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2017

著作権一般

ファスト映画は、映画のあらすじを切り貼りして10分程度に編集した動画です。自宅のパソコンで簡単に作れますし、それをYoutubeにアップするだけです。しかし、著作権侵害で訴えられたら賠償金は映画みたいな大きな産業相手だとこのように巨額になります。

写真一枚でも数十万の賠償となるのも普通です。著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役と1,000万円以下の罰金のいずれか、またはその双方を科すという罰則となり、侵害者が法人の場合には、罰金の額は3億円以下になります。著作者人格権などの侵害は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金です。

👉 ファスト映画が1000万で済んだのは、日本国内の法律の範囲で収めてやるし懲役は勘弁するから罰金は満額、みたいな和解だったんでしょうか?本気でやられたら大変なことになったような気がします。関連の訴訟は続いており、こじれたものは、億単位の訴訟 になっています。

👉 結局、和解以外の裁判も決まり実刑となりました。→「ファスト映画」投稿に有罪 男女3人、著作権法違反―仙台地裁:時事ドットコム

そして、流通している著作物は、たいていの場合、権利者は著作権者だけではなく、著作隣接権、販売権、編集権、その他の多くの権利者がいるので簡単に訴訟は起きます。これも間違いやすいところです。権利者が著作権者だけというのはネット上で個人でイラストを売ったり配布したりという場合だけで、レアケースです。

SNS上の有名日本語教育関係者が著作権に関して投稿するようなことは、ほとんどの場合(単にそう書いたほうがウケるからだと思いますが)「勝手に使っても大丈夫」というニュアンスのことが多いですが、かなりの確率で間違っています。それを信じて訴えられても賠償するのは自分や自分が所属する組織になります。

Youtubeなどのライブ配信だけでなく、音声チャットやslackなどで、著作物を「ネタ」にしてセミナーや講演をやるのもほぼアウトです。感想を言うだけならいいですが、紹介と称して、内容を辿っていくのもリスキーです。このへんもそのうち訴訟が増えると思います。誰もが「(プロモーションになるから)紹介してくれて感謝するだろう」と考えるのは誤りですし、ほとんどの場合、クローズドな音声チャットやslack、たいして再生もされないYoutubeチャンネルで紹介されても、売上には繋がらず、実売が減ったという調査もかなり増えてますから、そのうち訴訟すべし、という流れになると思います。

今は、写真も動画もスマホで撮れますし、イラスト化もアプリでできます。肖像権などに注意すれば教材程度の素材は今は自分で作れます。無理に他人の作品、商業作品を使う必要はないはずです。自分でやれないなら、許諾をとるか、使用料やライセンス料を払って使いましょう。

👉 日本語教育関係者が、著名であっても、独立行政法人の関係者であっても、著作権に関して、特にネット上の著作権に関して、テキトーなことをSNSやブログに投稿してしまうカルチャーは、15年以上前からあることですし、いろんな人が注意しても、訂正したり謝罪したり勉強したりということは無かったので、もう止めることはできないと思います。日本語学校の関連会社が海外でコピー教材を使っているのも90年代からある慣習ですし、日本国内でもメイン教材以外はコピーで済ます学校は多いようです。しかし、2020年代になって著作権がらみの訴訟は増えると思いますし、賠償額は確実に大きくなっていくはずです。もはや「自己責任で」などと軽々しく言って曖昧なことを投稿するのはやめたほうがいいと思います。

👉 この3年で4回の著作権法改正、いったいどこがどう変わったのか 忘れられがちな改正内容を整理する(1/3 ページ)(2021年8月) ITmedia NEWS

概要

個人や学校などで何かを作る場合、一般的には以下のような記述をどこかに入れます。

©    2020  名前(複数なら連記) 
お決まり 作成の年 著作権者

などと書けば完成です。年の数字はアップデートする必要はなく、表示の順番もこれが定番のようです。

第三者も利用しやすいような著作権を選ぶこともできます。学校に著作権があってもそれを収益化するのは出版でもしないかぎり難しいですし、学校の中だけで使うよりも、CCのように著作権者の名前を入れて基本フリーで公開することによって他の場所でも使われ、それが学校のブランドを高めるということもあります。

ざっくり説明するサイトや動画はネット上に無数にありますが、日本語教育関係者が書いたものは、結構ひどいものが多く、そのまま鵜呑みにすると訴えられて有罪になるリスクもあります。著作権が専門の法律関係者のものを探しましょう。

著作権制度の概要 | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/

著作権なるほど質問室
:一度、じっくり読みましょう
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/naruhodo/index.asp

著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/

原則、使えないと考えたほうがいい

他人が作ったものは許諾無しに使えないと考えるのが基本です。

デジタル好きの人の著作権の説明の傾向として「自分が他人が作ったものを利用する」という視点での説明が多いというのがあります。あれもフリー、これも使える、CCなら連絡不要!みたいなタイプです。しかし、今は誰もが著作権者になる可能性があり「自分の仕事やデジタル資産を守るものとしての著作権」ということも重要です。

しかし、日本語教育関係者は、ネット上にあるものが何でも使っていいんでしょ?というような人もまだまだいます。

基本的な理解として以下の3つが重要です。

  1. 自分以外の人が作ったものを使う場合は著作権のことを考える必要があります。著作権に関して説明がないものは、作成者に連絡しての利用の許諾が必要です。許諾のルールは著作権者が決めます。許諾は口頭ではなく、本人からいただいたということが文書(メールなど)で確認できるものがないと利用は難しいです(それが面倒だと言われたら使えないと理解すべきです)。ただしネットの場合、作成者がわからないことがあります。著作権者に連絡がつかなければ利用できません。
  2. 著作権の説明は著作物の近くにあることもあれば、サイトのトップからいけるどこかにまとめて説明があることもあります。
  3. 著作権は、通常の年月日と著作権者が書かれたものは、利用の際には著作権者に連絡して許諾を得ることが必要。CCなどの場合はCCのライセンスに従えば著作権者に連絡は不要です。
  4. ただし販売されている著作物の権利は著作権者だけにあるのではなく、販売権、編集権など、いろんな権利者がいますから、ほとんどの場合、著作権者だけの許諾で使えるようにはなりません。著作権者が誰なのか、どういう権利があるのかわからないことも多いです。

👉 日本語教育関係者はこの基本の理解が危ういところがあります。「ネットで公開してるものは勝手に使っていい」「ウチは学校だからOK」と考えている人も結構います。ネット上で日本語教育関係者に向けて著作権のことをきちんと説明した記事は見当たりません(テキトーな説明の記事はあります)。

非親告罪化

著作権は原則として親告罪でした。親告罪とは著作権を侵害された「本人」に訴えられて有罪になり、はじめて罪になるということです。

2015年以降、著作権は非親告罪となりつつあります。つまり侵害された人ではなく第三者から「あそこ著作権侵害しているよ」と訴えがあり事実が証明されたらほぼ有罪になるということです。日本学校の著作権がらみの訴訟騒ぎが起きたのも2017年でした。非親告罪化を受けて、一部の学校は「ちゃんとやらないと」という声も出始めましたが、業界として取り組む動きはありません。つまり日本語教育関係者にとって著作権の侵害は、昔も今も、いい悪いではなく、つかまるかどうか、という問題であるようで、これは著作権以外の日本語教育関係者の基本的な法律に対する基本的な態度だと思われます。→ 著作権の非親告罪化

文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)議事録・配付資料 [資料5]-文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/07042304/004.htm

一般的に以下の3つの条件がある場合は非親告罪となるとされている模様です。

著作権等侵害罪の一部非親告罪化(第123条第2項及び第3項関係)の要件(文化庁)

  1. 侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等)の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること
  2. 有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること
  3. 有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること

また、著作権者以外の権利、例えば著作者人格権なども非親告罪として成立したことがあり、著作隣接権者(出版社などが原稿から作品になるまでのプロセスなどを根拠に著作物に準著作権的な権利があるとして主張する権利)も親告罪の当事者として訴えることができます。販売する権利者も可能。つまり、流通している著作物はいろんな方面から訴えられるリスクがあるということです。

