。79%はプロの日本語教師の指導を受けていないことになります。日本語教育の質における「格差」はどんどん広がっていくことになります。

      もうひとつの日本語教師の数の需給のバランスの問題、現状、約14万人の留学生の日本語教育において、必要な教師の数に対して、日本語教師養成講座が過剰である、という問題に関しては、後に「日本語教師の需給のバランスはどこ?」で、詳しく触れます。

      国内の日本語教育の諸問題

      正規、非正規の比率について 

      前提となる一般的な知識として。

      職業としてみた場合、正規、非正規雇用の正しい比率はどこなのかはいろいろと議論がありますから、それは横におきますが、今、非正規の比率が増えた、問題だとなっている話は一般企業や大学で非正規が「25%」を越えた、というものです。もちろん職種によって違いますが。
      日本語教師は、正規、非正規の他に、ボランティアがあるので、一般の仕事と比較できませんが全体の比率では正規雇用が約1割という日本語教育業界は、マクドナルドや牛丼屋以下です。
      これは2015年の記事です。
       http://toyokeizai.net/articles/-/61506?page=2

      正規、非正規の比率とその仕事で求められるスキルと関連はあるかなど記事の表をみながら、いろいろと考えてみて下さい。もちろん、日本語教師の6割は無給のボランティアであって、非正規ですらないので、ちょっと比較にならないのですが。。。

      * 日本語学校では、必ずしも、専任=正規雇用、非常勤=非正規雇用、ではないようですが、いちおこの記事ではそういうこととして進めます。

      なんらかの規制で改善するか? 

      現在、日本語教師は、仕事と呼べるものではなくなってしまいました。ただ、国内で日本語学習が必要な人達に十分に学習できる環境を提供し、その学習環境の質の維持に関して、国は責任を負うべきです。特に後者は今後、とても重要になってくるはずです。これらの人達は日本が来て欲しいと呼んだ人達であり、直接間接に納税もしており日本で生活する以上は、社会生活を営む権利、必要な教育を受ける権利は発生します。
      特に、日本語の能力は、生活していくうえで、基本的なインフラにも相当するような重要なものだと、少なくともすべての日本語教育関係者は、認識し、発言していくべきです。
      今は、はじめて国が移民に関して言及し政策を進め始めたところです。おそらくこの流れは、政権が変わっても続きます。これから数年が、日本語教育の転換点になるはずです。

      例えば、すべての日本語が教えられる場所に投網をかけるように、、、

      ■ 地域の日本語教室、日本語学校、大学を含む国内すべての日本語の教室では必ず資格を有した正規雇用の教師が授業を行い、補助的な非常勤が補佐する。

      ■ 比率は、正規3:非正規1を基準にする。一時的に下回ったとしても年間の平均で上回らなければならない。(後述する国際交流基金の日本語専門家の配置にほぼ準じています)

      ■ ボランティアは単独での授業はできないだけでなく、原則として、国が認定した教室で行われるカリキュラム内では活動できない。専任教師が認めた場合に限り、カリキュラム外での練習、教室での補佐は可能。(これも2014年にスタートした国際交流基金の3000人派遣プログラムにおけるボランティア教師の在り方に関する説明を整理してあてはめたものです)

      というような規制をかけ「公認の日本語教室」と認定することは可能です。これまでのデータからもわかるように、日本語教育が必要な人達は現状でも、留学生14万人の他に34万人ほどいますし、今後留学生以外の比率が高まってくことが確実なので、これまでのように日本語学校や大学だけに規制をしいても、日本語教育の質的保証にはなりません。あくまで地域の日本語教室も含めすべての日本語教室に対する規制、ルール作りが必要です。

      もちろん、日本語の授業の質を管理するのは、まずそこで働く日本語教師の生活を保障し安心して経験を積める環境を作ることが大事で早道です。同時に専任教師、非常勤の待遇も、公務員に準じたものになるべきです。

      外国人労働者に対するいろいろな考え方の違いはあっても、日本が呼び、日本で暮らす日本語を母語としない人達に「しっかりとした日本語教育が行われるべきだ」というのは、ほぼすべての人達が認めるところです。そのためには日本語教育の質を高める方策が必要で、そのコストは必要なものだという社会的な合意を作るのは可能だと思います。


      ただ、この一見、まっとうな規制も、現在の民間の日本語学校ではクリアできていませんし、おそらく今後もできません。

      「日本語学校の時代」の終わり

      日本語学校概観

      民間の日本語学校は大都市、特に東京に集中しています。業界団体組織は日本語教育振興協会が有名です。2004年に全国日本語学校連合会という組織もできました。組織に関しては「日本語教育に関わっている官庁など」で少し触れます。

      日本語学校に関するデータは、まずこちらに基本的なものがここにあります。
      日本語教育機関実態調査
      http://www.nisshinkyo.org/article/overview.html

      教師に関わる調査は、まず、専任と非常勤の数があります。
      次に、専任と非常勤を足した総数を対象にした比率で年齢構成、経験年数、資格の有無の3つの項目の調査があります。業界の「実態調査」という名目での調査であるのに、正規雇用と非正規雇用を分けずに調べるというのは不可解です。
      民間の日本語学校を中心とする日本語教育業界は、教育業界であると同時に、日本語教師養成講座を軸にした「資格業界」でもあります。この2つの側面をもつならなおさら、職業としての日本語教師像を示すために、正規雇用である専任講師の年齢講師、経験年数、平均勤続年数(これ重要です)、報酬、時給なども調査すべきだと思います。(今のところ、専任に限った調査、日本語教師養成講座に関するデータは後述する文化庁の調査の他は探しても出てきません。どこかにあるんでしょうか?)

      こちらに、2012年の日本語教育振興協会のものがあります。(ただし、これはとてもわかりにくいです)
      日本語教育振興協会における日本語教育の取組の現状と課題

      http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/kondankaitou/nihongo_suishin/02/pdf/siryou_4.pdf

      *文化庁の2015年のリニューアルでリンクが外れ、ファイルが見つけられないので、保存していたものを以下に
      日本語教育振興協会資料

      *上のPDFは下の提言を受けてのもののようです。

      現状と課題

      2012年のものは文化庁に提出されたもので、経営母体が法人であるかどうかなど多少詳しいデータがあります。
      登録機関が450、学校法人・準学校法人が126,株式・有限会社が264,財団法人などが26,その他34、常勤が1883人、非常勤が4184で、非常勤の割合は68%となっています。
      機関数(450)は、登録数なので実態がある学校はかなり少ないと思われます。実際に稼働しているのは半分くらい?という印象。また、「学校法人・準学校法人」は、準学校法人(専修学校と各種学校)のほうが圧倒的に多いと思われます。2012年の数字で、学生33122人のうち進学した人は21822人、進学率は65%です。

      Wikipedia 日本語学校の種類:専修学校、各種学校、その他(株式・有限会社)
      → いつのデータをもとにしているかはわかりませんが、日本語学校の種別について、だいたいの比率がわかると思います。「学校」と名乗っていいのかは法律的にはハッキリしないんだなということがわかります。ルールとしては「アイスクリーム」よりユルいようです。

      少し角度を変えて考えてみましょう。現在、日本にいる日本語の学習が必要な人数48万人のうち33122人は約7%に過ぎず、民間の日本語学校は、その7%を450の機関、大卒で有資格者の日本語教師を6067人を使って(教師1人あたり学習者5.4人ですが実際は20人前後です。非常勤がパートタイムなので)手当てしているということになります。後述する「日本語教育ネットワーク」が5000人のフルタイムの日本語教師でほぼ48万人を手当てできるのと比較してみてください。しかも日本語学校は都市部に偏在しており、今後全国にまんべんなく広がっていくであろう日本語学習者に対応するのは不可能です。

      一般的に民間の日本語学校は語学留学先というよりも日本の大学や専門学校に進学するための予備校的なところが多く「試験勉強」的なカリキュラムが中心です。日本語学校は外国人留学生が多く在籍する私大や専門学校に推薦枠を持っており両者の関係は密接です。
      一年間の学費は授業料が5~60万円、その他が10万円程度で合計60~70万円。入学金が20万くらいというのが相場です。コースは最短で1年3ヶ月というのが多く、長くて2年、最短コースを選んでも80万前後で、大学とあまり変わりません。大卒の資格もとれないうえに滞在費を考えると、かなり高いと思います。

      最近では、東南アジアを中心に進学よりも「人材育成」を掲げたビジネススクール兼日本語学校のような形態もあり、軸脚をアジアに置く新しいスタイルの日本語学校も増えています。

      民間の日本語学校の非正規の比率は約7割

      さて、民間の日本語学校を含むすべての日本語の教室に先に述べたような投網を投げるように規制をかけることは、現状では、ほぼすべての民間の日本語学校にとっても、規制強化となります。現状、日本語学校で日本語教師の比率を正規3非正規1にするのはほぼ不可能です。しかし、国際交流基金の日本語専門家の配置の比率がそうであることからも、国としてこれが適正な比率であるという見解があるのだと考えることができます。国内の日本語学習者に限って非正規の比率が増えてもいいという理屈は成り立ちません。

      民間の日本語学校の規制は、任意に加盟する管理団体である日本語教育振興協会の、いちお以下のような、5ページちょっとの業界の自主規制のルールがあるだけです。
      http://www.nisshinkyo.org/review/pdf/index02.pdf

      今のところ、専任の日本語教師は、3分の1(正規1:非正規2)でOK、となっており、その他、報酬の条件などは書かれていません。このルールが守られているか、実態はどうかという調査はネット上には見当たりません。上の日本語教育振興協会の調査で総数が出ていて、それが非常勤68%であることは述べました。ただし、これは財団法人や大手の専門学校の日本語科も含まれており、一般の日本語専門の日本語学校のほうが、雇用環境は厳しいはずです。また民間の日本語学校を中心とする業界には組合は事実上ありませんので、この正規非正規雇用のあるべき姿が真剣に議論されたことは、私の知る限り20年以上ありません。

      日本語教育振興協会のサイトの「日本語教育機関を探す」には、教員数と専任の数が掲載されていますが、最低のラインとされている「3分の1」を守っているところは少なく、名門と言われるところでも、専任の比率は25%程度のところもあります。おそらく平均だと確実に3分の1を下回っているはずです。公開前提のデータでこの比率ということは、一時的に2割くらいになることはあるはずです。
      http://www.nisshinkyo.org/

      例えば、10人の日本語教師が必要な場合、自主規制ルールでは、3分の1なので4名専任でないといけませんが、校長が日本語教師の資格を持っていれば(おそらく教務につかなくても)専任は3人でOKということになります。7人が非常勤。非常勤の日本語教師が占める割合は7割ということになります。このへんの日本語学校の実態調査はないのでわかりませんが、私の印象では7人の非常勤のうち、継続的に雇用されるのは3人くらい、いちお契約が続いているくらいの人、つまり「経験者枠」が2人(この2人は「継続的な雇用の3人枠」に入れる保証はありません。どちらかというと次の新人枠との入れ替え候補です)残る2名は毎年、時給が安く済む新人を入れ変える枠というところ。もちろん学校によっては、非常勤はほとんど新人入れ替えでやるところもあるはずです。ただ、経験者枠の非常勤講師の時給をあげなくても済むなら、そのほうがいいわけですから、そういう「理解のある」非常勤講師がいるところは、長期勤務の非常勤講師の比率が高くなります。

      大学の非常勤の比率は、平均値で、「国立は39.0%,公立は45.8%,私立は56.4%」とのことです。
      http://tmaita77.blogspot.jp/2011/12/615.html

      上のブログに以下のような記述があります。

      非常勤教員を増やす増やさないは,各大学の自由ですが,非常勤教員率があまりに高くなることは,好ましいことではありますまい。この指標が8割や9割を超えるということは,自校の教育の大部分を部外者に「丸投げ」していることを意味します。

      民間の日本語学校の場合は、研究職、テニュアという出口もありませんし、常勤(専任)の席もきわめて少なく、年収の天井は300万、運良く勤め続けても最終的に高くて500万程度。数少ない例外を除いて、ほぼすべての学校で7割以上が非常勤です。つまり教育を「丸投げ」しているのですが、かといってどこかが日本語教師を育てているわけではありません。業界自体が、事実上、自ら日本語教師養成講座で日本語教師を過剰に供給する状態を作り、5年程度で教師を新しく入れ替えながら維持しているという構造になっているのではないか?という疑問が湧いてきます。

      この日本語学校の規制に対する国会での質問が2014年にありました。
      質問は以下のとおり
      http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a186242.htm
      一部、規制緩和してもいいのではという主旨のようです。


      これに対する回答は以下のとおり。
      http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b186242.htm
      「いちお文科省が1988年に方向付けして、法務省が管理する日本語振興協会で自主規制的にやってることだよ」
      というところでしょうか。

      今のところ、日本語の授業が行われる環境(大学、日本語学校、ボランティア教室)に対して日本語教育の質の維持のためのルールは特定の領域に限定しても、事実上ないも同然、というのが正確なところではないかと思います。

      日本語教師養成講座の問題

      民間の日本語学校や専門学校などが行っている日本語教師養成講座は、修了するまで規定の420時間でだいたい50万円あたりが相場です。これは日本語学習者のクラスの授業料とほぼ同じです。日本学校にとっては、教室あたりの学生の人数などの規制も、留学生の審査や管理の手間もないですし、毎年入ってくる人数が不確定で不安定な日本語クラスよりも確実な利益が望めるのではないかと思われます。ある時期から経営上は、こちらがメインとなった、いうところも少なくないはずです。

      ここも大幅な改革が必要です。養成講座が今のままでいいと考えている日本語教育関係者は(利益をうる人達、例えば講座の講師や日本語学校関係者、養成講座の広告収入を得ている人達、日本語教師の「研修」が仕事の人達、を除いて)いないはずです。

      日本語教師養成講座に関してのルールは2000年の

      この文化庁の「日本語教育のための教員養成について」
      1000011504_attach_1

      http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20000330001/t20000330001.html
      と同省から出された「ガイドライン」があるだけでした。
      1000011504_attach_1

      2009年に日本語教員等の養成・研修に関する調査研究協力者会議が始まりました
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/
      が、調査報告書が出た後は、議事をみても、参加者が意見を述べるだけで、2012年以降、会議は行われていません。

      *2015年の文化庁のサイトリニューアルで見当たらなくなった文書は保存しておいたものをアップしました。

      講座の質をチェックするシステムはないも同然で、民間の日本語学校が自分の非常勤講師に講座の授業をさせたりすることも多いようです(私は面接で経験2年目で養成講座の講師をしているという人に会ったことがあります)。日本語学校の主要な収入源、もしくは講師への報酬の補填、となっているのが実状ではないでしょうか?経営基盤が弱い日本語学校への救済措置としてあるという「事情」があるのかもしれません。
      しかし、これでは、今後、国の日本語教師の資格の要件として例えば公立学校で日本語教育を担当するにふさわしい資格だと認定されるのは難しい。少なくとも日本語教師養成講座は利益を追求する種類のものではない、としなければ日本語教師の資格に対する信頼性を取り戻すことはできません。

      文化庁の調査をもとに、日本語教師養成講座の講座数の推移の一覧を作ってみました。

      1993 1998 2004 2005 2006 2007 2008
      大学院・大学 100 180 200 203 214 215 223
      短期大学 11 37 21 12 12 10 13
      一般の施設・団体(日本語学校など) 108 167 169 261 302 316 285
      合計 219 384 390 476 528 541 521

      2004年から2005年にかけての変化が目を引きます。

      2008年から調査の区分けが変わり、「大学」と「短大」が一緒になり「一般の施設団体」が「地方公共団体・教育委員会」「国際交流協会」「上記以外」になりました。この「上記以外」はいわゆる民間の日本語教育機関を中心にしたものだと考えられます。2008年は民主党政権により事業仕分けが始まった年であり、公的機関に対する目が厳しくなった時です。
      この変更は「一般の施設・団体」から公的な組織と民間の団体を分けて、需要に応じた設置をしているよ、ということを示す目的があったと考えられます。新しい区分けでは、「一般の施設・団体」のうち半数は「上記以外」つまり民間によるものだとなっています。従って、上の「一般の施設団体の」約半数は民間だったと考えてもいいかなと思います。

      2008年以降は以下。(2008年だけダブリます)

      2008 2009 2010 2011 2012 2013
      大学等機関 236 205 207 207 213 217
      地方公共団体・教育委員会 37 54 62 55 66 86
      国際交流協会 131 130 137 106 161 139
      上記以外 117 171 146 157 160 165
      合計 521 560 552 525 600 607

      改めて養成講座の数の推移をみると、明らかに、2004年から2005年の一年間で飛躍的に民間の日本語学校の日本語教師養成講座が増えています。2004年はそれまで民間の日本語学校の管理組織が日本語教育振興協会の独占状態から全国日本語学校連合会の新設があった年でもあり、なんらかの働きかけで、規制緩和もしくは暗黙の了解が壊れたなどの動きがあったのかもしれません。

      前にも書きましたが、あくまで、東京で日本語教育関係のプライベートレッスンのビジネスをしていた者の実感ですが、2002,3年ごろは、学習者の減少がじわりと始まり、日本語教師の供給過剰が明らかになり、それまで教室で教えていた日本語教師達が一斉にプライベートレッスンに流れてきたころです。学習者と日本語教師の需給のバランスが崩れはじめたころに、日本語教師養成講座が一気に増えたことが、日本語教師の供給過剰に拍車をかけたのではないかと思われます。

      また、養成講座の講師は、ここ15年、ずっと4~5000人前後で推移しています。これは、日本語教師の専任講師の全体の数と一致します。民間の日本語学校でも養成講座の講師の数は1000人くらいなので、専任+長期契約の非常勤で講座を担当している可能性が高く、専任講師のかなりの部分は、日本語の授業と養成講座から収入を得ている人が多いと思われます。(給料制だと比率はわかりませんが、養成講座がないと自分の給与の保証は怪しくなる、日本語学校の経営も立ち行かない、ということは少なくとも民間の日本語学校の専任の講師は感じているはずです)

       ちなみに、1998年以降、大学および短大の日本語教師養成講座の数はそれほど変わっていません。留学生10万人計画がはじまったのが1985年、90年代はじめは、まだ未整備だった大学も、90年代後半には、受け入れ体制が整い、同時に日本語学科が設立され教師養成もはじまったということだと思われます。

       ある程度仕方のないことですが、どうしても、民間の日本語学校が主体になると、日本語教師養成講座も、その業界の平均値が基準になってしまうという側面があります。業界の平均的な学習者像、業界が主に利用する教材の使いこなしが中心になり、多様な教授法、特殊な環境、学習者の資質の違い、という面がおろそかになる。
      もうひとつは、例えば、PC関連の知識は日本語のみならずこれからの教師に必要ですが、日本語教師養成講座では一切扱われない。なぜなら民間の日本語学校のIT化なんて現時点では可能性はないからです。教材の音声は未だにCDで供給されています。それはMP3でサイトでダウンロードといっても理解されない可能性があるのと、教室でMP3を再生する方法を知ってる学校関係者はおそらく超少数派だからです。養成講座でHTMLやePub、タブレット前提の教授法を学んでも使う場所がないのです。

      日本語教師の需給のバランスはどこ?