著作権は、業界によってかなり態度が違います。業界団体などでガイドラインなどを作って「守ろう」というところと「どうせ訴えられないからいいだろう」というものがあり、日本語教育業界は後者です。日本語教育系の出版社との間に何か取り決めがあるのか、暗黙の了解があるのかは、わかりません。ただ、2017年には日本語教育関係ではない出版社から訴えられたりしています。村内のルールが通用しなかったということかもしれません。基本的に、国内外の日本語教育機関では教材をコピーして配布する行為は横行しており、訴えられれば学校法人や株式会社などの区別なく、ほぼ負けるのではと思われます。

日本語学校において違法コピーの教材は「苦学している学生のため」「ウチも苦しい中、留学生をサポートしているのだ」という建前で見逃されることが多いですが、実は学校の予算の都合に過ぎず、正当な価格で購入するようになれば、教材の定価も下がる可能性があり、学生は安価に教材を購入できるようになるかもしれません。日本語教育関係者のブログでも著作権の記述は誤りが多くそれがそのまま拡散してしまっています。国内だけでなく海外も著作権侵害は深刻で、「みんなの日本語」はかなりの比率で違法コピーのものが出回っていて、長い間、ネット上にも違法コピーと思われるファイルが多数あります。日本語学校や企業の提携校でも、違法コピーの教材が堂々と使われており、国内の提携校などの関係者も当然把握しています。

👉 90年代から海外における日本語の教材の違法コピーは続いています。現地の出版社とライセンス契約をして出版されるケースもありますが、そのライセンス版がどういうものなのか、出版社に情報がないので海賊版との見分けがつきません。アジアでは、ほとんどの日本語教育機関が海賊版を使っているともいわれています。「みんなの日本語」の違法コピーばかりというのも大きな特徴です。他の言語の語学学校などでは違法コピーをするリスクを冒すくらいならと、教材の自社開発に移行するのが常ですが、教材を開発するでもなく、ただシェアが高い教科書や教材の著作権を侵害して使い続ける業界(おそらくは同じ教科書だと教師の出入りが激しくても都合がいい、くらいの理由だと思います。下手に自社開発すると研修コストもかかるというような)というのはあまり他にないと思います。

ネットで語られる日本語教育と著作権はもっぱら利用する際のものばかりです。しかし、日本語教師は著作権に注意しながら利用する人である、という考え方はもう古く、著作権者として自らの権利を守るために著作権の法律を知る必要があります。作ったものを共有するなら、CCなどのライセンスを知っておく必要もあります。CCの素材を利用、加工して二次的な素材作りも簡単になってきましたし、安いデジタルビデオを買って動画を作り、簡単な編集ソフトで字幕を入れれば、目的にあったものが作れます

文化庁の著作権関連のページ(いろんな入門的なページ、文書があります)
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/

著作権に関する判例データベース
http://tyosaku.hanrei.jp/

クリエイティブコモンズジャパン
https://creativecommons.jp/

著作権法(法律)
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000048&openerCode=1

公文書の著作権

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/opendata_nijiriyou_betten1.pdf

世界中で公文書のCC化が進んでいる中、日本もその方向でやることになったはずだが、まだ周辺の整備が進んでいない模様ではっきりとしたものは無い。ただし、基本的に国や各省庁、地方自治体が出す文書を例えば教材で使うことには著作権的には支障はないと思われる。

著作権の国境

権利としての著作権に国境はありませんが、それは「著作権という権利があり、それは著作者に所属する」ということぐらいで、後は、いろんな国家間の協定で、なんとなく共有されているものがあるだけです。

著作権は国籍主義と発行地主義

👉 2-2.保護される著作物/Webで著作権法講義

国際的な取り決め

協定はあっても…

は国によって違います。基本的には、それぞれの国の法律が優先されます。保護期間は2018年に日本は50年から70年になりましたが、これは経済協定(TPP11協定)によるものです。このように著作権は度々国家間の経済てきな駆け引きでよく変わります。アメリカにようにソフト産業が強いところは長いほうがいいわけですから、力関係で決まることも多いです。

著作権の国際的な協定に参加しなければ守らなくていいということになりますが、自国の著作権も尊重されず、他の経済的な関係にも影響が及びます。

フェアユースとは公的な目的であれば、一定の制限の元、使うことができるという米国の規定で、同じようなルールがある国がいくつかあります。

ただ、フェアユースは結構厳しい規定で少しでも商用のニュアンスがあれば認められません。例えば、市販されている教材のコピーが認められることはほぼ無いと思います。一般論として、教育目的でOKがでるのは、あっても資料的なもので著作権者がはっきりしないものや、研究に必要な引用の範囲くらいです。Wikipediaに教育関連の判例など、そこそこいい説明があります。

👉 日本もフェアユースに類する法律を作ろうとしてはいますが、法体系が違うのでなかなかなじまないので難しい、と言われています。

主な協定にはベルヌ条約と万国著作権条約があります。たいていの国は批准していますが、詳しく知りたい人は以下で。

ベルヌ条約

文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(抄) | 条約 | 著作権データベース | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
:中国は92年に加盟しています。 https://www.cric.or.jp/db/treaty/t1_index.html

万国著作権条約

万国著作権条約パリ改正条約 | 条約 | 著作権データベース | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
https://www.cric.or.jp/db/treaty/bap_index.html

著作権については、以下のサイトに日本語のよい説明があります。

公益社団法人著作権情報センター CRIC
https://www.cric.or.jp/index.html

外国の著作物の保護は? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime5.html

この国際的な著作権法のややこしさをクリアすべきやり方として、著作権を明確にしつつ、フリーでの活用ができるクリエイティブコモンズなどの試みがあります。ただし、CCも著作者人格権の規定がないなど、作家性を重んじるクリエーターにはやや使いにくい要素もあります。

「フリー」は例外的

よくある間違いは「フリー」とCCやフェアユースは違うということです。一般の人の「フリ-」は、「承諾もいらず二次加工もできるし、ライセンス表示も無くて良い」という完全な「拾い物」という感覚ですが、CCは著作権表示は必要で、フェアユースも許可が出るのはケースバイケースなので、訴訟リスクは常にあります。事前に調査したり弁護士に尋ねるなど確認するか、フェユースだという判例があり、それと同じだと判断される必要があります。

アジアなどの著作権事情

日本語の教材はアジアでコピーされてきた歴史があります。「知的財産」「著作権」などと国名で検索してみてください。

中国における著作権侵害対策ハンドブック
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/kaizokuban/handbook/pdf/china_singai_handbook.pdf

ベトナムにおける知的財産権 | 弁護士法人マーキュリー・ジェネラル
https://www.mercury-law.com/vietnam-chitekizaisanken

東南アジア諸国の知財制度に関する外国政府や諸団体による評価について
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201411/jpaapatent201411_089-104.pdf

ロシア知的財産法 (2) – ロシア著作権法の体系及び実務的特徴  – イノベンティア
https://innoventier.com/archives/2018/01/5126

その他

この記事によると、21年にツイッターの画像の仕様が変わったのは著作権問題がきっかけとのこと。
iOS/Android版Twitterアプリ、縦長画像をそのまま表示可能に - PC Watch
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1322624.html

学校と著作権

著作権が厳密に適用されないものとして「学校はセーフ」「学校法人はセーフ」「非営利ならセーフ」というような話があります。しかし、試験問題などでの利用も著作権者から裁判を起こされたりしており、簡単には使いにくくなってきているのが実情です。

そして、大学を除く日本語教育機関は該当しないと考えるほうが無難だと思います。つまりネット上などで学校の著作権として説明されているものをそのまま(学校法人だとしても)日本語学校にあてはまるのは間違いの元です。

一般的な学校と著作権の関係

以下は「学校」における著作権の講義ですが、講義が行われた学校はキリスト教系の非認可校とのこと。つまり学校法人ではないようです。

九州大学における学校と著作権の問題の講義。こちらは基本的に学校法人を想定したものと考えられる。

著作権が専門の福井健策氏の著作権に関する講義の動画。

日本語学校では

教室などで、複数の学習者相手に教材(教科書、問題集などすべて)は、コピーして配布するのはすべてNGだと考えるべきだと思います。特に利用契約を交わしているわけではないのに、冊子として閉じてないからセーフ、授業後回収するからセーフというのはどこに根拠があるのか不明です。また「半分以下なら引用なのでセーフ」は都市伝説です。学校だとコピーを配布して授業をした事実があれば、組織的な違法行為だと100%見なされるはずです。内部告発があり、著作権者が訴えればアウトとなる可能性は高いです。

民間の日本語学校は非営利の教育機関?

日本語学校は法務省によって「日本語教育機関」として認定はされていますが、著作権法上の「教育機関」は、あくまで営利か非営利かが焦点になっています。予備校や専門学校などは、学校法人が経営母体となっていることが多いのですが多くの場合、私塾扱いです。つまり営利目的とみなされています。学校法人の比率が5割以下の日本語学校が非営利の教育機関とみなされるというのは考えにくく、これまでの著作権を守ってきたとは言いがたいいわば「行儀の悪い」業界である日本語学校業界が学校法人がいくら建前として非営利とみなされているからと、特例となる可能性は低いのではと思います。

H16年に学校関連の著作権は、もうちょっとゆるやかにという方向で改正がありました。しかしこれは日本語教育機関には関係のないものです。

学校その他の教育機関における著作物の複製に関する 著作権法第 35 条ガイドライン
http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf

「営利を目的としない」教育機関に関しては現在ガイドラインがアップデートされている最中です。 学校等での複製 | ガイドライン | 社団法人 日本書籍出版協会

http://www.jbpa.or.jp/guideline/

オンライン授業での著作権

オンラインといっても、同期と非同期では著作権の適応範囲が違うなど、いろいろとあります。詳しくはオンライン授業オンライン授業の著作権を参照してください。

授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)によって、著作物が使えるようになった、という単純なことではなく、特に日本語教育関係の出版社は違うスタンスであることに注意です。

私的利用の範囲

日本語の授業で使うなら「私的利用」と考えるのは無理です。これがOKならどんどん拡大解釈されてしまいます。

引用の範囲とは

→ 例えば、作品の一部の引用であっても、その引用だけで成立するものはアウト。あくまで何かがあり、そのために必要なものとして引用されていないといけない。単純に、文字数が半分以下ならOKということではありません。あくまで総合判断。

→ 公開、非公開ということはもちろん、ネットで誰でもアクセスできるからOKではなく、引用するためのソースが権利者の意志で公開されているかきちんと確認が必要。

著作者人格権にも注意

また印刷物や映画、絵画などを引用として使う場合、印刷、映画、絵画などは引用の際の加工(デジタルデータにすること)で劣化するという問題に対しても、ひとつの作品(映画絵画)などの一部を切り離して使うことに対しても、権利者は著作者人格権を行使してNOを言うことができます。このことからも、本人の許諾なしで簡単に引用するのはかなり注意を要すると考えた方がいいでしょう。論文などのように部分だけでも成立するものと、芸術作品のように全体でひとつの意味があるものでは、引用として部分を切り取って使うことに対する制限は、違うと考えるべきです(当然後者のほうが難しい)。著作権が存在する芸術作品の引用は、権利者の許諾を受けない限り、基本アウトと考えるしかありません(パロディなどでOKなケースはあったようですが、教材としての一部引用はちょっと違う)。

「RTによる画像トリミングで著作者人格権侵害」 知財高裁判決の意味と影響 弁護士が解説 - ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1806/22/news016.html

👉 仮に近い将来、新法などで日本語教育機関が特別な位置として認められた場合、著作権法で特例とされるのはどんなものがあるか?結構も面倒です。以下に該当箇所を書きます。

50人以下ならOK???

オンライン授業のようなデジタル系のデータ通信上のことは「公衆送信」と呼ばれます。オンライン授業と著作権の説明で、50人以下は「公衆」じゃないから、著作権は守らなくてもいいという主旨の説明をネット上で見かけましたが、誤りです。これが正しいのなら、49人のオンラインレッスンビジネスやマンガの読書サークルが乱立して著作権的に無法状態になるでしょう。法律の解釈とか定義以前のところで判断できることだと思います。

著作権上の公衆と他のジャンルの公衆の定義は違います。著作権上の公衆は不特定多数、特定多数も含まれますし、5人でも10人でも家族などでない限り著作権法は守らなければなりません。著作権法でも、家族や友人間でちょっと見せるのはセーフにしようよ、ということはありますが、学校が授業をするようなケースにあてはまることは無いということは常識的に判断できると思います。

著作権法における「一人でも公衆」理論を説明する(栗原潔) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20170516-00071009/

電子書籍の著作権

電子書籍はストアや購入形態によってライセンスのルールが違いますが、紙と同じく、原則として購入者にしか閲覧の権利はありませんから、学校で利用する場合は、法人相手の複数ライセンスか、人数分の購入が必要です。複数人用のボリュームライセンスが提供されていればそれを購入します。(kindleは条件が揃えば貸し借りができますが、学校でこのシステムを利用するのは無理です。また個人で複数の端末で利用できますが、これも利用できるのは購入者のみです)。

例えば、kindle購入者は自分が持ってる複数の端末(現在は6台)で利用できますが、学校などでひとつのライセンスを購入して6台で6人の学生が使うのは紙の本をコピーするのと同じで違法です。「紙の本の6分の1の値段で購入できる」ということではありません。権利者に訴えられたら終わりです。ご注意を。

法人向けライセンス販売

法人向けのライセンス販売をするシステムにはOver Driveというものがあります。この種の電子図書館的なシステムの最大手で現在(2019)は、楽天が所有しています。まるごと 日本のことばと文化 初級~中級には、この電子書籍版があります。図書館のように貸し借りだけではなく、ライセンス購入、複数ライセンス購入をした法人への提供プラットフォームも兼ねています。

https://www.overdrive.com/libraries

ただし、これはまず学校などでシステムごと導入する必要があります。導入コストは規模次第ですが日本の地方の図書館で年間一千万くらいという記事がありました。学校が契約を結ぶと、無料の本は自由に読める電子図書室が学校にできるというようなものです(そして、その学校が法人ライセンスで購入した本も読めます)。ただしまるごとなどは有料書籍ですから、学校でライセンス購入をしていない場合は、個々がお金を払って購入することになります。学校で導入する場合は、このシステムを導入した上で、法人用の複数ライセンスを購入すれば学校で使えるということになりますが、まるごとの例をみる限りでは、1冊の料金はそれほど割安にはならないようです。大学など大規模な利用でもないかぎり導入するメリットは少ないと思われます。

米国には学校向けのサービスがありますが、日本では今のところ人数分購入しか選択肢はなさそうです。

自炊の著作権

自分でスキャナーでPDF化して(「自炊する」と言うことが多い)、自分で使う分は、これまでの紙コピーと同じ扱いですが、元の本は裁断しないといけないとか、ネットで配布したり人にあげたりするのはアウトです。

自炊の代行業者は、2016年に最高裁で違法という判決がでています。著作権者の許諾がないものはダメということになっており、著作権者が自炊してもよいと言うケースはほぼ無いので、できなくなっています。「自炊 違法 代行」で検索しましょう。しかし、その後も業者は「著作権者の許諾があるものだけOK」と宣伝して生き残っていますが、この許諾は注文する人がとってねという理屈のようです。訴えられたらほぼアウトです。

👉 日本語の教材や関連書籍などは、スキャンしてもいいという許諾があるものは、ほぼ無いと思われます。つまり業者に発注して、仮に自炊できても、訴えられたらアウトです。

書籍の自炊代行に関する著作権問題

これも、もし自分が著作者で売上で生活していたら?と考えると、多少は見えてくるのではと思います。自炊代行業者が、PDF化する際に紙の本は裁断していても、電子化データを複数、複製している可能性は常にあり、チェックはできません。個人経営や小規模の自炊代行業者は、潰れたらデジタルデータを流す可能性もあります。2015年前後、日本語教育関係者も自炊代行業者を利用したと盛んにSNSに投稿していましたが、最初から違法性は高く、自炊代行業者が許可される可能性はほぼ0に近かったのです。他のジャンルの教育関係者はもうちょっと慎重です。

教案、ハンドアウト、テストは学校に著作権があるか?

ここまでは市販の教材などを利用することに関してでした。それでは、学校で教師が作るものはどうでしょうか?