      日本語教師の「需給のバランス」に関しては、どこにもはっきりとしたデータがありません。正しい数字が出てくることを願って、なるべく客観的な数字を元に勝手に試算してみます。

      最新版(2013年)の報告はこちら。
      http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/h25/

      これによると、講座の講師数と受講者数は

      大学等機関:2852:17403(4357)
      地方公共団体・教育委員会:215:2101
      国際交流協会:360:5821
      上記以外:784:4785

      で、合計が講座の講師数4211人と受講者数30110人となっています。大学は4年制がほとんどなので、年単位でいうと四分の一が修了するとして、新規の修了者は、毎年、約4357人
      一年単位で考えると、4357人にその他の修了者数を加えて毎年約17000人が日本語教師養成講座を修了していることになります。

      次に民間の日本語学校の養成講座を概算で出してみます。
      2013年の調査を元にすると、「上記以外」はほとんど民間の日本語学校と考えてもいいと思います。4785はそのまま民間の日本語学校の受講者数でもいいのですが、民間でも420時間ではない講座も一部あると思われますので、9割が420時間相当として約4300人の新しい教師が生まると考えてもいいかなと思います。

      一年で、17000人の養成講座修了者のうち「地方公共団体・教育委員会」「国際交流協会」の養成講座は正規の420時間ではない可能性が高いのでひとまず除外して、420時間の修了者に限定すると、日本語学校の4300人、大学の4357人と合わせて少なくとも8657人は有資格者の日本語教師が毎年誕生していることになります。

      年間の求人数は?

      一年の非常勤講師の募集の数がどのくらいあるか? 日本語オンラインの求人でざっと出してみます。
      http://nihongo-online.jp/net/
      「若干名」は基本1、2名でよい人がいれば3名でもいいかなというケースが多いので、いちお2名とします。登録だけというケースもあるので除くと、募集が多い月(入学時期が4月10月なので、年に2回程度)で100~200名、少ない時期は50名いくかどうかです。年間で約800名近くの募集があり、おそらく採用されるのは500名程度だと思われます。

      日本語教師は毎年新たな4300人が増えますが(9157人のうち大学の日本語教育学科の新卒が約4357人は残念ながら民間の日本語学校に就職しようとする人は少ないのでひとまず除外します)500名の募集は新規で500の枠が増えているわけではなく、前回で埋めた席に欠員が出て再募集という形がほとんどだと思います。

      日本語学校としてずっと定員割れが続いている、自らは新規の募集はできないのに日本語教師養成講座は続けている学校も多いと思われます。日本語学校の学生の状況については、日本語教育振興協会のサイトの「日本語教育機関を探す」
      http://www.nisshinkyo.org/
      に在籍学生数があります。本業の状況と日本語教師養成講座の関係、調べればいろんなことがわかるはずです。

      *ここ数年、国内の就職状況が知られてきたので、「海外で活躍!」という広告が多いですが、資格を取得したばかりの日本語教師が、海外で長期的に雇用されるという話はほとんど聞きません。

      年単位で試算してみる

      もちろん自然減もありますから、新規の増加分だけでなく、補填しなければなりません。「日本語教師の数」で述べましたが、国内の総数でいうと、2012年で専任で約4000人、非常勤が約10000人います。比較対象としては一般企業と公立学校の例が考えられると思いますが、一般企業の採用比率は景気や業績によっても変わるので、ひとまず公立学校の教職員で考えてみます。分母が大きいですし「自然減の補填」の比率を出すという意味では、それほど間違った数字はでないはずです。

      後にも出てきますが、全国の公立の小中学校の教員数は約66万人です。文科省の2012年の教員採用試験のデータがあります。
      http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1329248.htm
      小中合わせて採用数が21754人(受験者は122023人、競争率は約5.6倍)、補填するべき比率は3.2%となります。日本語教師にあてはめると、専任だけで計算すると毎年128人、専任と非常勤を合わせた数で出すと、448人です。後者は、ちょうど、求人数よりちょっと少ない数です。

      これに学習者の増加分が加わります。仮に1万人増加したとして、上の試算では多めにみつもって1000人ですが、学生数が増えた分をすべて新規の教師の募集でまかなうということは考えにくく、実際は、不足分が出たら、すでに存在している非常勤講師のコマ数を増やしたり、休眠状態だった非常勤などをあててまかなうことが多いはずです。学習者の増減は毎年かなり変化が激しいですから。

      これは一般企業でも同じです。非常勤の比率が7割の日本語学校の場合はかなり対応力があるはずです。1万人を仮に稼働している日本語学校が200として割り当てると50人。非常勤が10人いればコマ数増加でなんとかなります。新規募集するとしても1人くらい。200校すべてが1人新規募集しても200人の日本語教師がいればいいことになります。(これまでの例だと、1年で増えてもせいぜい1万人です)

      結果として、現実の求人数が500前後ということは、自然減の補填も実態はそれほど多くなく、学習者が増加しても、求人増に直結するわけではないという仮定とほぼ一致します。かりに多め多めで出しても、必要な数は学習者が急に増えたとしても、1000人を超えることはほとんどないのでは、と思われます。

      以上のことから、毎年、何人くらいの新人日本語教師を作ればバランスがとれるのか?は500人前後がリアルなところで、これに応募者数が3倍いればいいとすると、1500人。これに対して、有資格者の日本語教師は、民間の日本語教師養成講座で毎年約4300人、大学で約4357人、合計約8657人が、毎年生まれているというバランスがどうなのか?ということです。


      *ある年に必要な数より多く教師を作ると、その年あぶれた人が翌年に繰り越しで加算されていきます。数年であきらめてしまうのかもしれませんが、無視できない数であることは間違いありません

      ここ10年の推移
      ひとまず、受講者数は古いデータにはないので、わかりませんが、2013年で平均ひとつの講座で50人在籍しているということになりますから、過去に遡って仮で出すと、受講者数は、2004年に2万人ほど。10年でほぼ1万人増えたということになります。
      10年でのその他の数の変化をみると、、、
      2004年は留学生の数は、128500人、教師は29704人。
      2014年はおそらく留学生は14万人になるとして、10年で約1万人増加ということになりそう、教師はおそらく2013年から横ばいとして3万5000人なので10年前から約5000人増(1万人に対する増加率としては多いです。これは専任の比率が落ちていることが影響している可能性があります。パートタイムでしか働けない人が増えると、必然的に必要な人数は増えますから)
      ここ10年で新たに生まれた日本語教師は、民間の日本語学校の養成講座では、4300×10=4万3千人。大学で4万3570人。合計で、約9万6千人。
      1万人の学習者増に必要な教師の数は、日本語振興協会が「目安」とする1教室20人で計算すると500人です。(もちろん専任だけでやるとしてももっと必要だとは思います。先にあげた2012年の「専任+非常勤1人あたりの学習者数」は10.2なので、それで単純に計算すると約1000人です)

      養成講座修了後の困難

      運用面での問題はあるにせよ、養成講座は420時間数といちおうのカリキュラムの指針を見る限りでは、大学で取得する公立学校の教職と比較しても遜色ありません。ただ、他の資格もそうですし、公立学校の教職もそうですが、資格というものは、スタートラインにたてる権利を得た、というだけでその後にきちんと経験を積んで一人前となるという仕組みになっています。

      しかし最も問題なのは、養成講座修了後にしっかりとキャリアを積む道がないことです。
      まず、毎年、8657人に対して、500人の求人しかないという明らかに供給過剰であるという問題が最初の関門です。

      民間の日本語学校は、職場としては

      • ほとんどの場合、社員は数人から数十人の零細企業である。
      • 顧客(学生)が集まるかは時代により大きく変わる。国の審査もあり超不安定。
      • 正規雇用は3割以下の状態が10年以上続いている。
      • 教師の供給過剰は明らかで20年以上買い手市場が続いている。
      • 最低でも最初の3年ぐらいは非常勤で、時給は1500円前後でほぼ上がらない。月数万円程度。
      • 数年後、運良く専任になっても、年収は平均300万、長年勤めても500万まで行くかどうか。


      なのですが、雇用する側は買い手市場であることもあり強気です。最低の条件として

      • 大卒(4大卒)
      • 420時間の養成講座を修了、かつ日本語教育能力検定試験に合格
      • 外国語をひとつできること(その学校の学生の多数が話す言葉ができるほうが圧倒的に有利)
      • 他の教員ときちんとコミュニケーションできる。
      • 人前でもものおじせず話せて20人くらいを前に教室をコントロールできる


      を要求し、さらに

      • やる気があり、海外滞在経験があるといい。
      • できれば英語+もうひとつの言語ができる。
      • 日本語教授に関して常に勉強を欠かさない。
      • 学歴は高いほうがいい。
      • 報酬、待遇について要求が厳しくない(面接でいろいろ尋ねたらアウトだと思います)


      という人から採用していくのですが、あらためて見ると、これは一般企業でも欲しい人達の条件です。でもわざわざ日本語教師という仕事を選んで入ってきた人達、特に若い人が数年で仕事に希望が持てず辞めていくのを「やる気がない」「(最近の若い人は)続かない」と批判する関係者をよく見ます。だから「日本語教師は供給過剰くらいの状態で均衡がとれている」と考えているフシがあるように思います。

      次に運良く非常勤になった後の問題です。

      OECDの調査によると、日本の公立学校の教師の「授業時間数」は年間約600時間
      http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/26/teacher-oecd_n_5532451.html
      http://www.oecd.org/edu/eag.htm

      教師としてのキャリアをスタートして5年で3000時間。10年で6000時間です。私達は一般的に公立学校の教師に対して、5年目ならば「いちおう新人教師の期間は終えた」と考え、10年で「経験不足とはいわない、一人前」と考えるのではないかと思います。

      しかし日本語教師の場合は、資格を取得して運良く非常勤講師の職を得て、いくつか掛け持ちしても1年目は最大で年300時間程度(年収でいうと時給1500円で計算して45万円)、その後増えることはほとんどなく(次から次へと養成講座を修了した日本語教師志望者が応募してくるので)3年目あたりから、学校から「見込みなし」とされたら担当時間数は減っていきます。なんとかがんばっても公立学校の教師と較べて「新人教師の期間を終える」までに倍の10年、一人前になるまで20年かかることになってしまいます。年収は公立学校の教師と較べて半分以下でしかも昇給の可能性はほとんどない、で、たいていは、本気で日本語教師を生涯の仕事として考えている人から早い内に心が折れてやめてしまうというわけです。

      続けられる人は、他に収入が確保できる人だけになってしまいます。その結果、3~5年目以降は、日本語教師の仕事は非常勤として細々とキャリアを積むことになる。年数は長いけど授業時間が少ない教師、例えば、最初の10年で5000時間以下というキャリアの教師が増える。このそこそこ経験がある非常勤は、フルタイムではないので若い教師に十分な指導ができない。ほとんどの日本語学校には、フルタイムで働ける経験十分(10年以上1万時間以上)の中堅の若めの日本語教師(どんな職業でも中核を担う重要な世代で、ここが本来多くないといけない)がとても少ないという印象です。

      専任が3割、非常勤7割という比率で、中堅の教師が非常勤というバランスでは、0の教師を3にすることはできる。本人の努力と資質があれば3から5の教師になることができる。5の教師は「経験者枠」として他の学校でも非常勤としてやっていける。(ただしよほどのことがないかぎり一生非常勤)しかし5の教師を10に育てる日本語学校はどこにもない。ということになっているのではと思います。

      非常勤になり、どうしても日本語教師を続けたい人は、早めに民間の日本語学校の道はあきらめて、(こちらも今や厳しい道ですが)大学で修士を取得して大学で教えるか、海外で仕事を探す人もいます。ベトナムやインドネシアなど、日本語教育の仕事があるところで就職しキャリアを積む道です。
      ただ海外の道の先に何か希望があるかはわかりません。政変でも起こったら一発でアウトですし、政権が変わり「日本シフト」の風向きが変わったら学習者が激減することは、これまでの他国の例からもわかっています。順調にその国が発展して人件費があるラインを越えたら、ごっそり工場が他国に移転することもよくある話です。日本語教育のような「後方部隊」は、そのまま置き去りにされるわけです。

      帰国しても実質的に就職先は民間の日本語学校しかなく、海外体験をアピールできれば就職はできるかもしれませんが、たいていの人は海外で数年仕事をした後は外国語の能力を活かして転職する道を選びます。

      「教師の養成」は、資格取得後のキャリア設計とセットでないと意味がありませんが、これまでの日本語教育業界は、日本語教師が安心してキャリアを積める場ではまったくなかったのです。

      日本語教師が日本語学校でキャリアを積む茨の道

      ここで、リアルな日本語教師像というものを一般の方にも知っていただくために、いろんな日本語教師から聞いた話を総合して平均的な日本語学校像を書いてみます。この記事のいろいろな提案をご理解いただくために助けになるかもと思いますので。

      2012年のデータをみるかぎりでは現在国内で、日本語教師でゴハンが食べられるのは4000人程度です。専任の仕事とは、大学の留学生別科や民間の日本語学校にある席のことです。留学生別科は修士以上の資格が必要ですし、国際交流基金の募集も年に数名程度ですから、一般的な大卒の日本語教師にとっては民間の日本語学校の専任の席がほぼ唯一の「固定給」の道です。
      専任の席は、上の調査によると1500前後。平均年収はいくらなのか? ちゃんとした調査がないのでわかりませんが、中途採用の募集で250万円から。平均300万円前後で、あまり昇給は望めない、というところだと思います。専任の募集は少なくとも数年から10年程度の経験が条件となっているので、まずは非常勤の募集に申し込むことになります。非常勤だと民間の日本語学校で常時若干名の募集が途切れない程度にはあります。


      日本語学校の非常勤講師とは

      最初は非常勤講師です。時給や担当コマ数で計算されることが多く。まずは数コマやることになり、無難にこなせば学期の変わり目、三ヶ月後、六ヶ月後、にちょっと増えるというカンジです。1コマ40分としていちお1時間と換算して、時給1500円前後。ただし月数万円あたりが上限というケースが多いようです。2,3校かけもちしたり、プライベートレッスンを紹介してくれるところに登録したり、合間にバイトをしたりで、なんとか家賃を払う。というのが非常勤講師の一般的な姿だと思います。

      教師全体で専任が1割、非常勤は3割というデータがありました。また、実際の学校での比率は専任3に非常勤7くらいであることは日本語教育振興協会の調査でもわかっています。数字では表れない部分ですが、この非常勤の「7」のうち、専任になりたいという人はおそらく(多めに見積もって)2くらいです。残りの「5」は、フルタイムの仕事はしない。非常勤のままでいい、そのほうが都合がいい、あるいは資格をとったので経験のためちょっとやってみたかった、という人達です。

      日本語教師に興味があり、ボランティアからスタートし次にステップアップしたい非常勤になりたいと考えた時、現実的には、この全体の「5」の「非常勤でいつづける」ことが最重要という腰が重い非常勤教師達の席が空くのを待つか奪わなければなりません。この「5」の人達が非常勤のままでいるために行わなければならない最大の努力は「待遇や賃金に不満を言わないこと」です。買い手市場の中、サービス残業も厭わずやる、簡単な**語の翻訳、通訳的な仕事も無償あるいは時給の範囲内でやる、みたいなことも、じわじわと増えてくる。

      この「5」の、自らの待遇に関して諦めた非常勤講師達が作る空気は、やる気のある新人日本語教師の心を折ります。もちろん、これらは長年かけて雇用側の意識が育ててきた空気が生んだ人達であり、さらに、脆弱な経営基盤でも、教師を育てず、日本語を教える力で競争しなくても、あるいは学生数が少々減っても、生き延びられるような業界の体質、構造に問題はあるのではないかと思います。

      もうひとつ、日本語教師志望の方のために付け加えると、ボランティアから非常勤になるためには、上だけじゃなく下からの圧力も大きいことも忘れてはいけません。つまり、今、ボランティアで熱意をもってやっていて学校でも教えてみたいという人、あるいは養成講座を終えて日本語を教えてみたいという人(あなた?)が運良く非常勤になったとして、(そろそろ「選別」を受ける)3年後には、あなたの日本語学校がやっている日本語教師養成講座を修了した3年前のあなたのような人があなたの席を奪いにくるわけです。「とにかく教える経験がしたい」「時給はいくらでもいいですから!」と。