学校が作ったものに対して著作権を主張できるのは、以下の条件があるのではないかと思われます。

現状、教案を「自分の時間を使ってやってくるもの」としている学校は教案の著作権がないことは当然のこととして、保存する権利もないとするのが自然です。

テストやハンドアウトも(特に非常勤講師に対しては)上の2つの条件を満たしている可能性は高くない。今後、ICT化が進む中で、学校が保存している教案やハンドアウトなどをデジタル化する場合、著作権が確定してないものを勝手にデジタル化し保存し利用するためには、制作者の許諾が必要になるはずです。

そして、仮に条件が揃ったとしても、デジタル化での利用に関する許諾はまた別です。閲覧だけか、配布までするのか、配布の範囲はどこまでか、教材化する場合はどうか、販売する場合はどうか、いろんな可能性を想定してしっかり許諾をとらないと再利用はできないはずです。

過去の資産はもちろん、現状、しっかり著作権管理ができていないのなら、今作られているものの利用もできないことになります。まずは学校で作成するものにきちんと著作権を記すところから始めないと、日本語学校のICT化は、デジタル資産として蓄積できない、単にプロジェクターやタブレットなどの機器を使うだけのものになってしまいそうです。

告示校が著作権侵害で訴えられた例

留学生向け予備校、本を丸ごと複製 出版社が損賠請求へ:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASK4D7D2RK4DUCVL030.html

著作権法等侵害に関するご報告 | 行知学園株式会社
https://coach-ac.co.jp/news/20171215/1980

となりました。

著作権の教唆、幇助は罪になるか?

学校などが教材などをコピーして配布するのは、違法であるというのは分かりやすい図式ですが、自分がやったのではないという場合はどうか?という問題があります。現在は、非親告罪化が進む傾向がありますから、著作権者による告訴が無くても、違法性を問われる可能性は高まったと言えます。

Youtubeの動画をダウンロードする方法などは、検索すればたくさん出てきます。日本ではその種の雑誌やサイトもたくさんあります。しかし、知っていても個人で公の場に書く人は少ない。この種の「紹介」には違法性があるのか?は微妙です。また、自分が持っている本などをコピーさせることはどうなのか?という問題もあります。ネットにアップするのはダメそうだと考える人は多いようで、さすがにあまり見かけませんが、ではネットを介さないものはどうなのかというと、無料ならいいとか、個人の利用の範囲内ならいいみたいな解釈が飛び交います。

いずれもコピーしたのは当人ではないので、こういうことの違法性が議論される際は、一般的に「教唆・幇助」という語が使われるようです。

教唆・幇助による著作権侵害の成否
http://www.itlaw.jp/saitobook.pdf

によると、国際的には厳しく罰せられることがあるようですが、日本ではあまり問われないこと「も」ある(違法性がないわけではない)と書かれています。しかし、近年、マンガの複製などが問題になり、関与した人が罪に問われるケースが増えています。これは違法性を知っててやったのか、知らずにやったかは、あまり関係なく、規模感などで問題になることもあるようです。人気ブログやフォロワーが多いみたいなことも考慮される可能性もあるかもしれません。

以下は、法務局が所有していた書籍をコピーさせていたことが有罪となったケースです。

知らずに侵害?著作権侵害に注意! お知らせ - その他の問題 │ 新潟の弁護士による法律相談|弁護士法人一新総合法律事務所
https://www.n-daiichi-law.gr.jp/contents/other/5339

著作権法では図書館は一部をコピーさせることができるという文言がありますが、図書館にあたらないところでは問題になるということのようです。日本語学校の図書館などもこれにあたりそうです。

いろいろ難しいところですが、グレーゾーンをウロウロするよりは「疑わしきはやらない」でよさそうです。ブログやSNSで得意げにアレコレ書くのはやめたほうが無難ということでしょうか。

著作権に関する取り決めを作ろう

学校は教材を作ることもありますし、日々いろんなものを作ります。つまり著作権者でもあります。これらの著作権をどうするかは、結構難しい問題です。

学校で必要になりそうな著作権の種類

著作権は組織にあることにして同意をとるのが一番簡単で多いようですが、作成者の権利をないがしろにしているという点が気になります。教務など共有して使い回すことが前提のもの(教案、教材、試験など)は、原則として、勤務時間内に報酬が支払われる形で作成されたものは、きちんと同意書などを作成すれば、組織に譲渡する原則でもよいと思いますが、作成者のクレジットはするべきです。もちろん、個人でも複数の共働作業でも勤務時間外で報酬が支払われないモノに対して組織は著作権の譲渡を請求することはできないはずです。これは例えば、専任と非常勤の共同作業で作られたものでも、一人でも時間外で無報酬ならばアウトです。その上で。。。

  1. 学校に著作権を譲渡する
  2. 本人に著作権が所属する(本人の許諾が必要で著作権者としてきちんとルール作りをすることが条件です)
  3. CC(クリエイティブコモンズライセンス)

の3つくらいの選択肢を準備したほうがいいと思います。そして、2)の場合は、著作権者がその組織に所属している間の「提供」には同意する。さらに提供だけでなく「共有」までOKということはまた合意が必要です。

個別にやるほうがフェアだと思いますが、大変ということなら、契約時に、共同作業で、例えば専任1人と非常勤3人で作ったテストは、勤務時間内で正当な報酬が支払われるならば、学校に著作権を譲渡するという項目を入れておき、同時に正当な報酬が支払われていないものはこの限りでない、という項目を入れ、個人が個別に作成する際に時間外の作業が必要であるなら、上の選択肢を示して選ぶことができる、という項目を入れる。いう形が無理がなくてよさそうです。

学校や組織は、教案、ハンドアウト、テストなどの依頼時に上の3つの選択肢を確認し、必要なら合意書を交わし、作成したものとナンバーリングをして保存する。プリントなどにも、ナンバーリングと著作権の種類を例えば

20041800001_CC 
ナンバーリング 著作権の種類

と記して、 別途 ©も

 ©    2020  名前(複数なら連記) 
お決まり 作成の年 著作権者

などと書けば完成です。数字を変えられるハンコも安く作れると思いますので電子文書も紙も入れるのは簡単です。

👉 CCの場合は、著作権者に権利がありつつも、学校も作成者も二次利用、二次配布が可能になるので、使い勝手がいいと思います。

学校に著作権はあるか?

教師が作成した教案、試験、ハンドアウトなどで、学校が保存し活用することができるのは、学校に著作権があるものに限られます。学校に著作権があると考えるには以下の2つの条件が必要ではないでしょうか。

  1. 労働条件通知書や雇用契約書にそれを作成すると業務として定められていること。
  2. 勤務時間内に作成され規程の時間給など報酬が支払われていること。

教案などを自宅で作らせる日本語教育機関はまだ多いようですが、そういうものに対し学校は著作権を有するとは考えにくく、活用はもちろん保存も許可なしには許されないと考えるべきだと思います。ICTの活用において過去の資産をデジタル化し活用することは重要ですが、その前に著作権をクリアにすることが必要というわけです。著作権のことをきちんとしないかぎり日本語教育機関のICT化はありえません。

契約書を作る

ここでは、どういう文書を交わすかについて書いてみます。

学校で教材や試験、宿題などを作る時、著作権のことはあまり考えられていません。時間外で労働時間として報酬が払われないものであるなら学校は製作されたものに著作権を主張する権利はないはずです。契約をきちんと交わす必要があるのではと思います。

司法書士などに相談して正式なものを作るとかなり費用がかかります。かといって自作だとトラブルの元なので、ネット上で公開されている雛形をベースにやっていくのが無難だと思います。

文化庁にはその種のマニュアルがあります。 誰でもできる著作権契約
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_intro/index.html 

また著作権契約書作成支援システムというものがあります。
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-system/index.asp 

弁護士ドットコムによるオンライン契約書生成サービスというのものもあります。
https://www.cloudsign.jp/ 

文化庁のものをベースにしてさらに進んだ契約書の例がこちらにあります。クリエーターの方が作品の著作権を譲渡しない形の契約です。
http://ngk.xii.jp/text/inverse.html
(主従が違うタイプと2種類あるので注意してください)