      この20年間、日本語教師の離職率は極端に高いままです。しかも、職業としてまじめに続けようと考える人から辞めていきます。最初の数年はどんな仕事でも勉強が必要な時期でハードです。時給の安さだけではなく、雇用の不安定、将来性などを考え、心が折れて転職、というパターンです。ほぼ5年以内に。今、民間の日本語学校は、3割の経験20年以上のベテラン専任講師と、残りを、5年以下の非常勤を入れかえながらまわしているようなところがたくさんあるはずです。

      「日本語教育力」で勝負する業界に

      ほとんどの民間の日本語教師養成講座は不要

      すでに20年以上、200の大学の日本語教育学科で日本語教師の資格をもった新卒生を毎年約4000人以上出し続けていますが、残念ながら、この人達は民間の日本語学校に就職を希望せず、一部、院に進んで大学で教える道を選ぶ人を除き、ほとんどは一般企業に就職します。本来ならば、民間の日本語学校はこの人達の有力な就職先となるべきですし、そうであれば、民間の日本語学校が自前で養成講座を行う必要はなく、入社後の研修プログラムだけでいいはずです。新卒の日本語教育学科の学生の就職先となるためには、給料体系や雇用のシステムも大事ですが、何より、業界に健全な競争があり淘汰を受ける中で、将来も勝ち残れる経営力があると学生に思わせなければなりません。日本語学科の学生は冷静にみて判断しているのだと思います。

      需給のバランスをみても、日本語教師養成は、本来なら大学だけでも十分なのです。民間の日本語学校が新卒で就職するに値するところであるなら。

      日本語教師養成講座には、より強い監視と規制が必要です。例えば、講師は修士もしくは博士課程修了者に、講座の運営も、学校法人格の学校に限定するなどの措置をこうじる。また、強い規制下におくことで、日本語教師の需給のバランスを考慮した調整も可能になります。
      また、この規制強化によって養成講座を失った民間の日本語学校は、日本語教育で勝負できないところは淘汰され、日本語を教える力、教師を育てる力をもった学校が残る(かどうはわかりませんが、少なくとも経営基盤がしっかりしたところが残り、教育業界として健全な場にはなります)。少なくとも資格を取得するための養成講座を準学校法人を除く学校法人(日本語学校は2012年の調査で学校法人・準学校法人で合計126校ですが、かなりの部分は準学校法人のはずです)に限定すればほとんどの日本語学校は養成講座を手放し、日本語教育だけで勝負することになります。結果、市場規模に応じた適正な数に調整されるような方向のほうが合理的です。民間なのですから、企業として新卒がとれる力のある学校が残ればいいわけです。もし民間の日本語学校が「教えるノウハウ」をビジネスに活用したいなら、資格取得とは別に、既存の教師のブラッシュアップの講座に力を入れればいいと思います。受ける価値がある講座だと認知されれば人はあつまるはずです。新宿日本語学校なら、長沼なら、と考える現役日本語教師はいるはずです。

      同時に場合によっては、国会質問にあったような教室での学習者数の一部規制緩和をしてもよいと思います。「日本語教育力」だけで勝負していくためには、民間ではどうしても大教室の利用など、ある程度の大規模化を進める必要が出てくるはずです。規制緩和によって、スケールメリットが明らかになれば、提携、合併、他業種との提携など整理統合が促進される可能性があります。長く日本語教育に関わってきた日本語学校が救われる可能性が高くなります。民間の業界本来の競争が生まれ、きちんと「戦える学校」が残れば、次の時代に向けてのIT化なども進むはずです。

      *現状では絶望的。震災の際にウェブサイトで情報提供した学校は私の記憶している限りで3%くらいです。残りのほぼすべての日本語学校のサイトは、震災後もずっと「入学生募集!」というトップ画面でした。

      近い将来

      今は世界中の大学がアジアで学生を奪い合う時代です。民間の日本語学校に同じ土俵で勝負するのは可能でしょうか?

      おそらく近い将来、国は初級から中級レベルにかけて日本語学習のためのネットワークを作らざるを得なくなるはずです。他国と同じように、少なくとも初級から中級までは無償でプロの日本語教師から日本語教育が受けられる体制を作らざるを得なくなる。民業圧迫といっても、現在、日本語の学習が必要な人達のわずか7%の3万人程度をカバーするのがやっとの「民業」では、100万人の日本語学習需要には、対応できないことはあきらかです。
      民間の日本語学校は、淘汰を受け、適正な規模に縮小しながら、新しい行政サービスとしての日本語教育との棲み分けを余儀なくされる。進学予備校として生き残るか、大規模化するか、ビジネスやプライベートレッスン、法人需要など大都市で特殊なニーズに応える業界に変わり、留学生を受け入れる大学とも棲み分けしていくしか選択肢はないのではと思います。

      ごくわずかな例外を除いて、日本語学校を中心にした民間の日本語教育業界は、もう長い間(少なくともおそらくここ20年ほどは)教師が安心してキャリアを積める場所ではありませんでした。すでに教師を育てノウハウを蓄積し日本語教育の発展に貢献するといったことができる業界構造ではなくなっており、経営規模からいっても、人的資源に対する投資ができないだけでなく、設備の充実、例えばITへの本格的な先行投資なども、ほぼ不可能だと思われます。

      今後ますます厳しくなっていく国際的な留学生の獲得競争の中、日本の大学が、自らの学位の価値で勝負できるかどうかという時に、年間70万円の学費と割高な都会の生活費が必要で学位もない民間の語学学校に勝算はあるのか、そして、このような業界を守る意義はあるのか、考え直す時期に来ているのではないのでしょうか。

      また日本語教師も、20年間、多くの教師にとって安心して未来を預ける場所ではなかった民間の日本語学校に、今後も期待しつづけるのはリスクが大きすぎるのではないかと思います。そろそろ日本語教師は、特に若い人達は、日本語学校に決別する時期です。
      民間の日本語学校の業界で、淘汰と整理統合が進み、結果として民間の日本語教師の席は少なくなっても、経営基盤がしっかりした学校が残り、職業としての日本語教師の道筋ができるほうが「本気の」日本語教師にとっては都合がいいのです。

      日本語教師養成講座と日本語教育能力検定試験

      現在、日本語教師として民間の日本語学校やJICAなどで出される条件にこの2つがあげられることが多いようです。で、なぜか採用条件は「どっちかでもいい」「ふたつともが望ましい」「試験合格者のほうが」「420時間修了者が」とマチマチです。結局、2つあったほうが有利だろうと、講座を受けて試験勉強をすることになります。勉強することはほぼ同じです。

      日本語教育能力検定試験の受験者、合格者の推移です。
      http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/graphs/2014_jltct_1_obo_juken_gokakusya.pdf

      毎年、養成講座を約17000人、そのうち少なくとも9157人が420時間を修了していているわけですが、そのうち、修了者のうち日本語学校などで就職しようと考えた人は受けると考えてもいいかもしれません。ピークは1992年の8723人、ちょうど一般企業から日本語教師に転職したりという時代でドラマの主人公が日本語教師であったりと、第何次かの日本語教師ブームでした。(90年初頭は、日本語教師はまだ「職業」だったのです)その後2003,4,5年あたりに8000人に到達して以降は減少に転じ、現在は5000人前後、ただ、合格者は、常に1000人前後と一定です。

      私は、この資格の重複も無駄だと思います。420時間の日本語教師養成講座は、内容を精査し、修了試験などを管理し、きちんと立て直せば、元々、公立学校の教員の勉強と同じくらいの学習時間なわけですから、十分に日本語教師の公的な資格として生まれ変わることが可能だと考えています。(養成講座の修了試験を分離して講座修了と修了試験をセットで要件にしてもいいと思います)
      日本語教育能力検定試験は所詮試験です。一発勝負で公教育の教師として認定するものにしていくのは無理があります。
      ここは、必要ならややレベルを下げて、ボランティア教師の採用条件として作り直す。ということで棲み分けするのが合理的です。検定試験に関わっている日本語教育学会は、日本語教育の研究で得られた知見をペーパーテストではなく、養成講座の立て直しのほうに使うべきなのではないでしょうか?

      日本語教師養成講座が向かうべき道

      2014年、文科省は、公立学校での日本語指導が必要な児童(現在約6万人前後?今後増えることは確実です)への日本語教育について、リタイアした国語教師などをあてる方向で検討をはじめました。報告書には「日本語教師」「資格」という言葉は一切出てきません。元々、日本語教師養成講座の420時間は、文化庁の指針がベースに作られたものです。それにも関わらず、完全にスルーされてしまったという事実は重い。日本語教師養成講座は、今後、国内で信頼をとりもどし、日本語教師という仕事が職業として確固たる地位を確立するためにも、少なくとも、ここに認めさせる方向で改革していかないとまずいわけです。

      以下、文科省の報告書の「指導者」に関する部分の全文です。

      「特別の教育課程」による日本語指導は、小学校、中学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の小学部及び中学部に在籍する日本語指導が必要な児童生徒に対して、学校教育の一環として行うものであることから、日本語指導担当教員(主たる指導者)は、教育職員免許法により授与された、実際に指導を行う学校種に相当する教員免許状を有する教員(常勤・非常勤講師も含む。)とする。なお、定年退職した元教員を再任用して活用することも考えられる。

      ○ さらに、日本語指導担当教員には、児童生徒一人一人の実態を的確に把握した上で、当該児童生徒が学校教育において各教科その他の教育活動に日本語で参加できるようにすることを念頭に、指導計画の作成や児童生徒の学習評価の実施等も含め、きめ細かな指導を行うことが求められる。したがって、日本語指導に関する専門的な知識・技能及び個々の児童生徒の実態に応じた指導を行える指導力を有した者を充てることが適当である。

      ○ また、日本語指導補助者として、これまで地域や学校において日本語指導に携わってきた経験を有する支援員等を活用することは極めて有効であり、日本語指導担当教員が作成する指導計画に沿って、当該教員が行う日本語指導や教科指導等の補助を行ったり、学校と保護者との間で母語による連絡調整等を行ったりすることなどが期待される。

      ここに「420時間の日本語教師養成講座を修了したものをあてる」とかかせないとダメです。なぜ、日本語を教える勉強をし、経験を経てきた専門家が「補助」なのか?と怒るべきです。

      日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する検討会議の議事録は以下に。
      http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003.htm

      私は、そろそろ日本語教師は仕事をする場所としての民間の日本語学校に決別する時期だと
      思います。どこで働くか? それは今後、全国に広がっていくであろう「地域の日本語教育のニーズがある場所」です。

      国内日本語教育の新しい時代 


      これまでは、日本語の学習は必要な人達は、外国人労働者を大量に採用する企業の城下町みたいなところか、留学生が集まる大学や日本語学校が集まる大都市中心で、それぞれの場所で手当てできればOKという空気がありました。「特殊な自治体」は補助金出すよ、でなんとかなる、くらいのカンジです。文化庁の地域の日本語教育の設計を担当する日本語教育アドバイザーも自治体によって偏りが大きいです。
      http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/h24/pdf/h24_zenbun.pdf

      しかし、「国内の日本語学習者の数」で書きましたように、実はこれまでも外国人技能実習制度では農家、酪農家、漁業の現場などで多くの外国人労働者(2012年で16万人)が働いていて、日系の永住者(2012年で20万人、2014年で18万人)も日本語学習の環境が不十分だったことがわかっています。また、公立の小学校や中学校では平均で一校に2人は外国人児童がいるという調査結果(小中学校は全国で合計約3万校)も出ています。

      さらに今後、研修生制度が建築やインフラ整備などへ拡大され、EPA協定などによる介護士看護師の派遣によって、介護や看護での労働者が増えると、特定の職場付近だけでなく、日常の生活圏で外国人労働者が働き生活することになります。特に介護の職場は、特定の地域ではなく、全国に均等に存在します。従って、日本語の学習が必要な人達も日本全国に均等に広がっていくことになります。

      介護職員の不足の見通し
      http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000047617.pdf

      平成24年介護サービス施設・事業所調査の概況(PDF)
      http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service12/
      平成25年介護サービス施設・事業所調査(CSV)
      http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?toGL08020101&tstatCode=000001029805&requestSender=dsearch

      現在、国内の介護士は150万人。これが2025年に250万人が必要で国内の供給だけでは30万人の不足となると言われています。仮にこれをすべて外国人介護士で補填すると12%。ほぼ9人に1人が外国人介護士となります。(また介護士は、滞在期限を設けず永住の道を用意しないと集まらないのではないかと言われ、実際に検討されています)

      2012年で、国内で介護士が働く施設が約9万なので、25年には施設も、15万くらいになる可能性があります。介護施設の1施設あたりの介護職員数は介護施設の種類や規模によって違います。だいたい7,8人から50人まで。規模が小さい介護予防施設を除いて考えても、1つの介護施設に最低でも外国人介護士が1人程度はいることにはなります。

      2025年には、介護施設の数は、中学校一校(全国で約2万)の学区でおそらく最低でも7.5の施設があることなります。今、日本に住んでる方は、自分の地域をグルリと見回しても(googlemap で介護施設で検索してみてください)、このくらいは見つけられるはずです。つまり、中学校の1学区に最低でも7.5人、中学校2つなら15人の外国人介護士がいることになります。(看護師はどの程度になるか予測がつきにくいので、ここでは書きません)

      近い将来、ある地域で日本語学習者がいる、日本語学習のニーズがあるというのは次のようなイメージになっていくのではないでしょうか。

      平均的な地方の校外の町、車で片道15分以内に、モールかスーパーがある生活圏、そのエリアに小中学校が合わせて5、6校くらい。介護施設は大小あわせて15以上、大きな病院が1つ。駅から離れると田んぼがある。

      これですでに外国人児童が12人(平均)、介護施設で15人程度、道路整備や農家などで数人働いているとして、最低で30人程度は日本語教育が必要な人達がいて、外国人技能研修生や日系の人達などがいる地域はもっと多い。どの地域も将来増える可能性は高い。

      ここで、問題になるのは、後述する「日本語教育に使われる税金」でもふれますが国内の日本語教育に関わる監督官庁がバラバラだということです。外国人児童は、文科省が2014年にリタイアした国語教員と地域の教室などで手当すると方針を出しました。文化庁は「日本語教育コーディネーター」が地域の日本語教育の指導をするとしています。EPAで来る看護師、介護士は、厚生労働省が担当です。厚労省系の「国際研修協力機構」で「日本語指導アドバイザー」がやることになっています。それぞれの官庁が自分の関連法人に委託するという形が多いです。
      これら国のサポートとは別に、自治体はまた別にボランティアの日本語教室などに年間十万円単位で補助金を出したり、自前で日本語教室を主催したりしています。

      国内日本語教育の一元化&ネットワーク構築を 

      日本語教育を学習者単位ではなく地域単位で切りわける意義

      まず、これは一般の方にご理解いただきたいことなのですが、おそらくは行政上の効率だけでなく、日本語教育からいっても、学習者別に分けるより地域単位のほうが合理的です。なぜなら教える方法は、学習者の違いでは、特に初級から中級、つまり最も重要な部分では、ほとんど変わりは無いし、専門的な用語などが加わったとしても、日本語教師が、職業上必要な勉強の範囲で十分対応できるからです。(例えば学習者の母語が、ポルトガル語、中国語、インドネシア語だったとして、それらの基本的な知識と日本語教育上おさえておくポイントの勉強程度なら普通にやります)

      介護や看護、児童教育、それぞれに研究や勉強は必要ですが「専門の」日本語教師は不要です。学習者の環境は仕事によって常に違いますし、そこで使われる日常会話も違いますが、それを考慮して教えるのは日本語教師にとって普通のことであり、例えば、金融関係者、スポーツ選手、高齢者など、それぞれに専門の日本語教師が必要ということはないのです。(英語や中国語で考えてみて下さい)

      国内の学習者の環境を考えた時、おそらく最も日本語を教えるうえで困難になり、日本語教師が時間を割いて勉強しなければならないことは、方言です。日常会話レベルで、学習者がふれる日本語で、文法や発音そのものが変わることがあるわけですから。教師は、初級レベルであってもいろいろと対応せざるをえないケースが出てくると思います。「介護士向けの日本語教育」というものがあるとして、そのカリキュラムで勉強したとしても、実際に仕事をする地域の言葉がわからなければ、どうにもなりません。介護、看護の仕事では時に方言の理解が生死に関わる可能性もあります。

      日本語教育は、学習者別ではなく地域ごとに切りわけるほうが合理的です。ただし、これは地元の言葉がわかる教師でないとダメということではありません。その地域の出身者であるかどうか、方言のネイティブかどうかは関係なく、そこの方言を、日本語教育として教える枠組みに組み込んでいく、という作業が大事になってきます。これも、その地域で継続的にプロの日本語教師が仕事をすることになればしっかりとしたものができあがるはずです。地域でプロの日本語教師が継続的に雇用される必要があるのです。

       日本語教育の研究者、関係者の方々もこの点、ちょっと注意してください。児童、医療の日本語の専門性は強調しすぎると、それが省庁や関連法人の縄張り争いの根拠として利用されてしまう可能性があるということです。もちろんすでにその「**日本語教育の専門化」というジャンルから利益を得ていて、細分化したほうが都合がいい、という関係者もいるわけですが。

      公立小中学校をベースにした日本語教育ネットワーク

      今、全国で小学校が約2万、中学校が約1万校あります。外国人児童数は小学校が約43000人、中学校が約22000人なので、だいたい小中共に1校に2人はいることになります。(実際に日本語教育が必要な児童はもっと多いと思われますが、文科省が日本語学習が必要とする対象のこの数字でひとまず進めます)

      政府統計 小学校関連 H26年度
      http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001055957&cycode=0

      → 小学校 教員 約31万人。教頭以上 約4万人 外国人児童数 43000人

      政府統計 中学校関連 H26年度
      http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001055958&cycode=0

      → 中学校 教員 約19万5千人 教頭以上 約2万人 外国人生徒数約22000人

      文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する検討会議」の議事録。
      http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/kaigi/1321199.htm
      こちらに必要な数に関するレポートが。
      http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/04/__icsFiles/afieldfile/2013/04/03/1332660_1.pdf

      小学校の数は全国で約2万、中学が約1万です。

      国内の日本語教育において最も予算が割り当てられ(公立学校での手当てだけで約80億)権限をもっているのは文科省です。学校を軸に地域をカバーしていく方策が最も自然で無理のないやり方ではないかと、平均の数をベースに考えてみました。

      日本語教育ネットワーク

      ■ 中学校2つの学区(同学区内に小学校4つがあると仮定)に一人の日本語教師を置く。
      ■ 小中あわせて6校に一人。公立教員と同じ身分で雇用し、学校を基地にする。
      ■ 日本語教師は児童の他に担当エリアの介護、看護、技能研修生などすべての外国人在留者の日本語教育を担当する。
      ■ すべての外国人在留者と日本語の学習が必要と認められた人は無償で500時間の授業を受けることができる。
      ■ 日本語教師は担当エリアで日本語教育が必要な人の「掘り起こし」もする。
      ■ エリアの担当教師は、学習者数に応じて増員するが、最低1人の配置は維持する。
      ■ 県に50~100人、全国で最低でも5000人の日本語教師が地域に常駐することになる。
      ■ 48万人の潜在的な日本語学習者に対して五千人の教師は一人あたり百人。対応可能である。
      ■ 国>県>方言区域>さらに下位のユニット、という区分。
      ■ 県か方言区域単位でひとつ施設を。そこで技能研修生や介護看護の人への集中講座を。

      というものです。

      *500時間は、ざっくりと初級で300時間、初級で学習したものの定着と地域日本語で+200時間としました。時間数は専門家で決めればいいと思います。

      例えば、1人の日本語教師が公立の小中学校の職員として、中学校2つのその学区内の小学校4校を担当するとします。
      担当する児童は12名。12名を1人の専任でやるのは、公立学校の教師の負担として軽すぎないか?ということになるかもしれません。

      しかし、前述のように、2つの中学校の学区には介護、看護施設がかなりあります。
      http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service12/dl/kekka-gaiyou.pdf

      これによると、介護予防施設を除いても、最低でも、ほぼ小中学校と同じ数(将来は倍)の介護施設があります。病院はもうちょっと多い。どの程度EPA関連の派遣がされるかはわかりませんが、ここの手当を公立学校の日本語教師が兼任することにすれば、ひとまずここを、きっちりカバーできる体制は作れます。2つの中学校の学区はだいたい車で30分くらいの移動距離です。なんとか1人の教師でまわせるのでは、と思います。

      これで、学校ベースで考えれば、5000人のフルタイム勤務の日本語教師で、現状、全国をほぼカバーする日本語教育のネットワークができ、かつ、外国人児童と介護、看護、技能研修生、その他の地域特有の日本語教育のニーズにも応えることができます。学習者数が増えても、非常勤などでカバーし、ボランティアでサポートしていけば、近い将来、学習者が増えても、倍の1万人を越えることはないと思います。また、地域によって外国人技能実習生が多いところ、日系の人達が多いところは、ネットワークの中で人数に応じて増員することで対応できます。ベースとなる5000人だけなら小中学校あわせて3校で1人の教員が増えるだけです。

      実現すれば、県に50~100人の専任日本語教師が常駐することになります。これで県単位で日本語教育センターみたいなベース基地作りができるはずです。県か方言区域単位にひとつ日本語教育センターがあり常勤の日本語教師が教室を持つことができれば、外国人技能実習生の一時受け入れの日本語研修の場所にもなります。実際に実務研修をする県で集中的に日本語研修をプロの日本語教師から受けることが出来ます。実習生がじっさいに働く現場では、方言が使われている可能性も高く、実務研修が行われる地域でプロの日本語教師のサポートを受けることは、とても重要だと思います。

      そこで方言と日本語教育の研究もやれます。県単位で教材も作ることができます。防災など日本語を母語としない人達の言葉の問題をカバーできます。今は、県にひとつは日本語教育関連の学科をもつ大学があるのではないでしょうか?研究面で連携できます。事務職も含めて大学の日本語教育学科の卒業生の就職先としても魅力的です。

      ネットワークが整備されたら、次はオープン化です。例えば曜日ごとに日本語教室を開放して、研修生や日系在留者、外国人児童以外の在留資格者に対しても、日本語を勉強できるチケットを配布したり、(中上級レベルは)販売したりというような制度も可能だと思います。先進国では一般的な「在留資格を持ったすべての人が無料で受けられる公的サービスとしての日本語教室」となるわけです。

      もちろん、5000人強の日本語教師の安定雇用が生まれることで、日本語教育に厚みが生まれます。様々な日本語教育のノウハウの蓄積と共有が効率よくできるようになります。児童教育だけでなく、介護、看護、研修生に対する日本語教育の研究も進みます。ネットの活用も、このネットワークにのせるだけです。海外の日系の方々への継承日本語教育やもちろん一般の学習者、教師との情報の共有のベース基地になると思います。
      民間の日本語学校を中心に続いてきた「教材とサイト、教え方のマニュアルを作り、あとは丸投げ、教師は5年くらいでやめていく」という今の日本語教育の状況に較べて、しっかりと現場からのフィードバックがあり、議論があり、それをきちんと職業として何十年も続けてきた教師達が現場でしっかり授業をしてくれるほうがいいに決まっています。

      行政の縦割り問題など障壁は大きいですが、一本化して質の高い日本語教育を提供するほうが、効率的ですし、必ずトータルのコストは低くなるはずです。それぞれの地域で、外国人児童とEPAと地域の日本語教育を分ける理由はありません。このネットワークがきちんと構築できて地域に日本語教育の基地ができれば、ゆくゆくは、地域の大学と連携して地元の留学生の日本語学習のアウトソーシング先、地域の文化、方言研究の基地(収集し発信する基地)として機能するところまでいけるかもしれません。

      文科省の下で、ということになるのかもしれませんが、移民庁ができるなら、そこになるのかもしれません。いずれにしても、一元化することが重要です。中学2つの学区に一人の日本語教師は、たとえ学校に日本語の学習が必要な児童がいなくても置きます。介護施設だけでも必ず需要は出てくるからです。学校はあくまでベース基地。地域の日本語教育の担当者として常駐し、地域で日本語の学習が必要な人を掘り起こすことも重要な仕事のひとつとなるでしょう。もちろん、より大きな枠組みの中で、時には近隣のエリアのヘルプに行くこともありえます。ネットワークをどういうエリア単位で作っていくかは、今後の課題ですが、県を方言の区分でエリア分けすることも検討されるべきでしょう。

      これからの日本語教師の在り方

      ボランティア教室をプロの教師の仕事場に

      ボランティアがプロの日本語教師の働く場所を奪っているという議論がもう10年以上続いています。これは、YESでありNOです。現在、少なくとも民間の日本語学校ではボランティアをメインに雇うところはほぼないはずです。この点において、職場を奪っているとは言えません。プロ志向の日本語教師の職場を奪っているのは、前にもふれた、民間の日本語学校の体質が生んだ、「専任を目指すわけでもない、ただ非常勤でいつづけることが目的の非常勤講師達」だと私は考えています。

      しかし、本来、プロの教師が働くべき潜在的な職場が、ボランティア教師で手当され、それが、今後も続いていくならば、ボランティア教師やボランティアの日本語教室の存在は、プロの教師が本来働くべき職場を奪うことになる。この意味でYESとなる可能性があるわけです。そして、もうひとつ、大事なことですが、学習者にとって、質の高い日本語教育を提供する阻害要因にもなってしまうと思います。

      私は、現在、ボランティア教師が担っている地域の日本語教室をプロの日本語教師の働く場所にすべきだと考えています。といってもボランティア教師から仕事を奪おうということではありません。

      ボランティアの日本語教室をプロの現場に変えていくことが大事です。ボランティアの日本語教師は、資格がなければ取得して、資格を持っていれば正当な報酬を要求すればいいのです。そういう制度を作ることを進めて欲しい。フルタイムで働ける環境であれば、日本語教室は、資格をもった日本語教師の中でも「本気の」教師を確保できます。これは、「なんらかの規制で改善するか?」で述べたような規制をかけるだけで実現します。もし「日本語教育ネットワーク」が実現すれば、そこに組み込まれるのもよし、また、ボランティア教室として継続するならば、ネットワークの補完的な存在としてフルタイムでは働けないボランティアの教師を補助員としてネットワークに派遣しする基地となったり、日本語教育以外のサポートに徹したりという役割分担をすることも可能だと思います。
      今のままでは、ボランティア教室に関わる人達ががんばればがんばるほど「日本語学習のニーズはボランティアで手当て可能」という先送りの理由となってしまいます。しかしそれは近い将来必ず破綻するのです。

      ボランティアの比率はどのくらいが適切なのか? 

      概要の数字が示すとおり、現在は、専任1、非常勤3,ボランティア6です。この比率では、教師の供給も破綻するのは必至なので、中長期的に、適正なバランスに変えていく目標設定をする必要があると思います。ただ、現時点では、はっきりとは、わかりません。

      少なくとも日本語教師にとって、日本語教師が職業として認知され、新卒の学生の選択肢のひとつとなるには、と考えると、ひとまず、6割がボランティアという現状は変える必要があります。しかし、日本語の教室で、ボランティア教師が活躍する余地はありますし、現状2万人もの人がボランティアで日本語を教えてもいいと考えるのならば、プロの教師への移行を促すとしても、ある程度は残る可能性があります。意欲があればボランティアとして活躍していただくほうが合理的だとも思います。適正な比率を維持しつつ、きちんと棲み分けがされていれば問題ないわけなので。

      適切な比率は何とも言えませんが、ひとまず現実的な目標設定として、専任5割、非常勤3割、ボランティア2割 あたりかなと考えました。(国際交流基金の日本語専門家の配置は専任3と非常勤1なので、本来なら専任6非常勤3ボランティア1でもいいんですが、現実的なラインで妥協して出してみました)この専任1非常勤3という比率が専任5非常勤3になるということは、フルタイムで働ける人が増えるということにもなります。非常勤のモチベーションも高い人が集まる可能性が高くなり、全体で必要な日本語教師の数は当然減ります。ボランティアはもちろん、「食えない非常勤」を3割確保するメドもたたないのであれば、正規雇用で確実に補填し、少ない人数で手当てするほうが確実で合理的、効率的でもある、質的保証も確実、というわけです。

      *2020年までに留学生を30万人にする計画がありますが、かなり苦しいと思います。20万人を突破できるかな、ということで考えるのがいいかもしれません。(減る可能性もあります。特にオリンピック後)

      *この正規雇用が増えれば、教師の数は少なくて済む、ということも正規雇用を増やす大きなコスト面でのメリットです。ハッキリとした予測はできませんが。


       もうちょっと先の将来
      これも私の勝手な見立てですが、おそらく、今後ボランティア日本語教師は確保が難しくなっていき、減ると思います。今高齢のボランティアは年金に余裕がある世代。あと10年くらいでこの層が年齢的に厳しくなります。中年世代は、介護保険制度が変わり自宅での介護がより必要になりました。中高年のボランティアは確保が難しくなる可能性が高い。(すでに日本語教育能力検定試験の受験者数は全世代で右肩下がりであることは最初の表にあるとおりです)現状の2万人の確保は今後難しくなるはずです。若者は将来がない仕事はますます選ばなくなる。その場しのぎなら他の仕事を選択するようになる。そっちのほうが時給も高いし待遇がいい、ということになる。結局、近い将来、日本語教師は、非常勤で手当するしかなくなるのでは?と考えています。

      今後の「日本語教室」の在り方 

      ボランティア教師の主たる活躍場所は自治体が主催する日本語教室や民間のボランティアグループや個人がやっている教室です。
      文化庁の調査の「6割のボランティア教師」は、現在、ほぼ、ここで日本語を教えているはずです。(中には非常勤で日本語学校でも働いている人もいると思います)ひとまず、日本語「学校」と区別して「日本語教室」と呼びます。
      この日本語教室に通うのは、現在、十分に国で手当てがされていない日本語学習が必要な児童や、仕事の都合や結婚などで日本で生活するようになったけれども近くに学校がない、あるいは通う時間やお金がないという人達が多いようです。「国内の日本語学習者の数」で書いた48万人から、14万人の留学生を除いた数、34万人のうち、18万人の日系の人達、その家族(あるいは16万人の外国人技能実習生はない?)などをサポートしていると考えられます。

      民間のボランティア教室への補助は、国からも多少ありますが、基本、自治体(多くは市単位)単位です。これはおそらく自治体によって偏りがあるので全国一律では対応しないほうが効率的という判断なのだと思います。
      補助は申請をして、認められれば年間10~30万円程度、特別に多いところで100万円。備品と講師への交通費と薄謝の費用になるかどうかでしょうか。自治体単位でやるかぎり、これは変わらないと思います。ボランティア教室の運営は大変です。現状では、そこで日本語を教える日本語教師も貴重な存在です。現時点では、プロの日本語教師やプロ志向の日本語教師は、この人達を単純に「自分達の仕事を奪っている」と考えてはいけないし、そう言ったところで何も解決しません。

      ボランティアで日本語の教室を運営している方々へ

      これまでも十分な国のサポートがなく対応できなかったわけですから、今後増えていく日本語学習が必要な人達に、ボランティア教室で対応するのは無理だと思います。今の延長線上では、近い将来破綻します。

      また、ボランティアの教室を運営する方々やそこで教えるボランティアの日本語教師に理解を深めていただきたいのは、学習者にとって、教師の質を保証するのも大事なことだということです。ただ教師を募集し、あてがうだけではなく、教師の質を見極め、長期的な視野で日本語教育の質を高めていく努力をすべきです。
      もし、何らかの規制や新たな試みで正当な報酬で日本語教師を雇うことができれば、必ず同時に教師に対する評価システムも導入されると思います。(今は、公立学校の教員も10年ほどで更新することになっています、また例えば教室ではなく学習者にチケットを配布し教室を選ぶ式の競争原理の導入など、いろいろと方策はあるはずです)報酬をもらって仕事をする以上はそういう環境を受け入れる準備がプロの教師にはあります。もちろん報酬を得て仕事をする以上は、結果を出さないといけないという意識があります。

      語学は、特に初級段階で質の高い教師に教わることはとても大事です。もちろんボランティアの教師の中にも資格をもち優れた教師はたくさんいますが、そういう教師に巡りあい、継続的に関わってくれる偶然に頼るよりも、制度として一定以上の質の教師を確保できるほうがよいのではないでしょうか?
      特に様々な環境の学習者をかかえる地域の日本語教室は、自分の意志で入学してきた学校の生徒に較べて、教える難度は高いと思います。いわゆる民間の日本語学校や大学の日本語クラスよりも高い能力が教師に要求されるはずだと私は考えます。(残念ながらこのことは日本語教育関係者でもあまり認識されていません)

      もうひとつ、地域には日本語の学習が必要な人が現在でも多くいます。その多くはとても見えにくい。日系労働者の日本語サポートをしている人には、同じ地域の技能研修生が見えない、その逆もあります。「日本語の学習が必要な人」を俯瞰で眺めて、今後、ボランティア教室でカバーできる見通しがあるのか?考えてみてください。

      教室の管理運営者は日本語のクラスの教室の質にも責任を負うべきだと考えるならば、制度として質が保証できるような枠組み作りを目指すべきです。日本語教育を継続的にかつ高い質で提供するために、地域の日本語教室は次のステップに行く必要があります。

      日本語教室を、日本語教師が正当な報酬を受けて働ける場所にしてください。

      15万円の補助を100万にしろと言って仮に実現してもできることはたかが知れています。それよりも「日本語の授業は資格を持ち継続的にやってくれる教師を安定的に雇える環境でなければならない」と共に声をあげてほしいのです。

      おそらく多くの日本語教師は安く不安定な民間の日本語学校よりも公的な場所で安定した雇用で報酬を得たいと考えているはずです。有資格者の日本語教師はすでに十分な数がいます。今、全国の大学に多くの日本語教育学科がありますが、卒業生のほとんどは仕方なく一般企業に就職しているのです。制度さえ整備されれば、大学で4年間日本語の教え方を勉強した、生涯日本語教師を仕事にしたいという若い教師を雇うのは簡単なのです。

      日本語教師が言うべきこと


      この記事の最初に「日本語教師に求められる能力は学習者の素養や目的、場所とはほぼ関係ありません」と書きました。つまり、現在ボランティアが担っている日本語教室でも、求められる日本語教師の質は他の日本語教育の現場と同じだ、ということです。海外の大学で初級クラスをするより、日本の地方で初級を教えるほうが難しい、高度だと考える日本語教師は多いはずです。しかし、残念ながら一部の日本語教育関係者の間にも「大学や私の環境で日本語を教えるのはそれなりの能力が必要だけど自治体で生活するための日本語を教えるならボランティアでいいのは」という空気があるのも事実です。
      これは間違った認識ですし、こういう空気を利用する人達というのがいるということに注意すべきです。

      行政は、特に地方自治体はどこも財政状況が厳しく、圧倒的に優先順位が低い。日本語のサポートなど「外国人に税金使うな」などとケチをつけられこそすれ「外国人へのサポート体制が整っている」とほめられることはありません。観光客呼んで商店街が潤うみたいなことではないですから。黙っていたら、日本語教育への支出などは「NPOや民間の方々とも連携して」などと言いながら、安く済むほうを選択するに決まっているのです。