契約はどういう形でやるかは、あなたの考え方次第です。ギャランティーで支払うだけにする従来の業務委託契約や売上げのうち何%かを支払うという #レベニューシェア などいろんなやり方があります。業務委託契約はネット上に雛形も多いですし、作りやすいです。ただ、出版を本格的にやるとなると著作権どうするかになりますし、ロイヤリティの配分も決めないといけなくなります。
http://it-chizai.sakura.ne.jp/format/revenu.html

ひとまず、基本的なフォーマットは守りつつ、具体的なところは、両者で決めたことに従って作っていきます。どういう取り決めにして、それを契約書としてどうまとめるか、はちょっと難しいところですが、きちんとひとつの解釈しかできないような文面で書いていけば、基本的には契約書として使っても問題ないと思います。 もちろん、専門家に一度みてもらうほうが安全だとは思いますが、司法書士の作成したものでないと通用しないということはないはずです(例えばアメリカでもネット上にたくさん雛形があり、それを利用して契約をすすめるところが結構あります)。自己責任で判断してください。

何かを作り、それを販売することになった場合、売り上げの中から%で配分がいくような契約の形態もあります。 レベニュー契約(印税契約的なもの)は以下に少し説明があります。
http://it-chizai.sakura.ne.jp/format/revenu.html 

具体的な契約書の作り方は検索すればでてきますが、以下はわかりやすかったです。 業務提携・契約ドットコム 契約書の製本・契印のやり方
http://www.master-license.com/article/14093179.html 

著作権周辺のこと

「どこまでがオリジナルのアイデアといえるか」は結構難しい問題です。「て形」という考え方と名前は、だれが考えたのかはハッキリしませんが、今の日本語教育文法的な考え方(動詞と助詞をセットでやるとか「な形容詞」と考えるとか)を考え出した人がハッキリといたとして、その人が著作権を主張したらどうなるかはわかりません。個別の事項では、こういう研究があるからと著作権は認められなくてもパッケージとしては独創性があると判断されるかもしれません。

以降で述べるように、現実問題、何かの教材を作る場合、個々の例文や設問にも著作権があるケースもあるはずですが、単純に活用に関する設問が問題になることは無いとしても、新しいアイデアがあれば微妙というケースもありそうです。日本語教育だとある時期から、ひとつの問題に聞き取りや文法などを組み合わせたものを作るのが流行った時期があり、日本語能力試験もかなりトリッキーになっていたことがありますが、すでに他の言語教育ではよくあるものであったりと、特別に新しいアイデアとまでは言えないような気がします。しかし日本語教育業界では独創的だった場合、どうなのか?実用新案的なものなのか?みたいな問題もありそうです。

論文の著作権

以下のようなツイートがありました。

論文紹介動画をツイキャスでやろうとしたら「nature誌の論文紹介の生放送をしようとnature springer社に問い合わせたら百万円以上を要求された」とのこと。ツイキャスは営利サイトと判断された模様。YouTubeも広告入れてやるのはほぼ不可能で、無しでも申請して通る可能性は低そうです。

教材方面の著作権

紙とデジタルでは違うことも結構あります。紙の著作権は従来の法律で解釈できそうですが、デジタルだと、例えば学習項目の提出順(学習順)は、自由でいいという構成になっている場合、教材では重要な「順番」という著作権が存在しないことになります。しかし順番がないという構成そのものは、デジタルの特性でもあり、独創性があるとまでは言えません。

その他、説明や設問で、アプリなどで作るいろいろな仕掛け、例えば、ヒントが徐々に現れるとか、学習履歴を活用して学習者に最適化された設問が選ばれるみたいなものは、デジタルの知識があれば、「できること」としてそこそこ共有されていることなので、これも独創性を主張するのは難しいかもしれません。もう今の技術でアプリにできることはほぼすべてどこかで誰かに試されていると考えるのが妥当でしょうし。。。

教材の著作権は、デジタル時代に、ますます難しくなっていきそうです。

試験問題の著作権

日本語教育能力試験の主催者は「無断での引用を禁じる」と書いている(2020年現在)これは問題だと話題になったことがありました。この文言は確かに矛盾しています。法的には「引用の要件が成立しているなら」無断で引用してもいいからです。

しかし、許諾なしに試験問題を引用してネットで不特定多数に公開するには様々なハードルがあります。これが難しいということを理解するには基本的な著作権の知識と理解が必要です。多くの人は、解答速報はネットでやっても問題の公開まではどこもやらない、過去問の問題集みたいなものもあるし…と「空気」を察知して「どうやら設問をネットにあげるのはダメらしい」とふんわりと解釈しているに過ぎません。 従って「一部でも使うのはダメだよ」という意味で「引用禁止」と書くのは(厳密にいうと文言としてはおかしいけど)理解はできます。

👉 「不特定多数」でなく、例えばビデオチャットで数十人相手に問題を画面に写して「この問題だけどね~」とやることも試験問題は教科書などと同じく著作物である以上は原則として難しいと思います。

試験問題の著作権は、公立高校の入試など公的性格が強いものと、私立大学の入試、学校独自でやる定期テストなどでは、違いがあるようです。ただ基本線は、試験の問題は例えば、「**大学入試問題」とか「**年日本語能力試験」という試験全てはもちろん、個別の「読解」みたいなテーマ単位でも著作物だとみなされるようです。過去問を出版する場合は許諾が必要です。

試験問題は著作物ですか。 Copyright Q&A 著作権なるほど質問箱
https://copyright-qa.azurewebsites.net/Qa/0000017

解き方を教えて!「試験問題」をネットにアップしたら「著作権侵害」になる? - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_1015/c_17/c_1263/n_2522/

同時に、試験は、ほとんどの場合、一問一問に著作権者がいる著作物の集合体と考えることもできます。個別にも著作権があるとなると、ひとつの問題だけをとりあげて引用することは「著作物の一部」ではないという解釈になりそうです。

著作物かどうかの判断として「創作性」「創意工夫」があるかの解釈が軸になります。例えば単純な漢字の読み問題や中学レベルの基本的な設問には創作性はないでしょうけど、日本語教育でいうと、教育能力試験や能試の設問はそこそこ凝ってますから、基本、個別の設問には創作性ありと考えるのが妥当だと思われます。当然、試験の主催者が、作問などを依頼する際などの著作権の契約なども関係してくるでしょう。

👉 さらに、試験で使う文章などの素材の著作権の問題もあります。これもかつては勝手に文学作品などを断りなしに使う慣習がありましたが、今は事前の了承が必要ということになりつつあります。裁判があり、著作権者の訴えが認められた判例があります。つまりうっかり試験問題を引用すると、その問題が著作権侵害をしていた場合、二重に侵害することにもなりかねないわけです。

引用

試験問題に限らず、引用なら大丈夫と簡単に言うことは難しく、著作権の専門家は、説明の際に、必ず「一定の要件を満たせば」とつけます。これは保険としてつけておくということではなく、引用は要件の解釈が難しいということがあるからです。「これを満たせば良い」と言っても、解釈に幅があり、数々の裁判があり判例がある。だから、基本的な知識と理解があれば条件を箇条書きであげて「これこれにあてはまるなら大丈夫、だからどんどん引用していいのだ」と単純には書かない(安易に書けないと考える)のが普通です。

引用が認められる条件 著作権なるほど質問箱 文化庁
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000304

書籍での引用、論文の作法、パロディ的な引用などがあり、デジタル関係だともっと複雑です。わかりやすい例でいうと、SNSの投稿やYoutubeの動画は、引用する場合も元にある場所から引っ張ってくるためのURLを貼り付けるだけなので、著作権者が引用元で削除すれば、引用先でも自動的にほぼ削除されます。これは紙では起きないことです。しかし同じ引用でもキャプチャはそうではない、と違ったりしますから判断は複雑になっていきます。さらに引用元のツイートや動画自体がパクリかもしれない。引用が正当であるかの確認事項は増えていきます。ツイートやYoutubeの引用は、サービス運営会社が利用者とどういう許諾をしているかも問題になってきます。

👉 ツイートなども、ブログなどで埋め込みなら、全文で著作権者が明記してあることが保障されるし、著作権者が元ツイを削除すれば引用先でも消えます。そういう仕様があった上で、ブログなどでURLを埋め込むのは結果としてOKという解釈となっていますが、これも例えば不正確な引用や悪意ある文脈での引用だと「正当な範囲内」かが疑われる可能性があり「著作者人格権」にも影響しそうです。もちろん誹謗中傷となることもある。つまり抗議を受けたら基本的には削除するしかないでしょう。これを「引用は権利なんだから知らない」と無視すれば訴えられるリスクはあります。

👉 上のツイートの引用の話は、公式RTじゃないと削除は同期しないということもあるので、ツイッター社の仕様の引用に従う場合に限るということだと思います(それでも引用RTの子や孫のツイートの著作権はどうなのか、みたいな問題も生じます)。このようにSNSはサービス提供会社の仕様も著作権の解釈に影響します。Pinterestはネット上の画像を自分のアカウント内に引用という形で「ピンする」仕様ですが、引用元がパクリ画像だと永遠にパクリ画像が増殖することになるので、訴えられりしてます。

👉 例えば、私どもの漢字クイズは、公開時(90年代)に著者の方々の許諾を受けています。単純な漢字の読みなどをおぼえるためのシートですが、提出順はBasic Kanji Bookに準拠しておりこの順番にも当然創意工夫があるからです。同様に教科書の文型の提出順などはとても重要で、独自の考え方が反映されるのは当然のことだということは、教育関係者であれば理解できると思います。試験問題の順番なども同じです。

ブログやツイッターなどで試験問題を引用できるか?

個人的には「この設問は問題ではないか?」という問題提起などの場合、その問題をとりあげてブログやSNSで引用する、みたいなことは「著作物を引用する必然性が」あり、資格試験などの試験の主催者も公的な性格を(濃淡はあっても)多少なりとも帯びており、社会的意義も強いということで、引用部分がきちんと分けられていて、引用元が明記され、改変されていないというような作法が守られていれば、許されるべきだとは思います。しかし念のため、許諾を得たほうがいいでしょう。

ただ、「今回の試験はこういう傾向でした」というような試験対策的な分析記事で、複数の設問のキャプチャーと共にブログで出すのは難しいのではないかという気がします。このへんの解釈も幅があり、ゆれがあります。

そもそも試験は公的機関が主催でも基本、受験料を払った人のみがアクセスできることになっているので、試験問題に受験者はアクセスする権利を買ったとも解釈できます。その権利は受験者で共有しているが、その他の人とは共有はしていない。つまり引用の要件である「公表されている著作物か」を満たしているとは言い難いというところがあるように思います。かといって受験者だから引用したり再利用していいということにはなっていない。ほとんどの場合、試験問題は持ち帰ることができず、再利用を禁止する旨の文言が必ずあります。

許諾はどうやる?

「こういうものを書いて公開する、あなたのこれをこういう形で引用する予定なので、許可がほしい」とメールするなりコンタクトする、ということになりますが、確実なのは、公開予定の文面やブログの草稿のキャプチャを撮って、伝えることです。そして、その許諾をとったものからは修正してはいけません。OKのメールはしっかり保存しておきましょう。

これだけです。ダメだと言われて理不尽だと思ったら「私は正当だと思うが、こういう許諾を求めたところ拒否されたので掲載しない」とブログを書くなりすればいいと思います。これは事実関係だけを正確にかけば問題ないはずです。

実は、著作権者の立場は弱い

つまり、一般的に語られる引用の要件である「主従関係が成立しているか」も「正当な範囲内か」も「著作者人格権を侵していないか」も方程式はなく、互いの理解が一致することのほうが珍しいので、結局、裁判になることがあります。しかし、これは訴えて裁判をして勝っても得られる金額は少ないこともあり、訴えるコストが大きいので、法人ではない個人の著作権者は泣き寝入りになることも多い。つまり著作権違反は、著作権者のほうが大きなコストを払うしかなく訴えにくい。著作権者のほうが立場が弱いということが多い。ということに注意すべきだと思います。

よって「無断で引用できる!」とだけ言うことには慎重になるのが自然ですし、出版社やメディアなど著作権の理解が深いところや、論文などを書いたりしていて引用の基本的な作法をまもったやり方が身についた人でない場合、引用であっても、やはり事前に著作権者の許諾を得る(というより確認する)ほうがいいと思います。「こういう形で引用します」と書いて「いいよ」と言われたら、メールなら文書で残りますから安心して使えます。ひと手間かけるだけで互いに気持ちよく使えますから「無断」にこだわる必要はありません。

👉 著作権がらみの説明で「無断で」という語を使わないほうがいいと思います。説明者として「一定の条件を守れば、著作権者の許諾不要で」として、その条件を書き、条件の補足をしっかり書く、というのが誠実な態度ではないかと思います。自由に使えるということを強調したほうがネットではウケが良いという心理があるのかもしれませんが、ミスリードに結びつきやすく、その説明を読んで誤った引用をすれば訴えられるのは引用をした人です。ミスリードをした説明を書いた人の責任が問われることは少ない。だからこそこの種の説明は慎重であるべきという気がします。

👉 ただし論文を書いているから著作権の知識があるとは言えません。せいぜい論文の引用方法は知っているくらいです。画像などになると、適当に拾った画像を貼り付けるみたいな人も多いです。

誰もが著作権者になる時代

デジタル系の著作権の理解が曖昧なまま「勝手に使っていいんでしょ」という空気があった(そういうことを言うのがカッコよかった)のは、90年代から2010年くらいまでの、まだネットがサブカルチャーだった、マイナーだった時代までのことです。ネットで拾ったものを気軽に使いたいし、使ってもいいことにしようよ、というノリがありました。

しかし、2010年代半ばごろから、メディアもデジタルが主流になり、デジタルコンテンツが課金化で法人の収益の柱となり、デジタル方面のクリエイターのギャランティーもあがり、それで収入を得る人が増えているのですから、権利の管理は厳しくなり、著作権侵害が厳しく管理されるようになるのは当然なことです。

そして、今は、個人でも、パソコンさえあれば、オープンソースのソフトを利用して誰もが、画像や動画を作りネット上で公開できます。日本語教師も作ったオリジナル教材を公開するのは簡単です。使う人から作る人になった時代とも言えます。経験を積み、コストをかけて作ったものは当然収益化する価値も権利もありますから、著作権できちんと守られて欲しいと考える人は増えています。

今は、著作権者に断りなしに使えるのはCCライセンスなどその旨が著作権者によって宣言されている場合だけ、という基本の理解から出発したほうがいいと思います。著作権の記載がなくても許諾なしに使ってはいけないことも強調すべきです。「引用ならOK!」という単純な理解を出発点にしないほうがいい。つまり今はもはや、著作権は著作者の才能や努力、かけたコストを守る権利だというところを出発点にすべき時代ではないかと思います。日本語教育の試験の設問作りや問題集作りの権利がしっかり守られれば、そういう仕事をする際に恩恵を受けることにもなります。例えば、作問の仕事は試験の受験料だけでなく、過去問の出版の利益も見越してしっかりしたギャランティーが設定されることに繋がります。

今は、教師としてスキルを磨けば、自分が著作権者側になる可能性は高いのです。時間をかけて作ったものを利益に結びつけたいと考えた時、日本語教育関係者の著作権の意識が低いせいで、勝手に使われるのが怖くてネットで公開できないという事態は不幸です。今はどちらかというとクリエイティブな仕事が不当に侵害されている側面のほうが大きいのです。

👉 ツイートの著作権に関してはTwitter「ツイートの著作権に少し書いています。

👉 教育目的は保護されるべき、米国のフェアユース的なものが必要という議論があります。現在日本の著作権法も、もうちょっとフェアな目的であれば使えるようにしようと改訂中です。ただ、米国は特許や著作権、商標の管理は厳しく、裁判だらけで、違反すると多額の賠償金を支払うことになるという背景があり、その緊張関係から教育目的などの利用を守るという意味でフェアユースという特例があるという構造になっているのだと思います。日本は法人が権利を強く主張せず、個人の著作権者が多いという点でちょっと事情が違います。また、いわゆる日本語教育機関が学校法人格として著作権の特例を受けることができるかは今のところ未知数です(その前に、違法コピーが横行している状況を業界が自主的に改善しないと無理ではないかという気がします)。