      一番、黙っていてはいけないのは日本語教育関係者です。説明し、自分の仕事の価値を主張し続けていかなければなりません。間違っても地域の日本語教室はボランティアで十分などと言うべきではありませんし、現状がそうだからと追認する必要もありません。

      日本語教育に使われるお金


      全貌はわかりません。わかっているだけで書きますと、、、

      日本語教育に関わっている官庁など

      いろいろあります。それぞれの省庁で日本語教師の呼び名が違うのも悲しいところ。なお、省庁で今の日本語教師養成講座や日本語教育能力検定試験の合格者が正式な日本語教師の資格であるときちんと定義したところは、JICA以外にあまり聞きません。
      この資格の方向付けをしたのは文科省なのですが、文科省も公立学校の日本語教育では完全にスルーしてます。
      http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19930714001/t19930714001.html

      さて、前にも書きましたが、各省庁は日本語教育に関わる人をそれぞれ呼称で、それぞれが認定した、もしくは周辺にいる教師を「日本語教育の専門家」だとして、それぞれの政策を進めています。外務省は「国際交流基金」で「日本語専門家」と呼び、文部科学省は「CLARINET」で「国語教員」が担う、とし、文化庁は「日本語教育コーディネーター」で地域日本語をサポート。「国立国語研究所」では「研究員」が関連研究をし、厚生労働省は「国際研修協力機構」で「日本語指導アドバイザー」が行っている、というカンジです。

      各省庁別にみてみます。


      ・ 外務省

      おそらく日本語教育に最も大きな予算枠を持っているところは外務省です。特に、国際交流基金は近年、日本語教育を大きな柱のひとつにしています。一部国内の日本語教育でも使われているようですが、大半は海外の日本語教育のサポート、普及のためと考えていいと思います。

      国際交流基金のH25(2013)の予算はこちら。
      http://www.jpf.go.jp/j/about/outline/admin/plan/dl/3ki_chuki_25.pdf
      運用収入を除くお金だと年間で、、、

      運営費交付金が 124億9千3百万円

      国庫補助金が  200億3千5百万円
      2013年は、公的資金による補助は合計で約325億円。 

      このうちどのくらいが日本語教育に使われているかはわかりません。後述する事業仕分けの際の資料をみても、なかなかはっきりと区別が難しい。国際交流基金の他にも外務省にはJICAを通じて日本語教師を派遣したりしてますから。百億円前後かなと思われます。国庫補助金は形式的には「日本語パートナーズ」のような名目があっての補助、なので、通常の運営費としては使われないようです。

      *先日2014年から2020年にかけてのボランティア教師派遣プログラムで300億円の予算がついたばかり。2013年の「国庫補助金」はこれのことかなと思われます。
      *こういう文書の比較の対象としてよく出てくるイギリスの同様の機関であるブリティッシュ・カウンシルは2013年の政府からの補助金は227億円、2009年の数字ですが、ドイツのゲーテ・インスティチュートに使われる公的資金もほぼ同じくらいではないかと思われます。孔子学院の政府からの補助は約100億円です。ブリティッシュ・カウンシルは公的資金外の収入が700億近く、ゲーテ・インスティチュートも100億近くあるようです。国際交流基金は事業収入は数億円ほど。
      *基本、英語、中国語に較べて、日本語で事業収入を得るのは厳しい、ということはあるように思います。

      参考
      対外日本語普及を考える
      http://www.jfbkk.or.th/pdf/JL/2012/kiyou2012/11YAMAGUCH.pdf

      ブリティッシュ・カウンシル 情報公開
      http://www.britishcouncil.jp/about/japan/funding(日本語)
      http://www.britishcouncil.org/organisation/transparency(英語)

      ゲーテ・インスティチュート アニュアルリポート(独語)
      https://www.goethe.de/en/uun/pub.html


      ・ 文科省

      文科省は、文化庁や国立国語研究所など関連組織を含めて、国内の日本語教育政策では最も影響力があるところだと思われます。日本語教師の要件や学校の在り方なども方向付けをしたのは文科省です。

      公立学校で日本語の指導が必要な児童に関して日本語教育関連の審議会(主に教育大学系の有識者中心。日本語教育専門の関係者は1名くらい)などを開いたり、いろいろと表には出てきますが、公立学校の日本語教育はリタイアした国語教師や地域のボランティアなどで手当する方向だと2014年に報告があり、日本語教育関係者をガッカリさせました。(学校教員の既得権を守った?)
      ともあれ、日本語教育は学校教育の枠内でやるという方向らしいです。

      文部科学省における日本語教育事業に関する予算
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_suishin/01/pdf/shiryo_2_2_ver2.pdf

      ややこしいんですが、いわゆる外国人児童対策が85億円、日本学生支援機構の日本語教育関連が2億8千万円。その他が2億5千万。というところのようです。

      外国語としての日本語教育としてはこのCLARINETというサイト
      http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm
      とカスタネット
      http://www.casta-net.jp/
      と文化庁の日本語コーディネーター事業や国際移住機関への拠出(H21で約37億円)など100億円以上の予算を持っていると思われる。これら児童教育への取り組みは、下の海外の継承日本語教育と連携できるはずですが。。。

      * 文化庁、国語研究所、日本学生支援機構などの関連組織がある。

      ・ 文化庁 

      文化庁は文科省の外局、つまり下部組織と言ってもいいと思いますが、国内の日本語教育においてそれなりの影響力をもっている省庁のようです。ただ、日本語教育に関するさまざまな調査をしていますが、上記の日本語コーディネーターの予算枠をみても、直接日本語教育に関与し、影響を持っているわけではないようです。

      文化庁における国語・日本語教育施策によると日本語教育に使われる予算は2億4千3百万円、一県あたり500万円?
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo/kokugo_48/pdf/sanko_1.pdf

      ・ 国立国語研究所

      ここも、いちお文科省系の組織ですが、日本語教育に関しては、研究部門がある他は、地味な研修があるくらいで特別に日本語教育にフォーカスしてやってはいない、という印象です。予算は全体でも10億円。
      http://www.ninjal.ac.jp/database/bunken/

      ・ 厚生労働省

      意外と日本語教育に関わりが深い省庁です。「外国人研修制度」を80年代に始めて、管轄している省庁。
      研修生の日本語教育は、厚労省系の財団法人国際研修協力機構が担当し、一部、AJALTに委託しているようです。

      その他関連法人で、日本語教材の開発、日本語研修、日本語教師の派遣、サイト作りをやってますが、全貌はわからない。ここに関わっている日本語教育関係者をネットでみたことがありません。EPAも厚労省が関わっています。サイトなども、いろいろとアチコチにあるので予算が使われているかはわかりません。文化庁より多く、文科省ほどじゃないとすると数十億くらい?(国際研修協力機構については後述)

      ・ 法務省

      ここは留学生として日本に来る人達の管理を日本語学校と連携してやっているところ。留学生に関しては、その許可の裁量権など、大きな影響力を持ってはいますが、日本語教育そのものには関与しているわけではないと考えていいと思います。

      ・ 経済産業省

      資料2でも触れますが、実は日本語の教授法に対する影響力は最も大きかったところです。今も、経済産業省的な路線(「人材確保としての日本語教育」)の延長上にいるといってもいいかもしれません。
      しかし特に日本語教育で直接関与するということではなく、日本語教育はあくまで、総合的な経済戦略のごく小さな別働隊のさらに小さな枝葉のひとつ、くらいだと思われます。関連組織で粛々とサポートする他は、直接の関与は少なく、時々、数億円規模で予算が組まれて、最近だとクールジャパンで国際交流基金といろいろとイベントをやったりしています。

      ・ その他、政府系法人(政府系じゃないけど関係があるものも)

      政府系組織には直接補助金が出ているわけではないですが、事業として国が委託して、その収入源で、ということがあります。国の日本語教育政策がらみ、で維持されている組織といってもいいと思います。それぞれ関係の深い省庁があるようで、事業規模は数十億から、というカンジでしょうか。詳しくはわかりません。いろいろと調べていくと、まったく知らない財団法人が出てきたりますので、まだあると思います。
      それぞれの組織の評価はいろいろと意見があるようで、客観的な評価に近いものとして参考までに事業仕分け(2009年)の資料があるものはリンクをのせました。しかありませんので、該当箇所がある場合は資料へのリンクをつけました。文書、検索しないと出ないので、もっと知りたい方は組織名と「決算」とか「事業仕分け」などで検索を。(事業仕分け関連の文書、各省庁のサイトからはほぼ探せませんがググればでてきます。Youtubeにもあがってます)

      財団法人 国際研修協力機構(JITCO)

      外国人技能実習制度の監督官庁である厚労省系の組織。
      事業報告書はこちら。
      http://www.jitco.or.jp/about/joho_kokai.html
      事業報告、通称「JITCO白書」は販売されているようです。
      http://book.kanpo.net/category/select/pid/29979/

      わかりにくいので、こちらからとると
      http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/koeki/koku_ken/yosan.html

      補助金が厚労省を中心とする各省庁から1億8千万、受託者収入(国などから仕事を依頼されるかわりに受け取った額)がこれも厚労省を中心に約7億8千万。合計9億6千万。この機構の収支の規模はだいたい20億前後のようです。

      公益財団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
      http://www.ajalt.org/about/kaikei/
      いろんな場面で出てきます。例えば、厚労省の外国人技能実習制度の日本語教育はこの組織がやっているようですし、中国残留孤児の日本語教育なども担当することがあるようです。技能実習生の教科書「新しいじっせんにほんご」を作っています。ビジネスパーソン向けのベストセラー初級教科書「Japanese for busy people」も作っています。元々文化庁との関係が深いようです。

      このページの説明によると
      http://fields.canpan.info/organization/detail/1109909273

       また、難民への日本語教育については(財)アジア福祉教育財団難民事業本部が運営母体であるが、1980年我が国でインドシナ難民を受け入れて以来、現在の条約難民、第三国定住難民まで30年にわたり日本語教育を当協会の教師団が担当している。日本に定住し生活する人々への生活者のための日本語教育のカリキュラム開発、教材開発等を行い、現在、国の政策である「生活者としての外国人」に対する日本語教育を実践している。また、政府関係者からの問い合わせに答え、政府の難民政策への協力、支援、意見具申等を行っている。

      とのことです。

      一般財団法人 日本国際協力センター(JICE)
      http://sv2.jice.org/
      国内で日系定住外国人向けの就労研修としての日本語研修を担当している組織。

      国際移住機関(国際組織です)
      http://www.iomjapan.org/japan/kakehashi_top.cfm
      文科省からの拠出(H21年度で37億円)で外国人児童の日本語教育、公立学校との橋渡し事業をやっている。

      一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)
      http://www.hidajapan.or.jp/index.html
      海外技術者研修協会(AOTS)と海外貿易開発協会(JODC)が合併してできた組織。経済産業省の所管。事業規模は90億円(2012)。現在最も使われている日本語の教科書「みんなの日本語」を作っているところです。

      一般財団法人 日本語教育振興協会
      http://www.nisshinkyo.org/article/index.html
      民間の日本語学校の業界組織です。
      事業仕分けでの議事
      http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake/detail/gijiroku/b-38.pdf
      結果
      http://www.cao.go.jp/sasshin/data/shiwake/result/B-38.pdf

      全国日本語学校連合会
      http://jalsa.jp/
      ここも同じく民間の日本語学校の業界組織です。2004年にできたようです。日本語教育振興協会から独立したというか「いろいろあったのかな?」という空気があります。サイトには「コラム」のコーナーがあって独特の味わいの文章が連載されています。
      http://www.jalsa.jp/kiji.html

      日本語学校共同組合
      http://www.jlic.or.jp/
      2011年発足、2014年文部科学省認可、とあります。日本語学校対象の傷害保険の窓口が主な業務ですが

      (1)日本語教育の共同受注に関する事業
      組合は、団体及び企業が行う外国人研修生及び労働者に対する日本語教育について一括受注し、これを組合員に適正に配分することにより、組合員の事業量の増大を図り、経営の安定化に寄与する。本事業に関し、組合設立時より事業化を目指しているが、社会的需要が熟していない。前期につづき今期も事業として検討はするが、継続して白紙のままとする。
      (2)学生募集支援に関する事業
      組合は組合員の学生募集活動を支援するために、平成24年11月23日に中国・共青団中央(中国共産主義青年団)直轄組織の「中国国際青年交流中心」と友好協定を結んだ。中国国際青年交流中心と協同し、日中双方の大学間の交換留学を柱とした「日中窓口間交換留学生」を企画し、大学、日本語学校、高校を含めたコンソーシアムづくりを目指す。

      とのこと。近い将来、技術研修生などの受け皿として、という考えがあるようです。公的な組織でまかなう「日本語教育ネットワーク」の考え方とは対立しますね。
      http://www.jlic.or.jp/pdf/jlic_h26_business_plan_2606_sub.pdf

      公益財団法人 日本語国際教育協会
      http://www.jees.or.jp/
      事業報告
      http://www.jees.or.jp/about/disclosure.htm
      日本語教育能力検定試験を主催していて、日本語能力試験を国際交流基金と共に主催している。

      公益財団法人 日本語教育学会
      http://www.nkg.or.jp/index.html
      日本語教育関係の研究者の組織としてはここが一番大きいんでしょうか。国際日本語普及協会と共に日本語教育能力検定試験を主催しています。

      日本学生支援機構
      http://www.jasso.go.jp/
      所轄は文科省。2004年に学生への学費支援の組織をひきついで出来た組織。大学の学費の件で出てくるところですが、その他、日本への留学関連の組織もひきついだので日本語教育関連、特に留学生関係では、留学試験以外にもいろいろ。例えば、上の日本語国際教育協会はここと資金面で連携してると報告があります。

      そしてここは「日本留学試験」をなぜか主催しています。この試験は日本に留学を希望する学生が受けるセンター試験のようなもので、現在国公立大学を中心に留学生の4分の1程度が受験しているとのこと。
      http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/dokuritu/0022/002c/gijigaiyou/1351719.htm
      事業規模は1500億円ほど。調べた限りでは、日本語教育関係の組織では動かすお金が突出して多いですが、貸し付けなどを行う機関なので例外とみるべきかもしれません。
      こういう記事もありました。
      http://bylines.news.yahoo.co.jp/miwayoshiko/20140810-00038140/

      事業仕分けでの議事
      http://www.cao.go.jp/sasshin/data/shiwake/result/B-24.pdf
      結果
      http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake/detail/gijiroku/b-24.pdf

      独立行政法人 国際協力機構(JICA)
      http://www.jica.go.jp/
      外務省系の組織、日本語教育関係では、海外への派遣事業の一環として日本語教師を派遣している他、継承日本語の事業などのサポートを行っている。予算は全体で200億近く。

      継承日本語関連
      http://www.jadesas.or.jp/kenshu/jicanikkei.html
      事業シート(2010)
      http://www.jica.go.jp/information/info/2010/pdf/20101117_02.pdf

      海外の日本語教育では民間の

      日本財団
      http://www.nippon-foundation.or.jp/
      http://www.tkfd.or.jp/fellowship/program/detail.php?id=2
      東芝国際交流財団
      http://www.toshiba.co.jp/about/tifo/index_j.html

      の存在感も大きいという声を聞きます。

      他に

      海外日系人協会
      継承日本語(日系の方々の日本語教育)をJICAの協力を得て行ったりしているもよう。
      http://www.jadesas.or.jp/
      などいろいろとあるようです。

      その他、日本語教育業界で「よく目にする」「時々」というものから検索したら出たものまで、ずらずらと。知らないところが多かったです。説明はサイトをみて「こういうことやってるのかな」というカンジで書きました。

      ◇ 独立行政法人日本貿易振興機構 JETRO
      → ビジネス日本語能力検定
      http://www.jetro.go.jp/indexj.html

      ◇ 中国帰国者定着促進センター
      →中国・サハリン帰国者を支援、年少者教育
      http://www.kikokusha-center.or.jp/

      ◇ 財団法人海外職業訓練協会
      →海外からの研修生への企業サポート
      http://www.ovta.or.jp/

      ◇ 公益財団法人 日中技能者交流センター
      → 外国人技能研修生度で国際研修協力機構(JITCO)、国際日本語普及協会(AJALT)と連携し日本語教育なども。
      http://www.jcsec.or.jp/index.html

      ◇ 公益財団法人国際文化フォーラム
      → 日本語教育素材製作?
      http://www.tjf.or.jp/jp/index.html

      ◇ 一般社団法人 アクラス日本語教育研究所
      → 日本語教材開発など。「できる日本語」出版。
      http://www.acras.jp/

      ◇ 日本国際化推進協会
      → 比較的新しい団体のようです。「 外国人留学生及び訪日者の増加を目指します。」とあります。
      http://japi.or.jp/

      ・ 地方自治体

      県単位で考えてみます。

      例えば比較的外国人居住者が多く、サポートも手厚いほうだと言われている静岡県では県の国際交流協会
      http://www.sir.or.jp/about/
      に毎年、五千万円の補助が出ているようです。静岡県内の大きな市では1千万単位でNPOに補助金が出たりしています。これらは必ずしも日本語教育に特化したものではないので、すべてが日本語教育への予算だとは言えません。その他、県や市での日本語教室の運営や補助金などもあると思われますし「国際なんとか課」はあるでしょうから、国際交流関係に使われる予算は総額で数億単位であることは間違いないですが、日本語教育に直接使われるお金はそれほど多くないことが予想されます。1県で平均1億(もないかも)として47億あたり???

      総額は?

      日本語教育として出ているお金だけだと国内で(関連法人などの維持費などを考慮すると)100~200億の間?国外では国際交流基金とJICAでこれも、200億いかないくらい?

      合計で少なくとも300億以上?(ただし関連法人の運営維持費などは考えないとしてです)

      私の印象は以下です。

      ・国は、日本語教育にそこそこお金は使っている。
      ・今後、国内でどうやるかは迷走中。バラバラ。
      ・特に国内でアレコレと重複しているものが多い。
      ・10年後、国内外の学習者の増加、重要性(優先度)を考えると、国外に較べ国内の予算は少ない。バランス再考すべき。

      というものです。

      おそらく、それぞれの省庁が児童教育、医療の日本語、留学生の日本語教育と専門性、特殊性を存在理由としてあげると思われますが、日本語教師としてはそういう理屈に巻き込まれて、例えば、医療の日本語教育などの専門性を語るのではなく、質の高い日本語教師を安定して雇用する環境があれば、1人の日本語教師でそのすべてに対応することは可能だと答えていくべきなのではと思います。大事なことなので、また書きました。それぞれの研究が進むことはよいことなのですが。

      行政の縦割りの問題

      上にあげた省庁は日本語教育に関わる系列の法人が、上以外にも、細々とあり、そこでもあれこれとやっています。日本語の試験をやったり、教師の派遣プログラムをやったり、学習サイトを作ったり、です。

      省庁別にみると、海外の日本語教育は外務省が事実上の唯一の仕切り役。国内はバラバラ。国内外のバランスで見ると、やはり海外の日本語教育への配分が大きい印象は否めません。

      ともあれ、まずは国内の日本語教育を一元化することが重要だと思います。ぱっと見ただけでも、非効率はあきらかです。次に日本語教育に使うべき税金の国内と海外のバランスを見直すことが重要なのではと思います。
      世界に、100万人以上の学習者がいるとしても、国内の48万人強の学習者は、国として手当する義務がある大事な48万人で、今後10年で100万人になることが(ちゃんと来てくれればですが)ほぼ確定しています。おそらくは関連省庁よりも、関連法人の整理統合が必要で、とても難しいとは思いますが、一元化と日本語教師の専任化を進めることでより少ない教師数で質の高い日本語教育を提供することができます。

      これまでの延長上で、それぞれの省庁が自分の「縄張り」の日本語学習者を、関連法人に委託し、その関連法人から日本語教育関連の法人に枝分かれする、あるいは、民間の日本語学校の組織に委託ということでは、見た目のコスト以上に、その関連法人の維持、経営基盤が脆弱な民間の日本語学校を支えるための方策など、トータルでとてつもないコストがかかるばかりでなく、実質的な日本語教育の質の向上にはならない(これまでも出来なかったわけですし)ことは明白です。

      日本語教育に割かれる予算は、現在のバランスをどう考えるか、限られた予算の中で国内外のどちらに軸足を置くべきかは、は今はどの政党も特に考えはないようですが、今後、移民政策への姿勢の濃淡で政党別に分かれる、政治色がでるポイントになるかもしれません。

       

      日本語教師の待遇の目安

      日本語教師の適正な給料は? 国のモデルがある

      フルタイムの日本語教師に対して、国が直接給与を出しているのは国際交流基金の「日本語専門家」ぐらいなので、これをまず軸に考えてみます。給料だけでなく、日本語を教える組織としての在り方も、国のお墨付きのモデルとして参考になるはずです。国際交流基金では、日本語教師は教材の開発もしますが、基本、日本語の授業をして経験を積んだ後、日本語教師の育成にも関わる、というのが主な業務のようです。これは、一般の日本語学校や大学の業務と同じです。

      まず、日本語教師の構成についてです。

      国際交流基金は、日本語教師を、日本語上級専門家(39)、日本語専門家(66)日本語指導助手(22)、米国若手日本語教員(22)の4種類に分けています。(数字はポストの数、合計149ポスト。(データは2015年の以下のサイトから)
      http://www.jpf.go.jp/j/japanese/dispatch/

      最後の米国若手日本語教員は、特別枠と考えられるので除外してそれぞれの位置づけをするならば、「指導助手」は見習いで、「専門家」は教師「上級専門家」は教師の育成(ノンネイティブ教師も含めた)にも携わるというようなことかと思われます。
      実際の配置のされ方はともかく、この教師の経験に対応した1:2:1という比率が日本語教育を行う組織で、日本語教師の構成を考えた時に必要なバランスだと想定されているということだと考えられます。
      国内の状況にあてはめると、経験豊かな専任が1人、中堅の専任が2人、非常勤が1人というところでしょうか。専任3に対して非常勤1というバランスです。

      次に給料です。

      事業仕分けは、不意打ちのような形で行われたので、そこで出た数字はそこそこにリアルで、今も、だいたいこんなところだという大きな目安になると思います。日本語教育専門家の平均年収の「だいたいこのへん」というものを出してみます。

      日本語専門家は原則業務委託という形式なので正式な雇用関係はなく社会保障費などは自己負担とのこと。ただ基本的には継続的な雇用の保障はある程度はあるようです。また、募集要項によると、原則、交流基金の規定で報酬が決まり、上級専門家で経験年数15年で800万前後、専門家(7年未満)で500万前後で、住居費の8割が支給されるとのこと。住居費の負担と社会保険自己負担で相殺されるとして、「平均年収」は勤続20~25年目あたりの額と同じであることが多いので、ひとまず事業仕分けにあった国内外の職員の平均年収である904万円(ただし社会保険費無し)と同程度と考えるのが妥当かなと思います。

      初版(v.1.0)で事業仕分けのやり取りを元に「864万円(社会保険費含む)」と書きましたが、15年3月19日に国際交流基金の関係者の方(確認済)から匿名で「「仕分けの答弁にある平均額は国内勤務の平均額ではないかと思料します。」というご指摘がありました。「思料」は「思います」というようなことでしょうか。業務仕分けの議事録をみるかぎり言葉使いは双方ともにあいまいでハッキリしませんので、事業仕分けで出た「内外職員の平均年収の904万円」をベースに新たに募集要項などから概算で出してみました。
      2015年度日本語専門家募集要項
      http://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/download/27-js-guide.pdf

      ちなみにブリティッシュカウンシルは、「外務省」のところでもリンクを置きましたがAnnualレポートで細かく情報公開をしています。トップの数名は、会食の食事代が何ポンドだったかまで報告があります。

      国際交流基金 事業仕分け(2010)
      http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake/detail/gijiroku/a-15.pdf
      http://togetter.com/li/17059

      国際交流基金法人シート(2011)
      http://www.cao.go.jp/sasshin/doku-bunka/kaigi/2011/wg1_3/02.pdf

      です。これは後述する公立の小学校や中学校の教師とよりちょっといいくらいです。海外での勤務が中心で転勤も多い(そのたびに勤務地での適応が必要で選考も行われる)という状況を考慮すると、相対的には妥当な金額だと考えることができます。

      たびたび書きますが、日本語を教える、さらに教師を指導することに関して日本語教師に要求される能力はアフリカでも、イギリスでも、東北の地域の日本語教室でも同じです。従って、国際交流基金の日本語専門家がやや好待遇であっても妥当性があるのは
      専門性の高さというより職場環境が過酷な点だと考えるべきでしょう。
      その分、国内の日本語教師の適切な報酬を考える時、この職場環境を考慮するなら日本語専門家の給料と同じであるべきとまでは言えない。多少割り引かないといけないのかもしれません。

      事業仕分けでは高いという指摘でしたが、一般的な収入にプラスして専門知識が必要な領域での仕事なので、という主張が通り、最終的には、事業仕分けでも承認されたということは、日本語教師という仕事に払われるべき金額は少なくとも公務員の平均額くらいはあってもよいという考えが国際交流基金や国にあるというだけでなく社会のコンセンサスにも見合っていると判断されたと見てもよいのではないかと考えられます。

      日本語学習者は等しく一定の質の日本語教育を受けるべきだと考えるならば、これは、このまま国内の日本語教師の待遇にそのままあてはめるべきです。前の項で書きましたように、国際交流基金の日本語専門家は海外での適応などが求められる要素はあるものの、学習者が違うわけではありません。日本語教師という仕事に求められる能力と専門性は場所で変わるものではなく同じだからです。

      とはいっても、これだけでは、専門性が高いという主張は難しいかもしれません。一般の人にとっては、海外で教える国際交流基金の専門家とは違って近所で教えるんでしょ、みたいな意識はあるはずです。
      もうひとつのモデルとして提案したいのは、公立学校の国語教師です。国際交流基金の日本語専門家の仕事から環境適応の厳しさなどを割り引いた例としてわかりやすいのではと思います。「日本語教育ネットワーク」では、公立学校の教員と同じ身分で国が雇用することが前提となっています。校務が少ないかわりに地域の日本語教育を一手に担うわけなので、同等の評価は得られます。

      公立学校の教師は、国が給料を決めます。現状、高いという批判はありますし、実際に今後地方では勝ち組に所属することになるのかもしれませんが、しかし日本語教師が要求されているスキル、条件は、国語教師と同等かそれ以上だと考えてもいいと思います。
      公立の中学校の国語教師の年収は検索すればでてきます。平均で約600~700万です。この金額、というより、平均的な金額でいいのだ、という意味です。公立の小中学校の教諭の給料は変動します。今後下がる可能性もありますが日本語教師の適正な報酬としての目安としては、その変動も含めちょうどいいのではと思っています。

      前述の「日本語教育ネットワーク」では、ひとまず5000人を公立学校の教員と同じく公的な資金で雇用することが前提になっています。地域によっては増員、また将来学習者の数によっても増える可能性がありますが、基本の配置だけで5000人。平均年収500万円として単純に掛けると250億円。金額でみると大きな額ですが、これは全国の公立の小中学校の教職員の総数66万人に+5000人+αが加わるだけ、中学校2校、小学校4校あわせて6校に1人+α教員が増えるだけです。しかも、この5000+αは地域の日本語教育をすべてカバーすることができるのです。

      さいごに


      2014年は移民に関する議論、児童の日本語教育に関する方向性、介護、看護における日本語教育の議論の迷走など、いろいろと話題が多かった年でした。2015年からの数年間で今後数十年の日本語教育政策の枠組みが決まりそうです。

      ここであげた事項からも、これまで日本語教育が不十分、問題だとされていたところは、そもそも日本語を教える訓練を受けたプロの日本語教師が日本語を教えていない、という実態が明らかになったのではないでしょうか?

      少なくとも国内の日本語の学習が必要な人達に公平に質の高い日本語教育を提供する新たな枠組みが必要です。そのためには、まず、日本語教師が安定してキャリアを積める環境と道筋を作るべきです。日本語教師に興味を持ってくれた、特に若い人達が、日本語教師を生涯の仕事として続けられる道筋を作るべきです。EPAなどや外国人児童などの問題を通して国内での日本語教育のニーズに注目が集まる今は最大の変化のチャンスだと私は考えています。

      いろいろと数字をあげました。私は教育政策に詳しいわけではありませんが、やはり現状をあれこれ言うだけでなく提案もしたいと思い、少々余計なことも書いてみました。

      規制強化やネットワーク作り、可能性があるのかはわかりません。思い切って公的な補助で、正規雇用でネットワークを作る方向に転換するほうが、長い目でみればトータルでは低コストで効率的だと信じています。なんとなく応急処置をしているうちに手遅れになる前に、根本的な治療を早めに、ということです。日本語教育では、今がそのタイミングです。2020年に国内の学習者が2倍以上になるのなら今のうちに、抜本的な対策をしいておくほうがよいのではと思います。

      この記事であげたデータは、ほぼ政府機関のものです。今後、日本語教育に関して何かを議論する時、何かを考える時の材料にしてください。何かを考える際のたたき台にでもなればうれしい限りです。「あんなじゃダメだよ、こうすべきだよ」という記事がネット上に増えればうれしいです。

      インターネットの活用に関しては本編ではあえて書きませんでした。現状の分析だけ、資料2で少し触れます。日本語教育政策の一元化で資金や資源を集中できるようになり、日本語教師のノウハウの蓄積も一元化されれば、本格的なネットの展開も簡単になるはずです。ネットの活用はその先です。まずは国の日本語教育のグランドデザインが必要なのです。

      私は、日本語教師としてのキャリアのスタートは93年。1年弱の民間の日本語学校の事務職経験を経てフリーで主に東京都心(現在は群馬)で英語教師やビジネス関係者相手にプライベートレッスンを中心に日本語教師をしてきました。早い時期(97年)にネットを活用しはじめたこともあり、運良く、これまでのお客様はすべてネットを通じて直接依頼をいただきました。日本語教師として一度も日本語教育関係の組織に所属したことはありません。一度もどこかの「お世話」になっていません。おそらく今後も同じです。つまり、常に、業界の一步外にいました。今後、日本語教育業界がどうなっても、多分、私はそのダメージもさほど受けないし、よい変化があったとしてもメリットはほぼありません。(書き手とこのサイトに関してはAboutの「はじめに」をどうぞ)

      2000~2010年の10年間は、日本語教師グループの責任者として、多くの日本語教師と面接をし、話を聞いたりしたので、日本語教育業界に関して、まったくの門外漢ではありません。業界を一步外からぼんやりと見てきたというところです。多くの優秀でやる気に満ちた教師が業界の将来に絶望して転職する場面もたくさん見てきました。同時期に日本語教師をしていた若い人はほとんど辞めました。そういう経験も、この記事を書いた動機のひとつです。

      日本語教師達に「この業界、まずいんじゃない?」と尋ねても「仕方ない」あるいは「私の周囲は良心的で、善良な人達ばかりだ」と答える人が多かったように思います。ただ、日本語教師は、もうちょっと自分が働く業界や社会を俯瞰でみたり、横からみたりということをしたほうがいいように思います。日本語教師は基本的に「善意でコーティングされたポジショントーク」に弱いところがあります。

      この記事で提案した公費でまかなう「日本語教育ネットワーク」は、民間の日本語学校関係者はもちろん、日本語学校が重要な留学生の供給源である大学周辺、ほぼすべての現存する日本語教育関係者の組織、団体、関連省庁だけでなく、現役の日本語教師、NPO、ボランティア団体も抵抗勢力になる可能性があります。しかし長い目でみれば、日本語教師はもちろん、日本語教育にも大きなメリットをもたらすはずです。

      この記事に対し、細かいところはともかく、大筋で「悪くない」と思われた方は、ツイッターやFBで広めてください。あるいは、お近くの政策に関与する可能性がある方(官庁方面でも、地方自治関係者でも、地元の政治家でも。どこの党でもかまいません)もしくはその周辺の方に、ダメ元で「国内の日本語教育の現状に関してそこそこまとまっている記事がある」と、このページのURLを知らせるか、印刷して送ってみて下さい。

      最初にも書きましたが、私は日々忙しく、ブログを書く時間ありません。今は、日本語を教える機会は減り、日本語や読み物の、主に電書の出版の仕事がメインで、日々、本の企画や編集の仕事に追われています。この投稿も5年ぶりくらい(昔の投稿は内容が古くなり削除しました)です。データの修正などで更新することはあると思いますが、次の記事の投稿はいつになるかわかりません(ないかも)。コメント欄はいちおこの記事に限り開けておきますが、管理も返信もしっかりはできません。間違いは修正しますが、議論をする気は基本的にありません。数年に一度ドンと投稿してwikiのように記事を修正&アップデートしていくというやり方も、悪くないのではと考えています。

      ここから先は誰かにまかせます。日本語教育の研究者にも政策研究の専門家もいるでしょうし、全国で展開していく具体的なノウハウは国にあるはずです。特に日本語教育の研究者の集まりである日本語教育学会にリーダーシップを発揮してほしいと思っています。どこの国も、外国人在留者向けの国の言語政策には大学の研究者がきちんと関わってカリキュラムの策定や講師の基準などを作っています。この記事が何かのきっかけになればうれしいです。

      了。



      資料

      資料1 各国の在住外国人に対する言語教育政策

      → いわゆる移民の言語教育どうあるべきか、に関しては、いろいろと議論があるところですが、少なくとも、学習の機会は公平に与えられなければならず国がそれを負うべきだという考え方では古くから各国ほぼ一致しており、移民政策が変化しても変わらないままです。

      欧州、北米、豪州などでは、移民への取り組みはかなり早い段階から行われ、在留者すべてを対象にした質の高い言語学習の無償でのサポートの整備はほぼ終えて、今は、移民の人達の母語の尊重という考え方から移住者の母語の教室を国が補助金を出して作るという国が増えている、さらに、相互学習としてその言語を自らの教育制度の中に取り入れる、という流れのようです。

      ただ、2010年あたりから、単純労働者の移民の数のコントロールが行われるようになり、一部の国では、2007年ごろから、いわゆる「再序列化」が始まっています。「ポイント制」で滞在許可を出すというような方向で、2008年ごろに日本でもさかんに研究され(検索すると当時のレポや論文がたくさんでてきます)2013年ごろから、日本の政策もこれをベースに整備を進めています。ただし、2007年までに整備されていたもの、言語サポート(無償、講師の質的保障、初級から中級にかけての十分な保証)は原則として崩さずに、滞在条件として要求される言語能力、あるいは入口で要求されるレベルは若干厳しく(といっても日本語能力試験でいうとN3程度のはず。ざっくりとみた印象ですが)なりつつあるという傾向です。

      これらのことは、将来、永住権を取得して「国民」として共に生活していく可能性があるかぎり人権上の必要な措置としてやるべき、ということもありますが、長い目でみれば、十分な言語能力をつけることで、コミュニケーション可能な関係を築いていったほうが様々なトラブルの未然の防止にもなる、例えば、労働者がちゃんと自分で労働基準局なりに告発できる環境を作るほうが管理上合理的というような側面もあるように思います。日本だと防災上の観点なども大事になってきます。つまりヨキコトだから日本もやるべき、というより、一定数を超えると、もうこういう施策が合理的で必要になる、という現実的な方法として、参考になると思います。以下、古いものもありますが、リンクとちょっとした補足だけをズラズラと。