日本語教育に限らず、著作権の話しをする際に、いつも「何が使えて、何がダメなのか」という使う側の話題になりがちです。ただ、私は著作権者が自分の著作物の権利をしっかり考えて、明確にアナウンスするということのほうが大事になってきていると思います。

自分の著作物をネットで公開する場合、CCなどを選択しない場合、ただ©表示をするだけでなく「こういう使い方は連絡不要でOK」「こういのはダメ」と明記してから公開したほうがいいです。これが面倒なら、特にネット上で公開するデジタル系の著作物に関しては、次のクリエイティブコモンズは大きな選択肢になると思います。クリエイティブコモンズも日本語教育の世界では、なんとなくフリーだという説明しかありません。どういう種類があって、実際に使う際はどうすればいいのか、などしっかり理解することは、日本語教師養成講座の項目に追加してもいいんじゃないでしょうか。

「準拠」について

強化書には、著者者のオリジナルのアイデアがちりばめられています。最も大きなものは

  1. どういう項目を
  2. どういう順番で提出するか

ではないかと思います。その意味で、ある教科書の順番どおりに作られる、いわゆる「準拠教材」は、その教科書の著作権者の許諾が必要ということになります。この2点は、教材を作る場合、もっとも考える部分であるはずです。

当然

にも独創性があれば、著作権は存在すると思われますが、上で述べた2点に比べるとやや弱いような気がします。これは境界が微妙です。一般的に妥当だと思われる説明には著作権を主張するのは難しいはずですが、例えば、説明部分の文言をそのままコピペするのは濃いグレーという気がします。

例えば、みん日や漢字の教材の出現順に合わせたもの、つまり、問題集、試験、教案、教え方のあれこれは、すべて許可が必要ということになります。NOと言われる可能性は高くはないので、ちゃんと作る現物をみせて許可を得ておいたほうがいいと思います。漢字の順番で自由に使えるのは文科省の学習漢字くらいではないかと思います。

👉 日本語能力試験に準拠した教材に、許可が必要なのかは微妙です。一応、公的機関が主催しているものですし、訴えられる可能性は低いはずです。基金の「いろどり」や「まるごと」への準拠も同様です。税金で作られているものなので、その主催組織の目的に沿うものであれば、NOとは言えないはずです。要確認ではありますが

学習教材協会の見解「なお、「教科書準拠教材」を発行して市販する際には、教科書会社および教科書掲載著作物の著作者(原著作権者)の許諾を得る必要があります。」は、妥当なものだと思われます。

学習教材協会とは|学習教材協会公式ホームページ
http://gakushukyo.or.jp/about.html

クリエイティブ・コモンズ

著作権は国によって微妙に定義が違ったりしていて、国際的な規格がなかなかありません。ネットの時代になり、オンラインソフトなどでプログラマーが書いたコードの著作権の国際規格が作られ、その流れで、一般の人のいろんな著作物にも適用できるようなライセンスとしてクリエイティブコモンズライセンスが作られました。

ネット上で公開する場合、最も国際的に認知度が高いのはクリエイティブコモンズ(CC)です。世界的にも有名なので英語でもライセンスの説明をしているページがあり、海外での使用でも使いやすいということがあります。Youtubeなどでも、CCで公開するという選択肢があります。海外の政府では政府文書はCCを付与することがあり、日本の政府でも活用は進んでいて、事実上の世界標準となりつつあります。

自分が作ったもののライセンスを決める時、クリエイティブコモンズは大きな選択肢です。 https://creativecommons.jp/

第三者が書いたクリエイティブ・コモンズのよい説明はなかなかありません。本家のサイトをFAQを含めじっくり読むのが一番です。どんな種類があり、使う際にどういう表示をすべきか(これをちゃんと書いている記事がありません)など、しっかり理解しておきましょう。

J-WAVEでのクリエイティブコモンズの解説。公式サイトからもリンクされている。

Youtubeで「japan」で検索してクリエイティブコモンズでフィルターをかけた検索結果です。

クリエイティブコモンズと著作者人格権

デジタル素材系サイトでも説明しましたが、クリエイティブコモンズでは著作者人格権は最小限度しか保障されないことになっています。「名誉又は声望を害する」ものはNGとなっていますが、弱々しい記述です。だから芸術作品はCCを避ける傾向があります。CCは最初から素材として作られたものか、公文書などテキストデータには適しているけど芸術作品には向かないライセンスでもあります。

クリエイティブコモンズの著作者人格権に関する記述
https://creativecommons.jp/faq/#b14

クリエイターのための著作権講座 第6回「クリエイティブ・コモンズとパブリック・ライセンス」
https://www.creativevillage.ne.jp/30752

パブリックドメイン

パブリックドメイン(PD)というのは、著作権が切れたもの、という意味。ただし著作権は国によって期限も違うし、考え方に若干違いがあるので完全に自由ではなく、特に二次加工ができるとは限らないので注意。新たに作ったものをPDとしてネットで配布することもできる。パブリックドメインで配布すると宣言すればいいが、クリエイティブコモンズではPD用のマークを提供しているので、これを使うのが便利。

👉 日本語教育の世界でPDはCCの一部というような説明がされているようですが、誤りです。

文化庁のコンテンツのCCでの配布

が始まりました。

トップ | 文化財デジタルコンテンツダウンロード機能
https://cb.bunka.go.jp/ja

著作権の今後

著作権の考え方をもう少し柔軟にしようという流れはあります。TPPなどで欧米の著作権ルールに準じたものにしていくという流れも。そこでフェアユースという概念も取り入れようという動きはありますが、ここでも非営利かどうかという線引きがあります。例え取り入れられても、同時に厳しいガイドラインが設けられるはずです。

米国のガイドラインの例
http://copyright.lib.utexas.edu/musguid.html

また、例えばGoogle for educationのガイドラインを読む限りでは*1、公的な教育機関と認定されるには、公教育関連(=ほぼ一条校と同じではと思います)の機関かNGOやNPOぐらいです。意外と厳しい。

資料など

公益社団法人著作権情報センター 学校教育と著作権
http://www.cric.or.jp/qa/cs01/

大手メディアなどの著作権を管理している組織 https://jrrc.or.jp

著作権違反を通報する窓口 テレビ 放送コンテンツ適正流通推進連絡会
https://www.tv-copyright.jp/
アニメ
https://www2.accsjp.or.jp/piracy/piracy.php
インターネット
http://www.internethotline.jp/

現在、一条校でも問題が出てくるケースとして、こういうものがあります。 公益社団法人著作権情報センター 学校教育と著作権
http://www.cric.or.jp/qa/cs01/
学校その他の教育機関における著作物等の複製利用に関するフローチャート
http://www.jasrac.or.jp/info/dl/gaide_chart.pdf

👉 そもそも教育機関であっても「最低限度、必要だと思われるケース」に限って例外が認められるという現状があり、昨今は、教育機関の利用であっても、大規模な試験などの場合は、著作者からクレームが付いたりしていて、事前の権利者の承諾が必要になりつつあるという流れがあるようです。「教育機関だとなったとしても、意外と厳しい、しかも厳しくなりつつある」というところではないでしょうか。

バリアフリー

👉 もちろん、これは元の著作物のライセンス次第です。

著作権法改正との関係は以下に整理されています。
著作権 - バリアフリー電子書籍情報室
https://sites.google.com/site/bananet19998985/hourei---gaidorain-tou

著作権の説明は難しい

著作権の説明は細かい表現が違うだけで誤った解釈が広がってしまいます。例えばCC(クリエイティブコモンズ)を「CCライセンスなら無断でコピーしていい」のは間違いではないですが正確ではなく「条件など無いのだ」という致命的なミスリードを誘います。紹介する際は、ライセンスの種類とそれぞれの条件、そして使う際の表示の方法などをしっかり書くべきです。

上の引用の件も同じです。「引用なら無断でやっていい」のも事実ですが、実際には引用の要件を確実に満たすのは難しく、ケースバイケースです。基本的な事項を理解し、いろんな判例などを読んで、やっと見通しがたてられる、さらに、個々のケースではどうかという検討が必要です。人に説明したり教えたりする際は、相手の理解度やこの積み上げを意識して慎重に伝えていくことが必要です。