      海外における在住外国人の言語学習制度 
      (最初にちょっと紹介しました。このリンク先だけでも目を通してください。比較の表は必見)
      http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_272/04_sp.pdf
      → 日本とドイツ、フランス、カナダ、オーストラリア、韓国との比較。講師の資格が問われないのは日本だけ。ドイツの予算が230億円という記述がある。

      外国人児童生徒の言語教育に関する一考察 : 言語共生のために 
      http://ir-lib.wilmina.ac.jp/dspace/handle/10775/32
      → 日本の問題点と各国のとりくみが簡単に紹介されている。

      独立行政法人 労働政策研究・研修機構
      http://www.jil.go.jp/foreign/index.htm
      → 海外の労働政策が整理されている。

      欧州の移民政策の変化(2008)
      http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2008_4/world_01.htm

      文化庁によるドイツ、米国のプログラムの説明
      http://prmagazine.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_08/special/special_04.html

      ドイツの滞在法について
      http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/234/023401.pdf

      オーストラリアの成人移住者用英語学習プログラムのサイト。
      http://www.immi.gov.au/living-in-australia/help-with-english/amep/

      ビザ保持者は500時間程度無料で受講できる。

      同じくオーストラリアの英語プログラムについて
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/seikatsusha/h19_kenkyu_kaihatsu/komyunika_gakuin/pdf/hokoku.pdf
      少し古いですが2007年の時点のオーストラリアが受け入れた移民は約20万人で英語のプログラム利用者は約5万人前後となっている。また、AMEPは初級の約500時間でその上はまた別のシステムで対応することになったという記述がある。

      アメリカの「英語を母国語としない人向けの英語教育」について~年代別~
      http://b1-media.net/

      カリフォルニア州ロサンゼルス統一学区における英語教育の試みと日本における小学校英語教育への示唆
      https://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/about/bulletin/en/021/pdf/001.pdf

      カナダの成人移民に対する国の無償英語教育プログラム ELSA Net
      http://www.elsanet.org/site/what-is-elsa

      カナダにおける移民政策の再構築
      http://iminseisaku.org/top/pdf/journal/004/004_002.pdf
      比較的新しいデータ。2010年で留学生の数約25万人、一時就労者の数が40万人強というのは、数年後の日本と同じ。カナダは移民の申請が100万人近くになり、2008年に移民政策を転換している。言語に関してだけいうと、在留者に無料で提供されていたプログラムは一部制限が加えられた。また移民申請時の言語のハードルが高くなった。しかし、大多数の外国人在留者はサービスは受けられるようです。いろいろと示唆の多い論文。

      外国人住民の受け入れと言語保障 : 地域日本語教育の課題(オーストラリアの例が紹介されています)
      http://ci.nii.ac.jp/naid/110005857936

      フランスにおけるニューカマーの子どもへの言語教育支援 : CASNAVの取り組みと複言語主義教育の可能性
      http://ci.nii.ac.jp/naid/120005367817

      ドイツ連邦共和国教育現場からの報告 : 統合の鍵は言語習得
      http://ir.kagoshima-u.ac.jp/handle/10232/16504

      アメリカ合衆国における移民のための3つの言語教育プログラム(英語)
      http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=BKK0000043

      スペインの移民に対する言語教育
      http://ci.nii.ac.jp/naid/110005050272

      ベトナムの海外労働者送出政策及びシンガポールの外国人労働者受入政策
      http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9227946_po_077103.pdf?contentNo=1



      資料2 公的な補助を受けて作られた教材やウェブサイト

      すべてあるいは一部、公的な資金の補助を受けて作られた日本語学習サイト、教材のリストです。一部、独立した事業体で直接の補助を受けていないというケースもあります。

      ウェブサイト

      補足の文は、2015年3月に以下のサイトを利用してトラフィック(月ごとの訪問者数、その他利用者数、データなど)、サイト評価、サーバー情報(サイト開設時期など)を調べたものが元になっています。各サイトから調査結果へのリンクがありますが、表示されるのはあなたがクリックした時点のリアルタイムの結果です。

      学習サイトは本編の任意のページのスピードもチェックしました。1ページあたりの読み込みファイルの重さ(Page size)が目安になると思います。そこそこ快適に表示されるギリギリの上限で、ダイアルアップなら500KB以下、ISDNで1MB以下、ADSLもしくは3Gで3MBまで、光なら5MBまでなんとか、というところでしょうか(ただ、これは重いけどなんとか表示できるという上限のサイズです)。ブロードバンドしか知らない世代のために補足すると、ISDNはスカイプは音声ならなんとか。単純に動画があるから重いということではないんですが、基本、動画をストリーム再生するのはほぼ不可能。ブリティッシュ・カウンシルのコンテンツがだいたい1ページあたり2MB以下なのは、欧州の平均回線速度を意識しているのかなと思われます。

      世界のネット事情はいろんな調査があるのですが、一般家庭で光回線が普及していると言えるのは韓国日本台湾と北欧ぐらいで、次に北米は光は半分くらいで残りはADSLレベル、欧州はADSLのほうが多いくらい、欧州の周辺国や東南アジアの大都市でADSLからISDN、あたりが目安になると思います。中国は国外のサイトは「壁越え」の品質にもよるらしいですが、だいたいADSLとISDNの間くらい。東南アジアでは大都市と工場団地があるような場所以外は基本、家庭ではネットに接続できないところのほうが多いようです。接続できてもISDN以下。モバイル網のほうが先に整備されるケースも多いようです。だいたい日本の3G回線よりちょっと遅い程度とのこと。ただし回線品質はいまいちで途切れがちらしいです。地方の大学でISDNくらい。

      世界のネット環境に関する資料
      AKAMAIによる回線速度ランキング(2014)
      http://www.akamai.com/dl/akamai/akamai-soti-q114.pdf?WT.mc_id=soti_Q114

      訪問者数の目安ですが、国内の人気ブロガーで月20~50万くらい。10万以下は、かなり少ない。1万以下だとかなり寂しい。5000以下だと、実質的にサイト制作者とか関係者と、あと少し、というところでしょうか。学習者サイトとしては、利用者がいるというカンジではありません。「参考」にもありますが、長年にわたり圧倒的な訪問者数を誇るのはNHKの日本語レッスンのサイトです。(PVも重要な指数ですが、学習サイトの評価としては、ひとつ選ぶなら訪問者数かなと考えました)

      「サイト評価」では特に「Accessibility」に注目してください。ここが低い(5以下あたりが目安?)ということは、サイトを表示出来ない人がいる可能性があります。スマホやタブレットでどう映るか、も確認できます。

      *解析、分析は以下のサービスを利用しました。いずれも大手のサービスです。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/
      サイト評価
      http://nibbler.silktide.com/en
      サーバー情報など
      http://toolbar.netcraft.com/site_report
      サイトのスピード重さなど
      http://tools.pingdom.com/fpt/

      まずは日本語学習サイトから。

      ■ 外務省系(国際交流基金)

      □ エリンが挑戦! にほんごできます。

      https://www.erin.ne.jp/jp/

      2010年スタート。英、西、ポルトガル、中(簡体字)、韓国語、フランス語、インドネシア語対応。
      訪問者数は月12万人。サーバーはイギリス。DVD教材の実写動画をベースにWEB版にしたもので、唯一の初級から学べる総合学習系サイト。メインコンテンツである動画の再生とログイン部分(ユーザー登録しないとすべての機能は使えないようです)でフラッシュを使っており、モバイルOS上では基本的に動作しない。おそらくPC上でも数年で動作しなくなる可能性がある。アクセスは米英などが上位で日本語学習者が多いアジアの国からは少ない(おそらく実写動画中心だと重いからではないか?)

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/erin.ne.jp
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en
      スピード(6.9MB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/cqctEP/https://www.erin.ne.jp/jp/lesson01/basic/index.html

      □ NIHONGO eな

      http://nihongo-e-na.com/

      2010年(9?)スタート。日本語学習者向けサイトを収集し、簡単に分類しているポータルサイト。英語のみ。
      月の訪問者数は5~7万。モバイルOS対応。アクセス国上位は米、日。ソースにgoogleのsite-verificationがありgoogleでアクセス解析をしていると思われる。制作後も定期的にアップデートがされている様子。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/nihongo-e-na.com
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ アニメ・マンガの日本語

      http://anime-manga.jp/index.html

      2009年スタート。英、西、中(簡体字)、韓国語、フランス語。訪問者数は月4万前後。米、日、仏からのアクセスが上位。文字通りアニメ・マンガを元に意味や音声をまじえて日本語を学んでいくというもの。このサイトもメインコンテンツはすべてフラッシュなので、モバイルOS上では動かない。PC上でも近い将来動作しなくなる可能性あり。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/anime-manga.jp/index.html
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en
      スピード:本編(4.9MB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/eptlQx/http://anime-manga.jp/CharacterExpressions/

      □ インターネット日本語しけん すし テスト

      https://momo.jpf.go.jp/sushi/

      2007年スタート。英、中(簡体字)、韓国語、タイ語、インドネシア語、ポルトガル語対応。月の訪問者数は5000前後。登録しないとテストは受けられない。ブラウザはIEのみ対応と書いてある。ソースのコピーライトは2012年なので、おそらく2012年以降、誰も手を入れていない。軽いからか、アクセス国は日、台湾、ベトナムが上位。情報がアップデートされている様子はなく、アクセス数も日に166ということは、実質的に活用されているとは言い難い。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/momo.jpf.go.jp/sushi

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ みんなの教材サイト

      https://minnanokyozai.jp/

      2002年スタート。日本語教師用の教材や素材の共有サイト。サーバーはアマゾン。訪問者数は月1万前後。うち半数が日本で次に米と続く。ソースのメタキーワードには「みんなの日本語」とあるので、おそらく「みん日」を想定して作られたのでは。コピーライトは2011年のまま。2008年の報告によるとのべ登録者は伸びていて6万人で利用者が4万5千人、アクセス件数が年間140万とのことですが、これはヒット件数(すべてのファイルへのアクセスの合計。例えば、1ページで画像がたくさんあれば、すべてカウントされる。ページ単位のカウントのPV=ページビューより圧倒的に多くなる。訪問者数は訪れたユーザーののべ人数)のことでしょうか?あるいはクローラーとかBOTの数入れた甘い解析結果を使ってる? 2008年前後はともかく、今は、訪問者数やPVでの評価がサイトの評価としては一般的なので、訪問者数で書きます。年間なら2014年はのべ12万です。月の訪問者数が1万というのは、日本語教師すべてに向けて作られたサイトとしては、かなり寂しい数です。サイト構築を担当したという日本ユニシスによるとものすごく活用されているということですが。。。

      2008年の報告
      http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/bulletin/05/pdf/08.pdf
      (2008年で激減しているのはヒット件数からPVになった?自然減?)

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/minnanokyozai.jp

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ JF日本語教育スタンダード

      http://jfstandard.jp/

      2010年スタート。サーバーはアマゾン。主に日本語教師を想定していると思われる。交流基金の新しい教科書「まるごと日本のことばと文化」を軸にした国際交流基金が考える新しい日本語の教授法のサイト。教師用の教え方のポイントなども他に、教材共有の「みんなのCan-doサイト」(要ユーザー登録)もある。訪問者数は月6000~8000。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/jfstandard.jp
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ まるごと日本のことばと文化

      http://marugoto.org/

      2013年スタート。上のJF日本語教育スタンダードのサイトから教材の「まるごと」だけを独立させた?ドメイン内では教材のダウンロードもできるようだが、今のところは、JF日本語教育スタンダードのサイトへのリンクが多い。「『まるごと』の公式のポータルサイト」と説明がある。訪問者数は月5000程度。製作中?ということなら、製作者のアクセスだけで月5000くらいは妥当かもしれない。アクセス国上位は、米、日、仏となっている。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/marugoto.org
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ 日本語でケアナビ

      http://nihongodecarenavi.jp/

      2007年10月スタート。介護、看護の日本語に特化したサイト。日本語、英語、インドネシア語。専門用語を含む簡単な辞書を基点に音声、意味、例文をみることができる。自動的にスマホやタブレット用サイトに誘導される。サーバーは日本でかなり早いがEPAを想定したのなら、webではなくアプリもしくは、ソフトで提供するほうがいいのでは。。。(インドネシアでは家庭からネット接続するのはかなり難しい。回線速度も遅い)訪問者数は月3万前後。アクセス国は米、日、西、英。4位の独で4.19%となっており肝心のインドネシアからのアクセスは?

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/nihongodecarenavi.jp

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      サイトスピード(123.3KB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/xfLdc/http://eng.nihongodecarenavi.jp/jpn/search-top.html

      □ 日本語教育通信

      http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/

      国際交流基金内にあるページです。日本語教師向けの情報発信が目的。

      ちなみに国際交流基金のサイトのデータも置いておきます。月の訪問者数は14万前後。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/jpf.go.jp

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      参考までにブリティッシュカウンシルのサイト。月の訪問者数は800万。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/britishcouncil.org
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en
      スピード(1.6MB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/c5h9LT/http://learnenglishkids.britishcouncil.org/en/word-games/group-the-words/family

      その他の省庁、関連法人が作った学習者、日本語教師向けサイト

      □ CLARINET

      http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

      文科省による、海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育関連の情報集約のポータルサイト。仮運用中?

      □ かすたねっと

      http://www.casta-net.jp/

      CLARINETの姉妹サイトらしい。2011年7月スタート。訪問者数は数字がでない。順位からいっても、ほぼ本文者はいない様子。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/casta-net.jp
      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ JITCO日本語教材ひろば

      http://hiroba.jitco.or.jp/

      公益財団法人 国際研修協力機構が作った技能実習生の日本語教育担当者のためのサイト。JITCOのサブドメインで運営。サーバーはかなり重い。2010年スタート。訪問者は数字が出ません。サブドメインでも通常なら数字は出るので、事実上だれもアクセスしていないと思われます。登録制ですが、登録者がいたとしてもアクセスされた形跡はありません。ここにある「みどり」という教材も、ほとんどの日本語教師は知らないはず。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/hiroba.jitco.or.jp

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ Online教材で学ぶ

      http://www.ajalt.org/online/

      公益社団法人 国際日本語普及協会が作ったオンライン教材のポータルです。1997年スタート。訪問者は月15000前後。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/ajalt.org

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ HIDAにほんご elearning

      http://e-learning.hidajapan.or.jp/SITE/
      2014年10月スタート。英語・中国語・タイ語・インドネシア語・ベトナム語対応。「みんなの日本語」を作っている一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)が作ったサイト。まだ実質的にアクセスはない様子。

      トラフィック
      http://www.similarweb.com/website/e-learning.hidajapan.or.jp/site

      サイト評価(以下のサイトにURLを入れてみてください)
      http://nibbler.silktide.com/en

      □ 公益財団法人 国際文化フォーラム

      http://www.tjf.or.jp/
      1997年スタート。いろいろな素材などがあるようす。月の訪問者は意外と多く3万人ですが財団のホームを兼ねているので学習者や日本語教師のアクセスとは考えにくい。(日本からのアクセスが半分以上)

      http://www.similarweb.com/website/tjf.or.jp

      http://nibbler.silktide.com/en/progress/www.tjf.or.jp

      □ 中国帰国者定着促進センター

      http://www.kikokusha-center.or.jp/tokorozawa/enkaku/jp/enkaku01.htm

      サハリン帰国者定着促進センターも。
      http://www.kikokusha-center.or.jp/tokorozawa/enkaku/ru/rujp01.htm

      → 主に電話などで通信教育をしているとのこと。

      * 参考

      □ 東京外語大学の日本語学習のページ

      http://www.similarweb.com/website/jplang.tufs.ac.jp

      スピード(616KB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/R9HVM/http://jplang.tufs.ac.jp/en/ka/1/1.html

      □ NHKの日本語講座のページ。

      老舗で、もう10年以上、実質的な日本語学習サイトのトップです。月の訪問者650万人ですが8割が日本からのアクセスなので必ずしも日本語学習者のアクセスだとはいえませんが、昔からの超人気サイトであることは確かです。
      http://www.similarweb.com/website/www3.nhk.or.jp/lesson

      スピード(500KB)
      http://tools.pingdom.com/fpt/#!/ctQNUO/http://www3.nhk.or.jp/lesson/english/learn/list/49.html

      日本語学習者向けサイトについて

      私は、サイト作りの知識は素人に毛が生えた程度です。2007年ごろに更新をストップしましたが、97年から日本語学習者向けのサイトを作ってきたのでちょっとだけ知識はあります。公的な組織の日本語学習サイトに関して、ざっと見た限りでは客観的な評価をしたものはないので、勝手に個人的な印象をズラズラと書いてみます。

      できたばかりの文科省のCLARINET かすたねっとの評価は、これから。その他、国際交流基金系のサイト以外はアクセスもほぼなく、後述する日本学習総合サイトに吸収されるべきだと思います。独自教材がある場合はそのページはあってもいいとは思いますが。(MP3などサイトがないとサポートできなくなるので)

      ここでは交流基金のサイトを中心に書きます。国際交流基金が作る日本語教育関係のサイトの一番の問題点は、「日本語学習者向けサイト制作に関する総合戦略がない」ということです。もちろん、他の省庁の「とりあえず作りました感」とは違ってそれぞれ、その時点では、本気で作っていることがわかります。ただ、すべてが別ドメインで、サーバーも別、バラバラです。例えばブリティッシュ・カウンシルのサイトのように、組織のトップページから同じドメイン内で、学習者が自分の目的に従って学習コンテンツを探すような道筋がありません。ソースで確認できる範囲では、アクセス解析は個々のサイトまかせで、本作りのように時々「改訂」をするようなノリでアップデートされるようです(「ケアナビ」と「eな」は、まめに更新されています)。学習者向けサイト作りは、作った後のメンテだけでなく、アクセス状況をみながらの軌道修正など「後の運用」がとても大事です。

      また、ターゲットがハッキリしていないという印象もあります。日本語学習者の25%以上を占める中国からのアクセスはありませんし(ただし簡単なアクセス解析では中国からのアクセスははっきり出ない面はありますから何とも言えませんが)、東、東南アジアからのアクセスも少なく、順位にはかろうじてベトナムと台湾が数%という程度です。つまり日本語学習者の8割以上がいる地域でまったく活用されていないのです。
      最初の回線のところで書きましたが、サイトをみる側のネット環境を考えて、そこから作っていく、という発想ではなく、作り手側の論理で作ってしまうということだと思います。

      「エリン」は日韓、欧州北米では大丈夫ですが、他の地域(東南アジア、中国、アフリカ、南米)では、一般家庭からはほぼ見られないはずです。「アニメ」も厳しい。「ケアナビ」は大丈夫そうですが、ここはおそらくインドネシア、フィリピンなど特定の地域がターゲットだと思われるので、どんなに軽く作っても一般家庭からのアクセスは望めない可能性が高いです。
      ターゲットは基本、ブロードバンド回線がある国々、あるいは総合学習系はブロードバンド前提、というような方針があるのかもしれません(それにしても重いです)。しかし、なるべく多くの日本語学習者を対象にするなら、基本、テキスト主体、もしくはテキスト主体を選べるような形でやっていくのがベストで、「ケアナビ」のようなサイトは無償のアプリで提供していくほうが現実的という気がします。(ブリティッシュ・カウンシルはおそらくブロードバンド前提ですが、それでも、かなり軽く作る工夫がなされていますし、アプリでの提供も多いです。特に子供向け学習など)

      「寿命」も近づいています。
      FlashはネットでHTML5が本格的に使われ始めた2012年ごろには、消える可能性が高いという声が主流になり、おそらく世界中のサイトが遅くとも2013年はじめにはHTML5に書き換えられたと思います。モバイルOSでは最初からブラウザが対応してませんので、現在、タブレット、スマホでは、かなり工夫しないとFlash関連のコンテンツは動きません。去年、いろんなところからサポート終了宣言が出て、数年のうちにPC上でも動作しなくなる可能性がでてきました。特に、アジアでは、スマホからのアクセスが増えていて、中国もネット閲覧のメインはスマホ。アフリカや東南アジアなど一般の回線状況が悪い国では、家庭より携帯回線のほうが先に普及しているようです。スマホ、タブレットで閲覧できないのは、日本語学習サイトとしては致命的です。上の「サイト評価」のアクセシビリティでモバイルという項目がありますが、そこが5以下なのはアウトだと思います。

      フラッシュ多用の「アニメ・マンガの日本語」は、継続するなら、もう作り直すしかないと思います。
      同じくフラッシュ多用「エリン」は、総合学習サイトとしては唯一の存在で、高校生が主人公、学校を舞台、初級の半分くらいをカバーしています。かなり前の(2006~2007年にテレビ向けに作られた)実写動画をベースにした(実写動画ベースだとどうしても重くなります)ものでもありますし、HTML5化にお金をかけるなら、一から新たなコンセプトで作り直すほうがいいかもしれません。(ブリティッシュ・カウンシルの学習サイトも軽いけど、Flash多用で放置状態なんですが、アジアに学習者が集中している日本語学習コンテンツでは対応が急務です)

      教師用教材シェアサイト、なぜか、いろんな日本語教育関係の組織で作りがちですが(お金かければ作るの簡単で仕事した感があるから?教師向け、ひいては国内向けアピール?)基本、不要だと思います。実際利用されてはいないようですし。フリー素材はネット上に山のようにあります。基本、教材制作者が素材を提供する場所があれば、それでいいのです。(ただ「まるごと」みたいにドメインまではいらないと思います。ついでに言うとJFスタンダードも交流基金のサイト内で十分という気がします。ドメインが別だと探すほうが迷います)お互いに持ち寄ったフリー素材を「シェアして共有する」場所をわざわざ作る価値はあるのか疑問です。
      交流基金だけでも、みんなの教材サイト、みんなのCan-doサイト、あと「まるごと」の素材提供サイトがあります。特定の教材ごとのページはMP3や動画などの配布やいろんなファイルの配布基地として必要ですが、他は不要なのでは?(後述する「日本語教育ネットワークSNS版」が実現するなら、そこでシェアすればいいですし)。

      ユーザー登録管理も、それぞれでしなければならず、バラバラなので、管理側もユーザーも大変です。総合学習コンテンツは、ユーザー登録して個々のユーザー向けにカスタマイズできるような仕組みがトレンドですし、今後どんな学習コンテンツを作ることになっても登録は必須になることを考えると、JFユーザー登録みたいな形で一本化しないと厳しいのでは?そのためにはやはりドメインとサーバーがバラバラなのはアウトです。

      また、サイトの言語はどこも中国語は簡体字だけなのですが、台湾からのアクセスはあっても、日本語学習者のかなりの部分を占める中国(前述のように数字はハッキリしないのですが)からのアクセスはほぼありません。サイトの言語対応も、バラバラ。ケアナビが英語とインドネシア語だけなのは理解できるとしても、ポルトガル語があったりなかったりで統一感がないのは、やはり総合的なウェブ戦略が欠けているという印象です。いっそ多言語化はやめてオープンソースのCMSの多言語化モジュールなどでいいと割り切るほうがいいのかもしれません。

      あと、「すしテスト」は、事実上、廃墟サイトです。もういいんじゃないでしょうか。。。

      JMOOCで国際交流基金の動画のレッスン提供が始まったようですし、サーバーなどいろいろ投資が必要な動画コンテンツはJMOOCなど共同プロジェクトに託して、交流基金は東南アジアなどインフラが弱い地域でも動く総合学習サイトやアプリの提供、と棲み分けしたほうがいいのではないでしょうか。テキストベースの学習者サイトでは、NHKの日本語サイトの存在感が圧倒的ですし、おそらく素材の宝庫であるNHKに託すか、監修というスタンスで共同で何かやるほうが合理的かもしれません。

      少なくとも、学習コンテンツは、交流基金のドメイン下で一本化するか、日本語学習者向けのドメインで統合したほうがいいと思います。せめて現状、交流基金のトップからスムーズに学習者をガイドする設計が必要なのではないでしょうか。

      日本語教育でサイト作りにちゃんと税金が使えるのは今のところ国際交流基金だけなので、予算が少なく、ブリティッシュ・カウンシルのように、世代別にコンテンツを揃えるのが無理なら、ひとつでいいので、成人を対象にした初級から中級までカバーできる学習コンテンツの決定版を、しっかり、じっくり作って欲しいところです(その枝葉のひとつとしてなら、学校を舞台にしたものがあってもいいと思います)。残念ながら、今のところは、国際交流基金にとっては、ウェブ教材はあくまで補助的なものという位置づけなのかな、という印象です。

      今後の日本語学習者向けのサイト作りですが、海外の学習者が仮に400万人いるとして、この記事でも書きましたが、国内で日本語学習が必要な人が10年後には100万人になります。ネット戦略はなにも海外だけをターゲットにする必要はありませんので、やはり、国内外問わず、ネット環境が少々悪くても参加できる初級からの学習サイトの決定版をまず一つ作るべきではないでしょうか?Duolingoは、最初計画されていた日本語は入らないようです。Duolingo的な方向のサイトは作る余地がありそうです。オーストラリア、カナダなど、みたかぎりでは、政府系の語学学習サイトは基本ひとつでそこから児童、成人、高いレベルに枝分かれする形式です。日本のように、いろんな公的な組織がそれぞれ、狭いターゲットに向けてちょこちょこ作ってるケースはありません。


      ネット環境がまだまだな日本語学習者に対して、これからWEBで何ができるかと考えた時、個人的には、特にインフラが厳しい国や地域に学習者が多い日本語の場合は、これからは、動画方面はJMOOCと国内の大学が始める(あるいはNHKが新たなものを作る)のを期待してそこにまかせるとして、サイトに滞在して学習するようなコンテンツを作る方向よりも、アプリを軸にした展開と、テキストベースのSNS活用のほうが可能性があるかなと思います。上で「総合学習サイトを作る」と書きましたが、それは作るなら(多分、そういうことのほうが予算が出そうだし)ということで、個人的には、縮小しつつある日本語学習者をつなぎ止めるために、まだどこもやっていない、新しい道を模索したほうがいいかもと考えています。

      日本語教育ネットワークSNS版

      動画コンテンツはサーバーへの投資など大変なので、JMOOCなどでやるとして、例えば、PliggElggOPEN PNE などのオープンソースや民間のSNS提供サービスを利用して、ネット上に日本語学習者コミュニティを作るのはどうでしょうか。政府の機関がSNSを主催するのは突飛な発想かもしれませんが、日本語専門家、もしくは日本語コーディネーター?あるいはそれに類する日本語教師達が「勤務」としてネット上の日本語学習者コミュニティーを育てていく体制ができれば可能です。集まったSNS上の学習者のデータもいろいろと活用できるはずです。おそらくは広告やスポンサーも探しやすい。テキストベースだから、インフラが弱い地域でもなんとかアクセスできる。国内外の日本語学習者がすべてネット上で繋がることができます。今は、セレブのファンSNSなど自前で運営するところは多数あり、100万人くらいのSNSなら請け負うサービスもあります。英語や中国語だと規模が大きすぎてできないけれども、日本語なら可能というアドバンテージも生まれます。もちろん、日本語教師もSNS内にコミュニティを作れますから、教師のネット上のネットワークも兼ねます。
      このSNS内に、看護コミュニティ、介護コミュニティ、技能研修を細分化したもの、日本語教師のコミュニティも作り、それぞれ管理者を置いて、枝葉では、自主運営にします。免責しっかりやれば、運営は不可能じゃないはずです。(既存のSNSを使うのは長期的にみてリスクが高いと思います。栄枯盛衰激しいですし、仕様も勝手にちょいちょい変わります。多分オープンソースの有名どころを使うのが最も無難)

      こうなると、特にどこの省庁でも、機関でもいいような気がしてきます。この記事の提案である国内の「日本語教育ネットワーク」が運営母体になるのが最も合理的ですが。面白いと思いませんか?

      日本語教材

      現在、かなりの日本語教育機関で使われている「みんなの日本語」は経済産業省系の組織(HIDA)で制作された教科書がベースになっています。また、例えば、AJALTの技能研修生用の独自教材みたいなものもあります。ただしこれは実際に使われるのは3割以下みたいなことになっているので教材自体に存在価値があるかどうかは微妙です。少なくとも公的な機関で作る教科書は、狭いところでちょこちょこ作るのではなく、もう少し広く日本語教育関係者の知恵やいろんな関係者の意見を集めて作るべきものなのでは?という気がします。国内日本語教育を「日本語教育ネットワーク」に一元化できれば、ここで児童教育、介護看護、の教材が作れるのに、と思います。
      このように、日本語教育の世界では、教材の選択も政策や時代の影響を強く受けているという点が特徴でしょうか。

      個別の教材の内容に関しては、コメントする能力、知識を持ち合わせていませんので、基本、リストのみで。

      まるごと日本のことばと文化

      http://marugoto.org/
      国際交流基金が「日本語初歩」以来ひさしぶりに作った初級~中級向け教科書

      「日本語ドレミ」「にほんごジャンプ」「にほんごチャレンジ」
      (公財)海外日系人協会が独立行政法人国際協力機構(JICA)の委託をうけて開発したという教材。

      http://www.jadesas.or.jp/nihongo/04text.html

      新しいじっせんにほんご
      http://www.ajalt.org/textbook/practice/
      公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)が技能実習生向けに作ったと思われる教科書。

      留学生のためのビジネス日本語

      http://www.hidajapan.or.jp/jp/project/nihongo/kyozai/index.html

      一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)製作の教材。

      国内の日本語学校が使う教材と教授法のはなし

      以下は私の個人的な「だいたいこういうことなのではないか」という推察です。

      教材と教授法も時代や政策に強く影響を受けてきました。

      現在、日本教育の教室授業で圧倒的なシェアを持つ「みんなの日本語」という教科書は、経済産業省の所管だった海外技術者研修協会(AOTS)という組織が作った「日本語の基礎」という教科書が元になっています。出版社はスリーエーネットワークです。
      http://www.meti.go.jp/intro/koueki_houjin/a_index_03-3-5.html

      *現在、海外技術者研修協会(AOTS)は、経済産業省所管の海外貿易開発協会(JODC)と合併して一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)なっています。事業規模約90億円(2012)。

      現在、この「みんなの日本語」という教科書を出版しているスリーエーネットワークという出版社は元々、海外技術者研修調査会という名前でした。実質的に海外技術者研修協会(AOTS)の教科書を製作販売するためにできた出版社だと思われます。同年創設の凡人社と共に、日本語の基礎をベースにした日本語教育の歴史をスタートさせました。凡人社は、今も国内の多数の日本語学校に教材を提供する日本語教育関連の最大手の出版&販売会社です。

      1974年は、日本語教育においてひとつの流れがはじまった年といってもいいかもしれません。

      1973 現スリーエーネットワーク、株式会社海外技術者研修調査会としてスタート。
      1973 12月 凡人社 設立
      1974 日本語の基礎 出版
      1990 新日本語の基礎 出版(場面に工場などがあるのは残ったまま)
      1998 みんなの日本語 出版 (「技術研修生」の文字は消え、教材の中でも工場の場面は消えた)

      その後80年代の私費留学生の増加にともなって、民間の日本語学校の需要が増し1983年の中曽根内閣の留学生10万人計画で日本語教師のニーズが急速な学習者の増加に追いつけず、媒介語(学習者の母語)を使う教師で手当てするのは間に合わないと判断したのか「日本語を日本語で教える方法で」「しっかりとしたマニュアルがある教科書をベースに」という流れになり、「日本語の基礎」をベースに進めていく流れは強化されたのかなと推察されます。(当時は2つの要件を満たしえるものは事実上日本語の基礎しかなかったと思われます)

      結果として、決して当時の語学教授法の主流とはいえなかった直接法が主流となり、技術研修前提で工場が場面として使われる「日本語の基礎」が留学生相手の日本語教育の場で使われてしまうことになり「工場」の場面や語彙が出てくる教科書が留学生の日本語教育に使われ続けました。98年に日本語の基礎は「みんなの日本語」でいちお技術研修的なニュアンスは取り除かれましたが、直接法という教え方は主流のままです。

      現在、日本語の教え方は、日本語だけで教えるのではなく、適宜学習者の母語の補足をいれつつ行うほうが効率的という考え方が主流です。また、欧州の言語教育の指標となっているCEFRを意識したものに変わりつつあり、74年以降続いてきた「日本語の基礎~みんなの日本語」の影響力は低下する可能性があります。

      ただ、次の主流教科書の座を現在有力候補と言われている「できる日本語」や「げんき」、国際交流基金が作る「まるごと日本のことばと文化」が担うためには、「日本語の基礎~みんなの日本語」の教科書が担ってきた日本語教育の「教師需要に対する対応力」が求められます。
      つまり、教科書作りには、それをしっかり教えられる日本語教師を作ることを含めた総合的な戦略が必要だということです。「できる日本語」「げんき」は手厚い教師用指導書を作ることで、「まるごと」は教師用リソースをウェブ上で提供することと、おそらく教師向けの研修で対応する考えのようですが。研修には限界がありますし、その先の戦略があるのかは疑問です。

      おそらく新しい流れをくんだ教材ベースの教え方は、教師に要求されるハードルはあがります。これらの教材を用いて授業を進めていくのに必要な能力は、じっくりと経験を積んでいってはじめて身につく類いのものです。今後、再び、特に国内の日本語教育の需要が高まっていく中、教師に、型どおり、マニュアル的でない柔軟な教え方ができる能力を期待し、学習者の多様な母語(インドネシア語、マレー語、タガログ語。。。)の学習を日本語教師に課すならば、まずは、少なくとも、日本語教師に安定した雇用と報酬が保障されないと不可能ということは明らかで、ここでも、日本語教師の職業としての確立が大事になってくるということになるわけです。

      今のところ、聞こえてくるのは、教材を軸にした机上の教授法の議論や、業界の中のグループ、組織の生き残り戦略ばかりで、肝心の日本語教師を長期的視野で育てていくという声はまったく聞こえてこないのは残念です。「これまでも教師を育ててこなくてもなんとかなったじゃないか」ということがあるのかもしれません。2010年代に入って、また「人材開発としての日本語教育」的な方向に引っ張られているような気もします。日本語教育の大きな転換期の今回も、日本語教育業界は近視眼的な政策の後をついていくだけの存在になるのかもしれません。



      更新履歴

      基本的に、現行バージョンは指摘があれば、その都度修正し、元のバージョンから随分修正したかなというところでバージョンを0.1上げます。従って掲載中のものは、バージョンとして固定されているものではなく、すでに新たな修正が施されている可能性が高いことに注意してください。いちお、バージョンごとに保存はしています。

      PDFは、現行バージョンのものがダウンロードできるようになっています。ただ、このページのほうが新しいです。

      2015年3月18日 投稿 ver.1.0
      2015年3月23日 ver.1.1 
      :日本語専門家の年収の額の指摘を受け修正。JITCOのリンク外れ対応。養成講座の修了者の数を修正し整理して補足。など。

      クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
      この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 改変禁止 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。

      LINEで送る
      Pocket