ネット、特にSNSでは、イージーなほうが支持されます「こう考えれば簡単」「自由に使えばいい」と言ったほうを信じたいという人が多い。「こういうケースもあるから慎重に」みたいなことは言っても得はしない。だからそういうことを書く人は少ない。ググると受けそうな記事のほうが目出ちます。つまりこの種ことは「典型的なググってもわからない事項」です。

そして、他人の著作物を使う際には、作った人に対する敬意が必要です。CCライセンスなどで配布してくれる人は自らの時間を無償で提供してくださったわけです。挨拶は不要でも「無断で使える」と紹介するのではなく、「CCで提供してくれているのだ」という書き方をしたほうが、今後、CCで提供してくださる方は増えると思います。

特に日本語教育業界は、国内外で教材の違法コピーが横行しており、関係者は、見て見ぬフリを強いられるという歴史が長く、密かに罪悪感を抱いています。つまり「コピーしてもいいのだ」という理屈は自らを許す論理として歓迎される傾向があります。拡大解釈された書き方は増え、ますます違法な状態が続きます。

しかし学校や教師は著作権者でもあります。新人教師も経験を積み、著作権者として利益を得る立場になる日が来ます。その時、日本語教育業界のモラルの低さに苦しむことになります。違法コピー前提の世界では定価を高く設定せざるを得ないということも起こります。

著作権を守らないことは自らのクビを締めます。しっかりと勉強しないまま、SNSやブログに記事を書かないほうがいい。「誰かが言ってたよ」と緩い理屈を広げないほうがいいです。

知財周辺

肖像権その他 

イベントの写真や映像などを公開する際に考えるべきことです。ここは同意書や承諾書ととったからOKということではないことに注意です。日本語学習機関において、学校や教師は学習者の出席や成績管理をしている立場であり、その意志がなくても同意や承諾に強制力が働く可能性があります。NOとは言いにくい立場で交わされた文書は無効になることがあります。妥当なものであるかの検討が必要ですし、同意書にサインをもらうことになっても十分な説明が必要です。

学習者の写真などをネットに掲載すること

学校の写真などはFacebookなどで公開されていますが、教師や理事長の顔はないのに学生の顔が出ていることがよくあります。文書での了解はとってあるのか?あまり期待できません。本人が長い期間、自分のFacebookやインスタグラムなどで自分の顔を公開していて、公開するリスクを理解していて、文書で公開してもよいというサインがあれえばOKかなと思います。ただし、若い頃の判断であり、一度はOKを出しても後でやはりイヤだと言われることがあります。基本的には顔は映らないようにするのが無難です。ボンヤリと、本人以外が特定できないレベルならセーフかもしれません。いずれにしても許可なく顔をネットで出すということは将来にわたってかなり大きなリスクを負うことを自覚すべきです。

日本語学校の場合、教師は成績をつけ、学校は生徒をかなり強く管理している状況なので。快くOKと言ってくれても文書で「この写真をここに掲載することを許可します」ときちんと書いて、日付とサインをとることでもないかぎり難しいです。口頭だと、後で「やっぱりイヤだった」「NOと言えない状況だった」と言われたら厳しいからです。

職員や教師は?

学校職員や専任講師の名前や写真をサイトに掲載するケースは双方の了解があれば、問題ないとは思います。しかし掲載を強要することは微妙です。逆に法人の責任者の名前などは公開すべき種類のものだと思います。

人以外の問題

また、街並みを写して公開するのはどこまで大丈夫か?は、かなり難しい問題です。しかし原則として、公道上にあるものは、肖像権は主張しにくいと言われています。ただし、この場合も個人の家や、個人が特定できる形で映っている場合は問題になるかもしれません。

もちろん、明らかに第三者に迷惑がかかる可能性が高いものは問題ですが、基本「当事者に訴えられたら裁判でどうなるかわからない」ということなので、肖像権に違反しているしていないではなく、結局、公開する人がどこまでリスクを負うかという側面が強いです。画像や動画の公開では、電話番号(看板のものは個々の判断)や個人の住所がわかるもの、検索すれば個人までいきつくもの(車のナンバーなどもグレーです)には注意したほうがいいと思います。

商標が映っている場合

商品やロゴが写ってる場合、風景の一部としてあるならセーフという話もありますが、キャプションによっては問題になったりするそうです。教材などの写真で明らかに特定できる商品の写真を使うのはリスキーだと思います。ただこれも総合判断です。問題になる可能性があるということだけは意識しておいたほうがいいと思います。

同意書

以上のことをふまえた上でそれでも掲載したい場合は今は企業のサイトでも学校でも、本人か保護者に、同意書にサインをしてからということになっています。一度とればOKではなく、掲載のたびに「何についての同意か」を書いてサインをもらう必要があります。

ライブ配信

イベントのライブ配信なども事前の説明と承諾書へのサインが必要です。テレビ局やネット系企業などの 承諾書のひな形はネット上にいろいろありますから、一枚作っておいて、イベント時に配布するか事前にPDFでダウンロートしてきたもらい、サインを貰うだけです。

「あの人はうちの生徒」的なこと

あの有名人は昔うちで勉強していた、私が教えていた、ということを書くことは当然本人の許諾が必要になる部類のことだと思います。また現役で通っていたり、勤務している場合はたとえ本人の許諾があっても公開するのはリスクが伴います(例えば将来ストーキング行為の被害を受けるようになった場合など)。これらのことは文書で了解をとることは通常難しいでしょうから、やはり避けたほうが無難だと思います。

職員、教師の情報

履歴書など、個人情報が含まれる文書は、雇用関係が終われば廃棄もしくは返却すべきものだと思います。面接などで不採用ならば今は、返却するところがほとんどです。

教師不足もあり、連絡先としてキープしておきたい時は、本人の了承が必要になるはずです。また教師も個人情報が気になるなら返却や廃棄を要求したほうがよいと思います。2019年の時点では返却、廃棄は法的な拘束力はありませんので(ただし個人情報が漏れた場合は管理責任は問われると思います)

在籍していた時の情報などをネットに書き込んだりするのはNGです。「**さんはいい教師だった」ということでもです。在籍していた事実と評価は語らないというのは、これまでも企業が守るモラルとして存在していましたがネットでは特に注意が必要だと思います。

SKE松村さん「履歴書」暴露騒動に学ぶ「採用情報」の扱い方…個人情報保護法と職安法 - 弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/internet/n_9315/

👉 時々ネットで学習者の答案を公開しているのを見ます。当然掲載の許可は取ってると思いますが、許可とってることは書いたほうがいいのではと思います。ただ、この種のものは、基本的に教師>生徒の立場での許可は疑問だと思います。教師は成績をつけたりする立場なわけなので同意に強制があったとみなされる可能性はあります。いろいろ基準は難しいですが、答案の公開は原則やめたほうがいいのではと思います。匿名であっても、個人が特定されなくても「おかしな間違い」として勝手にアップする人のコンテンツにするのは常識的に問題があります。そういうものはネット、SNSで「おもしろ解答」とか「がんばった作文や文字」としてウケますが、やめるべきですし、学校は、きちんとガイドラインを作って禁止すべきだと思います。

日本語学校が設けるべきガイドライン

ネットに関するルール、ガイドラインがない学校はまだあるかもしれません。

学校側が、ガイドラインを作るなら

がベースになるでしょうか。ただし個人としてネットで発言する自由まで規制することはできないので、例えば、学校の名前をネットに出すなとか、経営方針についてつぶやくな、みたいなことは、基本守秘義務の範囲でしかできないと考えておくべきです。

超例外

著作権の国際規約を批准していない国、批准してるけど、独裁的な国では怪しいです。

↓こういうことも起きます。

研究

デジタルアーカイブにおける『肖像権ガイドライン』の試み | 日本組織内弁護士協会|JILA
https://jila.jp/2022/03/2474/

自然言語系AIサービスと著作権侵害 | STORIA法律事務所
https://storialaw.jp/blog/8267

文化財と著作権 - 全国遺跡報告総覧
https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/115734

論文

 
 

 
日本語教師読本 Wikiについて日本語教師読本シリーズhttps://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja

*1 今は個人に利用が開放されてますが、2017年までは条件があった

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